mesimarja
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( ^ω^)Operativeのようです
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 03:43:40.35 ID:nLbf3/GU0
キャスター付きの椅子に座った男が、
スチールデスクの上に足を投げ出している。

週刊誌を食い入るように読んでいたかと思うと、
不意に落胆したような表情を浮かべ、
デスクに放った。


今日ははずれか……。
呟きながら、
後ろのブラインドの隙間から窓外を除く。


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 03:46:07.06 ID:nLbf3/GU0
先ほどまではビル群をはるか上空から照らしていた太陽が、
ゆっくりとビルの陰に沈んでいくのが見える。

夕暮れの訪れとはこんなにも早いものだったのか。

いや、
ここは週刊誌が暇つぶしとしての役割をしっかり果たしてくれたのだと褒めるべきだろう。

そんなことを思いながら、
男はデスクの上に置かれた煙草の箱を手に取った。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 03:48:17.13 ID:nLbf3/GU0
一本を口に咥え、
百円ライターで火をつける。

SLの蒸気のように勢いよく吐き出された煙はやがて拡散し、
空気の一つとなって消えた。

こうして次は夜更けを待つのだ。


一箱分を全て灰にする頃にはなん時になっているだろうかと考えながら、
二口目のニコチンを体内に送り込む。

そのまま呆けていると、
ふと跫音が耳に届いた。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 03:51:12.28 ID:nLbf3/GU0
とん、とん、と音を立てながら、
鉄の階段をのぼってくる。

これはスニーカーの音だと男は見当をつけた。

やがて音が止み、
次いでドアブザーが男の部屋に鳴り響く。

ドアに近づき魚眼レンズを覗くと、
そこには一人の女性が立っていた。

ξ゚⊿゚)ξ

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 03:53:42.67 ID:nLbf3/GU0
縮れた長い黒髪を肩の辺りまで伸ばし、
橙色のダウンジャケットを着け、
肩には焦げ茶色のショルダーバッグを掛けている。


男は微笑を浮かべながらゆっくりとドアを開き、
ようこそ、どうぞお入りください、
と言って女性を室内へ招いた。

女性は軽く会釈をし、
部屋の中へ。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 03:56:02.56 ID:nLbf3/GU0
玄関に立つとぐるりと室内を見回し、
あなたお一人ですか? と訊ねた。

男は、そうですが、なにか不都合でもおありですか、と訊き返した。

いいえ、そんなことはありませんよ、ただ訊いてみただけです。

女性はぎこちなくはにかんだ。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 03:59:01.54 ID:nLbf3/GU0
お座りください。

男は部屋の右手に据えられた応接セットのソファーを掌で示した。

女性は、失礼いたします、と一礼をしてからソファーに腰かけ、
バッグを膝の上にのせた。

ファイルキャビネットの上にあるコーヒーポットから、
二つのティーカップにコーヒーを注ぎ、
どうぞ、と言いながら一つを女性の前に置いた。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 04:04:13.71 ID:nLbf3/GU0
女性は、ありがとうございますと礼を言い、一口飲んだ。

白い喉がゆっくりと波打つ。


( ^ω^)「初めまして、
       私はこの事務所の所長の内藤といいますお」

女性の向かいに座った内藤は、
シャツの胸ポケットからステンレスの名刺入れを取り出し、
名刺を渡した。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 04:07:46.94 ID:nLbf3/GU0
女性は両手で名刺を受取ると、
軽く眺めてからバッグにしまった。

そして、

ξ゚⊿゚)ξ「はじめまして、私は津出礼子といいます」

と自己紹介し、深々と頭を下げた。

ξ゚⊿゚)ξ「あの……」

女性がおずおずとした上目遣いでぽつりと言った。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 04:10:05.15 ID:nLbf3/GU0
( ^ω^)「どうかしましたかお?」

ξ;゚⊿゚)ξ「すみません。
       私、名刺は持っていないんです……」

( ^ω^)「ああ」

内藤は微笑した。

( ^ω^)「お気になさらないでくださいお。
      名刺を持っていようとなかろうと、
      ご依頼人であることに変わりはありませんお」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 04:12:12.80 ID:nLbf3/GU0
自分のコーヒーにフレッシュを一つ入れ、
プラスチックの棒でかき混ぜる。

棒と空容器を傍らの屑かごに捨て、
本題を切り出した。

( ^ω^)「それでは、
      本日はどのようなご用件でお越しくださったのでしょうかお」

ξ゚⊿゚)ξ「実は……」

礼子は両手でバッグの肩ひもを握り締めた。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 04:19:34.30 ID:nLbf3/GU0
ξ゚⊿゚)ξ「私は渋谷で小さな花屋を開いているのですが、
      三日前、不思議な男性がお店に現れたんです」

( ^ω^)「不思議な男性?」

ξ゚⊿゚)ξ「はい、日本人にしては珍しいくらい鼻が高くて、優しげな眼をした男性でした。
      見た感じでは二十代前半くらいだったので、多分、大学生ではないかと思うのですが――」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 04:31:53.79 ID:nLbf3/GU0
礼子はそこでいったん言葉を切り、小さく息をついてから、続けた。


それは三日前の午後の、よく晴れた日のこと。

礼子が店の中で薔薇の棘をとっているときだった。

一人の男性が、
お会計をお願いします、
と言いながら、礼子に十本のリナリアを渡した。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 04:41:36.64 ID:nLbf3/GU0
そこまでは他の客と変わりなかったのだが、
レジで代金を請求したときだった。

男性がズボンのポケットから緑色の宝石のようなものを出し、こ
れとその花を交換して欲しいと持ち掛けてきたのだ。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 04:49:36.53 ID:nLbf3/GU0
礼子は驚きながらも、申し訳ございません、と断ったが、
それでも男性は、お願いですから交換してください、と言ったきり、
石を差し出したまま硬直してしまった。

まるで石像のように。

だが、不思議と不気味な感覚はなく、
まるで芸術的なものを見ているかのような錯覚に囚われてしまった。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 04:52:36.63 ID:nLbf3/GU0
一言でいえば儚さ、そんな印象を礼子は受け――気付いた時には、石を持ったまま立ち尽くしていたという。


( ^ω^)「無意識のうちに花と交換してしまっていたということですかお」

礼子はゆっくりと頷いた。

内藤は顎に手を当て、
少し考える素振りをしてから口を開いた。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 04:54:38.39 ID:nLbf3/GU0
( ^ω^)「その宝石のようなものをお見せいただけますかお」

ξ゚⊿゚)ξ「はい、持ってきました」

礼子はバッグから緑色の物体を取り出し、
テーブルの上に置いた。

蛍光灯の明かりを照り返し、
美しく輝く楕円形の物体がテーブルの上に乗っている。

内藤はその物体に眼を注ぎながら、
礼子に訊ねた。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 04:58:25.43 ID:nLbf3/GU0
( ^ω^)「手にとってみてもかまいませんかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「どうぞ」

テーブルに置かれたそれを人差し指と親指でつまみ、
顔に近づけた。

指に伝わる硬くも滑らかな感触、
表面に帯びる澄んだ光沢。

六cmはあろうかという大粒のエメラルドを、
内藤は矯めつ眇めつ一分ほど眺めたのち、
礼子に差し出した。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:01:18.72 ID:nLbf3/GU0
( ^ω^)「ありがとうございましたお」

ξ゚⊿゚)ξ「いえ」

礼子は掌でエメラルドを受け取ると、指で優しく包み込み、バッグに仕舞った。

( ^ω^)「とても上等なエメラルドとお見受けしましたが、
       あなたは先ほど、緑色の宝石のようなもの、と形容されましたおね」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:04:05.95 ID:nLbf3/GU0
ξ゚⊿゚)ξ「私、宝石には全く興味がないんです」

礼子は毅然とした表情できっぱりと言ってのけた。

ξ゚⊿゚)ξ「私は普段から宝石より断然美しいものに囲まれているものですから」

( ^ω^)「それはやはり――」

内藤が言い終わるより早く、礼子は言葉を継ぎ足した。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:06:54.08 ID:nLbf3/GU0
ξ゚⊿゚)ξ「宝石と違い、お花は生きているんです。
      生きているからこそ、命があるんです。
      命があるからこそ、いつかは生涯を終えなければならない時がきます。
      だからこそ目一杯花開くんです。
      その時がくるまで精一杯生きるんです。
      生きているからこその美しさがあるんです」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:10:05.91 ID:nLbf3/GU0
一頻り言い終えると、礼子ははっと息を飲んだ。

恥ずかしげに顔を俯け、
スイッチが切れたかのように黙りこくってしまった。

今までとは打って変わり熱を帯びた語勢から、
礼子の花に対する愛情の深さが窺い知れる。


内藤は再び微笑を浮かべた。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:13:35.19 ID:nLbf3/GU0
( ^ω^)「恥じることなんてありませんお。
      あなたの花を想う気持ち、十分伝わりましたお」

礼子はなおも俯いたまま、
小さな声で答えた。

ξ゚⊿゚)ξ「ありがとうございます……」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:15:47.50 ID:nLbf3/GU0
内藤は自分のティーカップを手に取り、
口に運んだ。

かなりぬるまっている。

一口だけのつもりだったが、
そのまま一気に飲み干した。

カップを置き、
口を尖らせてゆっくりと息を吐くと、
俯いている礼子に問い掛けた。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:18:04.12 ID:nLbf3/GU0
( ^ω^)「では、今回のあなたのご依頼は、
      その男性を捜し出してほしい、
      ということでよろしいのでしょうかお?」

その言葉にようやく顔を上げると、そうです、
と恥ずかしさのせいか目を合わそうとはしないが、肯定した。

( ^ω^)「その目的も、
      お伺いしてよろしいですかお」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:20:15.07 ID:nLbf3/GU0
礼子は小さく頷くと、
コーヒーで唇を湿らせた。

カップを置き、口を開く。

ξ゚⊿゚)ξ「私は、知りたいのです。
      あの男性が交換したお花が、
      今どのように扱われているのか、
      なぜあそこまでしてお花が欲しかったのか、
      それだけが知りたいのです。それだけが……」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:22:44.16 ID:nLbf3/GU0
言い終わると、
窺うような眼で内藤を見つめた。

内藤はその眼を見据えながら、
大きく頷いた。


( ^ω^)「お任せくださいお」



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:25:17.69 ID:nLbf3/GU0
 ※


内藤は翌朝から調査を開始した。

鼻が高く、
優しげな眼をした二十代前半の大学生と思しき男性、
という依頼人の証言のみを頼りに、電車を乗り継ぎ、
靴底をすり減らし、渋谷の大学や短大を訪ね歩いた。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:27:41.25 ID:nLbf3/GU0
学生には、妹を妊娠させて行方をくらませた男を探している、
協力してほしい、と哀切な表情を作って嘘をつくだけでよかった。

だが、有益な情報を得るには至らなかった。

恐ろしく存在感が薄いのか、
はたまた交友範囲が狭いのか、
見当はつきかねたが、
今の内藤には歩き続ける他なかった。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:30:10.30 ID:nLbf3/GU0
東四丁目にある大学へ続く通りを歩く頃には、
時刻は三時を過ぎており、
その時になってようやく昼食を抜いていることと、
ニコチンの禁断症状が出始めていることに気付いた。


空腹とニコチンの誘惑に耐えながら、
内藤は考えていた。

もしかすれば、
男は大学生ではない可能性がある。

それか、
渋谷界隈の学生ではないのかも知れない。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:33:17.83 ID:nLbf3/GU0
推測が当たってしまった場合、
それは内藤の調査が徒労であることを意味していた。

推察をしなおすにしても、
限られた証言からまた別の道筋を導き出すのは骨が折れる。

ましてや大都会東京ともなると尚更だった。


やがて、
十メートルほど離れた距離から、
大学名の彫られた大きな石標が目に入った。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:35:44.57 ID:nLbf3/GU0
キャンパス内では、
高層マンションを思わせる巨大なビルが威容を誇っている。

目標にしていたビルだ。


正門に目を向けると、
そこにはまばらではあるが、
数人の学生が行き交っている。

談笑しているグループもいれば、
カップルもいる、むろん一人のものも。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:38:49.53 ID:nLbf3/GU0
( ^ω^)「すみませんお」

内藤はその中から、
一人でキャンパスから出てきた男子学生に声をかけた。

丸縁の眼鏡をかけ、赤いチェックのYシャツと同じ柄のマフラー。

背には黒いリュック。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:41:14.87 ID:nLbf3/GU0
この男子学生に声をかけたのは、服装の野暮ったさと、
真面目を絵に描いたような風体をしているためだった。

要するに、非協力的な態度はとらないであろうと予測したからである。


(-@∀@)「なにか」

男子学生はこれといって警戒する様子もなく立ち止った。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:44:01.64 ID:nLbf3/GU0
( ^ω^)「あの……」

わけありな様子であることをそこはかとなく悟らせるため、
うつむき気味に小さく呟く。

(-@∀@)「ど、どうされたんですか?」

男子学生が幾分動揺した様子で訊ねると、内藤は顔をあげた。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:46:06.65 ID:nLbf3/GU0
( ^ω^)「実は、ある男性を探していましてお」

(-@∀@)「人探し、ですか」

( ^ω^)「ええ、その、
      私には六歳年の離れた高校三年になる妹がいるのですがお、その妹が……」

そこでわざと口ごもり、下唇を強く噛んで見せた。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:48:23.36 ID:nLbf3/GU0
時が止まったかのように沈黙が流れる。

行き交う学生達が胡乱気に二人を流し見ては通り過ぎた。

男子学生は先を促さず、
不安げな眼差しで内藤を諦視している。

相手に最大限の関心を惹かせるため、
内藤はもったいぶるようにして沈黙に身を委ね、
心の中で一分間を計っていた。


一分が経った。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:50:53.62 ID:nLbf3/GU0
( ^ω^)「妊娠させられてしまいましてお……」

歯を食いしばりながら、
めいっぱい絞り出すようにして言葉を吐き出す。

(;-@∀@)「え?」

硬直した状態のまま、男子学生の口だけが動いた。

今度は明らかに動揺している。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:53:22.00 ID:nLbf3/GU0
( -ω-)「渋谷でナンパされ、
      のこのことついていってしまったのが運の尽きでしたお……」

内藤は堅く眼をつぶりながら、体を小刻みに震わせた。

握った両拳に力を込める。

(;-@∀@)「そ、それはお気の毒に」

男子学生は当たり障りのない気休めを言った。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:56:42.14 ID:nLbf3/GU0


( ^ω^)「でも、あいつにも非はありますお。
      何の警戒もなしに見ず知らずの男についていくだなんて。
      ですから、私は別にその男性を叱責するつもりなんてないんですお。
      とにかく会って話し合いたいだけなのですお」


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 05:59:56.37 ID:nLbf3/GU0
内藤の話を黙って聞いていた男子学生は、
先ほどとは打って変わって引き締まった表情を浮かべると、
小さく二度頷いてみせた。

(-@∀@)「わかりました。
      僕でよければご協力しましょう」

( ^ω^)「ありがとうございますお」

内藤は深々と頭を下げた。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 06:02:22.51 ID:nLbf3/GU0
コートの胸ポケットからメモ帳を取り出し、
男性の顔の特徴や雰囲気をそのまま男子学生に告げた。

特徴を聞いた男子学生は腕を組むと、それこそ学生らしく、
問題に取り組むように眉間に皺を寄せてうんうんと唸ってみせた。

二分ほどが過ぎたとき、
男子学生が唐突に「あっ」と声を上げたが、
「いや、まさかな」と呟いて再び眉間に皺を寄せた。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 06:05:33.29 ID:nLbf3/GU0
 ^ω^)「なにか心当たりがあったんですかお?」

内藤は思わず訊ねた。

(-@∀@)「うーん、
      あなたの証言に該当するかもしれない男性の姿が一瞬脳裡を過ったのですが、
      でも、あいつがそんなことをするはずは……」

( ^ω^)「その男性のことを教えてもらえませんかお」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 06:10:08.02 ID:nLbf3/GU0


男子学生は思案するようにいい渋っていたが、
絶対に人違いだとは思いますが、と前置きをしたうえで、答えた。



52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 06:17:56.05 ID:nLbf3/GU0
(-@∀@)「うちの大学に、さすがという学生がいるんです。
      僕と同じ法学を専攻していましてね。
      ノートの貸し借りや昼食を一緒にするくらいには親しい仲でして。
      あなたの言った特徴通り、まあ、とてもハンサムな男なんです。
      無論、成績も優秀ですが、
      それ等を鼻に掛けるような尊大な人間ではありません」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 06:20:30.88 ID:nLbf3/GU0
( ^ω^)「さぞかし羨望されているのでしょうお」

(-@∀@)「物静かで積極的に交流を持とうとするようなタイプではありませんが、
      誰かがわからない問題を聞いたり、
      食事に誘ったりしても断るような人ではないですね。
      とても自然体な人柄なので、むしろ羨望というよりも、
      頼れる存在といったほうが適切かもしれません」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 06:23:14.19 ID:nLbf3/GU0
( ^ω^)「なるほど」

内藤は軽く相槌をうった。

(-@∀@)「ただ……」

男子学生が眉をひそめた。

( ^ω^)「なにかあったのですかお?」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 06:25:50.92 ID:nLbf3/GU0
(-@∀@)「彼は、ここのところ大学に顔を見せていないんですよ。
      今日でちょうど一週間になります」

( ^ω^)「顔を見せなくなる前日、
      なにか兆候のようなものはありましたかお」

(-@∀@)「いいえ、全く変わったところなんてありませんでした」

男子学生の返答を聞いた内藤は、顎に手を当て、考える素振りをした。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 06:28:03.42 ID:nLbf3/GU0
これは当たりである可能性が高い。

一週間の空白。

容貌の一致。

今までで一番有力な情報と見ていいだろう。

あえてはずれた場合のことは考えず、
内藤はこのチャンスに賭けてみることにした。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 06:31:09.08 ID:nLbf3/GU0
( ^ω^)「彼のお住まいはどちらなのでしょうかお」

(-@∀@)「わかりません。
      大手企業の御曹司なんて噂も立っていましたが、
      彼は家庭のことは僕を含めて誰にも話したがりませんでしたから」

男子学生はきっぱりと言うと、
眼鏡の縁をつまんで上にあげた。

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 06:33:58.19 ID:nLbf3/GU0
( ^ω^)「裕福な家柄かもしれないと」

(-@∀@)「あくまで噂ですけどね」

( ^ω^)「最後にもう一つお伺いしてよろしいですかお」

(-@∀@)「なんでしょう」

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 06:37:38.75 ID:nLbf3/GU0
( ^ω^)「さすがとは、流れる石と書いて流石と読むのでしょうかお」

(-@∀@)「そうです」

男子学生がこくりと頷くのを確認すると、内藤は頭を下げた。

( ^ω^)「ありがとうございましたお」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 06:40:49.10 ID:nLbf3/GU0



時刻四時半過ぎ、広尾二丁目に到着した。

騒々しい市街とは一線を画した閑静な住宅地。

内藤の推測が正しければ、
男性はこの界隈のどこかに住んでいるはずだった。

ここがはずれだった場合は、三丁目や松濤もあたるしかない。

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 06:43:46.32 ID:nLbf3/GU0

夕刻になろうとも、
寒冷な風は朝と変わらぬ強さで吹きすさんでいる。

朝から歩き通したところで決して慣れることのない寒風。

内藤にとってそれは、
空腹とニコチン中毒を誘発させる邪魔な存在でしかなかった。

加えてアスファルトを踏みしめる足に、
にわかな痛みまで感じ始めている。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 06:46:25.32 ID:nLbf3/GU0
しかし、欲求と痛みに耐えているからこそ、
今自分は仕事をこなしているという実感もわく。

週刊誌を読んで漠然と日々を過ごすよりは、
よほど有意義な時間を過ごしていると確信してもいい。

轟々と使命を全うする寒風のように、
内藤も己の職務遂行に尽力するだけだった。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 06:49:35.31 ID:nLbf3/GU0
「流石」と書かれた表札を探しながら路地を歩いていると、
一匹の白いチワワを散歩させている女性とすれ違った。

この辺りに住んでいる主婦に違いない。

( ^ω^)「すみませんお」

内藤は女性の後ろ姿に声をかけた。

その声に足を止めた女性は、
キョトンとした表情を浮かべながら振り返ると、
「私ですか?」と自身に指をさしながら訊ねた。

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 06:52:01.81 ID:nLbf3/GU0
連れのチワワは置物のように、女性の足元に鎮座している。

( ^ω^)「ええ、あなたにお伺いしたいことがありましてお」

爪゚ー゚)「なんでしょうか」

( ^ω^)「この辺りで流石さんのお宅を探しているのですが、
       ご存じありませんでしょうかお」

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 06:54:51.49 ID:nLbf3/GU0
爪゚ー゚)「流石さん……ああ」

女性は破顔すると、内藤の後ろを指差した。

爪゚ー゚)「流石さんなら、この路地の右側の、
    二つ目の角を曲がればすぐですよ。
    青い屋根とクリーム色の外壁で、
    門柱には表札も掛っているのですぐにわかりますよ」

( ^ω^)「ありがとうございますお」

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 06:57:51.73 ID:nLbf3/GU0
女性に警戒している様子はないが、
念のため考えておいた嘘をついておくことにした。

( ^ω^)「私は流石くんの友人なのですが、
      彼がここのところ大学に顔を出していないものですからお。
      心配なので様子を見にいこうかと」

爪゚ー゚)「そういえば……」

女性は顔を心なし上に向けた。

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 07:00:26.82 ID:nLbf3/GU0
爪゚ー゚)「私も最近流石さんの奥さんを見てないわ」

( ^ω^)「流石さんとは親交が深いのですかお?」

顔を内藤に戻し、女性は首を振った。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 07:02:54.13 ID:nLbf3/GU0
爪゚ー゚)「いえ、道であったら軽く世間話をするくらいですよ。
     とても上品そうな初老の方です。
     息子さんが大学生だとか、旦那さんが小さな会社の重役だとか、
     それくらいのことしか聞いたことはありませんが」

内藤はここで話を切り上げることにした。

( ^ω^)「どうもありがとうございましたお」

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 07:05:09.31 ID:nLbf3/GU0
礼を言いながら頭を下げると、
女性も軽く頭を下げてから背を向けた。

チワワが甲高く一吠えしながら立ち上がる。

女性は息を弾ませながら速足で歩くチワワと共に去って行った。

内藤も踵を返し、三十メートル程先の角を曲がった。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 07:07:57.62 ID:nLbf3/GU0
女性の教えてくれた通り、
目的の家は角を曲がってすぐ、
右手のとっつきに二階建を構えていた。

ポーチへと通じる門扉の両側には煉瓦造りの門柱が立ち、
右側には同じ素材の低い塀が続き、
左側には駐車場と思しい奥行きのあるスペースが空いている。

門柱には確かに「流石」と彫られた白い大理石の表札が掛っており、
下にはカメラ付きのインターホンが。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/29(日) 07:53:17.14 ID:nLbf3/GU0
>>1
スレ立て代行ありがとうございました。

忍法帳レベルが低いにも関わらず投下してしまい、
そのせいで無駄に時間がかかってしまったため、
まことに勝手ながら創作板で仕切り直しをさせていただきます。
大変もうしわけありません。

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