mesimarja
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ツンが逃げてしまったようですξ゚⊿゚)ξ
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 22:21:43.27 ID:1s2KbycK0
こわくないよー

よっといでー


2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 22:24:03.74 ID:1s2KbycK0
私は逃げていた。
後ろから私の背中を追ってくるあいつから。
私は、逃げていた。

私は怖かった。
いつか私の横に並び、そいつが私を追い越すのが。
私は、怖かった。

私は耐えていた。
振り向きたい気持ちを抑えて、前だけを向いて。
私は、耐えていた。

私は想っていた。
誰よりも強く、そいつのことを。
私は、想っていた。

私は嬉しかった。
私を追ってくれたそいつの存在が。
私は、嬉しかった。

私は嫌いだった。
逃げなければならず、怖れ、耐え、想い、喜んでいた自分が。
私は、嫌いだった。


私は、何時まで逃げればいいのだろう。

私は、何処まで逃げればいいのだろう。



4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 22:26:31.21 ID:1s2KbycK0






      ツンが逃げてしまったようですξ゚⊿゚)ξ







5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 22:28:25.58 ID:1s2KbycK0
そいつの存在を私が認識した時、私は五歳だった。
そして、そいつは二歳だった。
一目見て分かった。
こいつは、馬鹿だと。

( ^ω^)「おー」

うー、とか。
あー、とか。
そんな言葉じゃなくて、こいつはおー、だった。
だから、馬鹿だと思った。

こいつが私の「おとうと」だと父さんと母さんから言われた時は、がっかりした。
これが、私の?
嫌だったけど、家族だからどうしようもないと、私は諦めてそいつの存在を受け入れた。
それからが大変だった。

何をしていても、そいつは私について来た。
遊んでいても。
食べていても。
お風呂でも。

寝ている時でさえも、だ。
正直勘弁してほしかった。


(〃^ω^)「おねーちゃん、遊ぼうおー」

ξ゚⊿゚)ξ「……ちっ」


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 22:31:03.45 ID:1s2KbycK0

嫌だったけど、仕方なかった。
無垢な黒い瞳を見ると、どうしても無下にできなかった。
仕方なく一緒に遊んでやると、馬鹿みたいに喜んだ。
こいつは鬼ごっこが好きだった。

どうやら、走っているのが好きらしかった。

(〃^ω^)「おー! おー!」

全力で走って。
そして全力で転んだ。
転ばれた時が一番面倒だったけど、こいつは馬鹿だった。
転んでもすぐに立ち上がって、笑いながらまた走るのだ。

高い木を見ると直ぐに登って。

( ;ω;)「おねえぇぇぇぇぇぇちゃあああああん!!
     助けてえぇぇぇぇ!!
     怖いおぉぉぉぉぉ!!」

直ぐに助けを求めた。
やっぱり、こいつは馬鹿だと思った。
助けるのはいつも私の役目で。
本当に、いい迷惑だった。

近所にいる当時の私の遊び友達は、皆私と同い年だった。
そして、こいつ。
この時はまだお前とか、あんた、とか、そんな風に呼んでいたけど。
こいつ、ブーンと同い年の子供はいなかった。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 22:34:06.30 ID:1s2KbycK0
だから自然とこいつは年上と遊んでいた。
皆にとって、こいつは弟みたいな存在だったんだろうと、今でも思う。
遊んでいる時も、こいつに気を配ってルールを作ったりしていた。
鬼ごっこでこいつが鬼になった時は、手加減する事にしていた。

でも、その手加減はこいつが3歳になると完全に消え失せた。
走りまくっていたせいで、こいつの足は驚異的なまでに早くなっていたのだ。
遊び友達の中で一番足が早かったジョルジュと同じぐらい早かったので、私達は全力で逃げるしかなかった。
六歳になった私は小学校に入学して、こいつは幼稚園に入園した。

小学生と幼稚園では始まる時間も終わる時間も違う。
ようやく離れられる。
と、思ったけど。
学校が終わって家に帰ると、こいつが待っていた。

ちょこんとテレビの前に座っていたかと思うと、私に抱きついて来た。
そして、飽きもせずにこう言うのだ。


( ^ω^)「おねーちゃん、遊ぼうお!」


まるで子犬だ。
そう、犬だ。
私は義務感からこいつと遊んでやった。
ジョルジュ達も一緒だったし、まぁ、仕方ないから。

遊び疲れて家に戻って、私達はご飯を食べた。
こいつは食べ方が汚いと云うか、大雑把と云うか。
まだ、下手だった。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 22:37:40.81 ID:1s2KbycK0

ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと」

(。^ω^)「お?」

ξ゚⊿゚)ξ「ご飯、ついてる」

ついてる部分を指で教えてやっても、こいつは馬鹿だった。
折角教えたのに、どうしてかいつも全然違う場所をぺたぺたしていた。
じれったかったから、私が指で取って食べた。
後で抱きつかれて、ご飯が服に着くと嫌だったからだ。

そんな私達を、父さんと母さんの碧眼が優しく見守っていた。
世話が焼ける奴だった。
ご飯が終わっても、こいつは遊びたがった。
あれだけ走ってもまだ遊び足りないらしい。

家の中で走り回るわけにもいかず、私達は人形やブロックで遊んだ。
遊ぶ場所は、何故か私の部屋だった。
こいつがおもちゃを私の部屋に持ちこんで、そして遊んだのだ。
ちょっと私が本気を出してブロックで城を作ると。


(〃^ω^)「おねーちゃんはすごいお!!」


喜んだ。
目をキラキラさせて喜んでいた。
単純な構造をしていた。
悪い気はしなかった。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 22:40:12.86 ID:1s2KbycK0
遊んだ後、私はお風呂に入った。
こいつも一緒に。
風呂場で溺れたり、転ばれたりしても困る。
最初の方は母さんと父さんがこいつと入っていたけど、面倒だろうと思って私が代わったのだ。

体を洗いっこして。
そして、一緒に湯船につかった。
こいつは熱がりで直ぐに出ようとして、その度に私が強引に湯船に沈めた。



( ;ω;)「あつ、あつい、あついお……
      おねーちゃん、もう許してお……」



逃げ出そうとするもんだから、私は両手両足を使って捕まえていた。
結構楽しかった。
熱がるあいつを無理矢理押さえて、私はそれを楽しんでいた。
だって、反応が可愛かったし。

あんまり長くお風呂にいて二人して顔を真っ赤にした事が、何度もあった。
そうなってしまった時は私のせいだったから、あいつの体を拭いてやった。
時には着替えさせる事もあった。
風邪をひかれると面倒だからだ。

時々、あいつが寝ぼけて私の布団にやってくることがあった。
追い出すのも面倒だったから起こさなかったけど。
せめて、夏に来るのは止めて欲しかった。
くっつかれると暑いのだ。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 22:43:04.49 ID:1s2KbycK0
私がこいつを名前で呼ぶようになったのは、ブーンが六歳になった時だ。
同じ小学校に入学してから、少し負担が減ると思ったけど。
全然そんな事は無かった。
当然の事だが登校班が同じで、登校途中もブーンは私につきまとった。

前よりかは成長しているけど、中身は変わっていなかった。
周りの眼もあって、私はようやくブーンと呼んでやる事にした。
もしもブーンに尻尾があれば、千切れるぐらいに振っていたと思う。
私の腕にしがみ付いて、一緒に登校できる事を喜んでいた。

訳が分からなかった。
流石に授業中や学校の中では、ブーンは私を追い掛けはしなかった。
同年代の友達が沢山出来たようで、ようやく私は落ち着けると思っていた。
甘かった。

確かに学校では追いかけなかったが、学校が終わると追いかけて来た。
その時はジョルジュが一緒にいてくれたので、ブーンはもっぱらジョルジュとじゃれあっていた。
  _
( ゚∀゚)「はっはっは、ブーン、元気か!」

( ^ω^)「元気だお!」
  _
( ゚∀゚)「今日、この後一緒に遊ぼうぜ!
    ドッヂボールだ!」


(〃^ω^)「やったお!
       おねーちゃんも一緒に遊ぶお!」



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 22:52:57.88 ID:1s2KbycK0
どうしてかいつも私が巻き込まれた。
同年代の女の子がいたのがせめてもの救いだった。
いなかったら、うん。
ちょっと気まずかったかもしれない。

私が見てないと、ブーンは何をするか分からないから。
私は、ブーンのおねーちゃん、なのだから。
私が六年生になった時。
ブーンはようやく三年生になった。

三歳の歳の差は、つまりは成長の差。
これまでの態度を改めて、私は姉として、ブーンに接する事にした。
が。
しかし、だ。

何時まで経っても、ブーンは成長の兆しを見せなかった。
いや、確かに以前よりかは馬鹿のレベルが薄らいでいたが。
精神的な面では、あまり成長が見られなかった。
あれは、テレビでホラー映画をやっていた日の事だ。

21 名前:怪しげな術を受けてしまい、投下できる量がへっとります:2011/05/08(日) 22:55:11.14 ID:1s2KbycK0


止めろと言うのを聞かずに私の横で映画を見て。



( ;ω;)「いやああああああ!!」


泣き叫んだ。



( ;ω;)「うわあああああん!!」




22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 22:58:07.89 ID:1s2KbycK0
泣き叫ぶのは勝手だけど。
私にしがみ付くのはどうしてだろう。
ブーンの手前、私は顔や態度には出さなかったけど。
実は、私もビビっていた。

だから、少しだけど。
ビビっているのがばれずに助かった。
落ち着かせるふりをして、私はブーンを抱きしめて恐怖を和らげた。
映画の中身は、よく覚えていなかった。

その日の夜。
私が寝ていると。
ブーンにしては珍しく、扉をノックして部屋を訪れた。
何事かと私が訊くと。

( ;ω;)「おーん」

怖くて眠れないとか言ってきた。
だからあれほど見るなと言ったのに。
仕方がないから、私は一緒に寝てやる事にした。
面倒は嫌いだからだ。

ξ゚⊿゚)ξ「その代わり、もう泣かないでよ」

( ;ω;)「う……」

ξ゚⊿゚)ξ「泣くなら一人で寝なさいよ」

( うω;)ゴシゴシ

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 23:01:02.47 ID:1s2KbycK0
( ;ω;)「泣かないお。
      だから一緒に寝て欲しいお」

ξ゚⊿゚)ξ「泣いてるじゃない」

( ;ω;)「こ、これは心の汗だお!」

ξ゚⊿゚)ξ「……ジョルジュね、あいつから教わったんでしょ、その言葉」

私が何度がジョルジュと喧嘩してあいつを泣かせた時。
よくその台詞を口にしていた。
良くも悪くも、ブーンはジョルジュの影響を受けていた。
よりにもよって、私じゃなくてジョルジュの。

何故か、悔しかった。

ξ゚⊿゚)ξ「兎に角、さっさと涙拭きなさいよ」


( うω;)「おー……」


じれったかった。

ξ゚⊿゚)ξ「ったく」

指でブーンの涙を拭ってやると、ようやく涙が止まった。
眼は赤かったけど。

ξ゚⊿゚)ξ「ほら」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 23:04:50.97 ID:1s2KbycK0
手を繋いでやって、一緒に布団に入った。
現金な奴で、ブーンは直ぐに寝息を立て始めた。
反対側を向いて寝ようとしたら、そうできなかった。
ブーンは繋いだ手を離さなかった。

どこまでも自分勝手な奴だった。
悔しかったので、私は無理矢理その手を解いた。
ざまあみろと内心で呟いて、今度こそ反対側を向いた。
瞼を下ろした時、私の背中がぎゅっと掴まれた。

いや、抱きつかれたのだ。
この野郎。
起きているんじゃないかと思って、首を動かして見てみると。

( -ω-)スピー

憎たらしい程熟睡していた。
なんなんだろう、こいつは。
私を何だと思っているんだ、ほんとに。
小憎らしい奴だ。

まぁ。
怖い気持ちが和らいだから、感謝してもいいけど。
でも。
私だって眠たいんだ。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 23:08:19.85 ID:1s2KbycK0
その時、私に名案が浮かんだ。
ブーンを振りほどいて、私はブーンと向き合った。
どうせこんなに丁度いい大きさをしているなら、使い道は他にもある。
何か掴む物を探して、ブーンの手がさまよっていた。

今度は、私の番だ。
ぬいぐるみにそうするかの様に、ぎゅっと抱き返してやった。
おお。
これは意外と。

抱き心地がいいではないか。
ふかふかしているし、温かい。
悪くない。
リズムよく呼吸しているのがなかなかどうして。

ようやくブーンが抱き返してきた。
寝ている時は結構可愛いな、こいつ。
寝顔をマジマジと見て、私はゆっくりと眠りに着いた。
不思議と、ぐっすりと寝る事が出来た。

その年、ブーンに面白い事が起こった。
2月の14日。
バレンタインデーと云うやつだ。
何と、ブーンが同級生の子からチョコを貰ったのだ。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 23:11:45.77 ID:1s2KbycK0
私は偶然その様子を見ていた。
あれは、放課後。
校舎裏と云うベタな場所だった。
ブーンよりも先にそこで待っていたのは、可愛い女の子だった。

やや遅れて、ブーンがその場所に来たのを見るに、何かしらの手段でその場所を伝えたのだろう。
ひょっとしたら、ラブレターだったのかもしれない。
意外とモテているのか、ブーンは。


ミセ*゚ー゚)リ「あ、ブーン君」


( ^ω^)「ミセリちゃん、待ったかお?」


何と。
ブーンの奴、あんな台詞を一体どこで覚えたのか。
まるでデートの定番の台詞じゃないか。


( ^ω^)「どうしたんだお?
      ミセリちゃん、ここの掃除当番だったのかお?」


駄目だ。
やっぱり何も分かっていなかった。
私は安心した。
ブーンはやっぱりブーンだった。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 23:14:02.47 ID:1s2KbycK0

ミセ*゚ー゚)リ「あ、いや、そうじゃなくてね。
      あのね。
      ……ブーン君、今、好きな女の子いる?」

おいおい。
何て純粋な子なんだ。
ブーンには勿体ないぐらいだ。
上手く行けば、ブーンに彼女が出来る。

私は四階の廊下からその様子を見守っていた。
すると、ジョルジュも横に来てその様子を見た。
  _
( ゚∀゚)「ありゃあ、ミセリちゃんじゃないか。
    へぇ、あの子がねぇ」

ξ゚⊿゚)ξ「なに? 知り合い?」
  _
( ゚∀゚)「お前、テレビ見ないのか?」

ξ゚⊿゚)ξ「失礼ね」
  _
( ゚∀゚)「アイドルだよ、アイドル。
    最近結構テレビに出てるぞ」

随分と頭の悪いアイドルだなと、私は思った。
ブーンの何がいいというのだ。
どんくさくて単純で。
あんなのの、何がいいんだろう。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 23:17:30.64 ID:1s2KbycK0
( ^ω^)「いるお!」

ミセ;゚-゚)リ「え、だ、誰?」

私はもう一度驚いた。
ブーンに春が来ていたのだ。

( ^ω^)「ツンおねーちゃんが大好きだお!」

思わず噴き出した。
気付かれない様にしゃがんで、思いっきり咽た。
どこまで馬鹿なんだろう。
いやきっと、底無しの馬鹿だ。

ボトムレス・馬鹿だ。

ミセ*゚ー゚)リ「お、お姉さんか。
      そうじゃなくて、三年生の女の子に誰かいる?」

流石アイドル。
ちょっとやそっとじゃ動揺しないらしい。
  _
( ゚∀゚)「よかったなぁ、モテモテじゃねぇか」

ξ゚⊿゚)ξ「あんの馬鹿……」

ミセリちゃんの質問の意図が分かっているのかいないのか。
きっと後者だけど、ブーンは馬鹿正直に答えた。

( ^ω^)「それなら皆好きだお!」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 23:20:11.33 ID:1s2KbycK0
馬鹿だ。
本当に馬鹿だ。
ごめんね、ミセリちゃんとやら。
ウチのはこれで素なんだよ。

ミセ*゚ー゚)リ「じ、じゃあ誰か一人好きな人はいないのね?」

凄い。
あの子、理解している。
やるじゃない。

( ^ω^)「おー、そうだおね」

ミセ*゚ー゚)リ「あのね、わ、私……」

来るか。
来るか。
いよいよ、来ちゃうのか。
甘酸っぱい告白の瞬間が来てしまうのか。

ジョルジュの鼻息が荒いけど、この際気にしない。
無視だ、無視。
手に汗握る展開とかよく映画で見るけど、本当に私は手に汗をかいていた。

ミセ*゚ー゚)リ「私……」

見ているこっちが恥ずかしいぞ。
さぁ、焦らさずに言ってしまえ。
そうすれば。
そうすれば、きっと。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 23:23:10.54 ID:1s2KbycK0

この胸を締め付ける原因不明の何かが、消えてくれると思うから。


ミセ*゚ー゚)リ「私、ブーン君の事が好きです」


わぉ!
言った!
言ったぞ、あのアイドル!
ジョルジュが横で鼻血を出して興奮しているけど、気にしない。

無視する以外にジョルジュを救う方法はない。
さて、私のブーンは何て答えるか。
当然オッケーと言うだろうな。
だって、ミセリちゃん可愛いし。

いい子っぽいし。
アイドルだし。
優しそうだから。
ブーンも、そんな女の子の方がいいだろう。


( ^ω^)「え?」


ミセ*゚ー゚)リ「私と、付き合って下さい!
      明日、この時間にここでお返事待ってます!」



43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 23:26:24.07 ID:1s2KbycK0
ミセリちゃんは勢いよく箱をブーンに差し出した。
押し付けられるようにして受け取ったブーンを残して、ミセリちゃんは走って行ってしまった。
ブーンは茫然としていた。
私は唖然としていた。

立ち尽くしていたブーンは、箱を鞄にしまってとぼとぼと歩いて帰った。
珍しい。
いつもは私の所にすっ飛んで来るのに。
ようやく成長したか。

ξ゚⊿゚)ξ「……ふん」

何だか、面白くない。
何か、成長の前触れぐらいあってもいいのに。
まぁ。
私には関係ない。

家に帰ったらきっと、一人で悩んでいるに違いない。
今日は、そっとしておいてやるか。
とか思っていると。
家に帰って思い知らされた。



( ;ω;)「……鍵が開いてないお」



家の前で体育座りで待っていた。
やっぱり、馬鹿だった。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 23:29:08.00 ID:1s2KbycK0


( ^ω^)「おねーちゃん」

ブーンが私の部屋を尋ねたのは、夕食が終わってからだった。
部屋で宿題をやっている時に来られたものだから、私は少し不機嫌だった。
不機嫌の理由は、別にあったのだけれども。

ξ゚⊿゚)ξ「何?」

( ^ω^)「付き合うって、何だお?」

ξ゚⊿゚)ξ「お母さんかお父さんに訊いてよ」

宿題に視線を戻すと、ブーンが言った。

( ^ω^)「おー、でも、おねーちゃんなら知ってるって思って……」

今、私は宿題に目を向けている。
でも、頭の中は宿題どころではない。
あの光景が頭から離れない。
おかげで、宿題は一問も進んでいなかった。

ξ゚⊿゚)ξ「恋人になるんじゃないの?」

( ^ω^)「恋人?」

ξ゚⊿゚)ξ「……ったく」



49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 23:32:13.28 ID:1s2KbycK0


私だってよく分からないのに、訊かれても困る。
一旦宿題を止めるふりをして席を立ち、本棚を開けた。
そこから適当に数冊のマンガを取り出して、ブーンに手渡した。

ξ゚⊿゚)ξ「ほら、これでも読んでなさい」

少女漫画だった。
私としては冗談のつもりだったんだけど。

(〃^ω^)「やった!
      おねーちゃん、ありがとうだお!」

感謝されてしまった。
何だか申し訳ないな。
これが原因でミセリちゃんをフったらどうしよう。
あ、別にいいか。

私には関係ないんだ。
これは二人の問題。

(〃^ω^)「これ、おねーちゃんにあげるお!」

そう言ってブーンが渡したのは、あの箱だった。

ξ゚⊿゚)ξ「これ、ミセリちゃんから貰ったんじゃないの?」



52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 23:35:02.55 ID:1s2KbycK0


言ってから気付いたが、私があの場面を見ていた事が分かってしまう。
まずい。
気付くか?
流石に気付いてくれ、これぐらいは。


( ^ω^)「お? どうしておねーちゃんミセリちゃんを知ってるんだお?」


何か別の部分を尋ねられた。
ちょっとずれてる。


ξ゚⊿゚)ξ「おねーちゃんだからよ」


答えると、ブーンは感動した。


(〃^ω^)「やっぱりおねーちゃんは凄いお!」


大喜びでブーンが自分の部屋に戻ってから、私はほっと安心した。
馬鹿でよかった、と。
チョコは、半分だけ食べられていた。
その日、私はあんまり眠れなかっただけでなく、宿題に手がつかなかった。



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 23:38:02.98 ID:1s2KbycK0
そして次の日。
結論から言うと。
やっぱりブーンは馬鹿だった。
ジョルジュと私で昨日と同じ場所から二人のやり取りを見下ろしていたのだが、ブーンはどうしてあそこまで馬鹿なのだろうと、私は本気で心配した。

( ^ω^)「ミセリちゃん」

ミセ*゚ー゚)リ「は、はい!」

( ^ω^)「チョコ美味しかったお。
      それと……」

( ^ω^)「ごめんなさいだお」

フリやがったのだ。
アイドルを。
テレビに出ていて、可愛いと評判のアイドルを。

( ^ω^)「僕、あの……」

ミセ*゚ー゚)リ「……」

( ^ω^)「……ごめんね」

泣くかと思ったけど、ミセリちゃんは泣かなかった。

ミセ*゚ー゚)リ「いいの。
      でも、私、頑張るね。
      いつかブーン君が私を好きになってくれるように」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 23:41:12.98 ID:1s2KbycK0
逆に、ミセリちゃんは清々しい顔をしていた。
根が強いとは、きっと、あの子の様な事を言うんだろう。
全部を見届けてから、ジョルジュが言った。
  _
( ゚∀゚)「いいのかよ?」

ξ゚⊿゚)ξ「何が?」
  _
( ゚∀゚)「ミセリちゃん、諦めてないぞ?」



ξ゚⊿゚)ξ「私には関係ないわよ。
      どうせ―――」



―――どうせ。
もうすぐ、私は中学校に進むのだから。
何でだろう。
ミセリちゃんがフラれてたのを見て、私は気分が良かった。

嫌なおねーちゃんだ、私は。
その日の夜、ブーンは私に漫画を返しに来た。

( ^ω^)「おねーちゃん、漫画ありがとうだお!」

ξ゚⊿゚)ξ「面白かった?」

( ^ω^)「面白かったお!」

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 23:44:25.05 ID:1s2KbycK0
そんなに面白い漫画だっただろうか。
適当に読んでみて、驚愕した。
アイドルと主人公の恋模様について描かれた漫画だった。
しかも、展開はかなりドロドロとしていて、主人公の苦悩が色濃く描かれている。

ミセリちゃんに悪い事をしてしまった。

ξ゚⊿゚)ξ「……そう」

余計な事は何も言わないでおこう。
数カ月経って、私は小学校を卒業した。
卒業パーティーから帰ってくると、ブーンが家で号泣していた。
タンスに足の小指でもぶつけたのだろうか。



( ;ω;)「おねえちゃあぁぁぁん!!
      いっちゃやだお、いやだお!!」



ξ゚⊿゚)ξ「何の話よ?」


( ;ω;)「おーん!!」


ξ゚⊿゚)ξ「泣くんじゃないわよ」



64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 23:47:07.55 ID:1s2KbycK0

( ;ω;)「だって、だってぇぇぇぇ!!
      おねえちゃん、どこかに一人でいっちゃんでしょ?
      そんなの嫌だお!!
      いい子にするから、いい子にするからあぁぁぁ!!」

この馬鹿に何て説明すればいいのか。

( ;ω;)「置いて行かないでえぇぇぇ!!」

頭が痛くなってきた。

ξ゚⊿゚)ξ「あのね、私は中学校に進学するだけよ」

( ;ω;)「ちゅーがっこー?」

ξ゚⊿゚)ξ「六年生の上よ。
      行く学校が違うだけで、私はこの家にいるわよ」

( ;ω;)「おー」

ξ゚⊿゚)ξ「分かったら涙を拭きなさい」

( うω;)ゴシゴシ

ξ゚⊿゚)ξ「鼻もかみなさい」

( >ω<)ジーム

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、これからは出来るだけ私に頼らないようにしなさい」

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 23:50:05.39 ID:1s2KbycK0



( ´ω`)「おー? なんでだお?」


ξ゚⊿゚)ξ「いつまでも私に頼ってばっかりだと、成長しないからよ。
      目標を見つけて、それを追いなさい。
      そうすれば大丈夫よ」


( ´ω`)「分かったお、僕、頑張るお……
      だから……」


ξ゚⊿゚)ξ「置いて行かれたくなきゃ、頑張りなさい」


私はこの時から、ブーンと距離を置く事にした。
今までが近すぎたから、これが当たり前なんだ。
ここままだと、ブーンは自分で何もできなくなる。
突き放すしかない。


私がいなければ、ブーンは小学校を自分の力で過ごす事になる。
それが一番だ。
それがあるべき姿なのだ。
ブーンが何か言う前に、私は部屋に戻った。



68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 23:53:36.29 ID:1s2KbycK0
折角卒業したのに。
折角楽しいパーティーだったのに。
ブーンのせいで。
ブーンのせいで、暗い気分になってしまった。


この日を境に、私は本格的にブーンから逃げ始めた。
近くにブーンがいるだけで、私は狂いそうになったからである。
心臓が掴まれている様に、胸が苦しくなるのだ。
その状態のままでブーンが近くにいると、私は自分がブーンに何をするか、何を言うのかも想像できなかった。


何時から私はこうなったんだろう。
分からない。
でも、ミセリちゃんの一件で私は気付いた。
この気持ちは、日に日に積み重ねられたもので、昔からあった物だと。


昔からあったそれは、少しずつ、雪が積もるよりも早い速度で、だが静かに大きくなっていたのだ。
もやもやとした黒い感情が、胸を締め付ける。
悲しませたくない、離れたくない。
誰かに取られたくない。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 23:56:04.86 ID:1s2KbycK0


全部、ブーンが悪い。
ブーンのせいで私が私でいられなくなる。
私は冷静でいられない。
平常心を失ってしまう。



ベッドに倒れ込む。
枕に顔を押し付けて、私は泣いた。
卒業した事の嬉しさや哀しさではなく。
ブーンに対してこの様な振る舞いをしなければならない事に、私は泣いた。



驚いた事に、ブーンはその日以来一人で様々な事に挑戦した。
元々コミュニケーション能力は悪くない方だったらしく、自分のクラス以外にも友達をたくさん作っていた。
私がいなくても、ブーンは一人で出来た。
成績は下の中だったが、運動は飛び抜けて優れていた。




73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/08(日) 23:59:23.46 ID:1s2KbycK0



確実に、小さい頃から走りまわっていた事が関係している。
陸上クラブに入り、ブーンは短距離の分野と中距離の分野で大活躍していた。
日本記録を次々と作りだし、新聞に掲載されるまでに至った。
一躍、ブーンは陸上競技界の有名人となった。




そんなブーンの活躍を前に、私は自分の存在理由を不安に思って、勉強に力を入れた。
頑張らなくちゃ。
私は、ブーンのおねーちゃんなのだから。
追いつかれない様に、頑張るのだ。




小学六年生になったブーンの私に対する態度は、全く変わらなかった。
有名になったことから傲慢になってもおかしくないのに、ブーンは私の言う事を全て守った。
反抗的な態度も、一度だって見せなかった。
本当に、おかしな奴だと思った。




78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 00:02:01.88 ID:lun5JsuE0



その頃の私はと言えば、特にこれと云った部活に所属する訳でもなく、只管に勉強していた。
元々勉強は嫌いじゃなかったから、成績は私の努力に比例して上昇した。
中学三年の私は、進路を決める段階にあった。
ここから先は義務教育ではなく、自分で進路を決めなければならない。




私は自分の成績で行ける中で、最もランクの高い高校を目標に設定した。
別に、頭の良し悪しで人の良し悪しが決まるとは思っていない。
その高校を選んだのは、そんなどうでもいい事が理由じゃない。
ブーンにとって良い見本であるためだ。




見本で在り続けなければ、不安になってしまうから。
ブーンが私を必要とする様に。
私は、必要とされる為に。
頼られなければ、私は自分の存在がブーンの中で薄れると危惧した。




80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 00:05:01.31 ID:lun5JsuE0



昔のまま、ブーンには自分が必要で、自分がブーンをいつでも助けてやれなければならない。
自分でも馬鹿だと思う。
こんな理由で進路を決めるなんて、本当に馬鹿だ。
ただの、見栄っ張りだ。




自分勝手な責任感。
私の人生は、ブーンを中心に廻っていた。
一日の内5時間以上ブーンを見ていないと、私は不安になった程である。
私がいない時、ブーンが何をしているのか、何か起きてはいないかと、過剰な心配をした。




特に酷いと思ったのが、学校で発作的な不安に駆られた時だ。
今すぐにブーンの顔が見たい、声が聞きたい、匂いを嗅ぎたい。
存在を確かめたい、今すぐに。
もう、この頃から私の精神は狂っていた。




82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 00:08:21.62 ID:lun5JsuE0



私は気分が優れないと言って保健室に向かい、生徒手帳の中に隠しているブーンの写真を見て気持ちを落ち着かせた。
周りに悟られない様に、そうやって私は卒業するまで過ごしていた。
この衝動が初めて私を襲ったのは、中学二年生の夏だった。
ブーンにしてみれば何気ない行動だったのだろうけど、私にとってはそうじゃなかった。




何度も見慣れているのに。
風呂上がりのブーンが上半身裸でいるのを見て、私の心臓は破裂しそうになった。
それからだ。
それから、私が壊れ始め、ブーンを恐れるようになったのは。




濡れた黒い髪。
きめ細かい肌。
引き締まった筋肉と、彫像のように均整のとれた肉体。
ブーンの裸体が網膜に焼き付いて離れず、私は自己嫌悪した。




84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 00:11:17.81 ID:lun5JsuE0

ブーンが中学に進学すると同時に、私は高校に進学した。
幸い、年齢の差が私を既の所でブーンから逃がしてくれたのだ。
この状態で一年も同じ学校にいたらと思うと、私は嬉しさのあまり何をしていた事か分からない。
そう。



ブーンは、よりレベルの高い中学へ進学する事が出来たのに、私と同じ中学に進んだのだ。
学費は免除となり、当然、ブーンは陸上部で更に有名を馳せた。
走る度に新記録を作り出すブーンは、期待のスプリンターとしてテレビにまで出演するようになった。
ある日、私がホットミルクを飲みながらテレビを見ていると。



そこに、ブーンの姿が映った。
ガチガチに緊張しているのを見て、私は和んだ。
笑顔を絶やさないのはいつもの事だが、今、その笑顔はひきつっていた。
それまで微笑ましくブーンを見ていた私は、次の瞬間、理性が焼き切れた。



86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 00:14:02.71 ID:lun5JsuE0



若い新人のアナウンサーが慣れ慣れしくブーンに触っているのを見て、私は無意識の内にマグカップを握り潰してしまったのである。
怪我はしなかったが、いよいよ自分が末期レベルまで狂っている事を自覚させられる事になった。
家には私だけだったから、その様子を見られる事は無かった。
両親には、落として割ってしまったと説明しておいた。



またある日、どんな番組かは忘れたが、あのミセリちゃんとブーンがテレビに出ていた。
同級生の有名人同士、何か浮ついた話題云々とレポーターが尋ねていたが、ブーンは真顔で全てを否定した。
我が弟ながら、素晴らしい成長ぶりだった。
距離を置いたのが幸いしたのか、私は大分心に余裕を持ってブーンと接する事が出来る様になっていた。




89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 00:17:05.31 ID:lun5JsuE0


徐々に心を馴らした結果、最初は10分で起きていた発作が、三時間にまで引き延ばされた。
つまり、三時間以上になると、やはりあの発作が起きてしまった。
焦る事はない。
時間をかけて、ゆっくりと馴らして行けばいい。



離れていた距離は、心の慣れに従って縮めて行った。
努力に対する成果が見えれば、次の努力に対する糧となる。
私の中で、夜にブーンと話す時間を設けたのは、その為だった。
ブーンの好きな紅茶を毎晩用意して、私はその時間が訪れるのを楽しみにしていた。



( ^ω^)「おねーちゃん、高校って楽しいかお?」



ξ゚⊿゚)ξ「そうね。
      楽しもうと思えばいくらでも楽しめるわね。
      今までと違って、視野も広がるし」



90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 00:20:18.93 ID:lun5JsuE0
中には数人、他人を見下す人もいる。
自分の価値を錯覚している馬鹿だ。
そう云った人間の存在をブーンに教えると、ブーンは部活内にもそう云う人間がいると言った。
私が何かを言うより先に、ブーンは自信過剰は嫌いだと続けた。

褒める代わりに、私は紅茶を注ぎ足してやった。


( ^ω^)「ねぇねぇ、おねーちゃん」


ξ゚⊿゚)ξ「ん?」


( ^ω^)「おねーちゃんの高校って、すっごい頭がいいのかお?」


ξ゚⊿゚)ξ「まぁね。
      今のあんたじゃ無理よ。
      家庭科で作ったんだけど、クッキーでも食べる?」


これは本当だ。
今日、家庭科の授業があってクッキーを作る事になった。
私はただ、ブーンの分を考えて多めに作っただけ。
勿論、誰かの手なんか借りていない。

(〃^ω^)「食べるお!」

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 00:23:12.44 ID:lun5JsuE0
ξ゚⊿゚)ξ「座ってなさい。
      今、持ってくるから」

まだまだ、ブーンは私の弟でいてくれる。
それが分かっただけで、私は深く満たされた。

(〃^ω^)「美味しいお」

ξ゚⊿゚)ξ「そう、それは良かったわ」

( ^ω^)「そう云えばおねーちゃん」

ξ゚⊿゚)ξ「なに?
      紅茶のお代わりでも飲む?」

(〃^ω^)「飲むお!」

気持ちいいぐらいの食べっぷりだ。
あっという間に、私が焼いたクッキーが皿から無くなる。

( ^ω^)「あ、そうじゃなくて。
      今度の日曜日って忙しいかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「一応……暇っちゃ暇ね。
      どうして?」

平静を装いつつ、私の心臓は激しく鼓動を刻んでいた。
なんだろう。
期待しているんだ。
ブーンの言葉に、私は。

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 00:26:03.13 ID:lun5JsuE0
( ^ω^)「新しいスパイクを一緒に買いに行って欲しいんだお」


何だ、スパイクか。
映画だと思っていたから、少しがっかりした。
でも、凄く嬉しい。
ブーンと二人で外出なんて、随分と久しぶりに感じる。

自制心を保てるかどうかなんて、その時の私は考えていなかった。
嬉しさで、心が一杯だったから。


ξ゚⊿゚)ξ「いいわよ。
      それじゃあ、何時に行くの?」


( ^ω^)「おー、確か店が開くのが10時だから……」


ξ゚⊿゚)ξ「どこのお店よ?」


( ^ω^)「スワガー通りの近くだって、ジョルジュ先輩が言ってたお」


ξ゚⊿゚)ξ「……何でジョルジュの名前が出てくるのよ?」


( ^ω^)「この前教えてくれたんだお!
      安くて良い陸上用の靴が沢山あるって」

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 00:29:13.75 ID:lun5JsuE0


ξ゚⊿゚)ξ「そう。 まぁ、別にいいけど。
      スワガー通りだったら、メンフィス駅でしょ。
      じゃあ、九時に駅の前ね」



( ^ω^)「え? 一緒に家を出ればいいんじゃ……」



ξ゚⊿゚)ξ「私にもいろいろあるのよ」



本当は何もない。
私は、ただ。
デートみたいにしたいと思ったから、そう言っただけだった。
店の場所が分かった以上、後は私なりにデートコースを考えるだけだ。


その時の私の行動力は、異常なほどの素早さと的確さを備えていた。
インターネットや雑誌、友人からの情報を頼りに素早くコースを定めた。
僅か三日で、私は周囲のあらゆる状況に対応するデートプランを完成させた。
自分でもびっくりだ、経営の才能があるのかもしれない。



97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 00:32:02.10 ID:lun5JsuE0

残った一日で私がしたのは、当日に着て行く服を考えることだった。
気合いを入れ過ぎて失敗しない為に、私はあえて普通の服を着る事に決めていた。
これはあくまでも、家族間での買い物。
ラフな格好を選んだ後で、私は靴を買う事に決めた。

学のある者は口を揃えて言う。
服装はさておき、靴はいい物を選べ、と。
私はその通りだと思う。
足元を見ると言う諺の通り。

基本的に、人が生活の中で最も使用する部位は足だ。
手は何もしなくてもいい。
だけど、人間は立っていても座っていても、足を使う生き物だ。
そう云う風に進化を遂げた以上、それは自然な事だ。

だから、ファッションの中でも手袋等の発展には限界がある。
それに、手を使わなくとも生きて行ける事は多くの人間が証明している。
ただし、足は別だ。
街中で行動をする以上、人間には支えが必要だ。


98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 00:35:02.70 ID:lun5JsuE0



移動の手段である。
その移動の手段は即ち、生きてゆく事に直結する。
ベッドの上での生活を余儀なくされる人間は、果たして、生きていると言えようか。
生かされていると言った方が正解ではないかと、私は考えている。




生きているという事は、自力で生きると言う事。
では、ベッドの上で生きる人間は自力で生きているのだろうか。
他力本願ではないか。
食事さえままならない、そんな人間が、一度街中に現れて、何ができる。




何もできない。
そう、足こそが、最も重要な部分だ。
そんな部位に対して、様々な事を怠る人間を見て、他人は何と思うか。
その様な重要な足に対して何の心配りも無く、他の部分に気を使う。




99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 00:38:26.69 ID:lun5JsuE0
分かっていない人間なのだと、判断する事だろう。
故に、人の価値観、生き方等を見る時に人の足元、即ち靴を見て人は判断をする。
上質なスーツに身を包んでいても靴がくすんでいれば、それ即ち、最も肝心なことに気付かぬと言う事。
だから私は、靴にお金を注ぐことにした。

前から目を付けていた靴は、ハイヒールやピンヒールではなく、もっと無骨な靴。
ベージュ色の、リバーウォーカー2と云うブーツだ。
こうして私は準備を完璧に済ませ、当日に備えた。
緊張して、眠った記憶が無かった。

当日の日曜日、少し用事があると言ってブーンよりも先に家を出て、私は先に駅で待っていた。
私が待ちあわせの30分前から待っていたと言うのに、ブーンは25分も前に到着した。


( ^ω^)「お、お待たせだお」


ξ゚⊿゚)ξ「私が早く来ただけだから、気にしなくていいわよ」



101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 00:41:55.48 ID:lun5JsuE0

そうして、二人で電車に乗り込んだ。
辺り前の事だけど、予定よりも早くに着き過ぎてしまった。
スワガー通りに活気が満ちるのは、10時から。
それは、店の開店時間が大体10時だからである。

既に100人近くの歩行者が辺りにいた。
これは私の予想通りだった。
早く着き過ぎた所で、私の計画に不備はない。
ブーンを引き連れ、私は最初に目的の店を探す事を始めた。

店が一斉に開くまでは後20分近くもある。
スパイクを買うと云う店は、10分ぐらいで見つかった。
残りは10分。
私は周囲の店を見たいと言って、ブーンと一緒にどのような店があるか、再確認した。

そうして時間が潰れ、10時になった。
その靴屋の最初の客は、私達だった。
ブーンは直ぐにスパイクコーナーに行き、靴を見比べ始めた。
今は短距離が専門になったブーンは、短距離用のスパイクを入念に調べていた。

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 00:44:29.49 ID:lun5JsuE0

有名な選手が使っているモデルの靴も見たが、ブーンはそれを直ぐに棚に戻した。


ξ゚⊿゚)ξ「履いてみたら?」


( ^ω^)「でも、実際に走ってみないと良く分からないんだお、僕の場合。
      それに、これ、なんか嫌だお」


ξ゚⊿゚)ξ「そう」


私は多く口出しをしない。
陸上競技に関しては全くの素人だからだ。
最終的に、ブーンは二つの靴を試し履きして、唸っていた。


(;^ω^)「むむむ……」


深紅のスパイクか。
それとも、スカイブルーのスパイクか。
やがて、ブーンはスカイブルーの方を選んだ。


ξ゚⊿゚)ξ「どうしてそっちを選んだの?」



103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 00:47:02.44 ID:lun5JsuE0
ちょっとした話題を作る。
陸上競技の事は良く分からないけど、随分と高いから、それなりに性能差と云う物があるのだろう。
真紅とスカイブルーのスパイクの間で、何かブーンに選ばせるだけの理由があったに違いない。


( ^ω^)「だって、おねーちゃんの眼と同じ色だから」


呆れる様な理由だった。

ξ゚⊿゚)ξ「……好きにしなさい」

私は他のコーナーに行くふりをして、ブーンから顔を背けた。
危なかった。
きっと今、私の顔は真っ赤だろう。
落ち着け、落ち着くんだ、私。

頬に手を当てて、熱が引いて行くのを感じてから、ブーンの元に戻った。

( ^ω^)「それじゃあ、これを買うお!」

ξ゚⊿゚)ξ「それ、ちょっと貸して」

ブーンから靴の箱を受け取り、私はレジに向かった。
さっさと会計を済ませ、袋をブーンに渡した。

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 00:50:04.73 ID:lun5JsuE0

ξ゚⊿゚)ξ「私からのプレゼントよ」


(〃^ω^)「ほ、本当に!?
      やった、おねーちゃん、ありがとうだお!」


靴を買い終えて、私が次に向かったのは、ちょっとした専門店だった。
そこで売っているのは、はちまきだ。
案の定、ブーンは困惑した。

(;^ω^)「おー?」

ξ゚⊿゚)ξ「靴だけがプレゼントじゃ寂しいからね。
      はちまきぐらい、買ってあげるわよ」

(;^ω^)「いいのかお?
      さっき靴も買ってくれたし」

ξ゚⊿゚)ξ「いらないの?」

(;^ω^)「ほ、欲しいお……」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、自分で選びなさい」

おどおどと、ブーンははちまきを選び始めた。
生地の色。
刺繍の色。
そして、刺繍する文字。

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 00:53:13.72 ID:lun5JsuE0


ブーンは靴と同じようなスカイブルーの生地に、金色の糸で【一意専心】と刺繍するように注文した。
まさかと思って尋ねると、ブーンは恥ずかしそうに答えた。


( ^ω^)「おねーちゃんの髪と、眼の色を……」


ξ゚⊿゚)ξ「あんた、人を何だと思ってるの?」


( ^ω^)「自慢のおねーちゃんだお!」


そこだけは、きっぱりと言いやがった。
恥ずかしがる場所が違うだろ。
私の方が恥ずかしいっての。
注文したはちまきが完成してブーンの所に届くまでには、一週間程度で済むそうだ。


勿論、お金は私が払った。
それから、私達はお昼を食べた。
味よりもブーンの顔しか覚えていない。
その日の夜。



111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 00:56:05.97 ID:lun5JsuE0


私は、嫌と云う程自覚させられた。
もう、昔と同じ眼でブーンを見る事は出来ないと。
笑顔が脳裏から離れない。
声が耳から、匂いが鼻から消えてくれなくなっていた。



鮮明に思い出せる。
無邪気な笑み。
耳朶に心地の良い優しげな声。
幼い中に確かに感じた、男の匂い。



私は、最低だ。
最悪だ。
でも。
幾ら嫌悪しても、この気持ちは少しも薄れてはくれなかった。



翌月に行われた県大会で、ブーンはあのスパイクとはちまきを身に付け、試合に挑んだ。
そして。
また、新記録を樹立した。
どこまでも単純な弟だった。



113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 01:00:12.23 ID:lun5JsuE0
インタビューの記事が地元の新聞に掲載されていると聞いたので、私は早速その新聞を買った。
スポーツ面に写真付きで掲載された記事には、ブーンの持つ才能とこれまでの記録について書いてあった。
私は何度目になるか分からない衝撃を、その記事から受ける事になる。
目標にしている進学先に、ブーンは私の高校の名前を挙げていたのだ。



学力でその高校に行く事が無理だと分かっているが、どうしてもそこに行きたいのだとブーンは答えていた。
嬉しい半面、私は複雑な心境だった。
どうして、ブーンはまだ私の後を追う様な真似をするのだろうか。
理由が分からない。



私と違って、ブーンは馬鹿だが狂っていない。
私は狂っている。
日ごとに私の気持ちが壊れている事に、ブーンはまだ気付いていない。
こんな狂った私の近くに、ブーンがいる事自体がすでに問題なのに。



114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 01:03:02.79 ID:lun5JsuE0



ブーンに彼女が出来たとしても、諦めが付くかどうかは分からない。
私がブーンに対して抱いているのは、恋心などと云う脆い物ではないのだ。
幼少期の頃から積もり積もった、貪欲な愛情だった。
最初はきっと、独占欲だったんだと思う。




私が育てて。
私がいなければ何もできない。
そんなブーンを、私は犬か人形のように扱っていたし、思ってもいた。
いつからかその気持ちに変化が生じ、ブーンと云う存在が私の頭の片隅に常駐するようになった。




やがてそれは存在感を増し、音も無く静かに頭を支配したのは、ミセリちゃんが切っ掛けだった。
奪われる。
持って行かれる。
そう云った気持ちが、私の心を狂わせた。




117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 01:06:02.15 ID:lun5JsuE0



そして卒業式の日の出来事だ。
あれが、私の気持ちを完全に壊した。
制御不能に陥った私の心は、ただ、獣が血肉を求める様に貪欲にブーンを求めた。
それが、あの発作的な衝動だった。




自分の元にブーンがいないと落ち着かないと云う、これ以上は無いぐらいの独占の気持ち。
依存される事に対しての優越感と、安心感。
一方的な気持ちでブーンを狂わせない様に、私は常に自分を抑圧してきた。
一歩間違えてしまえば、今の関係さえ崩壊してしまう。




そうなったら、私はきっと、本当の意味で気が狂う。
想えば想う程、気持ちは強まる。
常識と照らし合わせて、私の気持ちは異常に分類される。
しかも重度の異常だ。




118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 01:09:03.02 ID:lun5JsuE0



白い目で見られて後ろ指を指されるレベルだ。
これ以上は望まない。
最後に私の気持ちの暴走を防いでいたのは、ブーンに対する深い愛情そのものだった。
進級するにつれ、私の周りでは恋人を作る人が増えて来た。




何度か男子生徒に告白されたが、私は全て断った。
ブーン以外の男に、私は興味がない。
色気のない高校生生活を過ごしたが、修学旅行は色気がなくても楽しめた。
高校三年になると、ブーンは中学三年になった。




周囲が受験勉強で忙しそうにしていたけど、ブーンはそんな事は無かった。
当初の念願が叶って、ブーンは私の高校から特別推薦を受け、学費全額免除での入学が決まっていた。
足一つで、ブーンは私に迫りつつあった。
だが、私には切り札がある。




120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 01:12:54.43 ID:lun5JsuE0



三歳と云う年齢差は、如何に俊足のブーンでも縮められる物ではなく、何者にも縮める事は敵わない。
絶対的な、私の最終防衛の要だ。
特に、学校と云う場でブーンとの接触を断てるのは、効果的な防御手段だった。
同じ学校にブーンがいるだけで、私は私でいられなくなるのは必然。




家では自制が効くからまだいい。
あまり関わらない様に心掛けている。
しかし学校では。
何だかんだで、私は絶対ブーンに関わってしまう。




一緒に登校したり、学校内ですれ違ったり、一緒に帰ったり。
何か理由を付けてお昼ご飯を一緒に食べたり、勉強を見ると言う名目で放課後まで残ったり。
それら一連の流れを通じて、私の精神が崩壊する速度は加速するだろうし。
それに伴って、ブーンに対する私の態度に変化が生じ、ゆくゆくは関係に影響を及ぼす。



121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 01:16:51.37 ID:lun5JsuE0


ブーンの信頼を裏切れない。
私は、ブーンの姉でなくてはいけないのだ。
だから。
だから、私は。


絶対に追いつかれてはいけないんだ。
私とブーンは入れ違いで高校を卒業、入学した。
これが三年と云う壁だ。
決して越えられない、不可視の壁。


ブーンと私を隔てる、絶対の防壁。
その防壁にも、一瞬の隙が出来る。
大学生活は、基本は四年だ。
一年間だけ、私の壁は機能を失う。


それを見越して、私は進路を決めていた。
国内で最も難易度の高い、国立の大学に進学したのだ。
余程の功績と実力がなければ、スポーツ推薦でも入学は困難な程、私の選んだ大学は難しかった。
私にとっての勉強は、武器を鍛える工程と同じで、知識が頭に入る度に強力になった。



122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 01:19:07.82 ID:lun5JsuE0


逃げ続ける為に只管鍛えただけあって、その武器の力は相当なものとなった。
歳の差で埋められない壁は、この学校のレベルが埋め合わせる。
そして、私はこの大学入学を機に、独り暮らしを経験しようと考えた。
一先ずは大学に慣れる事が先である事を考え、二年目から独り暮らしを始める事に決定した。



言わずもがな、ブーンには黙って両親に相談して決めた事だ。
ここで、私はブーンとの繋がりを自らの手で断つ。
身を裂く程苦しいが、何時までもブーンが追ってくるから、こうするしかなかった。
これでいい。



ブーンはもう高校生だ。
私を追うなどと云う馬鹿な考えを抱いても、きっと諦める。
すっかり男の子らしくなってきたブーンを暫く見れなくなると思うと、私は寂しかった。
一つ、気になる事もあった。



131 名前:恐るべき惑星の片鱗を味わってました:2011/05/09(月) 01:39:07.85 ID:lun5JsuE0


ミセリちゃんだ。
実はミセリちゃんは、ブーンと同じ高校、つまり私と同じ高校に進学していたのだ。
現役高校生アイドルとしてブレイク中の彼女は、勘違いではなく、明らかにブーンの後を追っていた。
毎年手作りのチョコをブーンに手渡している本人は全て偶然だとテレビで否定していたらしいが、私としては別にどうでもいい。




問題なのは、ブーンに対するミセリちゃんの気持ちがどう云った物なのかと云う事、その一点に尽きる。
小学生のころからの気持ちのままだとしたら、大したものだ。
その一途さが私には羨ましい。
何の気兼ねも無くブーンを想える。




私には、それができない。
だから、私は逃げる。
運が良ければ、ブーンとミセリちゃんの恋愛報道が流れるかもしれない。
そうなったら、私はどうするんだろう。




132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 01:42:22.51 ID:lun5JsuE0


嫉妬する?
いや、それはない。
元々私はブーンの家族なのだから、嫉妬する必要がないのだ。
むしろ、ミセリちゃんと云う家族が加わるだけだ。


歓迎してあげよう。
姑の様に虐めた時は、ごめん。
大学に進学してから、私はブーンとあまり会話をしない様に務めた。
今の内から、こうしてならしておけば、やがては慣れ、何も感じなくなる。


これが自然だと感じる様になる。
わざわざ私がこうしているのにも関わらず、ブーンの態度は一向に変化しなかった。
何か機会があれば私に話しかけ、結局、私は話すしかなかった。
わざとそっけない態度で接した後は、ブーンはしょんぼりとしていた。


ちょっと可哀そうだったから構ってあげると、ブーンは子犬の様に喜んだ。
犬だ。
耳と尻尾があれば、もう、ブーンは犬だ。
そうとしか思えない。



136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 01:46:18.86 ID:lun5JsuE0

単純で、馬鹿で。
でも、なんか、こう。
いいなって、思えちゃう。
私の努力は、ブーンの馬鹿さの前では無力だった。

まぁいい、後一年の辛抱だ。
積極的にブーン離れをする為に、私は男友達と話すようにした。
と言っても、ジョルジュなのだが。

  _
( ゚∀゚)「……どーして俺なのよ」

ξ゚⊿゚)ξ「他の知り合い、皆引っ越しちゃったじゃない」
  _
( ゚∀゚)「全く、お前ら姉弟は揃いも揃って……」

ξ゚⊿゚)ξ「なに? ブーンもあんたに何か話してるの?」
  _
( ゚∀゚)「まぁな。 でも、秘密だ。
    そんなに睨んでも何も教えねーぞ」

ξ゚⊿゚)ξ「睨んでないわよ」
  _
( ゚∀゚)「で、何があったんだよ、俺に話なんて珍しい」

ξ゚⊿゚)ξ「ちょっとした心境の変化よ、気にしないで、あんたに興味はないから」



137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 01:50:13.58 ID:lun5JsuE0

  _
( ゚∀゚)「うーわー。
    そこまで露骨に言うか、普通。
    もう少し気のある素振りぐらいしてもいいんじゃない?」


ξ゚⊿゚)ξ「嫌よ、そんな面倒くさいこと」

  _
( ゚∀゚)「ったく、昔っからかわらねぇな、その性格は。
    そろそろ用件ぐらい教えてくれよ」


ξ゚⊿゚)ξ「特にないんだけど、そうね。
      あんた、今どうなの?」

  _
( ゚∀゚)「なーんも。
    ただ学校に行ってるだけだよ、何にも考えずにな」


それから、私は何てことのない話をして、家に帰った。
ただ一つ気になったのは、ジョルジュは、何かを隠していた。
何か、とても大切な何かを。
少し気になったけど、三日もしたら、気にならなくなった。

140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 01:54:14.77 ID:lun5JsuE0
一年後。
今にでも雨が降りそうな曇天の中、私は、ブーンに何も告げずに引越しをした。
運悪く、引越しのトラックが荷物を積みに家の前に来たところで、ブーンが帰って来てしまった。
熱があるらしく、早退したとのことだった。

最悪のタイミングだった。
私はブーンの看病をしたかったけど、引越しがあったから、そうするわけにはいかなかった。
ブーンは、何が起きているのか理解できていない様子だった。


( ´ω`)「おねーちゃん、その荷物は何なんだお?」


ξ゚⊿゚)ξ「……引越しの荷物よ」


ぽつり。
ぽつり、ぽつり。
大粒の雨が、空から落ちて来た。


( ´ω`)「誰が引っ越してくるんだお?」


ξ゚⊿゚)ξ「私が引っ越すのよ」


( ´ω`)「……う、嘘だおね?」



142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 01:57:43.92 ID:lun5JsuE0


……っ!
止めて、止めてよ。
そんなに。
そんなに悲しそうな顔をしないで。


慰めてあげたくなってしまうから。
抱きしめたくなってしまうから。
折角決めたのに、また、迷ってしまうから。
お願いだから、私を見ないでよ。


瞬く間に雨粒はシャワーの様に降り注ぎ、私達を濡らした。
雨のおかげで、私は涙が流れたのを誤魔化す事が出来た。
雨音に消えない声で、私は言い放った。


ξ゚⊿゚)ξ「冗談や嘘で、引越し屋さんを呼ぶ訳がないでしょ」


すがるような眼から逃げる様に、私はトラックに乗り込んだ。
逃げるなら、今しかない。
感傷的な気持ちになる前に行かなければ、私は、ブーンから離れられなくなる。
運転手に構わないから行くように言って、私と荷物を乗せたトラックが、ブーンを置き去りに走り出した。



144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 02:00:41.58 ID:lun5JsuE0


サイドミラーで見てみると、まだ、ブーンは家の前で立ち竦んでいた。
無情な雨に晒され。
ずぶぬれになっても。
まだ、トラックを見ている。


それはまるで。
捨てられた子犬の様に悲壮感の漂う姿で。
今すぐに抱きしめたくなるような姿だった。
ぼやけたブーンの姿が、崩れ落ちた。


私は奥歯を食いしばり、感情が溢れ出すのを耐えた。
心の中でも謝らない。
謝るなら、最初からこんな事はしない。
自分の行いが如何に最低な行為か、よく理解しているからこそ、謝らない。


外道だ。
畜生にも劣る、下劣な女だ。
結局私は、ブーンを悲しませてしまったんだ。
自分の心が弱いから、ブーンを傷付けた。


146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 02:03:49.89 ID:lun5JsuE0


私がもう少し大人だったら。
家族であるブーンに対して、この様な感情を抱かずに済んだ筈だ。
そして、別れずに済んだ筈だ。
でも、そうはならなかった。


私がもう少し優しかったら。
ブーンを泣かせることなく見守れた筈だ。
優しい姉になれた筈だ。
でも、そうはならなかった。


私にもう少し勇気があれば。
もっと早い段階でブーンから離れる事が出来た筈だ。
違う結末を迎える事が出来た筈だ。
でも、そうはならなかった。


私は、諦めたくなかったから。
諦める代わりに、私は逃げた。
あらゆることから、私は逃げていた。
逃げてしまったんだ。




149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 02:09:02.13 ID:lun5JsuE0



                        大人になる事。
                        優しくなること。
                        勇気を持つこと。
                    私には、どれも選べなかった。


                       だから、逃げたのだ。






              空は暗く、冷たい雨は、三日後の今日まで降り続いた。







150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 02:13:11.89 ID:lun5JsuE0




            To Be Continued...






              【Next Title】

     ( ^ω^)だから、ブーンは追いかけたようです


154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 02:15:47.20 ID:lun5JsuE0
支援ありがとうございました!
忍術の心得を知らなかったので、一回に投下できる量が制限されており、時間がかかってしまった事をお詫びします



これにて本日の投下は終わりとさせていただきます


質問、指摘、感想などあれば幸いです

157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 02:18:30.18 ID:MGywcEI80
三  ======
 三  ||   || ξ ;⊿;)ξ <あぁぁぁん!
 三  ||   || ( つ つ     ぶーん!ぶーん!
 三_||_ || と_)_) _.  あぁぁぁん!!
三  ̄(_)) ̄(.)) ̄ (_)) ̄(.))

これの作者ですか?

158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 02:19:56.76 ID:z8T1VmxJ0
   `・+。*・     (´・ω・`)
     。*゚  。☆―⊂、  つ  次はいつ投下?
   。*゚    :     ヽ  ⊃
   `+。**゚**゚       ∪~

160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/09(月) 02:23:24.43 ID:lun5JsuE0
>>157
申し訳ありません、全くの別人です
個人的には


三  ======
 三  ||   || ( ;ω;) <あぁぁぁん!
 三  ||   || ( つ つ     ツンおねえちゃああああん!おねえちゃあああん!
 三_||_ || と_)_) _.  うあぁぁぁん!!
三  ̄(_)) ̄(.)) ̄ (_)) ̄(.))


の方が好きです


>>158
重ねて申し訳ないのですが、次の投下は未定でございます

コメント

なんか3月革命思い出した
[2012/09/29 12:17] URL | #- [ 編集 ]


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