mesimarja
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ξ゚⊿゚)ξ空を愛するということのようですζ(゚ー゚*ζ
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 16:01:00.45 ID:ChiGBVXQ0

ξ゚⊿゚)ξ「汗をかいてしまったわ」

 ランニングシャツ姿のツンは、額に汗を光らせながら、デレを振り返った。
 朝食前に屋敷をジョギングで一週するのが彼女の日課だった。


ζ(゚ー゚*ζ「ではお拭きします」

 手に持っているタオルで彼女の顔を拭こうとするデレをツンが制す。

ξ゚⊿゚)ξ「タオルを使っては駄目」

ζ(゚ー゚*ζ「え…」

ξ゚⊿゚)ξ「わかる? タオルを使うってことは、それを洗濯しなきゃいけなくなるってこと。
      そうすると洗濯をするメイドの仕事が一つ増えてしまうってことよ。
      同じメイドであるあなたにそんな身勝手が許されると思って?」



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 16:04:59.14 ID:ChiGBVXQ0

ζ(゚ー゚;ζ「すみません」

 彼女の理屈はよくわからなかったが、謝ることしか出来なかった。
 反論はもちろん、言い訳でさえ仕置きを与えられる可能性があるのだ。


ξ゚⊿゚)ξ「タオルは使わず、舐めなさい」

ζ(゚ー゚*ζ「え」

 デレは躊躇し、戸惑いを隠せなかった。
 ツンはシャツの首元に指を引っかけ、胸元を晒し、デレに行為を強要する。

ξ゚⊿゚)ξ「早く」


 不快な心臓の鼓動を感じ、冷や汗がメイド服の下に滲んだのを感じた。

 彼女の汗はしょっぱく、甘い匂いがした。


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 16:07:21.46 ID:ChiGBVXQ0






      **
      空を愛するということのようです
                        **






11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 16:10:33.34 ID:ChiGBVXQ0

(-@∀@)「出張で一週間家を空ける」

 あさぴーは一人言のように呟いたが、同じテーブルに座っている彼の二人の子供に向けて言っていた。
 まるで一人言のように誰とも目を合わさず喋るのは彼の癖だった。

(-@∀@)「家のことはメイドたちに任せる。何かあれば連絡しろ」

ξ゚⊿゚)ξ「わかったわ」

( ・∀・)「ああ」


 朝食のときに交わした家族の会話は以上である。

 母親のミセリはまだ起きていなかった。


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 16:14:01.91 ID:ChiGBVXQ0

 ◆◆


( ・∀・)「またどっかに女を作ったんだろうね」


 ツンの二つ年上の兄であるモララーは、大学に行くための支度をしながら、嫌味を込めて呟いた。

ξ゚⊿゚)ξ「だから?」

 傍にいるツンの返事は冷たかった。

( ・∀・)「別に。だからどうってことは無いけど」

ξ゚⊿゚)ξ「寂しい? 父親に見捨てられて」

( ・∀・)「見捨てられてるってなんで決めつけるんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「彼は妻を見捨てた。子供も見限っていて不思議ではないじゃない」


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 16:18:07.14 ID:ChiGBVXQ0

( ・∀・)「推測じゃないか。論理の通っていない意見は嫌いだ」

ξ゚⊿゚)ξ「自分の境遇から目を逸らす男も私は嫌い」

( ・∀・)「ああ、そう。じゃあな」


 部屋から出て行くとき、モララーは乱暴に扉を閉め、近くの花瓶が揺れた。


 壁際に立って、兄妹のやり取りを一部始終見ていたデレは、いつものこととはいえ、
 彼らの険悪なムードにずっと心を浮かせていた。

ξ゚⊿゚)ξ「ごめんなさいね。恥ずかしいところを見せて。ていうか、もう見慣れた?」

ζ(゚ー゚;ζ「え、そんな…」

ξ゚⊿゚)ξ「そんな、なに?」


15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 16:20:47.03 ID:ChiGBVXQ0

ζ(゚ー゚*ζ「その……ごめんなさい」

ξ゚⊿゚)ξ「どうして謝るの?」

ζ(゚-゚;ζ「……」

ξ゚⊿゚)ξ「黙ってちゃわからないけど」


 ツンはクローゼットから制服を取り出し、着替え始めた。

 上着を羽織り、スカートに手を伸ばしたところで、デレを振り返る。

ξ゚⊿゚)ξ「はかせて」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、はい」

 俯いていたデレは急ぎ足でツンに駆け寄り、手渡されたスカートを持ってひざまづいた。


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 16:23:55.55 ID:ChiGBVXQ0

 この体勢だと、すぐ目の前にツンの下着だけの下半身があるので、正面は向けなかった。

ξ゚⊿゚)ξ「早く」

ζ(゚ー゚;ζ「はい」

 片足ずつ通し、ファスナーを腰まで上げる。
 かなり細めのスカートだが、スタイルのいいツンにはちょうど合っていた。

ξ゚⊿゚)ξ「帰ってくるまでに部屋の掃除をしておいて」

ζ(゚ー゚*ζ「はい」

ξ゚⊿゚)ξ「ハンカチある? 今洗濯してるから、あなたのを貸してほしいんだけど」

ζ(゚ー゚*ζ「私のでよければ、どうぞ」

ξ゚⊿゚)ξ「ありがとう」


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 16:26:12.58 ID:ChiGBVXQ0

 ツンの制服についているバッジが輝いて見えた。

 もしも願いが叶うなら、もしも来世があるのなら、高校生というものを経験してみたいとデレは度々思う。


ξ゚⊿゚)ξ「行ってきます」

ζ(゚ー゚*ζ「行ってらっしゃいませ」


 彼女たちは同い年だった。
 デレがストレートに高校に上がっていれば、同じ高校二年生の同級生である。


 ◆◆


('、`*川「最近、鬱陶しいったらありゃしないのよ」


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 16:30:36.50 ID:ChiGBVXQ0

 ペニサスは昔から愚痴っぽい性格だったが、ここ最近は特に酷くなっていた。

 メイドの中では最も年齢が高く、結婚もしている。
 うわさ話が好きで、屋敷中のことをくまなく知っており、実質的な執事・メイドの長である。


('、`*川「昔はそうじゃなかったんだけどね」

ζ(゚ー゚*ζ「私が来る前ですか?」

('、`*川「そう。ツン様がまだ小学生くらいだった頃は、それはもう可愛くて。
     目に入れても痛くないっていうか、まあ普通の女の子だったの。
     モララー様もね。でも最近は二人ともわがままばっかり。うんざりよ」


 ペニサスに同調するように、他のメイドたちは無言で頷いた。


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 16:36:08.02 ID:ChiGBVXQ0

('、`*川「この前なんかさ、屋敷に入ってきた猫がいて、あの子、最近メイドになった子。
     え? ああ、そうそう、その子よ。その子が猫の世話っていうか、餌やってたのよね。
     本当は駄目なんだろうけど。そしたらモララー様がホウ酸団子を作って庭に撒いてたの。
     信じられる? 自分で部屋の掃除もしないやつが手作りホウ酸団子って。
     ちょっと笑っちゃうけどね。猫が死んじゃってからあのメイドの子、ずっとふさぎ込んじゃってさ。
     それ見て、モララー様がなんて言ったと思う? 自業自得だな、よ?」


 周りから「可哀想」「酷い」などの相づちが聞こえる。

 ペニサスに気をつかってではなく、本心から出た言葉であった。


('、`*川「デレちゃんとか、特に酷いじゃない」

ζ(゚ー゚*ζ「え?」

('、`*川「ツン様のこと。最近むちゃくちゃな要求してるでしょ、あの人」


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 16:38:35.32 ID:ChiGBVXQ0

 今朝のことも含めて、思い当たることは多い。

ζ(゚ー゚*ζ「ちょっと…」


('、`*川「酷いよね。いくらデレちゃんが反抗できないからって。
     私たちならさ、いつでもこの仕事辞められるわけじゃん。
     まあ給料いいし、よっぽどのことが起こらない限り辞めないけどさ。
     でもデレちゃんはそうもいかないじゃん。サイテーだよ」


 最低、のニュアンスがまるで今時の女子高生のようで、数人のメイドは吹き出すのを堪えていた。


('、`*川「やっぱりドクオ様のことを今でも」


 言いかけて、ペニサスは止めた。


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 16:42:38.79 ID:ChiGBVXQ0

 メイドたちは周りを見渡し、誰かに聞かれなかったか用心し始める。

 デレはその状況の意味を理解していなかった。


('、`*川「掃除に戻りましょうか」


 ドクオとは、モララーの一つ年上だった兄である。
 長兄として、いずれは父親であるあさぴーの会社を継ぐとして考えられていた。



ζ(゚、゚*ζ「あっ」

 掃除を再開しようとモップを手にしたとき、今朝のツンの言葉を思い出し、顔を青ざめさせた。
 ツンが帰ってくるまでに部屋の掃除をしておかねばならないのに、もうすぐ学校が終わる頃であった。


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 16:46:41.72 ID:ChiGBVXQ0

 ◆◆

 ツンの部屋に入るには二つのルールがある。
 一つ目はツンに入れと言われたときしか入ってはいけないということ。
 もう一つはその者しか入ってはいけないということだ。



 ペニサスからツンの部屋の鍵をもらい、駆け足で部屋に直行した。

 部屋に入った瞬間、デレは絶句し、息を詰まらせた。



 部屋中に服が散らばり、花瓶が倒れカーペットに染みを作っており、カーテンが破れ、
 引き出しが引っこ抜かれ中の小物が散らばっている。

 竜巻でも起こったかのような荒れようだった。


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 16:51:47.95 ID:ChiGBVXQ0

 あまりにも予想外でしばらく固まっていたが、冷静になってからこれが嫌がらせだと気がついた。

 しかし今は怒る暇も呆れる余裕も無い。
 一刻も早く部屋を片付けなければ仕置きが待っている。


 他のメイドには絶対に話せない彼女の仕置きのことを考えると、ぶつぶつと鳥肌が立ち、
 冷や汗が背中を覆った。


 まず引き出しを戻し小物を急いで整理する。
 服はクローゼットに丁寧にしまい、花瓶は水を入れて花をさし定位置に戻す。


 それから部屋を飛び出し、全速力でカーテンの替えを取りに行った。

 走っている最中、カーペットの染みはどうしようか、彼女なりに必死に考えていた。


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 16:53:45.75 ID:ChiGBVXQ0


ξ゚⊿゚)ξ「なにこれ」


 しかし考えるだけ無駄であった。

 部屋に戻ると、まだ制服から着替えていないツンが部屋の中央に仁王立ちしていた。


ξ゚⊿゚)ξ「片付けてって言ったよね」


 デレは半ばパニックなっていた。
 替えのカーテンを持って部屋の入口に棒立ちしている。

ξ゚⊿゚)ξ「部屋を締めて」

ζ(゚、゚;ζ「え?」


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 16:56:32.39 ID:ChiGBVXQ0

ξ゚⊿゚)ξ「早く。鍵もかけて」


 ドアを閉め、鍵をかけるデレの手は小刻みに震えていた。

 ツンは鞄から裁縫セットを取り出し、ベッドに腰掛けた。


ξ゚⊿゚)ξ「服を脱ぎなさい」


 デレの顔は完全に青ざめ、浅い呼吸が肩を揺らしていた。

 破れたカーテンから漏れた光が、急に遠くなったように感じた。


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 17:01:28.30 ID:ChiGBVXQ0

 ◆◆


 上着とスカートを脱ぎ、下着を外すまでの間、一挙一動さえ見逃すことなく
 ツンはじっと彼女を見つめていた。

 十七歳にしてはボリュームのある胸が、乳頭を突き出し露わになる。

 アンダーヘアは剃ってあるので、下半身はまるで子供のようだ。
 これはツンの指示で、デレは毎朝カミソリで剃っている。


ξ゚⊿゚)ξ「黒ヒゲ危機一髪って知ってる?」


 裁縫道具からミシン針を取り出し、生まれた姿のまま直立しているデレに歩み寄る。


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 17:05:07.23 ID:ChiGBVXQ0

ζ( - ;ζ「……わかりません」

ξ゚⊿゚)ξ「おもちゃよ。黒ヒゲって海賊がね、タルの中に入ってるの。
      おもちゃの剣をタルに刺して、黒ヒゲがタルから飛び出したらそのとき刺した人が負けになる。
      私はやったことないんだけどね、兄がやってたのを見てたから」


 兄とはモララーのことだろうか、それともドクオのことだろうか。

 このデレの思考は差し迫った危機から目を逸らしているだけに過ぎなかった。


 ツンの手には数十本のミシン針が握られている。


ξ゚⊿゚)ξ「あなたからは何が飛び出すんだろうね」


37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 17:10:51.82 ID:ChiGBVXQ0

 おもむろにツンが手を伸ばし、デレの胸を下側からミシン針で突き刺した。

 一連の動作に迷いが無く、あまりにも突然だったので、鋭い痛みを感じたのは一拍遅れてからだった。

ζ( - ;ζ「ああっ」

 針は乳房の肉を突き通し、数センチ埋もれている。


ξ゚⊿゚)ξ「今日は学校で普通の家庭について考えてたの。
      普通っていうのは平均的な収入と平均的な生活を送る平均的な家庭の話ね。
      そう考えるとうちは異常な家庭なんだけど、それでも平均以上の幸せはあって然るべきじゃない。
      じゃあまず並の幸せってなんだろうって。そう考えたの。
      ここでいう幸せっていうのは社会的な成功とかその人の才能とかじゃなくて、
      あくまで家庭内における平凡な幸福についてね」


 続いてツンはデレの左肩めがけて針を突き刺した。

 途中で何かの骨に当たったらしく、針は中途半端な深さで刺さる。


40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 17:16:52.56 ID:ChiGBVXQ0

ζ( - ;ζ「ふっ、うっ、……っ」

ξ゚⊿゚)ξ「渡る世間は鬼ばかりとか。ああいうホームドラマ見てて思ったの。
      家庭の幸せっていうのは結局は家族同士の絆とか、関係の深さに依存するのよ。
      それで、具体的にどういうことかっていうと、馴れ合いね。
      損得を一切考えなくてもいい馴れ合い。会話よ。会話こそが家庭における幸福なの。
      これって結構いい線いってると思うのよ」



 喋りながらツンは腹部に二つ、左足に一つ、右足に一つ、乳房に六つの針を突き立てた。


 刺す度にデレの体は大きく傾き、足下はふらついて、顔は赤くなっていった。

 呼吸すると針が動いて痛むので、さっきからずっと浅い呼吸を続けている。


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 17:21:00.21 ID:ChiGBVXQ0

ξ゚⊿゚)ξ「私は会話がしたいの。だから学校で起こったこととか、あなたに話すわ。
      本当は親か兄に話せばいいことなんだけど、あまり気軽に話しかけられる関係じゃないもの。
      とりあえずあなたに話す。だってあなたも家族の一員みたいなものじゃない。
      そう思わない?」

ζ( - ;ζ「お、思い……ああっ!」


 喋っている最中に、横腹めがけて思いっきり針を突き刺された。

 両足がいっそう不安定になり、もはや直立で立てないほど疲労している。


ξ゚⊿゚)ξ「今日学校でね、とても面白いことが起こったの。抱腹絶倒よ。聞いてくれる?」


 涙を流しているデレに一切反応を示さず、ツンは学校での出来事を話し始めた。


42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 17:24:23.53 ID:ChiGBVXQ0


 話は横道に逸れたり、異なる言い回しで同じことを述べたりと、あまり要領を得ないものであった。


ξ゚⊿゚)ξ「この話、どう? 感想を聞かせて」


 ツンの話したものというのは、要約すると、体育教師がグランドで転び、
 社会科の教師が年号を間違えたという、ただそれだけの話だった。


ζ(;ー;*ζ「…………」


 痛みと恐怖で頭が回らず、話の内容がつかめなかったので、感想など言えるはずがない。


ξ゚⊿゚)ξ「そう、面白くなかったんだ」


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 17:31:19.78 ID:ChiGBVXQ0


 デレは必死に首を横にふった。

 そんな彼女の方など見向きもせず、ツンは裁縫道具からロータリーカッターを取り出した。


ξ゚⊿゚)ξ「自信あったんだけどな」


 ロータリーカッターは円形の刃物で、布に当てながら回して切るものだ。

 ツンはロータリーカッターの刃先をデレの下半身に向けて伸ばした。


ζ(;ー;*ζ「あっ……あっ!」


 鋭い刃先がヘアの無い膣の溝に当てられる。

 カッターを持つツンの親指がデレの突起に触れていた。


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 17:35:46.77 ID:ChiGBVXQ0


 恐怖で息が出来なくなった。
 目の前の景色が遠くなり、心臓の鼓動と時計の針がならす音が妙にくっきりと聞こえる。



 刃先に力が加わることなく、カッターはデレの膣から離れた。


ξ゚⊿゚)ξ「平凡な家庭には平凡な会話と平凡な幸福が。
      だったら非凡な家庭には、非凡な幸福があるかもしれない。
      そう考えると異常っていうのは必ずしも悪いことだけではないかもしれないわね」


 カッターを裁縫セットにしまい、代わりに鞄から消毒液とガーゼを取り出した。


ζ(;ー;*ζ「………………」


 デレの涙は頬を伝い、あごからしたたり落ち、カーペットに新しい染みを作っていた。


48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 17:39:58.70 ID:ChiGBVXQ0

ξ゚⊿゚)ξ「好き」

 デレの体に刺さった一本だけ針を抜き、ガーゼに染みこませた消毒液を傷口につける。

ξ゚⊿゚)ξ「好き」

 同じことをもう一度繰り返す。

 一本抜く度に、ツンは「好き」と呟いた。


 針を抜く動作も、ガーゼを傷口に当てる動作も、丁寧で優しい手つきだった。


 全ての針を抜き終えると、元通りに裁縫セットにしまい、消毒液とガーゼも鞄の中に入れ直した。

 その間にデレの震えと涙は止まっていた。


50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 17:44:21.58 ID:ChiGBVXQ0


 しかし体中に針の痕がついているのがわかったので、悲しみに顔を伏せていた。


 ツンは鞄を壁に立てかけると、制服を脱ぎ始めた。

 脱いだ上着はクローゼットにしまい、下着姿になる。
 そのまま最後まで脱ぎ、下着はベッドの上に放り投げた。


 部屋で二人の少女が裸で向き合っていた。
 ツンはデレほど乳房が大きくないが、美しいくびれを持ったスレンダーな体型をしている。



ζ(゚ー゚;ζ「あ……」


 ツンの裸体に目を奪われているときに、気がついたことがあった。


51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 17:48:06.41 ID:ChiGBVXQ0

 ツンの体に、自分と同じようなアザが、体中についていたのだ。

 もしもこれが針を刺した痕ならば、デレよりもずっと本数が多いことになる。



ξ゚⊿゚)ξ「私たち、家族みたいなものよね。非凡な幸福を分かち合える家族」



 ツンはデレにそっと歩み寄り、首元に顔を寄せた。
 一瞬体を引きそうになったが、デレはツンを受け止めた。

 ツンの柔らかい唇がデレの首筋に吸い付く。
 舌は出さずに、唇を触れさせるだけの優しいキスだった。


 ツンは腰をかがめて、デレの胸元に顔を埋めた。
 首にしたのと同じように唇を這わせる。


 彼女の唇は針の傷をなぞるように体中を移動した。


53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 17:53:39.67 ID:ChiGBVXQ0

 丁寧に傷口から傷口に唇を移動させる。

 その内彼女の愛撫が自分の下半身をうずかせていることにデレは気がつき、顔を赤くした。


 下を向くとまるで見下げているような印象を与えてしまうかもしれないと考え、
 デレはずっと正面を向いて立ったまま、ツンの自由にさせていた。


 しかしある瞬間、好奇心がデレの頭を巡り、一瞬だけならいいだろうと顔を下に向けた。


ξ゚⊿゚)ξ


 太ももに吸い付いているツンと目が合い、電流が走ったような衝撃を受ける。

 ツンは床にひざまづき、上目遣いで見上げたまま太ももに唇を重ねている。
 それがデレにとって堪らなく、スリルで官能的な光景に映った。


54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 17:58:42.62 ID:ChiGBVXQ0

 上目遣いのまま、ツンは太ももを両手で持って、舌を使ってまさぐり始めた。
 外側から始まり、内ももまでなめ回す。

 昔近所にいた猫に足首を舐められたことを思い出していた。


ξ゚⊿゚)ξ「あなたは、私に家族がいると思っているんでしょう?」


 デレは答えなかった。
 質問の意図もよくわからなかった。


ξ゚⊿゚)ξ「法律上はいるわ。でも、だからなにって話。
      私にとっての家族はあなただけ。あなただけがいれば、私は非凡な幸福が得られる」


 ツンは徐々に、デレの下半身の中心部に顔を近づけていった。


57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:01:50.45 ID:ChiGBVXQ0


ζ( ー ;ζ「っ…」


 彼女の唇がデレの膣に触れそうになったところで、デレは大きく後ろに身を退いた。

 越えてはいけない境界を感じた。


ζ(゚ー゚;ζ「…すみませんっ」


 しばらく彼女たちは見つめ合った。

 ツンの瞳には、何の感情も感じない光が宿っていた。


ξ゚⊿゚)ξ「昔、これと同じことをしたの」


59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:06:07.95 ID:ChiGBVXQ0

 ツンは立ち上がり、口元に光るつばを手の甲でぬぐった。

 昔見たアニメ映画で、ヒロインが口元についた血をぬぐう動作に似ているとデレは思った。


ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ兄さんが、やれって言ったから。あのときはまだ、家族だったから」


 カーテンの隙間から漏れていた光は、いつの間にか消えていた。
 夜は始まっていた。


 ◆◆


 ツンに性的な行為を要求され始めたのは、一年前くらいからだった。

 最初は服の上から胸を触られる程度だったが、その内エスカレートし始め、
 初めて一緒にシャワーを浴びた日、デレのファーストキスは奪われた。


60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:10:58.62 ID:ChiGBVXQ0

 キスの感触が気に入ったのか、それからしばらくの間、ことある事にキスをせがまれた。

 立場上逆らえないデレは、ツンの要求に対して拒否する権利は無かった。



 デレの父親は元々、ツンの父親の会社で働いていた。

 ツンとデレは遠い昔、その関係で会ったことがあるらしいが、デレは覚えていない。


 デレの父親は賭博にはまり、多重債務を苦にして夫婦で自殺した。
 彼女が中学生のときだった。

 引き取り手がいなかったので、しばらく施設で慣れない生活をしていたとき、
 あさぴーとツンが施設にやってきて、デレを引き取った。


61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:15:31.41 ID:ChiGBVXQ0

 養子としてではなく、住み込みのバイトとしての引き取りであったが、
 施設側は喜んでデレを送り出した。


 裕福な家のメイドであるならば、施設の貧乏暮らしより彼女のためになると、施設側が考えたのだ。


 ツンの仕置きという名のいじめが始まったのは、メイドの仕事に慣れた頃だった。



 ◆◆



ζ(゚-゚*ζ「ドクオ様って、病気で亡くなられたんですよね?」


64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:16:47.91 ID:ChiGBVXQ0

 ペニサスと二人きりになったとき、意を決してドクオのことを聞いた。


 事情をよく知らないまでも、メイドたちの中でドクオの名前を出してはいけないという
 暗黙のルールがあることは、ちゃんと知っていた。


 それでも訊かずにはいられなかった。


('、`*川「そうだけど、何かあったの?」


 ペニサスが平静を装い、何かを隠しているのはデレにもわかった。


ζ(゚-゚*ζ「……私には教えてくれないんですか」


65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:19:41.89 ID:ChiGBVXQ0

 ペニサスが困った顔になったのを見て、デレは失敗したと思った。

 ここでペニサスを責めるのはお門違いであると後悔する。


ζ(゚ー゚;ζ「す、すみません。生意気でした…仕事に戻ります」

('、`*川「待って」


 ペニサスは辺りを見回し、誰もいないことを確認してから、小声で喋り始めた。


('、`*川「あなただけが知らないなんて、不公平よね。
     でもね、誰にも言っちゃだめよ。特に屋敷の人間以外に知られると、すっごく不味いの」


 前置きしてから、ペニサスはもう一度辺りを見回した。


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:22:52.01 ID:ChiGBVXQ0

('、`*川「これは噂じゃなくて、偶然立ち聞きしちゃった話。だから、本当の話なの。
     ドクオ様は病気で亡くなったんじゃなくて、自殺しちゃったのよ」

ζ(゚ー゚;ζ「自殺……」


 初めて聞いた話だが、自分でも意外なほど衝撃は無かった。

 もしかしたら心の奥底で、その可能性を考えていたのかもしれない。


('、`*川「自殺した理由はわかんない。でも私たちはみんなこう言ってる。
      プレッシャーだったんじゃないかって」


 プレッシャーというのがどういうことか、デレにはよくわかる。

 長兄としての期待、親や家族、親類や友達からも期待されていただろう存在だ。


68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:26:32.56 ID:ChiGBVXQ0

('、`*川「成績優秀者で、親のコネもあって将来有望。
     だからこそ期待されすぎて、おかしくなっちゃったって」

ζ(゚ー゚*ζ「おかしく?」


('、`*川「デレちゃん、ここからは噂の領域なんだけどね」


 ペニサスは念入りに辺りを見回してから言った。


('、`*川「メイドをレイプして、その子を自殺させちゃったんだって。
     それが最後の引き金になって………………………………」



 聞かなければよかったと、デレは心底後悔した。


69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:30:32.62 ID:ChiGBVXQ0


 ◆◆


ミセ*゚ー゚)リ「デレちゃん、頑張ってる?」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、はい。奥様。こんにちは」


 昼過ぎに起きてきたミセリは、寝癖も直さないままデレの前に姿を現した。


ζ(゚ー゚*ζ「コーヒーを入れましょうか?」

ミセ*゚ー゚)リ「お願い」



 台所に行き、手早くコーヒーを入れて、ミセリが待つダイニングへ向かった。


71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:34:06.83 ID:ChiGBVXQ0

 広いダイニングに一人でぽつんと座っている後ろ姿は、
 巨大な屋敷に住むセレブとは思えないほど、寂しい雰囲気が漂っていた。


 ドクオが生きていた頃は、この人はもっと心の底から笑えていたのかもしれない、
 などと考え、失礼なことを考えてしまったと反省し心の中で謝罪した。


ミセ*゚ー゚)リ「屋敷の生活は、どう?」


 不意に話しかけられ、少し戸惑った。
 質問の内容も、今更そんなことを訊かれても、というものだ。


ζ(゚ー゚*ζ「はい。みんな優しいので……満足してます」

ミセ*゚ー゚)リ「そう。よかった」


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:37:20.31 ID:ChiGBVXQ0


 優しいので、という部分でつっかえたが、ミセリは特に気にしている様子は無かった。



ミセ*゚ー゚)リ「私は限界かも」

ζ(゚ー゚;ζ「え」

ミセ*゚ー゚)リ「もう、駄目かもね」


 疲れ果てた、という感じの物言いに、何も返せない。


 その内ミセリは部屋を出て、寝室へ向かって行った。
 最近彼女は、ろくに食事を取らないほど、寝てばかりいた。


74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:40:50.57 ID:ChiGBVXQ0


 起きていると、辛いからだろうか。


ζ(゚-゚*ζ(辛いのは、平凡じゃないから?)


 この屋敷に住む非凡なお金持ちたちは、互いに会話をすることがほとんど無かった。


 ◆◆


 屋根裏部屋は元々アトリエだったが、今は物置になっていた。

 その日メイドたちは数人でホコリを取ったり、床を磨いたりしていた。


77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:43:28.38 ID:ChiGBVXQ0


( ・∀・)「あ…」


 掃除も終わりかけた頃、屋根裏部屋にモララーが上がってきた。

 彼はその場にいたメイドを一瞥してから、近くに置いてある安楽椅子に腰を下ろした。


ζ(゚ー゚*ζ「あの、モララー様。掃除中ですので、ホコリが舞っております」

( ・∀・)「構わん。続けろ」



 デレの忠告を無視し、彼は安楽椅子に揺られながら目を瞑った。


78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:45:56.95 ID:ChiGBVXQ0


 メイドたちは少しの間手を止めていたが、彼の言う通りに掃除を再開した。


 やがて掃除も終わり、モララーに一声かけてから、デレたちは屋根裏部屋を出る。



ζ(゚-゚*ζ(あ)


 屋根裏部屋に掃除道具を忘れたことを思い出したのは、夕食の支度にかかった頃だった。

 傍にいたメイドに忘れ物をしたと伝えてから、デレは一人で屋根裏部屋に向かった。


79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:47:54.50 ID:ChiGBVXQ0


 屋根裏部屋に上がると、部屋の隅に立てかけてある掃除道具はすぐに見つけられた。


( ・∀・)「ん?」


 しかし道具を回収する前に、一つだけある窓の前に佇んでいたモララーと目が合った。
 今の今までここにいたようだ。


ζ(゚ー゚:ζ「あの、忘れ物をしてしまって…」

( ・∀・)「ああ、これか」


 モララーは掃除道具を掴み上げ、デレに手渡した。


80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:50:38.16 ID:ChiGBVXQ0


 今まで彼と二人きりになったことは無かったので、デレは少し緊張した。

 何か話しかけなければいけない気がしたが、あいにく話題が無い。



 いそいそと部屋から出ようとしたとき、モララーの方がデレに声をかけた。


( ・∀・)「ここは元々、何の部屋だったか知ってるか?」


 時刻はちょうど夕焼けの時間で、窓から差し込む夕日がモララーを赤く照らしていた。


ζ(゚ー゚*ζ「アトリエですか?」


83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:53:21.06 ID:ChiGBVXQ0


( ・∀・)「そうだ。元々ここで絵を描いていたんだ」


 モララーの視線がデレから夕日に移っていった。


( ・∀・)「夕日が好きだったから、好都合だったんだ」



 デレはてっきり、モララーがここを使って絵を描いていたのだと思った。

 しかしこのとき、理由は特にないが、誰か別の人物のことについて言っているような気がした。


( ・∀・)「ほら、こっちに来てみろよ。ここは特等席だ」


85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:57:33.57 ID:ChiGBVXQ0


 モララーに言われるがまま、彼の隣に立って窓をのぞき込んだ。



 屋敷の一番高い場所に当たるこの屋根裏部屋からは、
 遠くの山と空を染める鮮やかな夕日を水平に見ることができた。

 思わずため息が出てしまうほど、それは美しい景色だった。


ζ(゚ー゚;ζ「あっ!」


 夕日に見とれていると、突然服をつかまれ、床に転ばされた。

 パニックになっている内に、モララーに馬乗りにされ、自由を奪われる。


87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 19:01:01.55 ID:ChiGBVXQ0


(  ∀ )「…………………」


 窓から差し込む夕日が逆光となって、モララーの顔を黒く隠している。

 モララーの両手はデレの両手首を掴んでいるので、抵抗することができない。


 デレは犯されるかもしれないという恐怖に怯えたが、彼は同じ体勢のまま全く動かなかった。




 やがてモララーが掴んでいた手を離し、馬乗りをやめて立ち上がった。


(  ∀ )「わっかんねえな……全然わかんねえ」


 窓の方を向いているので、モララーの表情はわからない。


89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 19:06:56.10 ID:ChiGBVXQ0


ζ(゚ー゚;ζ「お夕食の準備をしてまいります」


 解放されたデレは立ち上がり、モララーの背中からそっと離れていった。


(  ∀ )「でも……確かに綺麗だ…………」


 夕日に向かってモララーが呟いた言葉は、ぎりぎり聞き取れる程度の小声だったが、
 デレの心の中にくっきりと形を残していった。


 ◆◆


 あさぴーが不機嫌だという情報は執事・メイドたちの間で急速に駆け回った。

 世の中、悪い報せの方が重要である場合が多いのだ。


90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 19:09:37.71 ID:ChiGBVXQ0

 不機嫌だということは、用事が無い限り話しかけない方がいいということだ。


 その日の朝は、メイドも執事も、あさぴーと世間話をすることを避けた。
 なるべく最小限に交流を抑えることが、不機嫌なあさぴーの一番の対処法なのだ。




(-@∀@)「行ってくる」


 あさぴーが会社に出勤するまでの間、メイド・執事たちは緊張の連続だった。


 彼が屋敷を出ると、既に一日の仕事が終わったような気さえした。


93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 19:12:54.81 ID:ChiGBVXQ0


('、`*川「喧嘩したんだって、奥様と」


 昼休憩に、ペニサスから不機嫌だった理由を聞いた。


ζ(゚-゚*ζ「やっぱり、あんまり仲がよくないんですか」

('、`*川「よくないってか、もう、限界なんだろうね」


 ミセリも限界だと自分で言っていた。



 一体何のパラメータが臨界点まで達したのか、それはどうしてなのか、明確な答えは誰も知らない。
 きっとミセリとあさぴーでさえわからないだろう。


95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 19:16:19.06 ID:ChiGBVXQ0

 小さな理由を積み重ねることはできるだろう。

 しかしそれらの根本にあるものは、言葉にできるようなものではなく、
 もっと抽象的で、絶望的なものだ。





ζ(゚-゚*ζ(私も結構、限界かも)


 デレは屋敷の住人の前では笑うが、メイドの前であまり笑わなくなっていた。

 彼女の心に蓄積した泥のようなものが、感情を表に出すことを邪魔していた。


97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 19:20:00.16 ID:ChiGBVXQ0

 一昨日、ツンに処女を奪われた。
 小型のヘアスプレーを突っ込まれ、声にならない絶叫を上げて、純潔を失った。



 心を殺して仕打ちに耐えてきたデレも、もうすぐ臨界点を越えそうになっていた。


 絶妙な均衡で保っていた屋敷の空気が、崩壊寸前に来ているような予感を、
 今や執事・メイドたち全員が感じていた。


 ◆◆



 デレは時々、屋根裏部屋に一人で行っていた。
 心が悲鳴を上げるとき、そこで夕日を見ることで己を保っていた。


98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 19:24:23.09 ID:ChiGBVXQ0

 自分に家族がいれば、こんなことにはならなかっただろうと思うと、
 勝手に死んでいった両親を恨みそうになってしまう。



 どうして自分を連れて行ってくれなかったのか。


ζ(゚-゚*ζ(私は愛されていなかった?)


 愛について考えても、経験の浅い彼女にはよくわからかった。



 普通だったら、好きな男の子と付き合って、キスしたり、セックスしたりする。
 そうして愛をはぐくみ、愛の形を知り、愛を与える存在となる。


ζ(゚、゚*ζ(……のかな)


99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 19:27:30.35 ID:ChiGBVXQ0

 普通とは何なのだろうか。

 学校に行くのが普通なのだろうか。
 両親が家にいるのが普通か。
 収入があるのが普通といえるのだろうか。
 

 ではツンやモララーが普通の生活を送っているといえるのだろうか。



 幸福とは。

 愛とは。



ζ(゚、゚*ζ(わかんねーよ)



100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 19:30:46.51 ID:ChiGBVXQ0


 鳥になりたいと思った。



 ◆◆



 ツンから暴力的な仕打ちを喰らうことは無くなったが、その代わりに
 セックスの真似事のようなことをほぼ毎晩やらされた。


 どちらかが男役になり、妄想のディルドーで後ろから相手を突き上げる“遊び”だ。


 交代で役柄は違ったが、ツンはどちらかといえば突かれる方が好みのようだ。


101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 19:33:47.08 ID:ChiGBVXQ0

 ツンは同性愛者ではない、とデレは考えている。



 はっきりとした理由は無いが、女同士で絡むことを望んでいるのではなく、
 もっと原始的な、例えば体温を感じたいからセックスをしている、という言い方が適当だと考えていた。



 ツンの体にはいくつものアザがあった。

 デレの体にも同様のアザがある。



 デレの体にアザをつけたのはツンだ。

 ではツンの体にアザをつけたのは誰だろう。


104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 19:38:08.99 ID:ChiGBVXQ0


 上履きを何度も注文しているのをデレは知っている。


 鞄も同様に何度も取り替えている。


 学校を休みがちになったのはいつからだろうか。


 クローゼットの奥に突っ込まれた破れたスカートはどうしたのだろう。




ξ゚⊿゚)ξ「怖いから、あんまり訊きたくなかったんだけど」

 デレの股に顔を埋め、膣の形に沿って舌を這わしていたツンが顔を上げた。


105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 19:40:37.15 ID:ChiGBVXQ0

ζ( -゚*ζ「……はい」

ξ゚⊿゚)ξ「私のこと、好き?……嫌い?」


 ツンの不安そうな表情を見ると、殴りたい誘惑と、抱きしめたい衝動の両方に心を揺さぶられた。


ζ( ー゚*ζ「嫌いです」

ξ゚⊿゚)ξ「……そう」




 相変わらずツンの瞳には感情が無かった。
 質問の答えを聞くと、再びツンは舌を突きだし、デレの性感帯を探った。


106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 19:45:05.19 ID:ChiGBVXQ0


 ◆◆


('、`*川「離婚するかもしれない。まだわからないけど」


 メイドたちはそれを聞いて、さっと顔を暗くした。

 誰もが予想していた事態ではあったが、できれば避けたい未来でもあった。


('、`*川「屋敷そのものは無くならないから、全員廃業にはならないだろうけど、
     人員整理とかされるかもね。割がいい仕事だったのになあ」



 最近ペニサスは遠回しな表現を使うことをやめていた。


107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 19:49:56.90 ID:ChiGBVXQ0

('、`*川「あんたは大丈夫よ。心配しなくても」

ζ(゚、゚*ζ「……そうでしょうか」

('、`*川「法的に引き取ったんだから、勝手に追い出すような真似はできないわよ」

ζ(゚、゚*ζ「はあ」

('、`*川「最近暗いわね。どうしたの?」


 あさっての方向を虚ろな瞳で見上げているデレの様子は、
 誰がどう見ても異常だった。



ζ(゚ー゚*ζ「…ペニサスさんは、子供はおられないんですか?」

 不意な笑顔、突然の質問にペニサスは面食らう。


111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 19:53:38.97 ID:ChiGBVXQ0


('、`*川「いないわ。欲しいとは思ってるけど」

ζ(゚ー゚*ζ「もしも自殺しようって考えたとき、子供はどうします? 殺します?」


 その場いたメイドたちが一斉にデレの方を振り返る。


('、`;川「……なに、それ」

ζ(゚ー゚*ζ「やっぱり、置いてけぼりですか?
       いざってときは、子供のこととか考えられないから」



 デレを見返すペニサスの目つきは、悲しそうな、寂しそうな色が宿っていた。


114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 19:58:34.26 ID:ChiGBVXQ0

('、`*川「デレちゃん」

ζ(゚ー゚*ζ「子供はどうでもいい」

('、`*川「デレちゃん、あのね」

ζ(゚ー゚*ζ「愛してないから。愛してないけど、生まれちゃったから。
       法律上だけの家族だから。捨てられない、ゴミ?」

('、`*川「デレちゃん、よく聞きなさい」


 今まで聞いたことが無いような、凛とした声でデレの言葉を掻き消した。


('、`*川「私は子供が産めない。そういう体質だから」


 部屋の中がしんと静まりかえった。


118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 20:04:05.66 ID:ChiGBVXQ0

('、`*川「でも、家族を愛する気持ちを知ってる。
     私は家族のためにも自殺なんて絶対に選ばない。だから質問には答えられない。
     でもね、子供を残して死ぬ親の気持ち、もしかしたらわかる」

ζ(゚ー゚*ζ「そんなの」

('、`*川「生きてほしい。あなただけでも、幸せになってほしい。
     きっとこう思ったのよ。法律上の家族じゃなくて、絆で結ばれた家族なら、きっとこう思ったのよ。
     理不尽でも身勝手でも独りよがりでも死ぬ直前でも、子供の幸福を願ってたはずなのよ…。
     家族なら……家族なら…………」







 デレはいつの間にか泣いていた。

 ペニサスに抱き寄せられても、胸の中でずっと泣いていた。


120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 20:06:54.03 ID:ChiGBVXQ0

 ◆◆


 悪い報せはいつも早めに伝わってくる。


 執事たちはこれで離婚は決定的だと噂していた。

 メイドたちは人は見かけによらない、などとひそひそ話に夢中になっていた。



 デレだけはいつも通りの業務をたんたんとこなしていた。
 メイドたちの会話に積極的に入っていこうとはしなかった。


('、`*川「デレちゃん」


121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 20:10:28.64 ID:ChiGBVXQ0

ζ(゚-゚*ζ「はい」

('、`*川「聞いたかしら。モララー様のこと」

ζ(゚-゚*ζ「いえ」

('、`*川「業務に差し支えがないように、あなたの耳にも入れておこうと思うわ。
     別にこれは隠し事とかじゃなくて、あさぴー様からもちゃんと事情は聞いてるから」

ζ(゚-゚*ζ「モララー様が……?」



 あの日屋根裏部屋で、モララーに押し倒されたことを思い出した。


('、`*川「暴行事件で捕まったの。あさぴー様が今警察署に向かってる」


123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 20:14:53.51 ID:ChiGBVXQ0


 流石にこれは驚きを隠せなかった。


 ボウコウジケン、という言葉が頭の中で上手く意味を成さない。
 現実ではなく、ファンタジーのような、テレビの向こう側でしか聞かない言葉のはずだ。



('、`*川「今日は夕食を作らなくていいわ。少人数だけ残して、メイドと執事は解散させる。
     あなたも今日は休んでいていいわよ。といっても、この屋敷に住んでるから関係ないっちゃないけど」

ζ(゚ー゚;ζ「どうして…」

('、`*川「知らない。それと、うわさ話の方もあるけど、聞く?……わよね」


 周りのメイドの様子を横目で確認し、デレの耳に口元を近づける。
 どうやらあまり公にはなっていない情報のようだ。


124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 20:17:56.89 ID:ChiGBVXQ0

('、`*川「その場にツン様もいたらしいわ」




 心臓付近だけ重力が重くなったような衝撃を受けた。

 得体の知れない焦り、いい予感か悪い予感かすらわからない直感が働く。



ζ(゚ー゚;ζ「ツン様はどこに?」

('、`*川「部屋におられるんじゃないかな……まさかこの時間に外には出てないと思うけど」


 時刻は既に七時を回っている。外は暗くなっていた。


125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 20:21:09.80 ID:ChiGBVXQ0


 そのときちょうどメイドが台所に駆け込んできた。


 ツンが屋敷のどこにもいないらしい。
 部屋をノックしても反応が無く、ドアを開けてはいないが、どうやら部屋に鍵がかかっていないらしい。


ζ(゚ー゚;ζ「部屋に入って確認しましょう」


 ツンの部屋に入るには二つのルールを守らなくてはいけない。


('、`;川「でも、家族以外で部屋に入っていいのは、入れって言われた者だけよ」

ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫」


126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 20:23:33.76 ID:ChiGBVXQ0


ζ(゚ー゚*ζ「家族ですから」



 デレを先導に、ツンの部屋に踏み込んでいった。

 ドアを開けた途端、風が体を通り抜けた。


 部屋はもぬけの殻だった。

 窓が開いたままになっており、破れたカーテンで作った縄が柱に繋がれ、
 一方が窓の外に続いている。


('、`;川「ツン様が屋敷を出たみたいよ!」


129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 20:28:45.16 ID:ChiGBVXQ0


 誰がどう見ても部屋から脱走したように見える。


 ペニサスは屋敷に残っている執事とメイドを集め、
 屋敷の付近をくまなく探すことにした。


 陰惨とした空気に包まれていた屋敷が、にわかに慌ただしさを帯びた。



 続々と屋敷から人が出て行く中、デレは屋敷に残り、最上階に向かって歩いていた。


 予感がした。

 この胸騒ぎがいいものか、悪いものか、まだわからないが、確かめる価値はあるものだと、
 彼女は感じていた。


130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 20:33:28.11 ID:ChiGBVXQ0


 屋根裏部屋に続く階段は木製で、踏むとぎしぎしと音が鳴る。

 一段一段、感触を確かめるように、階段を上っていった。


 屋根裏部屋は暗く、明かりをつけないとなにも見えない。



 「電気は点けないで。ありのままが大事なんだから」



 彼女の声が窓際から聞こえてきたので、照明のスイッチに伸ばしていた手を引っ込めた。

 ゆっくりとすり足で歩き、周りにおいてある物に気をつけながら、窓際まで向かった。

 ツンのシルエットをした黒い物体が、デレを待ちかまえていた。


131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 20:37:51.49 ID:ChiGBVXQ0


 「夕日を見ようと思ったんだけど、遅すぎた。見逃しちゃった」


 黒い人影は喋っている最中全く動かないので、まるで人形が置いてあるようだった。


ζ(゚ー゚*ζ「夕日が無理なら、朝日を待てばいいんです」


 デレが声をかけると、人影は初めて身じろぎした。

 人形ではなく、熱を持った人間になった。


ξ゚⊿゚)ξ「名案ね」


 ツンは窓を押し開け、へりに腰を下ろすと、そこから飛び降りた。
 すぐ下に屋根があるので、出ようと思えば簡単に外に出られる構造になっていた。


142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 21:39:30.05 ID:ChiGBVXQ0

 ツンに続いてデレも屋根に飛び降りる。

 近くにツンの姿が見えず、きょろきょろと辺りを見回していたが、
 頭上からツンに声をかけられた。


ξ゚⊿゚)ξ「こっちよ」



 さらに上の屋根に登れるようだ。
 よく見ると隅に室外機があり、足をかければ上にいけそうだ。


 ツンに上から手を伸ばしてもらい、協力して上まで上がった。


 一番高いと思っていた屋根裏部屋より、高い場所があるのだと知った。


143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 21:41:59.48 ID:ChiGBVXQ0


 見晴らしは絶景だった。

 市内の光は煌びやかに映え、山の方は星が輝いて見える。


ξ゚⊿゚)ξ「初めて来たけど、綺麗だね」

ζ(゚ー゚*ζ「そうですね」

ξ゚⊿゚)ξ「どうしてここだとわかったの?」

ζ(゚ー゚*ζ「何となくです。窓から逃げたんじゃないだろうなとは思いました。
       それなら部屋に鍵をかけておくはずなので」

ξ゚⊿゚)ξ「冴えてるわね」


 暗闇に目が慣れてくると、星の明かりだけでもツンがよく見えた。


146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 21:46:14.84 ID:ChiGBVXQ0

 二人は屋根に腰を下ろしたまま、しばらく無言で過ごした。

 夜風が心地よく体を撫でる。



ξ゚⊿゚)ξ「朝日はこっち側で合ってるよね」

ζ(゚ー゚*ζ「はい。夕日が逆側なので」

ξ゚⊿゚)ξ「朝まで待つのは、お腹空くだろうな」

ζ(゚ー゚*ζ「……そうですね」


 屋敷の庭に懐中電灯を持った執事が数人見えた。

 上から見ると小さくて虫のようだ。
 蛍のようだ。


149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 21:51:49.90 ID:ChiGBVXQ0

ξ゚⊿゚)ξ「私、いじめられてるの」



 デレは相づちを挟まず、黙って聞いた。



ξ゚⊿゚)ξ「私、元々人とあんまり話せるタイプじゃないし。
      気も強いから、いつの間にか敵だらけだった。
      まあ、なんていうか、テンプレートなことたくさんされたわ。
      いじめって、結構辛いもんだね。今までは他人事だと思ってたけど。
      針、超痛かった。自分で消毒したけど」


 針の痛さは身にしみて知っている。

 けれどツンの傷跡は誰にも舐めてもらえなかったのだ。


154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 21:58:02.81 ID:ChiGBVXQ0

ξ゚⊿゚)ξ「今日もそうだった。帰っている途中に捕まって……。
      もう慣れてたから、あんまり驚きもしなかったけど。
      いや、ううん、落ち込んだなあ。きっと私は落ち込んでた。
      たぶん世界の終わりみたいな顔をしてたわ」


 ツンの整った顔がどのように絶望していたか、考えると悲しくなった。
 もったいないと思った。


ξ゚⊿゚)ξ「殴られるか、蹴られるか、刺されるか、舐めらされるか。
      もしくは全部か。大抵、全部やるんだけど。
      今日は最初に舐めろって言われたの。何をって、恥ずかしいから言えないけど。
      ただ今日はいつもと少し違ってた。確率的に、何%くらいなんだろうね。
      宇宙人と遭遇するよりはきっと望みあるだろうけど、それでもたぶん少ない確率だった。
      お兄ちゃんが通ったの」


156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 22:04:14.55 ID:ChiGBVXQ0

 お兄ちゃん、という言い方に違和感を覚えたが、
 モララー兄さんなどと格式張って言うより、よほど兄妹らしいと思った。


ξ゚⊿゚)ξ「犬みたいに這いつくばってる私を見て、お兄ちゃんはキレた。
      私でも怖くなるくらいキレたの。近くにいた人、みんな殴り飛ばして。
      喧嘩とか強い訳ないのに、そのときだけは無敵に思えたわ。
      お兄ちゃん、捕まっちゃったけど。あとで私が事情を説明しにいかないといけないの。
      ほんと、面倒なことしてくれたわ」


 ほとんど一息で喋りきった。
 心の中に溢れた言葉が堰を切って流れているようだ。



ξ゚⊿゚)ξ「どうして、なんであんなに、怒ってたんだろう」


160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 22:12:19.70 ID:ChiGBVXQ0

ζ(゚ー゚*ζ「朝日が昇るまで時間があります。考える時間はたっぷりあります」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね、焦っても仕方ないわ。結論を急ぐと、ろくなことがないしね」



ξ゚⊿゚)ξ「この下にあるアトリエで、お兄ちゃんは首を吊ったの」

 話題が飛んだ。

 話したいことがありすぎて、体に収まらない話題から外に飛び出しているみたいだった。


ξ゚⊿゚)ξ「ずっと悩んでるのは見ててわかってた。でも私は何もしてやれなかった。
      ある日、お兄ちゃんの部屋に行ったら、ベッドに押し倒されたの。
      ごめん、ごめんって謝りながら、まだおっぱいが膨らんでない私に吸い付いてきた。
      お兄ちゃん、頭がおかしくなるくらい、苦しんでたの」


161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 22:17:23.81 ID:ChiGBVXQ0

ζ(゚-゚*ζ「ドクオさん、やっぱりプレッシャーで……?」

ξ゚⊿゚)ξ「わからない。その人の苦しみはその人にしかわからないから。
      私は精一杯抵抗したわ。無我夢中で手足を振り回して。
      そしたら急にお兄ちゃんは動かなくなって、ぼうっと夕日を見だしたの。
      もしかしたら私、あまりにも必死になりすぎて、酷いことを言っちゃったかもしれない。
      それからお兄ちゃんはアトリエに籠もりだして、一ヶ月で死んだ。
      一ヶ月分の夕日を見てから白目を剥いて息を止めたの。
      お兄ちゃんを殺したのは、私かもしれない」


 ペニサスから聞いたメイドの話は黙っておいた。


 下らない、噂に過ぎない話だし、今の彼女にそんな物語は必要無いと感じた。



ξ゚⊿゚)ξ「最後にお兄ちゃん、私たち兄妹にこう言ったの。美しい場所に行くって。
      その日の夜、お兄ちゃんの死体が浮いてた。美しい場所、どこだろうね」


162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 22:22:01.06 ID:ChiGBVXQ0

ζ(゚ー゚*ζ「……夕日」

ξ゚⊿゚)ξ「そう、私も最近になって、思ったの。夕日のことなんじゃないかって。
      もう死んじゃったからわからないけどね。ただ、お兄ちゃん夕日好きだったし。
      死ぬ前にね、夕日の絵ばっか描いてたのよ。それに、夕日は確かに、綺麗だから」


 夕日は綺麗―――――以前どこかで聞いたような既視感を覚えた。




ξ゚⊿゚)ξ「でも、見たいときに限って、見逃しちゃうのよね。ずっと夕日だったらいいのに」

ζ(゚ー゚*ζ「限られた時間しか見られないから、余計綺麗なんですよ」

ξ゚⊿゚)ξ「知ってるわ。限りあるものこそ、綺麗――――」


166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 22:28:12.70 ID:ChiGBVXQ0

 ツンは両膝を抱き寄せて、そこに顔を埋めた。


ξ ⊿ )ξ「鳥になりたい」


 普段のツンからは考えられないほど弱々しい声だった。
 鼻声でくぐもった声が、涙で空中ににじみ出しているようだ。




ξ ⊿ )ξ「鳥に、なって、空を飛ぶの。夕日、に、向かって。
       お兄ちゃんたちも、お父さんもお母さんも、みんな、笑って、昔みたいに。
       友達、たくさん作って、彼氏と、夏祭り、行って…………。
       鳥になりたい。私も美しい場所で生きたい」



167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 22:31:34.09 ID:ChiGBVXQ0

ζ(゚ー゚*ζ「私も考えたことがあります。でもそれは、逃げているだけよ」

ξ ⊿ )ξ「知ってる。私は、空も、夕日も、好きじゃない」


 ツンは震える指で市街地の方を指さした。

 それから屋敷の庭、山の方角、真下、後ろ、周りのもの全てを指さした。


ξ ⊿゚)ξ「私は全部が、嫌いなだけ。ただ空を見て、過ごしたいだけ。
       わかってる。わかってるの。わかってたのよ」



 嗚咽が酷くなると喋れなくなった。

 しばらく泣いてからツンは顔を上げた。


169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 22:35:10.55 ID:ChiGBVXQ0

ξ゚⊿゚)ξ「私とあなた、小さい頃会ったことあるのよ」


 ずっと置き去りにしていた物語が、初めてめくられる。


ζ(゚ー゚*ζ「うん……ほとんど覚えてないけど」

ξ゚⊿゚)ξ「私はちょっとだけ覚えてる。本当にちょっとだけ。
      並んで立ってたとき、あなたのお父さんか、私のお父さんか忘れたけど、こう言ったの。
      姉妹みたいだって。それだけは覚えてる。それだけは、忘れてない」

ζ(゚ー゚*ζ「私のお父さんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「え?」

ζ(゚ー゚*ζ「それ言ったの、私のお父さん」



 二人は顔を見合わせて、笑い合った。
 悪戯好きの子供が悪巧みを思いついたときのような、茶目っ気のある笑い方だった。


170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 22:39:15.79 ID:ChiGBVXQ0

ξ゚⊿゚)ξ「今でも、姉妹に見えるかな?」

ζ(゚ー゚*ζ「見えるわよ。だってこれだけ痛みを分かち合ったんだもの」


 いつの間にか二人の距離は、ほとんど無いくらい近づいていた。




 どちらともなく唇を重ね合い、そっと肩を抱き合った。

 恋人同士が愛を交わすそれではなく、親子が絆を示すそれでもなく、
 異なる個の生命体が魂で繋がっていることを表すような、美しいキスだった。



172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 22:43:16.82 ID:ChiGBVXQ0



ξ ー )ξ「朝日、いつ昇るかなあ。お姉ちゃん」


ζ( ー *ζ「夜が明けたときよ」



 体を寄せ合うようにして、二人は空を眺めた。


 降ってくるような星空だった。



173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 22:44:56.25 ID:ChiGBVXQ0
終わり!(`・ω・´)

181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 22:55:31.70 ID:QHcFPnHQO
地の文が好みだ
過去作ある?

182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 23:04:27.79 ID:ChiGBVXQ0
>>181
ttp://sogomatome.blog104.fc2.com/blog-entry-400.html
おすすめはアルマゲドンとプラス。この二つは自信作

コメント

これ夕凪さんだったのか・・・。
[2011/07/12 22:42] URL | ナナシ #- [ 編集 ]


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