mesimarja
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( ・∀・)時間遡行者モララ★マギカのようです
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:09:34.60 ID:8jq5mfxQ0
※閲覧注意※

【タッグバトル参加作品】

魔法中性 0室☆マギカ
前半◆zynqho4iRI
後半◆3n1KTRbMTtJ4



僕達は何度でもループする

例え世界に絶望しかなくても




4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:11:13.96 ID:8jq5mfxQ0

かちり

秒針の音に気付き、デスクから顔をあげた
時間は12時を少し回ったところだ
一息吐こうと思い立ち、席を立つ

給湯室で珈琲を淹れ、香りを楽しんでから一口啜った
口いっぱいに珈琲の香りと苦みと旨味が広がる
目を閉じてそれに身を委ね、脳をリフレッシュさせた

( -∀-)「…………ふぅ…」

香りを充分に堪能し、満足したところで瞼を上げた

( ・∀・)

( ・∀・)「……ん?」

コーヒーカップを持ったまま立っていたのは、オフィスでもなく 給湯室でもなかった
薄暗い、コンクリート打ちの小さな部屋

その真ん中には薄汚れた布の塊と、その中に埋もれている  薄絹を纏っただけの、少女



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:12:54.12 ID:8jq5mfxQ0

『ばいばい少女』

( ・∀・)「……えっ」

⌒*リ´・-・リ「…………おにぃさんが、つぎにリリをいじめる人……?」

( ・∀・)「え? え?なんのこと?理解できないよ?なんで僕が君を虐めるんだい?
ていうかここは何処だい?」

矢継ぎ早に出て来る疑問文
まだ自分の置かれた状況が理解出来ていない
自分の右手に握ったコーヒーカップだけが、無駄に現実味を帯びていた

⌒*リ´・-・リ「…………おにぃさん、めずらしいね」

そう呟いた少女 リリは、ずるりと薄汚れた布の塊から這いずり出してきた

⌒*リ´・-・リ「……どうしたの?みんなみたいに、リリをいじめないの?」

薄絹を引き擦り、地を這うようにしてリリは近づいてくる
何故立たないのか その理由を知るのは、すぐのことだった

リリの両足は鎖で何処かに繋がれ、その足は全ての指を失っていた



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:14:20.15 ID:8jq5mfxQ0

戦慄した
恐怖した
何か悍ましいもの 或いはそれに当てられたもの つまりは危機が、
地を這って近づいてくる

(;・∀・)「虐めないよ!僕は君を虐めない!だからほら、さっきの場所にお戻り!!
安全なあの場所にお戻り!!」

気が付けば叫んでいた  悲鳴に近い哀願だった
しかしリリは止まらない  四肢で這ってこちらに近付いてきた

(;・∀・)「ひっ……」

リリが、自分の足に纏わりついた
振り払おうにも、傷だらけの肌を見てしまっては、乱暴なことは出来なくなってしまった

⌒*リ´ - リ「……じめてよ……」

(;・∀・)「えっ…」

⌒*リ´・-・リ「いじめてよ リリを、いじめてよ
ぐちゃぐちゃになるまでいじめてよ めちゃくちゃになるまでいじめてよ…」

(;・∀・)「そんなこと出来るはずないじゃないか!!」

⌒*リ´;-;リ「おかねはらっていじめてよ  …20ルピでいいから、なんでもするから!ねぇ!!
       でないと……私っ…… !!」



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:16:06.27 ID:8jq5mfxQ0

手だけでしがみ付いて、体を妖艶にくねらせる
色気のつもりだろうが、悍ましいものにしか見えない

(;・∀・)「やっ…やめろ!近づくな!!」

反射で、叫んでしまった
そのままリリを弾き返す

⌒*リ´;-;リ「リリを拒絶しないで!!!!」

悲痛な叫び
途端  リリの悲鳴に、鎖の音が重なった

⌒*リ´;-;リ「いやああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

リリの足に繋がれた鎖が、リリの体を引き摺って行く
その鎖はリリが元居たところに続いていて、リリはそこに引き戻されていった

リリは小さな手に精一杯の力を籠め、床に縋りつこうとする
床に立てた爪が、めり めり と音を立てて、一枚 また一枚と剥がれていく

⌒*リ´;-;リ「いや!いや!いやああぁぁぁぁぁ!!」

リリを引き摺り込む先 汚れた布の塊の隙間から見える  円形の穴と、鈍く輝くプロペラ

(;・∀・)「なっ……!?」

その意味は、一瞬で理解出来た


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:18:03.02 ID:8jq5mfxQ0

リリを引き戻す鎖は強く、早い
リリはあっという間に元居た所に戻されてしまった


そして聞こえる 人のものとは思えない悲鳴
ミキサーのような音と、骨が粉砕されていく音 そして少女の悲鳴
目の前で起きている光景は、まるでこの世のものとは思えないものだった

(; ∀ )「うっ…うわああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

コーヒーカップを中指に引っ掛けたまま、中身が零れるのも構わずに、両掌で顔を覆った
自分の限界を軽く超えていた


びちびちと珈琲が零れていく音が木霊する

……何故、珈琲の音が聞こえるのか
リリを粉砕する音と悲鳴で、聞こえないのではないか

そっと目を開けると、そこは先程の景色とは違い、夜色の闇に支配されていた

( ・∀・)「…………え?」



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:20:29.12 ID:8jq5mfxQ0

『月と太陽』

( ・∀・)「……ここは……? ……リリちゃんは…?」

周りには、何もない
珈琲の音がしたから床はあると思うのだが、
今足元にあるものが床かと問われれば、YESと応える自信はない

(* ー )「ここは、『夜』だよ」


どこからともかく聞こえてきた声
見上げてみると、そこには大きな三日月が在った

( ・∀・)「……月、から?」

月から声が聞こえることなど、常識的に考えればあるはずがない

しかもその月は、普段以上に遥か近くに存在していた

( ・∀・)(女の子があんな目にあったり、月がこんなに近くに在ったり話しかけてきたり……
     これはきっと夢なんだろうな うん)

この時点で、自分は常識を放棄した



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:22:15.61 ID:8jq5mfxQ0

(*゚ー゚)「……ところで…」

( ・∀・)「?」

月が、話しかけてきた

(*゚ー゚)「貴方、夜と朝、どっちが好き?」

( ・∀・)「えっ?」

(*゚ー゚)「私はね、もっとみんなと一緒に居たいの」

( ・∀・)「…………」

言っている意味が解らない
月も太陽も、常に空に在って、下界を見下しているんじゃないのだろうか

(*゚ー゚)「みんな、私が出ていくと、家の中に籠って、出てこなくなっちゃう……
      …………昔はこれでも、結構崇められてた方だったんだけどな  今は違う」

(*゚ー゚)「寂しいの」

( ・∀・)「…………」



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:24:16.10 ID:8jq5mfxQ0

(*゚ー゚)「だから明日、太陽のツーちゃん、殺しちゃうね」

三日月の口が更に歪に歪み、近くの星が悪戯っぽく瞬いた

(;・∀・)「なっ…!?」

月が太陽を殺す 隠す
恐らく日蝕のことだろう
そのままこの月は、空を支配するつもりのようだ

何か、言わねばならないと思った
しかし言葉は出てこない

確かに、いきなり世界が滅ぶことはないと思うが、作物への影響は甚大だと思えた

結果的に自分は、名案らしい名案も思い浮かばず、何も言えずに月の哄笑を聞くことしかできなかった


朝になる直前
陽が差し始めた空を背景に、月はにっこりと笑った

(*゚ー゚)「邪魔、しないでね」

彼女はそういって、暁の空に融けていった



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:26:04.22 ID:8jq5mfxQ0

(*゚∀゚)「アッヒャ―!!お前等おはよう!みんなの太陽!平和を見守るツーちゃんだぜぃ!!」


……喋る太陽が昇った
もう何も言うまい

だが、伝えなければならないことがある

( ・∀・)「ぁっ……」

(*゚∀゚)「お?どうした人間」

伝えなければ
月の目論みを




(*゚∀゚)「…………ふぅん  殺す?しぃの奴、日蝕でも起こすつもりか?
     そんなことしたって、あたしが隠れるのなんてほんの数分で、殺すことなんて出来るはずが……」

言葉が途切れ、太陽の表情が曇った

(*゚∀゚)「…………来たな」



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:28:27.11 ID:8jq5mfxQ0

空が徐々に暗くなっていく
太陽が、月の影に隠れはじめた

(*゚∀゚)「よう」

(*゚ー゚)「ごきげんよう」

(*゚∀゚)「このお天道様に喧嘩を売るたぁ、いい度胸じゃねぇか」

(*゚ー゚)「あら?剣呑ね」

(*゚∀゚)「喧嘩ふっかけてきといて、よくまぁぬけぬけとそんなことが言えたな」

(*゚ー゚)「あら?…………人間さん、ツーちゃんに言っちゃったの?」

(;・∀・)「流石に夜が続くと、農作物に被害が出ると思ったからね!」

(*゚ー゚)「そんな細かいこと、いちいち考えなくてもいいじゃない」

(;・∀・)「結構重要だよ!?」

そんな呑気な会話を繰り広げているうちに、太陽はもう、その殆どが隠されてしまった

(*゚∀゚)「今度月蝕で仕返ししてやるからな!ひと月は隠してやる!!」



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:29:13.70 ID:8jq5mfxQ0

(*゚ー゚)「貴方がこの日蝕から生還出来たらのお話ね」

(*゚∀゚)「そんなことしたって、あたしは死な……ッ」

(*゚ー゚)「さぁ、どうかしら?うふふ……」

月が不敵に嗤うと同時に、太陽は月の影へと消えていった


(*゚ー゚)「……ふぅ…邪魔者は消えたわ  ねぇ?昨日の人間さん」

月が微笑んだ

(*゚ー゚)「そういえば挨拶がまだだったわね     『こんにちは』」

(*゚ー゚)「……『こんにちは』  ……言うの、初めてだわ」

月が、くすくすと笑っている

(;・∀・)「…………」

世界の情理を捻じ曲げてしまうその願望と行動に、戦慄した
しかし日蝕も、もって数分だと思っていた
しかし一向に空に光が戻る気配がない



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:30:15.92 ID:8jq5mfxQ0

( ・∀・)「…………」

(*゚ー゚)「何を考えているの?私はみんなと、ずっと一緒に居たいの
     だから、ツーちゃんの出番は、もうここにはないんだよ」

くすくす

月の笑顔が恐い
狂気を孕んだ月明かりが、ただただ不気味だった

(*゚ー゚)「うふふ  これで私は、ずーっとみんなと一緒 みんなと……一緒…………」

世界は、翳りから夜の闇へと変わり、朝を迎えることはなくなった


途端
街から音が、光が、人影が消えた

( ・∀・)「えっ…?」


かちり

時計の針が動いたような、或いはいきなり動きを止めたような  嫌な音がした



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:31:31.11 ID:8jq5mfxQ0

(*゚ー゚)「……あ、あれ?」

月が異変に気付く
全てのものが動きを止め、世界から色が抜けていく

(;*゚ー゚)「あれ?え?み、みんな……あれ?」

( ・∀・)「…………」

自分だけが、その現象から逃れていた
自分がこの世界の存在ではないと、改めて認識した

(* ー )「あれ?……こんな……」

(*;ー;)「こんな、はずじゃ…………」

月が、ほろほろと涙を溢した
月の涙は隕石となって、この世界に降り注いだ

建物を、アスファルトを、山を森を破壊していく

この世界は月の涙で破壊され尽くすのだろう



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:32:38.82 ID:8jq5mfxQ0

『魔法少女』

瞼を上げると、時が止まってしまった灰色の世界から一転、色彩豊かな世界が目の前に広がっていた

( ・∀・)「…………」

( ・∀・)「……もう、わけがわからないよ…」

よく考えれば、何故自分がこんなめにあっているのか
何故『終わり』を転々としているのか
本当にわけのわからないことだらけだった

そしてその場で考え込んでいたことを、その直後に後悔した


前髪を掠って突如落ちてきたものは、鈍く光る銀の大鎌

(;・∀・)「なっ……!?」



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:34:04.70 ID:8jq5mfxQ0

危うく鼻先を削ぎ落とされてしまうところだった
そして反射的に見上げると、お約束取り、それの持ち主も降ってきていた
しかも背が小さい  少女のようだ

(;・∀・)「うわわわわわわ!?」

急いで抱き止めようと両腕を伸ばす  が
そんな必要すらなかったらしく、一度宙返りして、華麗に降り立った

舞い降りた少女は振り返りもせず、右手で大鎌を力強く掴むと、重そうなそれを軽々と振り上げ、
一度の跳躍で高々と飛翔した

呆然とそれを目で追う
その先には、大きな黒い翼をはためかせた 『何か』 が二つ
それに対し、少女は一人で挑んでいるようだった

(;・∀・)(もう何からツッコめばいいんだよ!?)

高々と飛翔した少女は、そのまま一つの影へ飛び込んでいく
その影がひらりとかわした時、もう片方の影が少女をはたき落とした



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:35:13.87 ID:8jq5mfxQ0

(;・∀・)「あれは痛い!」

少女は衝撃を伴って地へと戻される
クレーターをつくりながら着地した少女は、脇腹を抱えて片膝をついていた

「いてて……」

少女に追撃が放たれる
蹲った少女には、避けられない

(;・∀・)「危ない!!」

咄嗟に、少女を庇った
抱きかかえ、脚力をフルに使って跳ぶ
間一髪で躱した追撃は、地を深く抉った

(;・∀・)「…………」

背筋に冷たいものがはしる
数瞬遅れていたら、二人とも命はなかっただろう
腕の中の少女は、状況が掴めずに目を白黒させていた



40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:37:05.35 ID:8jq5mfxQ0

l从;・д・ノ!リ人「なっ、なんなのじゃ!?」

(;・∀・)「暴れないでっ!危ないから!!」

l从;・д・ノ!リ人「おっ、お前、誰なのじゃ!?あ、あいつらはっ……!?」

少女と共に空を見上げると、二つの影は顔を見合わせた後、背中を向けて飛び去って行った

(;・∀・)「…………ほぅ…」

思わず零れた安堵の溜息
直後、少女の小さな掌が、自分の頬を強打した

(#)∀・)「……痛い」

l从`・Д・ノ!リ人「なんてことをしてくれたのじゃ!!」

(#)∀・)「えっ」

l从`・Д・ノ!リ人「逃しちゃったのじゃ!!今日こそ殺してやろうとっ……!!」

捲し立てていた少女は急に呻き声を上げると、体を抱くようにして蹲った



42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:38:36.79 ID:8jq5mfxQ0

l从; - ノ!リ人「くっ……う…………」

彼女の傍の大鎌は消滅し、
彼女の衣装も、アニメのようなふわふわしかものから、アオザイに似たラフなものへと変わっていった

l从; - ノ!リ人「ぅ…あ…………」

(;・∀・)「大丈夫!?」

手を伸ばそうとすると、その手は打ち払われてしまう

l从; - ノ!リ人「触るな……お前、何者なのじゃ……」

少女は脂汗を浮かべながら、それでも強い目で自分を睨みつけてきた

(;・∀・)「僕はモララー  君は?」

l从; - ノ!リ人「…………妹者……流石 妹者」

l从;・-・ノ!リ人「魔法少女 妹者  あやつらを殺す者じゃ」



45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:39:35.69 ID:8jq5mfxQ0

***

「今日は邪魔が入ったな」

「おかげで帰る口実ができたじゃないか」

「……唐突に現れたように思う 何者だろうか」

「何でもいいんじゃないか?妹者が何を思うかはわからんが、妹者に危害を加える気配はなさそうだし」

「……だといいが」

「俺達は、俺達の目的だけに集中すればいい」

「……そうだな」

「…………それも切ない話だけどなぁ」

「そう言うな 詮無いことだ」

「仕方ない、のか」

「ああ 仕方ない」



46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:40:15.27 ID:8jq5mfxQ0

***

背の小さな少女に連れられ、自分は小さな洞穴に連れて行かれた

l从・∀・ノ!リ人「座れ、客人 話を聞くのじゃ」

少女は水入れを差出し、近くの岩に腰掛けた

( ・∀・)「……あぁ、うん」

座りながら、洞穴の中を見渡す
衣類、果物、干された肉、やわらかそうな動物の毛皮の毛布に、同じく毛皮を寄せ集めた寝床
生活臭溢れるここは、どうやら彼女の住処のようだ

自分が此処に来るまでの経緯をざっと説明し、
唯一現実を証明するコーヒーカップに水を注いで口に含んだ

流石妹者 と名乗る少女は、魔法だと言ってはしゃいでいた



48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:41:12.75 ID:8jq5mfxQ0

次に彼女が語り出した内容は、凄惨極まるものだった

***

数年前まで、彼女は大所帯の一員だった
叔父、叔母 祖父母 両親 一人の姉と、双子の兄二人と一緒に  平穏な日々を送っていた
そしてとある日、彼女が学校と出稼ぎから帰ってくると、大所帯が住んでいた一軒家は灰と化していた

叔父と叔母は寝室があった場所で、祖父母は縁側だった場所で、両親は居間で、姉は自室で
体の大半を灰に変え、所々生肉を晒し、代々受け継いできた翼を散らし、凄惨な姿で息絶えている
それぞれの周りには烏やハイエナのような、死肉を好む動物の死骸も多数転がっていた

そしてその家の前に立っていたのが、双子の兄達
上の兄は灰と埃にまみれた斧をひっさげ
下の兄は血と泥に汚れた細長い剣を担いでいた

二人は一度、細い目を見開き、顔を見合わせ
そして一度頷きあった後、にたりと笑った



51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:42:48.93 ID:8jq5mfxQ0

( ´_ゝ`) 「見つかってしまったな」

(´<_` )「妹者が帰る前には、片付けるつもりだったんだが」

( ´_ゝ`) 「まぁ数も多かったし、仕方ないよなぁ」

(´<_` )「この状態を見られたら、何の弁解も聞かないだろうな」

l从;・д・ノ!リ人「あ……兄者……?」

( ´_ゝ`) 「ごめんな、妹者」

(´<_` )「こんなことになってしまった」

l从;・д・ノ!リ人「い、意味が解らないのじゃ」

( ´_ゝ`) 「よしよし  ……妹者ごめんな  悪いが、もうこの家には住めない」

(´<_` )「妹者は……そうだな この惨事を忘れるな  恨め、俺達を」

( ´_ゝ`) 「俺達を殺しに来い 一族の為にも、俺達の為にも」

(´<_` )「妹者自身の為にもな  次に会うときは、殺し合いだ」

( ´_ゝ`) 「俺達は、逃げも隠れもしない  挑みたいときに、いつでも呼ぶといい」



52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:44:06.97 ID:8jq5mfxQ0

***

( ・∀・)「さっき戦っていたのは、君のお兄さん?」

l从・-・ノ!リ人「のじゃ」

語り終えた妹者という少女は、一息ついて手元の水入れを睨みつけた

( ・∀・)「……それから、君は毎日戦い続けてるの?」

彼女は小さく頷く
彼女は毎日、双子の兄達と死闘を繰り広げている

( ・∀・)(……せつないな それって)


自分の中には、とある仮説が立っていた

妹者は言った
上の兄は灰と埃にまみれた斧をひっさげ
下の兄は血と泥に汚れた細長い剣を担いでいた   と

自分には、それは家族を救う為に汚れたものだったように思う
家族にのしかかった瓦礫を打ち払い、屍を啄む獣を殺したのだと思えた



54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:45:19.95 ID:8jq5mfxQ0

( ・∀・)「君のお兄さんたちは、本当に望んでいるのかな?」

l从・-・ノ!リ人「…………」

( ・∀・)「本当は、何かの間違いなんじゃないかな?」

l从・-・ノ!リ人「……そんなこと、もう、どうでもいいのじゃ」

( ・∀・)「どうでもいい……?」

l从・-・ノ!リ人「今更仲直りしても、溝は埋まらないし、いなくなった家族も、家も戻って来ないのじゃ」

彼女は、一口だけ水を口に含んだ
その手は、小さく震えている

l从・-・ノ!リ人「おっきい兄者も、ちっこい兄者も、妹者に殺されるのを望んでいるのじゃ」

( ・∀・)「そんな」

l从・-・ノ!リ人「調べたのじゃ 知ってたのじゃ……」

( ・∀・)「?」



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:46:12.33 ID:8jq5mfxQ0

l从・-・ノ!リ人「本当に家を襲った者を、知ってるのじゃ」

視線を手に落としたまま、彼女は唇を噛んだ

l从・-・ノ!リ人「兄者達が去った後、家を見たのじゃ
        …………母者が、流石家の宝刀を握って…父者を刺していたのじゃ」

( ・∀・)「!?」

l从・-・ノ!リ人「叔父者も叔母者も、爺者も婆者も、……姉者も、心臓を一突きされておった」

( ・∀・)「…………」

l从・-・ノ!リ人「妹者に鎌があるように、兄者達に翼と武器があるように、母者は炎蛇を操る力を持っていたのじゃ」

( ・∀・)「またチートな……」

l从;・-・ノ!リ人「母者だから……」



56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:47:09.12 ID:8jq5mfxQ0

l从・-・ノ!リ人「兄者達は、妹者を助けたのじゃ」

l从・-・ノ!リ人「更に、母者の犯した罪を二人が背負って
       やり場のない怒りを、喪失感を、自ら達に向かわせたのじゃ」

l从 - ノ!リ人「…………妹者は全て、知っているというのに……」

( ・∀・)「…………」

言葉が、出てこなかった
救いようがない と、言えばいいだろうか
兄弟の想いが擦れ違ってしまっている
彼女は全てを解っていて、それでも尚、彼らと戦い続けている

互いの想いが、互いを傷つけ続けていた


( ・∀・)「和解、しないの?」

l从・-・ノ!リ人「もう、無理じゃ  さっきも言ったが、二人は妹者に、殺されたがっている」

l从・-・ノ!リ人「殺してあげるのが、二人の幸せなのじゃ」


止めることは、出来ないのだろうか




58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:48:16.99 ID:8jq5mfxQ0

***

翌朝

毛皮に包まって眠り、起きた時には、妹者の姿はなかった

(;・∀・)「ちょ!!!?」

唯一現実味を保ってくれているコーヒーカップを腰に括り付け、洞窟を飛び出した
場所はおそらく、昨日の場所だろう


***

駆け付けるとそこでは案の定、最終決戦と言わんばかりの迫力で激戦が繰り広げられていた

妹者も、双子も、傷だらけだ
好戦しているのだろうか

双子が、今日で終わりにしようとしているのだ

妹者が気付かない程度に回避に力を抜き、傷を受け
更に妹者を攻撃するにしても、鋭さはあるものの追撃などは一切していない
苦悶の表情で荒い息を繰りかえす双子は、いかにも精いっぱい戦っているという風に見えてもおかしくない



59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:49:20.56 ID:8jq5mfxQ0

対する妹者も、息は荒い
こちらは全力で殺しにかかっている
大鎌を無駄のない動きで振るい、双子の首を狙っている

双子の片方は、翼を片方失っていた
地上で、斧を振るい、大鎌に対抗している

(´<_`;)「兄者!!」

上空にいた弟らしき方が降下してくる
妹者は兄者と距離を取り、大鎌の尖った石突を掴んだ
それを勢いよく引き、弟者目掛けて投げる
石突にはそのまま鎖が繋がっていて、
妹者はそれを手綱のように、あるいは鞭のように扱い、弟者の着地を妨げた

その隙に妹者の懐に入り込もうとする兄者
瞬間、妹者は弟者を無視し、懐に入り込んだ兄者に、大鎌を振り降ろした


( ´_ゝ`) 「……ごめんな 妹者」


兄者の声は、風を凪ぐ鎌の音に遮られ、そのまま首は弾け飛んだ



61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:52:03.71 ID:8jq5mfxQ0

(; ∀ )「ぅっ…………」

衝撃の瞬間と、不運にも聞き取れてしまった兄者の最期の言葉
自分の中に、やりきれないものが込み上がっていく

下半身から粉砕されていく少女を見た時や、
時を止め、世界を終わらせてしまった月の涙を見た時のような

言いようのない 無力感が


血走った妹者の目には、もはや飛んだ首など映ってはいない
口元に笑みをたたえた、兄の顔など見えてはいない

次の標的 最後の敵  弟者へと、視線は注がれていた

血化粧を纏った、彼女のふわふわしたアニメのような衣装が、ざらりと揺れた
妹者が、跳躍した



62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:53:15.03 ID:8jq5mfxQ0

弟者は正面に長剣を構え、妹者の到達を待っていた
その表情は、兄と同じように 微笑んでいた


l从# Д ノ!リ人「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」

妹者の咆哮が空気を震わす
大鎌を持った両手を、上体ごと捻り、凪ぐ姿勢に入る
弟者は構えたまま動かない

l从# Д ノ!リ人「はぁっ!!!!」

幼い体で間合いに入り、捻った上体を力いっぱい戻して、その遠心力を大鎌に乗せた
刃が弟者を捉える寸前  弟者は両腕を開いて懐を曝け出した

l从; Д・ノ!リ人「なっ!?」

妹者がすっぽりと、その腕の中に納まる
大鎌は寸前で力を失ってしまった為に、弟者の胴の半分程までに抉り込んで止まってしまう

(´<_` )「よくやった 妹者」



63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:53:46.81 ID:8jq5mfxQ0

そして弟者は、呆然としている妹者の背に
最期の力を振り絞って長剣を刺し込んだ

その剣は妹者の心臓を貫通し、弟者の背中から生えてくる

悪夢のような光景だった

l从; д ノ!リ人「っあ…………」

(´<_`;)「なにも、怖くないぞ……ほら、俺が傍に居るから」


「やっと、元通りになれたな」


弟者の囁きが、聞こえた気がした
二人は一つになったまま、兄の亡骸のすぐ傍に落ちて……   ―――




64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:54:19.92 ID:8jq5mfxQ0

『魔女のいる王国』


意識は、混濁していた
今自分は、何処に居るだろうか
先程の、兄弟たちが最期を迎えた場所ではないことはわかる

背中が冷たい
何処かに倒れているのだろうか
また、新しい世界なのだろうか
もう、うんざりだった


ξ゚⊿゚)ξ「ここは玉座の間よ 目覚めたなら座りなさい  この為体」

真っ赤なヒールに、内腿を踏みつけられた

(; ∀ )そ「ぎゃっ!!」

飛び跳ねるようにして起き上がると、目の前には少女と呼んでも差支えの無いような女性が立っていた

ブロンドの巻き髪に、碧の瞳 白い肌
黒いローブに、腿の中ほどまでしかない黒のワンピース
絶対領域を守る黒のニーソと、血のように真っ赤なピンヒール
150㎝代に納められたそれらは、まんま『小さな魔女さん』に見えた



66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:54:48.86 ID:8jq5mfxQ0

小さな魔女っ子の前で、いそいそと座りなおす埃まみれのスーツ姿の自分

傍から見て不思議な光景だったと思う


( ^ω^)「ツーン あんまりきついことしちゃだめだおー」

ξ゚⊿゚)ξ「だって、王と王女の前よ?無礼にも程があるじゃない」


…………王と、 王 女 ?

( ^ω^)「ようこそ 旅の方 ……といっても、ツンが呼んだんだけどね  長旅、お疲れ様だお」

玉座にどっしりと座り込んだ、肉付きのいい青年が口を開いた

( ^ω^)「僕はこの国の王 ブーンだお  こっちは妃のツン」

(;・∀・)「妃!?」

ξ゚⊿゚)ξ「何か文句でもあるって言うの?」

かつん と、ヒールが鳴らされる
即座に口を噤んだ



68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:57:05.37 ID:8jq5mfxQ0

( ^ω^)「こらこらツン お疲れの客人を脅すのは流石に酷いお」

王 ブーンが嗜めると、ツンと呼ばれた妃はブーンの膝の上に座り込んで足を組んだ
……王を椅子にしていいのだろうか という疑問は飲み込む

( ・∀・)「そう言えばさっき仰っていた、御妃様が僕を呼んだ…という話は……」
 
( ^ω^)「おっお それなんだけどお」

ξ゚⊿゚)ξ「あなたにはいきなりだけど、色々な惨劇の場へ送らせてもらったわ」

( ^ω^)「僕達は、この惨劇を止められる人間を探していたんだお
      ……で、たまたま素質がありそうだったのが、君だったんだけどね」

ξ゚⊿゚)ξ「説明も面倒だったから、そのまま各地を回らさせてもらったわ  結果は、知っての通りでしょうけど」


……ツッコミ所が多すぎて、どこから突っ込めばいいのかわからなかった

何故自分にそんな素質があると思ったのか
何故説明を省いたのか
何故自分はあんなものを見、体験させられたのか

頭の中がごちゃごちゃしすぎて、何から突っ込めばいいのか、さっぱりだった



70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:57:46.94 ID:8jq5mfxQ0

ξ゚⊿゚)ξ「……まぁ。素質があるのは確かだし、他に候補もないわ  そして今、簡易的にも説明は済んだ」

( ・∀・)「え?」

( ^ω^)「と、いうわけで」

ξ゚⊿゚)ξ「もう一度いってらっしゃーい♪」

ツンが人差し指をくるりと回して、くい、と下へ向ける

同時

自分は足場を失って浮力に包まれた



72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 20:59:51.20 ID:8jq5mfxQ0



落ちる、
そう意識した瞬間には世界の景色が変わっていた

見覚えのある真っ白で無機質な部屋
正面の扉を入ってすぐの所に、また自分は立っていた



『ばいばい少女』



(;・∀・)「!?」

⌒*リ´ - リ「おにいさんが、つぎにリリをいじめる人?」

あの時と同じ光景、あの時と同じ言葉
目の前には知らなかったとはいえ、一度は自分が見殺した女の子

妃の言う通り、戻って来たのだ
この惨劇の結末を変える為に



73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 21:00:19.09 ID:8jq5mfxQ0

(;・∀・)「ち、が、っ!」

(;・∀・)(ここで否定したら、また彼女は……)

まだ記憶に新しいあの鮮血の映像が脳内に再生される
一瞬にして人間がプロペラに肉を裂かれ、骨を砕かれ、人の形を失う光景
再び少女を否定してあれを拝むのは避けたかった

(;・∀・)「……うん、そうだよ」

⌒*リ´ - リ

少女は口を噤んだままこちらを見つめている
大きな黒い瞳は濁っており、しかし奥にぎらついた光を忘れずにいて、
得体の知れない恐怖を醸し出していた

背筋を走る寒気を払う様に小さく頭を振り、
ズボンのポケットから取り出した握り拳を少女に向ける
その手は目に見えて震えていた



76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 21:05:47.92 ID:8jq5mfxQ0

(;・∀・)「ほら、これ!あげる!
      この国のお金じゃないけど……ダメかなぁ?」

⌒*リ´ - リ

ずるっ、ずるっ
少女は四肢を引き摺りながら、汚れた布の塊から這い出して来る
指を失くした足にはやはり黒い蛇の鎖が巻き付いていた

目の前まで来ると、乞う様に小さな両手が差し出された
半ば焦りながら自分はその上で結んでいた手を開く

出来るだけ触れたくはなかった
無意識に高い位置から手を開いてた

結果、少女の肌に弾かれて幾つものコインが床に散らばった
ポケットに入っていたありったけの、しかし僅かな小銭

(;・∀・)「あっ」

「ごめん」とは、言えなかった
見開かれた瞳を血走らせて、無我夢中でお金をかき集める、
欲を丸出しにした少女の姿を見てしまったから



79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 21:08:57.45 ID:8jq5mfxQ0

全てを集め終えて少女は金銭を抱き締めた
誰にも渡さんと言わんばかりに強く、強く

胸からぽうっと光が溢れ出し、コインは無数の火の玉へ変わる
この世界の所有物になった為、適した形になったのだろう
赤い炎は小さな掌の上で妖しげな灯を放ちながら揺れている

⌒*リ´ ー リ

⌒*リ´^ー^リ「『アリガトウ ゴザイマス』」

指と爪の足りない手で僅かと思われる金銭を握り締めながら、
浮かべられた引き攣った笑顔は、ただひたすらに不気味だった
恐らく当人はその言動の意味すら理解していないのだろう

少女は掲げた両手を天に向けて開く
開放された火の玉は螺旋を描きながら宙を上って行った

爪'ー`)「『イタダキマス』」

それをどこから現れたのか、いつの間にか天井で待ち構えていた七尾の白狐がぱくりと食べる
すると半透明の体に一瞬だけ丸く赤い光が灯る
白の色に戻ると同時に、尻から尾が一本しゅるんと生えた



82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 21:12:34.46 ID:8jq5mfxQ0

( ・∀・)(ああ、尾の数は少女の稼いだ金額に比例しているのか)

( ・∀・)(尾がたくさん増えたらどうなるんだろう?)

ぼんやりそんな事を考えながら、目の前の非現実を眺めていた
不意にこちらを向いた少女と目が合い唇が強張る

言葉が見つからずに見つめ合っている
と、首を傾げながら問いかけられた

⌒*リ´・-・リ「どうしたの?
.       みんなみたいに、リリをいじめないの?」

(;・∀・)「あ、う」

⌒*リ´・-・リ「……じめてよ……」

⌒*リ´・-・リ「いじめてよ リリを、いじめてよ
.       ぐちゃぐちゃになるまでいじめてよ
.       めちゃくちゃになるまでいじめてよ」

「いじめてよ」



84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 21:14:43.44 ID:8jq5mfxQ0

少女は痛みを求める言葉を繰り返しながら、
手だけでしがみ付いて来て、体を妖艶にくねらせる

また少女が殺されてしまうのではないか?
その考えが頭に付き纏い、その手を振り払えずにいた

(;・∀・)

汚れ一つない真っ白な四面の部屋、二つの出入口
天井の近くには空中浮遊をする半透明な白い狐の監視員
少女の背後には巨大なプロペラ、潰れた足には黒い蛇の鎖
床には少女をいたぶる為の玩具が散乱している

( ・∀・)「………」

「なにを かんがえてる?」

上から声が降って来た 姿を見なくても分かる、
声の持ち主は先程からずっと自分と少女を監視している白狐だ



86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 21:17:06.34 ID:8jq5mfxQ0

(;・∀・)「………」

爪'ー`)「あてようか、おきゃくサマ」

爪'ー`)「アンタも リリを すくおうと してるんだろう?」

爪'ー`)「こうしてる いまも そら、
     アンタは そこの キョウキを みてるじゃないか」

爪'ー`)「だが そいつは よくないね、おきゃくサマ
     アンタには リリを、」

(; ∀ )「うるさい!!」

白狐の言葉を遮ると同時に、縋る幼い手を振り払い駆け出す
地に散らばる刃物の一つを拾い踵を返す
少女は手に持った銀色に光る刃物を見て、薄い笑みを浮かべた

⌒*リ´・-・リ「いじめてくれるの?」

( ・∀・)

何も言わずに剣を振り下ろした



87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 21:19:18.20 ID:8jq5mfxQ0

断末魔が木霊する

余りにも呆気ない、
それが真っ二つになりもがき苦しんでいる対象物を見た感想だ
切断した蛇の鎖は、硝子が折れた様な音を立てて粉々に砕けた

安堵の溜息と共に全身から力が抜け、剣の柄が手から滑り落ちる
少女はと言えば、相変わらず無表情で真っ直ぐ前を見つめていた

⌒*リ´・-・リ

( ・∀・)

⌒*リ´・-・リ

( ・∀・)「もう……大丈夫だよ」

未だに震えの止まない手で少女の頭を撫でる
普通の人間と同じ感触がした



90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 21:21:08.46 ID:8jq5mfxQ0

何かのスイッチが入ったみたいに、熱い感情が胸に溢れ出した
抑え切る事が出来ず、少女の頭を自分の胸に埋めて抱き締める
強く、強く

( -∀-)「よしよし 大丈夫、大丈夫」

( -∀-)「もう怖い思いも痛い思いもしなくていいんだよ」

抱き締めていた体を離して白い顔を見つめる
そして綺麗に笑ってみせた

( ・∀・)「さあ、一緒にここから抜け出そう!」

優しく手を差し出す様はさながら正義のヒーローのよう
悲劇のヒロインは濁った瞳に光を思い出し、じんわりと涙を浮かべる
そしてぎこちない笑みを作りながら、自分の手を取る



……はずだった



91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 21:24:28.21 ID:8jq5mfxQ0

⌒*リ´・-・リ「やだ リリ、ここにいる」

(;・∀・)「なっ、何を言ってるんだい?」

⌒*リ´・-・リ「いじめないなら、さわらないで」

(;・∀・)「どうして?僕は君を助けに来たんだよ!」

⌒*リ´ - リ「いやっ!!」

肩を掴んだ手は乾いた音を立てて払われた
その時手の甲に、割れて尖っていた少女の爪が赤い線を引いた
少女は涙をぼろぼろ零しながら、嫌だ嫌だと頭と手を振り乱す

⌒*リ´;-;リ「いや!いや!!おそとはいや!!」

⌒*リ´;-;リ「しってるもん!おそとにでたらしんじゃうんだもん!
       リリ、しぬのはいや!いやだよっ!!」

(;・∀・)「そんな事ない……死んだりなんかしない
      君の事は僕が守るよ、約束するよ!」

(;・∀・)「その為に僕は!ここに戻って来たんだ!!」

⌒*リ´;-;リ「リリ、ここにいる!ここがいい!」

(;・∀・)「っ」



92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 21:26:08.31 ID:8jq5mfxQ0

爪'ー`)「リリの セカイは ここ なのさ」

水中よろしく空中を泳ぐ白狐がぽつり呟く
八本ある尾をゆらりゆらりと揺らしながら

爪'ー`)「おれは ずっと リリを みてる
     だから しってる」

爪'ー`)「そとの セカイは とても キケンだって、
     そとに でたら しんじゃうんだって、
     つれてこられた ときから、そう そだてられた」

爪'ー`)「かわいそうな リリ」

( ・∀・)

( ・∀・)「ここにいたら、いずれ君は……」

死んでしまう のに
続くはずだった言葉は、唇を噛みながら飲み込んだ



94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 21:28:03.32 ID:8jq5mfxQ0

⌒*リ´;-;リ「おかね おかねもらえばいいんだもん
        いたいけど、こわいけど、がまんすれば、ほめてくれるもん」

⌒*リ´;-;リ「ここではみんなが、リリのこと、みてくれる」

⌒*リ´;-;リ「おそとにいったら、だぁれもリリのこと、
        まもってくれない……みてくれない……
        そばに、いてくれない……!!」

( ・∀・)「僕が、いるよ」

⌒*リ´ - リ「うそつき」

( ・∀・)「僕が」

( -∀-)

( ・∀・)「君を、助けに来たんだよ?」

⌒*リ´ - リ「やさしかったひと、いっぱいいたけど、
        みんなみんな『たすけにきたよ』っていって、
        いなくなっちゃったの……」



95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 21:31:06.33 ID:8jq5mfxQ0

連れ出す過程でリリの持ち主に殺されたのか
連れ出した後に優しい人がリリを見捨てたのか
それは分からない

しかし「外の世界に出たら死んでしまう」
という話を聞くと、前者の様に思えた

何にせよ、幼い彼女にとっては今ここにいる事実だけが真実
誰も少女に自由を与える事は叶わなかったのだ

爪'ー`)「かわいそうなリリ いとしいリリ」

爪'ー`)「でも オレは みてるだけ。それしか できない
     こえを かける ことすら ゆるされない
     うまれた ときから そう きめられてる」

爪'ー`)「だって おれは ただの カンシュ だから」

白狐が細い目を更に細めて寂しげに笑う
それっきり、何も答えてくれなくなった

( ・∀・)

( -∀-)

( ・∀・)「僕を、拒絶しないでよ……」

意識の外で吐き出された主張
それはいつかどこかで聞いた嘆願と重なった

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 21:32:43.89 ID:8jq5mfxQ0

願いも虚しく、呟きはけたたましいベルの音に掻き消される
そのすぐ後に正面とは反対にある鉄の扉が開かれた

(   )「申し訳ありません御客様、時間です」

(   )「御利用ありがとうございました
      出口はこちらになっております」

現れた黒服の男達に背中を押されて、裏口から退場を急かされる
見る見る内に少女の小さな後ろ姿が遠ざかって行く

「待ってくれ」男達に告げる
すると両手を拘束されて強制的に連行された

(;・∀・)「……リリ!!」

どれだけ呼んでも、どれだけ叫んでも
少女がこちらを振り向く事は、二度となかった
その顔はすでに正面の扉へと向けられている

潰された足に新たな黒い蛇の鎖が巻き付けられる
少女の表情は後ろ姿からでは読み取れない



102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 21:45:29.84 ID:8jq5mfxQ0

(  ∀ )「どうして」

部屋から追い出される寸前に見たもの
ゆっくりと正面の扉が開き、眩い光が差し込む

そこには上から下まで悪趣味な金色の服と大粒の宝石で着飾った、
醜く肥えた次の客が立っていた


「おにいさんが、つぎにリリをいじめる人?」

「はやく、リリをいじめて いじめて」


媚びた彼女の声が、やけに響いて聞こえた



『売買少女』


103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 21:47:24.45 ID:8jq5mfxQ0

真っ暗な部屋へ投げ出される
星空の壁紙の部屋
天井には無様に欠けた月の絵

前に踏み出そうとした足が後ろに引っ張られて進めない
自分の体の重力の位置がおかしい事に気が付いた
自分の体がいつの間にか横たわっていた事に気が付いた
自分が別世界の宙に浮かんでいる事に気が付いた

また自分は人間にも惑星にも手が届かない位置にいるのか



『月と太陽』



(* ー )「ようこそ、私の『夜』へ」

月が、話しかけてきた



113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:05:59.78 ID:8jq5mfxQ0

( ・∀・)

( ∩∀∩)

弱弱しい息を吐き出しながら両手で顔を覆い隠す
悪夢でも現実でもいい、ここではない場所に行きたかった

(*゚ー゚)「貴方も眠ってしまうの?」

( ∩∀∩)「もう嫌だ……帰りたい、帰りたい……」

(*゚ー゚)「貴方も帰ってしまうの?」

( ∩∀∩)「悪い夢だ……早く覚めろ……覚めろ……」

「ごめんなさいね、頭を撫でてあげられないの」と言われた
「そんなの月に求めてない」と言いたかった

(*゚ー゚)「貴方は夜と朝、どっちが好き?」

あの時と同じ光景、あの時と同じ質問
自分の一つの回答で一つの世界の命運が決まる
ゆらり、体を起こして月を睨み付けた



116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:08:17.01 ID:8jq5mfxQ0

( ・∀・)「どっちも……必要なんだよ
      どっちかなんて選べない」

(*゚ー゚)「私はね、もっとみんなと一緒に居たいの」

(;・∀・)「話を聞いてくれ!お願いだから!
      このままだと世界は大変な事になるんだ!」

(*- -)「寂しいの 寂しいのよ」

届かない どうして これでは駄目だ
また同じ事を繰り返してしまう

月も太陽も、常に空に在って、下界を見下している
これ以上なんてきっとないのに、どうしてそれが分からないんだ

(*゚ー゚)「だから明日、太陽のツーちゃん、殺しちゃうね」

(;・∀・)「やめて……やめてくれ……」

朝になる直前
陽が差し始めた空を背景に、月はにっこりと笑った

(*゚ー゚)「邪魔、しないでね」

そう言って、暁の空に融けていった



118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:10:08.93 ID:8jq5mfxQ0

またこの世界の時間が止まる
また月の涙の隕石が降り注ぐ
……そんな事させるもんか

でも自分には何が出来るのだろう
それを思うと頭を抱える事しか出来なくなってしまう
一体どうすればいい、考えろ、考えろ、チクショウ

(*゚∀゚)「アッヒャ―!!お前等おはよう!
.    みんなの太陽!平和を見守るツーちゃんだぜぃ!!」

そうこうしている内に眩い光が視界を包み込む
喋る太陽が、再び昇った

(;・∀・)「太陽!!」

(*゚∀゚)「お?どうした人間」

伝えなければ、月の目論みを
そして全てを



120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:12:27.29 ID:8jq5mfxQ0

(*-∀-)「ふんふん?話はだいたい分かったぞ!
     とにかく時間が止まって、隕石が降って、
     もんのすんごく大変になっちゃうだな?」

( ・∀・)「止められるのはもう君だけなんだ」

(*゚∀゚)「しぃの日蝕を止めればいいんだろう?
.    おちゃっこさいさいだぜ!このツーちゃんに任せとけっ!」

(;・∀・)(おちゃ……大丈夫かな)

瞬く間に地平線から夜が押し寄せる時間になった
星達の無邪気な笑い声が聞こえて来る
それに気付き能天気だった太陽の表情が曇る

(*゚∀゚)「……来たな」

今度はもう空が暗くなる事はなかった
上では青空と星空が混ざり合う様に押し合っている
空という居場所を奪い合っている

(*゚ー゚)

青空と星空の真中に立って
惑星と人間の狭間に立って
太陽と月が隣に並ぶ瞬間を目の当たりにした



121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:14:02.62 ID:8jq5mfxQ0

(;・∀・)「!!」

その刹那、青空と星空がぶつかり空間に歪みが生じる
衝撃が発生させた強風に襲われ反射的に目を閉じる
目に見えない足場が大きく揺れて音もなく崩壊した

(;・∀・)「……!!……!!」

(*゚∀゚)

(*゚ー゚)

( ・∀・)

助けを求める声は風に掻き消され、伸ばした手も空気を掴む
二人は互いに視線を交差させたままで、こちらなど見向きもしない
音もなく落ちて行く自分の体が壊れた玩具の人形の様に思えた

背中へ激痛が走る、喉の奥から呻き声が漏れる
地面に叩き付けられたかと思ったが、短過ぎる落下時間がそれを否定した
自分は再び何もない空間の上で大の字に横たわっていた

(*゚∀゚)「よう」

(*゚ー゚)「ごきげんよう」



124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:16:24.68 ID:8jq5mfxQ0

(*゚∀゚)「ちっともゴキゲンなんかじゃないやい!
     このお天道様に喧嘩を売るたぁ、いい度胸じゃねぇか」

(*゚ー゚)「あら?あの人間さんったら言っちゃったのね
     ……やっぱりあの人間さんも太陽の方が好きなのかな」

月は白い睫を伏せながら寂しげに呟いた
落下させられた場所からでもかろうじて惑星達の会話が耳に届く

しかしこの距離では聞く事は出来ても、話す事は出来ない様だ
痛みに耐えて捻り出した自分の声は宙へと吸い込まれて消える

(*゚∀゚)「うーうん、そうじゃないぞ!
     このままお前が日蝕を起こしたら、時間が隕石なんだ!
     大変なんだぞ!すっごく大変なんだぞ!!」

(*゚ー゚)「?」

(;*゚∀゚)「とにかく考え直せ!今ならまだ間に合うんだぞ!」

(*゚ー゚)「……貴方はずるいよ、みんなに必要とされてる
     私だって愛されたいの みんなと一緒にいたいの
     『おはよう』って言いたいの」

(*゚∀゚)「なんでそんな事言うんだよ」

(* ー )「太陽がいるから月が不必要になっちゃうんだ」



126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:17:50.29 ID:8jq5mfxQ0

(#*゚∀゚)「ふざけんな!ずるいのはお前だろ!
     人間に真っ直ぐ見つめてもらえる癖に!!」

(*゚ー゚)「えっ?」

(#*゚∀゚)「この空を好きにはさせない!
     死ぬのはお前の方だよ!しぃ!!」

二人のやり取りがBGMのように遠く感じる
未来は理想とはかけ離れた方向に向かっているのだと理解した
そう理解していながら、何故か心は無に支配されている

ふと下の方から賑やかな声が耳に入る
無心のまま、見えない床に手をついて地上の人間に話しかけた
今自分のいる位置からなら、声が届くから

( ・∀・)「ねぇねぇ、そこの人間達
      君達は太陽と月、どっちが好きだい?」

(   )「俺は太陽が好き!太陽って偉大だよな」

(   )「私は月が好きよ、神秘的で綺麗だもの」

二人の男女は笑顔でそう答えた
自分はまだ無表情のままだった



128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:19:08.94 ID:8jq5mfxQ0

(;*゚ー゚)「ツーちゃんやめて……私は、ただ……っ」

(* ∀ )「お前に世界を破滅させられるくらいなら……」

太陽が不敵に嗤うと同時に、月は太陽の影へと消えていった
世界には眩い光が延々と降り注ぎ夜を迎える事はなくなった
自分は人間に質問を続ける

( ・∀・)「なら、もし太陽か月がなくなってしまったら?」

(   )「そんなの駄目駄目!どっちもなくなったら困る!」

(   )「私も太陽は好きじゃないけど、なくなったら嫌d

最後の言葉を聞く前に目の前の少年と少女が消える
街から音が、闇が、人影が消えた

( ・∀・)

( -∀-)

かちり
時計の針が動いたような、動きを止めたような
あの嫌な音がした

太陽は地上の異変に気付かない
全てのものが動きを止め、世界から色が抜けていく



131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:21:52.28 ID:8jq5mfxQ0

(*゚∀゚)「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!
.    生意気なんだよ!あたしがないと輝けない癖に!」

( ・∀・)

(*゚∀゚)「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」

( ;∀;)

(* ∀ )「ひゃひゃひゃひゃひゃ……ひゃ…………」

表情に影を落としながら、太陽は笑う
放たれる灼熱の光線が大地を焼く
草木は枯れて、大地がひび割れる

こうして、世界は二度目の終焉を迎えた


「こんなはずじゃ なかったのに」


そう呟いたのは
太陽だったのか、月だったのか



『隕石と枯渇』


132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:23:02.35 ID:8jq5mfxQ0

海の潮が満ちる様に灰色の砂漠が嵩を増して来る
見えない床に膝を着いたままだった自分の体は、
柔らかい砂の中へ誘われて行った

雲一つない灰空では未だ太陽が白々と燃えている
しかしそれも次第に砂に埋もれて見えなくなった
隙間のない暗闇、心の中で誰かに投げかける

(  ∀ )(どうして僕はこんなに弱いんだろう……)

     「弱い?」

耳の中を侵す砂に混ざってどこかで聞いた女の声が囁いた
しかし瞳も唇も開く事は叶わず、その姿を確認は出来ない
気にせず声のない独り言を続ける

(  ∀ )(また何も……何も出来なかったんだ……
      もっと力があればあの子達を救えたのに、
      みんな幸せに出来たのに……!!)

(  ∀ )(……力さえ、あれば)

     「ふぅん 力があれば強くなれるんだ?」

(  ∀ )(だって僕は余りに無力過ぎた、普通の人間過ぎたんだ)

ξ ー )ξ「なら次の世界では、二十四の時と引き換えに、
       貴方に戦う力をあげる」


134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:25:30.69 ID:8jq5mfxQ0

ふと、声の主が誰なのかを思い出した
この小悪魔みたいな悪戯っぽい声は……あの妃のものだ

ξ゚⊿゚)ξ「ほぅら、いってらっしゃい」

閉じた瞼の裏で砂の一粒一粒が光り出すのを感じた
全身を覆っていた暖かい砂が引いていくのが分かる

ξ゚⊿゚)ξ「この世界の貴方には戦う力が備わってる
      貴方は貴方の望む通り強くなったのよ」

(  ∀ )(……貴女は)

ξ゚ー゚)ξ「目を開けて 大きく息をするの
      そうよ、ほら早く……!」



『魔法少女』



思い出したかの様に瞳を開き、思いきり息を吸い込む
ちょうど次の「終わり」の世界への転送が終わる所だった様だ
次元の狭間を虫食いの様にじわじわとこの世界が侵食していく

「彼女を、救って」妃の唇はそう象った様に見えた
そして狭間の空間と共に食い尽くされていった


137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:30:46.82 ID:QqZPw2hi0

異変は妃の願望の意味を考える暇すら与えてはくれない
色の付いた空を見上げれば、すでに兄妹の戦闘が繰り広げられていた
妹者も、双子も、もう傷だらけだ

(;・∀・)(どうしてだ? 時間枠がおかしい!)

(;・∀・)(まさか『二十四の時と引き換えに』というのは、
      『力を得る代わりにこの世界での一日の時間を失う』
      という意味だったのか!)

それでもおかしい、前回は兄者の片翼が落ちていたはずだ
しかし今の彼の背中には二枚の翼が揃って風を切っている
昨日妹者と接触しなかった事で未来に多少の歪みが生じているのか

急がないと「また」
そんな焦りが頭の中を巡り、思わず肩に力が入る

自身の身体能力の異常さに驚愕している時間さえない
妃の魔法で授かった剣を手に地を蹴り、
尚も戦い続ける三人の元へと飛び上がった

(;・∀・)「やめろおおおおお!!」



138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:32:45.42 ID:QqZPw2hi0

―――衝突

四人を中心に一筋の強い風が吹き抜け服と髪をはためかせた
三つ巴の真ん中で、兄の斧を右手の剣で、弟の刀を左腕の盾で、
魔法少女の腕を左手で掴み、三人の動きを一度に制する

l从;・д・ノ!リ人「のじゃ!?誰なのじゃ!?」

(;・∀・)「こんな戦い間違ってる!今すぐ武器を捨てるんだ!」

( ´_ゝ`)「邪魔しないでくれないか」

細い目を更に細めた兄弟の鋭い眼光に貫かれる
黒い感情の籠った低い声は警告の意を剥き出しにしていた

(;・∀・)「こんなの絶対おかしいよ!!
      どうして想い合う人達が殺し合わなくちゃいけないんだ!?」

(´<_` )「君には関係ないだろう」

今この瞬間、誰一人として力を緩める事は許されない
そうすればこの体勢は崩れて再び戦闘が始まる
交じり合った三つの凶器がギリギリと悲鳴を上げた



140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:34:56.29 ID:QqZPw2hi0

(;・∀・)「分からない……僕には分からない……
      どうして自分から不幸になる道を選ぶんだ……
      幸せになれる道だってあるじゃないか!!」

油断の原因は、自身の感情
熱い心の揺らぎにほんの一瞬、隙が生まれてしまった

いち早くそれを見抜いた弟が刀を滑らせ盾を弾く
間髪いれずに兄の斧の柄が腹部に重い一撃を食らわせた

(; ∀ )「あ、う゛ぅ……!!」

無様な濁った声が食いしばった歯の間から漏れる
反射的に上半身が前のめりになる
まるでそれが合図の様に三人は後ろへ下がり方方へ散った

( ´_ゝ`)「そんなもの、ないさ」

(´<_` )「………」

l从・д・ノ!リ人「………」

見下ろされた六つの視線は酷く冷めた白いものだった
自分の置かれている第三者という立場を嫌でも思い知らされる



141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:36:31.81 ID:QqZPw2hi0

( ´_ゝ`)「とんだ邪魔が入った」

(´<_` )「続きを始めようか」

隣り合わせの双子は鏡の如く左右対称の構えを取る
それに応える様に、妹者も大鎌を持ち直して向き合う
戦いの火蓋は今度こそ切って落とされた

(;-∀・)「やめてくれ……戦いを、止めて……くれ……」

何度兄妹の間に入っても殺し合いが止む事はない
状況を打破する具体的な提案も見つからないまま、
ただただお互いの体に傷が増え、体力を消耗していくばかり

しかしそんな攻防戦にも終わりが見えた
決して見えてはいけない終わりだ
とうとう過去の映像と現在の行動が重なる瞬間が来たのだ

妹者の隙を見て懐に入り込もうとする兄者
瞬間、妹者は弟者を無視し、懐に入り込んだ兄者に、大鎌を……



142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:38:20.56 ID:QqZPw2hi0

.    『彼女を、救って』

(  ∀・)

ふと頭に浮かんだその一言だけが体を突き動かした
思考回路は停止したまま、本能と感覚だけが研ぎ澄まされる
この言葉が妃から与えられた唯一の手がかりならば、僕は

それからは何もかもがスローモーションだった
迷う事なく真っ直ぐと兄者の方へ狙いを定める
そして両手で握り締めた剣を大きく横に振り被った

( ´_ゝ`)「!?」

切っ先が届くその刹那、兄の姿が自分の視界から消えた
しかし手を止める事はせず刃を右から左へと流す
確かに兄の姿は消えたが、標的を失った訳ではない
そこには兄を庇おうと盾になった弟の姿があったのだから

( ´_ゝ`)「おと、じゃ?」

(´<_` )「すまない……兄者、妹者……
       お……れはっ、ここまで……だ…………」

弟はゆっくりと兄の方へ振り返り悲しそうに笑った
言葉の最後がまるで水中にいるかの様に汚く濁る
その体には、下半身がなかった



143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:40:28.01 ID:QqZPw2hi0

(;´_ゝ`)「弟者ああああああああああああ!!」

( <_  )

ぐらり、
自らの翼で羽ばたく事も、重力にも逆らう事も出来ず、
真逆様に落下していく弟の後を追って、兄も急降下する

溢れ出る感情に身を任せて敵の存在を忘れているのだろう
心の中を弟で満たした背中には、警戒心など微塵も残ってはいなかった

「せめて」と、祈りながら血に濡れた剣を振るう
兄弟と同じ方法で死なせてやるのがせめてもの餞だと
目の前の上半身と下半身に別れを告げさせた

( ´_ゝ`)「お、と……」

( <_  )

兄の伸ばした手が弟に届く前に地面に叩き付けられた
重なり合った二人の上半身から少し離れた位置に下半身が落ちた音がする
ようやく兄の手が届いた頃にはもう、弟は息をしてなかった



144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:42:04.89 ID:QqZPw2hi0

地面に広がる血液が混ざり合い一つの大きな血溜まりになる
その惨状を眺めて兄は頭を垂れながら力なく笑った

( ´_ゝ`)「ははっ……嘘だろ
       ここまで来て、こんな終わり方か……」

(  _ゝ )「ごめん、なぁ……いも、じ……」

そう言い、ゆっくりと瞼を閉じた
愛しい妹と弟を片目ずつに映しながら

(  _ゝ )( <_  )

      『おっきい兄者も、ちっこい兄者も、
       妹者に殺されるのを望んでいるのじゃ』

l从・д・ノ!リ人

      『殺してあげるのが、二人の幸せなのじゃ』

l从;д;ノ!リ人「あああああああああああああああああああああああああああ
        あああああああああああああああああああああああああ
        あああああああああああああああああああああああああああああ
        あああああああああああああああああああああああああっ!!!!」



145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:44:31.15 ID:QqZPw2hi0

妹者の咆哮が空気を震わす
大鎌を持った両手を、上体ごと捻り、凪ぐ姿勢に入る

l从#;д;ノ!リ人「貴様ああああああああああああああああああ!!!」

( ;∀;)「へへっ、へへへへへ……」

l从;д;ノ!リ人「!?」

気が付けば泣きながら笑みを浮かべてた
そんな自分の様子を見て妹者の表情が変わる
憎悪から、驚愕と恐怖へと

先程からずっと頭の中が真っ白だ
体の震えも止まらない、もうわけが分からないよ
それでも最後の使命だけは分かっていた

l从;д;ノ!リ人「ダメェーーー!!」

( ;∀;)「もう大丈夫、だよ……
      今、僕が助けてあげるからねぇ……」

血に塗れた剣で最後の標的に引導を
自らの心臓へと突き立てた



146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:45:38.90 ID:QqZPw2hi0

妃の言っていた通り確かに自分は強くなっていた
普段の自分には人を殺す力も、己を殺す力もないのだから

くるくると両手が螺旋を描きながら墜落していく
徐々に地面が近付いて来て、とうとう頭からぶつかった
魔法で「強く」なった体はしぶとく脈を打っていた

l从;д;ノ!リ人「どうしてなのじゃ!!」

瀕死状態になった自分を降りて来た妹者が覗き込む
温かい涙の雨が顔に降り注ぎ、血で汚れた肌を洗い流した

(;:-∀・)「どうして……だろうね」

(;:-∀・)「どうしてこんな事になっちゃったんだろう?
      分からないよ、僕にも……」

ただいつも通りの退屈な日常を送っていただけだったのに
どうしてこんなに他人を必死になって救おうとして、
どうしてこんなに傷付いて、どうしてこんな最期を迎えてるんだろう



147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:47:05.22 ID:QqZPw2hi0

l从;д;ノ!リ人「お前は一体誰なのじゃ!?
        どうしてこんな酷い事するのじゃ!!」

l从;д;ノ!リ人「おっきい兄者も、ちっこい兄者も
        妹者に殺される事を望んでたのに……
        妹者だって、叶えてあげたかったのに!!」

(;:-∀・)「君には誰の事も追わせない……殺させやしない……
      兄達の事も、仇である僕の事も……」

(;:-∀・)「これから生きていくのに、そんなもの必要ない……
      だから、その因果を僕が引き受ける……」

l从;д;ノ!リ人「誰がそんな事を頼んだのじゃ!?
        余計な御世話なのじゃ!!」

(;:-∀・)「そうだね、ごめんね、ごめんね……
      でも、もう……これでおしまいだから」

l从;∀;ノ!リ人「待て!勝手な事して、勝手に死ぬな!!
        妹者はどうすればいいのじゃ!!」

(;: ∀ )

(;: ∀ )「生きれば、いいんだよ」



148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:48:20.03 ID:8jq5mfxQ0

l从;д;ノ!リ人

(;: ∀ )



l从 д ノ!リ人「……おいていかないでぇ」

返事は、ない



自分は妃の願う通り彼女を救った
犠牲は大きかった、でも己の命と引き換えに誰かを救えたんだ

これで良かったんだろう?
なぁ……魔女



『人間』


149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:49:11.44 ID:8jq5mfxQ0

最後に辿り着いたのは何にもない空間
職場でも、王宮でも、どこでもない場所

暗闇の空間の真ん中には真っ赤な王座の椅子
そこに君臨するは王ではなく、麗しき妃

ξ゚⊿゚)ξ「おかえりなさい」

( -∀-)

ξ゚⊿゚)ξ「おかえりなさい」

( -∀-)

( ・∀・)

( ・∀・)「……ただいま」



『魔女のいる王国』
に、僕は帰って来た


150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:50:06.53 ID:8jq5mfxQ0

( ・∀・)「生きてる……?」

ξ゚ー゚)ξ「ええ 貴方は生きてるわ」

「貴方は」の部分を強調して言われる
頭の中に太陽に存在を消された瞬間の月と、
自らの手で葬った双子の最期の表情が過ぎる

( ・∀・)「ここは?王様は?」

ξ゚⊿゚)ξ「ここは私だけの国、だからブーンはいないの」

なんでも時々自分だけの国が欲しくなる衝動に駆られるらしい
それでこうして独占出来る空間を作り出しては満足してるんだと
そう腕を組みながら自慢げに説明してくれた

( ・∀・)「あの世界も魔女が作ったのか?」

ξ゚⊿゚)ξ「ううん だから下手に干渉が出来ないの
.     ちょこーっと力を貸す事くらいしか、ね」

それから魔女は様々な事柄を教えてくれた
魔法という多大なる代価の為に世界の管理をしている事
管理を怠れば世界の軸そのものが歪んでしまう事

そして、時間遡行者さえいれば、何度でも繰り返せる事



153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:51:11.23 ID:8jq5mfxQ0

ξ゚⊿゚)ξ「だぁれも救えなかったわね」

( ・∀・)

ξ゚⊿゚)ξ「力さえあれば強くなれるんじゃなかったの?
.     ただ人を殺しただけで、なんにも救えなかったじゃない」

( ・∀・)「救った、じゃないか 彼女は、妹者だけは」

ξ゚⊿゚)ξ「本当にそう思う?」

頭の中に今度は妹者の最後の表情が浮かんだ
兄達の望みを叶える事も出来ずに天涯孤独になった魔法少女

(;・∀・)「だって、だって他にどうすれば良かったんだ」

ξ゚⊿゚)ξ「どうしようもないわよ
.     貴方がどう頑張ってもバッドエンドにしかならないもの」

( ・∀・)「……えっ」

耳を疑うとはまさにこの事だろう
目と口を開いて阿呆面してる自分に魔女は淡々と話の糸を紡ぐ



154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:52:06.89 ID:8jq5mfxQ0

ξ゚⊿゚)ξ「何も言わずに貴方を送ったのはね、
.     自分の無力さを身を以って知って欲しかったの」

( ・∀・)(何を)

ξ゚ー゚)ξ「貴方がどんなに正論を唱えても、どんなに平和を望んでも
.     相手がそれを選ばないなら意味ないのよ」

( ・∀・)(何を言ってるんだ)

ξ゚ー゚)ξ「救われる事を望んでない人を、どうやって救うつもり?」

( ・∀・)(この魔女は)

魔女は耳元で甘く、優しく、囁く
「貴方には何も救えない」

その告白と同時に惨劇の映像が蘇る
白狐と傷だらけの少女が、太陽と月が、
双子と魔法少女が、救えなかった人々が……!!



155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:53:04.95 ID:8jq5mfxQ0

瞬きするのを忘れた目が白く霧がかる
やがて止め処なく溢れ出した涙が頬を濡らした

ξ-⊿-)ξ「他人が何をしたって、本人が気付かないなら、
      結局何度も同じ事を繰り返すだけなのよ」

ξ゚⊿゚)ξ「自分で気が付いて変わるしかないの」

ξ゚⊿゚)ξ「愛を与えてくれる存在が、与えるべき存在がいた事に
.     そして、愛する人の為に、自分が本当にすべき事に」

( ;∀;)「……どうして、僕なんだい?」

ξ゚⊿゚)ξ「時間遡行者は適合者でないとなれない
.     あの世界での素質があったのはモララー、貴方だけ」

( ;∀;)「僕は……僕は一体、どうすれば……」

ξ゚ー゚)ξ「もう頑張らなくていい
.     時間遡行者はただ『見てる』だけでいい
.     あとは本人と時間が解決してくれる」

「見てる」だけ
絶望の宣告が自分の精神を底に落とした



156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:54:09.44 ID:8jq5mfxQ0

( ;∀;)「……い、嫌だ」

ξ゚ー゚)ξ「疲れたでしょう?
.     ほんの少し幸せな夢を見たら、また廻る旅を続けましょ」

( ;∀;)「やめて……やめて下さい……」

ξ^ー^)ξ「おやすみなさい」

とても綺麗な笑みだった
母が眠る子にする様に額へ口付けを落とされる

それが儀式の始まりだったのか
耳の奥で扉の閉まる音が鳴り響き、一瞬で魔女が姿を消した
魔女の空間という名の王国へ閉じ込められる

( ;∀;)「………!!
      っ!! ………!!」

ここは光も音も命もない深淵の部屋
静かに目を閉じる、握り拳を作る、大きく息を吸う
そして、叫ぶ

「………!!!」



『魔女の王国』


157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:55:19.57 ID:8jq5mfxQ0

( ・∀・)

気が付くと自分は知らない街を歩いていた
ごちゃごちゃ並ぶ奇妙な建物と、ぐにゃぐにゃ歪んだ出鱈目な道路
上を向けば眠った街を照らす双子の赤い月

爪;'ー`)「うんしょ うんしょ」

⌒*リ´・-・リ「フォックス、リリおもい?」

ふと、建物の影に一人の少女と一匹の白狐を見つけた
物陰に身を隠しながら、あちこちの様子を伺っている
傷だらけの少女と少女を背負った九尾の白狐

爪;'ー`)「ダイジョブ
 ダイジョブ」
      しっぽが きゅうほんに なった きつねは
      つよい まぢつよい まぢぱねぇ」

⌒*リ´・-・リ「フォックスがつよいのしってる!
       でもだいじょばない、リリもあるくもん」

爪;'ー`)「リリの あし まだ あるけない
      なおるまで おれが リリの あし」

潰れた自身の両足をちらりと眺めて少女は眉を潜める
白狐はそれが見えてるかの様に「大丈夫」と再び繰り返した



159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:56:08.00 ID:8jq5mfxQ0

その時遠くから複数の男の怒号が聞こえた
「早く捕まえろ」「どこに行った」「連れ戻すぞ」
どうやらこの二人はどこからか逃げて来た様だ

爪'ー`)「あいつら ずっと おってくる
.    リリ こわい?」

⌒*リ´・-・リ「こわいけど、だいじょぶ
       だってフォックスいるもん」

爪'ー`)「そうだね リリは ぼくが まもる よ」

⌒*リ´・-・リ「じゃあフォックスは、リリがまもってあげる」

( ・∀・)

二人はぎこちない笑みでそんな会話を交わす
そして真っ直ぐ自分の方へと歩いて来る

歩いて来る、隣を通り抜ける
通り抜けて行った、歩いて行く、歩いて行く
こちらを一瞥する事もなかった



160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:57:05.53 ID:8jq5mfxQ0

爪'ー`)「リリ リリ どこに いきたい?
.    リリの いきたい ところに いこう」

⌒*リ´・-・リ「んと、リリわかんない!」

⌒*リ´・-・リ「だってね、だって……
       おそとがこんなにひろいって、しらなかったもん」

爪'ー`)「あはは ぼくも おんなじ だ」

⌒*リ´・-・リ「そんじゃね、どこまででもいこ!」

爪'ー`)「そうだね どこまででも いける」

白狐は門へ向けて走り出した
朝になる頃にはこの歪な町を抜けるだろう
その後どうなるかは誰にも分からない

二つの影が夜の闇に溶けて消えるまでずっと見ていた
ずっとずっと、見ていた



162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 22:59:40.37 ID:QqZPw2hi0

( ・∀・)

気が付くと自分は青空と星空の真ん中を歩いていた
朝と夜の中央には区切りなどなく、
紫と青のグラデーションが混ざり合い繋がっている

青空には赤色の少女が、星空には桃色の少女が
二人の少女がお互いに背中を向けて立っている

(*- -)「貴方はずるい、みんなに必要とされてる
.    私だって愛されたい みんなと一緒にいたい」

(*-∀-)「ずるいのはしぃだろ」

(*- -)「太陽がいるから月が不必要になっちゃうんだ」

(*-∀-)「お前はお前が思ってるより、みんなに愛されてるよ」

(*- -)「……うそつき」

少女らは瞳を閉じたまま話を続ける
赤色の子は上を向きながら、桃色の子は下を向きながら



164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 23:01:51.24 ID:8jq5mfxQ0

ふと、足元を眺める
自分の立っている見えない足場の遥か下の方
青空の下には朝が、星空の下には夜が広がっていた

じっと見てると少しずつ世界が動いている事が分かる
恐らくは地球が回り朝と夜が来る現象と同じなのだろう
朝と夜は平等に訪れるのだ

(*-∀-)「ずっと黙ってた事があるんだ
.    教えてやんよ」

(*-∀-)「あたしはしぃが羨ましいんだ」

顔を上げて月がちらりと後ろを振り返る
しかし猛々しく燃えているだけの太陽の背中を確認すると、
寂しげに眉を下げて再び体を元に戻してしまった

(*- -)「……あら、何にも分かってないのね
.    月なんてそんなにいいもんじゃないわ」

(*- -)「ツーちゃんの方がいいに決まってるわよ」

今度は太陽が瞳を開き勢い良く後ろを振り返る
しかし月の背中はただただ煌々と輝くだけで何も語らない
ぐっと歯を噛み締めて再び元の体勢へと戻る



165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 23:02:20.58 ID:8jq5mfxQ0

(*- -)「ツーちゃんワガママなんだー」

(*-∀-)「しぃこそ、そういうのナイモノネダリって言うんだぞ!」

(*゚ー゚)「……お互い様にね」

月が手で口を隠しながらくすくす笑う
それを聞いた太陽は最初はきょとんとしていたが、
次第に意味を理解したのか誤魔化した笑いをする

背中を向き合ったままでは互いに互いの表情は分からない
それでも二人にはこれくらいの距離が心地よく思えるのだろう

(*゚ー゚)「本当に正反対ね、私達」

(*゚∀゚)「だな。どっちも大切だな」

(*゚ー゚)「ツーちゃんに足りないものはしぃが持ってるから、
.    しぃに足りないものはツーちゃんが持っていてね」

(*゚∀゚)「そうだな……うん、そうだな!」

(^∀^*)(*^ー^)

太陽と月は背中合わせのまま笑う
こうしている今も、世界は廻り続けている



166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 23:03:47.12 ID:8jq5mfxQ0

( ・∀・)

気が付くと自分はとある家の前にいた
御世辞にも豪邸とは言えない、
継ぎ接ぎだらけの襤褸屋(ぼろや)だ

しかし吹き曝しになった窓にはカーテンの様な布
窓から近くの木に括り付けた紐には
複数人の洗濯物が干してあり、生活感が漂っている

こんな所にも人が住んでるんだ
きっと生活して行くのは大変だろうなぁ
心の中で思っていると、中から人が出て来た

l从・∀・ノ!リ人

( ´_ゝ`)(´<_` )

顔のよく似た双子の兄弟と一人の少女
全く似てはいないが、どうやら二人の妹らしい



167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 23:04:16.96 ID:8jq5mfxQ0

楽しそうに家事をこなす三人を眺めてると、
ふと妹が自分の存在に気付いた
妹の視線をなぞった双子もこちらを見る

( ・∀・)

l从・∀・ノ!リ人

( ´_ゝ`)(´<_` )

妹が笑って手を振る、双子も口元を上げて頷く
何故だか泣きそうになりながら、
必死に笑顔を作り、応える様に自分も手を振る

ああ、良かった
本当に、本当に良かった……



瞬きすると目から何かがぽとり落ちた
遠くで涙の落ちる音が聞こえた
「かちり」と、まるで、秒針の様な音だった

瞳を開く


168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 23:05:14.90 ID:8jq5mfxQ0

( ・∀・)「?」

見覚えのある真っ白で無機質な部屋
正面の扉を入ってすぐの所に、また自分は立っていた

⌒*リ´ - リ「おにいさんが、つぎにリリをいじめる人?」

あの時と同じ光景、あの時と同じ言葉
目の前には、自分が、二度見殺した女の子

( ・∀・)

(  ∀ )



僕達は何度でもループする

例え世界に絶望しかなくても

……一筋の希望だけを信じて


170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 23:06:13.81 ID:8jq5mfxQ0



(  ∀ )「あはっ……」


(  ∀ )「あはははははははは!あはははははははは!」


(  ∀ )「あはははははははは!!」


(  ∀ )「ははっ……はははははははははは……は、」


(  ∀ )「…………あっ、」


(  д )「あ゙あ゙あ゙あああああああああああ゙ああああああああ゙ああああああああああああ
      ああああああああああ゙゙あ゙ああああああああああああああああああああ゙あああ
      あああああ゙あああ゙ああああああああ゙ああああ゙あああああああ゙ああ゙あ゙!!!!!」



- 終 -

172 名前: ◆3n1KTRbMTtJ4 :2012/05/30(水) 23:08:19.27 ID:8jq5mfxQ0
途中エラーばっかりで一時投下が停滞してしまいましたが、支援と保守のおかげでなんとか投下しきれました
本当にありがとうございます

171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 23:07:40.30 ID:4Lzwd3gc0
終わり?
モララーは延々とループし続けるのかな

174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 23:09:03.50 ID:HM0KBcPe0
終わりかな?
ツンとブーンはどこへ行ったんだろ

179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/05/30(水) 23:16:22.98 ID:8jq5mfxQ0
>>171
延々とループします

>>174
ブーンとツンはループさせてる側の存在なので、惨劇には関係なく今頃普通に生活してます

あ!あと>>163は連発投下です!ミスです!

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