mesimarja
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川 ゚ -゚) 開戦のようです(*゚ー゚)
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/25(金) 23:48:31.69 ID:29JhvHUy0
心のこもらない「おはよう」と、余所行き笑顔からしぃの一日は始まる。
同級生に犬みたいに愛嬌を振りまくと、しぃは椅子に深く腰かけた。
今日も戦争だわ。
そう口の中で呟いて、窓の外を眺めた。まだ初夏ではあるが、空がとても近い。
それはもう、脳天に落下してきそうな程に。朝、空を見上げると、たまに月が見える。
夜はあんなに強く輝くものなのに、朝の月は情けないしぃのようだ。

ζ(゚ー゚*ζ「おはよ!しぃ」

クラスメイトの女子に声を掛けられトランスした意識が戻ってきた。

ζ(゚ー゚*ζ「もう、寝惚けてるの?」

(*゚ー゚)「ごめん、ボウっとしてたあ」

ζ(゚ー゚*ζ「あのね、相談があるの。ジョルジュ君のことなんだけどね」
またその話か。
しぃの造り上げた虚像の性格は、クラスメイトには好評であるようだった。
おっとりしていて可愛いね。小動物みたいね。そして、気が付けば、クラスメイト達から、可愛い可愛いとちやほやされる立場になっていた。
クラスに一人いるであろう、マスコットのポジションとでも言おうか。嬉しくもある反面、胸にモヤモヤした何かが閊えて、とても居心地が悪かった。



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/25(金) 23:51:25.39 ID:29JhvHUy0
ああ嫌だ。
ひとつ小さな溜息を吐くと
(*゚ー゚)「ホームルームが終わったら聴くね!」
いつからか、顔に貼り付いてしまった卑屈な笑顔で答えた。
鬱陶しいと一言言えるなら、どんなに楽だろう。思いっきり顔を歪ませて、他所でやってちょうだいよ。
なんて言えたら格好いい。頬杖をついて、なれっこ無い自分の姿を夢想しては、その度悔しくなる。
しぃの思考を遮るように、担任の教師が教室に入ってくる。担任は三十代の女。
汚らしい茶髪と、自己主張の激しいメークは、年増のくたびれたホステスのようだ。早口で今日の予定を言い終えると

('、`*川「夏休みが明けたら文化祭だけど、勉強を怠らないこと。いいわね」

この一週間で耳にタコができるほど聞かされた言葉を吐き捨てて、教室をあとにした。
そして、すかさずクラスメイトがすり寄ってくる。

ζ(゚ー゚*ζ「ジョルジュ君ね、髪の短い子がタイプらしいの。だから、あたし髪切ろうと思うんだけど、どうかな?」

(*゚ー゚)「いいんじゃないかなあ?顔が小さいから、ショートも似合うよ!」

ζ(゚ー゚*ζ「そうかな?」

言われなくても切るくせに。
賛同が得られて嬉しいのか、キャッキャッと小躍りしながら席に戻っていった。
しぃはもう一度溜息をつくと、再び窓の外を眺めた。
湿気を孕んだ夏の風が、ねっとりと頬を撫でる中、校門の側を通りかかった長身の女性と目が合う。
しぃはあの表情に、ある種のシンパシーを感じた。言葉で表せない、妙ないたたまれなさ。
女性は、顔を曇らせてそっぽを向くと、小走りで去って行った。
しぃはその後ろ姿に、自分のなれの果てを見た気がした。


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/25(金) 23:54:59.40 ID:29JhvHUy0
覇気のない「おはよう」と、抗鬱剤からクールの一日は始まる。
もっとも、クールの挨拶は飼い猫に向けたものであるが。棚からインスタントコーヒーを取り出し、カップに入れる。
お湯は、面倒だから沸かさない。昨日のものでいいや、と保温ポットからぬるくなったお湯を注ぐ。
砂糖を目一杯入れて一気に胃に流し込むと、化粧もせずに、のそのそ外出した。
長身を窮屈そうに丸めて、クールは足早に林に続く小道を渡った。側には小さく川がせせらいでいる。
本好きな友人が言っていた。ここから、有名な作家が身を投げたと。誰だったか。
クールは黒いロング・ヘアをかき混ぜると、流れをじっと見る。こんな小さな川で、どうやったら死ねるのだろう。
ただ、細々とした川がゆるゆると流れる様は、死に際の人間の血流のよう。ポケットの中の向精神薬を強く握りしめた。
溺れて死ぬよりも薬物のほうが、眠るように死ねるような気がする。わざわざ、苦しんで死ぬ阿呆がいるか。
湿った土の上で蝉が死んでいた。クールは蝉の死骸を蹴っ飛ばすと、そろそろと林の中をくぐっていった。
蚊は多いけど、夏場は涼しくて居心地がいい。
今日は気分がいいから、ちょっと遠くまで足を伸ばしてみよう。林を抜けると、少し離れた美術館へ行くことに決めた。
自販機で買ったコーラを飲みながらゆっくりと歩く。途中、薄い水色の校舎が特徴的な中学校の前を通り過ぎた。
今年、創立百三十周年を迎える校舎は、色のせいもあり、男子便所のようだ。いつ見ても変な色。
クスリと笑って、校舎を見上げる。はたり、端っこの窓から顔を出した少女と目が合った。栗鼠のような大きな目玉をくるくると回して、こちらを興味深そうに窺がっていた。その顔嫌い。好奇の目で見られることは嫌い。そんな変なものを見るような目をするな。
心の底に湧き出た懐かしさが、一層不快感を煽った。


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/25(金) 23:57:35.17 ID:29JhvHUy0
三限終了と共に、机を引く音が教室中に響く。
クラスメイト達が弁当箱を片手に、もう片方に椅子を持ってしぃの元にやってきた。
そんな光景を毎日見ているのだが、この毎日が終わってしまったらどうしようかと恐れた。
いつ、彼女たちがしぃに飽きてしまうのだろうか。いつ、しぃの元から居なくなってしまうのだろうか。
しぃはひとりが怖かった。拒絶されてひとりぼっちに転落するのが怖かった。
だから、毎日必死になってはお道化を演じ、また、皆が望むのであれば、不本意な”役”だって演じてみせるのだ。

理由は特に無いと思う。
思春期は人との触れ合いが怖くなる時期だと勝手に結論付けている。誰かに相談なんて出来ない。
弱みは見せられない。見せたらきっと、皆から可愛がってもらえなくなってしまう。
それは、自分の存在価値が失われることと同じ。だから不本意でも、このままでいないといけない。
これは戦争だ。そして、この戦友無き孤独の戦争は、きっとしぃが死ぬまで終わることはない。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/25(金) 23:58:57.86 ID:29JhvHUy0
从'ー'从「しぃちゃん、ご飯食べよう」

(*゚ー゚)「うん!」

卵焼きを頬張りながらクラスメイト達と談笑する。
ふと、クラスメイトの一人が文化祭の話を振った。

ζ(゚ー゚*ζ「今日の五限目で文化祭の話し合いするんだよねえ。今日こそ意見まとまるといいね」

从'ー'从「男子は下らない意見しか言わないし、下品だし。実行委員も大変だよね」

皆、品の無い意見に反論はするくせに、自分の意見は何一つ言わない。これではまとまる意見もまとまらないじゃない。
とは、言えない。あたしはあくまで小動物。ただ皆に尻尾を振っていればいいのよ。
実行委員はくじ引きで決まった。雑誌の懸賞には当たらないくせに。
元来、人前に出ることを好まないしぃは、早く文化祭が終わることを祈ることしかできなかった。


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:00:15.66 ID:ZKM8RUkc0
昼食を終え、再び机を引きずる音が響く。
四限目は国語だ。しぃはこの時間が好きだった。担当の教師がずっと教科書を読んでいるだけの授業。
だからしぃはゆっくりと空想の世界に浸れるのだ。チャイムが鳴っても教師は来なかった。十分後、ごめんなさいね~と間延びした声とともに教室へ入ってくるのが彼の習慣であった。時計をちらりと見る。チャイムが鳴ってから九分五十秒。五十三、五十五、五十七、五十九…

/ ,' 3「ごめんなさいね~」

教師は十分後ぴったりにやってきた。変なの。時間ぴったりに来るなら、十分前に来ればいいのに。

/ ,' 3「じゃあ、今日は教科書五十二ページを開いてください。読みますよー」


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:03:16.49 ID:ZKM8RUkc0
しぃは窓の外に視線を移した。
空想するときのしぃのお供は、空である。今日は晴れねえ。

さっき、校門の前に居た女性を思い出した。あの人いくつかしら。大学生ぐらいだろうか。
一度お話してみたいな。そうしたら、あのいたたまれなさの正体が掴めるかもしれない。ひょっとして、友達になれるかも。

空想の世界のしぃは元気で、活発で、とてもお喋り屋さんだ。
人を疑ることもしないし、自分を偽ることもしない。とても理想的。
我に返ると、荒んだ心の汚らしい自分を思い出して、悲しくなる。いつか空想の世界の自分になれたらいいのに。
そう考える時間が最近頓に増えた。


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:06:22.74 ID:ZKM8RUkc0
* * * *

近くの公園で、乱れた呼吸を整える。久しぶりに走った気がする。
クールは一つ溜息を吐くと、コンビニで買ったおにぎりの包みを開いた。
去年の春から、東京の大学に通い始めた。同時に親元を離れ、一人暮らしを始めた。
最初こそ工夫し工夫し料理を作っていたものが、最近では面倒になり、コンビニ弁当か外食が増えてきた。

クールには本好きな友人以外に友人と言える者はいない。
時々寂しいと思うことはあっても、その友人がいれば、何となく大丈夫。どうにか生きていけそうだと思っていた。
友人は別の大学で国文学を学んでいるそうだ。泉鏡花が好きだと言っているが、クールは文学に明るくないため、誰の事だかわからない。
女の人かと尋ねたら笑われてしまった。

笑われることは好きじゃない。けれど、友人の笑い声は軽快で、嫌味がない。彼女の笑い声だけはずっと聞いていても平気な気がした。

時々クールの家に上り込んでは、得意な麻婆豆腐を作って待っていてくれる。
友人に会いたくなった。美術館はいいや。見ようと思えばいつでも見られる。帰ろう。
友人が待っているかもしれない。大学は、もう夏季休暇に入ったと言っていたし。

反動をつけて、勢いよくベンチから立ち上がる。
長身の女には似合わない行動だったか、公園でボール遊びをしていた幼児に笑われてしまった。


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:08:27.10 ID:ZKM8RUkc0
寂れたアパートの一室。脇に自転車が止まっているのがクールの家である。
扉の奥から、生活音が聞こえる。やっぱり来ているようだ。

川 ゚ -゚)「ただいま」

ξ゚⊿゚)ξ「あ、おかえり!今日は麻婆春雨作りに来たよ」

川 ゚ -゚)「中華料理が好きなら、酸辣湯作ってくれ」

ξ゚⊿゚)ξ「やーよ。私酸っぱいの苦手だもん」

そしてコロコロと心地のいい声で笑うのだ。猫が友人であるツンに擦り寄る。
どうも、クールより彼女に懐いているらしい。はー、と中年のような声をあげて、ツンは鞄から煙草を取り出す。

川 ゚ -゚)「また煙草か?止めておけ。最近吸いすぎだ」

ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫よ」

そう言って、ツンはメンソールに火をつけた。煙草の量が増えてから、どうも体調を崩す頻度が増えた気がする。
本当に大丈夫なのだろうか。彼女は高一あたりからずっと煙草を吸っていた。
ただでさえ体が弱いのに、煙草なんて吸って体を壊しでもしたらどうするのだ。

ツンは紫煙をくゆらせながら猫を眺めていた。


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:11:13.40 ID:ZKM8RUkc0
ξ゚⊿゚)ξ「何よ」

ツンがクールの表情に気付き、尋ねる。
無言のクールを見かねて、ツンは鞄の中から瓶を取り出した。

ξ゚⊿゚)ξ「鰹の酒盗よ。あんた好きでしょ。ご飯のお供にどうぞ」

川 ゚ -゚)「…ありがと」

クールはいそいそと酒盗を冷蔵庫にしまおうと席を立った。
冷蔵庫の中身は出来合いのものとビールばかりで、とてもじゃないが女性の家の冷蔵庫とは思えないものである。
クールは中をかき回して抹茶プリンを発掘した。
賞味期限は明日のようだ。あの子、甘いものも好きだからな。

プリンを取り出すと、棚から緑茶のティーパックを引っ張り出して、ポットに手を伸ばす。
さすがに沸かし直した方がいいな。伸ばしかけた手を引っ込めて、やかんを火にかける。
しばらくすると、シュンシュンとやかんから湯気が立ち上った。

煮え湯のような緑茶とプリンを盆にのせてリビングに戻る。
ソファの端っこに、金色の髪の毛が見える。くるくるとパーマがかかっているのがツンの特徴だ。
煙草吸ったまま寝ているのか。ソファに燃え移ったらどうするんだ。
クールは憤慨してツンを無理矢理起こそうとした。荒い呼吸をしているツンは、すぐに激しく咳込み始めた。

えっ、と思うと同時に白いマットの上にどす黒い彼岸花が広がった。


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:12:18.07 ID:ZKM8RUkc0
川 ;゚ -゚)「おまえ、ちょっと大丈夫か?」

喀血は止まらなかった。ツンの口角には血の泡がへばり付いている。
クールはブルブル震えながら携帯電話で救急車を呼んだ。

待っている間が苦痛である。息が出来ないのか、ツンは悶えながら虚空を掴む。
地獄絵図とはこのことだろう。
五分後、救急隊員たちがやってきて、手際よくツンを運んで行った。


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:14:20.75 ID:ZKM8RUkc0
* * * *

四限が終わり、いよいよしぃの戦争は激化していった。
なんだかみんながそわそわしている。
今日中に意見がまとまって、自分たちの文化祭が一歩進むことを期待している。
しぃはその期待に応えなければならないと思うと、胃のあたりがキリリと痛んだ。

五限の開始を知らせるチャイムが鳴った。その音と共に担任が教室へ入ってきた。
朝よりも化粧が濃くなっている。休み時間に化粧を直したのだろう。教師は気楽なものだ。
生徒の苦しみなんて、一つも分っちゃいない。しぃは眉間に皺を寄せて担任を睨み付けた。
視線に気が付いたか、担任がこちらを向いて

('、`*川「文化祭の話し合いをするわよ」

と投げやりに言って、窓際の椅子に腰かけた。

(*゚ー゚)「それでは、出し物を今日中に決めようと思います!意見がある方は挙手してくださーい」


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:16:18.04 ID:ZKM8RUkc0
誰も手を挙げない。
出し物を決める会議は今日で三回目だが、有力な意見が全く出てこない。
婉曲的に喫茶店やお化け屋敷といった、定番でいいじゃないかと言ってみるものの、その度独創性に欠けると皆が口をそろえて反駁する。

(*゚ー゚)「あれっ、意見が出ないですね。じゃあ端から一人ずつ意見を言ってもらいます!つーさん!」

つーと呼ばれた女子には、ヘラヘラと愛想笑いをして誤魔化されてしまった。

(*゚ー゚)「では、内藤くん」

( ^ω^)「僕はメイド喫茶がいいお。おっぱいのでかい女子を集めるといいおwww」

女子の非難の声が上がる。お前らは非難することしかできないのか。

(*゚ー゚)「じゃあ、ドクオくん」

('A`)「俺もブーンと同じ意見でいいや」

(*゚ー゚)「長岡くん」
  _
( ゚∀゚)「俺も左に同じ」

つまりは意見が無いわけだ。こんなので独創性もへったくれもあるものか。
結局会議は堂々巡りとなり、一時間が終わってしまった。
窓際で椅子に座ったまま居眠りをしていた担任が、半目を開けて

('、`*川「はい今日ここまで」

だらしなく言い放った。


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:17:48.43 ID:ZKM8RUkc0
(*゚ー゚)「明日、朝のホームルームでもう一度話し合いをします。家で意見を練ってきてください」

しぃはそれしか言うことが出来なかった。
クラスメイトの視線が集まる。何で?何でまとめられないの?ねぇどうして?そんな声が聞こえてきそうであった。
ムッとした。みんなが手伝ってくれないからじゃない。
しかし、クラスメイト達の目は冷たい。信頼を裏切ってしまったようだ。
嫌われるかもしれない。もう相手にされないかもしれない。ああ、どうしよう。

しぃは俯いたまま自分の席に着いた。


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:19:40.13 ID:ZKM8RUkc0
* * * *

ツンが死ぬかもしれない。
そう思うだけでクールは寝付けなかった。
クールは枕元から沢山の紙袋を引っ張ってくると、中から睡眠導入剤や抗鬱剤をバラバラと掌一杯に広げて、一気に飲み下した。
すると、体に括り付けられた糸がブツリと千切れて、体が宙に浮く感覚と共にクールの意識は飛んでいった。

薄いフィルタを通して粉雪が降っている。
ちらちらと、不規則に。
クールはハイネックのセーターを着て、雪の中、じっと佇んでいる。
隣には赤いダッフルコートを着たツンが座っていて、温かいミルクティを啜っている。
時折、空を眺めては、寒いわね。と笑う。
雪が青白く輝いている。まるで、自ら発光しているかのよう。
それは、とてもノスタルジックな光景だった。

おもむろに、ツンが手を差し出す。
彼女の手に斑に積もった雪は、真っ赤だった。
ツンはにこにこ笑ったまま、赤い雪と一緒につるつると溶けてしまった。

泣きじゃくるクールに、なおも雪は降り続ける。
真っ赤な雪の中、確かに、死に神のマントが翻るのが見えた。


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:21:47.52 ID:ZKM8RUkc0
* * * *

朝から憂鬱だった。

担任には、出し物決めに割ける時間は今日の朝のホームルームだけと言われてしまった上に、昨日のクラスメイト達の目。
あの眼はあたしに向ける悪意の目なのではないかと、昨日からずっと考えていた。

夕食はハンバーグだったのに、嬉しくなかった。
デザートにハーゲンダッツが出たけど喜べなかった。
お風呂でものぼせるまで考え込んでしまった。

表面だけ取り繕っても駄目なのかな。
破裂しそうな胃を抱えて、しぃは朝の戦争に身を投じた。

(*゚ー゚)「おはよ!」

しぃは普段通りのつもりで挨拶した。

ζ(゚ー゚*ζ「おはよう!」

クラスメイトも普段通りの挨拶であった。
だが、一度疑惑を持ってしまったからには、怖くてクラスメイトの顔を直視することが出来ない。
別にメデューサみたく石にされることはないが、しぃにとっては石にされるより怖いことであった。
いっそ石にされた方が楽になれるとさえ思った。


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:24:11.96 ID:ZKM8RUkc0
('、`*川「今の時間で決めなさいよ。決まってないの、うちだけよ」

いつの間に教室に来たのか、担任がすこぶる不機嫌そうに言った。
もう明るくて優しいしぃちゃんを演じる余裕は彼女には無かった。
脂汗をダラダラ流し、顔面に不安の二文字を張り付けて教卓の前に立った。

(*゚ー゚)「あの、時間が無いので、もう無難なもので決めませんか。…なんて」

しぃの苦肉の策であった。とりあえず、これでお茶を濁してしまおう。
独創性に欠ける!という意見には、反論まで考えた。
しかしクラスメイト達の返事は諦め半分の気のないものだった。
しぃは急に拍子抜けしたが、同時に安堵した。
言い合いにならなくて良かった。しぃはたどたどしく出し物を決めると、ほっとしながら席に着いた。



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:27:23.11 ID:ZKM8RUkc0
一限が始まった頃だろうか。背中に妙に冷たい視線を感じた。

誰かがあたしを見ている。
少なくとも、それは心地よい視線ではない。
しぃは気づかぬふりをして、教科書に目を落とした。
延々と証明問題が綴られている。担当の教師は、黒板に途中式を書きながら、何やら説明を始めた。
しぃは慌ててノートを開いた。
教師の口述する内容をノートに書き写していると、頭に何かが当たった。

椅子の足元にかさりと落ちたそれに目をやると、ノートの切れ端を丸めたものだった。
嫌な予感がして、拾い上げ、広げてみると、そこには青いボールペンで

『そのキャラって、作ってるでしょ(笑)』

一行ほどの文章が脳内を激しく泳ぐ。泣き出しそうな顔を上げ、犯人を捜すと、ニタニタと笑ったヒトの顔が三個ほど、机越しに浮かんでいた。
ああ、こいつらは全部分っている。あたしの裸の姿を全部分っている。
頭の先から爪先まで、血の気が引いてきた。

しぃは否定することも忘れて、自分の席の鞄を掴むと、教師の静止を振り切り校舎の外に転がり出た。
髪を振り乱しながら通学路を遡る。どうするの、こんなことをして。明日からどんな顔して学校に行けばいいの。
そんなの知るか!どうにでもなれ!
もう破れかぶれだった。
だんだん息が出来なくなって、乾いた喉が張り付きあって、ふくらはぎがズキリと痛みだした。
その痛みをきっかけに、しぃは我に返った。無意識に弐鷹駅前に出ていた。

この時間に家に帰ったって、親に理由を問い詰められるだけだ。隣の駅で時間を潰そう。
しぃは切符を購入すると、吸い込まれるように改札口を抜けていった。


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:29:09.35 ID:ZKM8RUkc0
* * * *

目覚めは最悪だった。びっしょりと寝汗をかいている。
薬を大量に服用したせいで、体は鉛のように重く、頭は霧がかかったようにどんよりしていた。
ツンは近所の大学病院に運ばれたらしい。クールは鉛のような体に鞭打って、病院へ向かった。

いつもより更に体調の悪そうな主人を、猫は尻尾を振って見送った。
今日は挨拶してくれないんだ、と少し不機嫌気味に。

花屋で買ったピンク色のカトレアを片手に、クールは看護師に教わった部屋番号を探した。ツンはベッドで雑誌を読んでいた。
川 ゚ -゚)「大丈夫だったのか?」

ξ゚⊿゚)ξ「うん」

ツンは短く返事すると、病気の概要をつらつらと言い始めた。
医者によれば、慢性気管支炎だそうだ。症状が出なかっただけで、大分前から発症していたらしい。
病状を言い終えると、ツンは急に寂しそうに笑った。

どうしたの、とクールが尋ねると、ツンは下を向いてしまった。
クールは持ってきたカトレアを花瓶に挿しながらツンの言葉を待った。


37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:31:59.28 ID:ZKM8RUkc0
数分後、俯いていたツンは静かに顔を上げた。

ξ゚⊿゚)ξ「私ね、実家に帰る」

川 ゚ -゚)「自然療法ってこと?」

ξ゚⊿゚)ξ「そんな感じ。それに父さんが帰って来いって」

川 ゚ -゚)「大学は?」

ξ゚⊿゚)ξ「休学する」

クールの精神の支えが、弾かれ消えていった。
宙ぶらりんで放置されたクールは呆然とした。
頭の中身が全部ブラックホールに呑みこまれて、ぐわんぐわんと音が鳴る。
これからは何に頼って生きていけばいいのだろう。
そもそも生きていけるのだろうか?

クールの帰り際、ツンはご飯作れなくなっちゃうね。ごめんね。と言った。
そうだ、ご飯、どうしよう。あと、悩み事は誰に相談しよう。
どうしよう。一度空っぽになった頭の中は、水を吸い込んだスポンジのようにこれからのことで一杯になった。

とりあえず、今日の晩御飯だ。
紀伊国屋でハンバーグでも買おうかとも思ったが、今から行ったのではどうせ売り切れている。
隣町まで買いに行こう。

ああ、あ。今日何度目かの溜息を吐き、携帯電話を開くと、中央線のダイヤを調べた。



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:34:05.14 ID:ZKM8RUkc0
* * * * 

車両点検により、五分の遅延。駅のアナウンスがそう、告げる。

自販機で適当にジュースを買い、顔を上げると、自販機の透明な板張りに、切れ長の目の女性が反射して映り込んでいるのを見つけた。
はっと息を呑んで振り向く。
あちらはしぃに気が付いていない様子であった。
人違いか。いいや、間違いなく校門の前に居た女性だ。

 しぃは声をかける機会をうかがった。
何を話すかなんて考えてはいなかったが、声を聴いてみたかったのだ。

階段側の車両の位置に立つ女性の後ろに並んだ。まるで、ストーカーみたい。
声をかけるならかければいいじゃないのよ。
これだから根暗は嫌なのよ。心の中で呟く。
 
オレンジのラインが入った車体がゆるやかにホームに入ってきた。
車内は冷房が効きすぎているようで、半袖のブラウスとサマーセーターでは肌寒かった。
しぃは空いている席に腰かけ、女性は扉にもたれかかった。通勤ラッシュが終わり、電車内は静かだった。

しぃはペットボトルに口をつけ、ジュースを三口ほど飲み込んだ。
女性は黙ったまま腕を組み、ぼうっと立っていた。


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:36:34.87 ID:ZKM8RUkc0
後ろへ後ろへ流れてゆく景色をぼんやりと見送っていると、突然、しぃの斜め向かいに座った男女が口論を始めた。
口論と言っても、女の方が一方的にがなり立てているだけだが。

ノパ⊿゚)「お前なあああ、何もかも私に世話させて恥ずかしくないのかよおおお」

無言で恨めしそうに睨み付ける男を気にするわけでもなく、女は続けた。

ノパ⊿゚)「ご飯も掃除も何もできないんだもんな!!悪いと思ってるんだったら、稼いでくるくらいしろよなあああああああああ」

もぞもぞと男が弁明する中、女はとどめを刺した。

ノパ⊿゚)「こんなんじゃあ、ただのヒモだよ。悪いなんてこれっぽっちも思ってないんだろ。この寄生虫!!」

俄かに騒がしくなった車内で、周りの乗客が女をなだめたり、狼狽えたりしている中、そっと女性の顔を盗み見ると、棒立ちで無表情のまま、はたはたと涙を落としていた。

(*゚ー゚)「大丈夫ですか」

女性は頭を掻き毟って、その場にしゃがみ込んだ。
しぃにはどうしていいのか分らなかった。

川 ゚ -゚)「寄生虫か。そうだな」

女性は薄く笑うと、ぶつぶつと念仏のように、自分に向けた呪詛のように、呟き始めた。
きっと独り言なのだろう。支離滅裂で、誰に向けている言葉かも分らない。
しぃは懸命に女性のパズルを組み立てていった。
自分も寄生虫だと言っているようだった。



43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:40:31.14 ID:ZKM8RUkc0
* * * * 

ツンはいつでもクールを気にかけてくれていた。
そこにいる女のように、私に稼ぎだとか、見返りなんて、求めなかった。
損得というものが頭にないのだ。

かたや私は自分のことしか考えてなかった。
病院の帰り際、私は何を思ったか。ツンを心配したか?
今日の晩御飯なんかを考えていたではないか。何が友人だ。勝手に支え棒に使っていたくせに、図々しいったらない。

寄生虫とはいいたとえだ。そうだ、私は寄生虫だ。


話し終わって、肩で息をしているクールに、少女は言った。

(*゚ー゚)「人に頼ることって、そんなに悪いことじゃないですよ」

川 ゚ -゚)「頼るなんてものじゃない。依存してたんだ。きっと傷つけてしまった」

(*゚ー゚)「じゃあ、謝ればいいじゃないですか」

川 ゚ -゚)「そんな今更」

(*゚ー゚)「気付いた時に謝ればいいじゃないですか。二鷹に戻りましょうよ」



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:41:45.94 ID:ZKM8RUkc0
何だ、この子供は。突然現れて何を言い出すかと思ったら。こんな子供に分るわけがない。
友達に囲まれて、毎日を楽しく暮らしているような子供なんかに。

ムッとして、少女を睨む。少女は怖気づきながら、続ける。

(*゚ー゚)「病院はどこですか」

無言のまま、行きたくない、と意思表示をした。
頭を横に振り続けると、少女は語調をやや荒げ言った。

(*゚ー゚)「どこですか!」

クールは黙って抵抗し続けた。

(*゚ー゚)「…その人、友達ですか」

川 ゚ -゚)「そう、だと私は思ってる」

(*゚ー゚)「友達は大事にしてください。お願いします」

川 ゚ -゚)「お前みたいな子供に何が分るんだ」

(*゚ー゚)「分りません。友達のいる人の気持ちなんて分りません」

病院の場所を教えてあげてもいいような気がした。
同情の念であろうか。あるいは、この少女に、自分が映り込んだからだろうか。


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:44:04.02 ID:ZKM8RUkc0
川 ゚ -゚)「…備府大。備府大学病院」

(*゚ー゚)「そうですか。じゃあ、行きましょう」

少女は半ば無理やりにクールを連れ、二鷹へとんぼ返りした。

たった一人の友人に拒絶される恐怖。
病院に行ったら、ツンはどんな顔をする?何を思う?
きっと、ツンは私のことなんか、面倒くさい奴ぐらいにしか思ってないかもしれない。
いや、それ以上に、悪意すら抱いているかも。
もう、二度と会わないつもりだった。

(*゚ー゚)「あの、ところで、お名前、聞いてなかったですよね」

さっきの図々しさはどこへ行ったのか、少女がオズオズとクールに訊ねる。

川 ゚ -゚)「素直です。素直クール」

(*゚ー゚)「クールさんですか」

少女は目をくるりと回した。やっぱり栗鼠っぽい。
褒め言葉のつもりで、小動物みたい、と言ったら、途端少女は俯いてしまった。


48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:47:39.53 ID:ZKM8RUkc0
* * * *

嫌なこと思い出しちゃった。せっかく忘れようと思ってたのに。
忘れようったって、また明日学校だけど。

明日からが本当の地獄だわ。
明日から、あたしの居場所がなくなるんだもの。
再び胃がキリキリと痛みだした。

川 ゚ -゚)「大丈夫?」

(*゚ー゚)「はい。あ、言い忘れていました。あたし、しぃっていいます」

さっきカトレアを持って行ったから、お花は要らないと言われた。
なので、手ぶらでのお見舞いである。
クールはそわそわして落ち着かず、震える声で、友達に呼びかけようとしては、声が上擦って、失敗を繰り返している。
しばらくそれを繰り返したのち、クールは覚悟を決め、大きく息を吸い込むと、カーテンの向こう側に声をかけた。



49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:48:44.34 ID:ZKM8RUkc0
川 ゚ -゚)「つ、ツン」

ξ゚⊿゚)ξ「あれ、クー。また来たの?」

ツンと呼ばれた女の人が、カーテンをさっと開けた。

ξ゚⊿゚)ξ「あんた妹なんていたっけ」

(*゚ー゚)「あ、私はしぃっていいまして、あの」

ξ゚⊿゚)ξ「しぃって、どういう字書くの?」

(*゚ー゚)「あ、椎です。植物の名前で…」

ξ゚⊿゚)ξ「椎ちゃんね。可愛い名前ね」

クールは居心地が悪そうに、手を組んだり解いたりしている。
会話を続けようとしたしぃは、口を噤んだ。

川 ゚ -゚)「あ、悪い。それで、あのツン、ごめん。ごめんなさい」


50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:50:02.82 ID:ZKM8RUkc0
ξ゚⊿゚)ξ「えっ何が」

しぃはそっと席を外した。

病院の窓から外を眺める。空が相変わらず近い。
だんだん迫ってきて、いつか飲み込まれてしまいそう。
雲が怖い。

大きくて、空を抉るように流れる雲は、自分の積み上げてきた椎という像を簡単に削り取ってしまいそうだ。
そして、空に遺されるのは、丸裸で、四肢が、顔が、胴体が、醜く腐り溶け落ちた椎の姿である。   


53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:53:23.41 ID:ZKM8RUkc0
* * * * 

川 ゚ -゚)「今まで、お前に依存し過ぎていた。すまない」

ξ゚⊿゚)ξ「それを言いに来たの?」

川 ゚ -゚)「ああ。もう、私のことはいいから、これからは自分のことだけを考えてほしい」

これだけ伝えたかった。もう友人に迷惑はかけられない。

ξ゚⊿゚)ξ「クーは大丈夫なの?」

川 ゚ -゚)「ああ」

目が、水底に群生した藻のように揺れる。

ξ゚⊿゚)ξ「もう!駄目よ全然だめ。怖い怖い。あんた一人にしたら怖い」

川 ゚ -゚)「どういう意味」

ξ゚⊿゚)ξ「その目、小さい時から変わんない。全然大丈夫じゃないでしょ。
あたし、別に自然療法なんてしなくても大丈夫だから」
 


55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:54:29.14 ID:ZKM8RUkc0
病院への道すがら、ずっと言おうかどうか、頭の中でこねくり回していることがあった。
きっと言うなら今かもしれない。

川 ゚ -゚)「私、いない方がいい、か?」

ξ゚⊿゚)ξ「はあ?」

川 ゚ -゚)「私がいると、治療に専念できないだろう。別にいつ死んでもいいんだ。私なんて。消えてって、お前が言えば、今すぐにでも」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね、あんたみたいな馬鹿は死ななきゃ治らないわね」

そうだ、その通り。私の阿呆は生まれついてのこと。

ξ゚⊿゚)ξ「でもねえ、あたし別にあんたみたいな馬鹿は嫌いじゃないのよね」

友人の予想外の言葉に息を呑んだ。



56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:55:01.46 ID:ZKM8RUkc0
ξ゚⊿゚)ξ「いつ死んでもいいなら八十年後くらいにひっそり死んで」

川 ゚ -゚)「揚げ足取らないでくれ」

ξ^⊿^)ξ「変なこと言ったかしら」

ツンはにっこりと笑った。この笑顔。
クールは、この笑顔がたまらなく好きだった。
この無条件に向けられる好意に、クールは寄生していたのだ。

川 ゚ -゚)「言ってないな」

ξ゚⊿゚)ξ「でしょ?じゃ、死ぬまで生きることね」

恐らく、ツンから自立することはまだ出来ない。
ただ、今死ねば、一生涯、情けない姿を晒し続けたどうしようもない女の一生が終わるということになるだろう。
しかし、生きてさえいれば…


57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:56:46.56 ID:ZKM8RUkc0
ξ゚⊿゚)ξ「ねえ」

 ツンは言いづらそうに扉の方を向いた。

ξ゚⊿゚)ξ「あの子どうしたの?クーの親戚?」

川 ゚ -゚)「電車の中で会った。よく分かんないけど付いてきた。呼んでこようか」

ξ゚⊿゚)ξ「いいえ。ロビーに行こう」

そう言って友人は起き上がると、扉の外に顔を出して、窓の外を悲しそうに眺めるしぃに声をかけた。

ξ゚⊿゚)ξ「しぃちゃーん。ちょっと時間あるかしら」
 
ツンは、クールとしぃを連れて、一階のロビーの一角を陣取った。
ツンはすぐに

ξ゚⊿゚)ξ「ジュース買ってくる!」

と言って席を外した。


58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 00:58:23.71 ID:ZKM8RUkc0
(*゚ー゚)「謝れたんですね。良かった」

しぃがクールに微笑みかける。気持ち悪い笑顔。
自然じゃない、卑屈な笑顔だ。

川 ゚ -゚)「ありがと」

しぃに映るクールの影が濃くなる。
子供はもっと子供らしくしていればいいのに。
こんな笑顔を覚えたって、いいことなんて何も無いのに。

ξ゚⊿゚)ξ「お待たせー。しぃちゃんはコーラ。クーはりんごジュース」

川 ゚ -゚)「私もコーラがよかった」

ξ゚⊿゚)ξ「あんた、本当にコーラ好きよね。骨溶けちゃうよ」

川 ゚ -゚)「お前の煙草みたいなものだ。それより起きて大丈夫なのか」

ξ゚⊿゚)ξ「多分」


61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 01:00:15.48 ID:ZKM8RUkc0
炭酸が鼻から抜けたのか、しぃは涙目になりながらコーラを飲んでいる。

ξ゚⊿゚)ξ「さて、溜まった膿を絞り出しますかね。ね、しぃちゃん」

あまりに唐突に会話を振られ、しぃはむせ返ってしまった。

ξ゚⊿゚)ξ「おせっかいならいいんだけどね。何か、嫌なことがあったでしょ」

ツンもしぃに、子供のころのクールを重ねているようだった。
一緒。クールも子供の頃は、作り物の笑顔で、必死に自分を抑制してきた。
ずっとそんな生活を続けていたら、遂に心が壊れてしまった。

きっと、この子も心をすり減らして生活している。
このまま放っておいたら、いつかはクールのようになってしまうだろう。

しぃは、話すか話さないか迷っている風だった。
誰も信頼していないのだ。クールはひとつ、助け船を出すことにした。

川 ゚ -゚)「ツンは口が堅いから大丈夫。お前の知り合いとも面識は無いぞ」

すると、少々口ごもりながらも

(*゚ー゚)「はい、じゃあ、あの、詰まんないですけど」

と、前置いて、しぃはぽつぽつ自分の話をし出した。


63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 01:02:26.29 ID:ZKM8RUkc0
どうも、あの不愉快な笑顔は、学校で生み出されたもののようだ。
学校という閉鎖的な空間ほど、怖い社会は無い。

子供の集団が、日々、人間関係に悩み、対人に怯え、心を削り削り生活するのは何故だろう。
思春期によって生み出された強力な自我が、陰惨で、残酷な現場を造りだすのだろうか。
子供は、大人と違って楽しい毎日を過ごしているなんて考えは、最早幻想なのだ。

(*゚ー゚)「あたし、必死でみんなに媚を売ってました。本当は根暗なんですよ。
明るくて可愛いしぃちゃんには友達がいますけど、椎には、友達なんて、一人もいないんです」

そこまで言い切って、ツンの顔をちらりと見ると、顔を伏せてぽたぽたと涙を落とした。


65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 01:04:56.37 ID:ZKM8RUkc0
ξ゚⊿゚)ξ「逃げたのは正解だと思うよ」

(*;ー;)「あ、あたし、根暗なの否定せずに、飛び出して、もう、言い訳、できない!」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、このまま逃げ出さなかったら、あなた壊れてたわよ」

しぃは訝ってツンの顔を覗いた。

ξ゚⊿゚)ξ「新しい行動は、確実にあなたに新しい風を吹き込んだはずよ。
明日、辛いとは思うけど、学校に行ってみなよ。
失望している子もいるかもしれないけど、逆に心配していてくれた子もいると思うわ」

(*;ー;)「あたしのことなんて誰も心配してませんよ」

ξ゚⊿゚)ξ「それ、駄目」

ツンがしぃの額を指で弾く。
しぃは驚いて栗鼠のような大きな目をくるりと剥いた。

ξ゚⊿゚)ξ「可愛くないと、大事にされないなんて法律、ないわよ」

(*゚ー゚)「でも、怖いです。無いかもしれないんですよ、居場所が」



66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 01:05:40.81 ID:ZKM8RUkc0
ずっと黙り込んでいたクールが口を開いた。

川 ゚ -゚)「明日、学校に行ってみなければ分かんないだろ。そんなこと」

そう言うとクールはぞんざいにジュースを呷った。

ξ゚⊿゚)ξ「クーのくせにいいこと言うのね。ねえ、しぃちゃん。明日考えられることは、明日考えない?
楽しんで明日になっても、苦しんで明日になっても、明日は明日だよ」


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 01:07:46.63 ID:ZKM8RUkc0
* * * *

こんなに悩みを聞いてくれたのは、この二人が初めてだ。
こんなにぶちぶち文句を言っても、嫌な顔すらしなかったのはこの二人が初めてだ。

しかし、ツンさんの言うような、気楽な人間には到底なれっこ無い。

川 ゚ -゚)「さっきの図々しさはどうしたんだ?なよなよいい子ぶるくらいなら、さっきみたいに図々しい方がずっといい」

クールが口を挟む。
彼女に本当のことは言えないが、しぃはクールが恨めしかった。
病院にまでついて来たのだって、誰かの中心にいることのできる魅力を持った人が、どんな人物なのか気になっただけだ。

そして、会って分かった。
クールには、無償の愛が与えられている。
クールは、何も言わずに今までその愛を享受し続けてきた。
しぃには頑張っても、そんなもの与えられなかったのに。


69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 01:10:00.58 ID:ZKM8RUkc0
(*゚ー゚)「ずるい。クールさんだけずるい!」

暴発した。
理不尽だとは分っていても、歯止めが利かない。

(*゚ー゚)「何で、クールさんにはツンさんみたいな人がいて、あたしにはいないんですか!
あたしだって、頑張ってるんです。ちょっとくらい優しくしてくれる人がいたってバチはあたらないでしょ!」

ああ、もう!こんなこと言いに来たわけじゃないのに。
立ち上がって諸手を振り回すしぃを、クールは悲しそうに見つめていた。

ξ゚⊿゚)ξ「それはね、しぃちゃんが与えられる側の人ではないって、ことよ」

ツンは、怒鳴る少女の肩を抱き、ソファに座らせた。

ξ゚⊿゚)ξ「あたしの考えだから無視してもいいけど、世の中には、与える人と与えられる人がいると思うのよね。
与えられる人は、求めることしかできないし、与える人は、あげることしか出来ないようになってるんじゃないかなあ」



71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 01:11:57.91 ID:ZKM8RUkc0
デレさん。
看護師さんがやってきて、ツンの名字を呼んだ。

ξ゚⊿゚)ξ「あ、すみません。検査ですか?」

「そうです。勝手に起き上がらないでください」

ξ゚⊿゚)ξ「すみません。あ、しぃちゃん、クー。
あたし明後日に出るから、良かったらまた明日来てね」

そう言い残して、ツンは病室に帰って行った。 


72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 01:14:06.23 ID:ZKM8RUkc0
* * * *

クールとしぃは病院を後にした。

真っ赤な夕日が眩しい。
多分、明日も晴れるのだろう。
日中ねっとりとしていた生温い風は幾分乾いて、カラッとしている。
爽やかな風に揺られてクールの長い黒髪が跳ねる。

川 ゚ -゚)「さっき、ツンが言ってたことって、ちょっと違うと思う」

ポツリとクールが言った。

川 ゚ -゚)「与える人は与えることしか出来ないなんてことはないよ、多分」

クールは会話が不得意である。慎重に言葉を選びながら話す。

(*゚ー゚)「どういうことですか」

川 ゚ -゚)「与える人は、与えた分だけ求める権利もあるし、与えられる人は、求めた分だけ与える義務があるというか」

クールは途切れ途切れになりながらも続ける。


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 01:16:36.05 ID:ZKM8RUkc0
川 ゚ -゚)「椎さんは、与えることも、求めることもしてなかったんだよ。きっと。だから、その」

(*゚ー゚)「これから、うんと与えろってことですか?」

川 ゚ -゚)「ああ。うんと与えて、うんと与えられるといい」
 
なんて、クールが偉そうに言えることじゃない。
クールは求めるだけで、与える義務をちっとも果たしていない。
ツンから独立しなくてはならないのに、こんな具合でいいわけがない。
ちゃんと一人で立って、生きてゆけるだろうか。

再びしぃと目が合った。
大人しいと思ったら、突然かんしゃくだまのように弾ける。
情緒が不安定な、子供なのだ。
精いっぱい大人みたいに着飾っても、大人みたいに振る舞っても、大人みたいな、作り笑顔を見せつけても、所詮は子供。
そんな子供が、今までずっと一人で戦ってきたのだ。
それで、大人の自分が戦えないなんて、そんなの嘘。

戦ってみようか。
針のむしろの上で、もんどりうって、喘ぎ苦しみながらでも、一歩、進めたら上等なのかもしれない。

歩兵は機関銃を手に取った。



74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 01:18:32.23 ID:ZKM8RUkc0
* * * *  
 
話を真剣に聞いてくれる人がいたことが、何より嬉しかった。
腫れ上がった心配の腫瘍に、少し穴が開き、新鮮な空気が全身を爆ぜ回る。

(*゚ー゚)「あたし、クールさんとツンさんに色々貰いました」

川 ゚ -゚)「ツンだけだ。私は何もしてない」

(*゚ー゚)「いいえ、クールさんにもです。今度はあたしが、あげる番ですね」

川 ゚ -゚)「そうだな。明日、頑張っておいで」

心から笑いたい気分になった。
別に、問題は何も解決していないし、そもそも始まってもいなかったようだ。
明日から、しぃの言うところの戦争が始まるが、
今度のそれは、戦友無き孤独の闘いとは少し勝手が違うようで、参謀は、空を振り仰いだ。

ごめんね、明日から、あたし忙しくなるの。
しばらくの間、ゆっくりと空を眺めたりは出来なさそうだけど、次見上げた時は、是非ともよろしく。

そうして、勝利を確信した参謀は、腕を空高く突き上げた。


75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 01:20:06.27 ID:ZKM8RUkc0
クールは空き缶を蹴り蹴り前へ進む。
しぃは鞄を両手で抱え込んで前へ進む。

二人は、弐鷹駅で別れた。
しぃは恥ずかしそうに、小さく手を振った。

しぃのはにかんだ顔は、
実家に帰ったら、名産のさくらんぼを袋いっぱいに詰め込んで持っていかんと画策する、
ツンの無邪気な笑顔とよく似ていた。



76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/26(土) 01:20:49.58 ID:ZKM8RUkc0
以上です。
夜遅くに、支援ありがとうございました!

コメント

三鷹が舞台なんか。
縁がある街だから感情移入して読めたわ。
[2011/12/08 19:03] URL | 名無し #- [ 編集 ]


美しいだけの文章などいらない
[2012/02/12 01:29] URL | #- [ 編集 ]


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