mesimarja
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( ^ω^)男たちのようです
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:37:02.70 ID:BPyLCxQQ0

この作品は五人の男たちが体験した
ちょっと変わった日常をそれぞれの視点で描いた短編集です



2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:37:48.74 ID:BPyLCxQQ0





     『インタビュー』






3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:38:17.27 ID:BPyLCxQQ0
2月も半ばになったというのに、
寒さは和らぐどころか厳しさを増しているような気がする。

渋谷の街角をうつむいて歩きながら、
男は心の中で独りごちた。


人肌が恋しくなる季節とはこのことをいうのだろうか。

パーカーのポケットに両手を突っ込み、
上下するスニーカーのつま先を眺めながら、
男は考えていた。


そのままぼんやり歩いていると、
「そこのあなた!」とどこからともなく大声が聞こえた。

その声に男は歩調を緩め、
一瞬足を止めそうになったが、
いや、まさかな、と再び歩調を速めた。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:38:50.84 ID:BPyLCxQQ0
「あなたのことですよ!」

その言葉と同時に、
不意に黒いヒールのつま先が男の視界に飛び込んできた。

Σ(;'A`)

男は驚いて立ち止り、顔を上げた。

すると、男の顔の数センチまじかの距離に、
小さな小さな二つの丘が目前に立ちふさがっていた。

赤い壁に隆起した二つの丘。

男はこれが女性の乳房であることに感づいた。

赤いセーターの上から隆起した乳房だと。


硬直している男の頭上から、
「ごめんなさい」という声が聞こえた。

男は声のした方を見上げた。

その先には、

(゚ー゚トソン「だって、立ち止まってくれないんですもの」

と悪びれる様子もなく、
笑いを含んだ声で言ってのける女の顔があった。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:39:31.73 ID:BPyLCxQQ0
ヒールの高さを差し引いても、
優に170を超えているであろう長身から、
男の顔を見下ろしている。

黒髪を後ろに束ね、
化粧気の薄さを感じさせながらも、
二重の瞼と鋭角的な眉毛、
長い鼻が整った顔立ちを強調していた。

男は思わず、
「あ、すみません……」と小さく頭を下げた。

('A`)「それで、僕になにか……」

男は胡乱な目つきで、女に尋ねた。

(^ー^トソン「はい、いきなりで申し訳ありませんが、
      あなた様にインタビューを受けていただきたくて」

女はにっこりと笑顔を浮かべながら、
快活に言った。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:40:17.27 ID:BPyLCxQQ0
この女、図体だけでなく声まで大きいな……いや、俺が小さすぎるだけか……。

男は取り留めのないことを考えつつ、
「はあ……」と力なく答えた。

(^ー^トソン「もちろん受けていただけますよね?」

女はまるで強要するかのように、
顔をさらに近付けた。

驚いた男は半歩退いた。

表情が笑顔のままでであることも、
男の恐怖心を増長させていた。

女の気迫に気圧された男は、
不承不承、「わ、わかりました」と承諾した。

(^ー^トソン「ありがとうございます」

女は深々と頭を下げた。

その際、風にそよいだ髪からシャンプーの香りが漂い、
男の鼻腔をくすぐった。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:41:59.03 ID:BPyLCxQQ0
(゚、゚トソン「では、あそこでおこないましょうか」

女が左手、
男からは右手に位置する方角を指さした。

('A`)「え?」

男は指さす方角を向いた。

そこにあるのは小さな喫茶店だった。

その瞬間、まさか……。

男にある不安が生まれた。

思い直した男は、
「やはり用事が」と言おうとしたが、
女は間髪いれず、男の前腕を掴んだ。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:42:27.58 ID:BPyLCxQQ0
(^ー^トソン「さ、いきましょ」

(;'A`)「ちょ、ちょっと……」

男のか弱い制止も聞かず、
女はずかずかと喫茶店へと男を引っ張っていった。

男は困惑していたが、
なぜか腕に感じる温もりが、
徐々に己の緊張と警戒を解きほぐしているような錯覚に陥っていた。

それほど力は込められておらず、
力強さよりも、
そっと触れるような柔らかな感触が腕を包んでいる。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:43:00.41 ID:BPyLCxQQ0
女が喫茶店のドアを開くと、チリン、とドアについているベルが鳴った。

その音を聞きつけたウェイトレスが、
奥から二人を出迎えた。

だが女は、
ウェイトレスが人数を聞くよりも早く窓際の席に着席すると、
ホットミルクを二つ、
と言いながらピースサインを作ってウェイトレスに注文した。

ウェイトレスは呆気にとられたように、
「かしこまりました」と言って奥へ引っ込んだ。

女はウェイトレスが厨房へいったのを見届けると、
顔を正面に座る男のほうへ向け、

(^ー^トソン「あなた、牛乳嫌いでしょ」

と笑顔で言った。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:43:38.69 ID:BPyLCxQQ0
男は不意な質問に胸を突かれた。

それは女が闇に、
男の身長の低さを指摘しているのだと感じたからだった。

席に座っても、
男の目線はちょうど女の胸のあたりに位置しており、
女の目線は男の頭頂部がぎりぎり見えるくらいの位置にある。

返答せず、
沈黙している男に女は、

(^ー^トソン「図星なんだ」

とまたしても笑顔で追い打ちをかけた。

男は惨めな気持ちになりながらも、

(;'A`)「いつも、
    こうしていちいち人を喫茶店とかに誘ってインタビューをしてるんですか?」

と尋ねた。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:44:31.55 ID:BPyLCxQQ0
女は、

(゚、゚トソン「うーん、まあ人によって……ね」

とあいまいに答えた。

人によって、
その定義とはいったいなんなのだろう。

俺のような男、すなわち、鴨……。

男がそんなことを考えている間に、
ウェイトレスがミルクを運んできた。

二人のテーブルにティーカップが置かれる。

女はウェイトレスに、
「ありがとう」と言ってからミルクを一口飲んだ。

ごくりと喉が波打ち、
カップから口をはなした女の鼻の下には牛乳ヒゲがついていた。

女は牛乳ヒゲを舌で拭い、

(^ー^トソン「さ、はじめましょうか」

とテーブルの上に両手を重ねて言った。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:45:10.95 ID:BPyLCxQQ0
ミルクのように白い指と、
マニキュアをつけていない桃色が見事なコントラストをなしている。

指輪などの装飾品を一切つけていないにも関わらず、
男の眼には女の動作や仕草が、
とても優美なものに見えた。

その時になってふと、
女が装飾品はおろか、バック、延いてはメモ帳の一冊すら持っていないことに気付いた。

もしかしたら、このまま口車に乗せられて、
どこか別の場所で誓約書でも書かされるのだろうか……。

そんな男の考えを読み取ったのか、
女はミルクの表面を見つめている男に、

(゚、゚トソン「大丈夫よ」

と言った。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:46:47.70 ID:BPyLCxQQ0
男が顔を上げると、
女が自分のこめかみを人差し指で二回叩きながら、

(゚ー゚トソン「私、全部覚えているから」

と綺麗にそろった白い歯をのぞかせて言った。

そして、

(゚、゚トソン「じゃあ、まずは年齢を教えてください」

と本題を切り出した。

('A`)「あ、歳は、24歳です」

と男は抑揚のない声で答えた。

(゚、゚トソン「ご職業は?」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:47:15.91 ID:BPyLCxQQ0
('A`)「えーと、フリーターです」

(゚、゚トソン「アルバイトってこと?」

('A`)「はい、コンビニの店員をしています」

(゚、゚トソン「お住まいは?」

('A`)「新大久保です」

(゚、゚トソン「一人暮らし?」

('A`)「はい」

(゚、゚トソン「学生さん?」

('A`)「いいえ」

(゚、゚トソン「じゃあ、今までに何人の女性――まあ男でもいいわ。
     何人の人とセックスをしたことがありますか?」

('A`)「え?」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:47:38.19 ID:BPyLCxQQ0
('A`)「……」

男は予想外の質問に言葉を失った。

血の気が引き、
背中や額に脂汗がにじむのを感じる。

どういうことだ……。

完全に虚を衝かれた男はそのまま押し黙り、
うつむいてしまった。

正直に申告するか、
それとも嘘をつくか、思案にくれている。

童貞か、一人か、一言いうだけでいい。

だが、口が動かない。

視線をあげるのも怖かった。

膝のうえに乗せた握り拳の中がじわりと湿っているのがわかる。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:47:56.72 ID:BPyLCxQQ0
彼女は今、
どんな表情をしているのだろう。

今までのように笑顔で、
うつむいている俺に視線を注いでいるのだろうか……。

そのまま十分ほどが過ぎても、
女は答えを急かさなかった。

溜息も聞こえない。

一度だけ、かちゃり、
とカップを持ち上げる音と、
ごくり、と喉を鳴らす音が男の耳に届いてきた。

もはや嘘をつくには沈黙が長すぎた。

腹を決めた男は、乾いた唇を開き、

(;'A`)「い……」

と頭文字を小さくつぶやいたが、
そこから先が喉に絡まった。それでも女は黙っていた。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:48:21.13 ID:BPyLCxQQ0
男は勇気を振り絞り、
かすれた声で途切れ途切れに、なおかつ、聞こえないでくれ……。
と念じながら、

(;'A`)「い、いま……せん……」

とつぶやいた。

それから五秒ほどの間をおいて、

「そう」

と素っ気ない声が聞こえた。

声音には嘲笑も憐れみも込められていないようだった。

その無機質な声音を聞いた男は、
安心すると同時に、
今まで緊張に固まっていた顔がほころんでくるのを感じた。

考えてみればそうだ。

彼女が俺の性経験に興味を示すはずがない。

詐欺師であろうとインタビュアーであろうと、
彼女はただ職務を全うしようとしているにすぎないのだから。

こんなことに神経をすり減らした自分が馬鹿馬鹿しくてしかたなかった。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:49:21.14 ID:BPyLCxQQ0
目をつぶり、
くくくと喉を鳴らして笑っている男に、
「じゃあ、次」と女が言った。

男はその言葉で我に返り、
思わず女の顔を見た。

女は先ほどと変わらない姿勢と笑顔で、
男の目を見つめ返してきた。

真黒な墨汁を流し込んだような黒々とした虹彩を見たとき、
男は自分の心から恐怖が消えているのだと確信した。

男は湿った掌をズボンの膝で拭き、
丸めていた背筋を伸ばして、

('A`)「どうぞ」

とはっきりした声を発した。

女は大きくうなずき、

(゚ー゚トソン「あなたは今まで何人の人と交際したことがありますか?」

と尋ねた。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:49:38.19 ID:BPyLCxQQ0
('A`)「0人です」

男は即答した。

「そう」と女はまたしても同じ言葉を返したが、
その声音は心なしか弾んでいるように聞こえた。

それから、「そっか」ともう一度つぶやき、
カップのミルクを飲みほした。

ごく、ごく、と二度喉を鳴らし、
カップをテーブルに置いてから鼻の下の牛乳ヒゲを舌で舐めとる。

それから小さくうなずくと、

(゚ー゚トソン「以上で終わりよ」

と言った。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:49:56.21 ID:BPyLCxQQ0
(゚A゚)「え?」

男は拍子抜けしたように目と口を開いた。

(;'A`)「もう終わりですか?」

(゚ー゚トソン「そう、終わり。ご協力ありがとうござました」

女は膝に両手を置き、慇懃に頭を下げた。

(;'A`)「え、あ、いえ……」

腑に落ちないながらも、男も頭を下げた。

(゚、゚トソン「さてと」

女はゆっくりち立ち上がり、
伝票を取り上げた。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:50:37.81 ID:BPyLCxQQ0
(゚ー゚トソン「お勘定はもちろん私が払うから」

(;'A`)「はあ……」

(゚ー゚トソン「それじゃ――」

(゚、゚トソン「あら」

去ろうとした女が、
ふと男の手前に置かれた、
口のつけられてないミルクを見て声を上げた。

('A`)「どうかしましたか?」

女を見上げながら、男が尋ねた。

女は黙ってカップを取り上げると、
一息にミルクを飲みほした。

(゚ー゚トソン「あなた、やっぱり牛乳が嫌いなのね。
     冷めちゃってるじゃない」

牛乳ヒゲをつけた口でそう言うと、
ぺろりと舌で舐めとった。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:50:59.26 ID:BPyLCxQQ0
(^ー^トソン「じゃあね」

女はカップを男の手前に戻すと、
満面の笑顔で二回手をふり、
男の横を通りすぎていった。

男は、見上げた状態のまま、
茫然としていた。

女が見せた一連の動作に見とれていたのだった。

波打つ白い喉、
牛乳ヒゲを舐めとる舌の動き、
今までに感じたことのないような高揚感が胸を打っている。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:52:14.04 ID:BPyLCxQQ0
そういえば……。

男は思い出した。

『あなた、牛乳嫌いでしょ?』

('A`)「いや、そんなことないよ……」


Σ('A`)


チリン、という音が男を放心から覚ました。

ドアについているベルが鳴ったのだ。

男は即座に立ち上がり、喫茶店を飛び出した。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:52:53.42 ID:BPyLCxQQ0





     fin






30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:55:11.83 ID:BPyLCxQQ0





     『プレゼント』






31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:55:35.58 ID:BPyLCxQQ0
窓の外の街角が、雪化粧に彩られている。

ケーキの上に乗ったクリームのように、
路傍を、車のルーフを、樹木を、雪が覆っている。

このような景色を、
俗にロマンチックな眺めというのだろう。

( ^ω^)「いかんお……」

俺は誰に言うでもなく呟くと、頭を振り、余計な考えを拭った。


タイプライターから正面の窓辺に視線を移す回数が増えつつある。

注意力が散漫になっている証拠だ。
 
俺の考えを読み取ったかのように、
吹き付ける寒風が窓を叩いた。

まるで俺を鼓舞するかのように。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:56:02.84 ID:BPyLCxQQ0
やはり、冬は苦手だ。

締め切りに気を揉まれる俺自身の惨めさ。

タイヤにチェーンを巻く煩わしさ。

兄夫婦の三兄弟に送るプレゼント金額の計算。

俺の住むニューヨークから兄家族の住むカンザスまでの飛行機代まで、
枚挙に暇がない。

 
そのとき、
後ろのドアが開いた。

ξ゚ー゚)ξ

振り向くと、
買い物から帰った妻が笑顔で俺を見ていた。

妻はその表情のまま、ただいま、と言った。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/11(月) 23:59:13.72 ID:BPyLCxQQ0
寒空にさらされていたことを物語るように、
頬は桃色に染まり、
額の金髪はポマードを塗ったように張り付いていた。

妻の着けた白いタートルネックが、
桃色の頬を強調している。

( ^ω^)「ああ、おかえりだお」

俺は小さな声で返した。

ξ゚ー゚)ξ「まだ終わりそうにないみたいね」

なおも微笑みを湛えながら、
妻が言った。

( ^ω^)「もう少しではあるんだがお。コーヒーを頼むお」

といいながらタイプライターに向き直ろうとしたとき、
妻が右手に透明な虫籠のようなものを持っていることに気づいた。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:00:56.02 ID:gur40bnI0
俺はそれを指さしながら、尋ねた。

( ^ω^)「そいつはなんだお?」

俺の問いに、
妻は思い出したように右手を見た。

ξ゚ー゚)ξ「これ? これはね。
      あなたの仕事がはかどるかと思って買ってきたの」

そう言って妻が掲げたケースには、
小さな魚が一匹入っていた。


赤と白と黒の派手な色合いのまだら模様が、
不気味な印象を与える。

俺は大きくため息をつき、言った。

( ^ω^)「おいおい、もう生き物は飼わないと約束したじゃないかお。
      前のチワワが死んだときといい、ハムスターが死んだときといい、
      君があまりにも大きな声で泣き喚くもんだから警察がきたほどなんだお。
      それにその魚と俺の仕事にはなんの関係もないお」

妻は口を尖らせ、こう反駁した。

ξ#゚⊿゚)ξ「だ、大丈夫よ。
      今回はあくまであなたのために買ってきたペットなんだから。
      それに、観賞魚には心をリフレッシュさせる効果があるから、
      あなたの仕事にきっと役に立つわよ」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:02:36.67 ID:KLKIYJyx0
( ^ω^)「俺は魚を買ってくれなんて頼んだ覚えはないお」

ξ゚⊿゚)ξ「この魚はコイよ。
      日本から輸入してきたものだって店員さんが言ってたわ」

俺は驚いて声を上げた。

(;^ω^)「コイ? コイってあの成長するとばかでかくなる魚かお」

ξ゚ー゚)ξ「別にばかってほどではないわよ。
      確かに成長はするけど、
      最終的には20㎝くらいで成長がとまる品種らしいから、
      飼うのには苦労しないでしょ」

妻はにこりと笑顔を浮かべながら、
そう言ってのけた。

そして、水槽を俺のデスクの上に置いた。

目を剥いて顔を見上げる俺に、
妻はこう言った。

ξ゚ー゚)ξ「水を換えるのは私がやるから、
      あなたは餌をあげるだけでいいわ」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:03:28.39 ID:gur40bnI0
そう言うと、
ジーンズのポケットから丸いケースを取り出し、
俺に差し出した。

ξ゚ー゚)ξ「ほら、あげてみて」

妻に言われるがまま、
不承不承ケースを受け取り、
米粒ほどの小さな餌を三粒掌に落とした。

水槽の蓋を取り外し、
餌を上から振り撒く。

すると、コイは待っていましたとでも言うように、
餌に魚雷の如く突進し、あっという間に三粒をたいらげた。

その様子を見た妻は、
まるで子供のように手を打ち鳴らし、すごいすごいとはしゃいだ。

だが、俺には何の感慨も生まれなかった。

コイに餌をやる、それだけのことで心が休まるとは到底思えない。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:03:53.65 ID:KLKIYJyx0
対照的な態度の俺を尻目に妻は、
じゃあよろしく、と言い残し、部屋を出て行った。

再び静寂が戻り、俺は気を取り直してタイプライターに指を置いた。

本当に静かだった。

犬のように吠えることもなく、
ハムスターのように回し車も回さない。

ふと何気なく、俺はもう二粒、餌をコイの水槽に振り撒いた。

コイは再び突進し、
餌は排水溝に吸い込まれるようにコイの口の中へと消えた。

( ^ω^)「食い意地が張ってやがるお」

そんなに腹が減っているなら、
俺の没原稿をいくらでも食わせてやるんだが――

( ^ω^)「いかんお……」

俺は頭を振り、タイプライターを打ち始めた。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:04:10.78 ID:n+Yaha5i0





     fin






39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:05:06.65 ID:KLKIYJyx0





     『蕾』





40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:05:48.96 ID:gur40bnI0
三月一日、春が訪れた。

空は天気予報の予報通り、
よく晴れている。

新宿中央公園を囲むビル群のはるか上空に浮かぶ太陽から暖かな陽光が降り注ぎ、
植物に、人に、活力を与える。

そう、春が来たのよ。

言い聞かせるかのように、
ベンチに座る僕の頬を優しい風が愛撫した。

陽光が、風が、樹木のざわめきが、
僕の眠気を誘発する。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:06:07.43 ID:gur40bnI0
アンパン一つの質素な昼食を終えた一時過ぎだった。

食後の昼寝には最適な条件がそろっている。

瞼が重くなり、体中の力が抜けていくのを感じ始めていた。

そうだ、このまま、まどろみに身を任せてしまおう。

そうすれば、安らぎが僕を生まれ変わらせてくれる。

そんな錯覚に陥るほど、僕は完全に春というものに籠絡されていた。

だがそれでもいい。

僕は安らぎが欲しいのだ――

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:06:34.86 ID:KLKIYJyx0
「おい!!」

そのまま瞼を閉じ切ろうとしたとき、
どこからともなく大声が聞こえた。

その声が、僕を春の誘惑から解き放った。

目を見開き、
電撃を受けたかのように体を跳ねた僕の姿はさぞ滑稽だっただろう。

だが幸いにも、
周りに僕を見咎める者はいなかった。

僕は顔をこすり、
大きく息を吐きながら首を垂れた。

僕を誘惑から解き放った声は今も頭の中で延々と同じ言葉を叫び続けている。

「おい!!」「おい!!」「おい!!」

それは聞き覚えのある声だった。

耳をつんざく野太い声。

毎日聞かされている声だ。

朝、昼、夕と、僕を呼ぶ課長の声だった。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:07:05.97 ID:KLKIYJyx0
僕の名前は決して呼ばない。

僕を入れて六人いる課員の中で、
僕だけいつも、おい、と呼ばれるのだ。

その声を聞くたびに、
僕は身を切られる思いに苛まれながら、はい、と返事を返す。

そんな自分のふがいなさに、
僕は嫌気がさしていた。


僕は悠長に昼休みを過ごすこともできないのか……。

薄くて平板なガラス板の上に乗った重り。

すでにクモの巣のように無数にひびが入ったガラス板は、
今にも重さに耐えかね、割れようとしている。

みしりと音を立てながら、細かい粉を落とし、辛うじて耐え続けているガラス板。

後どれだけ耐えられるのだろうか……。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:07:31.94 ID:KLKIYJyx0
何度も己に言い聞かせてきたはずだった。

辛いのは自分だけではないと。

皆同じだと。

通勤ラッシュのホームでほかの会社員を見ては何度も自分を奮い立たせようと努めてきた。

粉骨砕身全力を尽くさせていただきます。

四年前の入社面接で発した心にもない意気込み。

まさに骨が粉になりそうなほど、
今の僕は身も心も憔悴しきっている。


ため息をつき、
悄然とうつむいている僕を再び優しい風が撫でて過ぎた。

まるで慰めるかのように。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:07:53.07 ID:n+Yaha5i0
僕は風の慈しみに応えるように、顔を上げた。

正面には横一列、
百メートルほどの距離まで林立した桜が見える。

点々と枝に群れる蕾は今や遅しと花開く時を待っているようだ。

ニュースによれば、
今年の桜の開花は十五日ごろから始まるらしい。

(´・ω・`)「十五日か……」


Σ(;´・ω・`)

誰に言うでもなく一人ごちていると、
ふと隣りに気配を感じた。

恐る恐る右に首を廻らすと、
そこにはいつの間にか一人の人物が座っていた。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:08:36.55 ID:KLKIYJyx0
川´_ゝ)

耳とうなじを覆い隠すほどに長髪を伸ばし、
色褪せた紺のナイロンジャケットを着けている。

一瞬女性と見間違えそうになったが、
顎に蓄えた髭を認めた瞬間この人物が男性であることを悟った。

それと同時に、
風が運んできたすえた臭い。

この公園を根城にしているホームレスだった。

横顔を向ける男は、
隣りにいる僕の存在など意に介していないかのようにじっと前方を見据えている。

煤けたように薄黒く汚れた顔の反対側には日差しがあたり、
鮮やかな光と影の対比をなしていた。

男は日の光に目を背けようともしない。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:09:02.71 ID:n+Yaha5i0
川´_ゝ)「あんちゃん、大丈夫なのかい」

不意に男が声を掛けてきた。

視線と顔の位置は正面を向けたままだ。

呆気にとられてしまった僕は思わず「え?」と問い返してしまった。

川´_ゝ)「昼休みだよ」

僕は思わず腕時計を見た。

時刻は一時四十分。

まだ十分は余裕があった。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:09:23.83 ID:KLKIYJyx0
(´・ω・`)「ああ、大丈夫だよ」

ほっとしながら返したところで、
僕は息を飲んだ。

僕はいつの間にかこの男性と会話を交わしていたのだ。

声は思ったよりも高く、
まるでまだ声変りのしていない少年のようだった。

僕は意を決し、
今度は自分から男に話しかけた。

(´・ω・`)「君は、いくつなのかな?」

男は、うーん、と唇を噛み、
一瞬考えるような素振りを見せてから、「二十三」と言った。

Σ(;´・ω・`)「二十三!?」

僕は驚いて声をあげた。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:09:54.62 ID:n+Yaha5i0
川´,_ゝ)「あんちゃんにはもっと年取って見えるんだろうけどさ。
     まあ、無理もないね」

男は相変わらず顔を前に向けたまま、
にやりと笑って見せた。

二十三歳と言えば僕より三つ年下ということになる。

二十三歳でホームレス。

彼にはいったいどのような事情があるのだろうか。

僕は興味がわいていた。

だが、例えホームレスと言えども人の過去に土足で踏み込むようなまねが許されるのか。

なぜホームレスになったのかなどと、
無粋なことを訊ねてよいのか――いや、許されるはずがない。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:10:31.67 ID:KLKIYJyx0
僕は彼への詮索の言葉を頭から振り払い、
傍らに置かれたコンビニ袋を取り上げた。

(´・ω・`)「なあ、アンパンでも食べないか?」

袋から一つ残っていたアンパンを取り出し、
横顔を向けている彼に差し出した。

彼は首を動かさず、
視線で差し出されたアンパンを一瞥し、こう言った。

川´_ゝ)「あんた、変ってるね」

(´・ω・`)「変わっている? なにがだい」

僕は彼の言葉の意味が理解できなかった。

川´_ゝ)「リーマンがホームレスに親切するなんてあんまり聞かないじゃない」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:11:08.23 ID:KLKIYJyx0
僕は思わず苦笑した。

(´^ω^`)「君のほうから話しかけてきたんじゃないか」

川´,_ゝ)「まあ、そうなんだけどさ」

彼は笑顔でアンパンを受け取ると、
じゃあ、お言葉に甘えて。

そう言いながら、
ジャケットのポケットに仕舞い込んだ。


彼は一瞬もこちらに顔を向けない。

新たな興味が生まれた僕は、
彼にこう訊ねた。

(´・ω・`)「なにを見ているんだい?」

彼は真顔のまま、
なにって、桜に決まってるじゃないか、と素っ気なく答えた。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:11:54.78 ID:KLKIYJyx0
僕は彼の視線を追った。

(´・ω・`)「桜って君、まだ蕾じゃないか」

僕のその言葉に彼は小さく肩をすくめ、
そう、蕾を見てるのさ、と言い、こう続けた。

川´_ゝ)「もしかしたら、今日開花するんじゃないかと思ってね。
    その瞬間を見逃したくないんだ」

彼は目を輝かせていた。

本当に心待ちにしているのだ。

彼の頭の中では桜で彩られた公園が思い描かれているに違いない。

(´・ω・`)「さすがに今日は咲かないと思うけど。
     予想では今月の十五日ごろ開花するらしい。
     それに、花というのはスローモーションのように徐々に咲いてゆくものなんだ。
     どんなに目を凝らしても、不眠不休で張り付きでもしない限り満開の様子は見られないんだ」


しまった……。

僕は言った後に気付き、罰が悪い思いになった。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:12:25.20 ID:KLKIYJyx0
頭を掻きながら顔をしかめている僕に、
彼が笑いを含んだ声で言った。

川´,_ゝ)「確かにあんちゃんの言うとおりなんだろけど、
     なんて言うんだろ、
     なんかぱーっと咲きそうな気がしてさ。ぱーっと」

彼は握り拳の甲を下に向け、
ぱっと花が咲くジェスチャーをして見せた。

声同様の純粋さが感じらるその仕草に、
私は微笑をこぼしながら、言った。

(´^ω^`)「ぱーっとか」

川´_ゝ)「あ、そう言えば」

彼が思い出したように目と口を開き、
声を上げた。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:13:09.20 ID:KLKIYJyx0
(´・ω・`)「どうしたんだい?」

川´_ゝ)「あんちゃん、大丈夫かい?」

(´・ω・`)「大丈夫――」

(´゚ω゚`)「あ……」

腕時計を見た。

時刻は二時二十分。

(;´゚ω゚`)「やばい!」

僕は大声を上げ、
ベンチから飛び上がった。

川´,_ゝ)「あちゃ、タイムロスしちゃったか。
     悪かったね。つきあわせちゃって」

彼は言葉とは裏腹に悪びれた様子もなく、
笑顔で言ってのけた。

僕も笑いながら返した。

(;´^ω^`)「いや、気にしないでくれ。
       それより、桜が咲く瞬間、見れるといいね。
       頑張れよ」

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:13:30.05 ID:KLKIYJyx0
川´_ゝ)「あんちゃんこそ」

彼は横顔のまま、
私に向けて左手を挙げた。私も右手を挙げ、応えた。

(´・ω・`)「それじゃあ」

彼に背を向け、
僕は歩き始めた。

それから十メートルほど進んだところで足を止め、
ベンチを振り返った。

石造のように固まり、
桜を凝視している彼の姿がそこにあった。

浅黒い横顔にはまった目が、
離れた距離からでもはっきりとわかるほどに燦然とした輝きを放っている。

僕は口のまわりを丸めた掌で囲い、
彼に向って声を上げた。

(´・ω・`)「明日もまた、ここにいるよ!」

僕の声を聞き取ったのだろう、
彼は満面の笑みを浮かべ、左手で私に手を振った。

むろん、顔は前を見据えたままだ。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:13:54.20 ID:KLKIYJyx0





     fin






60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:14:51.18 ID:KLKIYJyx0





     『失態』






61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:15:07.37 ID:KLKIYJyx0
酒は飲んでも飲まれるな。

こんな言葉がある。

誰が考えたのかはわからないが、
誰が考えたかなどどうでもいい。

その言葉を思い出すたび、
私は考え出した人間のしたり顔を思い浮かべてしまうのだ。

男か女かはわからない。

ただぼんやりと、輪郭のあやふやな影が、
ノックアウト勝ちしたボクサーのように、踊り終えたバレリーナのように、
口角を上げている姿が目に浮かぶ。

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:15:29.48 ID:KLKIYJyx0
――俺はお前の思い通りにはならない。

心の中で一人ごち、
私はグラスに入ったベージュの液体を喉に流し込んだ。

ほのかな甘さとミルクのコクが舌に絡む。

やはり六本木のバーで飲むカルアミルクは、
騒々しい居酒屋で飲むものとは格が違う。

バーテンが振るシェーカーの音に耳を傾けながら、
少しずつ口に含み、舌で転がし、ゆっくりと飲み込む。

ここなら誰にも邪魔はされない。

皆がビールを頼むなか、
自分だけカルアミルクを注文して冷やかされるようなこともない。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:15:52.61 ID:KLKIYJyx0
私はビールが一口も飲めないのだ。

苦味も喉越しも、私には苦痛でしかない。

ジョッキ一杯のビールか、ジョッキ一杯のセンブリ茶か、
選択を迫られたら私は迷わずセンブリ茶を選ぶほどにビールを嫌悪している。

一気飲みを強要したり、
この世にビール嫌いな人間などいないとでも言うように、
勝手にビールを注文する輩にも怒りを覚えてしまう。

そのおかげで私は長い間飲み会とはご無沙汰になっている。

だが、それで良いのだ。

己を偽り、飲み会で神経をすり減らすくらいならば、それで良い。

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:16:35.39 ID:KLKIYJyx0
私は小さく息をつき、もう一度グラスに口をつけた。

だが、唇に伝わったのは氷の感触だった。

いつの間に飲み干していたのか。

考えにふけり、漠然と口に運び続けていたことに、
その時になってようやく気付いた。

気付くのが遅すぎたのだ。

後悔の念に苛まれながら、
もう一杯を注文しようとした時だった。

川 ゚ -゚)

ふと、私の隣のスツールに一人の女性が座っていた。

肩まで伸ばした黒髪、長いまつ毛は眼の大きさを強調し、
白い顔立ちを頭上の蛍光灯が際立たせている。

服装は上下濃紺のレディーススーツ。

おそらくオフィスレディだろう。

私の視線に気付いた女性が、
こちらを向いた。

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:17:10.37 ID:KLKIYJyx0
しまった……。

私は女性に非難されるのではないかと焦った。

しかし、女性の反応は私が予測したものとは全くの正反対だった。

女性はエメラルドブルーの酒で満たされたカクテルグラスを掲げ、
微笑を浮かべた。

そして、こんばんは、と言ったのだ。

完全に虚を衝かれてしまった私は、
こ、こんばんは、という不格好な返答をするのがやっとだった。

川 ゚ -゚)「このお店にはよくいらっしゃるんですか?」

なおも女性が声を掛けてきた。

私は気を取り直すために一度咳ぶいてから、答えた。
  _
( ゚∀゚)「よく、と言うほどではありまんね。
    週に三回くらいです」

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:17:37.10 ID:KLKIYJyx0
女性は、そうでしたか、
と小さく二回頷くと、はにかみながらこう続けた。

川 ゚ ー゚)「実は私、このお店初めてなんです。
     お店、と言うより、バー自体がはじめてなんですけど」

私は軽く瞠目し、
驚いた素振りを見せた。
   _
Σ( ゚∀゚)「バーが初めて?
     先ほどの振る舞いからはとてもそのようには見えませんでした」

女性は口に手を当て、
含み笑いをした。

川 ゚ ー゚)「ただそれらしく振る舞ってみただけです。
     でも、内心はびくびくしていたんですよ」

これといって高くも低くもないが、
柔和で透明感のある声で、
彼女はそう言った。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:18:19.04 ID:KLKIYJyx0
私も反省の気持ちを表すため、
若干顔をしかめながら、
こう弁解した。
 _
( ゚∀゚)「それは私も同じです。
     あなたが私の視線に気付いた際、
     てっきり気を悪くしてしまったのではないかと焦ってしまいました」

彼女は笑みを湛えたまま、お気になさらず、と言った。

確かに気を悪くした様子は見受けられない。

どうやら安心してよさそうだ。

首を正面に戻し、
次はどんな話題を切り出そうか。

思案に暮れている私に、
女性が再び声を掛けてきた。

川 ゚ -゚)「なにを飲んでいたんですか?」
 _
( ゚∀゚) 「え?」

横にいる女性を見た。

が、女性の視線は私ではなく、
私の前に置かれたグラスに注がれている。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:20:14.90 ID:KLKIYJyx0
私は思わず、ウイスキーですよ、と嘘をついてしまった。

なぜこんな嘘をついたのか、私にもわからなかった。

多分、女性に幻滅されることを恐れたのだろう。

嘘をついた理由は、これしか思いあたらなかった。

だが、正直なところ、女性がいつ私の隣に座ったのか、皆目検討がつかない。

私が物思いに耽っている間に座った可能性が高かった。

いや、確実にそうだろう。

となれば、私は見え見えの嘘をついたことになる。

その結論に達したと同時に、再び焦りが私を襲った。

彼女は完全に私への興味を失ってしまったかも知れない……。

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:20:54.38 ID:KLKIYJyx0
「やっぱり」

女性の声が聞こえた。

視線を上げると、彼女は微笑を浮かべながら、
テーブルに頬杖をついていた。


川 ゚ ー゚)「こういうお店には、やっぱりウイスキーがあいますよね」

あえて気付いていないふりをしているのだろうか。

見透かされている気がしないでもないが、私は話を合わせた。
  _
( ゚∀゚)「ええ、私は決まってロックでそのままの味を堪能するのが好みでして」

こうなったら嘘をつき通すしかない。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:21:23.01 ID:KLKIYJyx0
私は腹を決め、
カウンターの奥にいるバーテンを呼んだ。

そして、ウイスキーのロックを一つ、と平静を装いながら注文した。

かしこまりました。

慇懃に頭を下げたバーテンは、
アイスペールから氷を三つグラスに落とし、
丸い瓶に入ったウイスキーを注ぐと、私の前に置いた。

完成までに三十秒もかからなかった。

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:22:02.41 ID:KLKIYJyx0
ウイスキー。

正直なところウイスキーはコークハイやジンジャーハイなど、
ジュースで割ったものしか飲んだことがない。

あまりの口当たりの良さに調子に乗って五杯飲み、
トイレの住人になったことを思い出した。

良い思い出がないうえ、
いま目の前にあるのはロックだ。

未知の体験と言ってもいい。

不安ではあるが、元はと言えば身から出た錆。

自分で自分の首を締めた結果なのだ。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:22:41.39 ID:KLKIYJyx0
私は意を決し、ウイスキーを一口飲んだ。

途端に体が火照り、喉に焼けるような熱さを感じる。

思わず眼を見開きそうになったが、
必死に眼をつむり、
味を確かめるように何度も頷くふりをして誤魔化した。

やはり、コークハイなどとはわけが違う。

さすがにこれを五杯も飲んだら急性アルコール中毒になりかねない。

ここは氷が溶けて薄まるのを待つのが得策だろう。

今度は香りを楽しむふりをしてグラスを回した。

だが、それは逆効果だった。

グラスを回すことによって香りが引き立ち、
鼻腔が受け止めた匂いによって軽く眩暈を起こしてしまったのだ。

この調子では一杯を飲みきることも難しいだろう。

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:23:02.87 ID:KLKIYJyx0
川 ゚ -゚)「どうですか?」

グラスを持ったまま茫然としている私に、
女性が訊ねた。
 _
(*^∀^)「やはり、これですね」

満面の笑みを浮かべながら、
グラスを掲げて見せた。

顔の火照りからして、
かなり紅潮していることが自分でもわかる。

彼女も感付いているだろう。

私が痩せ我慢をしていることも。

もういい。

今更後には引けなかった。

こうなったらとことんピエロを演じるしかなさそうだ。

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:24:31.07 ID:KLKIYJyx0
私は残っているウイスキーを一息に呷り、
誇るかのように空のグラスを女性に掲げて見せた。

次いでおかわりを注文し、
二杯目も一息に呷る。

二杯目を空けた頃には意識は朦朧とし、
火照りよりも心地よさを感じ始めていた。

視界が歪み、
彼女の輪郭がぼやけている。

薄らとだが、歪んだ口元が確認できた。

おそらく、笑っているのだろう。

それが嘲笑なのかはわからない。

わからないが、そんなことはどうでもいい。

世界が揺れているのか、自分が揺れているのか、わからないが、どうでもいい。

今はこの心地よさに身を任せよう。

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:25:11.93 ID:KLKIYJyx0










          今は――











83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:25:29.69 ID:KLKIYJyx0
――気がついた時、
私は四方を壁に囲まれた狭い空間に独りで座り込んでいた。

ここはどこかと考えるより早く、
強烈な吐き気が私を襲い、
私は目の前の便器に向かって盛大に嘔吐した。

壊れた消火栓、いや、炎を吐くゴジラのように勢いよく吐いた。

辺りを見回すと、
四方の壁には誰のものかもわからない電話番号やスプレーによる落書きがされている。

そうか、ここは……。

醜態を晒す前に店を出たのか、
それとも追い出されたのか、わからない。

店、店と言えば――その瞬間、私は再び便器に抱きつき、胃の中の物をぶちまけていた。

ひと時の心地よさの代償として、
私は胃の中の物と後悔の念を捧げるはめになったのだ。

捧げるとは、一体誰に……。
 
明滅する頭上の照明が、
便器に俯いた私の影を投げかけている。

ぼんやりと浮かぶ影。

その影は、心なしか口角を上げているように見えた。

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:25:55.66 ID:KLKIYJyx0





     fin






86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:26:53.47 ID:KLKIYJyx0





     『夢』






88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:27:25.26 ID:KLKIYJyx0
「なぜこない……」

一人が呟いた。

嘆願の呟きに応答するかのように、
雨脚は強さを増した。

嘲笑うように、
木々はざわめいた。

合流地点にたどり着いた我々の先発隊は、
二時間を越える待ちぼうけを食っていた。

ここに着くまでに私を含め八人いた隊員は四人にまで減った。

味方の隊が来なければ我々は死ぬなのだろうか……。

そんな言葉が頭に浮かび始めていた。

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:27:56.44 ID:KLKIYJyx0
雨は一向に止む気配がなかった。

私は木にもたれながら座り、
降り注ぐ雨粒に目を凝らし続けていた。

雨粒が戦闘服に沁み込み、
重量二十キロの装備にさらに重みを加えていた。

だが、そんな感覚を忘れてしまうほど、私の喉は渇ききっていた。


月の光に照らされ煌く雨粒が私を誘惑する。

無数の粒が木の葉をすり抜け、
頭に落ち、頬を伝い顎から滴り落ちた。

私は煌きの誘惑に耐えながら、
周りを見回した。

仲間達も、
私同様魅惑の煌きを見つめていた。

一粒ですべてが救われる。

そんな錯覚に惑わされまいと、
己を押さえ込んでいる。

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:30:57.98 ID:KLKIYJyx0
(;´-_ゝ-`)「腹、減ったな……」

私の隣でへたり込んでいる仲間が擦れ声で呟いた。

腹部に巻かれた包帯に血が滲んでいる。

( ФωФ)「喋るな」

カラカラに枯れた声を搾り出し返答した。

口の中が乾ききって思うように喋れない。

(;´-_ゝ-`)「いいんだ。返事をしなくてもいい。聞いてくれ」

私は彼の言うとおりにし、
黙って雨粒を見つめ続けた。

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:31:33.12 ID:KLKIYJyx0
荒い息を吐きながら、
彼も続けた。

(;´-_ゝ-`)「ずっと、帰ったら、何を食おうか考えてたんだ」

彼の声は風に煽らる灯火のように弱弱しい。

私は聞き耳を立てながら、
横目で彼の腹を見た。

血がさらに滲み出し、
包帯全体が真赤に染まろうとしている。

灯火は今にも消えようとしていた。

(;´-_ゝ-`)「やっぱ肉だよな。分厚いステーキなども考えたが、
        ハンバーガーもいい。
        肉汁滴るパテにはみ出しそうなケチャップ」

徐々に迫る死の恐怖を払拭するかのように声を絞り出している。

私もできる限り耳を澄ませた。

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:32:02.39 ID:KLKIYJyx0
(;´-_ゝ-`)「早く、帰りてえな……」

返答してやりたかったが、
口を数ミリ動かすことすら億劫だった。

私は黙って聞き流した。

そして再び雨音だけが私を包んだ。

一瞬、
無風だったはずの密林に風が通り過ぎたような気がした。

私はあえて横を見なかった。

無線機のノイズのような雨音が耳にこびり付く。

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:33:12.20 ID:KLKIYJyx0
ふと、微かではるが、
ノイズの中に何か別の音が紛れ込んできた。

耳を疑ったが、数秒もしない内に、
それがヘリのローターの音であることに感付いた。

音が徐々に近づいてくるのも分かった。

「ああ……」
 
仲間達も感付いたのだろう。

仲間の一人が呻いた。

私は微かに上を見上げた。

ヘリの姿はまだ確認できない。

私を含め誰もが救いを期待した。

しかし、音がこれ以上近づいてくることはなかった。

音が何処かで留まっている。

なぜ留まっているのか。

その疑問に答えるかのように、
轟音が鳴り響いた。

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:33:37.45 ID:KLKIYJyx0
轟音と共に閃光が襲い掛かる。

私は腕で目を覆った。

木々が揺れ、地が揺れ、我々が揺れた。

熱風が体を煽った。

濡れた全身を一瞬で乾かしてしまいそうなほどの熱風に耐えゆっくり目を開くと、
目先一キロにも満たない位置に太陽の片割れのようなドームが膨れていた。

その光が私の目を突き刺した。

私は顔を逸らし、
気づいた。

ヘリが我々を救いにではなく殺しにきたことを。

間もなく再び轟音が響いた。

距離は同じだが、
今度は我々の隣の位置に落ちた。

耳と目と体に襲い掛かる。

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:49:08.16 ID:KLKIYJyx0
次は我々の頭上に落ちてくるのではないか……。

何も見えず、耳が痛み、熱さに悶え、私は慄いた。

脳がシャッターを下ろし、思考を寸断した。

耳が、目が、体が――






112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:49:35.32 ID:KLKIYJyx0
――やがて、痛みも熱も感じなくなっていた。

むしろ暖かい。

辺りがオレンジ色に染まりだし、
鳥のさえずりも聞こえる。

目を開いてみた。

同時に鋭い光が私の目を突き刺した。

私は咄嗟に目をつぶった。

荒く息を吐きながら、
身を振るわせた。

そんなはずはない。

もう一度、
ゆっくり細目を開けてみた。

光の正体はカーテンの隙間から差し込む陽射しだった。

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:50:11.50 ID:KLKIYJyx0
大きく息を吐き、
体を起こした。

隣のカーテンを全開にする。

一斉に解き放たれた光に顔を背けた。

五秒ほどして向き直り、
空を見上げた。

目の前を雀が通り過ぎた。

雨は一粒も降っていない。

漂う雲と、
紛れもない太陽が浮かんでいるだけだ。

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:50:32.08 ID:KLKIYJyx0
ベッドから降りて部屋を眺める。

注ぎ込まれた光が六畳の空間とYシャツとズボン姿の私、
漂う埃の粒子を照らし出していた。

ぼんやりと佇む三十八型テレビ、小さなテーブル、
その上に置かれた茶色い紙袋、小型冷蔵庫、
それらが醸し出す侘しさが私が現実にいることを実感させる。

テーブルの上の紙袋が気になった。

昨夜に何かを買った気がするが、
疲れのせいかよく覚えていない。

疑問をかき消すかのように襲った喉の渇きに耐えかね、
三歩あるいた位置にあるキッチンへ向かった。

シンクに置きっ放しで汚れのこびり付いたグラスに水を注ぐ。

グラスから溢れるまで注ぎ、
濡れた手のまま一息もつかずに飲み干す。

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:51:46.75 ID:KLKIYJyx0
もう誘惑に耐える必要はなかった。

もう一杯注ぎ、
今度は上から水を眺めた。

グラスを少し傾けると、
表面が煌いた。

あの時の煌きとは、
同じようで何かが違って見える。

もう一度グラスを傾け水を煌かせた。

その行為に夢中になっている私を、
ある音が現実へ引き戻した。

118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:53:10.21 ID:KLKIYJyx0
音がした窓際へ行き、空を見ると、
そこには一点の白煙が上がっていた。

徐々に霞み、虚空に消えると共に再び上がり、
大砲のような音を立てた。

それが何の音なのかは、
直ぐに見当がついた。

平和な響き。

私にはそう感じられた。

その後五発打ち上げられ、
音は止んだ。

私は虚空に消える白煙を全て見届けた。

120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:53:57.31 ID:KLKIYJyx0
振り返り、
目の前にあるテーブルを見下ろした。

テーブルの真ん中に置かれた紙袋を持ち上げ、
中身を取り出す。

とても軽く、柔らかい。

包みを開くと、
現れたのは食べかけのハンバーガーだった。

一口だけかじられ、
断面からケチャップが滲み出した。

それは徐々に滴り、
包みに落ちた。

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:54:22.95 ID:KLKIYJyx0
――記憶が蘇った。

昨晩夜勤の帰りに買ったハンバーガーだ。

部屋に着いたのが深夜の三時。

食欲はなくもなかったが、
疲労がそれを上回った。

一口かじっただけで袋に戻し、
ベッドに沈み込んだ。

それから悪夢を見て、
今ここにいる。

ベッドのそばにおかれた目覚ましを見た。

時刻は十一時五十九分。

秒針が十一を過ぎる。

三、二、一――鐘が鳴った。

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:55:03.74 ID:KLKIYJyx0
間をおき、
のんびりと流れる鐘の音に耳を傾ける。

二十秒ほど、
直立不動で鐘の音に聞き入った。

この瞬間からハンバーガーが夜食から昼食に変わった。

買ってから九時間が経っている。

湿り気をおび、
湯上りの肌のようにふやけていた。

肉汁も乾ききっている。

今すぐゴミ箱へ捨て、
カップヌードルを食すべきだった。

だが体が動かなかった。

意を決して一口かじろうとした時、
電話が鳴った。

ハンバーガーを片手に持ったまま受話器をとった。

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:55:31.83 ID:KLKIYJyx0
( ФωФ)「もしもし」

「どうも」

即座に低く澄んだ声が返ってきた。

( ФωФ)「おは……いや、こんにちはか。
      どうしたんだ」

彼女は笑いを含んだ声音で「ええ、おはよう」と返し、続けた。

「どうしたってほどの事でもないんだけど。
改めてあなたにお礼を言おうと思って。
昨日はありがとう、助かったわ」

私はため息混じりに言った。

( ФωФ)「そんなことか。俺は別に貸しを作ったなどとは思っていない。
      残業の肩代わりの礼を言うためだけにわざわざ電話をしてくるな」

「あなたにとってはそうかも知れないけど、
 やっぱり私の気がすまなくて」

128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 01:00:43.97 ID:KLKIYJyx0
( ФωФ)「分かったよ。どういたしまして。
       これでいいだろ? じゃあな」

「待ってよ!」

受話器を耳から放した瞬間、
彼女が大声で叫んだ。

怒りではなく狼狽を含んだ声音だった。

( ФωФ)「用件は伝えたのだからお前の気もすんだだろ」

「まあ、その……あなた今暇なんでしょ?
 私も今昼休みだし……昼食でもどうかなと思って。
 もちろん私のおごりで」

彼女は言いよどみながらもなんとか言い切った。

私は片手に持ったハンバーガーを見つめたままこう返した。

( ФωФ)「すまないがちょうど今から昼食を食う所だったんだ。
       それじゃあ」

今度は有無をいわせず即行で電話を切った。

129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 01:01:10.59 ID:KLKIYJyx0





     fin






131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 01:04:37.78 ID:KLKIYJyx0
以上となります

支援やコメントありがとうございました
本当に助かりました

それと、五つの物語に関連性は全くありません
変な期待をさせてしまい申し訳ございませんでした……

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:33:00.97 ID:vxFicEfc0
いっこめのオチがわからん

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 00:42:39.83 ID:oAuyxK9GP
ウイスキー呑んで吐いて何が起きたの?

132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 01:05:28.24 ID:KvkMQ3rx0


かなりあっさりしてたな
でもこういうのも悪くない

141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/12(火) 01:24:24.87 ID:KLKIYJyx0
>>97
喫茶店に入ってからトソンに言われた「牛乳嫌いでしょ?」
という問いに答えそびれていたことに気付き飛び出した
それだけなんです
>>105
結局お酒に飲まれてしまったということです

どの話にも全く深い意味はありませんw
>>132
ヘミングェイやチャンドラーなどの簡潔な文体が好みなので、
とにかく端的に描くことだけを心掛けました

コメント

四つ目と最後の短編は随分乾いた文体だな
[2011/10/01 00:12] URL | #- [ 編集 ]


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