mesimarja
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超光戦姫ツンデレイナーのようです
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:00:18.39 ID:x7XZZy3/O
盛岡デミタスは気が立っていた。
取り立てて何か理由がある訳ではない。


朝起きていきなり妻から離婚届を突きつけられたり、

気に食わない上司に勘違いで三時間意味の無い説教をくらったあげく謝罪されなかったり、

ほんの少しだけ路肩に停めていた車が駐禁を取られた上にその後トラックの追突を受けて真っ二つに引き裂かれたとしても、

彼にとってはよくある不運が少し重なった程度のことでしかなかった。

盛岡デミタスは気が弱いが、自他共に認める温厚な男だ。
そして、おおむねそれしか取り柄が無い男でもあった。

アルコールの臭いがする、というよりアルコール臭そのものの息を吐く。

(´・_ゝ・`)「何だってんだ、クソッ」

忌々しげに路傍に唾を吐き捨てる。

意味が無い。
こんな苛立ちは意味が無い。
自分の不運を嘆くのはとうの昔に飽いていたはずだ。
ではこれは一体何なのか。
単に腹の虫の居所が悪いだけだろうか?


3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:01:43.61 ID:x7XZZy3/O
(´・_ゝ・`)「……いや、違うな」

盛岡デミタスは無駄に勘の良い男であった。
そして陰謀論が好きな男でもあった。
誰かが自分を操っている。何らかの目的で。

(´・_ゝ・`)「つまるところ、これは現代社会にはびこる“理由無き悪”の片鱗なのだ。
        惰弱な凡人はこれに容易く呑まれ、従い、そして法を犯す」

半分以上死んでいる脳内で巡る思考を、ぶつぶつとそのまま口に出す。
既に時刻は深夜。
はたから見れば立派な変人だろう。

(#´・_ゝ・`)「卑劣な……」

拳をわなわなと震わせる。

(#´・_ゝ・`)「何と卑劣な。人の心を……何だと思ってるんだ」

(#´・_ゝ・`)「誰か知らんが出てこいや!! 俺がその腐った性根を叩き直してやる!!」

天に浮かぶ月へと拳を突きつけ、声高に叫ぶ。
それは普段ならば、勘違いした酔っ払いの間抜けな世迷い言でしかなかったのだが──

今夜は少しばかり事情が違った。


\(^o^)/「フフフ」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:03:43.45 ID:x7XZZy3/O
(´・_ゝ・`)「ぁ?」

気付けば目の前に妙な男が立っていた。
くたびれた服に薄っぺらい笑顔、珍妙なポーズ。
月明かりに照らされたそれは、何とも滑稽であり、不気味でもあった。
路地裏の空気が一変する。少なくともデミタスにはそう感じられた。

男は笑顔のまま、こちらに歩み寄ってくる。

\(^o^)/「フフフフ」

(´・_ゝ・`)「……なるほど、貴様か」

足を引き、拳を構える。空手の一般的な型だ。
デミタスには多少の心得があった。
高校の時に入部して、三日目に足を疲労骨折して退部した程度の経験だが、
それでも並の人間よりは動けるだろうと踏む。

(#´・_ゝ・`)「はぁッ!!」

強烈な呼気と共に、突きを繰り出す。

\(^o^)/「オワタ」

男はぺしんと蠅でも振り払うように拳をはたき落とし、同じく腕を突き出す。

(´゚_ゝ゚`)「ぐほっ!?」

衝撃を受け、デミタスは顔を歪める。
視線を下ろすと、男の腕は──比喩ではなく、本当に──腹に突き刺さっていた。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:06:08.15 ID:x7XZZy3/O
(;´・_ゝ・`)「んなっ……!?」

異常な光景に目眩を覚える。
拳の付け根辺りまで見事に腹部に埋まっているというのに、痛みは全く無い。
痛みの代わりに、猛烈な喪失感がデミタスを襲う。

(´ _ゝ `)「ぐ……ぁ……あああ……!!」

\(^o^)/「フフフ」

寒気にも似た感触は、拳が突き刺さった辺りから全身に広がっていく。
自分が自分ではなくなっていく。

デミタスは異常な事態に錯乱しながらも、
頭のどこかでキアヌ・リーブスが出てた映画にこんなのあったなと暢気に考えていた。


 「ぉぉぉ────」


ふと、風の音が聞こえた。
久しく聞いた記憶の無い、地元で吹く風の音に似ていた。山から降りてくる乾いた音色。

 「ぉぉぉおおおお──」

音は力を増していく。あまり良い思い出の無い、自らの生まれた土地。
そんな自分でも死の間際には故郷を想うのか。デミタスは妙な感慨を覚えていた。

 「ぉぉおおおおおおおおおおおおおお」


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:08:13.06 ID:x7XZZy3/O
(´ _ゝ `)「…………?」

抗う術もなく、意識が遠のいていく。
その一方で、風の音はますます力強く鼓膜を震わせている。


いや、風の音ではない。
それは人の声だった。


ξ#゚⊿゚)ξ「──りゃあああああああああああああああああああッ!!!!」

ずだんっ!

重たい何かがアスファルトに激突したような、豪快な音が路地裏を震わせる。
それと同時に、視覚が復活した。
息が上がり、額から汗がどっと吹き出す。

(;´・_ゝ・`)「……っ!?」

異様な光景だった。
今までも色々と異様だったが、新たに現れた少女(だと思う。多分)は、
それに輪をかけて異様だった。

少女は男と自分の間に、無骨な剣らしき物体を振り下ろした体勢のまま佇んでいる。
アスファルトに走ったヒビから察するに、相当な高さから落下してきたらしい。
そして少女は、特撮スーツのような奇怪な服を身に纏っていた。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:10:28.21 ID:x7XZZy3/O
少女はヘルメットから伸びた金色の髪を揺らし、こちらへと向き直る。

ξ゚⊿゚)ξ「…………」

けったいな姿とは裏腹に、顔つきは意外なほど可愛らしい。
中学生……いや、高校生くらいだろうか。どこか拗ねたように尖らせた唇は、年齢よりも雰囲気を幼くさせていた。
その一方で、強い光を宿した瞳は見る者にやや威圧感を与えている。

普通の娘だ。普通の服装ならば、再び街中で出会っても気付かないかもしれない。
少女は小さな唇を引き結び、白い手袋に包まれた手を伸ばしてくる。

ξ゚⊿゚)ξ「動かないで」

(;´・_ゝ・`)「……え゛っ!?」

その時になって気付いたが、自分の腹にはまだ男の腕が刺さったままだった。
二の腕の辺りで綺麗に切断されている。
普通の人間ならば吹き出るであろう血の気配も無く、ゴムのようにぶらぶらと揺れていた。

ξ゚⊿゚)ξ「えい」

(´゚_ゝ゚`)「ふぬぉ!?」

少女はそれをひっつかみ、乱暴に引き抜く。
叫んではみたが痛くもないし、腹に穴が空いている訳でもなかった。

ξ゚⊿゚)ξ「……平気そうね」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:12:56.60 ID:x7XZZy3/O
少女は静かに語り掛けてくる。
男の腕を手にした方の腕が(ややこしい)、淡く光り輝いていた。
その光にかき消されるように、男の腕が塵と化していく。

ξ゚⊿゚)ξ「逃げてください。危ないから」

そう呟くと同時、右腕を失った男が背後から襲いかかってくる。

(^o^)/「オワタァアアア!」

(;´・_ゝ・`)「!! 危な」

少女は背後を見もせずに右足を後ろに跳ね上げ、カカトで男の顎をかち上げた。
衝撃で宙に浮いた男の頭上に、振り向きざまに拳を叩き込んで地面に打ち付け、手にした剣を逆手に持ち替えつつ──
杭のように深々と突き刺す。

(;´・_ゝ・`)「……い」

ξ゚⊿゚)ξ「馬鹿言わないでよ、油断なんかしてないよ。
      だって逃がす方が先でしょ……いやだからホントだってば」

ゴキブリを思わせる動きでばたつく男をよそに、独り言のように少女が呟く。実際独り言のようだが。
しかし、続く言葉ははっきりとこちらに向けられていた。

ξ゚⊿゚)ξ「おじさん、逃げて下さい。こんな変なのに付き合う理由なんて無いでしょう?」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:14:44.87 ID:x7XZZy3/O
俺はおじさんじゃない──
今年で29になるデミタスは、そう言い返したくなる衝動をぐっとこらえた。
すぐに逃げた方が良い。
それは彼とて十分に察していたが、意志と反して口からは支離滅裂な言葉が吐き出されていく。

(;´・_ゝ・`)「だ、だけど、良いのかい? あの、これは一体……」

ξ゚⊿゚)ξ「夢ですよ、酔ってますね? 帰って寝たら、全ていつも通り。だから逃げて下さい」

少女は全身から淡い光を放ちながら、根気よく語り掛ける。
その声音はこの小汚い路地裏には不似合いな程に力強く、清らかだった。
光の粒子は剣へと伝わり、男が激しく体を震わせている。

──何だか知らないが助かったらしい。
今更彼はそれを理解した。

(;´・_ゝ・`)「き……君は、一体……?」

問われ、少女は視線をこちらに向ける。
彼女はどことなく苦笑して、口を開いた。


ξ゚⊿゚)ξ「私ですか? 私は……」

ξ゚⊿゚)ξ「超光戦姫。超光戦姫ツンデレイナーだそうですよ」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:17:15.64 ID:x7XZZy3/O
 



超光戦姫ツンデレイナー 

ホワイト・ウイルス・クリスマスのようです

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:18:33.69 ID:x7XZZy3/O
ξ゚⊿゚)ξ「……やれやれ」

ようやく逃げ出した酔っ払いを見送り、ため息を零す。
キラキラと光の粒になって消えていくウイルスの姿を横目に、私は剣を虚空へと消し去った。

ξう⊿ )ξ「ふぁああ……ぅ」

瞼をこすり口元を覆う。
スーツの効果ではごまかしきれない眠気が、口からあくびとなって漏れ出た。
目尻に溜まった涙で視界が歪む。

川 ゚ -゚)『眠いか?』

ξ゚⊿゚)ξ「まぁ、そりゃあね。夜中に叩き起こされたら」

どんな時でもトーンの変わらない平坦な声が鼓膜を震わせる。
わずかに電子的な雑音を含んだそれに、私はちょっぴり非難を込めて返事をした。

川 ゚ -゚)『すまないな』

やはり簡潔に、一言だけ。
だが不思議と嫌な気分はしなかった。
それが彼女にとっては投げやりな対応ではないらしいということが、ここ数ヶ月の付き合いで分かってきたからかもしれない。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:20:17.48 ID:x7XZZy3/O
彼女の名前は素直クール。
夏休みの終わりに突如現れた、自称宇宙人だ。
綺麗な黒いロングヘアとスタイルの良さをいやらしいまでに兼ね備えた女性だが、今その姿は無い。
スーツの機能で離れた場所から通信しているためである。

ξ゚⊿゚)ξ「いいよ、連中に時間帯指定なんて出来ないし」

明日(というかもう今日だ)の一時限目は数学だ。
どうせすぐには眠れないし、帰ったら少し小テストの勉強でもすべきだろうか。
いざ帰ったらダラダラ漫画でも読んでいるだけかもしれないが。

( ゚д゚ )『動きが大分洗練されてきたな。ユニットの動作も安定している』

唐突に異なる声が割り込んでくる。
低いがあまり落ち着きを感じさせない、壮年の男の声。
名前は……確かミルナだったか。自分もクーも博士としか呼ばないのでうろ覚えだ。

博士という呼び名の通り、このへんてこなスーツ『レイナーユニット』の製作者らしい。

ξ゚⊿゚)ξ「……と言われても、あんまりピンと来ないけど」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:21:47.93 ID:x7XZZy3/O
呟いて、首筋を掻く。
全身のほとんどをカバーしているこのパワードスーツは、
何というか……私のツンデレパワーだか精神力だか、そういう胡散臭いモノをエネルギーに稼働しているらしい。

( ゚д゚ )『今消したウイルスは、最初の相手に比べても遜色ないエネルギーを蓄えていたはずだ。
     それを難なく一蹴したではないか。君のユニットを操る力が成長したという、何よりの証拠だろう』

ξ゚⊿゚)ξ「その蓄えていたエネルギーを使われる前に倒しただけだよ。──変身解除」

身体から力を抜く。
頭の中で、普段の自分を思い描く。
全身を覆っていたスーツはパキンと音を立てて、光の欠片となる。

後に残ったのはどこにでもいる、平凡な女子高生だった。
寝間着姿の。

ξ゚⊿゚)ξ「……」

/ξ^o^)ξ\「うわあああああん着替えんの忘れてたああああ!!」

夜空を見上げ頭を抱える。
辛気くさい路地裏に、中学の頃から変わらない黄色いくまさんパジャマで立ちつくすハメになるとは。
いい加減これも卒業しようと思っていた矢先の寝間着外出であった。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:23:23.62 ID:x7XZZy3/O
〔川 ゚ -゚)〕『何か不都合があるのか? 裏山にパジャマ姿で隕石を見に行く野球少年もいるじゃないか』

ξ; ⊿ )ξ「ちゃんとママに話しかけなさい。不都合大アリよ、こんなパジャマと部屋履きスリッパで往来歩くなんて……」

〔川 ゚ -゚)〕『もう一度変身して飛んで帰れば良いじゃないか』

ξ;゚⊿゚)ξ「それは……簡単に言うけど結構しんどいのよあれ」

〔( ゚д゚ )〕『自信を持て、可愛いし似合ってるぞ。少なくとも私は好みだ』

ξ# ⊿ )ξ「そういう問題じゃねーよ!」

叫びつつ、目の前に浮かぶボーリング玉に羽がついたような形状の物体に拳を打ち付ける。
ごいんと響く鈍い音。硬い手応え。凄く痛い。

〔( ゚д゚ )〕『ユニットは精密機器だ。乱暴に扱わないで欲しいぞ』

物体から真面目くさった音声が流れる。
レイナーユニットは変身時以外は、この妙な物体に姿を変えている。
というよりは装着する時だけ妙なスーツに変化すると言うべきか。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:24:59.01 ID:x7XZZy3/O
ξ゚⊿゚)ξ「どつき合いの為の道具に乱暴もへったくれも無いでしょ」

拳をさすり周囲を見回す。
人の気配は無い。向こうの曲がり角で、白い蛍光灯がチカチカと明滅している。
家からそう離れてはいない区画だ、歩いて帰ろうか。
夜道の一人歩きは気が進まないが……いざとなったらそこに浮いている精密機器の力を借りれば良いだろう。

〔( ゚д゚ )〕『聞き捨てならんな。確かにこのレイナーユニット、DATウイルスを駆逐する為に造られた兵器だが、その可能性は──』

ξ゚⊿゚)ξ「あーはいはいその辺は良いからどうでm」

ξ><)ξ;;,「──っぶぇっきし!!」

〔川 ゚ -゚)〕『む、大丈夫か?』

ξ゚⊿゚)ξ「ぅう……平気。さすがに冷えるわね」

今更になって肌寒くなってきた。
二の腕をさすって体を縮こまらせながら、眼を細める。
見上げた空は星座が見えるほど綺麗ではなかったが、冬の到来に相応しい寒々しさを感じさせる気がした。


ξ゚⊿゚)ξ「……年末も間近、か」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:26:33.29 ID:x7XZZy3/O
その意味の無い呟きは、うっすらと白い吐息に紛れて消えていく。
高校生、そしてツンデレイナーとして過ごす初めての年の瀬。

何も起きないと良いのだが。
そうもいかなそうな予感が、何となくしていた。


ξ゚⊿゚)ξ「憂鬱だなぁ、テスト」


最後に自己紹介をしておこう。
私の名前は津出 玲奈、皆からはツンと呼ばれている。
どこにでも転がっているような何の変哲もない高校一年生だが……

今は故あってヒーローの真似事をしていたりもする。
けして、好きでやってる訳じゃあない。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:28:03.52 ID:x7XZZy3/O
◆     ◇     ◆     ◇

( ゚д゚ )「惑星DAT。これは我々の母星の名だが……
     自慢じゃないけども、かなり高度な文化を保有していた星でね。人口規模はさして大きくなかったが、科学技術の卓越した星だった」

ξ;ー⊿ー)ξ「うー……これどう解くの?」

川 ゚ -゚)「ここを……こうして揃えて……ほら、さっきの公式が使えるようになるだろ」

( ゚д゚ )「しかし高度であるが故に、諸外惑星からの接触が絶えなかった。全宇連も無く、
     惑星間協定の類どころかそれに準ずる概念すら存在しなかった頃は戦争も大なり小なり巻き起こっていたそうだ。
     まあ……それが一層の技術発展に繋がっていたというのは皮肉な話だが」

ξ゚⊿゚)ξ「え? どれどれ」

川 ゚ -゚)「さっきページ開いてたじゃないか……あった、これだよ」

( ゚д゚ )「やがて他惑星は隷属を諦め、もっと平和的に惑星DATを相互利用しようとし始めた。
     生殖能力に長けているとは言い難かった我々DATの民は、紆余曲折はあれどそれを受け入れた」

ξ゚⊿゚)ξ「やったできたー」

川 ゚ -゚)「良いぞ、その調子だ」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:29:47.44 ID:x7XZZy3/O
( ゚д゚ )「そうして時が流れ、惑星DATには束の間の平和が訪れた。
     宇宙では覇権をかけて戦争が起きていた時も、AAの流出が少なかった我々は中立の立場を取っていた」

川 ゚ -゚)「しかし毎回大変だな、宿題というのも」

ξ゚⊿゚)ξ「これは宿題とはちょっと違うんだけどね……小テストの点が悪かったから、オマケ課題」

( ゚д゚ )「そんな中発生したのがDATウイルスだ。一体どんな経緯であんな代物が生まれたのかは知らない。
     諸外惑星からの攻撃かもしれないし、そうでないかもしれない」

川 ゚ -゚)「私達のせいで君の学生生活に支障が出るのは忍びない。出来うる限り協力させてもらおう」

ξ゚⊿゚)ξ「まー確かに支障は出まくってるけど」

( ゚д゚ )「この事態に対して、全宇連は……はっきり言ってまるで役に立たなかった。
     無理もないだろう、未だに足並みを揃えることさえままならない規模の組織が、ようやく発足したばかりの頃の話なのだからな」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:31:23.66 ID:x7XZZy3/O
( ゚д゚ )「だが、他の組織も捨て置いたところから見ると、あるいは滅びて構わないと判断されたのだろうな。
     その頃にはとうに、DATの技術は流出しきってしまっていた。経済の停滞、人口の減少、そしてそこに現れたあのウイルスだ。結果として、我々の星は滅んだ。あまりに呆気なく」

ξ゚⊿゚)ξ「あー、期末やだなー怖いなー」

川 ゚ -゚)「頑張れ」

ξ゚⊿゚)ξ「……あんがと」

( ゚д゚ )「ユニットは完成したが、故郷を救うことは出来なかった。
     しかしまだ終わった訳じゃない。私の憶測通り……ウイルスは星から星へと感染していったんだ。この悲劇を、食い止めるために。私達は宇宙を旅している」

ξ゚⊿゚)ξ「……。博士?」

( ゚д゚ )「何だね」

ξ゚⊿゚)ξ「説明もういいよ。あと次やる時はもっと簡潔に分かり易く、そんで気が散るからどっか外で呟いといて」

( ゚д゚ )「ちょっと外は寒いなぁ」

川 ゚ -゚)「さすがです博士」

( ゚д゚ )「何が」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:34:29.46 ID:x7XZZy3/O
ξ゚⊿゚)ξ「で、さっき何か言ってなかったっけ? ユニットがアップデートしたからどうのこうのと」

( ゚д゚ )「あ、ああ。新たに君に合わせて調整を加えてみた。今まで細かく変更していた部分も安定して動作すると思う」

川 ゚ -゚)「武器は装備しないと意味がないよ。試してみるかい?」

ξ゚⊿゚)ξ「良いよ。宿題終わったし」

大きく伸びをして、ノートをぱたんと閉じる。
ここはクーと博士の仮住まい、郊外の貸倉庫の中だ。

倉庫と言っても異層だか空間なんたらだか言う装置のおかげでかなり広く、無機質ではあるが下手な一軒家より上等な部屋だった。
私はこうして時折ここを訪れては、ユニット調整のテストに付き合ったり、勉強に付き合わせたりしている。

ξ゚⊿゚)ξ「それにしてもさ、そんなに細かく変えるべきなの? こういうの」

家から結構離れているので移動時間が馬鹿にならないのだが、私がここに強引に決めさせたので文句は言えなかった。
第一候補は我が家の地下だったのだ。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:35:33.46 ID:x7XZZy3/O
( ゚д゚ )

( ゚д゚ )「ばっ……何言ってんの!? まだまだまだまだ幾らでも更新する箇所はあるのよ!? 進歩に歯止めは無いのよ!?」

ξ;゚⊿゚)ξ「ああ、そうなの。ごめんね変なこと言って」

確かに、最初の頃とは仕様やユニットの形自体も色々と変わっていた。
酷い例では初期は通信などの音声が、全てとある人物のものになってしまっていたのだが、
あまりに鬱陶しい上に博士もクーも同じ声になりややこしい事この上ないので改善してもらっている。

川 ゚ -゚)「君の命を預かっているんだ。常にデータを取り、それに基づいて最善の状態にしておくのは当然じゃないか」

クーが何本もケーブルが突き刺さったヘルメットを手にしつつ、こちらに似たような物体を手渡す。
同じくケーブルに接続された、メット状態のレイナーユニットだ。

ξ゚⊿゚)ξ「それを言われると、反論する理由も無いなぁ」

曖昧に苦笑して、座椅子に深く座り直す。受け取ったメットを被り、深呼吸して瞼を閉じる。

( ゚д゚ )「よし。準備は良いか? じゃあ──行くぞ」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:37:16.45 ID:x7XZZy3/O
瞼の裏側に光が瞬き、意識が遠のいていく。
ジェットコースターが急降下する直前のような、重力が消失する感覚──

ξー⊿ー)ξ

ξ゚⊿゚)ξ「……あ゛ー、いい気分しないわね相変わらず。クー? 入ったよー」

額を押さえつつ、目を開ける。
そこは白い部屋だった。真っ白で何も無い、殺風景な部屋。
バーチャルなんたらとかいうやつで、要するに凄いリアルな感じのシミュレーションみたいなそういうのらしい。

川 ゚ -゚)「ああ……次は変身だ……」

いつの間にやら、目の前にはいつもと変わらない姿のクーが立っていた。
ツッコミにくいボケは無視して、掴んでいたユニットを構える。

簡潔に、はっきりと、呟く。

ξ゚⊿゚)ξ「変身」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:39:06.16 ID:x7XZZy3/O
言葉と同時、ユニットからまばゆい光が溢れ出し、私の身体を覆い尽くす。
光は全身を包み込むと、何故か衣服を木っ端微塵に吹き飛ばす。


ξ゚⊿゚)ξ「乙女のツンデレ──力に変えて!」


膨れ上がった光から、緑青のインナーと、青と白に彩られたスーツが姿を現す。


ξ゚⊿゚)ξ「悪しきウイルス、根こそぎ浄化!!」


手足のジュエルに光が灯り、背からマフラー状の赤光が噴出する。


ξ////)ξ「……コレ言っとくけど、好きでやってんじゃないんだからね?!」


頭部をヘルメットが覆い、後頭部から自前のツインテールが飛び出す。
黒髪のそれは強烈な光を伴って、きらめく金髪へと変色する。

額のエンブレムにマークが浮かび上がり──


\ξ゚⊿゚)ξゝ「超光戦姫! ツンデレイナー!! VIPに代わって凸撃開始ッ!!」


ポーズを決め、変身を終える。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:40:27.45 ID:x7XZZy3/O
\ξ゚⊿゚)ξゝ「……」

川 ゚ -゚)「……」

川 ゚ -゚)「さて、今回の大きな更新点は二つだ。二つ目はまだ試験段階だが、実用化すれば君の強力な武器になるだろう」

ξ////)ξ「止めろ! 毎回そうだけど涼しい顔してスルーは止めろ!」
  _,
川 ゚ -゚)「むう……触れてくれるなと以前は言ってなかったか?」

ξ////)ξ「確かに言ったけど! スルーも嫌なの! 分かるでしょ!?」

川 ゚ -゚)「分からん。難しい年頃だな」

ξ;゚⊿゚)ξ「大体何なのよこの口上は、何か変身すると勝手に口走ったりしなかったりするし……博士がやってんの?」

    『私はノータッチだ。君とユニットの波長をシンクロさせる際に発生する一種の共鳴反応のようなものじゃないか?
     ユニットにはまだまだ未知数な部分が多いからな』

ξ゚⊿゚)ξ「造ったのあんたでしょうが……」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:42:25.38 ID:x7XZZy3/O
エコーがかかった天の声状態の博士にツッコミつつ、足を引き、軽く構える。

流れるように拳を開き、ゆるく握る。
スーツを纏った私の五感は、そうでない時のそれとは何もかもが違う。
尋常ではない化け物たちとも張り合える力と、心を手にすることが出来る。

それは有り難くもあり、有り難くないことでもあった。

川 ゚ -゚)「一つ目の更新点……機動力の向上。より動きやすく、それでいて防御力はそのままに。
     ともかくまずは実際に戦って──」

川 ゚ -゚)「確かみてみろ!!」

肝心なところを噛みながら、クーがこちらへと突進してくる。
凄まじく速い。
が。

ξ゚⊿゚)ξ(……確かに、身体が軽い。これなら……)

相手に合わせて、足を踏み出す。あっと言う間に距離が詰まり、視線が交錯する。
肩に向けて突き出された拳を、掌で弾く。
次いで相手の脇腹めがけて繰り出した手刀は、突き上げられた膝に阻まれる。

目の前で長い黒髪が翻り──

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:44:08.30 ID:x7XZZy3/O
ξ ⊿ )ξ「ぐぅッ!」

強烈な後ろ回し蹴りが胸部に叩き込まれた。
視界が明滅し、ヘルプモニタがエラーを吐き出す。

地面を数メートル削りながらも踏みとどまったこちらに、クーはなおも拳を突き刺そうと……

ξ゚⊿゚)ξ「遅い!」

振り抜かれた拳を片手で受け止め、そのまま手首を掴む。
強引に身体を引き寄せて、肉薄した胴体へと肩から思い切り体当たりをぶちかます。

川   )「っ!!」

確かな手応え。
クーは数歩後ろによろめき、胸を押さえて半身を折る。
数秒後──

川 ゚ -゚)「どうだ? 感覚的には大分軽いんじゃないか?」

何事も無かったように平然と顔を上げた。
バーチャル空間だから実際のダメージとかは確かに無いんだけど、いくら何でも回復が早すぎる気がする。

ξ゚⊿゚)ξ「うん、結構動きやすいかも」

拳を受け止めた掌をひらひらと揺らしながら答える。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:45:35.85 ID:x7XZZy3/O
川 ゚ -゚)「逆に上手く動けないなんてことになっては本末転倒だからな。慣れておくといい」

ξ゚⊿゚)ξ「ありがと。あと一つの更新点っていうのは?」

川 ゚ -゚)「うむ、こいつだ。文字通り君の新しい武器だよ」

クーはいつの間にか手にしていた剣の柄のような物を、こちらに放り投げてくる。

    『ツンセイバーだ。実剣のツンブレードとは違い、エネルギーを刃に変換して用いる。使い分ければ敵との戦いに役立つだろう』

ξ゚⊿゚)ξ「ふーん」

放物線を描いて飛んできたそれを受け取ると、ぱしんと軽い音が響いた。重量もそれ相応の軽さだ。
博士のうんちくを聞き流しながら、受け取ったツンセイバーなる物をまじまじと眺めてみる。
握りの少し上の部分にスーツのジュエルと同じ物らしい物体が取り付けられていた。

シンプルなフォルムのブレードと比較すると割とごついデザインだ。

ξ゚⊿゚)ξ「で、これどうやって刃を出すの? スイッチとかないの?」

川 ゚ -゚)「テンション上げれば出る」

ξ゚⊿゚)ξ「まーたそれか」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:46:59.42 ID:x7XZZy3/O
ξ゚⊿゚)ξ「……はぁっ!」

無理やり気合いを入れながら、剣の柄を振る。
同時に、ビシュンとスターウォーズのあれみたいな音を立てて、緑に輝く半透明の刃が飛び出した。
重さは全く変わらない。

ξ゚⊿゚)ξ「……」

ξ゚⊿゚)ξ「ヒッ」

ξ゚⊿゚)ξ「フッ」

ξ゚⊿゚)ξ「ハ!」

試しに数回振り回してみる。
ヴォンヴォンとやはりスターウォーズのあれみたいな音と共に、しなりを帯びたビームの刃が閃く。
刃を収めて、ぽつりと呟いた。

ξ゚⊿゚)ξ「……結構良いと思う。軽いし」

川 ゚ -゚)「私はセイハットウの方が好きなんだが」

    『私はエイフッニャー派だ。もうしばらく調整すれば、実戦にも投入出来るだろう。楽しみに待っててくれたまえ』

ξ゚⊿゚)ξ「頑張って。別に楽しみにはしてないけど」


川 ゚ -゚)「……さて、じゃあしばらくは流しでスパーリングでもするか?」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:48:19.12 ID:x7XZZy3/O
それから二時間ほど、クーと殴ったり殴られたりを繰り返した。
実際の時間では十数分程度らしいので、時間の貴重な高校生には有り難い話だ。

ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、クー」

川 ゚ -゚)「何だ?」

ξ゚⊿゚)ξ「現実の方じゃ本当に戦えないの?」

川 ゚ -゚)「多少心得がある分、そこらの連中よりはマシだろうが……
     ウイルスに太刀打ち出来るような次元の話じゃないさ。ここで君の相手になっているのもデータを弄ってようやく、といったところだ」

    『バーチャルと現実を混同するなという話だな』

川 ゚ -゚)「私にはレイナーユニットの適性が無い。こんな形でしか君の力にはなれないんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「……うーん、それはどうだろ」

川 ゚ -゚)「? どういう意味だ」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:49:51.97 ID:x7XZZy3/O
ξ゚⊿゚)ξ「勉強とか教えてもらってるしさ」

川 ゚ -゚)「あれは君の力になってると言えるのか?」

ξ゚⊿゚)ξ「言えるでしょ」

川 ゚ -゚)「そうか」

ξ゚⊿゚)ξ「……ところで、聞きたいことがあるんだけど。クーって編み物とかできる?」

川 ゚ -゚)「編み物? いや、やったことは無い。
     服の修繕の経験はあるから、多少学習すれば恐らくは可能だと思うが。簡単なものならな」

ξ゚⊿゚)ξ「そっか……」

川 ゚ -゚)「それがどうかしたのか?」

ξ;゚⊿゚)ξ「ううん、えーっと」

    『──ツン君。冬の衣替えくらいは我々が工面してやるぞ?
     君は報酬を受け取ってなんら差し支えない働きをしているんだ』

ξ゚⊿゚)ξ「ちげーよ母さんが夜なべして手袋編んでくれたとかそういう泣ける話じゃねーよ」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:51:25.78 ID:x7XZZy3/O
川 ゚ -゚)「ふむ……」

川 ゚ -゚)+ キュピーン

川 ゚ -゚)「さては、クリスマスとやらか」

ξ゚⊿゚)ξ「そうそ、クリスマs」

ξ゚⊿゚)ξ

ξ;゚⊿゚)ξ「ほぅわッ!? な、何故その単語をっ!?」

川 ゚ -゚)「前テレビで言ってたから調べてみた。
     ……なるほど手編みのプレゼントを贈るつもりか、ベタだが悪くはないかもな」

((ξ////)ξ))「ちちっちちちち違うよ違うって私部活とかしてないし趣味も無くてそういうのもどうかなーなんて思ってた時にたまたまそういう本見掛けて」

川 ゚ -゚)「ユニットを装着しているとやはりこういう時リアクションがオーバーだな」

    『初々しくて良いじゃないか。私としてもそういう乙女心が高まりそうなプレゼントは歓迎したい』

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:53:59.62 ID:x7XZZy3/O
川 ゚ -゚)「そういうことなら全力で協力しよう。すぐに技能を習得して君に伝授する」

ξ゚⊿゚)ξ「そういうことではないけど……私あんまり器用なタイプじゃないよ?」

    『完璧すぎるよりちょっと不恰好なくらいが可愛げがあって良いと思うぞ』

川 ゚ -゚)「善は急げだ。上がったら教材を購入してこよう」

ξ゚⊿゚)ξ「いや、あのそんなに焦らなくても」

川 ゚ -゚)「渡す時の服装も大事だな。今度の休みに一緒に買い物に行こうか」

    『それが良い。それくらいは私が負担してやろう』

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:55:13.38 ID:x7XZZy3/O
ξ゚⊿゚)ξ「いくらなんでも気が早いっていうか私そういうの良いかr」

川 ゚ -゚)「デートスポットも重要か……これは男性側が決めておく場合が多いらしいが」

    『あの小太りはなかなか朴念仁のようだからな。考えておく必要はあるだろう』

ξ゚⊿゚)ξ「おい今何つった」

川 ゚ -゚)「後は……美容室と、他に何かありましたかね博士」

    『イベントの内容を聞く限りでは、避妊用具も揃えておいた方が良さそうだぞ』

川 ゚ -゚)「おっと、迂闊でした。さすがです博士」

ξ# ⊿ )ξ「ちょっと待てお前らァ!!」

川 ゚ -゚)「何だどうした。話に入れなくて寂しいのかそうか」

ξ#゚⊿゚)ξσ「違うわ! 良いからちょっとそこ正座しろ! おっさんもリアルの方で正座しろ!
        何かもう途中から薄々分かってたけどそういうアレじゃないから!!」

    『そうか。そういうアレじゃないのか。それは仕方ないな』

┓川 ゚ -゚)┏

ξ#゚皿゚)ξ「こ、こんなろ……」

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:56:46.66 ID:x7XZZy3/O
川 ゚ -゚)「そういうアレだろうがなかろうが、
     クリスマスとはこの地域では何故か恋人達が夜更かしニャンニャンな、そういうイベントとなっているから死ねば良いのにと文献には記されていたが」

ξ゚⊿゚)ξ「ネットの見過ぎだ。
      私ねーすぐそういうのに持っていく最近の風潮どうかと思うのよ真面目にさー」

    『だがこの島は古来から性風俗については割と身も蓋もない側面がないか?』

ξ゚⊿゚)ξ「古来とかそんなんはどーでも良いのよ今までの私と私の周囲にゃそういうイベントじゃなかったのよだからそういうのは苦手なの分かる分かるか分かりますか?」

川 ゚ -゚)「おk、まずは句読点と改行を頼む」

    『おちけつ』

ξ゚⊿゚)ξ「……はぁ。そういうのは考えてないよ、本当に。大体クリスマスつっても平日だし。週末だけど」

深く溜め息をついて、変身を解く。もうこの姿でいる必要も無いだろう。
手の中に残ったユニットを宙へと放り、大きく伸びをする。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:58:30.35 ID:x7XZZy3/O
ξ゚⊿゚)ξ「っていうか……えーと。ホントによく分かんないの。
      分かんないけど、とりあえず何か準備しとかないと、後悔しそうな気がして」

実際、自分にとってこれまでクリスマスは特別な日でも何でもなかった。
せいぜい母親とちょっと高級な店の小さいケーキを食べられる程度の日だ。

そう言えば、去年のクリスマスは高校に上がる記念に携帯電話を買ってもらった。
あまり当時の私は必要とも思っていなかったけど、母も色々と心配だったのだろう。
持ってしまえばそれなりに活用はしているのだが。

ξ゚⊿゚)ξ「だから、何となくね。ごめんね何か漠然としたこと言って」

川 ゚ -゚)「気にするな、分かるぞ。いや全然分からんが」

    『ふむ……イベントに対する姿勢が個々人で異なるのも当然か。
     彼らがクリスマスをどう捉えているか分からぬ内はあまり大袈裟に動くのもはばかられる、と。いじらしいじゃないか』

ξ゚⊿゚)ξ「…………何かイラッとするけどその通りよ。っていうか本当にその通り過ぎて怖いんだけど」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 03:59:58.96 ID:x7XZZy3/O
    『まぁ、こちらのPCである程度君の思考を追うことが出来るからな。ちょっと調べれば昨日の夕飯や今の下着の色程度はすぐ分かる』

ξ゚⊿゚)ξ「おっさん歯ぁ食いしばれ今殴りに行く」

川 ゚ -゚)「脳に負担を全くかけずそこまですることが可能になったのですか。さすが(ry」

    『んー? 理論上は一週間程度の記憶は難なく検索出来るぞ。まぁ、やろうとは思わんがね。
     連中にもこの技術は売らんよ、もっとも奴らの方でひょっとしたらもっとあくどい機器が開発──ッぁいたっ!?
     痛い痛いあれどうやって自力で戻っいや可能なだけで記憶は別に探ってなぉぐしゅッ!! あででで血が! 口から血g』


┓川 ゚ -゚)┏

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:01:44.91 ID:x7XZZy3/O
◆     ◇     ◆     ◇

(;゚ω゚)「…………」

('A`)「……」

(;゚ω゚)「お……」

('A`)「……」

(;゚ω゚)「終わっ……た……ッ! 全ての考査が……! ついに……!
      これで……終わりっ……! 冬休みを阻むものは……皆無……!!」

('A`)「ウボァー」

( `ー´)「お前らお疲れさん。
       ま、結果はどうなるか知ったこっちゃないけど、悪かった奴も良かった奴もそれなりにゆっくりすりゃ良いんじゃネーノ。んじゃまた後でな」

(-@∀@)「きりーつ、礼。ありがとーござっしたー」


  「「「ありがとーございましたー」」」


   「終わった終わったー」
   「なぁ、あっこどうだった? 俺全然だわ」
   「あ、待って私もー」
   「いや言っとくけどスライダーは真横に曲がらないから」
   「そこは豚足だろ……」
   「何で最終的に月面基地なの?」

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:03:30.31 ID:x7XZZy3/O
('、`*川「いやー、お疲れ」

ξ゚⊿゚)ξ「乙ー。……嬉しそね」

('、`*川「そりゃそーよ、これで禁欲生活ともおさらば。買ってたブツも押し入れから出せるってもんだし」

ξ゚⊿゚)ξ「できた? テスト」

('、`*川「あっはっはやめてよもー、女の過去をほじくったって良い事無いべ?」

ξ゚⊿゚)ξ「……。まあ、凹むのは結果が出てからでも良いと思うけど」

('、`*川「あっはっはっは、あっはっは」

ξ;゚⊿゚)ξ「痛い痛い痛いから叩かない叩かない」

この私の肩をばしばし叩いてくるクラスメートは、伊藤さん。
あまり人付き合いの上手くない私を気にかけてくれているのか、何かと良くしてもらっている。
気の良いお姉さんといった感じの人だ。

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:04:57.78 ID:x7XZZy3/O
('、`*川「後は年末を迎えるだけ。何だか早いもんだねぇ」

机に手を着いて、窓の方を眺める伊藤さん。
目を細めて遠くを見るその姿は無駄にサマになっている。

年末。
そう、あれこれやっている内に、12月も半ばを過ぎていた。
街の装いも、テレビ番組も、行き交う人々も。
何となく雰囲気を変える季節。

もうすぐ一年が終わるから、新年が始まるからといって、何かが変わる訳でもない。
一年という周期は人間が勝手に決めただけのものであって、それ自体に意味はきっと無い。
それでも皆少しだけ、それを節目に何かが変わることを期待しながら、
いつものように日々を過ごす。

そんな季節。


ξ゚⊿゚)ξ(変わる……いや──)

('、`*川「ねえ。なんか、気掛かりなことでもあるの?」

ξ゚⊿゚)ξ「……ふぇ?」

いつの間にか、彼女の視線は私の方に向いていた。

а('、`*川「そんな顔してる」

ξ゚⊿゚)ξ「ほっぺ触んな」

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:07:01.44 ID:x7XZZy3/O
('q`*川「うへへへやーらけー。あっいかんヨダレが……ジュル
     で、何どったの」

ξ゚⊿゚)ξ「いやー……別に。何も無いよ?」

('、`*川「そお? なら良いんだけど」

伊藤さんは一旦言葉を切り、
顎先を指でぺたぺたと叩きながら視線を泳がせる。

('、`*川「何も無いっつったらさぁ、あたしクリスマス辺りとか悲しいけど何の予定も無いのよねー」

ξ゚⊿゚)ξ「え? 無いんだ。何か意外」

('、`*川「うん。いやね、最初はブクマ巡りでクリスマスイラスト漁ってりゃいいやーと思ってたんだけど、
     ちょーっと寂しいかなーっとか今になってほんのり」

ξ゚⊿゚)ξ「そうなんだ」

('、`*川「だ、か、ら。ツンちゃんちょっと付き合って?」

ξ゚⊿゚)ξ「え」

優しく微笑む伊藤さんの顔を見上げながら、
彼女が自分を津出さんではなくツンちゃんと呼ぶようになったのはいつからだろう──
と、全く関係ない事を思い浮かべていた。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:08:40.96 ID:x7XZZy3/O
('、`*川「ねー一緒にカラオケ行こうよー、ツンちゃんの歌聞きたーい」

ξ;゚⊿゚)ξ「私歌はちょっと……」

('、`*川「じゃー手拍子だけでも良いから! ね?」

ξ゚⊿゚)ξ「……」

気を遣わなくて良いのに、とはさすがに言わなかった。
断る理由もきっと無いだろう。

ξ゚ー゚)ξ「そうだな……うん、行きたい」

('、`*川「そーこなくっちゃ!」

ξ゚⊿゚)ξ「あ、でも私店の場所とか知らないんだけど。街のどっかにあったよね?」

('、`*川「いーよいーよあたしが案内するからさ。任しなさい」

ξ゚⊿゚)ξ「いいの? ありがと」

('、`*川「さて、二人ってのも少し心もとないよね。頭数くらいは……」


('、`*川「ねー内藤くん、クリスマス空いてるー?」

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:10:02.98 ID:x7XZZy3/O
( ^ω^)「お? クリスマス?」

('、`*川「ツンちゃんと遊ぶんだけど、暇だったらカラオケ来ない?
     アニソンもばっちこいよー」

(;^ω^)「おっお、ごめんお。その日はドクオと徹夜でギャルゲ生実況する予定が……」

('A`)「おい何言ってんだ。行ってきなよ」

( ^ω^)「えっ」

('A`)「糞糞糞クリスマスに女子から誘われるとかマジこいつ死ねば良いのに
    しかもサラッと断ろうとするとかうんこの角に頭ぶつけて死ねば良いのに糞糞糞
    (遠慮すんなって、別に実況なんていつでも出来るしさ)」

('、`*川「志村ー逆逆」

('、`*川「っていうかあんたも来て良いよ別に。嫌なら良いけど」

('A`)「ん、え? あ、いや」

('、`*川「告知してるんならおにゃのことカラオケ行ってきますフヒヒサーセンとか書いて叩かれれば良いのよ。
     それとも配信して皆と仲良く鬱に浸りたい?」

('A`)「あ、あー、その、だいじょ……い、行きます。行かせて下さい」

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:11:24.27 ID:x7XZZy3/O
('、`*川「これで四人ねー、ちょっちオタ臭キツいけどまぁ良いか」

('A`)「伊藤が言うのかそれ……」

('、`*川「人数これ位でどう? ツンちゃん」


ξ゚⊿゚)ξ


('、`*川「……ツンちゃん?」


ξ゚⊿゚)ξ


ξ゚ー゚)ξ


Σ('、`;川 ビクッ

ξ゚ー゚)ξ「いいんじゃないかな?」

('、`;川「そ、そう? ならいいんだけど」

ξ゚ー゚)ξ「どうしたの?」

('、`;川「……何でもないです……」

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:14:36.04 ID:x7XZZy3/O
◆     ◇     ◆     ◇

川 ゚ -゚)「追い詰められたな」

ξ; ⊿ )ξ「う、うっさいわ!」

川 ゚ -゚)「逆に良かったんじゃないか? 無理なく渡せるチャンスだろう」

ξ;゚⊿゚)ξ「それはー……」

川 ゚ -゚)「いい友人じゃないか」

ξ゚⊿゚)ξ「……。うん……」

二人してソファに腰掛けて、編み針を動かす。
ほぼ同じ時期から開始したはずなのに、その手さばきは雲泥の差だった。
お粗末なのは当然私の方である。

ξ;゚⊿゚)ξ「むうう……やっぱり何か、ちょっと歪んでるよなぁ」

教本とにらめっこしながら慎重に編んでいたが、やはりというか何というか、
見事なまでに不恰好なマフラーが出来上がりそうだった。
場所によっては二倍くらい編み目の大きさに差がある気がする。

ξ;゚⊿゚)ξ「基本的な編み方のはずなんだけどなぁ……くぅ」

進捗状況は七割ほど。
一ヶ月近くかかってこれなのだから、今更やり直すことも出来ない。
騙し騙し完成させるしかないだろう。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:16:21.86 ID:x7XZZy3/O
ξ゚⊿゚)ξ「それに引き換え……」

ξ゚⊿゚)ξ「順調そうねえ、アナタ」

川 ゚ -゚)「うむ、なかなか楽しいな。今まで衣服を自分で作るという発想はなかったから新鮮だ」

クーが編んでいるのはマフラーではなく、セーターだ。
マフラーは既に二つ作ってしまったので、より難しいセーターに手を出したらしい。
そしてそれも出来上がりつつある。

ξ゚⊿゚)ξ「あ゛ーもー劣等感。クーの渡しちゃった方が良いんじゃないかしら」

( ゚д゚ )「それは違うぞツンちゃん」

ξ゚⊿゚)ξ「ツンちゃん言うな」

( ゚д゚ )「拙くとも構わないのだ。君が彼を想って編んだことが大事なのだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「想うとか言わないでよ恥ずかしい」

( ゚д゚ )「私はこうしてクーからマフラーをプレゼントされているが、
     単に他に渡す相手もいないし何となく、という理由では嬉しさも半減する。大切なのは気持ちだ」

ξ゚⊿゚)ξ「その割には室内で巻くくらい気に入ってるみたいだけど」

( ゚д゚ )「うん」

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:18:31.85 ID:x7XZZy3/O
川 ゚ -゚)「よーし、出来た」

Σξ゚⊿゚)ξ「はやっ」

川 ゚ -゚)「ん。まあまあ、かな」

出来上がったセーターは、そこいらの既製品と見まがうほどの完成度だった。
私の腕では逆立ちしても真似出来ないだろう。

川 ゚ -゚)「せっかくだ、誰か友人にでも渡してくれ。これ以上捨てるのはもったいない」

( ゚д゚ )「えっ、捨て……え?」

川 ゚ -゚)「顔の崩れた少年に渡すのもいいが、勘違いされないようにな。あの手の子はトチ狂いやすいから」

ξ゚⊿゚)ξ「酷い言いようだなオイ。……ドクオは大丈夫……って言うのもなんだけど、
      そういうのは無いと思うよ。私がブーンを……まあ、気付いてると思うし」

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:20:28.89 ID:x7XZZy3/O
鬱田ドクオ、そして内藤ホライゾン。
何だかんだで付き合いのある、単なるクラスメート。
私がツンデレイナーであることを知っている数少ない人間でもある。

ξ゚⊿゚)ξ「……とりあえず、貰っておくよ」

秘密を守ってくれていることと、騒動に巻き込んでしまった詫びも兼ねて、
彼にもプレゼントしても罰は当たるまい。多分。


川 ゚ -゚)b「うむ、決戦は金曜日だな。頑張れツン」

ξ;゚⊿゚)ξ「うわネタ古っ」

(゚д゚ )「さすがに捨てるのと一緒ってのは……ちょっとなぁ……傷ついちゃうよなぁ……」

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:21:31.53 ID:x7XZZy3/O
◆     ◇     ◆     ◇

そうこうしている内に、いつの間にやらクリスマス当日になった。
世間的にはイブの方が重要視されている節もあるが、当然どうでも良い。


ξ゚⊿゚)ξ「うー、さむ」


二の腕をさする。
私は今、待ち合わせ場所のAの形をした彫像の前に立ち尽くしている。
実に約束の時刻、一時間前の事であった。

ξ;゚⊿゚)ξ「いくら何でも早すぎたんじゃ……」

どこか嬉しそうな母に後押しされるような形で早々に家を出てしまったが、
これでは皆と合流する前に凍えてしまう。

    『寒いのか?』

ξ゚⊿゚)ξ「見ての通りよ」

姿の見えないクーに向かって呟く。
肉眼では確認できないが、私の頭上の辺りをユニットが遊泳しているはずだ。
傍目からは独り言なので大っぴらには会話できない。

    『だが、行き交う娘達は更に寒そうな服を着ているが』

ξ゚⊿゚)ξ「そうね。鍛えられてるんでしょ」

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:23:08.29 ID:x7XZZy3/O
    『鍛錬……民間人も精神修行を行っているのか? それは初耳だ』

ξ゚⊿゚)ξ「いや、そーいう意味ではなくて……うぅ」

言い切る前に肩を震わせる。

ξ;゚⊿゚)ξ「何ていうか、着慣れない服なんて着るもんじゃないわね」

自分の服装を見下ろしてみる。
一言で言うなら、よくあるファッション誌の冬特集に挙げられる、
最初から数えて三番目辺りの『カジュアルにオシャレを決める!』系にあるような感じの格好だ。
とりあえずスカートが短いので寒い。タイツは穿いているが寒いもんは寒い。

    『私のチョイスが不満だったかな?』

ξ゚⊿゚)ξ「不満じゃないよ。むしろ普通過ぎてびっくりするんだけど異星人の癖に」

    『……うむ、似合ってると思うぞ。私が男ならこんな所に突っ立ってる君を放ってはおかんな』

ξ゚⊿゚)ξ「あんがと、と言っていいのかこれは」

何とも言えない視線のような物を感じて身をすくませる。

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:24:29.54 ID:x7XZZy3/O
    『む、博士に呼ばれた。ちょっと言ってくる、何かあったら呼んでくれ』

ξ゚⊿゚)ξ「あ、うん」

ガタガタと物音がする。クーが席を立った音だろう。

ξ゚⊿゚)ξ「……。コーヒーでも買ってこようかな」

よく考えたら、一時間前から律儀にここで待機している必要は無い。
どこか暖かい店の中にでも避難した方が良さそうだ。
ユニットは自動でついてくるし。

ξ゚⊿゚)ξ「風邪なんかひいたらたまったもんじゃないし、ひとまず……」

ちょっとした大きさの手提げ鞄を抱え直し、往来へと一歩踏み出す。
人混みの中を掻き分ける訳でもなく進み、自販機がある通りへと進む。
と。


('A`)「ん」

ξ゚⊿゚)ξ「あ」


角を曲がった先で、ドクオとばったり出くわした。

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:26:33.19 ID:x7XZZy3/O
('A`)「……奇遇だね」

ドクオは若干物珍しそうに眉を上げ、頭を掻いている。
彼の格好は別に普段と何が違う訳でもなく、ブーンと遊んでいる時と同じ野暮ったいパーカーとジーンズ姿だった。

ξ゚⊿゚)ξ「う、うん。結構来るの早いのね」

('A`)「え? あ、ああ。まあ……」

彼もあまり会話の上手い人間ではないのだろう。
そして私とも大抵ブーン……内藤ホライゾンを介した付き合いなので、こうして一対一で話す機会はほとんど無い。
というより、これが初めてかもしれない。

('A`)「……」

ξ゚⊿゚)ξ「……えーと」

何と声を掛ければ良いだろう。
早くも会話が続かない。
下手をするとこのまま沈黙が続く可能性もある。

ξ゚⊿゚)ξ「あっ、そうだ」

不意に思い出して鞄の中を探る。
きょとんとこちらを見るドクオの眼前に、例のセーターが入った箱を差し出した。
申し訳程度のラッピングが施してある。

ξ゚⊿゚)ξつ■「あげる」

プレゼントとは、ちょっと言えなかった。

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:42:22.14 ID:x7XZZy3/O
('A`)「……」

('A`)「マジで?」

ξ゚⊿゚)ξ「うん。言っとくけど勘違いしないでよ夏辺りに迷惑かけたお詫びとかそんな感じなんだからね」

('A`)「お、おう」

ξ゚⊿゚)ξ「しかもそれ中身セーターだけど私が編んだんじゃなくてやたら綺麗なお姉さんが編んだやつだから安心しなさいよね」

早口にまくし立て、恐る恐る手を伸ばすドクオに無理やり押し付ける。

('A`)「……ありがとう」

有り得ない物が手元にあるとでも言いたげだった。感謝の言葉にも現実感がなさげだ。
まあ、それは構わない。ちゃんと渡せただけで満足だ。

('A`)「ブーンにもあるんだよな? 当然」

ξ゚⊿゚)ξ「ぶっ、う……まあ、そうね」

('∀`)「頑張ってな」

ドクオが引きつったように唇を歪めてみせる。
何というか非常に下手くそな笑顔だったが、恐らくは精一杯のエールなのだろう。

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:44:04.79 ID:x7XZZy3/O
('A`)「……っと」

思い出したように、ドクオが懐から携帯を取り出す。
どうやら着信が来たらしい。ブーンからだろうか?

【('A`)「俺だ。……そうか、分かった。今すぐ向かう」

('A`)「ごめん、ちょっと行かないと」

ξ゚⊿゚)ξ「え、カラオケ来たんじゃ」

('A`)ノ「まだ時間あるでしょ? なるべく間に合うようにするからさ、またね」

そう言って、ドクオは足早に立ち去ってしまった。
何の用事なのだろう。
少し気にはなるが、さすがに尋ねる気はしなかった。

ξ゚⊿゚)ξ「…………」

ξ゚⊿゚)ξ「案外、何とかなるもんね」

頬をかきながら独りごちてみる。
異性へのプレゼントなどと大仰に言ってみたところで、実際はこんなものなのだろう。
色々何とかなりそうな気がしてきた。

ξ゚⊿゚)ξ「うん。よし」

小さく拳を握ってみたりする。
何に関して気合いを入れたのかは自分でもよく分からないが。

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:45:39.22 ID:x7XZZy3/O
◆     ◇     ◆     ◇

(´・_ゝ・`)「…………」

盛岡デミタスは街中を当てもなく進んでいた。
否、当てはあった。
彼の家がある。
一戸建てでも何でもない薄汚れた賃貸マンションだが、紛れもなく彼が今帰るべき場所である。

(´・_ゝ・`)「はぁ」

ため息をつく。
吐息は白い靄となって、やがて虚ろに消えていく。
デミタスはよどんだ瞳を自らの手元に向けた。

手の上には小さな箱が乗っている。
造りは良いがただそれだけの、ちっぽけな箱だ。
その中には、彼の月給が半年以上は吹っ飛ぶような代物が眠っている。

(´・_ゝ・`)「……今更こんな物に」

何の意味があるのか。
それをこぼす勇気すら、今の彼には無かった。
陰鬱とした面持ちで、街中に佇む。

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:48:35.79 ID:x7XZZy3/O
川の流れのように流動する雑踏の中を、一人岩のように立ち尽くす。
時折うっとおしげにデミタスに視線を向ける者もいたが、彼は全く気に留めなかった。

何となく空を見上げる。

明るい夜空に、きらびやかなイルミネーション。
耳を勝手に通過していく、変わり映えのしないクリスマスソング。
これで雪が降れば『完璧』なのだろう。

(´・_ゝ・`)「…………」

辺りを包む喧騒すらも、どこか楽しげに聞こえる。
こんな場所で、
こんな境遇で、
こんな物を手に、
こんな暗澹たる感情を抱いているのは、恐らくは自分だけなのだろう。

デミタスは瞳を閉じた。
息苦しい。
体内に渦巻く異様な物を感じて、胸を押さえる。
猛烈な違和感。
異物の脈動。

(´ _ゝ `)「お……あ、ああ……!」

いつの間にか、デミタスは道路の真ん中に突っ伏していた。
身体の内側が膨れ上がり、破裂するような。
そんな錯覚を覚えて、目を見開く。

眼前に、小さな箱が転がっていた。

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:49:55.46 ID:x7XZZy3/O
デミタスが悶え苦しむ様を、ビルの屋上から眺める者がいた。


('A`)「来たか」


男はそう呟き、電源の入っていない携帯をポケットに突っ込む。
道路に倒れたデミタスを中心に、空気の流れが変わっていく。


('A`)「こんな夜だ。種が芽吹くには悪くない」


男はせせら笑って、空を見上げた。
夜空には何も無い。
彼の目には、確かに浮かんでいるはずの月も星も映らない。


('A`)「さて……どうなるのかな?」

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:51:20.44 ID:x7XZZy3/O
◆     ◇     ◆     ◇

ξ゚⊿゚)ξ「あちち」

かじかんだ手には、自販機のあったか~い缶コーヒーは少し熱い。
手の中で缶を転がしながら、通りを進む。
何となしに待ち合わせの彫像に目を向けると、見慣れた姿がそこにあった。

( ^ω^)「お、ツン」

目ざとくこちらに気付いたブーンは、のそのそと寒そうな素振りも見せず歩み寄ってくる。
服装もいつものそれにマフラーを巻いているだけだった。
マフラー。
胸中でもそりと何かがざわめく。

ξ;゚⊿゚)ξ「……ブーン」

( ^ω^)ノ「おっおー。ツン、随分早いおね」

ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと時間間違ってね。あんたこそ早いわね」

( ^ω^)「実はこの場所うろ覚えで自信無かったんだお。早めに出発したら普通に到着してしまったお」

ξ゚⊿゚)ξ「そ、そう」

(^ω^三^ω^)「他は誰も来てないのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「ウザッ。ううん、ドクオとさっき会ったんだけど、何か用事があるとか言って」

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:55:38.79 ID:x7XZZy3/O
( ^ω^)「用事? うーむ……あいつやっぱり配信したかったのかお」

ξ;゚⊿゚)ξ「いや、それだったらわざわざここに来る必要無いでしょ」

( ^ω^)「それもそうだお。……まあ来たいんだったら来るでしょうお」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね。……ねえ、ブーン」

( ^ω^)「お?」

ξ゚⊿゚)ξ「えーと……」

( ^ω^)「……」

ξ゚⊿゚)ξ「…………」

(;^ω^)「な、何だお?」

ξ゚⊿゚)ξ「あのね……」

飲み頃の温度になった缶をこっそり握り締める。
渡すには絶好のチャンスだ。またとない好機。
今を逃す手は無い。さあ渡せ。さっきは出来ただろう?
頭の中を叱咤激励の言葉がひたすら行き来する。

ξ゚⊿゚)ξ「あ──」

ξ゚⊿゚)ξ「あげ……る」

( ^ω^)「お? コーヒーくれるのかお?」

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:58:12.39 ID:x7XZZy3/O
 
 
ξ゚⊿゚)ξ「よーし死にてー」

自分の額を自販機のディスプレイにぶつけながら、脳内の励ましてくれた皆さんにフルボッコを受ける。
缶コーヒーを渡した後、たまらず自分の分を買うからと、自販機の前まで逃げてきてしまった。
間近にあるダミーの缶を眺めながら恨めしげに呟く。

ξ゚⊿゚)ξ「いや別にマフラー二本三本あっても困らないよ……色もオレンジでだだ被りでも問題ないよ……
      勇気出せよ……」


    『ツン!!』

ξ;゚⊿゚)ξ「おわっ、びっくりした!」

    『DATウイルスだ!! かなり近い!』

ξ゚⊿゚)ξ「──!」

弾かれたように自販機から離れ、走り出す。
向かう先は無論、彫像の前だ。

    『一旦退避しろ! 今回の反応は何か妙だ、有り得──ザザ、規模が半端じゃない!!ザザ、 どん……膨ら……で──ブツッ』

ξ゚⊿゚)ξ「クー!?」

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 04:59:57.95 ID:x7XZZy3/O
通信が途絶えると同時に、地鳴りが聞こえ始める。
地震かとも思ったが、そうではないようだ。行き交う人々もさすがに動揺した面持ちで足を止めていた。

彼らの間を縫うように走る。走り慣れた靴ではないのがもどかしい。

ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン!」

( ^ω^)「お?」

ブーンは彫像の前で呑気に缶コーヒーを飲んでいる。
地鳴りが気にならんのかこいつは。

ξ;゚⊿゚)ξ「逃げて! 何か、やばい!」

その頃には彼も気付いていただろう。辺りの空気が、急速に変わりつつある事に。
自身が肌を刺すような、強烈な冷気に覆われていると。


(;^ω^)「え!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「んなっ──」


この往来は、国道から少し離れた場所にある。
ちょうどブーンの背後、彫像が面している通りの先に国道があるのだが……

その通りから、莫大な量の津波が押し寄せてくる。
いや、津波ではない。あれは──

雪だった。

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 05:02:14.83 ID:x7XZZy3/O
ξ; ⊿ )ξ ゚ ゚「んなんじゃこりゃあああああああああ!?」
(゚ω( )「どわぁああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


叫びきる間もなく、目の前が真っ白に塗りつぶされる。
突風と共に、猛烈な力で全身を押しやられる。
雪の濁流に飲まれたのだ。

ξ ⊿゚)ξ「ブー──ン……!」

もみくちゃになりながらも、手を伸ばす。
視界には何も映らない。手応えも無い。

唐突に、恐ろしい虚無感に襲われた。
足の、手の、指の自由が奪われる。
凍りついたように身体が固まっていく。

ξ ⊿゚)ξ(これ……は)

違う。
本物の雪じゃない。これは“本当は冷たくない”。
力を込め、思い切り、頭上に手を伸ばす。

届いてくれ──そう願いながら、叫ぶ。


ξ゚⊿゚)ξ「変……身!!」

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 05:04:49.50 ID:x7XZZy3/O
      「超! 電! 磁!」

ξ#゚⊿゚) 二[///>「ツンデレドリルスマッシャアアアアアアアアアアア!!!!」


頭上に積もった雪を突き破り、上空へと飛び出す。
街を俯瞰して、絶句した。

ξ゚⊿゚)ξ「……何、これ……」

わずかに生き残った電飾が、街をぼんやり照らしていた。
辺り一帯が、全て雪に包まれている。
積もってるってレベルではない。高さにしてビルの三階ほど。
地面どころか沢山走っていたはずの車の天井すら見えない。

そしてその雪は、かすかにだが──脈動していた。
うごめく度に、更に領域を広げているらしい。

ξ゚⊿゚)ξ(レーダーの反応も何か怪しいけど……DATウイルスのしわざで間違いない)

空気中のDAT濃度は、かつてないレベルに達していた。
これでユニットの通信が阻害されているのだろう。

ξ゚⊿゚)ξ(女王ウイルスが、散布している?)

クー達にも想定外の事態だったようだ。
何とか通信を復帰できないものか。

ξ゚⊿゚)ξ(……ともかく一旦降りよう)

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 05:07:38.28 ID:x7XZZy3/O
脚部ブースターの出力を抑え、ゆっくりと雪上に降り立つ。
さくり、と小気味良い音が鳴る。
辺り一面銀世界だが、どことなく灰色がかっているせいか、まるで綺麗には見えない。

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン! ブーーン!」

適当に呼び掛けてみる。返事は当然無い。
雪の中なのは間違いないが、どの辺りに埋まっているのか見当もつかない。

ξ゚⊿゚)ξ「大激怒岩盤わ……」
ξ;゚⊿゚)ξ(……いや、止めとこう)

雪を割ろうと拳を振り上げ、そして思いとどまる。
下手な事をすれば逆に怪我をさせてしまいかねない。
しかも周りには相当な数の人々もいるはずなのだ。

ξ゚⊿゚)ξ(DATウイルスは、最終段階に移るまで宿主である人間を好んで殺しはしない)

博士が以前言っていた事を胸中で繰り返す。
これは本物の雪ではなくDATウイルスによるもの、
すなわち窒息死の危険も無いはずだった。


ξ゚⊿゚)ξ(先にウイルスを退治した方が早そうね)

116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 05:08:48.18 ID:x7XZZy3/O
そう判断して、惜しみつつも踵を返す。

ξ゚⊿゚)ξ「……そう言えば、鞄」

マフラーを入れていた鞄を思い出し、自分が飛び出した穴の辺りに向かう。
穴は既に埋まりつつあったが、雪の間から見覚えのある切れ端が見つかった。

ξ゚⊿゚)ξ「ん、しょ」

屈んで手を伸ばし、切れ端を引っ張る。
雪の塊と共に引きずり出された鞄は、見るも無惨な姿になっていた。

ξ゚⊿゚)ξ「ありゃまぁ……」

脱出する時に突いてしまったのだろうか。どてっ腹に穴が空いてしまっている。
財布やら何やらは無事のようだが、プレゼントは半分ごっそり持っていかれていた。

ξ゚⊿゚)ξ「……自業自得ね」

徒労感に満ちた呟きと共に、鞄をユニット内の異層空間に収納する。
これではさすがに渡せないだろう。

118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 05:11:38.57 ID:x7XZZy3/O
ξ゚⊿゚)ξ「……。うし」

両頬をぺしぺしと叩いて、気持ちを切り替える。
マフラーなんぞ良い、ブーンを、皆を助けなければ。
すぐに死ぬ事は無いとはいえ、長くこの状態にさせて良いはずもない。
急ごう。

ξ゚⊿゚)ξ「まずは本体を──」

振り向いた矢先、視界の端で何かがきらめく。
ほとんど無意識に首をひねり、頭部目掛けて伸びてきた物体を回避する。
ジリ、とメットをかすめる音が耳に残った。

ξ゚⊿゚)ξ「──ッ!」

|оゝо|「ォオ……ン」

目の前の雪が盛り上がっていき、人型になっていく。
人型と言っても、下手くそな雪だるまとでも呼ぶべき造形だったが。
先ほど飛来した雪の触手は、雪人形の腕へと変貌していた。


ξ゚⊿゚)ξ「女王、ウイルス……?」


身構えつつ、疑問符を浮かべる。
これまで戦ってきた女王ウイルスは全て、
気持ち悪い笑顔を浮かべ両手を上げている変な男型のウイルスだった。
こんな形状の物は初めてだ。

119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 05:13:10.39 ID:x7XZZy3/O
ξ゚⊿゚)ξ(突然変異ってやつ? いや、その前に──)

まさかこの雪は、DATウイルスそのものなのか?

|оゝо|「ォォォォ……!」

考えをまとめる暇も無く、雪人形が腕を突き出してくる。
弾丸のようなスピードで射出されたそれを、すんでのところで回避する。

ξ;゚⊿゚)ξ「くっそ!」

地面を、いや雪を蹴り、相手へと走る。
鞭のように振り下ろしてくる腕を、手甲で受け止める。
雪とは思えない硬い手応えだ。
構わず、もう一方の腕を振り上げる。

ξ#゚⊿゚)ξ「ツンブレード!」

空間を歪めて、手中に剣が現出する。
柄を握り締め、勢い良く人形を真っ二つに切り裂いた。

|о/ /о|「ォオ……オン」

雪人形の半身は宙を舞い、どしゃりと崩れ落ちる。
が、しかし。

|оゝо||оゝо|「「オオオオオ」」

ξ;゚⊿゚)ξ「うっわ増えた!?」

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 05:15:06.11 ID:x7XZZy3/O
|оゝо||оゝо|「「オオオオオ!」」

雪人形達は両手を一気に突き出してくる。
計四本の触手が、四方からこちらに飛来してきた。

ξ゚⊿゚)ξ「こなくそッ──」

こちらも両手を掲げ、システムにエネルギーを──要するに気合いを──注ぎ込む。

ξ#゚⊿゚)ξ「っだァ!!」

目の前に放出、展開したエネルギーの幕で、触手を全て消しとばす。
同時にブースターを点火し、人形目掛けて疾走する。
展開させたエネルギーを、そのまま拳に凝縮させる。

ξ#゚⊿゚)ξ「アンチウイルスパンチ略してぇ!!」

ξ#゚⊿゚)ξ⊃「アンパンチ!!」

|( )|「ヴァイッ……」

122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 05:16:36.43 ID:x7XZZy3/O
拳を受けた人形の頭が砕け、全身もろとも霧散する。
物理攻撃は通じずとも、エネルギーを直接叩きつければ効果があるようだ。

ξ#゚⊿゚)ξ⊃「更に略してアンチ!!」

|( )|「ハヒッ」

もう一方の人形も殴り飛ばし、爆散させる。
たちまち辺りは静寂に包まれた。
自分の呼吸と、レイナーユニットの駆動音だけが変わらずここにある。

ξ;゚⊿゚)ξ「はぁ……はぁ」

剣を握り直し、呼吸を整える。

ξ゚⊿゚)ξ「女王ウイルスの……兵隊? 働きウイルス……?」

とでも言えば良いのだろうか。
この雪を媒介に、ウイルスを具現化させているのか。
女王ほどの力は無いが、これを幾つも出されてはたまらない。


ξ゚⊿゚)ξ「早く、本体を探さなきゃ」

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 05:18:16.13 ID:x7XZZy3/O
再度空を飛び、ひとまず国道へと向かう。
ビルの合間を抜ける際に気付いたが、視界に入るどの建物の窓も雪に埋め尽くされていた。
一階から入り込んだ雪が全階に侵入しているらしい。

ξ゚⊿゚)ξ「……つくづくとんでもない代物ね」

ほどなくしてビルの間を抜け、国道に辿り着いた。

上空から見た通り、国道も雪で覆い尽くされている。
しかし一見すると、特に異常な物は無いようだった。
いやこれ自体が全部異常ではあるのだけれども。


ξ゚⊿゚)ξ「!」


唐突に、地上の雪が鳴動し始める。
視界全ての雪が、大きく波打っている。
何かに吸い寄せられるように、大通りの中心地に雪が収束していく。


ξ゚⊿゚)ξ「っな……」

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 05:19:21.51 ID:x7XZZy3/O
思わず剣を取り落としそうになる。
目の前に、途方も無く大きな雪山が出来上がったのだ。
辺りのビル群のおよそ二倍はある。

そしてその雪山は、ぐねぐねとうねり……
雪人形へと変わっていく。


|    ○   ゝ   ○    |「オオオオオオ………オオオオオオオン」

大気を震わせ、雪山人形が吼える。口も無いのに。
標的は勿論──


ξ゚⊿゚)ξ「じょ……」

ξ; ⊿ )ξ「冗談じゃねーよ! 勝てるかこんなん!!」


当然、雪山人形は私が匙を投げようと関係ない。
ビル一棟はありそうな巨大な腕が、天高く振り上げられた。

132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 05:50:23.18 ID:x7XZZy3/O
◆     ◇     ◆     ◇

('、`*川「いやーグロ執事おもろいわー」

('、`*川「……っと、そろそろ準備した方が良いかな?」

('、`*川「ツンちゃんに電話してみるか。ヨイフロ……っと」

【('、`*川「…………」

【('、`*川「…………」

('、`*川「ふむ」

('、`*川「待ち合わせ場所は知ってるって言ってたし良いか」

((('、`*川))「ん、んん? 地震?」

('、`*川「お、止まった。震度二くらいかな」

('、`*川「まーいいや、とりあえず着替えんべ」

134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 05:52:52.27 ID:x7XZZy3/O
◆     ◇     ◆     ◇

(´・_ゝ・`)「はあ、どうなってるんだこれは……」

デミタスはただ頭を掻く。
暗くてよく分からないが、どうも街中雪だらけになっているらしい。

(´・_ゝ・`)「これ何なんだ? 何か冷たくない気がするし。人工雪か?」

足下の雪を蹴り飛ばしてみる。
革靴に蹴られて散った雪は、思いの外勢い良く周囲に飛んでいった。

(´・_ゝ・`)「そもそも何で俺ここに居るんだっけ……」

いまいち記憶がはっきりしない。
何か目的があって街に出て来たのは間違いないのだが。

(´・_ゝ・`)「うーんでもこの雪だらけの状況とは関係ないよな~」

デミタスは腕を組み、ひたすら首を捻る。
そして暗いが白い視界の中を、ただ何となく進んでいた。

136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 05:55:12.92 ID:x7XZZy3/O
(´・_ゝ・`)「そう言えば、昔織田裕二が出てた映画でこんなのあったよな。一面雪で、ヘリが落ちてきてドゴーンt」

(((´゚_ゝ゚`)))「tttっととと、何だぁ!?」

見計らったとしか思えないタイミングで、凄まじい爆音が轟く。
近くでビルでも崩れたのだろうか。
たたらを踏みながらも辺りを見回してみが、それらしい建物は見当たらない。

(´・_ゝ・`)「何かこっちからっぽかったけど」

恐る恐る国道沿いの通りに出てみる。
と、ビルの向こうに変な人形のようなものが見えた。遠近感が狂うほどの大きさだ。
最初はアドバルーンか何かかと思ったが、そういう訳でもないらしい。

(;´・_ゝ・`)「な、何じゃありゃ……ゴーストバスターズか?」


|    ○   ゝ   ○    |「オオオオ……」

よく見ると、その人形の周囲を何かが飛び回っている。
時折ピカピカ光って、人形から伸びた糸のようなものを弾いているようだった。
戦っているのだろうか。

138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 05:57:37.45 ID:x7XZZy3/O
(´・_ゝ・`)「……あれは!?」

デミタスには見覚えがあった。
一ヶ月程前に妙な化け物から自分を守ってくれた、妙な格好の少女ではなかろうか。
歩みを早め距離が縮まる程に、予想は確信に変わっていく。

(;´・_ゝ・`)「い、いくら何でもこれは……」

サイズが違い過ぎる。
彼女がいかに強大な力を持っていようと、これだけ大きな化け物を倒すのは無理ではないか。
事実少女は明らかに劣勢だった。

数度目の交錯で、少女は人形が振り回した腕にとうとう直撃してしまう。
背筋が冷たくなるほどの勢いで、彼女の身体がビルに突っ込む。

(;´・_ゝ・`)「た……大変だ!」

ビルから舞い上がる雪と粉塵目掛けて、デミタスは全力で駆け出した。

139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 06:00:12.57 ID:x7XZZy3/O
(;´・_ゝ・`)「おい! 大丈夫か!?」

ξ ⊿゚)ξ「……おじ、さん? 何で、こんなとこに……」

ビルから落下し、地面に転がっていた少女は酷い有り様だった。
纏った衣装はひび割れてあちこちから火花が散り、しかも腕や頭部の半分が凍結しているように見える。

(;´・_ゝ・`)「いやそんなん良いから! 逃げなさい危ないって!!」

抱えて逃げようかと思ったが、華奢な見た目に反して少女の身体はやたらに重い。
この変な服のせいか。

ξ ⊿゚)ξ「──危ない!!」

(´゚_ゝ゚`)「のわああああああああ!?」

いきなり少女に突き飛ばされ、ごろごろと地面を転がる。
向かいのビルの壁に背中から激突すると同時に、少女がいた辺りに人形の腕が叩き付けられた。
粉雪が飛び散り、地震と錯覚するほどに大地が揺さぶられる。

(;´・_ゝ・`)「きっ……君!!」

間抜けな呼び方だとは自覚している。
しかし名前を知らないのでそうとしか呼べなかった。

141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 06:03:06.46 ID:x7XZZy3/O
ξ ⊿ )ξ

返事は無い。
少女は完全に沈黙していた。
まさか死んではいないだろう。そう思いたい。

(;´・_ゝ・`)「くそっ……くそっ!」

再び駆け寄り、肩当てを掴む。
重たい少女を引きずり、何とか人形から距離を取ろうとする。

|    ○   ゝ   ○    |「オオオ……」

が、人形のこの大きさの前ではあまりに虚しい足掻きだった。
人形はどこか余裕ぶった動作で、更に大きく腕を振り上げる。
あれを食らえば、間違いなく少女も自分もおしまいだろう。
デミタスは歯噛みする。

(;´・_ゝ・`)「ぐっ……!」

少女を連れて逃げる。
自分だけ逃げる。
自分がこいつと戦う。

幾つかの選択肢が浮かぶ。
悲しいことに、今やさすがの自分にもどれも実現出来そうになかった。
あと数秒で、自分と少女は叩き潰されてしまうに違いない。

(;´・_ゝ・`)「何なんだ……何なんだこれは……!」

143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 06:06:02.58 ID:x7XZZy3/O
川 ゚皿゚)「そーはイカのキンタマじゃボケぇぇえええええ!!!!」

突然、下品なセリフとは裏腹な美声が辺りにこだまする。
同時に、人形の身体の各所で爆発が起こった。

(;´・_ゝ・`)「み、ミサイル!?」

たじろぐデミタスの目の前に、妙な乗り物が凄まじい速度で落下してきた。
車とも飛行機とも形容しがたい。
何故なら黄色い潜水艦に、タイヤと、ドリルと、プロペラと、翼がついていたからだ。

( ゚д゚ )「どこの馬の骨だか知らんが、その娘を連れて早く乗り込め! ほら死ぬぞ急げ!!」

何か失礼な声が潜水艦から聞こえてくる。
天の助けにしては少々格好の悪い乗り物だが、当然文句を言うつもりはなかった。

(´・_ゝ・`)「だっせぇけどありがてぇありがてぇ!」

しかししっかり罵倒はしつつ、少女を引きずり潜水艦の中へと乗り込む。


( ゚д゚ )「離・脱!!」


潜水艦はジェットで飛び上がり、人形が体勢を整える前に上空へと飛び去っていった。

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 06:07:51.13 ID:x7XZZy3/O
( ゚д゚ )「──ふう……全く、悪ノリで造っていた全環境適応型潜水艦、ミンナーマシンがこんな形で役に立つとはな」

しばらくして、操縦席の白衣姿にマフラーを巻いた壮年の男が口を開く。

川 ゚ -゚)「さすがですね博士」

傍らで少女に手当てをしながら、黒髪の女性が投げやりな返事をする。
デミタスは所在なさげに座席の隅に座っていた。

(´・_ゝ・`)「……おい、あんたらは一体何者なんだ?」

( ゚д゚ )「詳しい説明は省くが、さっきのような化け物と戦っている者だ」

(´・_ゝ・`)「あの化け物は?」

( ゚д゚ )「DATウイルスと呼ばれる人心を惑わす怪物だ。あれはその変異体だろう」

案外あっさりと、白衣の男は質問に答えてくれた。
傍らの女性は無言で少女の妙な衣装に接続したノートパソコンを操作している。

146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 06:10:01.25 ID:x7XZZy3/O
(;´・_ゝ・`)「あんな物が……この世に存在するなんて」

( ゚д゚ )「政府は隠匿しているからな。っていうか単に知らされてないだけなんだけど。私からも聞いていいか?」

(´・_ゝ・`)「ん?」

( ゚д゚ )「貴様は何故あの雪に取り込まれない? あれは全て雪もどき、雪の特性を獲得したウイルスだ。
     あれに触れた人間は無条件で内部に取り込まれてしまうはず」

(;´・_ゝ・`)「そ、そんな事言われてもな……何か記憶もはっきりしないし……」

( ゚д゚ )「……まあいい。そういえば、貴様の顔に見覚えがある気がするぞ。なあクー」

川 ゚ -゚)「気が散るから話し掛けないで下さい」

( ゚д゚ )「あっ、うん、ごめん」

川 ゚ -゚)「……よし。変身解除」

クーと呼ばれた女性が小さく囁くと、たちまち少女の衣装は弾けて消えてしまう。
残ったのはどこにでも居そうな、普通の服を着た少し幼い女の子だった。

148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 06:13:08.88 ID:x7XZZy3/O
川 ゚ -゚)「ツン、聞こえるか?」

すかさず女性は少女に毛布を巻きつけ、優しく頬に触れる。
外傷は無いようだが、顔色はよくない。
彼女の瞳がわずかに細められる。

ξ ⊿ )ξ

ξー⊿ー)ξ「ん……んん……」

川 ゚ -゚)「……」

ツンと言うらしい少女は小さく身じろぎして、吐息を漏らす。どうやら命に別状は無いらしい。
無表情な女性も、何となく安堵しているような気がした。

(´・_ゝ・`)「……おい」

(´・_ゝ・`)「この子は何なんだ? どう見ても普通の女子高生だぞ」

( ゚д゚ )「……」
川 ゚ -゚)「……」

(´・_ゝ・`)「何で、こんな子供を戦わせてるんだ? 何故自分達で戦わないんだ?」

( ゚д゚ )「……」
川 ゚ -゚)「……」

二人は黙したままだ。
それどころか『何この人ちょっとやりづらい』みたいな空気を感じる。
デミタスはよくそんな視線を職場でも向けられていた。

150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 06:15:34.25 ID:x7XZZy3/O
川 ゚ -゚)「……あなたには関係の無い事です」

( ゚д゚ )「私達とて好き好んでやっている訳じゃない。
     だが現状彼女にしか出来ない事であり、彼女も危険を承知した上で協力してくれている」

口々に答える。
正論なのだろう、だが納得は出来ない。

(´・_ゝ・`)「お前らもあれを見ただろう!? あんな恐ろしい化け物を、たった一人で──」

ξ゚⊿゚)ξ「いいの、おじさん」

(´・_ゝ・`)「!」

川 ゚ -゚)「ツン! 気がついたのか」

ξ゚⊿゚)ξ「ごめん、少し前から起きてた。ありがとうおじさん、でも大丈夫ですから」

少女……ツンは毛布を早々に引き剥がし、肩を回す。

ξ゚⊿゚)ξ「博士。状況は?」

( ゚д゚ )「変わらんよ。交差点の中心地に例のデカブツがいて、あの雪もどきは今も領域を少しずつ拡大している」

ξ゚⊿゚)ξ「そう」

( ゚д゚ )「闇雲に戦っては駄目だ。気づいたとは思うが、この雪自体が全てDATだ。
     本来存在するべき女王が無く、形を成さない。不安定だからこそ、こちらからの攻撃にも強い」

152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 06:17:44.19 ID:x7XZZy3/O
川 ゚ -゚)「……だが、そんな物には大抵核が存在するものだ。それらしい反応も確認されている」

ξ゚⊿゚)ξ「そいつを潰せばおkって事? お約束ね」

ツンは言い放ちつつ立ち上がる。
鋭い瞳には相応の、強い意志の光が宿っていた。

(;´・_ゝ・`)「ちょ、ちょっと待て。もう行くつもりなのか!?」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ、まあ」

(´・_ゝ・`)「まあってさっきあんだけボコボコにされといて──」

ξ゚⊿゚)ξ「……カラオケ」

(´・_ゝ・`)「へ?」

ξ゚⊿゚)ξ「もうすぐカラオケの待ち合わせの時間なんです。あと、多分どっかに友達も埋まってるから」

ξ゚⊿゚)ξ「早く助けてあげないと、ね」

そう言って、彼女は小さく微笑んだ。

153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 06:19:18.48 ID:x7XZZy3/O
◆     ◇     ◆     ◇

ξ゚⊿゚)ξ「うーぅ、凄い風」

再びレイナーユニットを纏い、ミンナーマシンの屋根に立つ。
てっぺんにはプロペラがあったがただの飾りらしく、全く動いていない。邪魔なだけだこれ。

ξ゚⊿゚)ξ「何か……さっきよりデカくなってない?」

上空からの街並みはなかなかに良い眺めだが、それを楽しむ余裕は無い。
先ほどの雪山人形が、そろそろ郊外からも視認出来そうな大きさにスケールアップしつつあったからだ。
もはや雪人形というより雪ビオランテと呼んだ方が良さげである。

( ゚д゚ )「核と思しき反応は、あのデカいのの中心部から出ている。戦うしかなさそうだな」

ξ゚⊿゚)ξ「まあそうなんでしょうね」

剣の柄を握り締める。
先ほど使っていた物とは違う、刀身の存在しない剣だ。
今の状態では本当は剣と呼べないのだろうが、とにかく剣なのである。

154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 06:22:50.70 ID:x7XZZy3/O
( ゚д゚ )「しかし、アレだな」
ξ゚⊿゚)ξ「何」
( ゚д゚ )「こんなに巨大な敵を相手にするんだったら、巨大ロボを造っておくべきだったな」

ξ゚⊿゚)ξ「そんなもん街中で動かさせてたまるか」
( ゚д゚ )「名前はプリエステスとかどうだ?」
川 ゚ -゚)「パクリ乙」

( ゚д゚ )「じゃあハグルマオーで」
ξ゚⊿゚)ξ(プリエステスの方が良いな……)

軽口を叩いている間に、ミンナーマシンはどんどん高度を下げていく。


|    ○   ゝ   ○    |「グオオオオオオオオオオオオオオン……」


さっそくこちらに感づいた雪ビオランテが、雪玉を数発飛ばしてくる。
雪玉というと迫力が無いが、食らえばおそらくジャンボ機も砕け散ってしまう威力だろう。


ξ゚⊿゚)ξ「よっこら──」
ξ#゚⊿゚)ξ「せっと!!」


思い切り踏ん張り、マシン全体にバリアを張り巡らせる。
システムの制御は子機を操作しているクーに任せて、私はただ全力でエネルギーを放出する。

160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 06:48:16.85 ID:x7XZZy3/O
(;´・_ゝ・`)「うわああああ!」

おじさんの叫び声が聞こえる。
雪玉を見て叫んでいるのだろうが、弾丸はこちらに届く事無く力場に遮られ消えていく。
それでも突風を受け、マシンがガタガタと大きく揺さぶられた。

( ゚д゚ )「まだまだ来るぞ! しっかり掴まってろ!!」

ミンナーマシンは更に下降しつつ、凄まじい勢いで迫り来る触手をひらりひらりとかわしていく。
うねる触手の向こうで、雪ビオランテが大きく口を開け始めていた。
何か来る。

|    ○   ゝ   ○    |「グオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

ξ゚⊿゚)ξ「博士!」

( ゚д゚ )「ミサイル発射!!」

マシンから放たれたミサイルが、紫煙を吐きながら雪ビオランテへと進む。
しかし。

ξ゚⊿゚)ξ(やつの方が──速い!)

雪ビオランテの口の奥がギラリと輝く。
同時に、視界が黒に覆い尽くされる。

ξ; ⊿ )ξ「ッッ!!」

猛烈な圧迫感。
ビリビリとバリア越しにもプレッシャーが伝わってくる。

164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 06:51:12.79 ID:x7XZZy3/O
(;゚д゚ )「なんじゃこりゃ!? 虚閃か、セロなのか!」

ξ ⊿゚)ξ「直……、接、エネルギーを吐き出してきた……みたい、ね」

川 ゚ -゚)「ツン、大丈夫か!?」

ξ゚⊿゚)ξ「大、丈夫」

スーツの隙間から、ぶしゅうと煙が吹き出る。
パリパリとジュエルから静電気が散っていた。
ヘルプモニタから幾つも出ているエラーは見ない振りをしておく。

ξ゚⊿゚)ξ「それより、あれ!」

雪ビオランテの口を指差す。
ビオランテの口内、黒い蒸気の向こう側。
拳大ほどの大きさだが、この距離でも白い中にポツンと青い物があるせいかやたらと目に付く。

川 ゚ -゚)「反応が……間違いない、あれが核だ!」

( ゚д゚ )「何だあれは……宝石箱?」

166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 06:53:46.93 ID:x7XZZy3/O
(´・_ゝ・`)「あ……あれ……は」

ξ゚⊿゚)ξ「おじさん? 何、知ってるの?」

(´・_ゝ・`)「ああ……あれは、俺の、だ」

(´ _ゝ `)「思い出した……全部……」

( ゚д゚ )「何かとりあえず空気を読んで一時撤退だ!!」

川 ゚ -゚)「さすがです博士!」

ミンナーマシンが大きく旋回し、再び上空に逃げ込む。
雪ビオランテが攻撃を止めた辺りで、おじさんがぶつぶつと呟き始めた。

169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 06:55:52.72 ID:x7XZZy3/O
(´・_ゝ・`)「……そうだ、この雪……、全部俺のせいなんだ……」

( ゚д゚ )「どういう事だキバヤシ!」

(´・_ゝ・`)「妻に渡そうと思って買った指輪を受け取りに、街へ行って……その帰りに、突然苦しくなって……」

ξ゚⊿゚)ξ「以前ウイルスに襲われた時、何かされていた……?」

(´・_ゝ・`)「分からない。ともかく、何か吐いたと思ったら宝石箱に張り付いて……いつの間にか、こんな事に」

川 ゚ -゚)「あれが核になっているのなら、あの宝石を破壊しなければ奴は倒せんな」

ξ;゚⊿゚)ξ「え、でも奥さんに渡すプレゼントなんでしょ?!」

(´・_ゝ・`)「……いや、良いんだ。もう……意味の無い物だから」

川 ゚ -゚)「……」

171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 06:59:11.97 ID:x7XZZy3/O
(´・_ゝ・`)「もう、とっくに愛想は尽かされてるんだ。今じゃ口もろくにきいてくれない。
        ずっと前から知り合いに準備してもらっていた物だから、キャンセルも出来なくて」

( ゚д゚ )「……」

(´・_ゝ・`)「渡すつもりすら……本当は無かったんだよ。それでも捨てる事も質に入れる勇気も無くて、ただ街中をふらついて……」

おじさんの声には、苦悩と、自嘲めいた響きが混じっていた。

ξ゚⊿゚)ξ「……おじさん」

(´ _ゝ `)「俺は……俺は、それなのに……全然関係ない周りの連中を、憎いと思ってしまった……!」

( ゚δд゚ )「それがDATウイルスの力だ。人の心を人知れず破壊する、恐ろしい魔物だよ」

川 ゚ -゚)「博士鼻ほじんないで下さい」

(´ _ゝ `)「う……ううっ、く……!」

ξ゚⊿゚)ξ「おじさん。おじさん」

優しく語り掛ける。
マシンの内部と屋根の上では、声を掛ける事しか出来ない。

174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 07:02:08.86 ID:x7XZZy3/O
(´・_ゝ・`)「……ツン……君?」

ξ゚⊿゚)ξ「渡してあげて下さい、指輪」

(´・_ゝ・`)「だけど壊さないと駄目なんだろう?」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃ、壊さず済んだら渡して下さいね」

ξ゚⊿゚)ξ「……私も頑張りますから」

剣を握る。
力を込める。
大きく息を吐き、指の先まで念入りに神経を集中させていく。

ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、おじさん。何で見ず知らずの私を心配してくれたんですか?」

(;´・_ゝ・`)「え? そ、それは……助けてもらったし……」

くすりと笑みが漏れる。
きっと、この人はお人好しなのだろう。
それで色んな物を損してきたのだろうが、やはりそれでもお人好しなのだ。

175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 07:05:52.12 ID:x7XZZy3/O
ξ゚⊿゚)ξ「何で私がこんな事してるのかっていったら──」

ξ゚ー゚)ξ「……多分、それと同じ理由ですよ」

柄を掲げる。
大気が震え、スーツが光り輝く。
柄から雷鳴のような轟音が響き渡り、巨大な紺碧の光柱が出現する。

川 ゚ -゚)「ユニットの出力が上昇中! 120、130……まだ上がります!」

ξ#゚⊿゚)ξ「はあああああああああああああああああああああああ……!」

( ゚д゚ )「来たか! ツン君!」

ξ#゚⊿゚)ξ「博士、もう一度マシンを!」

( ゚д゚ )「了解だ!!」

マシンが頭を下げ、急降下に近い勢いで雪ビオランテに接近していく。
ビオランテが再び口を開こうとするが──

( ゚д゚ )「発射! 発射!! 発射!!!」

176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 07:08:20.42 ID:x7XZZy3/O
何故か三回繰り返して、博士がマシンからミサイルや機関銃を乱射する。
続けざまに衝撃を受けて、雪ビオランテの首が歪む。
黒い怪光線が明後日の方向に射出されて、それは虚空へと消えていった。


|    ○   ゝ   ○    |「グウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」



ξ#゚⊿゚)ξ「りゃああああああああああああ!!」


マシンから飛び降り、ブーストにより加速する。
冷えた空気を鼻先で切り、思い切り剣を振り上げる。



ξ#゚⊿゚)ξ「数多の怨念集いし悪鬼、今断ち切るは破邪の剣──荒らしはプロバが追い出し出禁!!」

177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 07:11:06.56 ID:x7XZZy3/O
ξ#゚⊿゚)ξ「影! 糾! 全! 裁!」


ξ#゚⊿゚)ξ「輝聖ざあああああああああああああああん!!!!!!」



|    ○|   |○    |「サクジェヌォアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!111」


振り下ろした剣はうなりを上げ、巨大な雪人形を真っ二つに切り裂く。
エネルギーを直接叩き込まれたDATウイルスは次々と自壊していき──

街中に広がった雪は、まばゆい光の粒となって跡形も無く消え去った。

179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 07:14:36.11 ID:x7XZZy3/O
◆     ◇     ◆     ◇

(´・_ゝ・`)「…………」

全てが夢だったのではないか。
雪のかけらすら残らない街並みを眺めて、そんな錯覚をしそうになる。

もちろん実際はそんな事は無かった──早くも復旧が始まってはいるものの、破壊された部分はあるし、
怪我人も出たらしく救急車が度々行き交っている。

それでも十数分前の悪夢のような状況を考えてみれば、見違えるように元通りになっていた。

ξ゚⊿゚)ξ「おじさん。これ」

手を取られ、その上にぽんと箱が置かれる。
真っ二つに斬られたはずの宝石箱は、傷一つついていなかった。

ξ゚⊿゚)ξ「あれ、実剣じゃなくてエネルギー体ですから。少し工夫すればDATだけを消す事も出来るんです」

説明の意味は分からないが、とにかく無傷で取り戻してくれたらしい。

181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 07:16:46.00 ID:x7XZZy3/O
(´・_ゝ・`)「…………」

ξ゚⊿゚)ξ「あとは、おじさんが自分で判断して下さい。……無事で何よりでした、それじゃ」

少女はぺこりと軽く頭を下げ、背を向ける。
雑踏に紛れていく小さなその背中に、たまらず声を掛けた。

(´・_ゝ・`)「ありがとう! 本当に……ありがとう……!」

少女は肩越しに小さく手を振って、
そして人混みに消えていく。


手の中の宝石箱を開く。
小さな石がはめられた指輪は、以前と変わらぬ輝きをもってそこに佇んでいた。

183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 07:19:20.16 ID:x7XZZy3/O
◆     ◇     ◆     ◇

ξ゚⊿゚)ξ「疲れた……」

( ^ω^)「お疲れ様だお、僕も助かったお」

ベンチに腰掛け、顔を覆う。
久しぶりに死ぬかと思ったが、何とかかんとかそれは免れた。
今後あんな怪物は出て欲しくない。

遠くでまた、救急車のサイレンが鳴っている。どこかで誰かが、怪我をしてしまったのだろう。

( ^ω^)「……全部に責任を感じる必要は無いお」

どうやら顔に出ていたらしい。
隣に腰掛けながら、ブーンが小さく囁いてくる。
同時に、私の膝の上に缶コーヒーを乗せてきた。
私が買っていたものと同じものだ。

ξ゚⊿゚)ξ「……ありがと」

( ^ω^)+「おっお、どいたま」

184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 07:21:33.79 ID:x7XZZy3/O
素直に受け取って、手の中で缶を転がす。
冷えた指先には缶の熱が心地よい。

ξ゚⊿゚)ξ「……あ、ブーン」

( ^ω^)「お?」

ξ゚⊿゚)ξ「渡す物があったんだけど……ごめんね、ボロボロになっちゃった」

鞄からプレゼントを取り出す。
包みからはみ出たマフラーは、端の部分が見事に破れてしまっていた。

(*^ω^)「クリスマスプレゼントかお!?」

ξ;゚⊿゚)ξ「で、でかい声出すな! ……また今度、ちゃんと作り直すからね」

(*^ω^)「マジかおテンション上がるお! ちょっと巻いてみるお」

( ^ω^)「……どうだお?」

ξ゚⊿゚)ξ「ボロいせいで貧乏臭い」

( ^ω^)

(ヽ´ω`)「自分は悪くないのに何かショックだお……」

185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 07:23:26.48 ID:x7XZZy3/O
( ^ω^)「……お、そろそろ時間だお!」

ξ゚⊿゚)ξ「カラオケ、本当に行くの?」

( ^ω^)「たりめーだお、何の為に来たんだお! さあ皆待ってるかもしれんお、像んとこ行くお!!」

ξ;///)ξ「な、ななな何自然に手ー出してんだよ取らねーよ何考えてんだよ!」

( ^ω^)「wwwすまんこ、さすがに自分で立てるおねw」

ξ;゚⊿゚)ξ「え、あ、ああ……うん」

( ^ω^)「さあ像まで競争だお! ダッシュだお!」

ξ;゚⊿゚)ξ「しないわよ!」

駆け出すブーンの後を、ふらふらと追い掛ける。
夜の空気は冷たく、口から漏れた吐息は白い。
それでも寒くないのは、握ったコーヒーのせいだけではないのだろう。
きっと。

186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/26(土) 07:25:40.58 ID:x7XZZy3/O
◆     ◇     ◆     ◇

('A`)「…………ふむ」


('A`)「まあ、良いデータが取れたのかな?」


('A`)「年始のエネルギーもまだあるし。まだまだチャンスはあるよね」


('3`);;.「……ぶぇっくし!」


('A`)「あーさみーちくしょー」


('A`)「そーいやこれセーターだっけ。中に着て帰るか……」


('A`)「……クンカクンカ」


('A`)「チッ、何の臭いもしねー」





終わり

コメント

おもしろかった
続編も出そうなふいんきだし期待してる
[2009/12/29 03:55] URL | #- [ 編集 ]


伏線回収しろwwww
[2010/01/17 22:03] URL | #- [ 編集 ]


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