mesimarja
気に入ったスレを集めてみました。
07 | 2017/08 | 09
S M T W T F S
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

('A`)幸せになりたいと願わない人はいないから、のようです
4 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 19:56:04.26 ID:+rkfbmc9O

【プロローグ】


 きぃん、という音が鳴って、続けて葉の焼ける音が辺りに散らばる。

「幸せに、なりたくない?」

 凍てつく様な寒さの真夜中。冷たい風が辺りを舞う駅のホームに響いた、声。

('A`)「……さぁ、ね」

 ふっと吐かれた言葉と共に、空へと溶ける柔らかい煙。

「そのままで、いいとでも?」

('A`)「さぁて、ね」

 高く澄んだ声に耳を貸さず、そう呟く。

「今、幸せ?」

 その言葉には何も返さず、星の無い真っ暗な空を見上げて、また一つ、ふっと煙を吐く。

 何も見えない空がある。そうさせているのは言葉か、表情か、心根か。
 黒に染まる世界の中、きぃん、と鳴らすそれだけが、白く輝いていた。




5 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 19:57:40.85 ID:+rkfbmc9O



('A`)幸せになりたいと願わない人はいないから、のようです





6 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:00:16.78 ID:+rkfbmc9O

【第一話】


 十一月が去って、冬の風が駆け足で舞い込んできた、寒い寒いある日の朝。

「鬱田ドクオ君、だね?」

('A`)「……はい」

 都心に位置するも、そこには似つかわしくない程に小さなスーパーの、薄暗い控え室。

 一人はスーツを着て、一人はワイシャツに赤いエプロン。二人の男が、向かい合って座る。

「高校卒業後、地方の工場に就職するもすぐに辞めて、今は27歳、か。工場辞めてからさ、何してたの?」

('A`)「アルバイトを、色々と」

「ふぅん」

 赤いエプロンの男は、眼鏡の奥に潜ませた鋭い目で、ドクオを睨む。

「スーパーの仕事、ナメてるでしょ?」

('A`)「え?」



9 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:03:22.31 ID:+rkfbmc9O

「シワだらけのスーツ着て、シャツは黄ばんでるし、声は小さい表情は暗い。やる気あるの?」

('A`)「……」

 はぁ、と溜め息を零して、立ち上がった赤いエプロンの男。

「こっちはね、野菜一つ売る為に必死になって走り回ってるんだ……帰っていいよ」

 吐き捨てて、そのまま部屋から出ていった。

('A`)「また、ダメだったかぁ」

 投げた言葉は壁に当たって、地面へと落ちた。

('A`)「ハナから雇う気なんか無いくせにさ。ほっとけよ」

 頭を掻いて、溜め息を吐く。そして立ち上がったドクオは早足で、店から出る。



10 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:06:17.50 ID:+rkfbmc9O

('A`)「さっみー」

 一歩、外の風を浴びただけで、文句を言わずにはいられない程に、寒かった。

('A`)「コート、買うかな」

 呟いて、スーツの内ポケットから取り出した、煙草。くしゃくしゃになった、赤いマルボロのソフト。もう残り少ないのか、ひん曲がった一本を口にくわえる。

 そして、ドクオの手には、宝物。白銀の輝きを放つ、デュポンライター。
 きぃん、と音を鳴らして、火を点ける。

('A`)「ほんっとに良い音だな、これ」

 ドクオの手の中にあるのは、おおよそ安月給のサラリーマンには手が出ない様な、高級品。
 中でもホワイトゴールドで、ダイヤモンドが散らばるそれは、最高級と呼ぶに相応しい品。

('A`)「大事にしよう」

 なぜ、そんな物がドクオの手の中にあるのか?
 それは、ドクオの性格が余りに極端なものだったから。



11 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:08:13.59 ID:+rkfbmc9O





('A`)「あー、疲れた」

 薄汚くて、狭いアパートの中。スーツをさっさと脱いで辺りに散らかし、ベッドに飛び込むドクオ。

('A`)「ねみー」

 ドクオは決して、下らないニートなどではない。

('A`)「明日は工事現場で単発の仕事だなぁ。疲れるなぁ」

 家賃を払って税金を納め、充てにならないと罵声される年金だって、きちんと払う。必要最低限は、働く。だけど、それ以上の事はしない。

('A`)「煙草煙草っ、と」

 そんなドクオが極端な性格を見せる一つの材料が、ライター。

('A`)「へへへ」

 必死になって働いて、貯金をして買ったデュポンライター。車で例えるならば、新車の軽なら一括、それを頭金にすれば高級車だって買える程の値段。



13 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:10:02.28 ID:+rkfbmc9O

 たかがライターにそれだけのお金をかける、それがドクオ。

('A`)「さて、と」

 きぃん、と鳴らして、火を点ける。吐いた煙がすっかり黄ばんだ壁にぶつかり、溶ける。

 金持ちが自分のステータスを見せびらかす為に買うそれとは違って、狭いアパートでも、黄ばんだシャツでも、周りから薄汚いと言われても、ドクオはただ、それが欲しかった。

 そして、ドクオが嫌うものがある。

 それは――

('A`)「あー、嫌な予感」

 突如、部屋に響いた携帯の着信音。手にとり、開いて、溜め息。

('A`)「なんなんだよ、コイツ」

 ドクオが嫌いなもの。

 それは、友人。友人の振りをした、誰かさん。



【彼は普通に、生きているだけ】



17 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:12:25.67 ID:+rkfbmc9O

【第二話】


 夜、冷たい風が頬を打つ寒空の下。暗闇を照らす赤提灯。
 居酒屋『よつば』の入り口に掲げられた暖簾を潜る、ドクオの姿。

('A`)「こんばんは」

( ´∀`)「お、来たモナね」

 目尻の垂れた、人の良さそうな大将の顔。

('A`)「大将。熱燗貰える?」

 ドクオはここの常連で、大将とは昔からの知り合い。モナーという名前らしいが、それが本名なのかはドクオも知らない。

( ´∀`)「了解モナ。それより上下真っ黒なスウェット姿はやめるモナ。みっともないモナよ」

('A`)「うっせ。相変わらず変な語尾してる大将に言われたくない」

( ´∀`)「モナモナ」



19 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:14:09.09 ID:+rkfbmc9O

('A`)「……アイツ、いる?」

( ´∀`)「いるモナよ、ほら」

 顎先で示された方を見ると、ドクオの言う、アイツの姿があった。

( ^ω^)「お、ドクオおいすー。こっち来るお」

('A`)「……おう。久し振りだな、ブーン」

 座敷に置かれた紫の座布団の上で胡座を組んで、ドクオを手招きして呼ぶ、ブーンと呼ばれた男がいる。

( ^ω^)「いやー、毎日寒いおね」

('A`)「そうだなぁ」

 言いながら、ドクオはブーンの姿を見る。
 シワ一つ無い綺麗なジャケットを壁に掛け、同じく綺麗な真っ黒のスラックスと、真っ白なシャツ。

 対して、ドクオは汚ならしいスウェット姿。



20 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:15:50.67 ID:+rkfbmc9O

( ^ω^)「今日は仕事が大変だったお」

('A`)「そっか」

 生きている世界が違うと、ドクオは思う。

 そもそもドクオとブーンは中学からの同級生だが、ブーンは明るくて、優しくて、大学を出て大手企業に勤めている。対するドクオは暗くて、地味で、高校を出て就職するもすぐに退職。何一つ、同じだと誇れるものが無い。

( ´∀`)「はい、熱燗モナ」

( ^ω^)「え、ドクオもう頼んだのかお?」

('A`)「うん」

 ずるいお、と叫ぶブーンを無視して、ドクオはポケットから煙草とライターを取り出して、音を鳴らす。 きぃん、と。その音を聴けば誰もが振り返ると比喩されるが、それに従う様に、ブーンも言葉を止めた。

( ^ω^)「ほんと良い音だおね、それ」

('A`)「だろ? この音を聴く為に煙草吸ってる様なもんだ」

 天井に付けられた換気扇目掛けて煙を吐くドクオ。


23 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:17:43.43 ID:+rkfbmc9O

( ´∀`)「煙草は身体に悪いモナ」

('A`)「いいんだよ」

( ^ω^)「値上がりもしてるお」

('A`)「いいんだよ」

 ドクオと向かい合って座るブーンの隣に、何故かモナーがいる。

( ´∀`)「控え目にするモナよ」

('A`)「ありがとう。で、なんで大将ここにいんの?」

( ´∀`)「いや、注文」

( ^ω^)「あ、ブーンはビールだお。後は適当につまめる物を頼むお」

( ´∀`)「了解モナ」


 言って、モナーは引っ込む。それから少しして、お酒を片手にドクオとブーンは色々な事を話し出す。

 ブーンにとっては楽しい時間。そして、ドクオにとっては不快な時間ではあったが。



24 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:19:41.17 ID:+rkfbmc9O





 騒がしかった時間も落ち着いて、人がぽつりぽつりと見えるだけになった店内。

( *^ω^)「ドクオは熱燗ばかりだお、ビール呑むおビール!!」

('A`)「いらねぇよ。寒いんだよ」

 頬を朱に染めるブーンと、何杯呑んでも変わらないドクオ。

( *^ω^)「ブーンはまだまだビールだお」

('A`)「デブだから寒さがわかんねぇんだろ」

( *^ω^)「失礼な!! ぽっちゃりさんだお」

('A`)「デブだろ、紛れもないデブ」

( *^ω^)「ンッフフフ」

 何が面白いのか笑い出したブーン。

('A`)「そろそろ帰るか」

 ドクオはそれを無視して、言う。



25 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:21:24.83 ID:+rkfbmc9O

( *^ω^)「もうかお?」

('A`)「ああ、明日早いんだ」

( *^ω^)「じゃ、お開きだお」

 二人同時に立ち上がり、勘定を済ませて、店を出る。

( *^ω^)「じゃあ、またね、だお」

('A`)「……ああ」

 店の前で手を振って、二人は別々の道を歩き出す。

('A`)「アイツ、まじでなんなんだ」

 ドクオの中でブーンという男は、とても不思議な存在で。どうして自分なんかに会いたがるのか、わからなかった。

 推測で示せる答えは一つ。ドクオが何より嫌う、優越感と、劣等感。



【友人みたいな顔で笑わないでと、言いたくて】



28 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:24:25.76 ID:+rkfbmc9O

【第三話】


 次の日、朝早くから工事現場へと足を運ぶドクオ。

('A`)「よろしくお願いします」

「え? 大丈夫かお前。チビだしヒョロヒョロじゃん。木材運んだりとか、出来る?」

('A`)「できます」

「まぁいいけどさ、もうちょっと考えてほしいよな派遣元さんはよ」

 言葉を投げ付けるのは、明らかにドクオより年下の男。

('A`)「よろしく、お願いします」

 黄色いヘルメットを被り、似合わない作業着に身を包んだドクオ。
 ただ黙々と、手を動かす。

「あいつ、なんか気持ち悪くね?」

「人とか殺しそうな顔してるよな」

('A`)「……」

 うっすらと聞こえる罵声の言葉。ドクオは無視して、木材を運ぶ。



31 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:26:29.79 ID:+rkfbmc9O

('A`)「お疲れ様でした」

 夕方になり仕事を終え、日当を貰って帰る。

「まじであいつさ~~」

「ほんとに~~」

 汚い言葉達はずっと、ドクオの耳の周りを蠢いていた。





('A`)「あー、疲れた」

 家に着き、ベッドに飛び込む。

('A`)「飯と、シャワー。めんどくせぇなぁ」

 少しの間唸って、立ち上がり、シャワーを浴びる。


33 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:28:57.97 ID:+rkfbmc9O

 普段から独り言の多いドクオだが、そうさせるのは寂しさか、苛立ちか。

('A`)「明日から三日間、休みだな」

 誰も聞いてはいないのに、やたらに言葉を溢す。

('A`)「久し振りだし、行くかな」

 言って、布団に潜る。あっという間に寝息をたてて、独り言は無くなった。

 ドクオは毎日、こんな生活を繰り返す。淡々と、繰り返す。
 理解が無い人々は、不気味なドクオを言葉で殴る。悪い事をしているわけではないのに、罵声される。

 しかし、その原因となっているのは、やはりドクオの性格で。
 就職した先の工場でも、笑わない、喋らない、暗い。だから、執拗なまでに責められる。

 ドクオはただ、放っておいて欲しかった。何も悪い事はしないからと、これが自分の性格だからと、放っておいて欲しかった。
 だけど、それは決して叶わない。
 どうしても周りに嫌がられてしまう。それは短所であって、そして個性でもある。

 だからこそ、独りで生きさせて欲しいと、ドクオは願い続けた。



【異常だと言われても、彼にとってはこれが普通】



36 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:32:32.33 ID:+rkfbmc9O

【第四話】


 暖かい陽の光が降り注ぐも、やはり頬を打つ風は冷たい午後。

('A`)「久し振り」

 ドクオは一人、石に向かって声を投げる。

('A`)「今日は良い天気だよ。寒いけど」

 水をかけ、掃除をして、、腰を下ろして、手を合わせる。
 そこは、今は亡き両親の墓。

――誰? 医者? 病院? 父さんは? 母さんは?

 中学校の入学式の前日。両親は事故で亡くなった。

――なに? 重傷? え? 重……体?

 入学祝いのプレゼントを買いに行く途中の、交通事故だった。

('A`)「未だにさ、思うんだ」

――遺品? 時計? いら……ないよ。ねぇ、父さんはどこ? 母さんは? どこ?

('A`)「こんなもんが無けりゃあ、死ななかったって」



39 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:34:37.68 ID:+rkfbmc9O

 真っ黒でシワくちゃなスーツと黄ばんだシャツから伸びる左手首に、銀色の時計。
 高級なものではないが、安い風にも見えない。

('A`)「こんなもんいらねぇから帰ってきてほしいって、何度も思った」

 時計の針は、動かない。

('A`)「どうしたらいい? 俺は、どうするべき?」

――わからないな。俺のせいだよ。ごめん、ごめんな。

 両親が亡くなった日からずっと、ドクオの胸に残る感情は、懺悔。

 手を合わせて俯くドクオの袖口を、慰めるつもりか、嘲笑うつもりか、冷たい風が泳ぎ回っているだけだった。



43 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:36:42.64 ID:+rkfbmc9O





('A`)「こんばんは」

( ´∀`)「いらっしゃいモナ」

 夜、墓参りを終えたドクオは、居酒屋『よつば』に顔を出す。

('A`)「今日、行ってきたんだ、墓参り」

( ´∀`)「そうモナ。カウンターに座るモナ。熱燗でいいモナね?」

('A`)「うん。ありがとう、大将」

 せわしなく動くモナーが、ふっと手を止める。

( ´∀`)「……墓参りに行った日は『モナーさん』って、呼ぶモナ」

('A`)「そう、だね」

 しばらくの間、ドクオは黙ってお酒を呑む。
 客が去り、モナーが暖簾を片付けても、ドクオはまだそこに座っていた。



44 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:38:56.39 ID:+rkfbmc9O

( ´∀`)「お待たせモナ」

('A`)「うん。待った」

( ´∀`)「それは悪かったモナ。今日のお代はいらないモナ」

('A`)「いや、冗談だよ」

( ´∀`)「そうモナか」

 人の良さそうな顔が示す通り、モナーは極度のお人好し。
 困っている人を放ってはおけないモナ、それが口癖。その優しさにつけこんで、お金を払わず店を出る常連客は沢山いる。

('A`)「もうちょっと厳しくならないとダメだよ」

( ´∀`)「難しいモナ」

('A`)「ま、俺からは強く言えないけど、さ」



49 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:41:32.40 ID:+rkfbmc9O

 日本酒を美味しそうに呑むモナーの顔を、ドクオはじっと見つめる。

('A`)「老けたね、モナーさん」

( ´∀`)「そりゃそうモナ。君が中学生だった頃から、随分と長い時間が流れたモナ」

 両親が亡くなってから、ドクオの面倒を見てきたのはモナーである。
 家族でもない、親戚でもない、ドクオの父親の友人だったモナーが、ドクオを育てた。

('A`)「その……学費とかさ、迷惑だったろうに、本当に感謝してる。モナーさん」

( ´∀`)「やめるモナ。僕は結婚してないし、子どもだっていないモナ。迷惑だなんて思った事は無いモナよ」

('A`)「俺さ、もう人生の半分以上がモナーさんの息子みたいなものだか――」

( ´∀`)「やめるモナ!!」



51 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:43:39.35 ID:+rkfbmc9O

 温厚から産まれてきた様なモナーが、突然大声をあげる。

('A`)「……悪かったよ」

( ´∀`)「モナモナ。親不孝な事を言っちゃ駄目モナ。君の父親は本当に素晴らしい人だったモナ。僕とは大違いモナ。君に、父親は一人モナよ」

('A`)「モナーさんはどうして結婚しなかったの? 優しいのに」

( ´∀`)「こんな性格だから、モナね」

('A`)「……そっか」

 その一言で、ドクオはなんとなく理解ができた。自分よりずっと長い時間を生きているモナーには、その分だけ沢山の辛さや苦しみがあったのだろうと、理解した。

('A`)「とにかく、モナーさんには感謝してるんだよ。感謝するのはいいよね?」

( ´∀`)「もちろんモナよ。感謝の証として、僕のお酒代は君にツケとくモナ」

('A`)「……まじか」



58 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:45:44.75 ID:+rkfbmc9O

 それからしばし、沈黙があった。
 次にモナーが口を開いた時、ドクオは不思議な感情に襲われる。

( ´∀`)「ねぇドクオ君? またここで働いてみないモナ?」

('A`)「え?」

( ´∀`)「君がいると、助かるモナ」

('A`)「冗談だろ? 俺が昔ここで働いた時、お客さん減ったじゃん。俺のせいでさ」

( ´∀`)「たしかに君は暗いし愛想も無いけど、それでも僕は――」

('A`)「無理無理。今日は帰るよ。また来るねモナーさん」

( ´∀`)「……モナ」

 お金を置いて、早足で店を出たドクオ。ぽつんと一人、モナーを残して。

( ´∀`)「ドクオ君がいると、助かるモナよ」



62 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:48:02.44 ID:+rkfbmc9O

――ねぇ、モナーさん?

――大将、モナ。

――めんどくさいなぁ。ねぇ、大将?

――どうしたモナ?

――店の名前、さ。『四ツ葉』ってやつ。ひらがなの方がよくない?

――ひらがな? どうしてモナ?

――なんとなく。子どもでも読めるし。

――子どもは居酒屋に来ちゃ駄目モナ。



65 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:49:18.46 ID:+rkfbmc9O

――あー、なんかさ。ひらがなの優しい雰囲気が、モナーさ……大将の優しさにピッタリなんだよ。

――優しさ?

――うん。優しいよ、大将は。

――そうモナか。考えとくモナ。

――絶対だよ!! 絶対!!

( ´∀`)「お人好しな僕を利用する人は沢山いるけど、僕を誉める、ドクオ君みたいな子は少ないモナよ」

 嬉しかったモナ、その言葉をテーブルに置いて、居酒屋『よつば』の灯りは消えた。



69 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:51:50.81 ID:+rkfbmc9O





('A`)「まいったね」

 帰り道、ドクオは思う。自分みたいな暗い奴を誘うのはきっと、同情なんだろうと。

――すみませんモナ。彼はこういう顔なんだモナ。

――ごめんなさいモナ。彼が暗いのは生まれつきモナ。

――ドクオ君は何も悪くないモナよ。ただちょっと顔面が散らかってるだけモナ。

 思い出すのは、自分の為にモナーが頭を下げる姿と、その他。

('A`)「今気付いたけど、モナーさんも俺に酷い事言ってる。いや、しかしなぁ」

 歩きながら、うーん、と唸るその背後。

川 ゚ -゚)「……」

 パンツスーツ姿の美しい女性が、ドクオの背中をじっと見ていた。



【不幸だったからこそ、優しい人に出会えた】



73 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:53:39.52 ID:+rkfbmc9O

【第五話】


 それは、高校二年生だった暑い暑い夏の日の夕方。

( ;ω;)「どうしてだお? どうしてなんだお?」

 病で突然亡くなったのは、ブーンの父親。

( ;ω;)「ねぇ、父ちゃん!! どうして病気を隠していたんだお? ブーンは、ブーンは!!」

 病室の中、もう二度と動かない父親に対し、言葉をぶつける。

「やめなさい。お父さんは頑張ったのよ」

( ;ω;)「母ちゃん、知ってたのかお!? なんで黙ってたお!? 信じられないお!! ブーンは家族じゃないのかお!? 頑張ったってなんだお!! ふざけるなお!!」

「だったらブーンに、何が出来たの? 高い医療費を払えたの? 学校辞める? そんなの、お父さん一番悲しむわ」

( ;ω;)「うるさい!! うるさい!!」

 叫び散らして、ブーンは病室から、そして病院から、逃げるように走る。

 溢れ出る涙を堪える事もせずに、ブーンはひたすらに走った。
 すれ違う誰かさんが、泣きじゃくるブーンを見て笑った。



75 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:56:02.95 ID:+rkfbmc9O

( ;ω;)「ひどいお……ひどいお」

 家にも帰らず、暗くなった公園のブランコに座って、ただ涙を流す。

('A`)「どう……したの?」

 そんなブーンに声をかける、笑っていない誰かさん。

( ;ω;)「誰だお」

('A`)「鬱田……ドクオ。あー、たぶんお前と、同じクラス」

( ;ω;)「そうかお。ほっといてくれお」

('A`)「わかった。ほっとく」

 言って、ドクオはブーンの隣のブランコに腰をかける。

( ;ω;)「何、してるお?」

('A`)「え?」



78 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:57:46.35 ID:+rkfbmc9O

( ;ω;)「どっか、行ってくれお。ブーンは泣きたいんだお」

('A`)「ならお前がどっか行けよ。お前の座ってるそのブランコは、俺の特等席だ。お前みたいなデブに座られたら、木が駄目になるからやめてくれ」

( ;ω;)「無茶苦茶だお。ブーンはこんなに泣いてるのに、優しくするのが普通だお!?」

('A`)「鬱陶しいなぁお前。ちょっと待ってろ」

 立ち上がって、どこかへと行く。すぐに戻ってきたドクオの両手には、缶コーヒー。

('A`)「飲め」

( ;ω;)「ブラック、飲めないお」

('A`)「……知らね」

 文句を言いながらも、弾んだ音を鳴らしてプルタブを開け、勢いよくコーヒーを流し込むブーン。

( ;ω;)「にがい」

('A`)「知らねって」



84 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 20:59:29.81 ID:+rkfbmc9O

 ブーンの嗚咽だけが響く時間が少しあって、落ち着いたのか、ゆっくりと話始める。

( ;ω;)「父ちゃんが死んだお」

('A`)「……ふぅん」

( ;ω;)「病気だったお。隠してたんだお。悔しいお」

('A`)「そうなんだ」

( ;ω;)「何も、思わない?」

('A`)「は?」

( ;ω;)「ドクオ君は、冷たい人だお」

('A`)「さぁね」

 ドクオから投げられる言葉が痛いのか、悔しいのか、拳をギュッと握るブーン。



86 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:01:10.03 ID:+rkfbmc9O

('A`)「母さんは?」

( ;ω;)「え?」

('A`)「お前の母さんはどうなんだよ? お前より長い間一緒に居た人がいなくなって、辛いんじゃないのか?」

( ;ω;)「病院に、置いてきたお」

('A`)「お前はいつもガキ臭いこと言ってるけど、男だろ? 母さんは女だ。男が女を守るのは当たり前だ。父親がいなくなったんなら、尚更」

――こんな時だからこそ、大人にならないといけないんじゃないのか?

( ;ω;)「……」

 強く握った拳は、次第にほどかれて。

( ´ω`)「そう、だおね」

 ブーンは、泣くのをやめた。

('A`)「おいデブ。足、付いてんだろ? 会えるんだろ? 母さんに。手遅れにならないうちに、会って優しくしとけ」

( ´ω`)「どういう、意味だお?」

('A`)「さぁね。いいから行けよ、走れよデブ」

( ´ω`)「……わかったお」



87 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:02:25.15 ID:+rkfbmc9O

 立ち上がって、疲れているのか転びそうな足取りで駆け出したブーン。
 が、公園の入口ではたと気付いて、足を止める。

( ´ω`)「いつも? ドクオ君と話したのは今日が初めて、だお?」

 振り返って、ブランコの方を見てみると――

('A`)「……うめぇな」

 ブーンが座っていたブランコに座って、えらく満足そうな顔をしてコーヒーを飲むドクオが居る。

( ´ω`)「不思議な人、だお」

 言って、また駆け出した。今度は振り返ったりはせずに。

('A`)「うめぇ」

 ブーンに会った事など忘れてしまったかの様に、ドクオはずっと、そこに居た。



90 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:03:40.98 ID:+rkfbmc9O





 都心部に位置する、大きなビルの会議室。

( ^ω^)(眠いお)

 眠そうな顔をして会議に挑む、ブーンがいる。

( ^ω^)(今度はいつ、ドクオと呑めるかお?)

 頭の中は、誰かさんの事ばかり。

( ^ω^)(あー、呑みたいお)

 ドクオが抱くブーンへの感情と、ブーンが抱くドクオへのそれは、大きく大きく違ったもので。

――ドクオはブーンの、救世主だお。

 酷く子ども地味た発想ではあるが、ブーンは心の底から、ドクオの事を慕っていた。



【あの日まで誰かさんだった君は、今では僕の救世主】



101 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:09:09.07 ID:+rkfbmc9O

【第六話】


川 ゚ -゚)「こんにちは」

('A`)「え?」

 まだ寒いある日の午後、煙草を買いに出掛けたドクオは、街中で不意に声をかけられた。

('A`)「えっと……誰?」

 パンツスーツ姿の、知らない人。それだけで背中に冷たい汗が走る。まるで精神病みたいだなと、下手な自虐がドクオの脳裏を過った。

川 ゚ -゚)「素直クー」

('A`)「は?」

川 ゚ -゚)「クーと、呼べ」

('A`)「え? は、え?」


107 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:11:16.46 ID:+rkfbmc9O

 えらく美人な知らない女が目の前に現れて、突然名乗った。それに足して、ドクオは御世辞で言っても、不細工。
 そこから導き出せる答えは、一つ。

('A`)「宗教の勧誘?」

川 ゚ -゚)「違う」

 即座の、不正解。

('A`)「じゃあ、なに?」

川 ゚ -゚)「私は、貴方に会いに来た」

('A`)「は?」

川 ゚ -゚)「とりあえず、来い」

 途端、クーはドクオの腕を引っ張り歩き出す。

('A`)「ちょ、どこ行くの? え、何? 誰?」

川 ゚ -゚)「行けばわかる」

('A`)「わかった、わかったからさ。手、離して。人が見てる」

 パンツスーツの美しい女が、スウェットを着た不細工の手を引く。街行く人々が、何事かと二人の姿を見る。



110 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:13:04.52 ID:+rkfbmc9O

川 ゚ -゚)「気にするな」

('A`)「いや、笑われるよ? いいから離せよ」

川 ゚ -゚)「笑う? わかった」

 ようやっと自由を取り戻した手。ドクオは手を宙に泳がせて、一度頷く。

('A`)「あんまり俺に関わらない方がいいよ」

川 ゚ -゚)「??」

('A`)「まぁいいや、さっさと行こう」

川 ゚ -゚)「わかった」

 それからは黙って、並んで歩く二人。
 クーはドクオより背が高く、綺麗な長い黒髪に、胸も大きくて美しい。
 すれ違う男のほぼ全てが、鼻の下を伸ばして振り返る。

 そして、辿り着いた場所。

('A`)「おい、ここ――」

川 ゚ -゚)「いいから」

 からから、と鳴らして扉を開いて、中に入る二人。


114 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:14:53.83 ID:+rkfbmc9O

( ´∀`)「いらっしゃいモナ」

 ドクオが通い慣れた、居酒屋。

川 ゚ -゚)「こんにちは」

( ´∀`)「こんにちは、クーちゃん」

('A`)「……」

( ´∀`)「どうしたモナ?」

('A`)「なにがなんだか、わからない」

 無表情が笑顔の様なモナーが、目を線にして笑う。

( ´∀`)「クーちゃんモナよ」

('A`)「いや、知らないよ」

川 ゚ -゚)「やっぱりか」

( ´∀`)「やっぱりモナね」

('A`)「??」

 知らない女性のはずだと、ドクオは思う。



117 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:16:32.38 ID:+rkfbmc9O

川 ゚ -゚)「五年前、駅で」

( ´∀`)「線路に落ちた女性を、君が助けたモナ」

('A`)「え? あー、うん。あったね、そんな事。忘れてた」

 ドクオにとっては、ちっぽけな思い出。キッカケがなければ思い出せない様な、小さな小さな思い出。

川 ゚ -゚)「あの女性は、私の母だ」

('A`)「あー、そうなんだ」

川 ゚ -゚)「ありがとう。あの時、母を助けてくれて」

('A`)「うん……いや、どうも」

( ´∀`)「とりあえず、座るモナ。僕は店の準備があるし、まだ開店してないから客は来ないモナ。ゆっくりと話すモナ。お酒持ってくモナ」

川 ゚ -゚)「ありがとう」

 いつかの日、友人の振りをした誰かさんと呑んだ時と同じ席に、向かい合って座る二人。



122 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:18:57.14 ID:+rkfbmc9O

川 ゚ -゚)「本当に、感謝してる」

('A`)「いや、そんな大した事じゃない」

川 ゚ -゚)「貴方にとってはそうだったかもしれない。でも、私や母にとっては、違う」

('A`)「そっか」

川 ゚ -゚)「母は、先日亡くなった」

('A`)「え?」

川 ゚ -゚)「元々病弱だった。だけど、安らかな最期だった」

('A`)「そうなんだ」

川 ゚ -゚)「貴方がいなければ、母はとっくに死んでいた。父親のいない私にとって、母の存在はとても大きかったから」

('A`)「んー、あー」



127 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:20:35.47 ID:+rkfbmc9O

川 ゚ -゚)「本当にありがとう」

('A`)「よし、止めよう」

川 ゚ -゚)「え?」

('A`)「こういうの、慣れてない」

川 ゚ -゚)「そう」

('A`)「うん」

 それから静かに、静かに静かに、二人は様々な事を話した。

 ドクオがとにかく暗い性格だということ、不細工だということ、フリーターだということ。彼女なんていたことがないということ。
 クーが今、23歳だということ、大学を出て、ブライダル関係の仕事をしているということ、男の人と付き合ったことはないということ。



132 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:22:21.57 ID:+rkfbmc9O

('A`)「絶対嘘だ」

川 ゚ -゚)「なにが?」

('A`)「その顔で、その胸で、そのスタイルで、付き合った事がないわけがない」

川 ゚ -゚)「変態か」

('A`)「うっさい黙れ」

川 ゚ -゚)

('A`)「まぁ、あれだ」

川 ゚ -゚)

('A`)「いや、うん」

川 ゚ -゚)

('A`)「ごめん、黙るな」

川 ゚ -゚)「わかった」

 ドクオは不思議と、クーと話すのが楽しいと、感じた。なぜかは、わからない。



136 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:24:10.23 ID:+rkfbmc9O

川 ゚ -゚)「貴方は、珍しい」

('A`)「なにが?」

川 ゚ -゚)「他人に対して、自分の短所をさらけ出せる人は、少ない」

('A`)「普通だろ」

川 ゚ -゚)「私とは、正反対だな」

('A`)「そう?」

川 ゚ -゚)「うん」

('A`)「そっか」

 ゆっくりと、穏やかに流れる時間。だけど楽しい時間はあっという間に過ぎるもので。

('A`)「ちょっと煙草吸ってくる」

川 ゚ -゚)「吸ってもいいぞ?」

('A`)「いや、いいんだ」


138 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:25:28.65 ID:+rkfbmc9O

 ぼちぼちと客が入り始めた店の中、ドクオは横目でそれを見ながら、店を出る。

 居酒屋の壁に背中を預け、ポケットから煙草と宝物を取り出す。
 きぃん、と一つ、響いた音。

川 ゚ -゚)「ん?」

 店の中でその音を微かに聴いた、クーが不思議そうな顔でいる。

('A`)「……まいったね」

 薄暗い空を見上げて、一言溢す。
 言葉と共に空に投げた、芽生えてしまった小さな小さな――

('A`)「ほんと、まいった」

 恋心。



【宝物の音を聴きながら、考えるのは君のこと】



142 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:27:29.17 ID:+rkfbmc9O

【第七話】


 店を出て、肩を並べて歩く二つの影。

('A`)「寒いなー」

川 ゚ -゚)「別に送ってくれなくていいのに」

('A`)「女が一人とか、危ないだろ」

川 ゚ -゚)「貴方みたいな人がいるから?」

('A`)「うっせ」

 ドクオは考える。まさか自分が、初対面の女性とここまで仲良く話すとは、と。

('A`)「んー」

川 ゚ -゚)「どうした?」

('A`)「なんでさ、俺に会いに来たの?」

川 ゚ -゚)「御礼が言いたくて」



144 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:29:03.63 ID:+rkfbmc9O

('A`)「もう五年だよ? なんで今頃?」

川 ゚ -゚)「母が、亡くなったから。母は貴方に会いたがってたから」

('A`)「ふぅん」

川 ゚ -゚)「私も、貴方に会いたかった」

 ドクオが横目で見たクーの顔は、美しいそれ。

('A`)「そっか。まぁでも、もう俺に会いに来るとか、やめなよ?」

川 ゚ -゚)「なんで?」

('A`)「俺、こんな奴だから、みっともないよ」

川 ゚ -゚)「なにが?」

('A`)「なにがって……わかんないかなぁ」

川 ゚ -゚)「全然」

('A`)「……ちょっと公園、寄っていこう」

川 ゚ -゚)「うん」

 二人が足を踏み入れたその公園。そこは、友達の振りをした誰かさんと出会った場所。尤も、ドクオはその事を覚えてすらいないが。



147 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:30:35.30 ID:+rkfbmc9O

('A`)「はい、コーヒー」

川 ゚ -゚)「ブラック飲めない」

('A`)「うっせ、黙って飲め。絶対美味いから」

川 ゚ -゚)「無茶苦茶だな。まぁありがとう」

 ブランコに座って、一口。

川 ゚ -゚)「にがい」

('A`)「知らね。飲み切れよ」

川 ゚ -゚)「知らね」

('A`)「……お前、性格悪いな」

川 ゚ -゚)「貴方に言われたくない」

('A`)「へっ」

 どうしてか嬉しそうな顔で、ドクオはコーヒーを飲む。



150 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:32:03.18 ID:+rkfbmc9O

('A`)「ここは、昔から俺の特等席なんだ」

川 ゚ -゚)「公共の場なのに、自己中」

('A`)「うっせ、聞け。俺は、思うんだ」

川 ゚ -゚)「うん」

('A`)「人にはな、それぞれの世界があるんだよ」

川 ゚ -゚)「世界?」

('A`)「対等に接することができるのは、同じ世界の人とだけ」

 ブランコに座って、空を見上げて話すドクオ。星の見えない空が、まるでドクオの心根の様で。
 そんなドクオの顔を、隣に座るクーはじっと見る。

('A`)「例えば俺には、こういうちっぽけな公園の、ちっぽけなブランコが似合うんだ。俺はここが好きなんだよ」

川 ゚ -゚)「……」

('A`)「だけどな、お前みたいな美人はさ、高級なレストランが似合うんだ。これから先、金持ちで優しい男と出会うんだ。その時、俺みたいな奴と知り合いだったら、お前自身が一番悲しむ」



155 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:33:34.54 ID:+rkfbmc9O

川 ゚ -゚)「どうして?」

('A`)「わからない?」

川 ゚ -゚)「うん」

('A`)「俺、汚いんだぜ。暗いし、つまらないし。人を殺しそうな顔してるって言われるんだ。俺は周りを不幸にする。そんな奴の知り合いだと言ったら、お前まで笑われるぜ? だからお前はもっ――」

 音も無く、訪れたものがある。クーの唇が、ドクオの言葉を止めた。

 数十秒か、数分か。静かな時間が流れた。

川 ゚ -゚)「……わからないな。私には」

(゚A゚)「……なんで?」

川 ゚ -゚)「捜したんだ。貴方の事を」

(゚A゚)「は?」

川 ゚ -゚)「私は、執着心が強い。とてつもなく強い。貴方は私にとってのヒーローで、私はどうしても会いたかった。だから」

(゚A゚)「だから?」



159 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:35:35.42 ID:+rkfbmc9O

川 ゚ -゚)「母を助けた青年の事を調べた。家を家族構成を友人を勤務先を、調べた」

(゚A゚)「えっ」

川 ゚ -゚)「見つけたのが、居酒屋『よつば』だった。そしてモナーさんに話を持ち掛けた」

(゚A゚)「モナーさん、俺の事を喋ったの?」

川 ゚ -゚)「吐いたね、三秒で」

(゚A゚)「えっ怖い」

川 ゚ -゚)「笑うとか笑わないとか、どうだっていい。とんでもない不細工でまぁ驚いたけど、貴方が母を助けたあの日から」

――私の目には、貴方しか映らない。

(゚A゚)「……」

川 ゚ -゚)「怖い?」

('A`)「正直」

川 ゚ -゚)「大丈夫。精神的に弱い人とかではないから」

('A`)「そっか」



164 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:37:27.76 ID:+rkfbmc9O

川 ゚ -゚)「私の事、どう思う?」

('A`)「好きだ」

 言って、数秒。固まった、時間。

('A`)「いや、え? あれ?」

川 ゚ -゚)「嬉しいな」

('A`)「待って」

川 ゚ -゚)「ん?」

('A`)「好きだけど、駄目だ。俺の傍になんか居ちゃ駄目だ」

川 ゚ -゚)「……男らしくないな」

('A`)「うっせ」

川 ゚ -゚)「とりあえず、帰ろう」

('A`)「そうだな」

 一歩、踏み出す勇気が無い。ドクオには多くのものが欠けているが、一番の欠陥はそれだった。



166 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:38:38.11 ID:+rkfbmc9O

 殻に閉じ籠って、出てこない。歩み寄るのではなく、放っておいて欲しいと願う。

 そんなドクオだから、一歩が踏み出せない。
 クーにはもっと相応しい男がいるはずだと、思ってしまう。

 それはきっと、仕方のないこと。



【愛される喜びより、嫌われることがなにより恐くて】



168 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:39:21.79 ID:+rkfbmc9O

【第八話】


 きぃん、という音が鳴って、続けて葉の焼ける音が辺りに散らばる。

川 ゚ -゚)「幸せに、なりたくない?」

 凍てつく様な寒さの真夜中。冷たい風が辺りを舞う駅のホームに響いた、声。

('A`)「……さぁ、ね」

 ふっと吐かれた言葉と共に、空へと溶ける柔らかい煙。

川 ゚ -゚)「そのままで、いいとでも?」

('A`)「さぁて、ね」

 高く澄んだ声に耳を貸さず、そう呟く。

川 ゚ -゚)「今、幸せ?」

 その言葉には何も返さず、星の無い真っ暗な空を見上げて、また一つ、ふっと煙を吐く。

 何も見えない空がある。そうさせているのは言葉か、表情か、心根か。
 黒に染まる世界の中、きぃん、と鳴らすそれだけが、白く輝いていた。



170 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:41:13.10 ID:+rkfbmc9O





川 ゚ -゚)「いくじなし」

 ドクオと別れ、電車の中、呟いたのは、クー。

――そのライター、良い音。

――宝物なんだ。

――誰に貰った?

――自分で買った。

――そっか。触らせて?

――バカかお前。駄目に決まってるだろ。もう帰れ。

――むぅ。

川 ゚ -゚)「ばかちん」



172 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:42:44.77 ID:+rkfbmc9O

 結局、ドクオは一歩を踏み出せずに、手を振った。

川 ゚ -゚)「チューなんかしたの初めてだっつーのボケカス。煙草臭いっつーに。せっかく勇気出したのに、彼女いないなら付き合え不細工。こんなロマンチックな出会い他に無いだろボケカス」

 ぶつぶつぶつぶつ、愚痴を溢す。

川 ゚ -゚)「ふん」

 眠る度に夢で見たヒーロー。そのヒーローにせっかく会えたのに。
 綺麗だ、美しいといわれるその外見とは裏腹に、クーはとても子ども地味た恋愛観を持っている。それは幼さではなく、意志の強さから来るもの。

川 ゚ -゚)「見てろよ不細工。何がライターだボケカス。そんな安物なんか私がすぐに――」

 携帯を開いて、何かを調べる。

川 ゚ -゚)「……」



174 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:44:18.10 ID:+rkfbmc9O

 黙々と、黙々と、調べる。

川 - )「たっか!!」

 見つけて、叫んで、携帯を閉じる。

川 - )「なんだあのボケカス。火点けばなんでもいいだろ調子乗んな不細工……貯金、しよう」

 呟いた声があって、クーが次に執着するのは、ドクオの大好きな、宝物。





('A`)「ねぇ、どうしたらいいかな?」

( ´∀`)「眠いモナ」

 クーと別れてすぐ、居酒屋『よつば』に舞い戻ったドクオ。
 二階で寝ていたモナーを叩き起こして、問う。



177 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:47:03.96 ID:+rkfbmc9O

('A`)「わかんないなぁ」

( ´∀`)「眠いモナ」

 頭を抱えて唸るドクオの隣に、目を擦るモナーの姿。

( ´∀`)「友達に聞けばいいモナ」

('A`)「友達?」

( ´∀`)「ぽっちゃりさん」

('A`)「あぁ、アイツは友達じゃないよ。それに、デブだよ」

( ´∀`)「そうモナか」

 何に納得したのか、大袈裟に頷いてみせるモナー。

( ´∀`)「僕はね」

('A`)「ん?」

( ´∀`)「リンゴの種を植えたのに、メロンの花が咲いて欲しいと願ったモナ」

('A`)「……どういう意味?」



178 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:48:20.00 ID:+rkfbmc9O

( ´∀`)「今のドクオ君は、昔の僕と同じって事モナよ」

('A`)「??」

( ´∀`)「メロンの花を咲かせたいならどうすればいいか、ドクオ君ならわかるモナね?」

('A`)「うー、ん?」

( ´∀`)「ドクオ君の欠点は、そこだモナ」

('A`)「よくわかんないけど、そっか」

( ´∀`)「変わるなら、今、だモナよ」

('A`)「……」

 モナーから受け取った言葉達は、長い間、ドクオの頭の中を回っていた。



【人それぞれの想いがあったから、悩んでみようと考えた】



180 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:49:46.67 ID:+rkfbmc9O

【第九話】


 年が明けて、数日経っても騒がしい街。その一隅を照らす、居酒屋がある。

('A`)「よう」

( ^ω^)「珍しいお、ドクオから誘ってくれるなんて」

 顔を合わせた、二人の男。

('A`)「話がある。ちょっと、ついてきて」

( ^ω^)「え? 呑まないお」

('A`)「いいから」

 渋々と、ドクオの背中を追うブーン。
 行き着いた先は、あの公園。



182 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:51:21.92 ID:+rkfbmc9O

('A`)「飲め」

( ^ω^)「またブラックかお」

('A`)「なに言ってんだお前。まぁいいや、座れ」

 手招きして、並んでブランコに座る。

('A`)「ここは俺の特等席なんだ。人にはそれぞれ、世界ってものがあってだな――」

( ^ω^)「特等席なのは知ってるお」

('A`)「えっ」

( ^ω^)「覚えてない?」

('A`)「なにを?」

( ^ω^)「そうかお」

 ふーっと長い息を吐いて、ブーンは話し出す。

( ^ω^)「中学校から一緒だったのに、初めて言葉を交わしたのは高校に入ってから、ブーンはドクオを追いかけ回したお」

('A`)「鬱陶しいって思った」



185 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:54:21.06 ID:+rkfbmc9O

( ^ω^)「ドクオは、忘れてるお。ブーンの父ちゃんが死んだ日のこと」

('A`)「あー?」

( ^ω^)「すごく、嬉しかったお」

('A`)「なんだっけ?」

 ブーンが居た事は覚えている。やたら弱くてガキ臭い奴だと、いつも思っていた。だけど記憶のアルバムをいくら捲っても、ブーンの言う出来心は書いていない。

( ^ω^)「ブーンにとってはとても大きな出来事だったのに……ほんと、不思議な人だお」

('A`)「うーん」

( ^ω^)「で、話ってなんだお?」

 そうだった、と声を出して、ドクオは真面目な顔をして、言う。



188 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 21:58:16.60 ID:+rkfbmc9O

('A`)「俺と、仲良しな振りをするのはやめてくれ」

( ^ω^)「お?」

('A`)「お前は、良い奴だ、と思う。だけどな、生きてる世界が違うんだ。お前は大学を出てからやけにシュッとして、良い大人になった。それに比べて俺は、こんなんだ」

( ^ω^)「……」

('A`)「お前が俺を見下して、気持ち良くなりたいと思うなら、やめてくれ。で、そうじゃなかったにしても、俺と一緒に居たらお前が笑わ――」

 途端、ブランコから吹き飛んだドクオ。頬を殴る、ギュッと握られた拳があったから。

('A`)「……いってぇ」

(  ω )「なんで、そんな事言うお?」

('A`)「あ?」

( ;ω;)「ドクオはブーンの、救世主なんだお!? 情けないことを言うなお!!」

('A`)「救世主?」

( ;ω;)「嫌じゃないのかお? 自分でそんな事言ってて、寂しくないかお? 今のドクオは、みじめだお」



190 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:00:22.19 ID:+rkfbmc9O

 ぐさりと、ドクオの心に突き刺さった言葉。

( A )「誰が、みじめだって?」

( ;ω;)「お前だお!!」

( A )「俺だって……俺だってなぁ」

 震えた拳を、ブーンの頬に打ち付ける。

(#'A`)「俺だって、こんな自分が大嫌いだ!!」

( ;ω;)「だったら!! 変われ!!」

(#'A`)「――ッ!!」



193 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:03:07.49 ID:+rkfbmc9O

( ;ω;)「調子に乗るなお!! お前だってブーンと同じ、ただのバカなんだお!! 一人じゃなんにも出来ない弱虫だお!!
 両親がいないから? 暗いから? 世界が違う? 卑下して、自虐して、諦めて、不幸自慢ほど聞いてて鬱陶しいものはないお!! 格好つけるのも大概にするお!!」

 ずっとずっと、言いたかったことなのか、狂った様に叫ぶ。

( ;ω;)「……見損なったお」

 そして、走り去ったブーン。

('A`)「……いってぇ」

 暗い空が、仄かに明るさを取り戻す頃まで、ドクオは一人、項垂れていた。

 ブーンが言った全ての言葉を、何度も何度も心に叩きつけながら。



【昔から変わらない君の優しさで僕は救われたのに】


194 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:05:10.31 ID:+rkfbmc9O

【第十話】


('A`)「よろしくお願いします」

 春になっても、ドクオはやはり変わらない。寒かった日と何も変わらない生活をして、毎日を過ごす。

('A`)(そんな簡単に、変われないだろ)

 そう、決めつけて。

「あー、いいや。日当ちゃんと払うから、もう帰っていいよ。迷惑だ」

('A`)「……わかりました」

 人気アーティストのグッズ販売。これっぽっちもドクオには向いていない職業。

('A`)(アイツはなんで、俺なんか)

 仕事や罵声の言葉の事なんて、もはや考えていない。あの日の事を、冬が過ぎて春になっても、考える。


197 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:07:12.47 ID:+rkfbmc9O

 あの日から、ブーンには会っていない。ブーン以外からの着信なんて滅多にないドクオの携帯は、いよいよ鳴らなくなった。

('A`)「時間、空いたなぁ」

 家に着いたドクオはベッドに飛び込み、きぃん、と鳴らして、煙草に火を点ける。やはりその音は心地が好いが、どこか虚しくて。

('A`)「……行くか」

 呟いて、スーツに着替えて、家を出る。今でもそれは、シワくちゃのまま。





 墓の前、ぼーっと立って考える。

('A`)「変わるって、なんだ」

 腰を下ろして、手を合わせる。



202 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:09:25.67 ID:+rkfbmc9O

 その、背後。

川 ゚ -゚)「おい、ボケカス」

('A`)「え?」

 クーが、居た。

川 ゚ -゚)「受けとれ」

('A`)「え? なんで居るの?」

川 ゚ -゚)「いいから、ほら」

 ドクオに手渡されたのは、ピンクのリボンで飾られた、小さな黒い箱。

('A`)「なにこれ?」

川 ゚ -゚)「開けろ」

 言われ、それに従って、箱を開ける。

('A`)「……あ」

 手にとって、確かめた。ドクオの持っているそれとは少し違う、パラディウム仕様のデュポンライター。

川 ゚ -゚)「ダイヤモンドとか本気でふざけんな。高すぎるわボケカス」



205 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:11:17.80 ID:+rkfbmc9O

 きぃん、と一度、鳴らしてみる。どうしてか、ドクオが持つ宝物よりも澄んだ音に聴こえて。

('A`)「くれるの?」

川 ゚ -゚)「貴方が持ってるやつより安物だけどね、ふん」

 どうしてかどうしてか、胸が踊る。ライターを貰ったからでも、人からプレゼントを貰うのが初めてだったからでもない。

('A`)「ありがとう」

 クーに、会えたから。

川 ゚ -゚)「ふん」

 きっと、今なんだと、気付いた。変われるとしたら、今。

('A`)「もうこれ、いらないな」

川 ゚ -゚)「え、捨てるの?」

('A`)「いや、父ちゃんにやる」

 宝物だったホワイトゴールドのそれを一撫でして、墓前にそっと、置いた。



207 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:13:56.29 ID:+rkfbmc9O

川 ゚ -゚)「高かったんでしょ?」

('A`)「いや、もっと大切な宝物が出来たから」

川 ゚ -゚)「そんなに嬉しいの? そのライター」

('A`)「違う」

川 ゚ -゚)「だったら――」

 言葉を待たず、抱き締めた。

('A`)「お前だよ」

川 ゚ -゚)「ふぅんそっかありがとう嬉しい」

 そしてそっと、唇を重ね――ようとしたが。

('A`)「あれ、なんかテンション低くない?」

川 ゚ -゚)「ここ墓地だぞボケカスそれにお前に格好良さなんか求めてない。鏡見てみろ気持ち悪い寒気がした。ナルシストかお前」

('A`)「うっせ」

川 ゚ー゚)「……しまらないなぁ」

 ふふふと笑った声があって、二人はそっと、肩を寄せる。



211 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:16:27.38 ID:+rkfbmc9O

川 ゚ -゚)「ん?」

('A`)「どうした?」

川 ゚ -゚)「その時計、なに?」

('A`)「両親の形見だよ」

川 ゚ -゚)「私が買っ――ちくしょう親ならしょうがないな勝てないな」

('A`)「無理して買わなくていいよ。あのさ、俺のどこが好きなの?」

川 ゚ -゚)「乙女か」

('A`)「いや、だって俺こんなんだよ?」

川 ゚ -゚)「知らね」

('A`)「お前ほんと性格悪い」

川 ゚ -゚)「貴方もね」

('A`)「俺は、そこそこだ」

川 ゚ -゚)「何がだよ」

('A`)「知らね」



214 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:18:37.75 ID:+rkfbmc9O

 打てば響く、そんな言葉の投げ合いを、ドクオはとても嬉しく感じて。

('A`)「好きだよ、クー」

川 ゚ -゚)「ここ墓地だっつってんだろボケカス耳にまっくろくろすけ詰まってんのか」

('A`)「ロマンの欠片も無いな」

川 ゚ -゚)「お前にそんなの求めてないわほんとナルシストか」

('A`)「うっせ」

 きぃん、と鳴らしたその音は、今までのそれとは少し違っていて、新しい何かを見つけてくれた。



【時計の針を、二人一緒に動かして】



217 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:20:25.46 ID:+rkfbmc9O

【第十一話】


('A`)「聞いてよ大将。今日、クーがさ~~」

( ´∀`)「そうモナか」

 それからの日々は、ドクオが知る何時の季節よりもずっと速く流れて。

('A`)「久し振りだな、ブーン。あの日は悪かったな」

( ^ω^)「気にしてないお。で、何か変わったかお?」

('A`)「彼女が出来た」

( ^ω^)「まじか」

('A`)「可愛い」

( ^ω^)「そうかお」


 穏やかで、楽しくて、ドクオはシワくちゃのスーツを着なくなった。



219 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:21:56.21 ID:+rkfbmc9O

 そして――

( ^ω^)「ブーンは結婚するお」

('A`)「まじで?」

( ^ω^)「結婚式、来てくれるお?」

('A`)「いや、俺なんかが行ったら――」

( ^ω^)「やめるお、言うなお。いいから来るお」

('A`)「わかった」

 流れる時間は、少しずつ形を変えて行く。



222 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:24:24.53 ID:+rkfbmc9O





(;^ω^)「つんつんつつつつつつん!! キッス、するお」

ξ゚⊿゚)ξ「まだ早い発音が気持ち悪い」

 冷や汗をかきながらやたらに焦るブーンと、気の強そうな顔ながらとても美しい、ツンと呼ばれたブーンのお嫁さん。

('A`)「しゃんとしろよブーン」

川 ゚ -゚)「ドレス、綺麗だなぁ」

 多くの人々がブーンとツンを祝福するその中に、ドクオとクーの姿もある。

( *^3^)「つんつつつつんつん!! ンムーー」

ξ゚⊿゚)ξ「ちょ誰だよお前、待って待って待ってってば!!」

 言葉は聞かずに重なった唇があって、盛大な拍手が二人に贈られる。



225 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:26:29.96 ID:+rkfbmc9O

( *^ω^)「ツン、愛してるお!!」

ξ////)ξ「声が大きい!! ばかっ」

('A`)「ブーンらしいなぁ」

川 ゚ -゚)「ドレス、綺麗」

 賑やかなまま、終わりを迎えて。

( ^ω^)「ツン、ブーケちょうだいお」

ξ゚⊿゚)ξ「は? なに言ってんの? 嫌よ」

( ^ω^)「いいからいいから」

ξ゚⊿゚)ξ「あ、ちょっと!!」

 ツンの手からブーケを奪って、ブーンは走る。



227 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:27:54.92 ID:+rkfbmc9O

('A`)「ん?」

 その先には、ドクオ。

( ^ω^)「あげるお。ドクオ」

('A`)「お前、なにやってんの?」

川 ゚ -゚)「私も欲しい」

 ブーンの行動に呆れ返るドクオの背後に――

ξ^⊿^)ξ「へぇー、アンタもドクオっていうんだ」

 満面の笑みを浮かべる鬼がいる。

('A`)「はい?」

ξ^⊿^)ξ「奇遇だわ。あたしが殴りたい奴の名前もドクオっていうんだー」

('A`)「えっ嫌だ待ってこわい。あ、なにこれ痛――」



229 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:29:20.09 ID:+rkfbmc9O





('A`)「痛い」

川 ゚ -゚)「馬鹿だねぇ」

 式の後、狭いアパートに帰ってきたドクオとクー。

('A`)「俺のせいじゃない」

川 ゚ -゚)「言い訳すんな」

('A`)「えっなんで?」

川 ゚ -゚)「さぁ?」

 言葉のキャッチボールを楽しみながら、ドクオは考える。

('A`)「クーはさ、ここに住んでて楽しい?」

川 ゚ -゚)「楽しいよ」



231 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:30:38.37 ID:+rkfbmc9O

('A`)「狭いし汚いのに?」

川 ゚ -゚)「汚い顔した奴が何を気にしてんだボケカス」

('A`)「いやぁ、せめてもう少し広い部屋だったらいいかなって」

川 ゚ -゚)「お前は答えが無かったら何もできないのかボケカス。神様か、神様ですか。考える前にやってみろボケカス」

('A`)「そう……だよなぁ」

川 ゚ -゚)「おやすみ」

('A`)「うん、おやすみ」

 電気を消して、部屋が暗闇に包まれてからもしばしの間、ドクオは一つの事を考えていた。



【挑戦を恐れている人は失敗の味すら知らないんだってさ】



233 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:33:50.18 ID:+rkfbmc9O

【第十二話】


 からから、と開かれた扉。

('A`)「大将、いる?」

( ´∀`)「あれ、ドクオ君だモナ。いらっしゃい。だけどまだ準備中モナよ」

('A`)「いや、ちょっと話があって」

( ´∀`)「どうしたモナ?」

 何かを整える様に、ふっと一つ吐かれた息。


('A`)「ここで、働かせてほしいんだ」

( ´∀`)「……どうしてモナ?」

('A`)「ブーンの結婚式に行って、思った。クーを誰より幸せにしてやりたいって。その為に、ちゃんと働きたい」

( ´∀`)「できなかったら、どうするモナ?」

('A`)「他の方法を探す」


235 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:35:57.88 ID:+rkfbmc9O

( ´∀`)「ドクオ君は今、何歳モナ?」

('A`)「29になった」

( ´∀`)「そうモナ」

 そう言ってから大将は黙って、手を動かす。

('A`)「あれ、大将?」

( ´∀`)「……」

('A`)「モナーさん?」

( ´∀`)「どうしたモナ? 大将」

('A`)「俺の話聞い――って、なんだって?」



236 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:37:14.78 ID:+rkfbmc9O

( ´∀`)「今日から、今から、ここは君の店だモナ」

('A`)「は?」

( ´∀`)「ほら、さっさと働くモナ」

('A`)「え、あ、うん。え?」

 モナーの言葉一つで、ドクオの頭の中は真っ白になった。

('A`)「あれぇ?」



239 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:39:26.43 ID:+rkfbmc9O





 それから数ヵ月の時が流れて、居酒屋『四ツ葉』の暖簾を潜る、幾つかの影。

川 ゚ -゚)「来たよ、ドクオ」

( ^ω^)「おいすー」

ξ゚⊿゚)ξ「あんまり飲み過ぎたら駄目よ、ブーン」

 賑やかな、ドクオの仲間達。

('A`)「いらっしゃい」

( ´∀`)「いらっしゃいモナ」

 それを迎える大将と、元大将。

( ^ω^)「最初はどうなることかと思ったけど、サマになってきたおね」

川 ゚ -゚)「不細工だな」

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ君、さっさとクーちゃんと結婚しなさいよ」

川 ゚ -゚)「不細工だな」



242 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:41:28.72 ID:+rkfbmc9O

('A`)「うっせ。色々うっせ」

 楽しそうに働くドクオの姿は、かつてのそれとは大きく違っていて。

( ´∀`)「店の名前も『四ツ葉』に戻したモナ」

川 ゚ -゚)「どうして?」

( ´∀`)「その方が、ドクオ君には合ってるモナ」

川 ゚ -゚)「そっか」

('A`)「飲み過ぎんなよブーン」

( ^ω^)「大丈夫だお」

 ガヤガヤと騒がしい店内。その騒がしさを止めた、一つの言葉があった。

ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、どうせならここで結婚式しましょう。ドクオ君とクーちゃんの」

( ^ω^)「お?」

('A`)「え?」

( ´∀`)「モナ?」

ξ゚⊿゚)ξ「いや、本気で」



243 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:44:30.57 ID:+rkfbmc9O

( ^ω^)「なんでそんなに結婚式をさせたがるお?」

ξ^⊿^)ξ「ブーケ」

( ^ω^)「なるほど」

('A`)「なるほど」

( ´∀`)「なるほど、モナ」

 ツンが主導権を握って、あれよあれよという間に、結婚式の計画が練られる。

 そして、迎えた日――





 夏真っ盛り。眩しい陽射しが降り注ぐ、ある蒸し暑い日の午後。

川 ゚ -゚)「ひらひらする」

 真っ白なウェディングドレスを着た、クーがいる。


246 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:47:11.85 ID:+rkfbmc9O

('A`)「綺麗だ」

 それを見る、ドクオも。

 そこは居酒屋『四ツ葉』の店内、そこには似つかわしくない、二人の姿。

( ^ω^)「ひゅーひゅー」

ξ゚⊿゚)ξ「ひゅーひゅー」

 仲良し夫婦も、そこにいて――

( ´∀`)「一番高いお酒、空けるモナ」

 機嫌が良いのか、既に頬をほんのり朱に染める、モナーもいる。

「チューしろチュー!!」

「おっぱいもぎ取れよドックン!!」

「羨ましいなぁあんなお嫁さん貰えて、毎晩楽しいだろうなぁ」

('A`)「うっせ」

川 ゚ -゚)「うっせ」

 常連客というやかましい外野も、多数。



250 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:49:59.92 ID:+rkfbmc9O

 バージンロードなんて大それたものは無い。神父も、賑やかな鐘の音も、無い。

('A`)「指輪、あげる」

川 ゚ -゚)「おいこらボケカスなんだそれ。ロマンが無いだろ」

('A`)「知らね。いらないんだったら俺が貰う」

川 ゚ -゚)「いらないよ」

('A`)「いや、嘘だよ」

川 ゚ -゚)「いらない」

('A`)「え、ほんとにいらないの?」

川 ゚ -゚)「いや、嘘だよ」

('A`)「……お前ほんとにほんとに性格悪い」

川 ゚ -゚)「知らね」

 だけど、確かな幸せが二人にはあって、そこにいる誰もが、二人を祝福する。


252 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:51:48.83 ID:+rkfbmc9O

川 ゚ -゚)「おい不細工、こっち向け」

('A`)「え?」

 軽く交わされた誓いのキスにも、何もロマンは無い。

 駆け抜ける様に、楽しい時間はすぐに終わって、すっかり夜になる。

('A`)「ふぃー」

川 ゚ -゚)「ふぃー」

 少しだけ広くなったアパートに帰ってきた二人は、同時に息を溢す。

('A`)「もう夫婦なんだなぁ俺達」

川 ゚ -゚)「色気の無い結婚式だったけどね」

('A`)「悪いな、クー」

川 ゚ -゚)「なにが?」

('A`)「もっと盛大にやれたら、もっと幸せだったのにさ」

川 ゚ -゚)「新婚初夜にそんな事言うとかお前ほんと殴るぞボケカス。離婚するぞ離婚」

('A`)「ごめんごめん」



255 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:56:27.83 ID:+rkfbmc9O

川 ゚ -゚)「なに? 私が好みのタイプだったから結婚したの? 不細工だったら結婚しなかったの?」

('A`)「……いや、うーん。いや、わからないな」

川 ゚ -゚)「おい酷いなお前」

('A`)「あんな出会い方、他に無いだろ? 昔からの知り合いだったわけじゃないし。だから『美人だから』っていうのも、材料になるよ」

川 ゚ -゚)「お前はあれだな。外見が大事なんだな。ほんとナルシストだ」

('A`)「ごめんごめん」



256 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 22:59:18.88 ID:+rkfbmc9O

川 ゚ -゚)「寝る」

('A`)「うん」

 おやすみ、と交わされた言葉があって、色気の無いまま新婚初夜は終わる。
 特に何も変わったりはしなくて、いつも通りの二人。

 だけどその中に――

('A`)「まぁ、出会いがどうであれ、さ」

 いつもとは違って布団の中、一言呟いたドクオの姿があった。

('A`)「俺は幸せだ。ありがとう、クー。一生、離さないからな」

 言って、目を閉じて、眠る。ドクオが言った言葉がクーの耳に届いていたのかいないのか、それはドクオにはわからない。

 眠り出したドクオの隣で小さく寝息をたてるクーの頬には、微かな笑みが座っていた。

 それはきっと幸せの、証。



【隣から聞こえたその声は、祝福の鐘よりずっと嬉しくて】



259 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:02:14.69 ID:+rkfbmc9O

【第十三話】


 ドクオとクーが結婚した日から数年の歳月が流れた冬の、寒い寒いある日の事。

('A`)「じゃあ、行ってくるよ」

川 ゚ -゚)「ああ、早く行けボケカス」

('A`)「うっせ」

 一般的な一軒家の中で、ドクオとクーが言葉を交わす。
 クーを幸せにしたいと、ひたすらに働き続けた結果、家を買うことが出来たドクオ。
 どれだけの月日が巡っても、二人はいつも幸せそうで。



260 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:04:31.69 ID:+rkfbmc9O

(*゚∀゚)「ぱぱ!! いてらさい!!」

('A`)「うん。行ってくるよ。つー」

 今年で3歳になる、可愛い娘にも恵まれた。

(*゚∀゚)「かえってくんなぼけかす!!」

('A`)「……ひでぇ」

 娘からの言葉にショックを受けながらも、どこか清々しい顔をして。

('A`)「今日は忙しいから、少し遅くなるよ。飯は先に食っといて」

川 ゚ -゚)「わかった」

 言って、ぱたりと、扉を閉めた。



261 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:06:59.11 ID:+rkfbmc9O

川 ゚ー゚)「さ、パパがいない今の内に、ケーキ食べに行こう」

(*゚∀゚)「うん!! ぱぱはかえってくんな!!」

川 ゚ー゚)「パパの分のケーキは無いもんね」

(*゚∀゚)「うん!!」

 賑やかな二つの声が、家の中を走り回っていた。





 居酒屋『四ツ葉』の店内。

「おいドックン!! お勘定!!」

('A`)「はいよ」

「ドックンはほんとぶっさいくだな。人とか殺しそうな顔だなぁ」

('A`)「うっせ。個性だ個性。髪の毛ある分、オッサンよりはマシだ」

「ははは。違ぇねぇや」

 そこは騒がしいながらも、客の笑顔が溢れている。かつては罵声に聞こえたその言葉も、今では軽い冗談に。



263 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:10:48.49 ID:+rkfbmc9O

('A`)「忙しいなぁ」

( ´∀`)「これが大将の力だモナ」

('A`)「知らね。あ!! おいそこのジジイ!! 便所行くなら転ぶなよ。それからションベン撒き散らすなよ。汚いのは顔だけにしとけ」

「うっせぇなぁ。ドックンほんとうっせぇ」

('A`)「なら帰れよ」

「やだね」

 愛想がない、不細工、それに足して態度が悪い上に毒舌。どう考えたって接客業には向いていないドクオだか、どうしてかその周りには人が集まって。

( ^ω^)「おいすー」

( ´∀`)「いらっしゃ――」

('A`)「あー、帰ってくれ」

(;^ω^)「なっ!? ひどいお。ブーンは客だお」


266 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:13:45.75 ID:+rkfbmc9O

('A`)「なら、手伝え」

( ^ω^)「その『なら』の意味がわからんお」

('A`)「喋る前に手動かせ。あそこのジョッキ片付けろ」

( ^ω^)「まだ返事してないのに……」

 しょうがない奴だお、とニコニコ笑顔のブーンが言う。

('A`)「ねぇモナーさん、なんであのデブは俺に構うのかな?」

( ´∀`)「……ドクオ君が、優しいからだモナ」

('A`)「優しい?」

( ´∀`)「それに気付く人が少ないだけモナよ。クーちゃんもぽっちゃりさんも、ドクオ君の優しさが好きなんだモナ」

('A`)「ふぅん」

( ^ω^)「おいこらブーンばっかり動いてるお」

('A`)「知らね。痩せるぞ」

( ^ω^)「ひどいお」



269 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:16:31.57 ID:+rkfbmc9O

 俺なんか、そう言い続けるドクオの周りには、少ないけれど彼を深く愛する人達がいる。
 ドクオにはわからないその感情。だけど、彼の優しさは確かに周りに伝わっていて。

( ´∀`)「いらっしゃいモナ」

「やぁ元大将。ドックンがいればこの店は安泰だね」

( ´∀`)「嬉しいモナ」

 ドクオの親代わりとなって、彼を育てたモナーがいる。

( ^ω^)「ご注文は?」

「あんちゃんデブだね。ドックンに脂肪分けてやんな」

( ^ω^)「うるさいお」

 ドクオに一度救われて、恩返しとばかりに彼を支えるブーンもいる。



270 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:19:23.92 ID:+rkfbmc9O

('A`)「5800円」

「ドックンお願いだよ。今月ピンチなんだ」

('A`)「しゃーねーなー」

「やったね。さすがはモナーさんの教え子だ」

('A`)「皿洗え。テーブル拭け。モナーさんの肩を揉んでこい。そしたら半額にしてやる」

「……あはは。鬼だねドックン」

('A`)「うっせ」

 いつの間にか、ドクオの周りにはいつも人がいる。
 孤独に思えた、勝手に孤独だと、自分に酔っていたあの頃とは全然違う毎日があって、それがとても、楽しかった。



273 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:21:35.49 ID:+rkfbmc9O





 仕事を終えて、帰り道を歩くドクオ。

('A`)「ちょっと、公園寄っていこう」

 肌色のコートのポケットから、煙草と宝物を取り出す。きぃん、と鳴らして、煙を吐く。

('A`)「……へへへ」

 愛する人から貰ったそれの音は、何年経っても色褪せなくて。
 ニヤケ顔をぶら下げたまま、いつもの公園に足を踏み入れる。

 と、そこに、影。

('A`)「ん?」

 ドクオの特等席であるブランコに、誰かが座っている。

「……う……うぅ……」

 暗くて顔は見えないが、スーツ姿の中年男性が、泣いている。



275 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:23:58.91 ID:+rkfbmc9O

('A`)「どう……したんですか?」

 特に考えずに、声をかける。その行動は、周りが愛するドクオの性格を顕著に表している様で。

「会社、リストラされて……金が無くて」

 鼻を啜りながら、ゆっくりと話す中年男性。

('A`)「そうなんだ」

「……それ、良いライターですね」

('A`)「え?」

 言われて、気付く。中年男性に声をかける前から、煙草を吸いながらライターを撫で回していたと。



277 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:26:22.56 ID:+rkfbmc9O

('A`)「あー、うん。嫁に貰っ――」

 とんっ、と鈍い音が響いた。

('A`)「あ? あ、そういう……こと?」

 ドクオが大好きな音とは全然違う。鈍い鈍い、汚い音。
 それから、音の無い時間が少しだけ流れて、ドクオは拳を、強く握った。



281 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:31:32.80 ID:+rkfbmc9O





 時計の短針が右に凭れ出した真夜中、その秒針の動く音が響き渡る、部屋の中。

川 ゚ -゚)「……遅いぞボケカス」

 クーは一人、彼の帰りを待つ。
 退屈しのぎにテレビを観ていると、鳴り出した携帯。途端、クーは上着も羽織らず、家を飛び出した。

 その日、ドクオは帰ってこなかった。



【寒いから、こんなにも寒いんだから、さっさと帰ってきなさいと願って】



286 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:37:46.98 ID:+rkfbmc9O

【最終話】


 鳴り響く音の数々。その中から、微かに聞こえる小さな声。

――痛かったぁ。それにめちゃくちゃ寒い。

川 ゚ -゚)「そうか」

――変な奴に急に、刺されちゃってさ。

川 ゚ -゚)「そうか」

――でも、恨むなよ? リストラされて、金が無かったんだって。そんな奴は、ほっとけ。でも、このライターも、奪われるとこだった。

川 ゚ -゚)「そうか」

――財布はとられたけど、これは守ってやったよ。

川 ゚ -゚)「そう、か」



288 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:39:26.22 ID:+rkfbmc9O

――悪いな、クー。

川  - )「ん?」

――お前に貰ったこのライター、血塗れになっちゃった。

川  - )「……そうか」

――寒いだろ? ちゃんと暖かい格好、してるか?

川  - )「だい、じょうぶ」

――そっか。

川  - )「うん」

――なぁ、クー?

川  - )「ん?」

――キスでも、しようか。

川  - )「……ロマンが無いな」

――うっせ。

川 ー )「ふん」



293 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:41:16.90 ID:+rkfbmc9O

 目を閉じる彼の口許に、そっと重ねた唇。
 どうしてか、どうしてか、涙の、味がした。

――ふふふ。あ、つーは?

川  - )「モナーさんのとこ」

――そっか。なぁ、クー?

川  - )「ん?」

――はら、へった。

川 ー )「そっか」

――帰ったらさ、あったかいもん、食わしてくれよ。

川 ー )「そうだな」

――ちょっと、ねむい。

川 ー )「そっか」



294 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:42:43.35 ID:+rkfbmc9O

――クー?

川 ー )「ん?」

――好きだよ。

川 ー )「ふん。気が済むまで寝てろ、ばか」

――うっせ。おやすみ、クー。

川 ー )「……おやすみ、ドクオ」

 音を鳴らし走る救急車の中、波打っていたものが、線になって――


 ドクオの心は、走るのを止めた。



302 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:45:18.67 ID:+rkfbmc9O

川 ー )「……あーあ」

 クーは一つ、呟いて。

川 ー )「一瞬だね、一瞬。今朝まで、笑ってたのに」

 口許に笑みを座らせたまま、瞳から零れ落ちる雫を止めようとはしない。

川 ー )「ライターなんて、どうでもいいのにね。捨てて、逃げればいいのにね」

 血塗れになったドクオの手を握って、そこに額をくっつける。

川 ー )「……冷たい。ほんとに、ばか」

――寒かったね……頑張ったね……ドクオ。

 もう一度、唇にそっとキスをした。返ってくる言葉は、何も無かった。



308 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:47:02.91 ID:+rkfbmc9O





 それから数日が過ぎて、夜、誰かさんと誰かさんが言葉を交わした、公園。そして、誰かさんの大好きな誰かさんが倒れた、公園。

( ^ω^)「寒いおー」

 一度背伸びをして、ブランコに座るブーンがいる。

( ^ω^)「しめしめ。座るなら今のうちってね」

 立ち上がって、隣に移動して、座る。

( ^ω^)「特等席、討ち取ったり!!」

 叫ぶも、その声は冷たい風に溶けるばかり。

( ^ω^)「おっおっおっ」

 軽く笑ってみせて、すぐにその笑みは消える。



314 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:49:07.86 ID:+rkfbmc9O

( ;ω;)「ほんとに、不幸自慢は大概にするお、ドクオ」

 溢れる涙は堪えられずに、一つ、二つと、透明な雫が彼の特等席に落ちる。

( ;ω;)「バカにすんなお。ブーンは、ブーンはただ、ドクオと仲良くしていたかっただけだお」

 ブランコの鎖を強く強く握って、俯く。

( ;ω;)「死んだらブーンが泣くとでも思ったかお? 泣くにきまってるお。そんなこと、考えなくてもわかるお。わざわざ確かめなくたって……わかるお」

――ほんとに、性格悪いお。

 その言葉は、言えなかった。

 それからひたすら、ただひたすらに、ブーンは泣き続けた。声を出してわんわんと、泣き続けた。



319 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:51:58.65 ID:+rkfbmc9O

 しこたま泣いて、泣き終えて。立ち上がって、言葉を投げる。

(  ω )「ドクオの特等席は、今日からブーンのものだお。悔しいお? 自慢しに、会いに来るお。笑ってやるお。悔しがるドクオの顔が、ブーンには見えるお。やっぱり不細工だおね。ふふふ」

――またね、だお。

 遠い空の向こうまで届ける様に、空を見上げて、優しく残したその言葉。
 それを置いて、ブーンは公園から一歩出る。

( ^ω^)「ほんっとに寒いお」

 鼻声ながら、顔だけは笑って。
 不思議な優しさを持つ誰かさんに心配されないよう、明るく明るく、笑ってみせた。



323 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:53:48.45 ID:+rkfbmc9O





 普段とは違い、薄暗い居酒屋の店内。

( ´∀`)「呑むモナ」

 座敷に座って、誰もいない向かい側に声を飛ばすモナーがいる。

( ´∀`)「寒いモナね」

 誰もいない向かい側には、熱燗が一つ。

( ´∀`)「僕は、僕はね。君の父親の親友だったモナ」

 日本酒を口に運びながら、言葉を続ける。

( ´∀`)「君を引き取った時、僕は思ったモナ。『親友に笑われない様、ちゃんと育てないと』って」



330 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:57:05.52 ID:+rkfbmc9O

 ふふふと、笑う。

( ´∀`)「なんとなく、親友には負けたくなかったモナ。僕だって子どもを育てることが出来ると、証明したかったモナ」

 次に、溜め息。

( ´∀`)「負けず嫌いな子どもみたいな、下らない考えモナ。僕は自分が満足したかったから、君を育てたモナ。自己満足モナ」

 店内の窓から見える空には、無数の星が散らばっていて、それを見ながら、モナーは話す。

(  ∀ )「そんな僕に対して、君は優しかった。驚くほど優しかった。僕は、自分が恥ずかしくなった。君の父親に、合わせる顔がないと思った。僕は、みっともない」

 特徴のある語尾が消えて、表情から笑みも消えた。

(  ∀ )「そんな僕だけど、君に、一つだけお願いがある」



333 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/16(土) 23:58:37.55 ID:+rkfbmc9O

 震える肩を隠す様に、店の電気を全て消す。
 そこを照らすのは、薄く降り注ぐ月明かりだけ。

(  ∀ )「今日だけは、君を『息子』と呼ばせてほしい」

――みっともない父さんからの、お願いだ。

 静かに響く嗚咽の音があって、言葉は何もなくなった。
 涙を流せば、思い出まで流れてしまう様で、それを抑えるように、声を殺した。



【君を想う人達が流す、零れ落ちる雫の一つ一つが、君から貰った優しさの証】


337 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/17(日) 00:01:13.32 ID:abW7AsX0O

【エピローグ】


 それから数ヵ月の時が流れて、きぃん、と一つ、響いた音。

川 ゚ -゚)「ちょっと音が鈍くなったね」

 墓の前、用も無いのに音を鳴らす。きぃん、きぃん、と何回も。

川 ゚ -゚)「血塗れにするからだ、ばか」

(*゚∀゚)「ぼけかす!!」
 美しい女性とその娘が、誰かさんの墓に向けて声を投げる。

川 ゚ -゚)「今、私はモナーさんの居酒屋で働いてるよ」

(*゚∀゚)「てつだえぼけかす!!」

川 ゚ -゚)「ぽっちゃり君も時々、手伝ってくれる」

(*゚∀゚)「でぶ!!」

 また、きぃん、と一つ、


341 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/17(日) 00:04:00.40 ID:abW7AsX0O

川 ゚ -゚)「良い音だね」


 寒空の下、流れる風はどこか暖かい。

川 ゚ -゚)「また来るから、天国で浮気すんなよボケカス」

(*゚∀゚)「ぼけかす!!」

 立ち上がって、振り返る。長い黒髪を靡かせるその風が、行かないでって、言ってる様で。

川 ゚ -゚)「あ、そうだ」

 歩き出した足を、ぴたりと止める。

川 ゚ー゚)「私は、貴方のおかげで幸せだったよ」

 墓前に置いた言葉が一つ。

――大好きだよ、ドクオ。

――つーも!!

 笑顔で歩く二人を見守る空の上、舞い踊る風がその言葉を運んでくれた。



343 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/17(日) 00:05:44.90 ID:abW7AsX0O

川 ゚ー゚)「さ、パパがいない今の内に、ケーキ食べに行こう」

(*゚∀゚)「うん!! ぱぱはかえってくんな!!」

川 ゚ー゚)「パパの分のケーキは無いもんね」

(*゚∀゚)「うん!!」

 一陣の、強い風。
 それはまるで、誰かさんがいつも言う――

('A`)「うっせ」

 そう言っている様で。

川 ゚ー゚)「ばーか」

(*゚∀゚)「ぱーぱのぱーか!!」

 笑顔で掲げた、誰かさんの宝物。空に向かって、きぃん、と最後に、鳴らしてみせた。



344 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/17(日) 00:06:43.16 ID:abW7AsX0O



('A`)幸せになりたいと願わない人はいないから、彼は最期まで幸せに生きて、大好きな人が鳴らす宝物の音を聴いているようです



【おしまい】



360 名前: ◆HAaUyuY2Cg :2011/04/17(日) 00:15:11.96 ID:abW7AsX0O

【あとがき】

まず最初に、荒れまくって不快な思いをした方には申し訳ないです。昨日は一つも投下が無かったりして、総合で依頼したら絶対荒らされると思っていたら、案の定でした。
ただ、投下しやすかったです。長時間のさるを喰らわなかったのは初めてでした。
荒らされるから投下しないっていうのは何かおかしいと思って投下しましたが、明らかにそれを不快に思う方々もいたはずですから、微妙なとこですね。
ブーン系、楽しいです。また同じ様な事になっても、普通に投下します。それは貫こうと思います。

支援、感想などありがとうございます。
ではでは、またどこかで~。



コメント

ほんと、これ好き
[2015/10/03 19:44] URL | #- [ 編集 ]


コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する



プロフィール

K-AYUMU

Author:K-AYUMU

最近の記事

最近のコメント

カテゴリー

リンク

ユーザタグ

カ行 タ行 ア行 ちんこ ハ行 サ行 マ行 ナ行 英数字  ^ω^) ('A`) ラ行 1レス ワ行 (´・ω・`) ショボーン ヤ行 ブーン ショボン トソン 'ー`)し ξ゚⊿゚)ξ (,゚Д゚) ドクオ まんこ (=゚д゚) J( 1レス カラマロス大佐 シュー ミセリ (-_-) いよう 川д川 人狼 (∪^ω^) 世紀末 ツンデレ 

FC2カウンター

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。