mesimarja
気に入ったスレを集めてみました。
09 | 2017/10 | 11
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

僕は天才作者のようです
1 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 21:33:44.63 ID:m0SznsqMP
恋人がアナルセックスを求めてきた。

もうすぐ世界が終わるというのに、随分悠長なものだと僕は思った。

しかし彼女の逃避的心情は理解できたので、僕は応じることにした。

営みは数時間に渡ったが彼女は満足に快感を得ることができなかったようだ。

恋人は不意に営みをやめると僕に向かって凄まじいばかりの罵詈雑言を吐きかけた。

ζ( ー ζ「ねえどうして世界は終わってしまうの私はぜんぜん気持ちよくないのよなのにどうしてなのよ」

僕は何も答えられなかった。

僕は卓越した文章力を持っていたが、彼女の疑問には答えられなかった。


2 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 21:37:09.42 ID:m0SznsqMP
その思考をそのまま彼女に告白すると、彼女は泣きわめきながら僕に訴えてきた。

ζ( ー ζ「じゃあ私を記録してよたった十八年間しか生きずに死んでしまう哀れな私を貴方の文章力で」

嗚呼、確かに僕は彼女を記録できるだろう、人並み外れた天才的な文章力によって。

しかしそれは叶わない、もうすぐ世界は終わってしまう。

文章力を発揮するにはどうしても時間が必要なのだ。

それでも僕は書くことにしたが、ほんの少しキーボードを叩いたところで彼女は錆びたカッターで首を切った。

死んでいく彼女に僕はたった一文の言葉しか贈ってやれなかった。

即ち、「おまんこは良い具合だったが、アナルはそうでもなかった」。

3 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 21:39:31.21 ID:m0SznsqMP



僕は天才作者。のようです




5 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 21:43:04.61 ID:m0SznsqMP
天才作者である僕はネットの世界で大きく活躍していた。

しかし僕は天才であるがゆえに誰からも理解されるというわけではなかった。

僕の高尚な作品よりも馬鹿でも理解できる作品の方が人気があった。

そういう作品はやたら持て囃され、絵を描かれ、時には実世界での出版にこぎ着ける場合もあった。

一方で僕の作品は固定ファンがついたものの数はあまり多くなく、絵を描かれることもほとんどなかった。

しかしそれは仕方がない、僕は天才で、天才とは常に同時代には理解されがたいものなのだ。

天才は後世になってようやく評価される、それも構わないと僕は思っていた。

しかるにもうすぐ世界が終わる。

世界が終われば、後世も無くなる。僕を評価すべき数多の子孫がいなくなる。

6 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 21:46:48.40 ID:m0SznsqMP
電話がかかってきた。

母からだった。

J( 'ー`)し「なんだいお前まだ死んでなかったのかい相変わらず愚図だねえ自殺すらできやしないんだから」

J( 'ー`)し「今からお母さん死ぬからねアンタに電話したのは私の死に様を聞いてもらうためだよ分かるかい」

J( 'ー`)し「今目の前に原子爆弾が落ちたよデッカいキノコ雲だねえ放射能で死ぬぐらいなら自分で死のうねえ」

そして銃声が聞こえ、何かがドッサと倒れた。

受話口から母の声は聞こえなくなり、代わりに誰かが悲鳴をあげて逃げ去る様子が響いていた。

母は自殺を成し遂げたのだろう、しかしあまりにも実感の湧かない出来事だった。

8 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 21:49:39.23 ID:m0SznsqMP
この家には最初、僕を含めて四人が暮らしていた。

母と、父と、妹と、僕。

さっき母が死んだことで、今生きているのは僕一人になってしまった。

父は世界の終わりを告げられた直後に食卓で自分の腕を食べ始めて出血多量で死んだ。

妹は彼氏と二人で世界の果てまで逃避行する途中に暴徒にボロ雑巾の如く強姦されて挙句焼き殺された。

僕は妹の死体を見たがそれはなんというか、妹より肉塊に似ていたような気がする。

ちょうどいい焼き具合だった妹を僕は内臓を残してほとんど食べ尽くした。

妹は華奢だったからかあまり美味しくなかった。

しかし貴重な栄養源となった。

彼女は多分、死んでも人の役に立とうとする善人だったのだろう。

9 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 21:52:31.47 ID:m0SznsqMP
僕はこれまでにネット上で十数作の小説を発表した。

そのほとんどが評価され、固定ファンによって持て囃された。

他の、一般大衆にはさっぱりだった。

それこそがつまり、僕が天才であるという証拠と言えるだろう。

絵を描くファンはいなかったがそれは幸いなことだった。

ネット上の絵描きは基本的にコバンザメのようなものだと僕は思っている。

その存在に恩恵を受ける奴は居るだろうが、それは決して僕じゃない。

嬉しさより、自分の作品を汚されたという気持ちの方が大きいのだ。

10 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 21:56:58.48 ID:m0SznsqMP
僕はまだ大学三年生だ。

これからまだ先に未来があった、小説家になるという夢も、或いは有り得たかも知れなかった。

しかしそれらは世界が終わってしまうことは全て泡沫の夢となってしまう。

それはどうしようもないことで、どうにもならないことなのだ。

だが、僕の天才的作品群が後世の人びとの目に映らないのはどう考えても惜しい。

必ず後世は評価してくれる、僕にはその自信がある、自信があるんです。

カフカもフォークナーもメじゃない、僕の作品は唯一孤高で、何よりも面白いのだ。

僕は面白いのだ。

11 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 22:00:10.08 ID:m0SznsqMP
窓の外から誰かの叫び声が聞こえる。

見てみると、路上で一人の男がメガホン片手に演説をかましていた。

(,,゚Д゚)「皆さん落ち着いてくださいどうか自殺などと言う馬鹿な真似は止めてください止めてください!」

(,,゚Д゚)「世界が終わるというのはただの妄想です幻想です想像の産物ですそれ以外の何者でもない!」

(,,゚Д゚)「集団ヒステリーですパニックに陥ってるだけなのです明日は来ます明後日も来ます明明後日も!」

(,,゚Д゚)「だから皆さん落ち着いて考えましょう何が原因で世界が終わるか私たちは何も知らないじゃないか!」

12 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 22:04:30.23 ID:m0SznsqMP
そうやって男が叫ぶ間にも隣のマンションから次々と人びとが飛び降り自殺をしていた。

窓の外に首を出し見上げると今まさに生後数年の幼児が自分の意志で屋上から飛び降りようとしていた。

後ろから母親らしき女性がけしかけている。

('、`*川「さぁーいきまちょうねー天国にいきまちょうねーおちたらいいんでちゅよぉーおちたらー」

幼児は無邪気に飛び降りて、数秒と経たずに地面に叩きつけられた。

恐らくは即死だろう、肉体はしばらくピクピクしていたが、幼児は何もしゃべらなかった。

屋上では先ほどの女性が手を叩いてはしゃいでいる。

('、`*川「わぁーよくできまちたねぇーさすが私の息子よぉーぱちぱちぱちぱちぱちぱち!」

そして飛び降りて幼児の上に折り重なって死んだ。

16 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 22:10:32.06 ID:m0SznsqMP
(,,゚Д゚)「ああああ何故そうやって無駄にするのです大切な命を一つしかない命をそんなに容易く擲つのです!」

男はまだ演説をかましていた。

(,,゚Д゚)「まだ決まったわけじゃないそもそも終わらないのです世界は終わらないのです世界はそれなのに!」

(,,゚Д゚)「全ては妄想なんだ僕はそれを知っている貴方達はまるで我慢出来ない犬のようだ!」

しばらくして群衆が彼の周りに集い始めた。

しかし熱心に聞き入ろうとしているわけではない、皆一様に男を憎々しげに睨みつけていた。

(,,゚Д゚)「安心してください誰も死なないのです終わらないのですそれだけ僕は伝えたい僕は知っているんだ!」

やがて男は取り囲んだ一人の老人に杖で思い切り殴打された。

18 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 22:15:07.74 ID:m0SznsqMP
/ ,' 3「くだらんことを言うな全て終わるんじゃみんなみいんな死ぬんじゃ誑かすなこの啓蒙主義者め!」

ξ゚⊿゚)ξ「何も知らないのはあなたなのよみんな死ぬし世界が終わるのよだってみんなそう言ってるじゃない」

( ´∀`)「一人だけ英雄気取ったらかっこいいと思いやがって!」

川д川「偽善者なんざ死んじまえみんながみんな死ねばそれでいいじゃないかハッピーエンドじゃないか!」

そうして男は数十人の男女によって私刑を下された。

殴られ蹴られ引き裂かれ噛みちぎられへし折られた彼は原型をとどめずに死んだ。

だがそれだけでは飽き足らなかったのだろう、やがて男女は無差別に殺し合いを始めた。

数分後、全員が死んでいた、おびただしい血と肉の山が築かれた。

21 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 22:19:13.19 ID:m0SznsqMP
世界はもしかしたら終わらないのかも知れない、僕だってどうやって終わるのか知らない。

だからもしかしたらあの演説の男は正しいのかもしれなかった。

しかし、最早それを信じて世界中の人間が死んでいるし、殺している。

今更もとの生活に戻れるはずがないのだ、そして誰もそれを望んでいないのだ。

あの男が殺されたのは当たり前のことだろう。

彼は、現時点でもっとも注意せねばならない逆鱗に触れてしまったのだから。

天災だろうと人災だろうと意識的だろうと無意識的だろうと、世界が終わることに変わりはないのだ。

僕の読者がいなくなることにも変わりはないのだ。

23 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 22:23:34.51 ID:m0SznsqMP
ところで最近僕は夢を見た。

世界の終わりに関する夢だ。

それはどこかからの情報に影響された夢なのかも知れない。

しかし、そのために僕は僕自身にとっての世界の終わりを具体的にイメージすることが出来ていた。

夢によると、僕にとっての世界の終わりは一つの爆弾が降り注ぐことによって訪れる。

その爆弾は、ちょうどこんな形をしている。

25 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 22:27:13.99 ID:m0SznsqMP
        あああああああああああああああ
         あああああああああああああ
           あああああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
              あああああああ
               あああああ
                あああ
                 あ








___________________________________
earthearthearthearthearthearthearthearthearthearthearthearthearthearthearth

27 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 22:32:11.30 ID:m0SznsqMP
僕のファンは僕の作品よりも作者、つまり僕自身のファンだったのかも知れない。

僕の作品は面白いからではなく、『僕の作品だから』賞賛されていたのかもしれない。

そんな不安が時々湧き起こるのだ。

それはとても恐ろしい話だ。

確かに、作者のナルシシズムはそれで収拾がつくだろう。

しかし、作品のナルシシズムは?

作品自身の達成欲などは一体誰が満たしてくれるのだ?

恐ろしい話だ、いずれ僕は作品に反逆されるかもしれない。

だが、僕の恐怖を分かってくれるファンなどいなかった、奴らも馬鹿であることに変わりなかった。

彼らは一様にこういった「お前が褒められてることに変わりはないじゃないか」。

違う、まるで違う!

30 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 22:37:43.55 ID:m0SznsqMP
ああ、考えるだに恐ろしい。

だから僕は考えるのをやめることにした。

誰も理解しやしまい。

それに、もうすぐ世界が終わってしまうのならば僕の懸念も僕の命とともに消え去ってしまう。

少なくとも、もうあと60年ほど昔に生まれておきたかった、と切実に思う。

そうすれば、少なくとも有名作家として名をはせるだけの余裕があったのに。

僕の天才的な創作能力は、それをするのに十分だというのに。

たった二十年やそこらで潰えてしまうなんて、あまりにも虚しいじゃないか。

32 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 22:44:13.65 ID:m0SznsqMP
再び電話が鳴った、今度は友人からだった。

(´・ω・`)「ああもしもし僕だけど今何してるってか生きてたのかいやよかったよかったもうすぐみんな死ぬけど」

(´・ω・`)「それで何で電話したかって言うとさ実は僕キミに謝らないといけないことがあるんだよね」

(´・ω・`)「キミの彼女いたじゃんか三日前ぐらいなんだけど僕彼女とヤッちゃったんだよね」

(´・ω・`)「いやあ最高の具合だったよまるで処女みたいだった本当に気持ちよくてすぐ射精したよ」

(´・ω・`)「彼女も結構感じてたっぽいしあんまり罪悪感はないんだけどさまあ一応謝ろうかとね」

(´・ω・`)「別に彼女は完全にキミを裏切ったわけじゃないよその証拠に終わったら彼女めっちゃ怒ってたもん」

(´・ω・`)「怒って怒って包丁持ち出して僕を殺したんだ」

(´・ω・`)「ああそうか僕はあの時死んだんだった」

(´・ω・`)「死んだんだった」

電話は切れた。

34 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 22:50:34.85 ID:m0SznsqMP
小説家なんて夢、捨てちまえよ、とよく言われた。

そんなもんなれるはずがない、夢のまた夢だ。理想でしかない。

お前の作品は面白くない、と言われることもあった。

空想的過ぎて意味が分からない、黒歴史みたいだ好き嫌い分かれるよね俺は嫌いだ。

理想を捨てて現実を生きろなんて言う奴がいる、なんておそろしいことだろう。

小説を読んでいて空想を否定する奴がいる、なんておそろしいことだろう。

つまり奴らは馬鹿にするのもおこがましい白痴なのだ。

僕の小説はこんなにも面白い、だから当然作家にもなれる。

ほら、見てみろよ、ネットじゃこんなに賞賛されてるんだ!

俺より賞賛されてる奴もいるけど、そういうのは、つまり、アレだ、卑怯な奴らなんだ。

実力でここまでのし上がってきたのは僕だけなんだ!


36 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 22:54:51.53 ID:m0SznsqMP
僕のイメージした爆弾は全ての知性と言語と思考を破壊する。

そうすれば世界は当然終わってしまう。

想像する思考を失った人間なんてカスのようなものだ。

機械の方がまだ役に立つ。

今や人間が機械に勝っているアドバンテージなどその程度なんだから。

言語を失った人間なんて。

知性を失った人間なんて。

爆弾はまだ空の上にいる。

37 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 22:58:18.76 ID:m0SznsqMP
思うに、世界の終わり方は一人ひとりによって違うのだろう。

僕にとっての終わりは爆弾によってやってくる、しかしそうじゃない人もいる。

好例が僕の後ろで死んでいる恋人だ、彼女は結局自殺だったのだから。

そう、今や自殺は偏在している、さっき死んだ幼児も、その母親も。

演説をかました男も、その男をリンチした挙句殺し合いを始めた群衆も。

誰もがみんな、広い意味では自殺しただけに過ぎない。

極論、彼らは世界の終わりに殺されたわけではない。

だが、どうやらそれは賞賛される向きもあるようだ。

現に母親はそういう終末論の信者であったようだ。

本当に核爆弾は落ちたのだろうか?

38 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 23:00:35.51 ID:m0SznsqMP
僕はパソコンの電源を入れて椅子に座った。

右手でマウスを構えて左手をキーボードの上に置いた。

このパソコンはまだインターネットで世界中に繋がっている。

僕は真っ先に自分の小説を掲載しているサイトにアクセスした。

そこには感想を書くページがある、読者がここに自由な感想を書き込むことができるのだ。

僕はそれをザッと眺めた、何度も見ているから、覚えている感想すらある。

一番新しい書き込みが目についた。

「正直こいつ作者として名前売ってるだけで作品はそんなに大したことないよな長いし読む気にならない」

39 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 23:02:35.32 ID:m0SznsqMP
テレビをつけると世界各国の『死に様』が映し出された。

白人の国では無造作に自動車が積み重なっていた。

黒人の国では無造作に人体が積み重なっていた。

黄色の国では自分とは遠い誰か他人に責任を押しつけようと躍起になっていた。

結局のところみんな死ぬのだった。

狂躁の、或いは鬱屈とした自殺への行進は、最早流行のレベルにまで昇華されている。

その実、アナウンサーがカメラ目線で微笑を浮かべながらこう言うのだった。

( ・∀・)「さぁさぁ皆さん自殺の行進が始まっております乗り遅れずに参加しましょうそして天国で会いましょう」

( ・∀・)「大丈夫貴男も貴女も全員善人です天国に行けます地獄には落ちません離れ離れにはなりません」

( ・∀・)「それならば同じ事ですただ住む世界が変わるだけのこと頭の良い貴方なら意味が理解出来ますね」

40 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 23:05:52.83 ID:m0SznsqMP
そうしてアナウンサーは舌を根元から噛みきって床の上に吐き出した。

ニッと笑うその笑顔の口角から鮮やかな血液が次々に溢れ出していった。

やがてアナウンサーは昏倒した、カメラはそのまま動かなかった。

そのうちに画面が切り替わり、また何処かの誰かの死に様を中継し始めた。

彼は商売道具を折って死んだのだ、と僕は考える。

喋るプロであるアナウンサーが舌をかみ切ったのだ。

仮に僕が自殺するにしても、頭と両腕だけは守るようにするだろう。

何故ならそれらは代えがたい価値を持つモノで、それしか僕には取り得が無いからだ。

41 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 23:07:22.31 ID:m0SznsqMP
机の上には様々な書類が散らばっている。

それは例えば就職セミナーへの勧誘や公務員試験の対策講座やその他色々の現実たち。

そのうちの一枚を取り上げて読んでみる。

「就職難と言われるこの時代には早くから動くことが何よりもまず重要です」云々。

何故就職するかというと、金を稼ぐためだ。

何故金を稼ぐのかというと、そうしないと生きていけないからだ。

何故生きていくのかというと、

何故生きていくのか。

その答えが見つからなかったから、世界が終わるのかも知れない。


42 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 23:09:15.63 ID:m0SznsqMP
生きるとは、恋人を持つことだろうか。

生きるとは、与えられた仕事をやりこなすことだろうか。

生きるとは、ともかく生物学的に子孫を繁栄させていくことだろうか。

生きるとは、何らかの表現手段でみんなからの脚光を浴びることだろうか。

とかくこの世は生きる意味へのジレンマに溢れていた、若者は大抵そういうことに悩んでいた。

僕ぐらいの年頃になると子どもの頃に大人が教えてくれたことが嘘であることに気付いている。

つまり、未来は夢で溢れているとか、将来は明るいとか、努力すれば達成できるとか、そういう。

現実的に、生きるとは歯車になることだ。

機械よりも不正確で感情に左右される劣った歯車として社会を回すことだ。

僕は小説を書きたかった。

43 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 23:10:50.61 ID:m0SznsqMP
誰かが絵空事と言おうが、厨二病だとあざ笑おうが、とにかく僕は小説を書きたかった。

しかし生きるとは、時間を奪われることだ。

モラトリアムである現在を過ぎれば僕は小説を書くことさえできなくなってしまう。

ああ、こんなにも天才的な創作能力を持つ僕に小説を書かせないだなんて。

社会の損失だ!

だが僕の生まれたこの惑星のこの国はあまりにも残酷だった。

僕のような天才的能力の持ち主の空想さえ、妄想の一言で片付けてしまうのだから。

『作品より作者』『絵を描かれて嬉しいです』『お前より上はもっといる』『根本的に面白くない』『昔の方が』。

ええい、やかましい!

44 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 23:12:49.89 ID:m0SznsqMP
結果的に、世界が終わって良かったのかも知れない。

大成することの許されない才能なら、途中で消された方がなんとなくかっこいいじゃないか。

現実は迫る、それは凄まじい勢いで迫ってくる。

僕らに金を稼ぎ、結婚をし、自殺をせず、歯車となって働き働き働き抜くことを要求してくる。

そのための設備は様々揃っていた。

つまり電車だとか、コンピューターだとか、携帯電話だとか、コンビニエンス・ストアだとか。

全て人間を馬車馬のごとく働かせるために発明された優秀なシステムである。

こんな社会が今まで爆発しなかったことの方がおかしいのだ。

働けば働くほど自分の首を絞める社会が、暴走しなかったことの方がおかしいのだ。

45 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 23:13:56.71 ID:m0SznsqMP
振り返って恋人を見た。

恋人は死んでいた、自分で自分の首を切り開いたからだ。

そばにはドロドロの血にまみれた錆びたカッターが落ちていた。

もしかしたら恋人のために生きればよかったのかもしれない、と今更思う。

しかしそれにしたって僕は居ないわけだ、結局、僕の存在は極めて矮小なのだ。

一体どこのどいつだ、僕には存在価値があるなどと言う錯覚を与えた奴は!

世の中に六十億ばかりいるどうでもいい人間の中のどうでもいい人間の一人に過ぎないこの僕に!

小説……書いて生きていきたかったなあ。

しかし世界が終わるともなればよくわからないことになってしまった。

僕は結局歯車にならなくてもいい代わりに、小説を書くこともできなくなったのだから。

46 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 23:15:49.89 ID:m0SznsqMP
ああ、でもいいのかもしれない。

どうせ奴らは、読者達は、ロクでもない形で僕の作品を食い潰すに決まっている。

それは例えば絵のネタにしたり、朗読のネタにしたり、その他色々。

ああ、お前、そこのお前は僕がそれを書くのにどれだけ苦労したかわかっているのか?

察しろ、察しろと言うのを自分で言ったらみっともないからお前は積極的に察せるようになれ!

それを書くためにどれだけの時間を食い潰したか。

ほら見ろよこの腕の傷痕を、何本も何本も傷が走っているだろう、見ろよ見ろ、もっと見ろ!

なんなら写メにしてお前のアドレスに送信してやろうか、封筒に入れてポストに投函してやろうか。

そうしたらお前は気付くのか、どうせ作者に気を向けて終わるのだろうな。

なんてこったよごめんね作品、誰もお前に目を向けない。

面白いもつまらないも酸いも甘いも全てお前に感じさせてやれない。

47 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 23:17:17.41 ID:m0SznsqMP
もしも、もしも僕がこの過程、世界が終わっていく様を自伝的に記せばどうなるだろう。

読者は、愚鈍でもうどうしようもない読者達は何を思うだろうか。

厨二病とあざ笑うだろう、『狂っていればいいと思って』と蔑むだろう。

或いは、『作者の主張が出過ぎ』云々とでも言うのだろうか。

そうやって目を背けるのが理知的な大人のスタイルだからだ。

だが、みんなきっと気付いているはずなのだ。

世の中が酷くねじ曲がってしまっていることに。

あれよあれよという間に次々と発明された製品が多くの人間を殺していることに。

モラトリアムを終えればもはや今まで以上の幸せはやってこないことに。

誰もが呟く『生きててよかった』がどうしようもなくちっぽけな説得力しか持たないことに。

このまま突き進めばいずれ世界が終わってしまうことに。

みんなきっと気付いているはずなのに、どうして声高に叫ばないのだ。

48 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 23:18:04.06 ID:m0SznsqMP
結局、大人どころか子どもでさえ肝心なことは何も教えてくれない。

例えば、この服装のどのへんが論理的にダサいのか。

例えば、この小説のどのへんが論理的に面白くないのか。

例えば、この作業のどのへんが論理的に低賃金なのか。

例えば、この世界のどのへんが論理的に生きる価値を持ち合わせているのか。

誰も何も教えてくれないのに、何故か最適化を求めてくる。

そんな世の中がまともに続くはずがないじゃないか。

そう何でも最適化できるほど人間は利口じゃない。

確かに動物に比べれば頭がいいかもしれないが、それは比べる相手を間違えている。

50 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 23:19:39.42 ID:m0SznsqMP
ドンと部屋の扉が開いた、見知らぬ男が立っている。
  _
( ゚∀゚)「お前だって声をあげなかったじゃないかお前だって小説を書いていただけじゃないか」
  _
( ゚∀゚)「気付いていたと言うんなら知っていたと言うんならみんなを啓蒙すべきじゃなかったのかい」
  _
( ゚∀゚)「それすらしなかったお前に批判する資格なんかねえだろうお前も利口じゃない人間の一人なんだから」

そして彼はこちらに走り寄ってきた。

僕を押しのけ、コンピューターのディスプレイに頭から突っ込んだ。

バチバチ、と電気の音がして彼は死んだ、死んで動かなくなった。

51 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 23:21:05.28 ID:m0SznsqMP
僕は部屋を出ることにした、恋人はともかく見ず知らずの死体と同居する趣味はない。

爆弾は――。

        あああああああああああああああ
         あああああああああああああ
           あああああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
            あああああああああ
              あああああああ
               あああああ
                あああ
                 あ

僕の世界を終わらせる爆弾はいつ降ってくるのだろう。

52 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 23:22:13.61 ID:m0SznsqMP
何もかも妄想だったのかも知れない。

僕が面白い小説を書けるという確信も、その事実も。

僕がもしこのまま成長できれば素晴らしい作家になれていたという確信も、その事実も。

僕は全てを勘違いしてしまっていたのかも知れない。

もしかしたら僕が頑張ってリストカットをしてもその価値はないのかもしれない。

もしかしたら誰も僕の作品に価値を見出してくれていないのかも知れない。

もしかしたら僕の恋人は友人とのセックスに本気になっていたのかも知れない。

もしかしたら将来などなくて、あるのは歯車以上に残酷な、まるで戦場から帰ってきたジョニーのような。

ジョニーのような。

55 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 23:23:15.59 ID:m0SznsqMP
やめよう、やめてしまおう、妄想だったとしたら残酷すぎるじゃないか。

仮に全てが妄想だったとしても、誰かが手を差しのべてくれればいいじゃないか。

まさか、この社会は、歯車の都は、それすらもしてくれないのか!?

ああ、この人はぼくに笑いかけてくれている。そうしないと後で怒られるからだ。

ああ、この人はぼくに優しくしてくれている。そうするようにマニュアルに書いてあるからだ。

誰もがマニュアル通りに動いている世界で、僕の妄想を支えてくれる人などいやしまい。

だが、一方で人間は馬鹿だよ、マニュアル通りに動けやしないのに、表面上はそう繕ってんだ。

だって、分かるだろう。

ただ情報をバケツリレーのように回せば良いだけの新聞さえ、個人の思想が合わさってむちゃくちゃさ。

諦めようよ、人間、そんなに賢くないよ。

そうか、だから世界が終わるのか。

なるほど。

56 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 23:23:59.79 ID:m0SznsqMP
もういいよ!

お前ら絵を描けよ!

キャラ萌えでもしておけよ!

泣けよ!

笑えよ!

あざ笑え!

汚せ!

汚せ!

汚しちまえ!

パーティーだ!

57 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 23:24:57.60 ID:m0SznsqMP
外に出るとやはり自殺した人びとの山が築かれてしまっていた。

早め早めに死ぬことが賢い証拠だとしたら、僕はもう後戻り出来ない愚鈍者になっているんだろう。

僕はゆったりと歩き始めた、爆弾が落ちてくるその直前までそうやって過ごすつもりだった。

最早小説を書く時間もない、恋人とアナルセックスすることも叶わない。

ああ、いっそのこと狂ってしまえればいいのに。

狂ってしまって、いっそ作者ごと狂ってしまって。

あとは全部ああああああああああああああああああだけで埋め尽くせればいいのに。

中途半端に正常で居続けるからこういうことになる。

狂気に憧れすぎて幼くなってしまった、という具合。

59 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 23:26:20.73 ID:m0SznsqMP
だってもう僕の小説なんてどうせ消費物として終わってしまうだけなんだ、そんな世界にいる意味もない!

無茶苦茶に蛇行して走る車が電柱にぶつかって停止した、中から男がまろびでてきた。

作者としてばかり僕を見やがって、そんなのちっとも嬉しくない、ただ単に気持ち悪いだけじゃないか。

いよいよ小説さえ書けなくなってしまう。モラトリアムももう終いだ。

ぼうっと血まみれの男を眺めていると男は電柱とアスファルトに交互に頭を叩きつけ始めた。

何もかも終わりだ、僕の人生で楽しい部分は終わってしまった、あとは蛇足だ、蛇足の人生だ。

ほらもっと構えよ構ってくれよ自殺したいけど死にたくないんだよだから、もっと構えよ!

男の動きは段々と緩慢になってきた。白眼を向いて彼はそのうちぶっ倒れた。

こんなに叫んでも虚しいだけなのは、そう、現状で満足出来る能力を人間が持ってるからだ。

なんて、なんて虚しい能力!

60 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 23:27:15.07 ID:m0SznsqMP
人間の欲望は限りないというが、その後に続く言葉でどうにでもなる。

人間の欲望は限りない器であるのか。

人間の欲望は限りない忍耐で押さえ込むことが出来るのか。

空から人間が落ちてきた、撃ち合いしている二人が互いの弾を眉間に受けた。

ああ、もっと気楽に生きればよかったなあ。

好きなように好きな小説書いて、それだけでよかったんだよなあ。

なのに、どうしてこう、難しく考えちまうんだろうなあ。

マンホールから首だけが出てきた、側溝を左手が流れていった。

いろんな事気にして、読者を気にして、絵を気にして、評価を気にして、将来の食い扶持を気にして。

小説ってそんなもんなんかなあ、そういうもんなんだろうなあ。


61 名前: ◆5UIyUj9JO2 :2010/06/13(日) 23:28:29.31 ID:m0SznsqMP
以上や! しまいや! さいなら!

コメント

うーん。面白くなかった。才能ないな
[2010/06/28 06:17] URL | #- [ 編集 ]


コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する



プロフィール

K-AYUMU

Author:K-AYUMU

最近の記事

最近のコメント

カテゴリー

リンク

ユーザタグ

カ行 タ行 ア行 ちんこ ハ行 サ行 マ行 ナ行 英数字  ^ω^) ('A`) ラ行 1レス ワ行 (´・ω・`) ショボーン ヤ行 ブーン ショボン トソン 'ー`)し ξ゚⊿゚)ξ (,゚Д゚) ドクオ まんこ (=゚д゚) J( 1レス カラマロス大佐 シュー ミセリ (-_-) いよう 川д川 人狼 (∪^ω^) 世紀末 ツンデレ 

FC2カウンター

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。