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mesimarja
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(*゚∀゚)ねこは食べてほしいようです
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 19:49:59.47 ID:lG6SUqvL0

 ねこは死にたかったのだ。
 誰かにたべられて、ぱくりと一口。かみ砕かれて、死んでしまいたい。と思っていた。
 だからひとを喰うおにがいるといううわさを聞いたねこが、とうぜんのように、ふらふらとその森にはいっていったのは何にも不思議なことでは無い。


 ねこが森に入って、二日経った。
 森は生い茂った樹木が空を抱いているかと思えば、くしゃみが出そうな花畑が広がったりしていて、物知りなねこは、この森はどうも妙だナ、と感づいたが、うちに人喰いおにの居る森だもの、妙に決まっているさと納得した。

(*゚∀゚)(食べられるなら、一口で良い)

(*゚∀゚)(肉も血も、残らなきゃ良い)

(*゚∀゚)(食べて、もらえるかな)

 お腹が減ったナだとか、何か胃袋に入った状態で食べられたら、そいつの口の中で食べたものの味がするのかな、等と考えていたねこを迎えたのは、
ねこをぱくりと一口で食べてしまえる大きなどうぶつでも、ひとを喰うおにでも無い、

ミ,,゚Д゚彡「……」

 小さな小さなどうぶつだった。



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 19:51:34.58 ID:lG6SUqvL0




(*゚∀゚)ねこは食べてほしいようです







8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 19:53:25.18 ID:lG6SUqvL0

ミ,,゚Д゚彡「お前、誰だ?」

 ふさふさと茶色い毛を風になびかせたどうぶつは、真っ青な青草に顔をうずめてちろりとねこを見上げる。
 小さなねこよりも、幾分大きなその体をもたげて草むらに座り込んだ。
 手元にはばらばらと小さな小石が転がっている。

ミ,,゚Д゚彡「迷い込んだ? だったらさっきお前が来た方向にまっすぐ行けば出れるから」

 ねこの後ろを指さしますが、それでも動こうとしないねこに、どうぶつは首をかしげる。

ミ,,゚Д゚彡「……聞いてる?」

(*゚∀゚)「聞いてるさ」

ミ,,゚Д゚彡「帰らないのかよ」

(*゚∀゚)「帰らない。なぁ、お前はひと喰いおにか?」

 ねこに言われたどうぶつは、またかくりと首を傾げた。風が吹く度、茶色い長い毛が揺れる。ばさばさのそれは針金みたいに揺れていた。
 ひとくいおに、とどうぶつは繰り返す。毛の下から覗く茶色い瞳は、何となく眠たそうないろをしていた。


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 19:57:44.20 ID:lG6SUqvL0

ミ,,゚Д゚彡「ええと、『ひとくいおに』は知らないけど、ただのおになら居るよ。会いたいから、来たの」

(*゚∀゚)「うん、おれはひと喰いおにに喰べてもらいに来たんだ」

ミ,,゚Д゚彡「……食べー?」

 ねこの足下で、しゃらしゃらと風が青草を掻き鳴らした。
 こいつ、ばかなのかな、とねこは思った。少し足りていないような話し方をする。ねこは賢しかったのでばかを見下す事は無かったが、ただそう思った。

ミ,,゚Д゚彡「おにに食べられる?」

(*゚∀゚)「うん」

ミ,,゚Д゚彡「望んで? 死ぬの?」

(*゚∀゚)「ああ」

ミ,,゚Д゚彡「……お前、変だから」

(*゚∀゚)「やあ、知ってるよ」



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 20:00:41.46 ID:lG6SUqvL0





ミ,,゚Д゚彡「あいつは、いつも夕飯前におれを探しにくるから」

(*゚∀゚)「夕飯前ってぇと、夕刻か」

 どうぶつのことばに、ねこは空を見上げた。太陽はふたりの真上からすこしかたぶいて、じゃっかん西の空に浮かんでいる。
 後、二、三時間だナ、と思った。

ミ,,゚Д゚彡「でも、おにがお前なんて喰うかなぁ」

(*゚∀゚)「喰ってもらわなきゃ困るんだ」

 どうぶつの隣に座り込むと、空が大きく広がった。それから目を逸らして、ねこは地面に落ちた小石をみる。
 どうぶつは拙い動作でその小石をあちらにやったり、こちらにやったりしていた。つまらなそうなひとみがこちらをむく。

ミ,,゚Д゚彡「なぁ、お前、足し算って何か知ってる?」

(*゚∀゚)「……いちたすいちはにって事だろー」

ミ,,゚Д゚彡「それは分かるんだけどなぁ」

 ねこから目を逸らし、一つの小さな石をつまみあげて眺めた。


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 20:02:50.73 ID:lG6SUqvL0

ミ,,゚Д゚彡「これって石だよ。一つだけど、砕いたら二つとか三つとかになんないかなぁ」

(*゚∀゚)「そりゃ、なるだろうけど」

ミ,,゚Д゚彡「でもおには『それはルール違反だ』って言うから。『一を砕くのは、まだ早い』って」

『一を砕く』
 分数の事かな、とねこは思った。
 どうぶつはむぅ、とねこのとなりでうなる。かちんかちん、と小石がぶつかるたび可愛らしい音がした。

(*゚∀゚)「えーっとな、まず、一つの石があるだろ?」

ミ,,゚Д゚彡「うん」

(*゚∀゚)「これを砕いたら、どうなる?」

ミ,,゚Д゚彡「こうなる」

 ねこの手から小石を取り、他の小石にぶつけていとも簡単にくだいて見せる。上手いナ、とねこはすなおに感心した。
 五つのかけらに分かれた小石から、一つのかけらを拾い上げる。

(*゚∀゚)「お前、これは何だと思う?」

ミ,,゚Д゚彡「石」


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 20:03:32.59 ID:lG6SUqvL0
忘れてた。


この話はそこはかとなく「ミミズクと夜の王」に影響されています

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 20:06:11.40 ID:lG6SUqvL0

(;*゚∀゚)「ちがうくて、いくつだと思う?」

ミ,,゚Д゚彡「いち? ああけど、ひとつの石だったのに、増えて、……またいち?」

(*゚∀゚)「この小石は、ええと、いつつに分かれただろ? だから、」

(*゚∀゚)(まぁ、本当は正確な五等分じゃないからちがうけど)

(*゚∀゚)「ごぶんのいち、って言うんだ」

ミ,,゚Д゚彡「ふーん……じゃあ、これはいちじゃないのか」

(*゚∀゚)「これとこれとこれとこれとこれ、全部集まってはじめていちになるんだ。いや、ええと、五つだけど」

ミ,,゚Д゚彡「数字のせかいでは、これとこれとこれとこれとこれで、ひとつ?」

(*゚∀゚)「……そう、数字のせかいでは」

 ねこが頷くと、どうぶつも頷いた。




 ふいに、ふたりの直ぐ近くの茂みが揺れる。
 枝に服をひっかけながらあらわれたのは、まっくろな角をはやした、にんげんみたいなおにだった。


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 20:10:50.04 ID:lG6SUqvL0

('A`)「いぬ、いぬ、ご飯食べる、よ……?」

 がさがさと茂みから出てきて、ねこに向かって首を傾げる。
 ねこは、ああ、こいつがおにだ、とちょっかんした。おにに、喰べてもらわなくちゃ。

('A`)「……いぬ、何時のまに彼女なんて作ったの。おれ泣きたい」

ミ,,゚Д゚彡「かのじょ? 三人称?」

('A`)「あー、そういうのまだ教えてなかったっけ? えーっとね、」

(*゚∀゚)「なぁ! あんた!」

('A`)「……何?」

 どうぶつとの会話を邪魔されたのが気に入らないのか、ちろり、とうっとうしそうな前髪のしたからおにはねこをにらんだ。
 憂鬱そうな、けれど濁っていない瞳。上品そうな物腰。
 けれどその視線はあんがいつめたくて排他的だったが、ねこは全然気にならなかった。
 必死で、なきたくなるほど必死で。

(*゚∀゚)「おれを喰べてくれ!」

('A`)「は?」


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 20:12:42.37 ID:lG6SUqvL0

(*゚∀゚)「なぁおれ、死にたいんだ」

(*゚∀゚)(死ぬなら余さずに)

(*゚∀゚)(このおになら、きっときちんとおれを料理してきれいに喰べてくれる)

(*゚∀゚)(たべて、くれる)

 どうぶつはおかしなものを見る目でねこを見ていた。

('A`)「嫌だ。きみなんて食べたくない」

('A`)「おれ、菜食主義者なんだよ」

(*゚∀゚)「は……」

 ぐぎゅぅう、と落ち込むような音がおにから聞こえた。
 あぜんとしたねこに、眉根をしかめたおには、腹部に手をあててこまったような顔になる。

('A`)「なぁきみ、ごはん食べる?」

 おれ、お腹へって死にそうなんだ、とおには言った。




20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 20:16:03.48 ID:lG6SUqvL0



 美味しそうだナ、とねこは唾をのみこんだ。
 しみ一つない白のテーブルクロスの上に、湯気のたつ料理がのっかっている。野草の混ざったパンに練った小麦粉の団子が入ったやさいのスープ。
 それから魚のパイ。素朴だが手の込んだ夕食があまい香りをはきだしていた。

 隣ではどうぶつがナイフとフォークを握って椅子のうえで足をゆらしている。おには、その向かいで食事の女神に捧げる祈りを唱えていた。
 ねこがおさない頃まいにち聞いていた其れが終わると

ミ,,゚Д゚彡「いただきます! だから!」

 どうぶつがごく短い祈りを元気よくとなえてスープの器に口をつける。

(*゚∀゚)(変なお祈りだ)

 ねこはねこなので神様に祈ったりはしない。ただ静かにパンを口に運んだだけだった。
 口の中のだえきが香ばしいパンに吸い取られて乾くと、ごろごろとやさいや芋が入ったスープに口をつける。独特の甘みと、まめのくりくりとした歯ごたえに瞬きをした。
 魚のパイにも手を伸ばす。
 パンと違って薄く、さくさくと噛みちぎれるパイ生地の中から魚の旨味がこぼれた。噛みしめ噛みしめ、飲み下す。喉が痛いくらいに美味しかった。

 そういえば森に入ってから何にも食べてなかったんだナ、とねこはせきこみながら思う。

(*゚∀゚)「おいし、……うまい!」

('A`)「そか、そりゃあ良かった」


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 20:20:42.87 ID:lG6SUqvL0

 ねこの言葉におには口元をほころばせた。

 どうぶつとおにになかば引きずられるようにして連れてこられた館は、豪奢だが古ぼけていて、お世辞にもきれいとは言い難い。
 けれど使う場所は掃除しているのか、広いダイニングは清潔感と生活観があふれていた。

('A`)「なぁきみえーっと、なまえとか、ある?」

(*゚∀゚)「ねこ」

('A`)「ねこ? ……ねこ、なまえ?」

(#*゚∀゚)「何か文句あんのかー!」

('A`)「……いや、無いけれどね」

 フォークを握ったおには首を傾げる。
 豪奢では無いけれど清潔感のあるシャツにズボン、首もとにはえんじいろのボウタイが結んであって、きれいに食事をする様は育ちのよい貴族のようだった。
 年若い外見をしているのに、そのものごしは老人みたいでみょうに『はまっちゃってる』感がある。頭の上の、髪から覗く大きな角は、影も出来ないほどに黒い。

('A`)「あのね、ねこ、おれはきみを喰べない。だけど、行く場所が無いならここにいてもよいよ」

(*゚∀゚)「……じゃあ、置いてくれよ。おれは行くところが無いんだ」

(*゚∀゚)(もしかしたら、いつか気が変わって食べてくれるかもしれない)

 ねこがそう言うと、おには心底うれしそうにほほえんだ。やぁようこそ、おれたちのお家に。そんなことばが聞こえた。
 それがこの国の古い古い歓迎のことばだということをねこは知っている。


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 20:25:40.36 ID:lG6SUqvL0

**


ミ,,゚Д゚彡「なぁねこ、おれのなまえを考えてよ」

 ねこがおにの屋敷に住み着くようになって数週間たったある日、じゅうたんにね転がっていたねこに、いぬがそう言った。
 ねこはねこなので家から出るのがそんなに好きではなくて、二日間さまよったあのみょうな森にそれほど魅力を感じなかったのもあって、いぬに外出にさそわれても三回に一回は断っていた。
 そうするといぬは三回断られるうち一回くらいはねこと一緒に屋敷の中に居るようになった。

 おにがひまを噛んでいると、すうがくやさんすうを教えてくれるが、何をしているのか書斎にこもっていると、ふたりはもっぱらごろごろと怠惰に過ごすこととなる。
 いぬも、勿論ねこもごろごろしているのはきらいでは無かったけれど、無言でごろごろするのは苦手だった。

(*゚∀゚)「なまえ?」

ミ,,゚Д゚彡「本でよんだんだ。ひとやものになまえをつけるってのは大切なことなんだって」

(*゚∀゚)「……フーン」

ミ,,゚Д゚彡「おにになー、なまえが欲しいって言ったら、『ねこに考えてもらえよ』っていわれたから」

(*゚∀゚)「おにがか?」


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 20:30:08.96 ID:lG6SUqvL0

ミ,,゚Д゚彡「『ねこはこくごが得意だから』って言ってたから」

(*゚∀゚)「たしかにこくごは得意だったけどなー。おに、さんすうしか教えてくれたこと、ないじゃねえか」

ミ,,゚Д゚彡「すうじのせかいだから!」

 窓からさしこむ日溜まりの中で、いぬのふさふさとした毛がじゅうたんにもつれ込んで、がしゃがしゃと鳴った。なまえナぁ、とねこはくちを噤む。
 窓の外ではことりが枝から枝へととびうつっていた。まるで植物がえんりょをしているように整った庭は、けれどおにがていれをしている所を見たことが無い。

(*゚∀゚)「じゃあなぁ、オマエのなまえは、フサ」

ミ,,゚Д゚彡「ふさ?」

(*゚∀゚)「オマエの毛みたいのを、ふさふさって言うんだ。だから、フサ」

ミ,,゚Д゚彡「おお! おれ、フサ!」

(*゚∀゚)「フっサー」

ミ,,゚Д゚彡「ツー!」

(*゚∀゚)「つ?」


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 20:33:23.03 ID:lG6SUqvL0

 その硬質なひびきにおもわず首をかしげる。あたたかい日溜まりに似合わない、刃物のきっさきのような音だった。

ミ,,゚Д゚彡「二番目にきたから、すうじのにから、ツー!」

(*゚∀゚)「……おれ、別になまえ欲しくなんか、」

ミ,,゚Д゚彡「でもツーだから! ツー!」

(*゚∀゚)「ツー」

(*゚∀゚)(ツー)

(*゚∀゚)(ツー)

(*゚∀゚)(格好良い、な)

('A`)「いぬ、ねこ、おやつ食べようか」

 白いシャツの袖を捲ったおにがとびらを押し開けてあらわれる。
 いぬとねこはがばと起きあがった。

ミ*゚Д゚彡「おやつ?!」

('A`)「ドーナッツ揚げたからね」


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 20:36:40.18 ID:lG6SUqvL0

 ねこはおやつというのは寡聞にしてしらなかったけれど、甘いものを食べられるなら大好きだった。
 いぬと共におにの足元にまとわりつくようにして、ダイニングへ向かう。甘い砂糖の香りと、はなの奥に溜まるあぶらの匂い。
 テーブルの上にどんと乗った大皿には、まるいドーナツがこんもりと乗っていた。

 おやつは食事では無いから、とおにも祈りをささげることはない。
 いぬだけが元気よく「いただきます」とれいの祈りをささげると、さんにんが一斉にドーナツに手をのばした。

 一日二食と毎日のおやつ。全部おにの手作りで、けれどにくが食卓に並ぶことはけっしてなかった。
 良くても、近くのかわからいぬやねこがとってきたさかなが並ぶていど。
 菜食主義者っていうのは本当かもしれないナ、とねこはおもいはじめていた。

 おにの手は日に当たっているのに驚くほど冷たくてしろくて、ねこの頭をなでる時も、おにの手が毛をかき分けてはだにあたるたびにびっくりしてしまう。

(*゚∀゚)(けど、)

(*゚∀゚)(……どうせ死ぬなら、おにに喰われたい)

(*゚∀゚)(ナ)

 ああ、こいつになら。こいつに食って貰えるなら幸せだろうナ、と思うようになった。
 いぬに食べてもらってもいい。


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 20:38:36.20 ID:lG6SUqvL0

(*゚∀゚)(いや)

(*゚∀゚)(おれは、たぶん)

(*゚∀゚)(このふたりに喰ってもらいたいんだ)

 そうやって死ねたら、この上なく幸せだと、思うように。

(*゚∀゚)(……そういや)

(*゚∀゚)(何で死にたいんだっけ)

(*゚∀゚)(おれは)


(* ∀ )(……わたしは)








34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 20:40:54.45 ID:lG6SUqvL0


**


川 ゚ -゚)「わさわさ、もふもふ」

(*゚∀゚)「……」

川 ゚ -゚)「けど、ぼさぼさだなぁ、きみ」

 深く黒い瞳が、宝石のようだと思った。象牙のように肌理のこまかい肌にはえる黒い黒い髪。
 そのおんなのひとは、棒読みのようなことばを選んでいるようなしゃべりかたでねこの毛をかき回していた。
 その冷たい手から逃れようと首を振ったねこは、東洋人だ、と目を細める。

 独特の無表情に光の少ない光彩が乗った黒く鋭い目。染めぬいた絹糸より黒い髪。おさないころ何度か会ったことがあった。
 ただ、その記憶とめのまえの女性とは決定的な差異があって。お昼前のたいようの光でさえ吹いこんでしまいそうなまっくろのつの。

(*゚∀゚)(おにと、おんなじ、だ)

 思いながら、首を傾げる。おにの友人だろうか。けっこうな間おにの屋敷に住み着いているけれど、おにに友人が訪ねてきたことは一度だってなかった。
 友達が居ないんだナ、とねこが言うと、寂しいやつだから、といぬが眉をよせた。

(*゚∀゚)「あんた誰だー?」

川 ゚ -゚)「ドクオの友人さ」

ミ,,゚Д゚彡「どく、お?」


40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 20:48:57.09 ID:lG6SUqvL0

 ねこのとなりでいぬも首を傾けた。
 ふたりそろって首を傾げるいぬとねこを見て、女性はくっくと笑う。そうさ、ドクオ、知らないかい? と吟じるような言葉が言った。

('A`)「クーさん? 来てたの」

 奥のとびらを押し開けて、おにがひょこりと顔を出す。
 困ったようにまなじりを下げて、「いつのまに入ってきたんだよ」と女性に投げかけた。

('A`)「ベル、鳴らせば出たのに」

川 ゚ -゚)「すまない」

ミ,,゚Д゚彡(*゚∀゚)「「……?」」

('A`)「あー、えっと、おれの友達のクー・スナオ、さんです」

 つ、と右手を差し出して掌で女性を示す。いぬとねこはもういちど首を傾げた。
 上品なドレスが微妙に『はまっていない』女性は、両手を腿にそえてゆったりと礼をする。友愛礼と呼ばれるものだったが、ねこは知らない。たださらりと黒い
 髪が肩からたれておちるのを見ていた。

川 ゚ -゚)「素直 空だ。以後お見知り置きを」

(*゚∀゚)(きれいなひとだ)



41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 20:52:32.47 ID:lG6SUqvL0

 ぱちくりと瞬きをくりかえす。となりのいぬはすこし足りないように「こちらこそ!」とうなづいた。
 そんないぬとねこの頭のうえに、おにの冷たい手がのる。

('A`)「こっちがいぬで、こっちがねこ」

ミ,,゚Д゚彡「フサだから!」

(*゚∀゚)「ツーだぞ!」

 てをあげて名乗りを上げるふたりを女性は楽しそうに見て、また少しだけ笑った。

川 ゚ -゚)「フサにツーか、……ツー、後で毛を切ってあげるよ」

(*゚∀゚)「?」

川 ゚ -゚)「整えたら、君はきっとかわいくなるね。ドクオはそういうのに無頓着だからいけない」

('A`)「うるさいなぁ」

 揶揄するような視線におにはまゆをよせる。ああ、ドクオというのはおにのなまえに違いない、とねこはようやく気づいた。
 はじめてきいたナ、とくちびるを軽くかむ。


43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 20:57:25.01 ID:lG6SUqvL0

('A`)「それより、丁度良いからブーンを呼ばないか。久しぶりに集まってご飯しよう」

川 ゚ -゚)「ああ、それは良いなぁ! ショボンの奴も引っ張ってくれば良かった」

('A`)「ああ、ショボンくん。元気?」

川 ゚ -゚)「我が愛猫はご執心の本があると書斎にこもってしまうからこまるよ。
       今日も言ってきかないから放ってきたんだ。なに二さ日は平気さ。あれはけっこうしっかり者だからね」

('A`)「そうか」


ミ,,゚Д゚彡「……何?」

 ねこに毛を引っ張られたいぬが、あたまを傾けて言う。
 そのこえで初めてじぶんの手に気づいたねこは、あわてて指をひらいた。
 ちいさなてに視線をおとす。

(*゚∀゚)(……?)

ミ,,゚Д゚彡「どうしたの」

(*゚∀゚)「んー」

 おには女性と楽しそうに話していた。つまんないなぁ、といぬがつぶやく。つまんないナぁ、とねこも思った。
 例えばそのきぶんを、嫉妬とかいうふうにあらわすのだと賢しいねこは気づいていたけれど、それを認めてしまうのはなんだか違う気がして。
 ねこはもういちどいぬの毛をひっぱった。いぬはだまってひっぱられていた。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 21:01:45.88 ID:lG6SUqvL0

**


 クーさんに毛、切ってもらったら、街に降りてお使いをしてきてよ、とおには言った。

川 ゚ -゚)「フサ、きみも毛、切るかい? かわいくしてあげるよ」

ミ,,゚Д゚彡「いい」

川 ゚ -゚)「む、なんでだ?」

ミ,,゚Д゚彡「おれはフサだから。ふさふさじゃなけりゃフサじゃないの」

川 ゚ -゚)「……ふぅん。しかしきみ、それはあんまり酷いぞ。毛先だけでも整えてやるから、待ってなさい」

 しゃきんしゃきん、とねこの頭の上ではさみが踊る。
 ぱさりぱさりと板間にやわらかい毛が被さっていくのをぼうっと見ながら、切られた毛っていうのは体の一部なのかナ、とねこは考えていた。
 しばらくして、ねこといぬが交代する。

 ねこの時とは少し違う、じぃじぃという慎重な音。


48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 21:05:41.79 ID:lG6SUqvL0

(*゚∀゚)(指や足なら痛みが伴うから、体の一部だったって思えるかもしれない)

(*゚∀゚)(けど、毛は、神経もとおっていない。失う時の痛みもない。無機物。なのに)

(*゚∀゚)(これは、『わたしの毛』だ)

 座り込んで床に落ちた毛の束をつまみ上げて、落とす。ぱらぱらと床に散らばったそれは、独特のにおいがした。

(*゚∀゚)(例えばこれをおににたべてもらったら、おれを喰べてもらったことに、なるのかな)

(*゚∀゚)(……?)

(*゚∀゚)(いや、違う。そうだ、おれは喰べてもらいたいんじゃなくって)

 死にたいんだった、とねこは頭を振る。
 何で忘れていたのだったっけ、と。


49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 21:09:36.45 ID:lG6SUqvL0

川 ゚ -゚)「よし、完成。とてもかわいくなった」

ミ,,゚Д゚彡「……変わってないぞ?」

川 ゚ -゚)「そんなことはないさ。これでも私は髪結い床で働いていたんだからね」

ミ,,゚Д゚彡「かみゆ?」

川 ゚ -゚)「まぁ副業だがね。本業よりも儲かったさ」

('A`)「学者なんて儲からないのがセオリーだからね」

 シャツの袖を捲り上げたおにがほうきを片手に持って現れる。
 女性はまとめていた髪を外し、やぁとはさみを上下した。

('A`)「おとこまえになったな、ねこもいぬも」

川 ゚ -゚)「……きみなぁ」

('A`)「じゃあ、街に行ってさ、角のくつやの店主を呼んできてほしいんだ。アンドック・オーガストからだって言えば、きっと飛んでくるから」

 ねこを立たせて、布をはずしたいぬの肩をかるくはたく。
 おれとクーさんは料理をしなくちゃいけないからさ、と。


50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 21:12:20.94 ID:lG6SUqvL0

川 ゚ -゚)「え、私も料理するのか」

('A`)「いきなりきたんだから、それくらいはやってくれるだろ」

川 ゚ -゚)「客人扱いをしてくれないのは嬉しいがね……」

(*゚∀゚)(……)

ミ,,゚Д゚彡「ツー、行こうか」

(*゚∀゚)「ん、おう」

('A`)「はい、いってらっしゃい」





51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 21:15:34.80 ID:lG6SUqvL0




**


 おにが住んで、いぬとねこが住み着いている屋敷は森の奥にあって、ねこが何となくみょうだと感じるその森を出れば、すぐに街にでることができる。
 太陽がふたりのあたまの上でゆぅらりと照っていた。街には人が溢れ、せわしないようすで行き交っている。

(*゚∀゚)「……くつや?」

ミ,,゚Д゚彡「くつや?」

 その街角、ひとの流れが弱くなったところ。き彫りの看板がぶら下がった店をゆびさす。
 豪華ではないが、頑丈そうなドアがふたりの前にそびえ立つ。
 いぬが手をのばして、ドアを開いた。

( ^ω^)「いらっしゃいませですおー……お?」

 ふたりを迎えたのは、柔和な笑みを浮かべた初老の男性だった。
 丸みをおびた腹部ごしにねこといぬを見下ろして、笑んだ顔のまま首を傾げる。


52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 21:19:11.15 ID:lG6SUqvL0
( ^ω^)「こりゃまた、珍しいお客さんだお? おくつが?」

ミ,,゚Д゚彡「違うから!」

( ^ω^)「お?」

(*゚∀゚)「アンドック・オーガストからの使いだぞー」

( ^ω^)「お?! ドクオ?!」

 朗らかな表情を更に明るく輝かせた男性は、手に持っていた靴墨をゆっくりと机の上に置き、いぬとねこの肩を抱く。墨のにおいがねこの鼻をくすぐった。
 しわの刻まれたかおに子供のような笑顔を浮かべた男性は、「そりゃ急がなきゃ」と慌てて身支度を始める。

(* ^ω^)「あいつからのお呼ばれなんて何年ぶりかおー。ドクオ、元気かお? 君達は? ドクオの友達か何かかお?」

 男性のその言葉に、いぬとねこは顔を見合わせて首をかしげた。
 友達? 友達カナァ、とねこは眉を寄せる。いぬも同様だった。同じ屋敷に住み着いてはいるけれど、と言いかけて、ねこはくちをつぐむ。
 そんなふたりをみた男性は同じく首をかしげたが、また慌しく身支度を始めた。「まぁ、そんなことはどうでもいいお、ね?」というつぶやきがきこえた。

(* ^ω^)「だって、僕だってドクオの友達なのか、良く分かんないんだお」

( ^ω^)「……ツンは、ドクオとクーの友達だったけど」

 男性の手には、小さな黒い染みができていて、なんだかそれが気味悪く、ねこはいぬの毛を引いた。
 いたい、と小さな悲鳴。眉をしかめたいぬは、けれどしばらくしてその手を取って、ぎゅっと握り締めた。
 男性は楽しそうに悲鳴を上げて、店先に掛かった看板を「只今準備中」に変える。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 21:22:49.05 ID:lG6SUqvL0
 

 男性がきっちりと身なりを整えた頃には、たいようが少しかたぶきだしていた。
 花が年中咲き乱れた花畑も、空を抱きかかえるような木達も、男性は懐かしそうな顔をして眺め歩く。重たそうな体からは伺えない、軽快なあしどりだった。
 先を行っては時々振り返るいぬとねこにやわらかい笑みを返す余裕さえある。

(* ^ω^)「懐かしいおー。小さい頃は良く此処でドクオと遊んだもんだお」

(*゚∀゚)「おにと?」

(* ^ω^)「おっ。鬼ごっことか、人数が居たらかくれんぼとか。あと相撲なんかもやったおー」

 家に篭りきりのあのおにが、と男性のことばにねこは眼をみはる。

(* ^ω^)「っていうか、僕が引っ張り出したんだけどお。まだ小さい僕相手に、あいつ全く容赦なく取っ組み合いとか仕掛けてくるから全く参ったお」

(*゚∀゚)「……?」

( ^ω^)「一回相撲でも誘ってみたら、案外相手してくれるもんだお?」

ミ,,゚Д゚彡「そうなのかー?」

 そうは思えないけど、という言を暗に隠して、いぬが頷いた。楽しそうに『ドクオ』との思い出を語る男性がなんだか疎ましくて、ねこは顔をしかめた。
 何か変だナ、と思う。何で今日はこんなにむかむかするんだろう。
 なんだか知らないおにが居たようで、気持ちが悪いのだ。


56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 21:27:51.18 ID:lG6SUqvL0

(*゚∀゚)(嫉妬、は何だか違う)

(*゚∀゚)(気持ち悪い)

 長い間一緒だと思ってたのに。
 いろんな事をしっていると思っていたのに。
 もしかしたら、それは思い上がりだったのかもしれない、と思うと。

(*゚∀゚)(あ、)

(*゚∀゚)(わかった)

 死にたい、と思った。
 久しぶりだナ、とねこは空を見上げる。隣でいぬは俯いていた。







60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 21:31:32.41 ID:lG6SUqvL0
**


川 ゚ -゚)「やぁ! ブーン、随分久しぶりだな!」

( ^ω^)「……クー?!」

('A`)「今日行き成りクーさんが来てさ、せっかくだから集まろうと思って。だからブーン呼んだんだ」

(* ^ω^)「ドクオ! 久しぶりだおー!! クーも、相変わらず綺麗で、」

川 ゚ -゚)「お前は老けたな、ブーン」

(* ^ω^)「そりゃあ当たり前だお。お前等と一緒にすんなお」

('A`)「うん、確かに。何かこう、タメ口聞くのがはばかられるんだけど……」

川 ゚ -゚)「気にすんなお、気持ち悪い。ブーンはブーンだお」

(* ^ω^)「お前が言うなお、クー。後、声似てない」

川 ゚ -゚)「ちっ」


64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 21:34:23.95 ID:lG6SUqvL0

('A`)「そんなことよりさ、ご飯の用意出来たから、来いよ。ほら」

川 ゚ -゚)「あれ、というか、ブーン、ツンは?」

('A`)「あ」

( ^ω^)「……ツンは」

川 ゚ -゚)「?」






「五年前、死んだお」






**



67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 21:37:50.18 ID:lG6SUqvL0

 夕食が終っても、三人の談笑は終らない。時折暗い顔を交えながらも、蝋燭の元、和やかな声が響いてくる。
 部屋の端で寝転がったいぬとねこはころんころんと上になったり下になったりしながらじゃれあっていた。
 何時もなら夕食後はおにの授業の時間。けれど今日は、どうやらそれはお預けらしい。旧友らしき三人のじゃまをするほど二人は節操が無いわけではなかった。
 
ミ,,゚Д゚彡「……暇だからー」

(*゚∀゚)「暇だなー」

ミ,,゚Д゚彡「ツー、何かお話ないかー?」

(*゚∀゚)「おれ、本読むの嫌いなんだ」

ミ,,゚Д゚彡「む、おれもだ」

(*゚∀゚)「文字って面倒だよなー」

ミ,,゚Д゚彡「もー、じ?」

 いぬはかきりと首をかたぶけた。
 もじっていうのはなー、というねこの簡易授業が始まる。いぬはあたまが良くない。と、いうよりも、絶対に知識が足りていない。
 足りない、っていうのは言い得て妙だナ、と指を振り振り、ねこは思った。


69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 21:40:52.28 ID:lG6SUqvL0


 三人の談笑は、ふたりが部屋の端っこで折り重なって眠った後も、男性が家路に着くまで続いた。
 陽気な足取で夜道を歩く友人の背中を見送ったおにと女性は、顔を見合わせてぼそぼそと話す。
 酒を飲まない男性の足取が酷く不安定だったこと。袖口から覗いた腕に浮かんでいた痣の色のこと。

 随分前からじわじわとこの国を蝕んでいる、黒い病のこと。


川 ゚ -゚)「ツンが、死痣病で?」

('A`)「うん。五年前に」

川 ゚ -゚)「そうか……死に目に会えなかったのは、残念だな」

('A`)「あと、ブーンも多分」

川 ゚ -゚)「……特効薬は?」

('A`)「まだ出来てない。この国の技術じゃあ、あと十年は掛かるとおれは見てる」

川 ゚ -゚)「十年も、ブーンがもつかい?」

('A`)「ううん。多分、一年ももたないんだ。だけどね、」

川 ゚ -゚)「……被害者は減らしたい? ブーンは死ぬのに?」


72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 21:44:19.46 ID:lG6SUqvL0

 おにはいぬの寝顔を見遣った。ねこに覆いかぶさられて、ぐうぐぅと苦しげに呻いている。後でベットに運んでやろう、とおには内心で思った。
 それから、「そうだよ」と消え入りそうな声で呟く。
 まだその頭に黒い黒いつのが生えていなかった頃を思い出しながら。それから、女性の頭に黒い黒いつのが生えていなかった頃を想像しながら。

('A`)「だって、おれは医者だったんだ」

川 ゚ -゚)「私はただの学者だ。今も、昔も」

('A`)「知ってる」

川 ゚ -゚)「……まぁ、そうだろうな」

('A`)「うん。そうだ。だから、近いうちにクーさんを訪ねようと思ってたんだ。クーさんの国は、本当に、そっちの技術が進んでいるから」

川 ゚ -゚)「ああ、そうだったな。あの頃で私が居たんだ。今となっては」

('A`)「素晴らしいだろうね。けど、あの国に行くには、いぬやねこを連れてはいけない」

川 ゚ -゚)「……うん。無論、ショボンもだな。あいつが死んだら、私はきっと泣いてしまうよ」

('A`)「こいつらが、死んでも」

川 ゚ -゚)「少なくともお前は泣くね。私も、泣くかも知れない」

('A`)「……そうだね」


74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 21:48:24.37 ID:lG6SUqvL0






 そして朝、いぬとねこが眠っているころ、ふたりはそうっとこの屋敷を出た。
 それを、いぬとねこはまだ知らない。
 遠く遠く、山を五つ越えた所にある屋敷で、本に囲まれた青年が一人、くしゃみをして洟をすすったことも。







76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 21:51:23.34 ID:lG6SUqvL0
**

 誰も居ない屋敷の部屋に座り込んで、ねこは手の中の紙片に眼を落とす。隣ではまだ目覚めないいぬが幸せそうな寝顔をみせていた。
 その長いふさふさの毛を撫でて、ねこは、

(*゚∀゚)「なぁ、なんでいない」

(*゚∀゚)「なぁ、おれ、この頃、食べてもらわなくてもいいかなぁって思えるようになったんだ」

(*゚∀゚)「おにと、いぬと、さんにんでいれたらなぁって、思ってたんだ」

(*゚∀゚)「なのに、なぁ、おい」

 ああ、こんなことなら食べてもらえばよかったナ。
 にぎり締めた紙が、くしゃりと悲鳴をあげて歪んだ。その中に書いてある文字を、ねこはよむことができない。
 ねこが読むことができるのは、ずっとまえに家出した国のもじだけだ。祖国の家庭教師は、祖国のもじしか教えてくれなかった。
 それがひどく口惜しい。ほら、やっぱり、教育なんていみがない。

 おにの字さえよむことができないのに。

(*゚∀゚)(この国の文字を、何故教えてくれなかった)

(*゚∀゚)(ねぇ、おれが知っているのは、わたしの国の)



(* ∀ )(なぁ、おれたちになんて、)


**

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 21:53:16.17 ID:lG6SUqvL0



(#´・ω・`)「……あの馬鹿お師匠様は、本当に、本当に死ねばいいのに」

 ざくざく、ざくざく、と草を踏みしめ踏みしめ、歩く青年が居た。
 片手に紙片を握り締め、肩をいきらせて、一歩一歩に怒りを込めるように歩く。

(#´・ω・`)「まだ、教えてもらいたいこと、一杯あったってのに。なんだって、いきなり居なくなっちゃうんだ」

(#´・ω;`)「傷腐病の薬の作り方だって、まだ教わっていない。緋色硝子の精製の仕方もまだだ。どころか、瑠璃の作り方だってまだ良くわかっていないのに!」

(#´・ω;`)「……」

 片目に浮いた涙をシャツの袖で乱暴に拭い、怒りにまかせてずんずん歩く。
 年中花の咲き続ける花畑を。不気味に風に揺れる木々の間を。ずんずんと。ずんずんと。

(#´・ω・`)「そりゃあ、死痣病の特効薬作ってくるって、立派だ。尊敬するよ、あんたら。僕の誇りだ。お師匠様も、ドクオさんも」

(#´・ω・`)「だけどさぁ、なぁ、なんだって僕を置いていったんだ。じゃまか? なぁ、僕はじゃまだったか?」

(´・ω・`)「なぁ」


81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 21:55:20.66 ID:lG6SUqvL0
 足を止めて、其処を見上げる。
 古びて、寂れたように見える屋敷。豪奢だけれど、荘厳だけれど、何だか寂しそうな印象を受ける。
 手入れをされた様子の無い庭は、けれど草木が遠慮をしたように何処か調和が見れた。

 古いながらも見上げるような木の扉の前に立ち、青年は大きく息を吐く。
 手元の紙片に目を落とした。



『親愛なる我が愛猫、ショボンへ

 少々用事が出来た。死痣病って君、知っているよな?
 という訳で祖国に友人とともに一旦帰ることになった。家を開ける。長く掛かるかもしれないから、ハウスメイキングは頼まない。
 君もそろそろ一人前の学術士だ。私達と同じようにつのを生やす事も、人を助けることも出来るだろう。まぁつのをはやすのはお薦めしない。好きにするといいけれどね。
 もしも君が置いていくことを許してくれて、なおかつ頼まれごとを引き受けてくれる寛大な心を所持しているならば、一つお願いがある。
 私の友人、ドクオの屋敷に住み着いた、ねこといぬのことだ。
 彼らはまだ幼い。どれくらい幼いかというと、私が君を拾ってきたときくらい幼い。ぶっちゃけまだ自力でご飯も作れない。
 要するに、彼らの世話をしてやってほしいのだ。
 彼らは良い子だ。そしてその良い子達の命を、君の寛大な心が握っている。あの子達は多分、君かドクオか私が行くまで、その場を動かないよ?

 さて、そんな押し付けがましい言葉で君への手紙を終らせるのも心苦しい。

 君は、とても良い弟子だった。ご飯を作ってくれた。弟子の癖に、私にこの国の文字を教えてくれた。
 まだ文法は苦手だがね。この手紙の文が拙くても、許してくれよ。
 ショボン、わたしは君がとても大切だったよ。友人と良い勝負だった。
 ああ、出来れば、緋色硝子の精製の仕方をきちんと教えてから発ちたかったけれど、一刻も惜しいんだ。ごめんね。
 北の奥から三番目の本棚の下から五段目、右から八冊目の『原色硝子』を読むといい。あれは分かりやすく書いて在るから。

 君の愛するお師匠様、クーより』


83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 21:57:11.03 ID:lG6SUqvL0



(#´;ω;`)「文法がなってないんだよ。物覚えが、悪いんだから……!」

 歯を噛み締めて、握り締めた拳で扉を叩く。
 彼は数分間、そうしていた。

 それから、顔を上げて扉を開く。おもおもしい扉を開くと、日光が豊かに差し込むホールが彼を迎えた。
 黄色い硝子をはめ込んだだけのシンプルなステンドグラスを通したひかりが、毛足のみじかいじゅうたんを浮かび上がらせる。
 其の上に折り重なるようにして寝転んだ、二人の子供がいた。

 ねこといぬ、か。と青年は溜息をつく。

 ひとりはふさふさとした髪をじゅうたんにこすり付けて、もうひとりに寄りかかられて苦しいのかぐぅぐうと濁った声を上げている。
 もうひとりは短い髪と細い体をひとりにのせて今にも泣きそうな寝顔を見せている。

(´・ω・`)「あの人達って親しい子供をいぬとかねことか呼ぶから嫌だ。僕だってもう大人なのに、愛猫、だって。冗談じゃない」


85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 21:58:02.90 ID:lG6SUqvL0

 見ると、今にも泣きそうなほうの小さな手に、白い紙が握られていた。
 純粋な知的好奇心から、青年はそうっとその紙片を引き抜いて、広げる。若しかしたら、という希望も、無かったとはいえない。

(´・ω・`)「……」

(´・ω・`)「……ああ、そうか」

 それから、子供達を起こそうと青年は片膝をついた。

(´・ω・`)「楽しかったってさ、良かったね」

 微笑みかけて、まず上に乗った子から降ろさねば、と細い肩に手を乗せる。
 う、と呻く声がした。起こしたか、と青年は思わず手をのけてから、いやいや起こすんだから、と元に戻す。
 薄くあいた口が、浮上しかけた意識を小さく洩らした。

(*‐∀‐)「……こくごも、おしえろよ……ばーか」





86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 21:59:05.13 ID:lG6SUqvL0




『フサ、ツーへ

 ごめんね。
 帰ったら因数分解を教えてあげるから、ちょっとだけ許して下さい』







88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 22:00:04.47 ID:lG6SUqvL0

(*゚∀゚)ねこは食べてほしいようです

end

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 22:00:50.84 ID:lG6SUqvL0

以上で終了です。
支援等有難う御座いました。最後ぶっちゃけ投げやりでした。ごめんなさい。


92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 22:02:15.10 ID:u8vXdv06O
おつー

なんでツーは食べられたがってたの?
ドクオ達はそのまんまの意味で鬼?

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 22:03:54.20 ID:kv0vuoP+O
乙ー。色々謎が残ったんだぜ

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 22:05:57.41 ID:lG6SUqvL0
ID変わって無いかな…

>>92
ツーはただ単に生きてるのが厭になった奴です
ドクオとクーは、錬金術師みたいなもので、不老不死の副作用でつの生えた、みたいな風に

102 名前: ◆RMvPkPTLmY :2009/06/14(日) 22:11:24.45 ID:lG6SUqvL0
謎が残った…だと?
何処に謎要素が…

取り合えず酉を晒して風呂に入ってきます

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 22:28:37.10 ID:kv0vuoP+O
謎って言っても>>101でだいたい解決したんだが
『ねこ』が本名なのか、とかなんでブーンは友達かどうか微妙なのかとか

とにかくもっと読みたかった

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/14(日) 22:48:32.97 ID:lG6SUqvL0
>>107
会いに行こうとすれば会いに行けるのに、
五年以上も会いに行こうとしなかった間柄っていうのは彼なりの友人の定義から外れるんでしょう

ツーの本名は考えてませんでしたね
名前を言ったら知れるような名家のお嬢様だった、とかは考えてたんですが

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