mesimarja
気に入ったスレを集めてみました。
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/ ゚、。 /上司が死んだ村について調べるようです
1 名前:90:2011/05/21(土) 20:31:46.25 ID:7m74Cvuw0
【まえがき】
某所にて投下したものをブーン系になおし、加筆修正してお届け
忌憚のない意見や感想をどうぞ


3 名前:90:2011/05/21(土) 20:32:31.41 ID:7m74Cvuw0
【前提】

http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1305900205/all

108 :90 :2011/05/21(土) 00:35:34.03 ID:7m74Cvuw0(11)
こんな感じで大丈夫かな?
初めてのブーン系だから色々不安がある

113 :拳王 ◆iSzhOM1gzE :2011/05/21(土) 00:38:28.18 ID:E7AsuF8qO(59)
>>108
大丈夫だよ!
コテは90って付けときなよw

ジャジメンツの盟友に加えとくな

叩く奴が居たら叩いた奴をすいとんしてやるからな

5 名前:90:2011/05/21(土) 20:33:48.23 ID:7m74Cvuw0
 ■ 序 【――軍事国家ヴィップの発明品――】


『MA-7』という機械が、三年前に発表された。
三メートルほどの直方体が胴体部分であり、その側面から突き出した四本の腕と、
底面から四本の脚が生えた不恰好な機械だ。
鉄色の巨大なカニやクモの類に酷似していて、開発に携わった人物たちもそう思っていたのか
『Machine Actually(現に機械)』との名前を冠した。

『MA-7』の性能はまさに魔法とも言うべきもので、照準を合わせた者の脳裏に浮かんだもの
を瞬時に作り出し、その場に出現させるというもので、開発当初からの計画通りに進み、一台
出来上がったので、世界的に発表した、ということらしかった。

魔法じみた最先端の科学にいくらの開発費用がいくら注ぎ込まれたのかは知る由もない。
しかし、製作者が、

「将来的に商品開発できるよう研究を進めている」

と声明していることから、この研究が成功する見込みは高そうに思われる……。

そうやって締めくくられた記事の後に、色々な人が反応を寄せている。

7 名前:90:2011/05/21(土) 20:35:51.18 ID:7m74Cvuw0
「漫画家や小説家の脳内で完結している物語をその機械が全て綴ってくれるということだよな。
 これはもしかしたら毎週VIPPER×VIPPERが掲載されるで」

なんていう娯楽に喜ぶ声や、

「面白い物語さえ考えてしまえば、あとはこの機械が全部やってくれるのか。
 プロもアマチュアも関係なくなる時代が来るでこれは。値段によっては退職して漫画家になるわ」

一儲けを目論む声や、

「発明したところが、世界の覇権を握ってるヴィップだから、一般に流通するのは何十年、何百
 年後だよ」

と、言った現実的な意見まであり、見るものを楽しませた。

記事を読み終えたダイオードは、

/ ゚、。 /(自分が生きている間に、自分の手元に置かれることはないだろうな)

もう一度記事を読み直してから、そのページを閉じた。

10 名前:90:2011/05/21(土) 20:38:55.55 ID:7m74Cvuw0
 ■ 序・二 【――湖の消失――】


四年ほど前に、とある発展途上国のとある村の近くにある、とある湖が干上がった。

現在のその場所は、一面、泥土が広がっている。
不可思議であることは魚の一匹も――ごみや海草でさえも――湖の跡地に残っていなかったのだ。

世界中で起きている温暖化の影響だとか、水不足の惑星に住む宇宙人が持っていった、などと、
騒ぐ人間もいたが、そうでないことが数ヵ月後に判明した。現地の住民の話を聞くことができたのである。

話す内容はこうだ。

まず、三日前まではいつも通りの状態であったらしい。
釣りをしたり、子供たちが水を汲んだり遊んだり、といつもの日常の一部に組み込まれていた。

13 名前:90:2011/05/21(土) 20:43:08.98 ID:7m74Cvuw0
その翌日、水位が半分程度にまで減ったという奇怪な事態が起こった。
人々はざわついてはいたが、生活飲料が不足するなどの深刻な事態には程遠かったので、
それほど、真剣に対策を練ろうなどとは露も考えていなかった。
何か事件が起こるたびに開かれる談合が行われることもなかった。

しかし、尋常ではなく慌てた様子で、村から少し離れた場所にある高い丘から駆け下りてきた
男が来てから、心境は反転する。男は、息も絶え絶えに自分が見た光景について伝えると、
村人は血相を変えて丘の上へと走り出した。

そうして絶句する。

湖の中心に巨大な渦が発生していたのだ。環状した水は穴の中へと流れていく。
このことに悲鳴を上げる女性がいて、祟りだと生贄を準備し始める男性がいた。
村長がなんとかその場を宥め、自分たちでは解決できない問題だと判断し、先進国へとこの件を告げた。

そして、翌日に湖が無くなった。

19 名前:90:2011/05/21(土) 20:47:54.62 ID:7m74Cvuw0
 □ 一 【――ダイオードとホライゾン――】

ダイオードは新聞記者だ。今年で入社して二年目となる。
仕事にも慣れ始めてきており、同期との仲も良く、至って平和な日常を過ごしていた。

強いて言えば、学生時代に比べて、ややだらしなくなってきた自分の身体が最近の悩みであり、

/ ゚、。 /(帰り道にあるスポーツジムにでも通おうかな)

そう考えていた日頃、上司のホライゾンが殉職したという知らせを、編集長から聞いた。
ホライゾンと言う男は初老にも関わらず、この世の不思議が大好きであった。
そのためか、不可思議なミステリーを取り扱った記事を任されており、
今回も怪異を追って、四年前に湖が枯渇したという異国へと飛んだのだ。

ホライゾンが取材へと向かったのは、三ヶ月前のことではあったが、
ダイオードは彼の所作を簡単に思い出せる。
膨らんだお腹を揺らして笑う上司が亡くなってしまったとは信じられず、噛み付くように詳細を聞いていた。

編集長が、苦々しい表情で答えを返す。
  _、_
( ,_ノ` )「行方不明になり、一ヶ月が経過した。詳細はまったくの不明だ。
      死体も上がっていないらしいが、壊れたカメラと血に塗れた腕章が見つかった。
      我が社ではそれらを遺品として引き取り、遺族へと手渡そうと思っている」

編集長の言葉が信じられない。
  _、_
( ,_ノ` )「本当に、惜しい人を亡くした」

と、目を伏せる。

25 名前:90:2011/05/21(土) 20:53:03.24 ID:7m74Cvuw0
彼を悼み、社内の誰もが悲しみに暮れていた。
泣き崩れた男性社員がいることから、
ダイオードはどれほどホライゾンという男性が愛されていたかを再認識した。

しかし、ダイオードはどうにも涙を流せなかった。
それどころか、変に気持ちが作用してしまい、

/ ゚、。 /(悲しむ妻子がいなくて良かった)

や、

/ ゚、。 /(まあ、あの性格じゃあ結婚は無理かなあ)

なんて、眉を寄せて苦笑すらしていた。


葬儀は三日後に行われた。
生死の判別もはっきりとはわからず、さらに、死体のないまま行われる葬儀は誰に、
どこに、祈れば良いのか上手く解釈できず、ダイオードはただぽかんと口を開けていた。

27 名前:90:2011/05/21(土) 20:54:09.66 ID:7m74Cvuw0
彼女のそんな様子を見た同僚や別部署の上司が声を掛けてきたが、
ダイオードはそこでも返答に詰まり、ただ曖昧に頷いただけだった。

「ホライゾンさんと君は、血が繋がっているかのような仲の良さだったものなあ」

そう、言葉にする人もいれば、

「口も利けないくらいにショックを受けているんだ」

と、勝手に判断する人もいた。
誤解が巡り回り、ダイオードは一週間の休暇を手にすることとなった。

彼女は働くことが好きであったので、休暇を拒んだのだが、無理矢理に取らされてしまった。
  _、_
( ,_ノ` )「ゆっくり休んでくれ」

自分にだけ告げられた言葉は、差別以外の何でもないではないかと彼女は憤ったが、
それすらも精神的に負荷がかかっているためだと思われてしまい、不本意ながら受給することにしたのだ。

32 名前:90:2011/05/21(土) 20:58:01.31 ID:7m74Cvuw0
 □ 二 【――青空――】

休日の扱い方がわからない。
学生時代から勉強漬けであったダイオードには、
これまでに強制的に取らされた余暇など存在していなかったのだ。
趣味なども特になく、必要である事柄にだけ心血を注いでいた。

そして現在、彼女に必要な事柄は暇を潰せる仕事だった。
仕事について何か調べろと言われれば調べ上げるのだが、何の目標も指示もない。

そんなわけで、朝起きて、することが無く、また布団に潜る。
昼に目が覚めてしまい、仕方なくテレビを操作してチャンネルを回してはみるが、
何にも興味をそそられなかった。

目に映ってはいるが頭が認識していない。

/ ゚、。 /(電気代の無駄ね)

電源を落とそうとリモコンに手を伸ばした途端、番組の構成が切り替わる。
笑い声が響く暖色な空気が、画面に映し出された画像によって、冷えて、荒涼とし始めた。

ダイオードは手を止める。
それは紛れも無く、ホライゾンが亡くなったという国の映像だった。
不意打ちの衝撃に身体が固まる。そのまま視線が釘付けとなった。
目に映るものを記憶していく……。荒んだ大地、細く伸びた木、砂埃のカーテン……。

35 名前:90:2011/05/21(土) 21:03:39.01 ID:7m74Cvuw0
場面が切り替わり、特集が終わる。
発展途上国の情景を目の当たりにした余韻が番組スタジオに染み渡ったが、
次の瞬間にはもう賑やか雰囲気に包まれていた。

/ ゚、。 /(なるほど、テレビ番組のコーナーの一つだったのね)

ダイオードは理解して、そして頭の中で先ほど解説されていた出来事を反芻する。
マイクを持ったレポーターが話している場面から、中継は開始されていた。

爪'ー`)y‐「軍事国家ヴィップがこの国へと調査に入りました。
       この国って、普通、カメラを入れてもらえないんですよ。
       我が番組が、全世界で初と言えるのではないでしょうか。
       あ、しかし、すぐに止められてしまいました。仕方がないので近くの村で過ごしましょう。
       観光地として栄えているようですね。それじゃあ、このへんで」

という、結局はただの観光として訪れたとわかる取材風景だったので、得るものはほとんどなかった。

ホライゾンについては一言も触れられていなかった。
当たり前といえば当たり前で、それを求めることはお門違いだとわかってはいたが、
ダイオードは胸のうちに穏やかではない感情を感じた。ジャーナリスト一人がなんだっていうんだ。
世界中がそう言った気がした。少なくとも、ダイオードの耳には聞こえたのだ。
命を懸けても、お前たちの感心すら向けられないというのか。

目標が定まったら、あとは進むだけ。
ダイオードがこれまで生きてきた中で、何か事を行う際の方針の一つがそれだった。
フェルマーの原理とは比べ物にならないが、通常の人間に比べて、遥かに手際がいいことは間違いなかった。

38 名前:90:2011/05/21(土) 21:07:20.51 ID:7m74Cvuw0
インターネットと街の書店で件の国のことについて二日間ほどかけて調べ上げると、
会社に電話をして出張許可を申請した。
編集長は初めのうちは、戸惑い、渋ってはいたが、
最後には彼女の熱意に押し切られてしまい首を縦に振ってしまった。

ダイオードは必要な書類を整理して持ち出すために、一度会社に立ち寄ることになった。

整理整頓の途中、ふと、ホライゾンの机があった場所を見た。
上司の机は今やもう片付けられており、
寄せ合った机が綺麗に長方形を作っていたというのに、端の部分が欠けてしまっていた。
一人の人間がここから消滅してしまったことを改めて思うが、やはり、ダイオードには実感が沸かなかった。

心配と不安で一杯の視線を浴びながら必要な書類を纏め終わる。
次に出立の挨拶を告げに編集長の下へと向かった。
編集長はまだ苦い顔をしていて、腕を組んで唸っている。

/ ゚、。 /「それじゃあ、行ってきます。一週間ほどで帰国しますので」
  _、_
( ,_ノ` )「本当に気をつけてな。危ないことをするんじゃないぞ?」

/ ゚、。 /「大丈夫ですよ。何も危険な地帯じゃないんですから。それに、私は半ば観光で行きますから」
  _、_
( ,_ノ` )「うん。そうか。それもいいな。行ってらっしゃい。おみあげよろしくな」

/ ゚、。 /「畏まりました」

帰宅するとスーツケースを引っ張り出して衣服と書類を詰める。
入りきらないと思われるほどに詰める。
次回開けたときにビックリ箱にようになるだろうな、とダイオードは嘆息しながらなおも詰め込んだ。

41 名前:90:2011/05/21(土) 21:12:05.42 ID:7m74Cvuw0
翌朝、まだ暗い時間から彼女は家を出発した。
タクシーを拾って空港に行って、飛行機に乗って二日間空を飛んで異国の地に降り立つと、
案内してもらうと約束していた現地の人間と合流した。
挨拶を交わした後、最近の情勢を聞きながらバスを待った。

<ヽ`∀´>「ショウジキな話ネ。かなりブッソウだから、気をつけてネ」

現地を案内してくれる、ナビゲーターが小さな声で切り出した。

/ ゚、。 /「どうしてですか?」

<ヽ`∀´>「ホラネ。アノネ。大きな声じゃ言えないんだケド。あのヨソの国のグンジンたちがね……」

/ ゚、。;/「軍人? 軍人が来ているの?」

<;ヽ`∀´>「アレ? 言葉マチガエタ? メイサイ服で、テッポウ持ってて……」

/ ゚、。 /「いえ、合っています。まあ、行けばわかりますので」

砂と土で薄汚れたバスが到着する。二人は乗り込み席につく。
窓の外の景色は近代的なものから、開けた大地となり、どんどんと色が失われていった。

/ ゚、。 /(自室の画面の向こう側に、今、私は居るんだな)

砂埃が吹き上げられて、バスの後を追っていく。
眩んでしまいそうなほど、鮮やかな青空が頭上に広がっていた。
それだけは、ダイオードの国よりも色彩が深くあった。

48 名前:90:2011/05/21(土) 21:17:36.40 ID:7m74Cvuw0
 □ 三 【――凛として咲く花の如く――】

村に到着したのは昼間だった。真上から照りつける太陽により、汗が止まらない。

/ ゚、。 /(下調べにより気候を把握してはいたけれど、まさかこれほどとは)

ダイオードはまず宿の確保をして荷物を置いた。
腰まである長い髪を結い上げて頭頂で纏めると、水色のシャツとハーフパンツに着替える。
そして、この国で使用されている言葉が記された辞書、紙、ペンをバッグに入れて、腕章をしてから村へとくり出した。

やはり、自らの足で村を歩き回るのがいいだろう。
村の地形、湖までの距離、何がどこにあるか、精確に把握しておくに越したことはない。

ダイオードは首を回して景色を楽しみながらも、ホライゾンの件があるため、気を引き締めていた。
周りを見渡す限り、想像していたような、藁葺きやバラック小屋が立ち並んでいるということはなかった。
インターネットやテレビ放送で見た景色はスラム街さながらであったが、湖が無くなったことにより人々は潤ったらしい。

<ヽ`∀´>「ホラ」

ふと、ナビゲーターが指を突き出した。

/ ゚、。 /(ふうん)

54 名前:90:2011/05/21(土) 21:21:47.39 ID:7m74Cvuw0
その先を追うと、迷彩服に銃器を担いだ男がいた。同じような仲間と共に笑いながら歩いている。
道の真ん中を歩く彼らを見て、村人たちが眉をしかめて迷惑そうな視線を送っていた。
道の端から、店の中から、とその数はとても多く感じられた。

<ヽ`∀´>「ミンナ、アイツらに困ってル」

/ ゚、。 /「なるほど。なるほどなあ」

ダイオードは彼らの後をつけることにすると決め、ナビゲーターにその旨を伝えたが、
それは了承されなかった。仕方がないので一人で行うことにしたが、どうにもナビゲーターが引き止める。

/ ゚、。 /「何?」

やや尖った口調で彼女は言った。

<;ヽ`∀´>「ヤメておいたほうがイイよ。アブナイよ。何をされるかわからないヨ」

/ ゚、。 /「大丈夫。大丈夫よ。貴方はもう宿に帰ってもいいわ」

ナビゲーターの胸を手のひらで押して、ダイオードは軍人たちを追った。背後からの声は、一切無視する。

57 名前:90:2011/05/21(土) 21:24:07.98 ID:7m74Cvuw0

 □ 四 【――腐れ外道の蝉時雨――】

周囲が騒がしくなっていく。繁華街に近づいているのだ。
ダイオードは注意深く周囲の建物を覚えながら足を進める。
ここで迷子になり宿に帰れなくなったなんてものは、笑い話にもなりやしない。

どうやら、軍人たちは昼食を食べるようだった。食堂へと入っていった彼らの背中を追う。
ダイオードも空腹を感じ始めていたので、丁度いいと何か口に入れることにした。

言葉が通じるかどうか不安であったため、あらかじめ辞書を出しておいたが、
メニューにはその商品の写真が印刷されていたためどうにか対応できた。
ホットドッグのようなものを注文してから、軍人たちに視線を移す。

彼らは下卑た笑い声を立てていた。その中の一人が給仕係の少女に何かを言っている。
少女は顔を真っ赤にさせて俯いていた。やがて店主らしき髭面の男が現れて軍人たちを嗜める。
すると不意に立ち上がった一人が髭面の男を殴り飛ばした。

/ ゚、。 /(なるほど。酷い。これは酷いわ)

食堂内に悲鳴が響き渡った。髭面が倒れこんで、寄りかかったテーブルが倒れた。
テーブルの上に並んでいた様々な料理が床にぶち撒けられる。テーブルについていた客の悲鳴。
続いて、料理の上に軍人の足が乗せられる、そのまま髭面を指差し何か怒鳴り始めた。
席についている客たちが恐怖に染まった表情で、ただ、見ていることしかできなかった。

/ ゚、。 /(接触したほうがいいな)

60 名前:90:2011/05/21(土) 21:27:44.05 ID:7m74Cvuw0
ダイオードは長く溜め息をつき、立ち上がった。

/ ゚、。 /「あー……ちょっといいかな?」

彼女の声に軍人たちが振り向いた。

/ ゚、。 /「あー……通じてるかな? 私の言葉、わかる?」

不慣れな現地の言葉を使い、話しかけてみるがどうにも通じていないようだった。
軍人は顔を真っ赤にしていて、そのまま大声で叫んだ。

(#^Д^)「Ah? Who are you!?」

激昂しているのか、彼は現地の言葉を使用せず普段使い慣れている母国の言葉を用い始めた。
ダイオードは目を輝かせる。イントネーションやボキャブラリーを駆使して、何とか接点を保とうじゃないか。

/ ゚、。 /「ん、そっちならわかりますよ。んん、よし、そっちで話してくださいね」

(#^Д^)「なんだよ、誰だよお前。この俺に何か用か?」

/ ゚、。 /「いや、何。ええと……私と一緒に食事してくれないかしら?」

ダイオードの言葉の後、静寂が一瞬食堂内に満ちた。
数秒後、対峙している軍人が「本当に?」と口に出した。彼と一緒にいた軍人たちも目を見開いている。

/ ゚、。 /「駄目ですか?」

(;^Д^)「いやっ……いや、そんなことないぜ」

/ ゚、。 /「そう、じゃあ、よろしくね。ほら、足をどけてくださいな。私、早く食事がしたいんですのよ」

68 名前:90:2011/05/21(土) 21:33:21.01 ID:7m74Cvuw0
ダイオードの言葉に素直に従う軍人を見て食堂内は唖然とし、
髭面と給仕係の少女はテーブルを起き上がらせてから掃除を始めた。
遠まわしに、給仕相手に侘びを入れるようダイオードが言うと、軍人は素直にも頭を下げた。
そのことにまたもや食堂内から音が消えた。

/ ゚、。 /「ねえ。貴方たち、名前は? 私はダイオードっていうの」

テーブルは四人がけで、軍人たちは三人いる。
騒いでいる軍人が一人で座っていたので、隣の空席に座り込んだ。

( ^Д^)「あ、ああ、俺はプギャーだ」

と、店主に狼藉を働いた軍人が言った。続いて対面の二人が自己紹介をする。

('A`)「俺はドクオ」

/ ,' 3「僕はスカルチノフ」

やせ細った軍人が無愛想に言って、細い目をした軍人が続けた。

会話をしていると、やがて料理が運ばれてきた。
テーブルの上に処狭しと並べられた料理の数に驚きながら、少しずつ彼らの警戒をほぐしていった。
食事中にも少しずつ会話を交わして情報を入手していこう。腕章を触りながら、とダイオードは心に決める。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/21(土) 21:35:38.77 ID:7m74Cvuw0
□ 五 【――TELL ME BABY――】


/ ゚、。 /「ねえ、あなたたちの仕事を見学させてもらうことってできないのかしら?」

目の前の料理をあらかた平らげてから、ダイオードはそうやって切り出した。

( ^Д^)「それは、できないと思うぜ。規則がかなり厳しいからな。
      そもそも、俺たちの仕事すら企業秘密なんだ」

ダイオードは胸中で舌打ちをする。仕事内容すら聞き出せないのなら、潜入のしようがないじゃない。
指先で机を二回叩いてから、口を開く。横を向いたまま、プギャーへと続いて話かけた。

/ ゚、。 /「不思議なんだけど、どうして銃器を手にしているの? 湖の件について調べてるんでしょう?
      どうして、学者じゃなくどうして軍人である、あなたたちがここに派遣されたの?」

('A`)「だから、言えないって。何度も聞くなよ」

正面から声が飛んできた。振り向くとドクオがダイオードをじいと見つめていた。
相手の目を真っ直ぐ見る、幼子のような動作であったが、
それが意思の固さと拒絶の反応であることに彼女は悟った。
冷水を浴びせられたかのように身体が冷え、思考が止まる。

/ ,' 3「本当のところは僕たちもよく知らないんだよね。下っ端だからさ。
    今日も上官に怒鳴られちゃってさ。困ったよ」

剣呑になった空気を察したのか、スカルチノフが笑い混じりにそう言った。

73 名前:90:2011/05/21(土) 21:37:09.07 ID:7m74Cvuw0
ダイオードは食卓に着く前のことを思い返す。
給仕係をからかい、店主らしき男を殴り飛ばしたプギャーのことを。
軽薄で考えが浅そうと判断して近寄ったのだが、やはり軍人であり、
取り巻きもいることから、そう簡単にはいかないようであった。

/ ゚、。 /「なるほど。わかったわ。どうもありがとう」

自分の分の代金を机に置いて立ち上がったダイオードの腕をプギャーが掴んだ。

/ ゚、。;/(くっ――質問しすぎたか……?)

彼女が怪訝そうに首を回すとプギャーはポケットから紙を取り出し、ペンで何かを書き込んだ。

( ^Д^)「俺の泊まってるホテルの名前と部屋番号だ」

/ ゚、。 /(……)

( ^Д^)「夜に寂しくなったらいつでもおいで」

/ ゚、。*/「……ふふ。今夜、窺うかもしれないわ。そうね……私が訪れたらノックを四回するわ。
       とっておきのサービスをしてあげますから、ノックの音が四回聞こえたら目隠ししてからドアを開けてくださいね。
       そして、その場でむちゃくちゃにして欲しいの。どんなに抵抗しても、あなたの好きにしていいわよ。
       ただし、決して声はださないでくださいましね。私、一度、そういうプレイしてみたくて」

( ^Д^)「こりゃあとんでもない変態さんだな。ああいいぜ、期待してるからな」

紙を破り捨てそうな衝動に駆られたが、何であるにせよ情報は多いほうがいい。
精一杯平生を装い、ダイオードはその場を後にした。紙はポケットにねじ込んでおいた。

76 名前:90:2011/05/21(土) 21:39:05.28 ID:7m74Cvuw0
投下中は中断したらいけないんだっけ?
けど気になるので一言

パクリじゃないよ

78 名前:90:2011/05/21(土) 21:39:50.14 ID:7m74Cvuw0
 □ 六【――争いを前に辞書を片手に――】

ダイオードが湖へと続く道を歩いているとすぐに軍人に止められた。
食堂での三人の反応からして、ジャーナリストだということを告げると、
なおさら都合が悪くなるに違いないと判断した彼女は、自分はただの観光者だと言い、
この先に何があるのかと尋ねてみた。

だが「湖」との答えすら得られずひたすら、

「帰れ。近寄るな」

の一点張りであった。仕方なく、彼女はその場を後にする。

湖を見下ろせるという丘も同じであった。
丘の頂点はおろか、すこし傾斜がかかりはじめた場所あたりからもうすでに、柵で包囲されていた。
現地の言葉と、軍人らの母国語で「立入禁止」と赤色で大きく書かれていた。

柵の高さはダイオードの身長ほどであり、乗り越えようと思えば乗り越えられたが、
柵の内側や近辺に見張りの軍人はいるのは火を見るより明らかであったので、ここでも踵を返すこととなる。

/ ゚、。 /(あまりにも厳重すぎやしないか?)

彼女は一度街へと戻り、考えを整理しようと努めた。
バッグから紙とメモを取り出し、自らが知り得る地理を書き込む。地図と、自分で歩き回った知識の総集だ。

81 名前:90:2011/05/21(土) 21:40:43.31 ID:7m74Cvuw0
大きな外周の湖があり、その東に村がある。
村の南半分が怪異を調べに訪れた者たちの懐で栄えた、食堂などのある繁華街だ。
泊まる予定の宿もそこにあり、バス亭も賑わう地点から少しだけ離れた場所にある。
北半分にはバラック小屋がぽつりぽつりとあるだけで、面積のほとんどは土と草で覆われており人通りも少ない。
最奥に高い丘があることも人が寄り付かない原因の一つだろう。
広い空き地を利用して遊ぶ子供の影すら見なかった。急速な成長に置いていかれた地であるとも言えた。

/ ゚、。 /(酷い軍閥ね)

またもや軍人を中心に騒動が起きようとしている様子を見て、ダイオードは嘆息した。
今度の舞台は果物店だった。店頭に並んだ果実を掴み上げ、代金も払わずに齧りついたというのが今度の設定らしい。
ああも過剰に暴力をちらつかされていては村人は恭順するほかないな、と、声を荒げる軍人を見て思う。
経済的に豊かになったのは宜しいが、精神的に荒んでいくのは間違いない。
そのうちに村内でも抗争が起きるのではないか。
彼女がそう思っていた矢先、一際大きな声が響いた。
軍人のものではない、若く、力強い声だった。

(#,,゚Д゚)「お前らいい加減にしろよ! フザけてんじゃねえぞ! 金を払えよ!」

店の奥から上半身に何も着ていない若者が出てきた。他の住民よりも肌の色がいくらか薄い。
小麦色の肌、短く切り揃えられた髪、均整のとれた肉体。
背格好から判断できる年齢は少年と青年の中間地点と言ったところであった。
軍人に対して何一つ臆することなく、反抗の言葉を並べ立てる。

ダイオードは立ち上がり、騒動を中心にして輪を作っている村民の一人へと声をかけた。
バッグから辞書を取り出しておく。

/ ゚、。 /「チョットイイデスカ?」

84 名前:90:2011/05/21(土) 21:43:34.98 ID:7m74Cvuw0
片言になっていることは承知であったが問題はない。伝わればいい。
聞き取ることだけはある程度できるようにしていたし、
わからなかったりしたら「すいません、お願いします」と辞書で示してもらうよう促せば問題はなかった。

(;><)「はい?」

喧騒に心配を抱いている表情のまま、ダイオードへと向き直った。

/ ゚、。;/「ええと……アノ……」

次の言葉がわからず、辞書を捲る。
目的の単語を見つけると、相手へと辞書を開き、指で押さえた。それを繰り返して文章を作る。

/ ゚、。;/「"あの 男 いつも こんなこと する?"」

(;><)「ああ……やつらはいつもなんです。食堂で料理を床に捨てたり、
      宿の女の子を無理矢理襲ったり……まるで、ケダモノそのものなんです……」

その返答にダイオードは首を横に振った。この否定を示す動作は全世界共通なのだろうか。
なんて考えながら、再び辞書を捲る。

/ ゚、。 /「"果物店 から でてきた ほうの 男"」

一度のやりとりに時間がかかりすぎるな、とダイオードは勉強することを心に決めた。
喧騒は今、互いに暴言を投げかけている場面であった。
一歩も引かない若者に対して、尊敬の眼差しと心配の眼差しと、
ここで溜められたフラストレーションが自分に向けられたらどうするんだ、という敵視の眼差しが、
ごく少量ではあるが向けられていた。

85 名前:90:2011/05/21(土) 21:44:59.02 ID:7m74Cvuw0
( ><)「ん? ああ。ギコのことですか。そうですね。
      その場にギコがいるときに、ああいうことをされたらいつも出てくるんです。
      宿だろうがバス亭だろうが道端だろうが、今みたいになるんですよ。まあ、台風みたいなものですね」

と言葉を切ってから、続けた。

( ><)「今は、横暴な軍人が村中にいるでしょう?
      だから、大体いつもどこかでギコは言い争いをしてるんです」

ダイオードは頷いた。それからその村民は、今気がついたという口調で呟きを続いた。

( ><)「……あれ? そういえば、最近こんな言い争いを見なかったんです……。
      騒ぎはいつも通り起こっていたのに……。ギコがいない場所で起こっていただけですかね……?」

ダイオードは礼を言うと、人ごみを掻き分けて騒動の中へと歩き始めた。暴言の応酬の果ては、決まって暴
力が待っている。そうなるともう、女の身である自分では止められないと判断したのだ。会話した村民が何か
言うのが聞こえたが、ダイオードの耳はその言葉を聞き取らなかった。

87 名前:90:2011/05/21(土) 21:46:18.56 ID:7m74Cvuw0
 □ 七 【――ギコ――】

 近寄ると、ギコと呼ばれていた若者の身体に傷が多いことに気がついた。
頬が腫れていて、肌の色からわかり辛いが青痣をいくつか身体に作っている。
真っ赤な顔をした軍人がこちらを向いた。ギコもダイオードへと向き直る。生還な顔つきをしていた。

/ ゚、。 /「ちょっといいですか?」

口にする言葉は、軍人の母国語だ。ギコは眉を寄せてダイオードを睨む。意外に身体が大きなことに圧倒さ
れたが、彼に背中を向けて軍人へと向けて言葉を続けた。

/ ゚、。 /「さっき湖付近に集合、という召集がかかっていましたが、こんなところにいて大丈夫ですか?」

そう言うと軍人は一瞬硬直したが、お構いなしに噛み付いてきた。

(#´ー`)「なんだよお前。邪魔すんじゃねえ! それに召集時間まではまだ時間がある! 嘘をつくな!」

/ ゚、。;/(失敗か)

ダイオードは小さく息を吐いた。失敗したので、別の手段へと思考を切り替えて、歩み寄る。

(;´ー`)「近寄るな! 来るな! なんだお前!」

軍人の根は小心者のようで、周囲から恐れられる存在である自分に向けて、大胆不敵に歩み寄ってくる女の
存在が信じられなかった。慌てふためく軍人の前で、ダイオードはポケットから一枚の紙を取り出した。

/ ゚、。*/「これ、私の部屋番号と電話番号ですわ。
       あなたが気に入ったので、良かったら今日の夜お越しくださいな。色々としてみたいことがありますの」

88 名前:90:2011/05/21(土) 21:47:52.48 ID:7m74Cvuw0
状況が理解できず目を見開いた軍人にもう一度「お願いします」と紙を突き出した。
やがて軍人はダイオードを上から下まで値踏みする視線を向け、舌で唇を舐めた。

( ´ー`)「仕方ないな。お前に免じてこの場は許しておいてやる。
      で、俺がそっちに行ったら……わかってるだろうな?」

/ ゚、。*/「ええ、もちろん」

( ´ー`)「ならいいんだよ。忘れるなよ」

/ ゚、。*/「ただし、条件がありますの」

( ´ー`)「何だ、言ってみろ」

/ ゚、。*/「必ず、ノックを四回してくださいな。そして、その後に目隠しをしてください。
       合図はノックを四回、そして目隠しですよ。わたしの方からとっておきのサービスをしてあげますわ。
       あなたはわたしにされるがままです。ホテルのみんなに聞こえたら恥ずかしいから声はださないでくださいね。
       きっちり護って下さらないと、私、ドアを開けませんから。しっかりお願いしますね」

( ´ー`)「了解した」

93 名前:90:2011/05/21(土) 21:49:27.18 ID:7m74Cvuw0
軍人が背を向けて歩いていく。人ごみが彼の通路を作った。
そのまましばらく遠くなっていく背中を見ていたが、ある瞬間にそれらは全てダイオードに向けられた。
歓声が上がり、輪が小さくなって彼女に口々に言葉が投げかけられた。
ほとんどが賞賛の類であり、相手の軍人も気を良くしたらしい、と、
誰もが理解していたので敵視されることもなく、彼女は一躍人気者になった。

(,,゚Д゚)「悪い。みんな、ちょっとどいてくれ」

ダイオードを胴上げせんばかりに熱狂する村民を掻き分けて、ギコがダイオードの目の前に立った。

(,,゚Д゚)「なんなんだ、アンタは一体」

予期せぬ乱入者に訝しむのは当然だ。
ダイオードとギコの背丈は頭一つほども違うので、
上級生が揉め事を起こした下級生を叱りつけているかのような印象を受けた。

落ち着き払ったダイオードはゆっくりとバッグへと手を入れ、辞書を取り出した。

95 名前:90:2011/05/21(土) 21:51:29.63 ID:7m74Cvuw0
 □ 八【――質問――】

/ ゚、。 /「ちょっと君にに聞きたいことがあるのよ」

(,,゚Д゚)「はあ……」

服を着せて、ギコを宿に招待した。理由はいくつかある。
まず初めに、対話に時間がかかりすぎること。
相手にも自分にもストレスがかかり、長く会話することが億劫になってくる。
次に、街中で話して誰かに聞かれることを避けたかった。
最後に、昼食がホットドッグじみたものだけでは足らず、
宿で出る夕食までは時間があったため、道中の露店で食べ物を購入した。
それを落ち着いて食べる場所を確保したかったのだ。

以上が、ダイオードがギコから情報を聞き出す以前に整えるべき状態だった。

(,,゚Д゚)「というか、そんなに食べるんですか……?」

/ ゚、。 /「今日は歩いたからね。まあ、仕方ないわ。仕方ない。
      異国の料理って口に合わないと思っていたのだけど、意外といけるわね」

先述の一つ目は通訳者であるナビゲーターが宿に帰っていることが前提であったが、彼は言われた通りに宿に戻っていた。
反して、二つ目は彼がいることによって通過できないが、構わず実行するつもりだった。
三つ目はナビゲーターの存在に関係がない。
ナビゲーターを介した会話も少々の時間がかかったが、辞書よりは遥かに効率は良かった。

/ ゚、。 /「一つ食べる?」

97 名前:90:2011/05/21(土) 21:52:55.45 ID:7m74Cvuw0
袋一杯に詰めた食べ物で、
ダイオードとギコの両手が塞がるほどにまで買い込んだそれらのうちの一つを取り出して、向ける。
食べ物は温かく、食欲をそそる香りがした。

(,,゚Д゚)「いや、要らないです。果物屋でご馳走になってきたんで」

/ ゚、。 /「そう。じゃあ、ちょっとだけ食べるから。ちょっとごめんなさいね」

串に刺さっている何かの肉をほうばると、ダイオードはあっと言う間に平らげてしまった。
その間、ナビゲーターとギコが何かを話し合っている。内容はただの世間話であった。

どうしてダイオードと知り合ったのか、などのことだ。
そして、会話の内容からギコが十九歳であることが判明した。
この国での成人の判定はいくつか知らなかったが、もう子供扱いされる年齢ではないことは確かであった。

/ ゚、。 /「本題に入るわ。ナビゲーターさんとギコ君。ここでのことは他言無用でお願いね」

どうして彼女がそんなことに釘を刺してから会話を始めるのか、不可解に思いながらも二人は頷いた。

/ ゚、。 /「ギコ君、あなたはいつも街の軍人たちを言い争い……。
       というか、傷を見る限り殴り合いの喧嘩もしてるのかしら?」

(,,゚Д゚)「はい。……だって、あいつら酷いんですよあの時も……」

と、話を続けようとする彼をダイオードは止めた。
今聞きたいことはそんなことではない。

/ ゚、。 /「喧嘩がない日はある?」

(,,゚Д゚)「そりゃあありますよ。そんなに俺は血気盛んじゃないです」

103 名前:90:2011/05/21(土) 21:55:19.19 ID:7m74Cvuw0
/ ゚、。 /「それじゃあ聞くわ。喧嘩がない日、あなたはどこにいるの?」

ギコの身体が竦み、視線を下に落とした。
ダイオードは彼がなんらかの情報を持っていると確信を得たが、
素直に答えてくれる様子がないので、さらに続ける。

/ ゚、。 /「村中に軍人はいる。軍人と出会うと貴方は喧嘩をする。
       喧嘩をしていないとき、あなたは村には居ない……ギコ君。
       あなた、喧嘩がない日は、どこで何をしているの?」

質問のはずが、いつの間にか不穏な空気となり、詰問へと変わっている。
ナビゲーターが通訳することを躊躇いがちになっていた。
ギコは何も言わない。

/ ゚、。 /「ここでのことは他言無用だと言っているし……。
       もし誰かが軍人たちに密告してもきっと信じてもらえないだろうから、大丈夫よ。
       それに、私はあなたの味方なの。安心して。大丈夫よ」

それでも頑なに口を閉ざしている様子から握っている情報は、小さいものではないと推測できた。
入手すれば大きな一歩を踏み出せるかもしれないと思うが、その足が重く、動かない。
まだ信用されていないのだろうか。それは当然だ。
出会ったばかりの見知らぬ異国のものに、何のメリットもなく、誰が、自分の秘密を話すものか。

/ ゚、。 /(別の誰かから、ギコ君の秘密を聞く……?
       いや、そもそも誰かに話しているのかしら?)

109 名前:90:2011/05/21(土) 21:57:27.25 ID:7m74Cvuw0
別の手段をとろうかとも考えるが特に何も浮かばないので、
ダイオードは強引に押し進むことにする。彼女に今切れるカードは、これしかないのだ。
はっきりとした確信を持てない言葉の刀に、刃がついていることを信じて、振るう。

/ ゚、。 /「ギコ君。貴方、湖のことについて調べているわね」

<;ヽ`∀´>「!」

通訳する前にナビゲーターがダイオードを見た。
何かを言う前に、拒否を許さない口調で、

/ ゚、。 /「伝えて」

と言うと、彼は心ならずも伝えた。
これは自分の言葉じゃないんです。そうやって誰かに許しを請うかのような表情だった。
言葉を理解したギコの肩が一瞬震えて、

(;,,゚Д゚)「どうして……?」

見開かれた目でダイオードを見る。

ギコは困惑していた。

(;,,゚Д゚)(どうして今日始めて出会ったこの人に、にここまで自分がひたかくしにしていたことが露見したんだ?
     どうする……? 話してみるか? だめだ、軍人に伝えられたら、怪しまれてしまう。
     ただでさえアイツらに嫌われているのに、そうなると、殺されてしまうかもしれない。
     どうする。逆にこの女のことを密告してしまうか。『この人、湖について調べています』、と……。
     俺の言うことを信じてくれるか。だめだ。俺も調査できなくなるかも……どうする。
     どうすればいい……? ああ、くそっ。どうして……)

111 名前:90:2011/05/21(土) 21:58:38.30 ID:7m74Cvuw0
ダイオードは辞書を手に取った。
とあるページを開いて軽く頷くと、逡巡しているギコに向けて自分の言葉で言った。

/ ゚、。 /「話して。そうしないと、私、考えていること、全部、軍人に言うわ」

(;,,゚Д゚)「……絶対に、誰にも言わないで下さいよ」

震えた声で、ギコがダイオードを見上げる。

/ ゚、。 /「大丈夫よ」

自分の口でギコに言ってから、言語を変えてナビゲーターへも言葉を続けた。

/ ゚、。 /「ねえ? ナビゲーターさんも大丈夫ですよね?
      他言すれば、私たち全員の身が危ないんですから、お願いしますよ。
      自分の一言で他人が死ぬのは嫌でしょう?」

<;ヽ`∀´>「ワカッタ。わかったヨ。話さない。話さないヨ」

/ ゚、。 /「はい。じゃあ、ギコ君。どうぞ」

(;,,゚Д゚)「……」

促された彼は、一度唾を飲み込んで、大きく息を吸い込んでから話を始めた。
ナビゲーターは息をついた。さあ、長話だ。骨が折れるぞ。

113 名前:90:2011/05/21(土) 22:00:23.80 ID:7m74Cvuw0
 □ 九 【――ギコの発見――】

村があり、西側に村と同じくらいの大きさを誇る湖がある。
現在、村側からは湖への道は封鎖されている。
今や、丘から見下ろすことすらできない。

ならば、村の反対側――湖の向こう側――には何がある?
地図で調べるとそこには村も何も無かった。ならば、そこへいくと湖への道があるに違いない。
どうしてこんな簡単なことに気がつかなかったのか。
自分の意識の低さに辟易したが、すぐさま行動に移そうと決意した。

バスは村から空港へと繋がった一本だけしか出ていない。
どうするか、と考えた挙句思いついたのは、やはり、自分の足で行く他ないということだ。
村を出発点として、ぐるりと一周――かつてあった湖の淵を回ろう――しようと考えて、

(,,゚Д゚)「そうだ別に反対側まで行かずとも、左回りに歩いて、
     外周の四分の一である地点(村から見れば北西の方角)から入ればいいじゃないか」

更に思いついた。
最終的には、

(,,゚Д゚)「左回りに柵伝いで歩いて行き、柵が途切れた場所から湖の場所へと入ればいいんじゃないか」

と、簡略化された。何事もシンプルが一番だ。

村とあまり変わらない大きさの湖の跡地だ。
朝から出ればきっと、余裕を持って夜には帰って来られるだろう。

116 名前:90:2011/05/21(土) 22:01:58.25 ID:7m74Cvuw0
弁当と水筒だけを用意すると、ギコは歩き始めた。
柵に近い距離で歩いていると軍人たちに警戒されてしまうので、出来る限り離れて歩くことにした。
暑さに慣れているとはいえ、熱射は激しく、ペース配分も考えずに水を飲んでいるとすぐに水筒の中は空になった。
しまったと思うがもう遅い。前も後ろも、ひび割れて乾いた大地が広がっているだけである。
横を見れば、遠くに柵が見えているが近寄れはしない。行くも地獄帰るも地獄。
ならば前のめりに死んでやろうと邁進を続けた。

やがて腹が空いてきたが弁当を食べようにも飲料がない。
喉に詰めたりでもしたら死んでしまう。
やはり戻って水分を補給したほうがよかったか。などと後悔するが、やはり、遅すぎた。

すると、前方に人の群れが見えた。
小屋がいくつか集まっていて、大きなテーブルの周りで人間たちがなにやら話し合っていた。
脱水症状と空腹から来る、朦朧とした意識状態が見せた幻覚ではないかと思ったが、
相手側がこちらの存在に気がつき、保護してくれたことから実体のある存在であることに間違いはなかった。

テーブルに座らされて水分を補給する。
続いて持ってきた弁当を食べ終わると彼らはギコへと質問をした。

「どうしてこんなところにいるんだ?」

彼らの格好は自分の村にいる軍人とまったく同じであったが乱暴な態度を働いたりすることはなかった。
その差異のためか好印象を抱き、素直に話してしまった。

(,,゚Д゚)「探検をしていたんです。俺一人でどこまでいけるかっていう……」

119 名前:90:2011/05/21(土) 22:02:56.84 ID:7m74Cvuw0
ギコが真面目にそういうと、集まった軍人たちが大きく笑った。
「自分探しの旅か。若いねえ」と、囃す声も聞こえる。彼は気恥ずかしくなってしまい、二度と話すものかと決意した。
そしてそれからしばらく会話をしたが、自分の目的に繋がる、有益な情報は得られなかった。
軍人たちは場所に関係なく、どこでも同じように、秘密を部外者に漏らすことは固く禁じられているようだった。

「もう遅くなるから送るよ」

軍人の一人の言葉に甘えて、小屋の裏に並んでいたトラックに乗せてもらい、帰還した。

その夜、ギコは泥のように眠った。

そして次の日、ギコは大きめの水筒を持って、昨日とは反対方向へと向けて歩き始めた。
昨日の雑談のうちで彼が言った、

「こっちの方向にしてよかったな。今は暇だから構ってやれるが、反対側だと忙しくて放って置かれていたぞ」

との言葉に対して軍人の一人が、ギコにこう言った。

「湖の真ん中を中心として、そこから南側に坊やの住む村がある。
 んで、ここは西側だ。反対側の東側にも、村の反対側にもここと同じような拠点があるんだよ」

その拠点になにか特別なものがあるとは思わなかったが、
昨日知った旅の高揚に背中を押されて「とりあえず行ってみるか」という気になっていた。
きっと、自分の目的に繋がるものではないが、そもそも目的もない旅だ。問題ないだろう。

125 名前:90:2011/05/21(土) 22:06:39.32 ID:7m74Cvuw0
飲料の配分を考えて、昨日と同じように歩き出す。
喉が渇くが我慢する。どうしても補給したいときにだけ、口に含むことにした。

そうやって歩いているうちに、やがて軍人たちの拠点が見えてきた。

ここにも同じように小屋やトラックが並んでいた。
ギコが遠くからそれを確認したと同時に、トラックが拠点からどこかへと走行していった。
荷台が大きく膨れ上がっており、緑色のシートが被せられていた。
丸く盛り上がってはいたが、所々がシートを突き破らんばかりに、でこぼこに盛り上がっている。
複雑な形状であるのか、あるいは色々なものを運んでいるのか、気になったが中身を確認することはできなかった。

昨日と同じように(ただし、遭難したふりをして)保護してもらった。
反対側で聞いていたのとは裏腹に、優しく扱われた。
人間というものは、どうやら、虐げる相手がいる場所で、恐ろしく乱暴になるらしい。

ギコはトラックのシートについて疑問に思ったが、質問するのはやめておいた。
自分の村ではやっていない出来事なのだから、人目につかないように行われていることだと判断したのだ。

夕方、村に送り届けられたギコは繁華街で小さなスコップを購入し大きな袋を貰うと、自分の家へと帰った。
村の北半分にある、大きめのバラック小屋がギコの家だった。
両親は既に死去しており、一人暮らしだ。
住居だけはかつてのままなので、一人でいると家の広さを否が応でも認識してしまい、寂しさを覚えることもあった。
だから、人通りの多い繁華街に出向くことが多いのだ。だから、人の役に立ちたく思い、軍人に刃向かうのだ。

家の中の、使っていない部屋の床に穴を開けた。
土が露出し、その上からスコップを突き立てる。
土を掬い、袋に詰める。彼はそれを繰り返した。
土が袋にある程度溜まったら、軍人たちに見つからないようにして外に捨てに行く。
出来るだけ一部分に捨てず、均して捨てておいた。

129 名前:90:2011/05/21(土) 22:09:33.53 ID:7m74Cvuw0
ギコが地面を掘るに至った理由は、歩いたことから得たものだった。
村から北東の位置にある拠点で見た、トラックにかけられたシートのことだ。
トラックから零れ落ちんばかりにまでとるものなんて、ここにはない。
ましてや、枯渇した湖だ。ゴミや魚まで吸い込んだのだから、あるとすれば、現在は乾いたであろう土のみだ。

(,,゚Д゚)(土を持ち出す?
     土だけを確保しに、あれだけの人数を投入する? 厳重に警備して、人を寄せ付けない?)

そんなわけがない。だとすれば、何かがあるのだ。
空に? 地面に? 空ならば、村からも見えるだろう。なので、そんなことはない。だとすれば理由は一つだった。

(,,゚Д゚)(地面に、何かが埋まっている)

ギコは自分の家にまでその『何か』が埋まっているとは思わなかったが、
湖の近辺であるため、もしかしたらという感情が沸き起こり、居てもたってもいられなくなった心境からの行動だった。

日が経過し、穴は深くなっていく。
次第に使用していたスコップでは掘り進むことが困難になってきた頃、土や石ばかり掘り出していた状況に変化が起きた。
奇妙な石を発掘したのだ。
いつもと同じ、白や灰色のそこらにある石ではなく、真っ黒で光沢のある石を。
手のひら大のそれを袋に詰めることはせず、自分の部屋に隠すことにした。この件により、情熱にさらに拍車がかかった。

繁華街で大きなスコップを購入し、手袋を用意し、ロープと杭を用意して、袋の量も増やした。
一店舗で買い込むことはせず、土を捨てるときと同じようにした。

家の床の穴は大きくなり、深くなっていく。
いつしか、自分の身長を越えるほどにまで掘り進んでいた。
ロープを地面に打ち込んだ杭で固定して、重みに耐えられるかどうか確かめて、穴の底へと袋を持って降りる。
袋が土で満杯になると、袋の取ってにロープをくくりつける。
穴から先に自分が出て、それからロープを引っ張り袋を持ち上げた。そして、捨てに行く。

132 名前:90:2011/05/21(土) 22:12:10.26 ID:7m74Cvuw0
ギコの穴掘りは三ヶ月ほど後、不意に終わりが来た。
スコップが地面に突き刺さらなくなったのだ。
地層が固いことは何度かあったが、そんな問題ではない。

明らかに何かが埋まっている。
手で土を払いのけると、白く平らなものが見えた。どこまで続いているのかとさらに払いのける。
すると、彼が掘った穴の底全体に広がっていた。

深く傷ついた肉体が見せる、骨のように、顔を覗かせていた。

(,,゚Д゚)「……」

恐らく、もっともっと広がっていることは間違いないだろう。
ギコは震えた。
とてつもなく巨大な何かが、俺たちの住んでいる村の地下に埋まっている。

軍人たちの目的はこれだ、と確信した。

134 名前:90:2011/05/21(土) 22:14:14.49 ID:7m74Cvuw0
 □ 十 【――証言に独断と偏見を加えて仮定を作り上げて、行動する――】

以上が、ギコの話にダイオードの考察を含めた結果になる。

彼の記憶が、彼女の独断と偏見によって、一つの真実を導き出した。

/ ゚、。 /(きっと、ホライゾンさんは、この件に関わって亡くなった)

上司の腕章とカメラがどこで発見されたか詳しいことはわからなかったが、間違いなく湖跡の近辺だろう。
ホライゾンさんのことだからこれだけ巨大な秘密のにおいを逃すはずがない。
そして、においの正体を暴こうとするに決まっている。
もしかすると、強行突破を行って軍人に殺されたのかもしれない、と思うが、
ホライゾンは一方で聡明であったためそれは考え辛かった。

/ ゚、。 /(密かに行っていた計画が露呈して、射殺された?)

だとすればあり得るな、とダイオードは唇を噛んだ。だとすると、密告者が居たはずだ。
軍人たちと通じている人間を、ホライゾンさんは信用してしまったのだ。

/ ゚、。 /「まだ穴は掘っているの?」

(,,゚Д゚)「いや、どんなことをしても白色の床に穴が開かないから諦めたよ」

/ ゚、。 /「ふうん……」

<;ヽ`∀´>「……」

ナビゲーターは自分の認識の範疇を大きく飛び越えたこの事態を、この二人の空想であると決め付けていた。
もし本当であるとするならば、関わりたくはない。
それに、纏っている空気から察するに、この二人は間違いなく潜入を試みるだろう。

135 名前:90:2011/05/21(土) 22:17:57.78 ID:7m74Cvuw0
直後、ダイオードが口を開く。

/ ゚、。 /「湖のあった場所へ入りたいわね。というか、入らなきゃどうにも話が進まないわ」

(,,゚Д゚)「そうやって俺も思いましたけど、どこにも隙なんてありませんよ。
     四方は拠点がありますし、拠点がない場所は多く人員を割かれて、配置されています。
     それに、何かあるとしても、そこには沢山の軍人がいることは明らかですよ」

/ ゚、。 /「……」

無言で、ダイオードは袋から新しい食べ物を取り出して、

/ ゚、。 /「一つ食べる?」

とギコに聞いた。

(,,゚Д゚)「はい」

その言葉を聞くと、食料がたくさん詰まった一つの袋を手渡した。

/ ゚、。 /「買っててなんだけど、こんなには食べれないわ。
      缶詰もあるし、日持ちしそうなものも多いし、何日かに分けて食べましょう」

138 名前:90:2011/05/21(土) 22:19:11.76 ID:7m74Cvuw0
 □ 十一 【――嵐――】

ダイオードが滞在を初めて三日目。
その日は朝から酷い嵐だった。横殴りの風が窓を揺らし、しのつく雨が屋根を叩く。
窓の外では、葉に風を受けてしなった木が見える。外出しているものは、誰もいない。

/ ゚、。 /(ギコ君の家は大丈夫かしら……?
       北半分の地区はきちんと建築された家じゃなかったはずだけど……)

彼女は考えるが、この天候の中外を出歩くのは頂けない。
大人しく辞書と睨めっこをしよう、と本に目を落とし、十分が経過した頃、宿の主から名前を呼ばれた。

「ダイオードさん。お客様ですよー」

間延びした声が聞こえ、
辞書を置いて行ってみるとそこにはギコが荷物を持ち、ずぶ濡れの格好で立っていた。
宿の主からバスタオルを貰い身体を拭かせた。

/ ゚、。 /「着替えはあるの?」

(,,゚Д゚)「あります」

141 名前:90:2011/05/21(土) 22:21:09.18 ID:7m74Cvuw0
宿の主に聞いてみると、風呂の湯は張ってあるという。
朝風呂という習慣はこの国にも存在しているらしい。
通常では宿帳に名前を書いていない人物では入浴などさせてもらえないだろうが、
彼の普段の人柄が幸いして、入浴を許可された。

/ ゚、。 /「上がったら私の部屋に来なさい。聞きたいことがあるわ」

ギコが頷いたのを確認してダイオードは廊下を進み、ナビゲーターが住んでいる部屋へと歩いていった。
道中、考えを纏めて、

/ ゚、。 /「朝から忙しいな」

と、一人呟いた。

144 名前:90:2011/05/21(土) 22:23:05.93 ID:7m74Cvuw0
宿の主に聞いてみると、風呂の湯は張ってあるという。
朝風呂という習慣はこの国にも存在しているらしい。
通常では宿帳に名前を書いていない人物では入浴などさせてもらえないだろうが、
彼の普段の人柄が幸いして、入浴を許可された。

/ ゚、。 /「上がったら私の部屋に来なさい。聞きたいことがあるわ」

ギコが頷いたのを確認してダイオードは廊下を進み、ナビゲーターが住んでいる部屋へと歩いていった。

道中、考えを纏めて、

/ ゚、。 /「朝から忙しいな」

と、一人呟いた。

145 名前:90:2011/05/21(土) 22:23:58.03 ID:7m74Cvuw0
 □ 十二【――嵐が運んできたもの――】

風呂上りのギコがバスタオルで頭を拭いていた。
湿気が充満しているダイオードの部屋に水滴が飛ぶ。
ナビゲーターは二人の間に座っていた。
彼女の服と、彼の服を部屋干ししているので、部屋がとても狭く感じられた。

ダイオードは手を叩き、注目を促してから話を始めた。

/ ゚、。 /「家はどうなったの?」

(,,゚Д゚)「壊れました。壁が倒れてきて、死ぬかと思いました」

/ ゚、。 /「その持ってきた荷物には何が入っているの?」

(,,゚Д゚)「あ、そうです。そうです。掘り出した石があるって言いましたよね」

ナップサックのような、三つの布袋を彼は持ってきていた。
そのうちの一つを引き寄せて入り口から手を突っ込む。

(,,゚Д゚)「これです」

黒色の石を取り出して、ダイオードへと手渡した。
ダイオードが受け取ると滑らかな感覚が指に伝う。光沢があり、自分の顔が映りこんでいた。

/ ゚、。 /(なるほど。確かに異質だわ。こんなものは村の中にはないもの)

続けて、ナビゲーターに手渡そうとしたが、彼は拒否した。
彼は今でもまだ、自分は無関係だと念じている。「私は関わっていないからな」そう、表情に書かれていた。
ダイオードはギコに石を返却して話を続けた。

163 名前:90:2011/05/21(土) 22:37:05.73 ID:7m74Cvuw0
突如、静寂は破られた。
この嵐の中でも耳を塞ぎたくなるような、拡声器による不協和音を含んだ大声が、村中に響き渡った。

『我々の部隊はとある任務についているが、人手が足りない!
 今日増援が来る予定であったがこの嵐のため中止になった!
 よってこの村の中から志願者を募集する! 温かい衣服と温かい食事の配給を約束する! さらに給与を……!』

給与の額をダイオードの国の通貨に換算すると、約五万円だった。
金払いや待遇が良すぎることから、仕事に伴う労働内容が過酷な作業であることが容易に想像できたが、
ダイオードとギコにとっては垂涎の的だった。二人は立ち上がって準備を整える。
食料、水筒、着替え、辞書、懐中電灯などをギコの布袋に詰め、二人は一袋ずつ持ち、部屋を飛び出した。

『現在我々はトラックに乗って村中を回っている。志願者は我々に声をかけろ! 繰り返す! 我々の部隊は……』

宿の前を通りがかったトラックに二人で声をかけた。
すると毛布とタオルを手渡されて、何か話されたが、雨と風の音で聞き取れなかった。

/ ゚、。 /(これで暖をとれってこと?)

ナビゲーターを置いてけぼりにしたため、今後ギコ君とのコミュニケーションはどうしようか、ダイオードが思う。

既に村人が三人ほど乗り込んでおり、
さらに見張りの軍人が二人ほどいたので、荷台に乗り込むのは中々に窮屈だった。

冷えこんでいく気候とは相反して、二人の心の中で、煌々と炎が燃え上がっていた。

164 名前:90:2011/05/21(土) 22:38:43.86 ID:7m74Cvuw0
 □ 十三【――湖跡――】

今、柵を越えた。
ギコが目を輝かせて首を激しく振り、周囲の様子を見ていた。
ダイオードは水が飛ぶので止めて欲しいと思いつつも、
動悸が激しくなっている自分へ落ち着くよう言い聞かせた。

トラックが止まった。軍人たちが降りる。
続いて命令されて、村民たちも降りた。
ついてこい、と指示した軍人の後に続く。足を踏み出すたびに泥が跳ねる。

ダイオードは歩きながら目を走らせた。
銃を担いだ軍人たちが数人で自分たちを取り囲んでおり、脱走はもはや不可能であった。
雨の勢いから遠方が見えなくなっているが、肉眼で消失できる距離まで走るのは不可能だろう。
逃亡を図った場合、撃ち殺されるに違いない。

迷彩服を支給されたが、女性用のものが無い。
文句をつけたが、無いものは無いと断言されてしまい、余儀なく男性用を着ることにした。

( ・∀・)「その場で着替えろよ」

からかう口調に、笑い声を上げる軍人たちがいたが、

/ ゚、。 /「わかったわ」

彼女はそれらを全く意に関せず服を脱ぎ、迷彩服へと着替え始めた。

166 名前:90:2011/05/21(土) 22:39:47.91 ID:7m74Cvuw0
昼前、ということで昼食が運ばれてきた。
温かいスープとパンであり、おかわりも自由であるとのことでダイオードは遠慮せずに食べた。
その場のギコ以外の人間が目を丸くし、厨房のほうから手で×印を作った男が現れ、
特別に彼女だけストップがかけられることとなる。
そんな、とダイオードは落胆し、最後のスープを少しずつ飲んだ。

( ・∀・)「これから、説明をする」

軍人の指示で一列に並ばされて、説明を受けることになった。

( ・∀・)「お前たちはこれから湖跡の中に入り、とある場所へと入る。
      その中に積み上げられたものがあり、それを"地上"の我々へと手渡してもらえばいい。
      何、簡単な仕事だ」

ギコが両手を握り締めて頷いている。
口調が早く、雨音で聞き取りづらかったため、ダイオードは理解した確証がとれなかった。
近くの軍人に彼らの言葉で話しかけ、内容を聞く。それから、心の中で拳を突き上げた。

/ ゚、。 /(間違いないわ。地下に、何かあるのね)

いくつかの気になる事を、軍人へと問いかけた。

/ ゚、。 /「村から来たのは私たち五人だけなんですか?」

( ・∀・)「いや、複数台のトラックで村を回っていた。他のトラックも数人ずつ拾えたらしい」

/ ゚、。 /「なるほど。作業内容って辛くはないんですか? 私体力には自信が無くて……」

( ・∀・)「あれだけ食っておいて、よく言うぜ。だが、まあ、問題ないさ。少々疲れる程度だよ」

171 名前:90:2011/05/21(土) 22:42:57.91 ID:7m74Cvuw0
/ ゚、。 /「それなら、どうして私たちを呼び集めたんですか? たくさんの食べ物とお金を払ってまで」

ダイオードの言葉に、軍人の言葉が止まる。
周囲の軍人が彼女を監視するかのように、視線を集中させた。

( ・∀・)「……怠慢さ。
      そう、怠慢だ。俺たちはこの嵐の中仕事をしたくないんだよ。
      金は本国に言えばどうとでもなるんだ」

/ ゚、。 /「なるほど。……なるほど。
      よくわかりました。それじゃあ、お仕事頑張ってきますね」

( ・∀・)「行ってらっしゃい」

声の後に、周囲の軍人が敬礼する。
村民たちはやや照れくさそうにしながらも、やる気を漲らせて、先導する軍人の後を追った。

173 名前:90:2011/05/21(土) 22:45:35.63 ID:7m74Cvuw0
 □ 十四 【――越境・辺境・桃源郷――】

入り口付近で村人たちが集合した。全部で十五人程度であった。
軍人を含めて、ダイオードを除くこの場の全員が男であり、先ほどから下卑た視線を彼女は感じている。

もう一度仕事内容の説明をされる。
最後に、

「理解したか?」

軍人が呼びかけ、村人たちの大きな返事が終わる。そして、作業が始まった。


目の前で口を開けている入り口に、一人ずつ入り込んでいった。
自然によって作られたのか、人為的に作られたのか……不恰好な階段を、足を滑らさないよう下っていく。
地中へと潜っていくにつれて地上の光が届かなくなっていく……やがて、階段が終わり、地に足をつけた。

/ ゚、。 /「っ……」

ダイオードは息を呑んだ。これは明らかに土の中ではない。
何らかの建造物の内部であり、過去の遺跡であると言えた。
汚れてはいるが白色だと判断できる壁。閉塞感など感じさせない、天井……。
壁に沿って吊らされたカンテラと松明を持った軍人たちがいたが――見張りであるとダイオードは判断した――周囲は薄暗い。
それらが無いと、ほとんど真っ暗であると言えた。足元の柔らかな土を押しのけるが、また土が現れる。
支給された、爪先に鉄板の入った靴でほじくってみたが、底にたどり着くことは無かった。
押し固められた土により、爪先が止まるだけだ。

180 名前:90:2011/05/21(土) 22:47:58.42 ID:7m74Cvuw0
/ ゚、。 /(なるほど。なるほどなあ。土もかなり積層していて、さらに踏み固められている。
       もしかしたら……湖はこの中に吸い込まれていったんじゃないのか……?
       ある日突然、なんらかの現象で入り口が開いて、そこに水吸い込まれて……。
       うん、渦の現象も説明できるから、間違いないように思うわ)

(*,,゚Д゚)「おお……」

ギコの押さえ切れない笑顔を見て、自分も同じような表情になっているかもしれないと思い、気を引き締めた。

遺跡内部にいた軍人に先導されて歩を進める。
ダイオードが周囲を見回しているうちに、何やら積み上げられた箱が見えてきた。
軍人は立ち止まり、前方へと続く道へと立ち塞がる形となった。
どうやらその奥が今日の予定に無いのか、明かりもついておらず、軍人もいなかった。
軍人に指示されて、一人、また一人と積み上げられた箱を抱えて、道を戻っていく。

ダイオードとギコも布袋をその場に置き、それに倣った。
結構な重量を持つ箱を運びながらも、ダイオードは思考を止めなかった。

/ ゚、。 /(しかし……)

首を回して、広大な遺跡内をもう一度見る。
現時点でも既に何度か岐路があり、目的の方向以外には軍人たちが立っていた。

/ ゚、。;/(それじゃあ……どれだけ深いっていうの。
       この遺跡は……四年前に湖がなくなったから……最低でも三、四年間は調査しているんでしょう……?
       まだ軍人たちが在住しているってことは、まだまだ探索し終えてないってことだから……)

181 名前:90:2011/05/21(土) 22:49:35.46 ID:7m74Cvuw0
地上へと続く長い階段を上り、入り口で待つ軍人へと箱を手渡す。
そしてまた戻る途中に、並ぶ軍人の中に見知った顔が並んでいるのを見つけた。
頭を切り替えて、声色を変える。

/ ゚、。 /「あら、プギャーさんじゃない、それに、ドクオさんもスカルチノフさんも」

( ^Д^)「?」

壁に背をつけ、ただぼうっと虚空を見ていた軍人はかつて村で会ったことのあるプギャーだった。
その両隣に、痩身のドクオとスカルチノフがいた。

( ^Д^)「あら? アナタ、あのときの人ね」。

/ ,' 3「プギャーが食堂で部屋番号を渡した人だよね」

返事がなく、俯いたまま動かないドクオをプギャーが指差して、

( ^Д^)「ドクオさん器用でしょう? 立ったまま寝るのよ。
      いつも怒られるんだから、困っちゃうわよね。うふふふ」

/ ゚、。;/「!?」

周りの軍人が何か言いたげに彼らを見ており、ギコや他の村民もダイオードを見ていた。
怠けていると思われていることには間違いなかったが、
彼らはどうとも思っていないらしい様子から、これが彼らの日常らしかった。

/ ゚、。 /(なるほど。下っ端はこの遺跡の中に配属されるのね)

185 名前:90:2011/05/21(土) 22:51:28.85 ID:7m74Cvuw0
( ^Д^)「どうしてここにアナタがいるのぉ?」

/ ゚、。;/「アルバイトですわ。募集がかかっておりまして」

会話を交わしながらも冷静に考えを巡らせる。
彼らは知り合いであることからか、退屈を紛らわせるためか、警戒することなくダイオードに話し続ける。

この気の緩みから、何か利用できるかも知れないと考え、ドクオが寝ていることに心底安堵した。
彼から発散されていた鋭い気質は、現在の状況で対峙するには無理があった。

/ ゚、。;/(しまった)

サボリになる。素性を明かした食堂での会話。ホテルの部屋番号……。
考えてみれば、こちらに不利な要素が多すぎる。
そうして、軽率にも彼らに話かけたことをダイオードは後悔した。

( ^Д^)「そう言えば、アタシ、アナタに部屋番号を渡しましたよね?
      その夜、とても素敵でしたわ」

/ ,' 3「あれ以来、ずっとこの口調なんだけど、何をしたわけ?」

/ ゚、。;/「秘密ですわ」

その件について詳しく言及される前に、この場を後にしようと会話を打ち切った。

189 名前:90:2011/05/21(土) 22:54:01.51 ID:7m74Cvuw0
すると、話題がないためか、プギャーが急に寝ているドクオの肩を叩き始めた。

( ^Д^)「ちょっと! せっかく来てくれたんだから挨拶くらいしましょうよ!」

/ ゚、。;/「お、お構いなくっ」

( ^Д^)「ほらほらほらほらぁ! おきなさいよ!」

('A`)「何だよ。気持ち悪い口調で話すんじゃねえよ。眠たいんだよ俺は」

とうとう、ドクオが目覚めた。
大きく欠伸をしてダイオードを見る。

/ ゚、。;/(マズい)

190 名前:90:2011/05/21(土) 22:55:26.82 ID:7m74Cvuw0
( ^Д^)「いいから挨拶しておきなさいよ」

('A`)「誰に?」

( ^Д^)「あのダイオードって人よ」

立ち去ろうとしているダイオードの背中をプギャーが指差した。

('A`)「……ジャーナリストじゃん」

( ^Д^)「ん?」

('A`)「食堂で腕章してたろ。それに『見学させて?』なんていう奴はジャーナリストしかいないじゃねえか。
    ここが極秘情報なの知ってて来たんだろ?」

ダイオードは荷物を放り出して駆け出した。逃げなければ、と思い切り足を動かす。

('A`)「おい! その女! ジャーナリストだぞ! 報道する気だ!」

ドクオの声が遺跡内で反響して、地下内にいる全ての軍人の耳に届いた。

193 名前:90:2011/05/21(土) 22:57:13.73 ID:7m74Cvuw0
 □ 十五 【――混乱・逃走――】

瞬時に状況が理解できないものが大半であった。
相手が行動を起こさない間もダイオードは走り続ける。
途中、箱を抱えたギコとすれ違った。
その際に「来て」とだけ口にしたが、伝わったかどうか彼女は確認できない。

左右二手に別れる道があった。
右だけ明かりがついていて、右へ行くと箱が積みあげられている場所だ。
情報が行き届いているのならば、左に行くしかないが、
必需品を詰め込んだ布袋は、箱が積みあげられている場所へと置いてきている。
左へと立ちふさがる軍人を張り倒したとしても、その先三日間も生き延びられないだろう。
だったら、答えは一つしかない、右だ。悪態をつきながら走る。走る。

ダイオードには壁際に並ぶ軍人たちが手にした銃器を発砲しないであろうと決め付け、
直接掴まれないよう、ただ駆ける。
二十メートルほどの距離でお互いが向き合っている通路で発砲すれば間違いなく命中するだろうが、
一斉に発砲した場合、同士討ちが巻き起こる可能性が高いだろう。
それに、肩にかけている銃を、片手に持った松明を落とさずに構えることを瞬時に行うことは困難だ。
さらに、全員が松明を手放して銃を構えた場合、落ちた衝撃で松明の火は消えてしまい、
吊り下げられたカンテラだけの明かりでは闇は一層濃くなり、照準をつけるどころの話ではない。

/ ゚、。;/(見張りを任されているのなら、その場から離れることもしないだろうし!)

ある程度の希望的観測が含まれてはいたが、現に軍人が大勢で追って来る様子はない。
しかし、ダイオードは自分の後をついてくる足音があることを耳で捉えている。
その、走っているものに任せているから、
自分は持ち場を離れなくても良いと考える軍人も多数いたことは確かであった。

194 名前:90:2011/05/21(土) 22:58:30.11 ID:7m74Cvuw0
前方にダイオードの布袋が見えた。
その奥に松明を構えたままの軍人がいる。
しかし、彼女の猛進ぶりを見てこの場を突破する気だと悟ったのか、松明を手放して銃を構えた。
銃口がダイオードへと向けられる。引き金に指がかかった。ほんの数メートルの距離だ。外しようが無い。

/ ゚、。;/(!)

突如、彼女の横から激しい衝撃が加えられた。そして、発砲音。

197 名前:90:2011/05/21(土) 22:59:32.92 ID:7m74Cvuw0
 □ 十六 【――暗闇の中へ――】

倒れたダイオードが起き上がると、ギコが胸から血を流していた。
自分を殺そうとした軍人は倒れている。ギコが箱を投げつけたのだ。
軍人が起き上がり、何かを言おうとしたところにギコが飛びかかる。
銃声が響いたことから遺跡内が喧騒に満ち始めていた。
最寄の軍人が何事かとこちらに向かってきている。

(,,゚Д゚)「行って!」

/ ゚、。;/「しかし……」

(,,゚Д゚)「いいから! 俺の分の袋も持っていって! 後で追いつく!」

/ ゚、。;/(馬鹿な)

198 名前:90:2011/05/21(土) 23:00:10.16 ID:7m74Cvuw0
ギコの胸から流れ出る血の量とこの状況。
どう考えても、彼が生き延びて自分と合流するなんてありえない。
そんなことは当たり前にダイオードにはわかっている。
わかりきってはいるがこのまま二人とも捕まったら元も子もないのだ。
それに、どもども、ここを無事に脱出できるなんてことがあるのだろうか。
極秘な地下遺跡の情報が、万が一にでも外に漏れ出したら大問題だ。
ならば、口封じのため皆殺すのが妥当だ。

ダイオードは勢いそのままに布袋を二つ拾い上げ、ギコの横を駆け抜けた。
暗闇の口へと飛び込んでいく。

/ ゚、。;/「早く来るんだぞ!」

背後から銃声が聞こえた。
その影を踏むようにもう一発。それからは、たがが外れたかの如く発砲音が重なり響いた。
ギコの返事は、ダイオードには聞こえなかった。

201 名前:90:2011/05/21(土) 23:03:05.66 ID:7m74Cvuw0
 □ 十七 【――探索開始――】

銃声が止んだ。
もう自分の姿を目視できなくなったのか、もう仕留めたと思ったのか。
ダイオードは立ち止まろうと速度を緩める。
呼吸が荒い、胸が苦しい。ギコのことについて言葉にすることはできない。
ただ、心臓が収縮するかのような感覚があった。ホライゾンさんとは違い、自分の背後で、人が死んだ音を聞いた。

ダイオードは布袋の口から手を入れた。手触りで判断して懐中電灯を取り出す。
暗闇で光を照らす行為は自分の居場所を教えるということだとわかってはいたが、
このままでは何も見えやしないのでそれよりはマシだろう。

唇を噛み締める。涙を流すわけにはいかない。
ここは相手の領域内であることは間違いない。いつ、どこから何が起こるかわからない。

布袋を背負う。前方から見ると身体に固定する紐が肩から腰へと流れている形だ。
二つも背負えば結構な重量になり、
身体を動かすたびに引っ張られて動き辛いが、食料などが入っているため背に腹は代えられない。

/ 、 ;/(……)
/
懐中電灯の電源を入れた瞬間に何が起こるだろう。
自分の目には何が映るだろう。壁に飛び散ったおびただしい血液? 天井に折り重なった蝙蝠の類?
今、まさに自分目がけて跳ねた正体不明の獣?

ダイオードは深呼吸をしてから、
期待と恐怖の入り混じった感情を胸に渦巻かせて、電源を入れた。
黄色い光が出現する。

206 名前:90:2011/05/21(土) 23:05:40.39 ID:7m74Cvuw0
/ ゚、。;/「はあっ……」

肺の中の空気が一気に吐き出された。

何も、無かった。
ただ、逃げる前と同じような景観が続いている。

壁際を照らしてみるとカンテラが吊り下げられていた。

/ ゚、。 /(なるほど。ここは既に探索しているということか)

この場に留まっているわけにはいかない。
真っ直ぐに走ってきたのだから軍人たちの場所から見れば、遠くに明かりが浮かんでいる状態であるはずだ。

/ ゚、。 /(早く、どこかの角を曲がらないと……)

道をそのまま歩いていると、運のいいことに彼女は十字路に遭遇した。
目の前に広がる三つの廊下の果てを照らしてみたが、何も見えない。
全ての壁に沿ってカンテラは吊り下げられている。

/ ゚、。 /(私は、右利きだから、右だ)

そうして、迷い無く進んでいく。
これは、彼女がいつも決断を下す際に行う癖の一つだった。
自分は右の手足が上手く扱える、だから、右側のものは得意なはずだ。というのが彼女の持論であった。

210 名前:90:2011/05/21(土) 23:06:44.62 ID:7m74Cvuw0
 □ 十八 【――かつて見たものとの遭遇――】

どれほど歩いただろうか。
ここには光が差し込むことなどなく、時計などの時間を示すものは持ってきていなかった。
時間の流れが、希薄に感じられる。
動かし続けた彼女の足の疲労と空腹感だけが時間が経過している証明だった。

壁を見ると、依然、カンテラは壁に吊られている。

/ ゚、。 /(そろそろ持ってきたものを食べたいが……座る場所などはないな。
       ただずうっとトンネルみたいな通路が続いていて、地面は土から変わらない。
       けど、まあ、仕方ないか。汚れるくらい何さ)

ダイオードは立ち止まって布袋を下ろした。口を開き、照らして覗く。
様々なものを詰め込んでいた上に激しく揺すられたものだから袋は破れ、中身は飛び出している。

/ ゚、。 /(ぐちゃぐちゃだ)

悪態をついているうちに果物の缶詰を発見したので取り出して蓋を開けた。
食べると、地上で食べたときよりも格段に美味しく感じられた。
食べ終えても満腹感がまったく沸かなかったので、まだ何か食べようかとダイオードは手を伸ばしかけて、止めた。
まだまだ先は長い。こんなところで無駄遣いしてはいられない。

再び歩き出す。曲がり角、右へ。再び曲がり角。右へ。
こうしているうちに彼女は自分がどんどんと隅へと進んでいることに気がついた。

/ ゚、。 /(だめじゃないか。最も大きな秘密は、きっと、中心にあるものなのに)

反省して、次の角は左に曲がった。

216 名前:90:2011/05/21(土) 23:11:11.49 ID:7m74Cvuw0
ダイオードは今夜(本当に夜かどうか判断はできないが)の寝床について考えていた。
まだまだ眠気が襲ってくる様子はなかったが隠れることもせず、
ただ、壁に寄りかかって眠っているとどんな危険が及ぶかわかりやしない。
ここは世界中に存在が隠蔽されている得体の知れない地下遺跡であり、彼女から見れば紛れもない迷宮だ。
用心に用心を重ねてもまだまだ足りないだろう。

/ ゚、。 /(追っ手の軍人たちに見つかってしまうと間違いなく殺されるし……)

答えの出ないまま、ただ足を動かす。

不意に、前方から聞きなれない音がした。
暗闇が音を立てたかのようにも感じられた。何かが軋む音がする。
続いて、金属のようなものが擦れた音。響くノイズ。次の瞬間一際大きな音がして、暗闇が火を吹いた。
ダイオードは突如発生した明かりに思わず目を覆う。がしゃん、と大きな機械が動くような音がする。

/ ゚、。;/「んなっ……」

217 名前:90:2011/05/21(土) 23:11:48.37 ID:7m74Cvuw0
直方体の側面から突き出した四本の腕。底面から生えた四本の脚。
巨大なカニやクモを想起させる、軍事国家の開発した、
忘れかけていた記憶の中にいたに兵器が、彼女の目の前に現れた。

紛れもない、『MA-7』だ。

/ ゚、。;/(どうして……? 一体、何が?)

口を開けて、ただ、自分よりも大きな機械を見上げている。
予想を遥かに超えた出来事にダイオードは反応できない。
唖然とする彼女へと向けて『MA-7』が動き出した。間接部が軋んで音を立てる。
尖った足が地面に突き立ち、衝撃で接合部が軋んだ。

『MA-7』から、甲高い音が発生した。
ダイオードに照準を合わせた音だ。
これから、特殊な電磁波により彼女の心理状態を把握し、脳裏の非現実を此方に引きずり出すのだ。

219 名前:90:2011/05/21(土) 23:13:14.05 ID:7m74Cvuw0
□ 十九 【――MA-7――】

汗が止まらない。足が上手く回らない。
布袋はどこかへと放り投げてしまった。捕まったら私は死んでしまうのだろうか。

ダイオードは遁走していた。しかし、頭を働かせることだけは、決してやめはしなかった。

/ ゚、。;/(ああ、そうか。『MA-7』はこの遺跡から発掘したものだったんだ。
       現代の科学では到底成しえないことを可能にすると謳っていた機能は、ロスト・テクノロジーのものだったのか)

ダイオードの思考は恐怖に覆われながらも明瞭だった。
秘匿されていた理由を冷静に分析し、
あの機械からどうやって逃れるべきかも承知しているが、どうしてもそれが実行できない。

/ ゚、。;/(『MA-7』は照準を合わせた人物の考えていることを代わりに行う。
       しかし、それはその程度までなんだ? 今、最も考えていること?
       表面だけでなく、自分が知覚できていないような深層真理まで?)

背後から連続した機械音が聞こえる。続いて、土を抉る音が。

/ ゚、。;/(くそ、今にも捕まってしまいそうだ。ああ、そんなことを考えては駄目だ!)

ダイオードは何か試しに考えてみて、
その結果によって自分の考えがどの程度『MA-7』に反映されるかどうかを確かめてみようとしていた。

222 名前:90:2011/05/21(土) 23:15:42.28 ID:7m74Cvuw0
しかし、自分が得た情報はインターネットからの拾い物で正しいとは限らない。
それに、どうしてもあの機体に対して自分が殺されるイメージがつきまとう。
無機質な機械が細長い腕を振り回して自分を追い回すのだから、
そんな状況で冷静に立ち塞がり、いちかばちかの賭けになんて出られやしない。

/ ゚、。;/「ひっ」

走るダイオードの視界の端から『MA-7』の腕が飛び出し、彼女の目の前の地面へと突き刺さった。
驚いた彼女は悲鳴をあげて彼女は足をもつれさせ、転倒する。これがまた、彼女の中で死の存在を大きくした。
土の上を転がり、全身を擦りむくがすぐに立ち上がった。止まると死ぬ。
髪や服に土をつけて必死に走るが、脳が揺れているのか彼女は走ることはおろか、
真っ直ぐ歩くことすらできない。覚束ない足取りで壁に吸い寄せられ、背をつけて倒れこんだ。

『MA-7』の足音が止まる。
ぼやけた視界ではあったが、自分を見下ろしているとわかった。
ダイオードはもはや諦観する他ない。何も出来ない。

どうしようも、ない。

/ 、 ;/(駄目か。逃げられないな。死ぬのか。
       ああ、すいませんホライゾンさん。謎を解き明かすことができませんでした)

ダイオードは自分の死のイメージが鮮明に想像できた。
あの鋭利な脚で胸を突き刺される。
あの精密に動く腕で首を切断される。
あの大きな体躯で衝突される。
刺殺、斬殺、轢死。様々な死因が思い浮かぶ。

227 名前:90:2011/05/21(土) 23:17:46.96 ID:7m74Cvuw0
/ 、 ;/(どれになるのだろうか)

どれにせよ、痛いのは間違いないだろうけど。
当たり前か。ダイオードは苦笑してしまった。そして、目を閉じて、生を手放す。
『MA-7』が腕を振り上げた。機械音が響く。

/ ゚、。;/(――――ッ!?)

突然、ダイオードの考えを全て吹き飛ばす疑問点が脳内にカットインする。
『MA-7』が動きを止めた。

/ ゚、。;/(馬鹿か私は! どうして気がつかなかったんだ?)

目を開いて、彼女は体重を壁に預けながらも、なんとか立ち上がる。
顔を上げて『MA-7』を見た。

/ ゚、。 /(ここにはカンテラが吊られているから、調査済みってことだ。
       ということは、何らかの方法で軍人たちは『MA-7』を無効化しているはずだ。
       さらに、自国まで持って帰り"将来発売する予定の製品"としている)

ここまで導き出せたならば、もう、結論は目の前だ。
ダイオードは息を吸い込み、思い切り口を開き、思考を言葉で露にした。

230 名前:90:2011/05/21(土) 23:21:36.46 ID:7m74Cvuw0
/ ゚、。#/「私に従え!!」

甲高い機械音が鳴り響いた。
その音は認証の合図であり、隷従の証明だった。

ダイオードを主人だと認識した『MA-7』は手足を折り畳んで、その場に待機する。

/ ゚、。;/「ハァ――、ハッ。ふぅ、よかった。助かった」

胸を押さえ、呼吸を整えるのに数分を要した。           ・ ・ ・
あと何秒間思考が遅かったら死へと誘われていたのだろうか。考えるだけで恐ろしい。

/ ゚、。 /「やはり、これも幾多ある機械と同じだ。人の手によりされるがままの、従順な道具なんだ」

命令を待ち続けて、身じろぎ一つしない鉄の塊を、ダイオードはじっと見つめた。

234 名前:90:2011/05/21(土) 23:25:56.96 ID:7m74Cvuw0
 □ 二十 【――エンドロール――】

道を戻り、見つけた布袋を拾い上げて中身を改める。
容器の破損などは起こっていなかったのでダイオードは安心した。

/ ゚、。 /(とりあえず、とても疲れた。今日はもう眠ろう……)

これからどうなるのか。
目を覚ましたら何がどうなっているかわからないが、とりあえず今は、ただ眠ることだけを考えていた。

『MA-7』に、
「周囲を見張って、危険があれば警告を発し、どんな状況下においても自分自身を保護する」ように命令する。

ダイオードは安息しきった様子でその場に寝転んだ。
衣服を詰め込んだ布袋を枕にして、目を閉じる。

明日からもまた、探索が待っている……。
もしかしたら、ホライゾンさんも私と同じように生きているのかも知れない。
ギコ君はどうなっただろうか。きっと地上に戻って治療しているだろう。

すぐに睡魔がやってきて、ダイオードは眠りについた。

静かな寝息がし始めた頃、『MA-7』は彼女へと近づくものはいないかと周りを警戒する。


彼女はまだまだ探し始めたばかりだ。この果てしない地下遺跡を……。


【――/ ゚、。 /上司が死んだ村について調べるようです  終わり――】

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