mesimarja
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('A`)シュウマツのシュウマツ のようです
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 21:15:22.88 ID:D+H+h/Ub0
地球が終わる。
 
そのことが初めて報道されたのは何年前のことだったか。
NASAだか何だかのお偉いさんが、地球に向かってくるでっかい隕石を見つけたそうだ。
 
当時マスメディアはこぞってその事で騒いでいた。
やれ衝突を回避する手段はあるのかとか、国としてはどうするのかとか。
 
しかし人間とは真新しいモノを追いたがるもので。
時間が経つにつれ、ニュースの最後にちょろっと情報が出れば良い程度のものになっていた。
 
それが再び騒ぎ出したのは、衝突を回避するための作戦が失敗に終わってからだった。
 
地球と共に最後を迎えるか。
それとも、いつの間にか政府が用意した宇宙船で脱出するのか。
テレビや新聞は大騒ぎ。
おまけにコンビニで立ち読みしたゴシップ誌には、
 
【週末の終末(ウィークエンド・エンド)、来たる!!】
 
という、書いた本人としては上手い事してやったつもりなのだろうがクソも面白くない、
酷い見出しがデカデカと載っていた。
 
今日は金曜日。
 
 
 
そしてその、【週末の終末】とやらは――――明日だ。
 


4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 21:15:40.95 ID:D+H+h/Ub0
 
 
 
('A`)シュウマツのシュウマツ のようです
 
 
 

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 21:18:48.53 ID:D+H+h/Ub0
そんな金曜の真っ昼間。
 
('A`)「……ふぅ」
 
俺は街を歩いていた。
こんな時に真面目に仕事をするバカもいない。
 
高校卒業後、すぐに就職してから早五年。
親は俺が成人して間もない頃に、仲良くポックリ逝っちまった。
仕事も無けりゃ家族もいない。
 
そんなワケで、特に意味も無く街に出てきた。
ただそれだけ。
そう、それだけなんだが。
 
('A`)「……見事に誰も居ねぇでやんの」
 
目の前に広がる視界。
そこには車はおろか、人っ子一人の姿も無かった。
いつもより広く見える歩道。
音の無い大通り。
 
もしかして俺一人だけ取り残されたんじゃないだろうか?
そんな考えが頭をよぎる。
 
普段と違う街並み。
それを見て、改めて終わりが来ることを感じた。
 

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 21:22:42.23 ID:D+H+h/Ub0
('A`)「……」
 
静かな大通りを一人歩く。
 
歩く。
歩く。
歩――
 
('A`)「ん?」
 
何か今、見慣れたものがあったような……。
そんな気がして、来た道を少し引き返してみる。
 
('A`)「ここは……」
 
俺の目の前にある建物。
それは誰もが知っている店、ミスタードーナツ。
 
('A`)「そういや、卒業してから一度も行ってなかったな」
 
高校の頃はよくここでダベってたっけか。
不意に懐かしさを覚え、ダメ元で入り口の取っ手を押してみる。
 
('A`)「おっ」
 
意外な事に鍵はかかっていなかった。
無用心だと思いながらも、気にせず押す。
僅かな抵抗も空しく、ドアはあっけなく開いた。
 

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 21:26:07.87 ID:D+H+h/Ub0
久しぶりに訪れた店内を見回す。
インテリアや席の位置は当時の記憶のままだった。
 
('A`)「変わってねぇな」
 
呟きながら一歩、また一歩と歩みを進める。
途中、カウンターの中から灰皿を一つ拝借して、店の奥へと向かう。
 
入り口から一番離れた席。
そこが俺達の指定席のようなものだった。
 
灰皿をテーブルに置き、通路側の椅子をずらして座ってみる。
そこから見える景色もやはり、当時と同じものだった。
違うのは、向かいにあいつが居るか居ないかだけだ。
 
あいつ。
 
『役者になる』という夢のためにこの街を離れ、遠い地へと行った彼女は今頃、どうしているのだろう。
宇宙船に乗って、そこからこの星を眺めているのか。
それともここに残り、隕石が落ちるのをただ待っているのだろうか。
 
('A`)「考えても仕方ないか」
 
ジャンパから煙草を取り出し、火を点ける。
 
('A`)y━・~「……」
 
この店に居るからだろうか。
立ち上る煙を見ながら、ぼんやりと昔の事を思い出していた。
 

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 21:29:17.70 ID:D+H+h/Ub0
 
あれは高校三年の春休み、よく晴れた日のこと。
 
 
『クソっ、このっ、取れないぞっ!』
 
('A`)『……』
 
程よく静かな店内。
テーブルの上にはドーナツとアイスカフェオレ、そして広げられたノート。
ノートに書き込まれているのは、部活で使う台本の下書き。
当時、演劇部に所属していた俺は、三年になってから台本作りを任されていた。
その向かいで、苛立ちを隠そうともしない声が聞こえる。
 
『あぁもうじれったいなっ! このっ、このっ!』
 
次第に声は大きくなっていく。
目の前のノートに集中したかったけど、さすがに店の迷惑になるのは不味い。
店員が来る前に注意した方が良いだろう。
そう思い、顔を上げる。
 
('A`)『おいおい、うるさいぞ。つーか、何してんだよ?』
 
ノハ#゚⊿゚)『そんなの見れば分かるだろっ! ミルクの蓋が取れないん、だっ!』
 
言いながら彼女は、ミルクのポーション相手に悪戦苦闘していた。
その様子は、バナナの皮を上手く剥けない猿のようにも見えた。
……後が怖いから言わないけど。
 
('A`)『確かに見りゃ分かるけどよ。何でそんなモンに手間取ってんだよ』

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 21:32:38.15 ID:D+H+h/Ub0
俺の疑問に彼女――素直ヒートは一言。
 
ノハ#゚⊿゚)『爪切ったばっかなんだよっ!』
 
('A`)『あー、さいですか』
 
実にシンプルな答えだった。
そうだ。
彼女はいつもシンプル、言い換えれば単純、つまりは分かりやすいヤツだった。
だからこそ、一緒に居て楽なのだが。
 
ノハ#゚⊿゚)『クッソもういいっ! こうなったら――』
 
俺が一瞬意識を離している間に、ヒートは手で取ることを諦めていた。
手で開けられないのなら別の場所で。
そう考えたらしい彼女は、ポーションを自分の口へと持っていく。
 
……いや、それって女としてどうよ?
 
('A`)『ヒート』
 
ノハ#゚⊿゚)『ん? 何だ、ドクオ』
 
声をかけたら睨まれた。
その目はまるで、邪魔をするな、と。
そう言っているようだった。
 

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 21:35:30.29 ID:D+H+h/Ub0
('A`)『ほら、貸してみ?』
 
ノパ⊿゚)『へ?』
 
('A`)『いや、「へ?」じゃなくて。開けてやるから、ほら』
 
ノハ;゚⊿゚)『あ、ああ……うん』
 
ヒートからポーションを受け取る。
爪を立てて引っ張れば、ビニールはあっさりと剥がれた。
 
ノハ*゚⊿゚)「おぉ!」
 
('A`)『こんなことで声上げるなよ。ほれ』
 
ノハ*゚⊿゚)『どうもなっ、ドクオ!』
 
('A`)『こんぐらいお安い御用、っと。さて、こっちはどうするかねぇ』
 
ヒートにポーションを渡して、再びノートとにらめっこする。
すると、
 
ノパ⊿゚)『どうしたんだ?』
 
ヒートがこちらに身を乗り出してきた。
互いの顔が近くなり、俺は慌てて頭を後ろに引く。 
 
ノパ⊿゚)『?』
 
(;'A`)『と、とりあえず台本は出来たんだが、配役が決まらねぇんだよ』

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 21:38:59.94 ID:D+H+h/Ub0
ノパ⊿゚)『新歓でやるヤツか?』
 
('A`)『そうそう』
 
ノパ⊿゚)『新歓なら、舞台に慣れさせるってことで二年を使った方が良くないか?
.     台本もそんなに長くは無いんだろう?』
 
('A`)『そりゃあ、まぁな。でも一応、演劇部の紹介も兼ねてるからなあ』
 
ノパ⊿゚)『それはアタシ達三年がフォローすればいい事だろう。
.     とにかく、話の中心人物は二年で固めちまおう』
 
('A`)『部長のお前がそう言うなら構わんけどさ。
.    そうすると、ヒロインはどうする? 俺としては津出の妹が良いと思うけど』
 
俺がそう言うと、ヒートは腕を組んで考え始める。
自然と強調される彼女の胸。
俺はそこに視線が集中しないよう、自分を抑えるのに必死だった。
 
ノパ⊿゚)『んー、いや、そこはミセリにしよう!
.     台本読んだ感じだと、そっちの方がしっくりくるぞっ!』
 
(;'A`)『んあ!? ミ、ミセリ? ……ああ、あのチビスケね。
.    しかしなぁ、 アイツ、声は通るけど動きが硬いような気もするぜ?』
 
ノパー゚)『そこらへんはアタシが何とかするさ』
  
('A`)『流石はウチの看板女優。言うことが違うねぇ。
.    そんじゃヒロインはそれでいいとして、音響は? ミセリって確か、音響班だろう?』
 

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 21:42:21.62 ID:D+H+h/Ub0
ノパ⊿゚)『そこはショボンに頑張ってもらうしかないなっ!』
 
(;'A`)『うへぇ、マジか。この老人役、アイツのイメージで書いてたんだけどな』
 
ノパ⊿゚)b『大丈夫だっ! 音響にはトソンをサポートで付けるし。
.      老人役は……そうだな、クックルにやってもらおう!』
 
クックル……確か大道具のヤツだったか。
ガタイが良い割りに手先が器用だから、結構重宝してるってシャキンが――
 
(;'A`)『っておいおい、そいつはまた随分とゴツい老人になるぞ!?』
 
ノパー゚)『そういうのもアリだろう?』
 
俺の心配は笑顔と共に切り捨てられる。
そりゃあね? カツラとか衣装で誤魔化せば、老人に見えなくもないけどさ。
百九十センチオーバーで筋骨隆々な御老人なんて、どこ探せば居るんだよ?
 
ノパ⊿゚)『なんだ、アタシの祖父ちゃんに文句でも言いたげな顔だな』
 
……訂正、身近にいらっしゃいました。
 
(;'A`)『いや、面白そうだとは思うけどよ。あいつ、ちゃんと演技出来たかなあ』
 
ノパ⊿゚)『だから細かい所はアタシ達で――』
 
(;'A`)『はいはい、分かった分かったから。とりあえず、後は先生と相談だな』
 
これ以上話していると、またどんな突拍子も無い事が飛び出てくるか分からない。
なので無理矢理話を終わらせて、ノートを閉じた。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 21:45:27.45 ID:D+H+h/Ub0
皿の上のドーナツを手に取り一口頬張る。
 
('A`)(美味いなぁ、フレンチクルーラー。こいつを作った人は表彰されるべきだろ)
 
そんな事を思っていると、なにやら視線を感じた。
顔を上げてみれば、ヒートが不機嫌そうな表情でこちらを見ていた。
  _, ._
ノパ⊿゚)『……』
 
('A`)『……?』
.  _, ._
ノハ;゚⊿゚)『……ぅわっぷ』
 
数秒ほどの沈黙の後、彼女は口に手を当てて変な声を出した。
食いかけのドーナツを皿に置き、声をかける。
 
('A`)『どうした? 気分悪いのか?』
 
ノハ;゚⊿゚)『いや、そうじゃないんだが……お前の皿見てたら胸焼けしそうに』
 
('A`)『はい?』
 
ノハ;゚⊿゚)σ『よくそんなに甘いものばかり食べられるな』
 
彼女が指差す先にあるのは俺の皿。
その上にはフレンチクルーラーやエンゼルフレンチ、エンゼルクリームといった、
甘いドーナツばかりが十個ほど置かれていた。
そして皿の横には、ガムシロが二つ入ったアイスカフェオレ。
 

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 21:48:12.48 ID:D+H+h/Ub0
('A`)『頭脳労働後の糖分の補給は、大事だと思うんだぜ』
 
ノハ;゚⊿゚)『いやいやいやっ! そうだとしても取り過ぎだろう!』
 
('A`)『その他の理由としましては、単に俺が甘党という事が挙げられます。
    つーか、お前の皿は俺と違って甘いものが無いな』
 
ヒートの皿には、オールドファッションやフランクパイ。
その横に置かれたコーヒーにはミルクのみ。
見事に甘さとは無縁だった。
 
ノパ⊿゚)『どうも甘ったるいのは好きじゃないんだよな』
 
('A`)『そういうところはクール先生と逆だよな。
    まっ、あの人はあの人で、コーヒーに砂糖を十杯も入れるような人だけど』
 
俺は、我等が演劇部の顧問であるヒートの姉を引き合いに出す。
すると途端に、彼女の顔がムスッと膨れる。
 
ノパ⊿゚)『そりゃあそうだろ。いくら家族だからって、全部が全部同じなわけじゃなし。
.     姉さんとは性格だって違うしな』
 
('∀`)『そうだな。クー先生は物静かだけど、お前は騒がしいしな』
 
ノハ#゚⊿゚)『悪かったな騒がしくて!』
 
('∀`)『まぁ、そう怒るなって。ほら、ドーナツ一個やるから機嫌直せよ』
 
ノハ#゚⊿゚)『いるかっ!!』
 

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 21:50:36.26 ID:D+H+h/Ub0
そう言ってヒートは横を向く。
頬杖を突きながらコーヒーを飲む姿は、まるで拗ねた幼子のようで。
 
('∀`)『フヒヒ』
 
何故か可笑しくて笑ってしまった。
その直後、
 
ノハ;゚⊿゚)『キモっ!?』
 
と言われたのには、流石に凹んだが。
 
('A`)『……』
 
ドーナツを食べ終わり、カフェオレに口を付ける。
わずかに開けられた窓から風が入り込む。
 
それに合わせて揺れる、彼女の赤みがかった茶髪。
微かに香る、彼女の匂い。
 
 
ノパ -゚)
 
 
そっと覗き見たヒートの顔はどこか物憂げで。
いつもの騒いでる時とは違い、妙に大人びて見えて。
 
 
 
思えば、俺はこの時――

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 21:53:37.91 ID:D+H+h/Ub0
(;'A`)そ「ぉわっちぃッ!?」
 
と、そこで俺は指先の熱さに気付いた。
慌てた拍子に煙草を床に落とす。
見れば、火はフィルター部分まで燃やしていた。
 
(;'A`)「アチチ……クッソ、煙草吸ってたの忘れてた」
 
ぼやきつつも落ちた煙草を拾う。
吸うところが無くなった煙草は、それでもまだ煙を上げていた。
それを灰皿に押し付け、床に散らばった灰を靴で掻き消す。
 
('A`)「はぁ、もう一本吸うか」
 
ほとんど吸わずに消した吸殻を見ながら、もう一度ジャンパのポケットを探る。
しかし取り出した煙草の箱を振ってみれば、底に残っていた葉が微かに音を立てるだけ。
どうやらさっきのが最後の一本だったらしい。
 
(;'A`)「おいおい、マジかよ」
 
空になった箱を潰し、捻ってポケットに戻す。
椅子の背に寄りかかり天井を見れば、うっすらと煙が漂っていた。
それをぼけーっと眺めていたが、少しずつ薄くなり、やがて消えた。
 
('A`)「はぁ、出るか……」
 
行くアテも無いが、ただ黙ってここに居る気にもなれなかった。
立ち上がり、椅子を戻す。
灰皿を元あった場所に戻すと、俺は店を後にした。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 21:57:35.76 ID:D+H+h/Ub0
('A`)「さて、どうするかねぇ」
 
街中をぶらぶらと歩く。
行き先なんて適当に。
しかしこんな時でも歩道を歩いてしまうのは、今までそうしてきたからだろうか。
 
('A`)「……」
 
風が吹く。
街路樹の葉がそれに合わせて、かさかさと音を立てる。
音はいつもよりも、やけに大きく聞こえた。
 
人のいない世界はこんなにも静かだなんて、知らなかった。
 
('A`)「……まっ、知ったところでどうしようもない、か」
 
呟きながらも足は止まる事無く、右と左を交互に出している。
店で懐かしい思い出に耽っていたからだろうか。
景色は段々と住宅街のそれに変わっていき、見慣れた建物が目に入る。
 
('A`)「最後に思い出巡りってのも、悪くは無いか」
 
閉じられた門の前に立ち、横を見る。
そこには
 
【ニューソク市立第一高校】
 
と彫られたプレートが、太陽の光で鈍く輝いていた。
 

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 21:59:56.65 ID:D+H+h/Ub0
('A`)「よっこらセックス、っと!」
 
門を乗り越え、敷地の中に入る。
そういえばここに通っていた頃も、
遅刻した時は同じ事をやっていたのを思い出し、苦笑する。
 
もっとも、あの時と今とじゃ状況は違うが。
 
('A`)「……ん?」
 
門から昇降口までの道。
その途中に、変なものがあった。
 
ペンキでもぶち撒けた様な黒い染み。
それが多分、二つ。
 
('A`)「……」
 
少しだけ足を止め、眼を閉じる。
そして足早にそこを離れた。
 

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 22:03:17.49 ID:D+H+h/Ub0
('A`)「……うっそーん」
 
昇降口まで来た俺は、がっくりと肩を落とした。
入り口には全て鍵が掛かっていたのだ。
ガラスを割ろうかとも考えたが、さすがにそれは止めておく事にした。
自分の非力さは、自分が一番よく知っている。
 
('A`)「さてさて、どうするかね……」
 
元来た道を引き返そうかとした、その時だった。
 
「おい、貴様!そこで何をしている!?」
 
俺の後ろから声が飛んできた。
人が居た事と突然声を掛けられた事に驚き、
 
(;'A`)「す、すみましぇん!! お、おれ、別に怪しいモンじゃ――」
 
と噛みながら振り向けば、
 
  _, ,_ 
川 ゚ -゚)「ん? 君は――」
 
 
俺の人生で恩師と呼べる人が、そこに居た。
 

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 22:05:18.01 ID:D+H+h/Ub0
川 ゚ -゚)っc▽~~ 「……そうか、君も居残り組か」
 
('A`)つc▽~~ 「ええ」
 
俺がそう答えると、クール先生はカップを静かに机に置いた。
 
あれから。
俺は先生に連れられて、部活棟にある演劇部の部室にいた。
「適当に掛けたまえ」という言葉に甘え、窓際の椅子に腰を下ろすと、
先生はコーヒーを二つ淹れ、一つを俺にくれた。
 
('A`)つc▽~~ 「俺には宇宙船に乗れるような金もコネも、無いですからね」
 
なんせ、
 
('A`)つc▽~~ 「乗れるといったら、各国のお偉いさんに大企業のトップ。
         超一流のスポーツマンに見目麗しい芸能人。そんでもって金のあるブルジョワジー。
         一般ピーポーの俺なんて、ハナっから乗れるハズも無い」
 
川 ゚ -゚)「それを言ったら、大半の人間が当て嵌まるけどな」
 
その言葉に、「まぁ、そうですけど」と返して、俺もカップを机に置いた。
そして一つ、聞きたかった事を口にする。
 
('A`)「先生は、どうしてここに?」
 
俺の記憶が間違っていなければ、先生は実家暮らしだ。
昔、そんな事を聞いた覚えがある。
安全な場所などあるのか知らないが、
普通は家族と一緒に逃げたりするんじゃないのだろうか。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 22:08:15.04 ID:D+H+h/Ub0
川 ゚ -゚)「……」
 
俺の質問に先生はすぐには答えず、コーヒーに手を伸ばす。
口付け、戻すまでの数秒。
その間だけ、時間の流れがひどく遅くなったように感じた。
 
川 ゚ -゚)「私は教師だ」
 
決然とした語調で先生は言う。
その眼は、しっかりと俺を見据えている。 
 
川 ゚ -゚)「教師とは生徒を教え、時には悩める生徒を導く者だ」
 
川 ゚ -゚)「生徒が悩み、困り果てここに来た時、
     誰も居ないと知れば、その生徒はどう思うだろうか」
 
考える。
広い校内で誰か居ないかと探し回り、人っ子一人居ないと知ったら。
自分は一人ぼっちなんだと思い知らされたら。
 
川 ゚ -゚)「私は、教え子達にそんな思いはさせたくない。
     だからここにいるんだ」
 
('A`)「すみません、俺……」
 
川 ゚ -゚)「いや、私の方こそ、偉そうな事を言ってすまない。
     ……本当は、こんな事を言える資格なんて、私には無いのにな」
 
そう言って先生は窓の外へと視線を動かした。
空を見るその眼の端が、少し赤くなっていた事に今更気付いた。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 22:11:42.98 ID:D+H+h/Ub0
川 ゚ -゚)「……」
 
('A`)「……」
 
沈黙が続く。
元々、俺も先生もあまり喋る方ではないからこういうのには慣れているが、
今は何か話していた方が良い。
そう思って、口を開く。
 
('A`)「そういえば先生、ご家族は……?」
 
川 ゚ -゚)「ん? ああ、家族か。多分今頃は、母方の実家に向かってるんじゃないか。
     妹は私と一緒に残る、って駄々こねてたが」
 
('A`)「それっt」
 
川 - -))
 
先生は俺の言葉を遮るように首を横に振る。
 
川 ゚ -゚)「駄々をこねていたのは、私の一つ下の妹だ。
     ヒートとは全然連絡が取れない」
 
そうだった。
彼女とヒートの間にはもう一人姉妹がいたことを、俺はすっかり忘れていた。

先生は机の上に肘を突き、両手を組む。
そしてそこに顎を乗せて、俺を見た。
 
川 ゚ー゚)「君は本当にヒートのことが好きだな」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 22:14:33.92 ID:D+H+h/Ub0
二時間後。
ヒートの事で先生にからかわれたり、思い出話に花咲かせていた俺達は、
再び昇降口にいた。
 
川 ゚ -゚)「……行くのか」
 
('A`)「はい」
 
川 ゚ -゚)「そうか。君が決めた事だ。
     引止めはしないが、私は最後までここにいるから。
     何かあったら来い」
 
('A`)「はい。……では」
 
川 ゚ー゚)「ああ。じゃあな」
 
その時の先生の顔を、俺は絶対に忘れはしないだろう。
例え、残りの時間が短かろうとも。
 
('A`)「……」
 
一礼して、先生に背を向ける。
後ろに昇る太陽が、俺達の影を真っ直ぐ伸ばす。
 
先生の影を追い越すまで、彼女がそこを動くことは無かった。
 

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 22:18:01.85 ID:D+H+h/Ub0
来た時と同じように校門を乗り越える。
 
('A`)
 
川::::::::)
 
振り返れば、まだ先生はそこに居た。
ここからでは逆光で、顔までは見えない。
 
そしてその向こう。
 
校舎の後ろから、ちょこんと顔を出している影が一つ。
裏手にある山のものだ。
 
確かちゃんとした名前があったハズだが、
誰もがあの山を『裏山』と呼んでいた。
 
('A`))
 
先生にもう一度、今度は軽く頭を下げる。
そして俺は、歩き出した。
裏山へ。
 
あそこには俺の、情けない記憶がある。
 

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 22:21:10.09 ID:D+H+h/Ub0
三年の冬。
卒業式が終わった後。
俺は勇気を振り絞って、ヒートを裏山に誘った。
 
始めは続いていた会話も、時間が経つにつれ少しずつ言葉数が減っていった。
そして暗くなり始める空。
別れの時間が迫っていた。
 
ノパ⊿゚)『それじゃあ――』
 
(;'A`)『ヒ、ヒート!!』
 
その言葉を遮るようにして、思わず俺は叫んでいた。
彼女がこちらを向く。
 
ノパ⊿゚)『どうした、ドクオ』
 
(;'A`)『あ、その、あの、えっと……』
 
ノパー゚)『何だ? 言いたいことがあるなら、はっきり言えよ』
 
その時、彼女が見せた笑顔に俺は、
 
(;'∀`)『お――お互い! これから頑張ろうな!』
 
自分の気持ちを正直に言えなかった。
 
ノパー゚)『……ああ。それじゃあ、またな』
 
(;'∀`)『お、おう!』 

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 22:25:29.96 ID:D+H+h/Ub0
そうして俺は地元で就職し、ヒートは役者を目指すためにこの街を離れた。
もしもあの日に戻れるなら。
 
そう思った事は何度もあった。
だけど思い出は――
 
('A`)「プライスレス……素晴らしいッ!」
 
そうだ。
かつて俺達が過ごした日々にはもう戻れない。
その代わり、金になんて換えられないあの輝きは、今も俺の中で色褪せずにいるんだ。
 
ヒート。
お前も、そうであってほしい。
そう思う俺は馬鹿だ。
でも。
 
 
(#'A`)「ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
 
 
気が付くと俺は、声を上げながら走り出していた。
今なら音速だって超えられる。
 
目指すは裏山、その頂上へ。
 
桜の木が一本だけ生えているその場所に、彼女が――ヒートが居る。
根拠も確信もクソも無い。
 
無いけれども何故か、そんな気がした。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 22:28:16.68 ID:D+H+h/Ub0
しかし、現実はそんなに甘くはなかった。
 
(;'A`)「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……そりゃあそうだよなぁ」
 
あれから数十分後。
猛スピードで山を駆け登った俺を出迎えてくれたのは、
昔と何ら変わらない頂上の景色だけだった。
 
(;'A`)「あ゙ぁ゙ぁ゙、クッソォ……疲れたぁ」
 
疲れた身体に鞭打ち、木の幹に背を預け座り込む。
日は既に沈み、夜の帳が下りていた。
宵闇と疲れ。
その二つからか、俺の意識はあっさりと意識を手放した。
 
 
* * * * *
 
 
「…………ォ……クオ、ドクオ」
 
(つA`)「……んん?」
 
どうやら、あのまま寝てしまったようだ。
空はまだ薄暗い。
携帯を取り出して見れば、時刻は午前五時。
普段ならまだ寝ている時間だ。
 
(;'A`)「うぉおお、背中痛ぇ」
 

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 22:31:53.35 ID:D+H+h/Ub0
木を背にして伸びを一つ。
そこで俺は初めて、自分の正面に誰かが立っている事に気付いた。
 
インディゴ染めのジーンズ。
白いTシャツ。
風になびく、赤みがかった茶髪。
そして懐かしい顔。
 
その姿に思わず、声に出して呼んでしまう。
彼女の名前を。
 
('A`)「ヒート」
 
ノパー゚)「……ん」
 
ああ。
これは俺の頭が作り出した都合の良い幻か。
それでも。
それでも俺は、言わずにはいられなかった。
 
('A`)「……もう一度逢えて、良かった」
 
ノパー゚)「私もだ」
 
間を置いてから、幻が言葉を返す。
ああクソッ、俺の頭ん中も結構憎い演出してくれるじゃねえか。
 
自然と涙で視界が滲む。
いくら幻といえども、コイツの前では泣き顔なんて見せたくないのに。
 

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 22:34:45.40 ID:D+H+h/Ub0
('A;)「――ッ」
 
ノハ;゚⊿゚)「ド、ドクオ!? どうしたっ!?」
 
ヒートの幻は慌てて近寄り、俺の両肩に手を乗せる。
その手にはちゃんと重さがあって。
リアル過ぎだろうjk、とそう思わずにはいられなかった。
 
ノハ;゚⊿゚)「おい、ドクオ! 何か言えって!」
 
('A;)「たとえ幻でも、最後にお前の姿が見れて、良かった」
 
そう言った途端、
 
ノハ;゚⊿゚)「……は?」
 
幻はぽかんと口を開けた。
 
('A;)「だってコレ、俺の頭が作り出した幻だろ?
    ああ、でも良いんだ。幻でも、お前はお前だから」
 
ノハ ー )「……あー、はいはいなるほど、そういうことか」
 
('A;)「ヒート? あれ? 何でお前、右腕振り上げてんの?」
 
ノハ#゚⊿゚)「いいからさっさと――――目ぇ覚ませっ!!」
 
(;'A`)そ「ちょっ待っtどぅわぁッ!?」
 

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 22:36:54.16 ID:D+H+h/Ub0
彼女の右ストレートは、見事に俺の左頬を打ち抜いた。
衝撃で身体が吹っ飛ばされる。
 
ノハ#゚⊿゚)「どうだっ!? 目ぇ覚めたかっ!?」
 
(;'A(#)「すごく……い、痛いです……。
     あれぇ、おかしいなぁ。幻ってこんなリアルなもんだったけ?」
 
ノハ#゚⊿゚)「なんなら、もう一発いこうか?」
 
ヒートは言葉と共に右腕をぐるぐる回す。
その姿に身の危険を感じた俺は、素早くその場に立ち上がる。
 
(;'A`)「い、いえ、大丈夫です!! すっきり目が覚めました!!」
 
ノパー゚)「そうかそうか。私が気合入れてやったお陰だな」
 
(;'A`)「はいっ――って、あれ? マジで本物?」
 
ノパ⊿゚)「当たり前だっ!! なんだ、やっぱりもう一発欲しいのか!?」
 
(;'A`)「そんな滅相も無い! でも、何でこんな所に……?」
 
ノパ⊿゚)「そんなの決まってるだろう!!」
 
俺の質問に彼女は。
素直ヒートは、やっぱりシンプルな答えを返すのだ。
 
 
ノパー゚)「お前に逢いに来たんだよ」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 22:38:25.12 ID:D+H+h/Ub0
 
 
 
「……ヒート」
 
「何だ、ドクオ」
 
「好きだ」
 
「…………遅いぞ、バカ」
 
 
 
再び滲み出る涙を堪えようとして顔を上げる。
 
夜明けの空。
 
群青に染まるその中で、
流れ星と呼ぶには大き過ぎる星が輝いていた。
 
 
 

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 22:39:43.50 ID:D+H+h/Ub0
 
 
 
('A`)シュウマツのシュウマツ のようです
 
          ― fin.―
 
 
 

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/28(水) 22:41:22.13 ID:D+H+h/Ub0
お付き合いいただき、ありがとうございます。
元々は総合でお題を頂いたもの。


ちなみにお題は

('A`)「プライスレス…素晴らしいッ!」
週末の終末
もしもあの日に戻れるなら
音速

の四つ。
お題もらってから半年以上とか遅筆過ぎだろ俺……。

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