mesimarja
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廃墟で肝だめしをするようです
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:06:25.40 ID:YQzX8MBG0

百物語宣伝を兼ねて投下。



( ^ω^)百物語のようです2012 in創作板( ω  )

・開催場所 : 創作板 百物語スレ
・開催期間 : 八月十日~八月十九日までの金土日
・開催時間 : 夜23時~翌朝7時まで



本館から蝋燭を一つ持ってきた。
本数は吹き消すときに発表。

  .,、
 (i,)
  |_|



それでは今宵の投下にお憑きあい願おうか。


2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:08:21.52 ID:YQzX8MBG0

二年生というのはいいものだ。
小学校の頃は、集団生活に慣れ始め、友人ができる。
中高大では、まだ先のことを考えずにいられる期間。

さらに、夏休みともなれば自由と時間を持て余す。
解放的で能動的な気分にさせる夏は、他の要素を織り込ませ、人をハイにさせる。



('A`)「なあ、来週の土曜日、肝だめしでもしねぇ?」



大学二年の夏。ドクオはそう言った。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:11:29.24 ID:YQzX8MBG0

( ^ω^)「肝だめし? するする! するお!」

('A`)「お前ホラー好きだな」

( *^ω^)「今からwktkが止wwまwwらwwなwwいww」

('A`)「はいはい。止まらないのはロマンティックだけにしとけ」

( *^ω^)「で? どこに行くお?
       曰くつきの海かお? 旅館かお? 学校かお? 墓場かお?」

('A`)「とりあえず落ち着け」

( *^ω^)「あ! ボクの友人も誘っていいかお?」

('A`)「友人?」

( ^ω^)「弟者とかジョルジュとか」

('A`)「弟者はともかくジョルジュかー。
   オレ苦手なんだよなぁ」

( ^ω^)「オカルトオタクのドクオは、DQNのジョルジュの鴨だおからね」

('A`)「わかってんなら何で呼ぶんだよ」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:14:09.87 ID:YQzX8MBG0

( ^ω^)「うーん。最近仲良くなったばっかりだから、親交を深めたいお」

('A`)「相変わらず、誰彼構わず仲良くなってるのな」

( ^ω^)「友達百人作るお」

('A`)「お前ならもういそうな気がするけどな」

( ^ω^)「アドレス帳には600件ほど入ってるお」

('A`)「オレなんて10件だぞ。クソが」

( ^ω^)「おっおっ。
       それで、結局どこに行くんだお?」

('A`)「ああ、そうそう。
   まったく。お前が話しを横道にそらすから悪いんだぞ」

( ^ω^)「すまんお」

('A`)「ほら、あそこだよ。
   地元のはずれにある廃墟」

( ^ω^)「ああ。あそこ……」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:17:23.31 ID:YQzX8MBG0

ドクオが言っている廃墟をブーンは思い浮かべる。

町の外れにある廃墟。
なぜか、あの周辺には民家がない。
田んぼもなければ、森もない。
鬱蒼としげる雑草の中に、ポツリと佇んでいる。

三階建ての小さなビルだ。
窓は外れていたり、割られていたりしている。
雨風にさらされ、ろくに手入れもされていないので、一部では鉄筋が見えてしまっている。

何とも不気味な雰囲気の廃墟だ。
それは、ブーン達が幼いころから存在していた。

何となく触れてはいけないような気がして、親達にあの廃墟のことを尋ねたことはない。
まるで、誰もが暗黙の了解として口を閉ざしているような。そんな空気だ。
小学生の時は、誰もが声を小さくして話し合ったものだ。

昔は墓地だった。
昔は人体実験がおこなわれていた。
虐殺事件が起こった。
妖怪が住んでいる。

噂の内容は様々だったが、誰一人としてその真実を調べに行く勇気はなかった。
何せ、あの辺りには街灯すらないのだ。
小学生に行けというのは酷な話だろう。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:20:08.31 ID:YQzX8MBG0

( ^ω^)「いいおね。長年の謎を解き明かしてやるお」

('A`)「いやー。お前みたいな友人がいると助かるよ」

( ^ω^)「お?」

('A`)「同好会のメンバーにいる同郷の奴らに声をかけたんだけどさ、みんな嫌がってさぁ」

( ^ω^)「そういえば、ドクオは大学でオカルト同好会を作ったんだったおね」

('A`)「肝だめしとかはしてないんだけどな。もっぱら資料探しと研究」

( ^ω^)「この間見せてもらった『全国のトイレの花子さん』は面白かったお」

('A`)「お前が同じ大学だったら、良かったのにな」

( ^ω^)「でもブーンは同好会には入らないお」

('A`)「陸上部と掛け持ちでもいい」

( ^ω^)「嫌だお」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:23:04.95 ID:YQzX8MBG0

('A`)「オレはクーを誘うつもりだから、お前もジョルジュ達を連れてきてもいいぜ」

( ^ω^)「まだ交流があったおね」

('A`)+「このオレが、美人巫女さんを逃すとでも思っているのか?」

( ^ω^)「犯罪臭がするお。通報していいかお」

(;'A`)「やめて!」


クーというのは、二人の幼馴染だ。
流れるような長い黒髪が印象的なクール美人。
高校ではマドンナ的扱いを受けていたが、それに対してもいつも冷静な顔をしていた。

彼女の実家は神社で、遊びに行ったときには巫女服姿で出迎えてくれた。
幽霊関係が大好きなドクオがそれに食いついたのは良い思い出と言えるだろう。
興奮するあまり、クーの袴を脱がしかけ、その時一緒にいたツンにしこたま殴られたことも含めて。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:25:13.68 ID:YQzX8MBG0

( ^ω^)「集合は廃墟の手前。最後の街灯下でいいかお?」

('A`)「さっすがブーン。よくわかってるな」

( ^ω^)b「伊達にドクオの友人はやってないお」

('A`)b「おう」

( ^ω^)ノシ「それじゃあ、来週の土曜日」

('A`)「あー。一応、誘う奴が決まったらメールしてくれ」

( ^ω^)「了解したお」


二人はそれぞれ帰路へついた。
来週の土曜日。
二人は一週間をこれほど待ち望むことは、そうそうないだろう。と、ばかりに胸を高鳴らせた。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:27:23.25 ID:YQzX8MBG0

('A`)「……結構集まったな」

( ^ω^)「ブーンもちょっと予想外だったお」

当日、廃墟へと続く道の途中にある、最後の街灯下で二人は言葉を交わした。
二人の目に映っているのは、今夜という日を共に過ごす面子だ。

川 ゚ -゚)「ツン、しっかりしろ」

私服としての洋服に身を包んでいる彼女がクーだ。
ドクオは直前まで巫女服で来てくれと頼みこんだのだが、動きにくいの一言で一蹴されてしまった。
雰囲気作りというよりは、ドクオの趣味だということをクーはわかっていたのだ。

:ξ;゚⊿゚)ξ:「いやいやいや! 無理よ無理!」

街灯にしがみついている金髪の女はツン。かつてドクオを見るも無残な姿に変えた女だ。
しかし、怖いものが大の苦手で、B級ホラーさえ見れない。
幼馴染として、彼女のそういった面を知っているからこそ、ドクオは彼女に声をかけなかった。

川 ゚ -゚)「大丈夫だって。私がいる」

::ξ;゚⊿゚)ξ::「無理無理! いくらクーの言葉でも無理!
       第一、あんたが私を騙して連れてきたんじゃない! この鬼!」

川 ゚ -゚)+「私は人間だ」

::ξ;゚⊿゚)ξ::「わかってるわよ!」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:29:10.31 ID:YQzX8MBG0

どうやら、ツンを連れてきたのはクーらしい。
思い起こせば、クーはツンが怖がっている姿を見るのが好きだった。

(;^ω^)「クー、ツンをいじめないで欲しいお」

川 ゚ -゚)「む。心外だ」

::ξ;⊿;)ξ::「何が心外よー! 馬鹿ー!」

フルボッコにされた恨みがあるとはいえ、流石のドクオも鬼ではない。
ああして泣いている姿を見せられると困ってしまう。

('A`)「……こんなんで大丈夫かよ」

小さく呟き、別の方向へ目を向ける。
  _
( ゚∀゚)「めっちゃ楽しみー!」

从 ゚∀从「幽霊なんて嘘だろ。いるわけねーじゃんww」

幽霊を全否定しそうな勢いの二人組。
男の方がジョルジュで、ブーンが誘った相手だ。
ジョルジュは友人として、さらにハインを連れてきた。

二人とも髪の毛を奇抜な色に染め上げ、見るからにDQNめいている。
金属バットを持っていたら非常によく似合うだろう。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:31:09.66 ID:YQzX8MBG0

(´<_` ) )「うーん。カオス」

ドクオと同じく、一歩離れたところから様子を見ているのが弟者だ。
腕を組み、他の面子の様子を見ている。
彼の後ろに何か見えるが、それは幽霊の類ではない。

(´<_` ) )「暑苦しいんだけど」

(´<_` ) )))

(´<_` ) )「いや、首を振られても困る」

弟者の後ろには人がいる。
一言も発せず、できるだけ他人から己の姿が映らないようにと、小さくなって弟者の背に隠れている。

(´<_` ) )ボソボソ

(´<_` ) )「オレは帰らないよ。帰るなら兄者一人で帰れよ」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:33:02.96 ID:YQzX8MBG0

集まった面子は当然、同郷の者ばかり。
そのため、皆一度は顔をあわせたことがある。
仲が良いわけではない者もいるが、名前や顔くらいは一致する。

('A`)「弟者」

(´<_` ) )「久しぶり」

('A`)「……後ろの、それ」

(´<_` ) )「気にしなくていいぞ」

('A`)「兄者、だよね?」

(´<_` ) )「そうだよ」

('A`)「まだ、駄目なんだ」

(´<_` ) )そ ビクッ

(´<_` ) )「うん。相変わらずだよ」

中学に入学した頃から、兄者は学校にこなくなった。
たまに学校にきたかと思えば、弟者がいないと口も開けない。
次第にエスカレートしたそれは、弟者の他に愛用のパソコンまでもを必要とした。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:35:19.80 ID:YQzX8MBG0

人間が壊れる姿を始めて見たドクオは、恐怖を感じた。
幽霊などよりも、人間の方がずっと怖い。
そんな思いが強くなり、ならば幽霊や呪いの恐ろしさとは何なのか。
そういった思考の末、彼はオカルトに興味を持ち始めた。

そのため、ある意味ではこの双子のおかげでドクオは今の自分を築けているといってもいい。

(´<_` )ゝ`)

(´<_` ) )彡

ちらり。と、弟者の背から顔を出したが、すぐに隠れてしまう。
幼い女の子ならば可愛いかもしれないが、兄者の顔は弟者とそっくりだ。
長身な弟者と体格までほぼ同じなのだから、可愛さなど欠片もありはしない。

('A`)「でも兄者も来るとは思わなかったよ」

(´<_` ) )「今日は家に母者達の友人が来ていてな。
         オレがいないと無理だとボソボソと喚くものだから」

('A`)「ボソボソ喚くって矛盾してないか」

(´<_` ) )「矛盾してないんだよ。兄者の場合は」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:37:04.90 ID:YQzX8MBG0

( ^ω^)「ドクオー。そろそろ出発するかお?」

('A`)「そうだな。って、ツンはいいのか?」

ξ゚⊿゚)ξ「もう、逃げられないもの……」

気丈に振舞っているが、声が震えている。ついでに目も潤んでいる。
怖いのならば帰ればいいのにと思うが、この辺りは街灯があるといっても薄暗い。
民家も殆ど見当たらない。こんな場所から、ツンが一人で帰れるとは思えない。

川 ゚ -゚)「よく言った。それでこそツンだ」
  _
( ゚∀゚)「何かよくわかんねーけど、行くならとっととしようや」

从 ゚∀从「そうだね。オバケなんかいなかったって証明してやらないと」

それぞれの反応を示しながら、集まった八人は廃墟へ向かって歩き始めた。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:39:09.56 ID:YQzX8MBG0

自由に伸びている雑草を踏み荒らしながら、懐中電灯を片手に進む。
後ろに見えていた街灯が小さくなっていき、やがて小さな点にしか見えなくなる。

そこまで進んで、ようやく廃墟が彼らの前に姿を現す。
静かに建っているその様子は、まるで闇に溶け込んでしまうようだ。

('A`)「ここか」

ξ゚⊿゚)ξ「ねえ? 大丈夫よね? ね?」

川 ゚ -゚)「私はあまり霊感がないからなぁ」

ツンがクーの裾を引っ張りながら尋ねるが、彼女は肩をすくめるばかりだ。

从 ゚∀从「巫女さんなのに?」

川 ゚ -゚)「残念ながらな」
  _
( ゚∀゚)「おっぱいはあるのに?」

川 ゚ -゚)「それとはあまり関係がないだろ」
  _
( ゚∀゚)「いやいや。やっぱりおっぱいは大きくないとな。
     ちょっと揉ませてくれよ」

川 ゚ -゚)「断る」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:41:21.25 ID:YQzX8MBG0
  _
( ゚∀゚)「ちょっとだけでいいからさ」

(´<_` ) )「その辺にしとけよ」
  _
( ゚∀゚)「なんだよ。お前コイツの彼氏か?」

(´<_` ) )「違うが……」

( ^ω^)「ボクもあんまりそういう冗談はよくないと思うお」
  _
( ゚∀゚)「んだよブーンまでさぁ」

('A`)「あの……。そろそろ、中に入りたいんですけど」

ξ゚⊿゚)ξ「何で敬語なのよ」

('A`)「いや、怖いじゃん」

ジョルジュに下手なことを言えば、手にしている懐中電灯で殴られかねない。
こんな場所だ。殴られて死んでしまったら、この場にいる全員が口裏をあわせかねない。


::('A`):: ブルッ

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:44:22.94 ID:YQzX8MBG0

少なくともブーンやクー、ツンはそんなことをするような人間ではないと信じている。
それでも、ドクオという人間は嫌な予感を払拭できない性質だった。

从 ゚∀从「おーい。ジョルジュ、中に入るぞ」

('A`)「あっ」

ドクオがもたもたしているうちに、ハインが一足先に廃墟へ足を踏み入れていた。
第一歩は頂くつもりだったドクオは、少しだけ顔を俯ける。
何かを言う勇気などはない。
  _
( ゚∀゚)「りょうかーい」

ξ゚⊿゚)ξ「クー、大丈夫?」

川 ゚ -゚)「大丈夫だ。しかし、ブーン。お前は本当に友達を選ばないな」

( ^ω^)「悪い奴じゃないんだお。ちょっとお調子者なだけなんだお」

(´<_` ) )ボソボソ

(´<_` ) )「兄者に褒められても欠片も嬉しくない件」

(´<_` )i|)

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:47:27.68 ID:YQzX8MBG0

廃墟の中はかすかなかび臭さがあった。
床には砂埃がたまっていて、八人が歩く度にじゃりじゃりと音がなる。

ξ゚⊿゚)ξ「広いわね……」

(´<_` ) )「いくつもの店舗が入っていたんじゃなくて、全部の回が一つの会社で使われていた感じだな」

一階は扉が一つあるだけで、広々とした空間が広がっている。
その中に、カウンターやソファのなれの果てが転がっていた。

(´<_` ) )グイッ

(´<_` ) )「帰るなら兄者一人で帰れよ」

(´<_` ) )

(´<_` ) )「第一、オレはついてきてくれなんて言ってないからな」
  _
( ゚∀゚)「そうしてると独り言みてぇだな」

ジョルジュがせせら笑うように言う。
事実、その場にいる者の中で兄者の声が聞こえているのは弟者だけなので、後ろにくっついている兄者に気づかないと、
弟者は一人でブツブツ言葉を零しているだけにも見えなくはない。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:50:21.45 ID:YQzX8MBG0

(´<_`# ) )「兄者のせいで馬鹿にされただろうが」

(´<_`# );)

(´<_`# );)「うるせぇよ。あと、ちょっと歩くのに邪魔だし」

::(;´_ゝ`):: (´<_`# )

弟者が分裂する。
正確には、後ろにくっついていた兄者を引き剥がした。

('A`)「あ、兄者だ」

しっかりとその顔を見たのは久々だ。
相変わらずよく似た双子だという印象を受ける。

::(;´_ゝ`):: ボソボソ

(´<_`# )「んだよ。言いたいことがあるならハッキリ言えよ」

川 ゚ -゚)「少し落ち着きたまえ。水でも飲むか?」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:53:28.44 ID:YQzX8MBG0

クーが鞄の中からペットボトルを取り出す。

(´<_` )「……いや、いい」

(((;´_ゝ`)

(´<_` ) )「はぁ……」

弟者が落ち着いたことを確認してから、兄者は再び定位置へと戻る。
剥がされている間は手足が震えていたのだが、弟者の背中に戻ることで安心したのか、治まっている。

从 ゚∀从「なんつーか、見てて面白いな」

(´<_` ) )そ

(;^ω^)「ハイン、兄者をつつかないであげて欲しいお」

从*゚∀从「でも面白いぞ」

(´<_` );)「オレに被害がないならどうぞどうぞ」

ξ゚⊿゚)ξ「助けてあげなさいよ……」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:56:33.01 ID:YQzX8MBG0
  _
( ゚∀゚)「あ? ここ、ちょっとおかしいぞ」

('A`)「あ、本当だ。地下があるのかな?」

ジョルジュが足で指した場所は床にヒビが入っていた。
小さな穴が開いており、懐中電灯で照らしながら覗いてみても闇しか見えない。
  _
( ゚∀゚)「気をつけねぇ、と、なっ!」

ドクオが穴を覗きこんでいる横で、ジョルジュが力いっぱい足でその場所を踏む。

(;'A`)「ちょっ! ちょっ!」
  _
( ゚∀゚)「ギャハハハ。冗談だよ。じょーだん」

川 ゚ -゚)「悪趣味だぞ」
  _
( ゚∀゚)「そりゃどうも。まあ、一応コンクリでできてるんだし、そうそう崩れねぇって」

そう言うと、再びヒビの入った部分を数度踏む。
かすかにパラパラと音はしたが、崩れる気配はない。

('A`)「まあ、そうだよな」

少しほっとしたような、動揺してしまったのが恥ずかしいような気分になる。
気恥ずかしさを誤魔化すために辺りを見回し、ドクオは一つぽつりとつけられている扉へ向かう。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/10(金) 23:59:21.45 ID:YQzX8MBG0

('A`)ノシ「おーい。こっちの部屋に入ってみようぜ」

川 ゚ -゚)「上の階に行くんじゃないのか?」

('A`)「先に一回を全部調べてみようかと」
  _
( ゚∀゚)「んじゃ、オレがバーンっと、開けるぞ!」

ドアノブを掴んでいたドクオを押しのけ、ジョルジュが扉を開ける。
錆びついたような嫌な音が一瞬響いたあと、扉が壁にぶつかった音が聞こえた。

从 ゚∀从「おいおい。ボロイ扉が壊れちまうんじゃねーの?」

扉の音を聞き、笑いながらハインがジョルジュ達へと近づく。
ようやく解放された兄者は、弟者の背中でほっと一息をついた。

(´<_` ) )「何かあったか?」

( ^ω^)「wktkだおー」

続いて弟者達が向かう。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:01:19.73 ID:xBAYnMYF0

(うA`)ゴホッ

川;゚ -゚)「すごい埃だな」
  _
(;゚∀゚)「換気――って、窓がねぇな」

扉の向こうは銀世界ならぬ灰世界。
埃が舞い、人間の肺を攻撃する。

部屋はちょっとした休憩室だったようで、埃塗れの机と小さな洗面台が何とか確認できた。

ξ;゚⊿゚)ξ「うわぁ……ゴキブリとかいないでしょうねぇ」

(;^ω^)「ブーンは幽霊よりもそっちの方が怖いお」

手持ちのタオルを片手に面々は部屋に入る。
小さな部屋ではあるが、八人くらいならば余裕があった。

(´<_` ) )「何と言うか、時が止まってるみたいだな」

部屋の中には机も洗面台もある。窓がないため、木の葉などの外部からの異物が入ってくることもなく、
見ようによっては時間が止まっているようにも見えた。

ξ゚⊿゚)ξ「でも流石に水はでないわよ」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:04:35.96 ID:xBAYnMYF0

ツンが試しに蛇口を捻ってみるが、水は一滴もでない。

('A`)「お前、怖がりの癖に勇気あるな」

ξ゚⊿゚)ξ「え?」

( ^ω^)「ホラー映画では、蛇口を捻ったら髪や血が……。
       ってのがセオリーだお」

ξ;゚⊿゚)ξ「えっ! だ、だって……」

从 ゚∀从「大丈夫。大丈夫。あんなの全部嘘だからさ」

ハインは笑いながら言う。
彼女は一貫して幽霊の存在を否定している。
  _
( ゚∀゚)「まあ、血みたいなのが出ても錆びだろうな」

ξ;゚⊿゚)ξ「そ、そうよね」

そう言いながらもツンは洗面台から離れる。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:07:20.50 ID:xBAYnMYF0


((ξ;゚⊿゚)ξ


ξ゚⊿゚)ξ


ξ゚⊿゚)ξチラッ


ξ゚⊿゚)ξ|ξ(::::ξ


ξ゚⊿゚)ξ


ξ゚⊿゚)ξ「え――?」




ξ゚⊿゚)ξ|ξ(::∀::ξ ニタァ…

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:09:21.16 ID:xBAYnMYF0


ξ゚―゚)ξ「――ッ!」



ツンが悲鳴にならない声を上げる。

(;^ω^)「ツ、ツン?!」

(;'A`)「どこに行くんだ!」

面々がツンの方を向いたとき、彼女はすでに走りだしていた。
誰もが彼女の腕を掴もうとするが、不思議なほどその腕を掴むことは困難だった。

ξ;⊿;)ξ「かえ、かえ……」

ツンは嗚咽を上げながら、走った。
先ほど見た鏡の中の自分は何だったのか。
何故笑っていたのか。
やはり一人でも帰った方がよかったのではないか。
怖い。怖い。怖い。怖い。
ホラー映画なんて目じゃない。現実に起こったほうがずっと怖い。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:12:44.80 ID:xBAYnMYF0

ツンは足を床につけ、再び力を入れる。
この場から逃げるために、外へ出るために。
駆け抜けるために。

ξ;⊿;)ξ「あっ」

ぐらり。
視界が揺れる。

(;^ω^)「ツン!」

足の速いブーンの顔が見えた。
暗くてよくわからないが、焦っていることは声でわかる。

ξ;⊿;)ξ「ブーン……」

ツンは手を伸ばす。
ブーンも手を伸ばす。

しかし、二人の手は届かない。

川;゚ -゚)「ツーン!」

クーの悲鳴にも似た叫び声がツンに届く。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:15:24.53 ID:xBAYnMYF0

ξ;⊿;)ξ「クー。ドクオ……」

ツンは闇に落ちながら手を伸ばす。
上に届くことはないと知っている。

(;^ω^)「ツン……。ツーン!」


  _
(;゚∀゚) 从;゚∀从 (;'A`) 川;゚ -゚) (´<_`;);)

兄者を除いた全員の顔が見えた。


ξ;⊿;)ξ「みん、な――」





(;゚∀゚) 从;゚∀从 (;'A`) ξ(::∀::ξ 川;゚ -゚) (´<_`;);)


ξ;Д;)ξ「あ……あああああああああ!」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:18:31.52 ID:xBAYnMYF0

ツンの悲鳴が聞こえた。
そして、それは唐突に途絶える。

(;^ω^)「ツ、ン……?」

(;'A`)「おい……。やべぇって」

面々の前には、ぽっかりと大きな穴が開いている。
  _
(;゚∀゚)「崩れるような感じはしなかったんだがなぁ」

穴は、先ほどジョルジュとドクオが見ていたものから広がった。
ジョルジュが力いっぱい踏み抜いても平然としていた床が、ツン一人の脚力で崩れるとは思えない。

川;゚ -゚)「け、警察……。警察に連絡するべきだ」

(´<_`;);)「そうだな。携帯は……圏外か。一度、街灯のところまで戻るか」

从;゚∀从「でも、それって色々聞かれるんじゃねぇの?」
  _
(;゚∀゚)「それも面倒だけどよ……。見てみろよ」

ジョルジュが懐中電灯で辺りを照らす。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:20:27.09 ID:xBAYnMYF0


ぽっかりと開いた大穴は周囲の床にヒビを入れている。
彼らが一度この場所から脱出するには、ヒビの上を歩かなければならない。
  _
(;゚∀゚)「オレは嫌だぞ。あんなとこ通るの」

今すぐここを出たいという気持ちはあるが、目の前で人間が落ちた後だ。
並大抵の勇気では通れない。
彼らの耳には、今もなおツンの悲鳴がこびりついている。

川;゚ -゚)「だが、このままここで過ごすわけにもいくまい」

(´<_`;);)「一度、他の階も調べてみないか?」

从;゚∀从「だな。上手く木とかがあったら……」

(;^ω^)「この辺りは木なんて生えてないお」

从;゚∀从「うっせー。他にも、ツタとか色々あるだろ!」

(;'A`)「とりあえずは、確実に脱出する方法を探すしかないか」

一度、穴を見てから、ドクオが結論を述べる。
ツンには悪いが、もうしばらく穴の底で待っていてもらうしか他ない。

誰一人として穴の中を照らそうとしないのは、恐ろしさからだった。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:23:28.96 ID:xBAYnMYF0

二階へと昇る階段を慎重に進んでいく。
懐中電灯で足元を照らし、ヒビが入っていないことを確認する。
面々は、石橋を叩いて渡るという言葉が、これほどまでに理解できる日がくるとは思っていなかった。

('A`)「二階は細かく部屋が別れてるな」

中央に道が一本。それの途中、T字路になっている。
目に見えるだけでも二つの部屋があった。

从 ゚∀从「どうする?」

川 ゚ -゚)「私は皆で探索したほうがいいと思う」

一人では、何か事故が起こったときに対処できない。
廃墟ということもあって、危険人物が潜んでいる可能性とて、否定はできないのだ。

( ^ω^)「そう、だおね……」

ブーンは俯きながら答える。
ツンの姿が目に焼きついて離れない。

('A`)「ブーン……。早く帰って、おばさん達に伝えてやろうぜ」

( ^ω^)「うん……」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:27:00.23 ID:xBAYnMYF0

ドクオは罪悪感があった。
そもそも、ここへ来ることを企画したのは彼なのだから。

ブーンとツンは昔から仲がよく、小学生時代は夫婦だとよくからかわれていた。
近頃になって、本当の夫婦になるんじゃないかと、昔馴染み達の間では話題になることも多かった。
そのツンが、目の前で闇に落ちて行ったのだ。
伸ばした手は届かず、最後に聞こえたのは悲鳴だ。
辛くないはずがない。

(´<_` ) )「オレはどっちでもいいが、どうせ兄者はオレと一緒だぞ」

从 ゚∀从「ああ、ソレな」

(´<_` )i|)

(´<_` )i|)「そろそろ弟離れしろよな。本当に」

川 ゚ -゚)「なら、やはり全員で――」
  _
( ゚∀゚)「ちょっと待てよ」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:30:39.85 ID:xBAYnMYF0

今まで黙って話を聞いていたジョルジュが口を挟む。
  _
( ゚∀゚)「オレは反対だ。
     せっかく、これだけの人数がいるんだ。別行動をしたほうが効率的だろ」

('A`)「でも、クーが言っていたように、何かあったら」
  _
( ゚∀゚)「何かあったとき、大勢ならどうにかなるのかよ」

( ^ω^)「それは……」

ブーンは先ほどの光景を思い出す。
誰一人として、ツンを助けることはできなかった。
差し出した手は届かず、残ったのは悲鳴だけ。
  _
( ゚∀゚)「な? それなら時間短縮のメリットを取ろうぜ」

川 ゚ -゚)「しかし、不審者がいたら」
  _
( ゚∀゚)「なら、女二人と男一人。んで、残りはオレとドクオが個別。
     双子はセット。これでどうだ」

四つに別れて探索しようと言うのだ。
確かに、それならばこの階の探索もすぐに終わるだろう。
ある意味では、ジョルジュの言葉は正論だ。

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:33:23.66 ID:xBAYnMYF0

川 ゚ -゚)「……やはり、私は賛成できない」

从 ゚∀从「なんで? ジョルジュにしては頭の良いこと言ってるぞ」
  _
( #゚∀゚)「にしては。って、なんだ! このクソアマ!」

从#゚∀从「ああ?」

二人が一触即発の空気を出す。
慌ててブーンが間に入るが、中和される様子は見られない。

そんな中、クーがポツリと零す。



川 - )「ここは、心霊スポットだ」

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:36:25.86 ID:xBAYnMYF0

それは、小さな声だった。
だが、その場にいた全員に伝わった。

ジョルジュとハインは口論をやめ、ブーン達は俯いてしまっているクーを見る。

('A`)「確かに。何かがいるとするなら、単独行動は危ない」

从 ゚∀从「はあ? お前、そんなもん信じてんの?」

ハインが笑う。
彼女は幽霊の存在を否定するために、この企画に参加しているようなので、当然のリアクションだ。
  _
( ゚∀゚)「馬鹿馬鹿しい。
     第一、みんなでいれば幽霊も怖くなーい☆ってのもおかしいだろうが」

ジョルジュはあくまでも意見を変えない。
そして、それはクーも同じであった。
いつもは冷静で、ゆっくりと理論的に相手を説得する彼女が、ひたすらに駄目だと言う。

( ^ω^)「クー。大丈夫かお?」

川 - )「大丈夫。大丈夫さ……」

('A`)「……」

クーはツンと仲が良かった。
目の前で起きた事故が、霊的なものの仕業だったならば。と、考えているのだろう。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:39:24.68 ID:xBAYnMYF0

(´<_` ) )「ふむ。なら、二手に別れようじゃないか」

( ^ω^)「二手?」

弟者がジョルジュ達の間に入る。
必然的に、兄者もそこに入ることになってしまうためか、一度兄者が弟者の服を引っ張るのが見えた。

(´<_` );)「幽霊を信じていない単独組と、信じている集団行動組。
         ただ、ハインは女だし、念のため集団行動をしてもらう。ってことで」

从 ゚∀从「あたしは平気さ」

( ^ω^)「でも、女性だお」

从*゚∀从「ま、そういう扱いを受けるのも悪くねーけどさ」

(´<_` );)「と、まあ、ジョルジュが一人だけになるわけだが、構わんよな?」
  _
( ゚∀゚)「お前もゆーれーなんて信じてるのかよ」

(´<_` );)「兄者がうるさいんでな」
  _
( ゚∀゚)「……四つに別れたほうが効率的だろ」

(´<_` );)「いつまでも言い合っている方が時間の無駄だぞ?」

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:42:02.00 ID:xBAYnMYF0

二人の視線がぶつかり合う。
心配そうにその様子を見ていたのはブーンとドクオだけだ。
クーは俯いたまま。ハインは興味なさ気に眺めている。
  _
( ゚∀゚)「はいはい。わかりましたよっと」

ジョルジュが肩をすくめる。
多勢に無勢と取ったのか、時間の無駄を悟ったのかはわからない。
  _
( ゚∀゚)「んじゃ、オレは奥を見てくるわ」

('A`)「大丈夫か?」
  _
( ゚∀゚)「バーカ。幽霊が出たらオレがボコってやる」

口角を上げる姿には余裕が浮かんでいる。

( ^ω^)「何かあれば叫ぶお」
  _
( ゚∀゚)「お前も大概心配性だな」

そう言うと、ジョルジュは弟者を押しのけて奥へ進んで行く。
その際に、弟者の後ろにいた兄者を軽く小突くことを忘れない辺りが、彼の性質を現している。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:45:27.22 ID:xBAYnMYF0
  _
( ゚∀゚)「しっかし、本当にここは何だったのかねぇ」

手短な扉を開き、辺りを探索しながら呟く。

何かしらの会社が入っていたようだが、それにしても奇妙だ。
いくつかの机は残っているというのに、仕事に使っていたであろう道具は見つからない。
すっかりと色あせてしまっている額縁はあるのに、中身は何もない。

どのような仕事をしていたのかが全くわからない。
わからないというのは、人間の不安感を煽る。
  _
( ゚∀゚)「ま、どうでもいいか」

近くにあった椅子を蹴り倒しながら窓に近づく。
カーテンでもあれば、それをかき集めて下へ続くロープにしてもよかったのだが、残念ながらカーテンはなかった。

窓にはヒビが入っており、雨風にさらされ続けてきたために外を見るのにも苦労する。
外を眺めるためには、一度窓を開ける必要があった。
  _
( ゚∀゚)「この窓は……。
     あー面倒くせぇ」

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:48:24.06 ID:xBAYnMYF0

先ほど蹴り倒した椅子を持ち上げ、窓に叩きつける。
  _
( ゚∀゚)「よしよし」

もともとヒビの入っていた窓ガラスは、あっさりと壊れた。
叩きつけたとはいっても、耐久度が低かったこともあり、派手な音はしなかった。
おそらく、集団行動を取っている面々の耳には届いていない。
  _
( ゚∀゚)「おー。いい風だ」

ジョルジュは残っているガラスに気をつけながら外を見る。




     ヒ
      ュ
       ッ


  _     ||||
( ゚∀゚)  (。A:::::)
       -

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:50:43.10 ID:xBAYnMYF0

  _
( ゚∀゚)「……え?」





一瞬、時間が止まった。

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:53:34.51 ID:xBAYnMYF0

  _
(;゚∀゚)「いやいやいやいやいやいやいや!」



ジョルジュは慌てて窓から身を乗り出し、下を見た。
空には雲がかかっており、月の光すらない。
覗きこんで見たものの、鬱蒼としげっている草の陰がかろうじて見える程度だ。


  _
(;゚∀゚)「今の何だ……。何なんだ」


心臓がうるさい。
呼吸が荒い。

ジョルジュは後ずさる。

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:56:27.67 ID:xBAYnMYF0

足が何かにぶつかる。
おそらくは部屋に置かれていた机のはず。

そう思い、ジョルジュは足元に懐中電灯を向ける。


  _
( ゚∀゚)



      _
     (゚∀::::::)

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 00:59:25.04 ID:xBAYnMYF0

そこにあったのは崩れた顔。
どことなく、見たことのある顔。

  _
(;゚∀゚)「う……うおおおおお!」


ジョルジュは足を振り落とす。
何の感触もなく、地面を踏みつけた音だけが聞こえた。


  _
(; ∀ )ハアハア

  _
(; ∀ )「なんだ。何だ、アレ……」

  _
(;゚∀゚)「ははは。ちょっとした幻覚だ。
     こんな辛気くせぇとこにいるから、あんなのを見ちまうんだ」

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 01:02:27.46 ID:xBAYnMYF0
  _
(;゚∀゚)「ここは大したもんねぇな。
     おし。次行こ、次」

扉を開こうとして、ふと気がつく。

  _
( ゚∀゚)「…………オレ、扉閉めたっけ?」


首を傾げる。
しかし、手は勝手にドアノブを握り、扉を開けようとしていた。

  _
( ゚∀゚)「――閉めてねぇよな」






  _
( ゚∀:::) ニタァ ξ(::∀::ξ



開いてしまった扉の向こうにはナニカがいた。

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 01:05:37.56 ID:xBAYnMYF0

( ^ω^)「何もないお」

从 ゚∀从「ここから飛び降りてみるかぁー?」

(;'A`)「やめて!」

割れて風通しのよくなってしまっている窓を覗きながら三人は言葉を交わす。
当然だが木はなく、下に降りることができるような道具も見つからない。

川 ゚ -゚)「……」

(´<_` ) )「どうした?」

川 ゚ -゚)「いや、ロッカーがな」

( ^ω^)「ロッカー?」

クーの視線の先にブーンが光を当てる。
そこには確かにロッカーがあった。
金属は光を不気味に反射している。

('A`)「あれがどうかしたのか?」

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 01:08:30.34 ID:xBAYnMYF0

川 ゚ -゚)「妙じゃないか」

从 ゚∀从「何が?」

川 ゚ -゚)「この部屋の窓は割れている。当然、雨だって入ってくる」

(´<_` ) )「……なるほど」

( ^ω^)「お?」

(´<_` ) )「何であのロッカー、錆びてないんだ?」

('A`)「あ」

全員が懐中電灯をロッカーに向ける。
光を鈍く反射しているロッカーは、この部屋にある他の物達より年季を感じさせない。

まるで、誰かが後々に運んできたかのような違和感。
悠然としたロッカーに、ハインを除いた面々は唾を飲み込む。

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 01:10:32.64 ID:xBAYnMYF0

从 ゚∀从「そうだなぁ。じゃあ、ちょっと開けてみようぜ」

(;'A`)「ちょっとは戸惑おうよ」

ドクオの言葉など聞かず、ハインはロッカーに手をかける。
他のものほどではないものの、それなりの年季が入ったロッカーは一瞬だけハインに逆らう。
しかし、彼女が力を強くすれば、あっさりと彼女に服従した。

从 ゚∀从「ほら、開いたぜ」

そう言って、手にしていた懐中電灯を中へ向ける。


从 ゚∀从「――え」


カラン。と、懐中電灯が落ちる。
光がくるくると回り、ハインの様子を見ていた面々の足元を照らす。

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 01:13:27.17 ID:xBAYnMYF0

( ^ω^)「ハ、イン……?」


从 ∀从


ハインは沈黙したままだ。

(´<_` ) )「どれ」

(((´<_` );)グイッ

(´<_` );)「んだよ」

('A`)「オレが行くよ」

兄者に引きとめられた弟者に代わり、ドクオがハインに近づく。
足元に落ちていた懐中電灯を彼女に握らせ、自分の持っていたソレでロッカーを照らす。

('A`)「え?」

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 01:16:41.29 ID:xBAYnMYF0

ドクオが声をあげる。

( ^ω^)「何が、あるんだお」

ブーンが尋ねながらも足を進める。
二人が言葉をなくすような何かがそこにはあるのだ。
ドクオによって照らされている中を見る。

( ^ω^)「これは……」

(´<_` ) )「何があるんだよ」

川 ゚ -゚)「ドクオ? ブーン?」

('A`)「こっちに来るな」

ドクオはそっとロッカーを閉める。
ハインの手を握り、クー達のもとに戻る。その後にブーンが続いた。

川 ゚ -゚)「なあ、何があったんだ」

(´<_` ) )「気になる」

ドクオとブーンが顔を見合わせた。

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 01:19:29.14 ID:xBAYnMYF0

('A`)「骨だよ」

(´<_` ) )「骨?」

( ^ω^)「白骨死体。だお」

川 - )「し、たい」


三人が見たのは死体だった。
ただし、肉など欠片も残っていない真っ白な骨だ。
ロッカーの中にはどうやって入りこんだのか、虫やネズミまでいた。
彼らが肉を美味しくいただいてしまったに違いない。

从 ∀从

ハインは未だに放心していた。
いくらヤンキー女子とはいえども、白骨死体に耐性があるはずもない。

(;'A`)「やべえって。幽霊とかそういうんじゃなくても、やべえよ」

死体があったのだ。
これはもう、オカルトというような話ではない。
国家公務員を導入しなければならない。

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 01:22:07.13 ID:xBAYnMYF0

川 - )「悪い気が溜まってるんだ」

( ^ω^)「お?」

川 - )「悪い気は、どんどん陰を引き寄せる」

クーが頭を抱えてうずくまる。

川 - )「お家柄、そういうことを聞いたことがある。
     ドクオも、ちょっと聞きかじったことがあるんじゃないか?」

('A`)「……ああ。悪霊がいるところでは事故や事件が起こりやすい。
   向こうが呼んでいるんだ。こっちの世界にいるオレ達を」

(´<_` );)「じゃあ何か。ここがマジの心霊スポットで、そのせいで死体があると?」

( ^ω^)「悪循環がずーっと続くんだお」

川 - )「そうだ。死体ができる。恨みができる。悪霊が生まれる。また誰かが死ぬ……」


从 ゚∀从「馬鹿言ってんじゃねーよ!」

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 01:25:32.93 ID:xBAYnMYF0

悲痛に満ちたクーの言葉をハインが遮った。
放心していた人間とは思えぬほど、その言葉は強い。

从 ゚∀从「幽霊なんているもんか! あれはただの事件だ!
     だから早くこんな場所から逃げようぜ!」

クーに手を差し伸べる。
陰鬱として状況の中、ハインの明るさは必要なものだ。

川 ゚ -゚)「……そうだな。いつまでもこうしていたってしかたがない」



二人が手を取り合う。
その寸前、笑い声が響き渡る。

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 01:28:25.51 ID:xBAYnMYF0

ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ


(;'A`)「な、なんだぁ?!」

(;^ω^)「ジョルジュかお?」

二人が部屋から飛び出す。
  _
( ゚∀゚) ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ

ブーンの言葉の通り、笑い声をあげているのはジョルジュだった。
廊下の真ん中に立ち、喉から声を出している。

(´<_` );)「あいつ、懐中電灯はどうしたんだ?」

弟者の言葉に、ブーン達はジョルジュが懐中電灯を持っていないことに気がついた。
しかし、その代わりとばかりに、彼の手には角材が握られている。

从;゚∀从「どうしちまったんだ。あいつ……」

男達の間からひょっこりハインが顔を出す。
今日の面子の中では、ジョルジュが一番彼女と仲が良い。心配は当然のものだ。

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 01:30:45.80 ID:xBAYnMYF0
  _
( ゚∀゚) ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ

まるで壊れた人形のように、ジョルジュはただただ笑う。
時折、喉が引きつったような音を出しながらも、それでも彼は笑っていた。
いったい、何がそれほどまでにおかしいというのだろうか。

(;'A`)「ジョル、ジュ……?」

恐る恐る、ドクオがジョルジュに近づく。
仲良くなれる人種ではないが、壊れてしまっては胸が痛む。

震えているドクオの手が、ジョルジュの肩に触れる。

  _
( ゚∀゚) ヒャ……


笑い声が止まった。
静まり返る廊下に、全員の背筋が冷える。
何か、よくないことが起こる。そんな気がした。
  _
( ゚∀゚)「わかってるぜぇ」

笑いながらジョルジュが言った。
  _
( ゚∀゚)「お前も、ナニカだろぉ?」

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 01:33:33.15 ID:xBAYnMYF0

ニタリ。と、粘着質な笑みが浮かべられる。

('A`)

ぞっとした。
壊れてしまっているのではないか。そんな予測の話ではない。
ジョルジュは、壊れている。
  _
( ゚∀゚)「何なんだよぉ! このオレ様に喧嘩売るのか? ああ?」

(;'A`)「うわ!」

角材が下から上へと振り上げられる。
自分の身に降りかかる危険を察知したドクオが素早く後ろに下がる。
運動ができる方ではないが、それでもギリギリ角材から免れる。
  _
( ゚∀゚)「さっきも、ぶっ殺してやった」

口角を上げたまま、ジョルジュは呟く。
  _
( ゚∀゚)「オレ様は負けねぇ。全部殺してやる。殺してやる。殺す」

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 01:36:34.31 ID:xBAYnMYF0

川;゚ -゚)「ドクオ! 逃げるぞ!」

(;'A`)「逃げるったってどこに……」

(´<_`;);)「三階でも他の部屋でもいい!」

从;゚∀从「ジョルジュ!」

(;^ω^)「逃げるんだお!」

ブーンがハインの手を取る。


  _
( ゚∀゚) ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ


後ろから迫り来るジョルジュの足は速い。
ブーンと同等程度の速さだった。

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 01:39:29.58 ID:xBAYnMYF0

(;'A`)「足はええええええ!」

(;^ω^)「この部屋に入るお!」

ブーンに言われ、全員が部屋の中に入る。
最後に弟者と兄者が入ったのを確認して、ブーンはすぐに扉を閉める。

川;゚ -゚)「どけ!」

鍵がかかっていない扉からの侵入は容易い。
クーは近くにあった机をハインと共に扉の前へ押し出す。
それを合図に、ドクオが椅子を、弟者が兄者を引っ張り出して棚を押し出す。


 ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ


扉の向こう側から笑い声が聞こえる。
しかし、逃げ出す術はない。

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 01:42:40.18 ID:xBAYnMYF0

(´<_`;);)「さて、とりあえずはどうにかなったものの……」

(;'A`)「これからどうする?」

( ^ω^)「外にはジョルジュ」

川 ゚ -゚)「窓はあるが飛び降りることはできない」

从 ゚∀从「ジョルジュ……。どうしちまったんだよ……」

面々が今後について話し合う中、ハインだけが扉を見つめていた。
聞こえてくる笑い声は狂気そのものであり、彼女が知っているジョルジュはもうそこにいない。

( ^ω^)「いっそのこと、朝が来るまで待つっていう手も」

('A`)「朝になったって、何も解決しなくね?」

川 ゚ -゚)「帰りが遅いとはいえ、朝になった程度では捜索願いは出されないだろうしな」

(´<_` ) )「せめてジョルジュが扉の前から消えてくれれば……」

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 02:00:17.66 ID:xBAYnMYF0

面々が扉に目を向ける。


 ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ
 ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ
 ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ
 ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ
 ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ
 ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ
 ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ



響く笑い声。
止まぬBGM。

(;'A`)「あいつ、いつまで笑ってんだ」

从 ゚∀从「ジョルジュ……」

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 02:03:30.72 ID:xBAYnMYF0

 ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ――


(´<_` ) )「ん?」

( ^ω^)「笑い声が……」

川 ゚ -゚)「止まった」


笑い声が消えた。
静まり返った部屋の中には、風の音すら聞こえない。

从 ゚∀从「ジョルジュ? どうしたんだ? ジョルジュ!」

声を上げ、扉の前に積まれていた家具達を取り払う。
棚を肩で押しのけ、椅子を払い、机を蹴り飛ばす。

(;'A`)「おい、危ないぞ!」

从#゚∀从「うるせー! あたしはアイツのトモダチなんだよ!」

ハインが扉を開けた。

119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 02:06:34.19 ID:xBAYnMYF0


  _
(  ∀ )




从 ゚∀从「ジョルジュ……?」

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 02:09:29.53 ID:xBAYnMYF0

ジョルジュは倒れていた。
笑い声一つ上げず、息一つせず。

从 ゚∀从「おい。起きろって……」

(;^ω^)「ハイン……」

(;'A`)「嘘だろ」

川;゚ -゚)「嘘じゃないさ」

(´<_`;);)「二人目……」

ジョルジュは起き上がらない。
ハインが何度揺さぶろうとも、頬をはたこうとも。

狂ったような死に様だ。
誰が己の人生の中で、このような死にかたをすると予想するのだろうか。
背筋が凍るのを感じた。
この場所にいる限り、自分はああならないと誰が言える。

122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 02:12:33.94 ID:xBAYnMYF0

川  - )「ここを脱出する術を早く探そう」

クーがハインの肩を叩く。

从 ゚∀从「待ってくれよ……。そんなはずないだろ?
      ジョルジュが、死ぬなんてよぉ……」

何を言っても今のハインは首を横に振るばかりだ。
無理矢理にでも連れていけば解決するのかもしれないが、彼女も喧嘩がそこそこに強い。
果たして力技が通用するのだろうか。

( ^ω^)「ドクオ、ボク達がこの階の部屋を探索してくるから、ハインを頼むお」

('A`)「え? でも、大丈夫か?」

(´<_` ) )「ジョルジュの件から見て、単独行動は危険だろう。
        だからこそ、お前とハイン。オレとブーンとクーの二手に別れよう」

(´<_` );)

( ^ω^)「さりげに兄者の存在を消し去りやがったお」

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 02:15:52.31 ID:xBAYnMYF0

何かあれば大きな声を出すことをしっかりと取り決め、面々は二手に別れる。

从 ゚∀从「ジョルジュぅ……」

('A`)「はあ」

それにしても、何故自分なのかとドクオは考える。
どう考えても、傍にいるべきなのはブーンなのではないだろうか。
ジョルジュの友人はブーンだったわけで、ハインの話も聞いたことくらいはあっただろうに。

彼らの餌として存在しているような人種のドクオにとって、今の状況は辛いものがある。
意気消沈しているハインが暴れるとは思えないが、励ます方法も交わす言葉も思いつかない。
ただ黙って見ているだけというのはつまらない上に、精神的にもよろしくない。

ドクオが何度目かのため息をつく。

('A`)「ん?」

カツン。カツン。
音が聞こえてきた。

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 02:18:49.72 ID:xBAYnMYF0

(;'A`)「お、おい。ハイン!」

从 ゚∀从「起きろって……」

(;'A`)「駄目だコイツ!」

カツン。カツン。
音が近づいてくる。

ドクオは大声を出すべく、腹に力をこめる。



|‘)* ヒョコッ



('A`)「お?」

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 02:21:15.57 ID:xBAYnMYF0

現れたのは小さな女の子だった。
おそらくは小学生高学年といったところだろう。

*(‘‘)*「お兄ちゃん……?」

('A`)「おいおい。こんな時間、こんな場所で何してるんだ」

*(‘‘)*「……肝だめし」

('A`)「一人か?」

*(‘‘)*「うん」

('A`)「友達は?」

*(‘‘)*「ヘリカルね、友達がいないの。
    みんな、ヘリカルのこと無視するの。
    でもね、ヘリカルがここの物を持って帰れたら、友達になってくれるって皆が言うの」

ヘリカルと名乗る女の子の言葉はドクオにも突き刺さる。
無茶苦茶な要求をされ、それをクリアできれば友達になってやると言われるのはいじめられっ子の特徴みたいなものだ。

('A`)「そうか……」

127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 02:24:17.06 ID:xBAYnMYF0

ドクオはヘリカルの頭を撫でる。

*(‘‘)*「お兄ちゃんは?」

('A`)「ん? お兄ちゃんも肝だめしだよ。お友達と一緒だけどね」

*(‘‘)*「お友達いいなー」

('A`)「一緒に待っていようか。皆でいれば怖くないしね」

ツンやジョルジュの件もある。
女の子が一人でいていい場所ではない。

*(‘‘)*「うん……。お兄ちゃん、ありがとう」

('A`)「どういたしまして」

*(‘‘)*「お兄ちゃんは、怖くないの?」

('A`)「お兄ちゃんは幽霊とか、心霊スポットが好きなんだ」

*(‘‘)*「えー。どーしてぇ?」

128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 02:27:11.32 ID:xBAYnMYF0

二人はハインの隣で言葉を交わしあった。
ドクオとしても、重苦しい空気が続く中での安らぎを得ることができた。

*(‘‘)*「お兄ちゃんって物知りだね!」

('A`)「そうか?」

*(‘‘)*「うん! ヘリカル、ゆーれいさんのこととか、よく知らなかった!」

('A`)「そうか……。へへへ」

*(‘‘)*「えへへへへ!」

オカルト趣味について、誰かに褒められたことはなかった。
理解を示してくれるような友人は情報交換をする程度の知識を持っていることが多かったし、
ほとんどの人間はオカルト趣味を否定する。

('A`)「早くここから出られるといいな。
   ブーン達がロープか何か見つけてくれるといいんだけど」

*(‘‘)*「ロープ?」

('A`)「うん。それがあれば、窓から出られるからね」

*(‘‘)*「ヘリカル、さっきロープみたよ!」

135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 02:49:22.56 ID:xBAYnMYF0

('A`)「え? 本当に?」

*(‘‘)*「ヘリカル、嘘言わないよ」

頬を可愛らしく膨らませる。
そして、少しだけ顔を俯け、上目づかいでドクオを見上げる。

*(‘‘)*「でもね、一人だと怖いから、お兄ちゃんも一緒にきて?」

('A`)「あ、お兄ちゃんのお友達も一緒に連れていこうよ」

*(‘‘)*「うーん。でも、ヘリカル、お兄ちゃんとしかお話したことないし……」

言葉を交わしているときは何も思わなかったが、いじめられっ子なようなので、少々内気なところがあるのだろう。
恥ずかしそうに指をあわせるヘリカルを見ていると、庇護欲にかられる。

('A`)「わかった。じゃあ、お兄ちゃんと二人で行こう」

ドクオはちらりとハインを見る。
少し前から口を閉ざし、じっと何かを考えている。
ようやく気持ちの整理がつき始めたのだろう。

('A`)「ハイン、ちょっと行ってくる」

从 ゚∀从「…………」

138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 02:52:44.36 ID:xBAYnMYF0

返ってこない答えを肯定と勝手に受け取り、ドクオはハインに背を向ける。
彼女を一人にすることに一抹の不安はあった。
だが、ここで脱出の術を見つけ出すことの方が大切に思えた。

ツンが消えたときはショックだった。
しかし、実際に死体を見たわけではないので、悲しみは少なかった。
ジョルジュは目の前に死体があったものの、元々が苦手意識を持っている人間だったので、悲しくはない。

そのためか、ドクオは他者の死に対して実感が持てずにいた。
もとより、DQNなど死んでも構わないと思っている節もある。

('A`)「……」

*(‘‘)*「お兄ちゃん?」

('A`)「あ、ああ。行こうか」

ドクオはヘリカルに笑いかけ、彼女の手を取った。

139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 03:00:09.09 ID:xBAYnMYF0

*(‘‘)*「お兄ちゃん、こっちこっち」

ヘリカルの小さな手がドクオの手を握る。

('A`)「おっと。もうちょっとゆっくり頼むよ」

懐中電灯を足元に向けながらドクオは歩く。
見通しが悪いので、いつもの速度では歩けない。

('A`)「……あれ?」

はたとドクオは歩みを止める。

*(‘‘)*「お兄ちゃん?」

('A`)「いや、だって……」

ドクオはヘリカルの手を離そうとする。
しかし、彼女はドクオの手をしっかりと握っている。

('A`)「おかしいじゃないか……」

140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 03:03:12.84 ID:xBAYnMYF0

懐中電灯を持っているドクオでさえ歩きにくいこの廃墟の中を、ヘリカルは平然と歩いている。
ジョルジュの死体を見ても動揺一つしない。

そんな小学生がいるのか。


('A`)「キミは……」

*(‘‘)*「お兄ちゃん」

強い力がドクオを引っ張る。
助けて。と、いう一言が喉から出ない。
声が張り付いてしまったようだ。

*(‘‘)*「大丈夫。一人じゃないよ」

可愛らしい笑みに、背筋が粟立つ。

141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 03:06:21.77 ID:xBAYnMYF0

これは罰だ。

他人の死を実感できなかった罰だ。
誰かの死を願った罰だ。
ここに人を集めてしまった罰だ。


( A )


ヘリカルに手を引かれ、ドクオは壁の中に入っていく。
壁の中には扉のない部屋。
小さな部屋は、人が二人入れる程度の大きさ。

*(‘‘)*「ね? 一人じゃないでしょ」

指差す先にはミイラと化した死体。
ここは死を待つだけの独房だ。
壁には赤い字が書いてある。それが死にたいなのか、助けてなのか。
ドクオにはもうどうでもよかった。

どうせ、今さら叫んだところで誰にも届かない。
身体が朽ちても魂はここに残されたまま。
もう逃げることはできない。

142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 03:09:08.17 ID:xBAYnMYF0

( ^ω^)「何もなかったおー。って、あれ?」

川 ゚ -゚)「ハイン、ドクオはどうした」

从 ゚∀从「え?」

面々が帰ってきたとき、残されていたのはハインとジョルジュだけだった。

(´<_` );) ボソ

(´<_` );)「神隠し。だってよ」

从 ゚∀从「あたしは……気づかなかった」

川 ゚ -゚)「……廊下から一通り声をかけてみよう。
     それで見つからなかったら……」

クーが目を伏せる。

( ^ω^)「大丈夫だお。ここから出られれば、きっと見つかるお」

川 ゚ -゚)「そうだな」

無理に笑う顔が痛々しい。

143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 03:13:13.78 ID:xBAYnMYF0

(´<_` ) )「ドクオー」

( ^ω^)「ドクオ。どこだおー」

川 ゚ -゚)「お前の好きな本でもフィギアでも買ってやるぞー」

从 ゚∀从「おーい」

どれだけ声を張り上げても、ドクオの声は返ってこなかった。
互いに一瞬だけ目を合わせ、すぐにそらす。

( ^ω^)「……三階へ行くお」

ブーンが言う。
吐き出しにくそうに、それでも誰かが言わなければならない言葉を告げる。
わずかな沈黙があった者の、面々は小さく頷いた。
先へ進まなければならない。そうしなければ、次は自分の番だ。

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 03:16:49.45 ID:xBAYnMYF0

面々は無言で階段を上がった。
ここへきたときは八人いたというのに、今では五人になってしまった。
靴の音が階段に反響する。そのため、足音は五つにも六つにも、八つにも聞こえる。
まるで、まだツンもジョルジュもドクオも傍にいるようだ。

( ^ω^)「おっ」

三階は大きな部屋が一つ。小さな部屋が一つ。
おそらく、大きな部屋は社長室か何かだったのだろう。

川 ゚ -゚)「とりあえず、大きな部屋に入ってみるか」

从 ゚∀从「そうだな。広い方が何かある可能性が高いしな」

先陣を切ってブーンが扉に手をかける。
ろくな手入れを受けていないそれは、ギギギと、嫌な音をたてながら、彼らに部屋の中を見せる。

光を当てると、埃にまみれた絨毯が見える。
放置されるまでは高級な心地を部屋の主に提供していたのだろう。
奥の方には机が見える。その上にも白い埃がたまっている。

(´<_` ) )「すごい埃だな」

( ^ω^)「棚がいっぱいあるお。机にも引き出しがあるだろうし、何かあるかもしれないお」

147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 03:19:33.49 ID:xBAYnMYF0

見たところ、今までの部屋に比べると荒れた様子がない。
額縁には色があせすぎて何が映っていたのかわからない写真が入っている。

(´<_` ) )「兄者、ちょっと離れてくれ」

(´<_` );)))

(´<_` );)「喋らなくていいから。端っこでパソコンでもしてろよ。
       ネットには繋がらなくても、そのなかにエロゲでもソリティアでも入ってるだろ」

::(;´_ゝ`):: (´<_` )

弟者が兄者を引っぺがし、部屋の隅に押しやる。

(´<_` )「動きにくいし」

::(;´_ゝ`):: ボソボソ

(´<_` )「あー。聞こえないー」

手を伸ばす兄者を無視して、弟者はブーン達の元へ戻っていく。
人のいる方へ行くことのできない兄者は、顔を俯けてパソコンを開く。

151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 03:22:20.62 ID:xBAYnMYF0

( ^ω^)「いいのかお?」

(´<_` )「同じ部屋にいるわけだし大丈夫だろ」

从 ゚∀从「いや、そういう意味じゃねーだろ」

(´<_` )「いつまでも後ろにいられたら動きにくくてしかたないだろ」

川 ゚ -゚)「まあ、そうなんだけど……」

ちらりと兄者に目を向ける。
パソコンの液晶に浮かぶ光に照らされた彼の顔色は悪い。

(´<_` )「いいんだよ。ちょっとは慣れないと駄目だし」

(;^ω^)「うーん」

弟者はそれだけ言うと、近くの棚を調べ始める。
この状況に置いて弟者は比較的落ち着いている。
彼にとっての友人が死んでいないことも理由の一つなのだろうが、彼自身の性格が理由の大部分を占めているだろう。
冷静さはときに恐ろしいほどの冷たさを帯びる。

その冷たさを向けられた肉親はどのような気持ちなのだろうか。

152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 03:25:09.44 ID:xBAYnMYF0

少しでも早く探索を終わらせることができれば、部屋の隅に追いやられている者についての悩みは消える。
面々は手早く当たりを調べた。

兄者の直接の友人はいなかったが、ここまで生き残っている者達の中には、一種の連帯感ができあがっていた。
隅で怯えている者の精神的負担を軽減してやりたいと思ってしまう。

( ^ω^)「何もないおね……」

見つかるのはインクのでなくなったペンや。数枚の書類程度のものだ。
カーテンもなければロープも見つからない。
残すところは一部屋になってしまったわけだ。それだけで希望の光がか細くなってしまったように感じる。

川 ゚ -゚)「弟者、そろそろ兄者を迎えに行ってやったらどうだ」

(´<_` )「お前らやけに兄者の肩を持つな」

肩をすくめ、息を吐く。
隅に目を向ければ、相変わらず兄者がパソコンを弄っている。
弟者が目の届く範囲にいれば、ああして一人でも十分落ち着いていられるのだ。
わざわざ背中にくっつかれている弟者としては、面倒極まりない。

153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 03:28:20.77 ID:xBAYnMYF0

(´<_` )「兄者」

声をかけ、うずくまっている兄に近づく。

::(|i´_ゝ`)::

(´<_` )「兄者?」

顔を上げた兄者の顔色は先ほどよりもずっと悪くなっているように見えた。
心なしか体も震えている。

::(|i´_ゝ`)::「お、と……」

パソコンを閉じ、震えた声を出す。

川 ゚ -゚)「……兄者、何か見たか」

( ^ω^)「え?」

从 ゚∀从「何かって……」

面々からの視線を受け、兄者は目をそらす。
彼の場合は、それが肯定となるかどうかの判別が微妙だ。

川;゚ -゚)「鏡のように人を映すもの、パソコンの画面のように何か別のものを映し出すもの。
     それは通り道になりやすい。と、聞いたことがあることを思い出した」

157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 04:00:36.95 ID:xBAYnMYF0

(´<_`;)「おい、そうなのか? 何か見たのか?」

::(|i´_ゝ`)::

早足で兄者に近づき、彼が抱きかかえているパソコンを取り上げようとする。
しかし、生命線とも言えるパソコンを兄者が易々と離すはずもない。

(´<_`# )「おい!」

::(|i´_ゝ`)::))

(´<_`# )「とりあえずコレを捨てろ!
      昔はオレがいれば大丈夫だっただろうが!」

::(|i´_ゝ`)::

川;゚ -゚)「落ち着け」

(;^ω^)「それ以上追い詰めてどうするんだお」

从;゚∀从「今までにない怯え方してるじゃねーか」

158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 04:10:52.58 ID:xBAYnMYF0

(´<_` )「……兄者、パソコンは新しいものを買えばいい。
      今だけだ。今だけ、パソコンから離れろ。
      もしくは、それが原因で震えてるわけじゃないってことを証明しろ」

兄者が抱えているパソコンを掴みながら言う。

::(|i´_ゝ`)::「あ、あの……むり、だ」

(´<_`# )「あ?」

::(|i´_ゝ`)::「お、とじゃ……」

うずくまっていた兄者が立ち上がる。
すらりと高い長身が二人並ぶ。

::(|i´_ゝ`)::「おま、えは……ちゃん、と、いきて、くれ」

(´<_` )「は?」

一瞬、弟者が呆気に取られる。
その好きに兄者は弟者の手を払って走りだした。

159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 04:19:40.09 ID:xBAYnMYF0

(´<_`;)「お、おい! 待て、馬鹿!」

从;゚∀从「あっ! 待てよ!」

制止の言葉も聞かず、弟者は兄者を追いかける。
兄者は階段を下り、二階へ進む。
弟者が追いかけてきていることに気づくと、二階にある部屋の中に転がりこんだ。

(´<_`;)「兄者!」

::(|i´_ゝ`)::「おと、じゃ」

扉を塞ごうとしたようだが、あいにくと兄者が入った部屋はほとんど空だった。
鍵はもはや使い物になっておらず、弟者の侵入を防ぐことはできなかった。

(´<_` )「何で逃げる」

::(|i´_ゝ`)::「お、まえ、まで……まきこみ、たく、ない」

(´<_` )「やっぱり、何か見たのか」

::(|i´_ゝ`)::

160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 04:29:32.96 ID:xBAYnMYF0

この沈黙は肯定だ。
弟者は確信した。

(´<_` )「なら、やっぱりソレを捨てろ。
      そうすれば助かるかもしれない」

::(|i´_ゝ`)::「たすから、ない。かも、しれ、ない」

(´<_`# )「そんなことを言っていてどうする!」

無理矢理にでも奪い取ろうとするが、貧弱な体の割りに兄者は激しい抵抗をする。
兄者は地面に這い蹲ってパソコンを守る。
そこまでしてソレを守りたいのかと弟者は苛立つ。

パソコンなど、所詮は物でしかない。
替えのきくものではないのか。命という替えることのできない物とどうして天秤にかけることができるのか。

::(|i´_ゝ`)::「すて、ても、きっとのこる。オレの……あた、まに」

(´<_` )「あ?」

::(|i´_ゝ`)::「きっと、ジョルジュ、みたい、に……こわ、れる。
      そしたら、おま、え……に、めいわく、かかる……し」

162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 04:37:21.72 ID:xBAYnMYF0

弟者は拳に力を込める。
彼の怒りは空気を通して伝わってくるのか、兄者は怯えた目を向けた。

(´<_`# )「んなもん今さらだろうが!」

::(|i´_ゝ`)::「……だか、ら」

怒鳴り声が空気を響かせた後、兄者が言葉を紡ぐ。

::( ´_ゝ`)::「オレはもう、いいんだ…」

(´<_`# )「何が!」

::( ´_ゝ`)::「ここに、残る、よ」

兄者がパソコンを床に叩き付ける。
飛び散ったいくつかの破片を踏みにじるように兄者が立ち上がった。

(´<_` )「あ…。
      そ、それでいいんだよ。ほら、早く戻ろうぜ」

( ´_ゝ`)「馬鹿だなぁ。残るって言ったじゃないか」


兄者が笑う。
清々しい笑みを顔に貼り付けている。

163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 04:43:45.07 ID:xBAYnMYF0

(´<_` )「兄者」

( ´_ゝ`)「やっぱり駄目なんだ。
      もう限界っぽかったから、お前が見なくていいようにパソコンだけ壊したけどさ」

(´<_` )「何言ってんだよ。ほら」

弟者が手を引くが、兄者はピクリとも動かない。
笑みすら変えず、そこに立っている。

( ´_ゝ`)「聞こえるんだ。トミノの詩が。
      見えるんだ。白くてくねくねしているナニカが。
      感じるんだ。人の悪意が」

兄者は自分の手のひらを見つめ、唐突に自分の首へ運ぶ。

(´<_`;)「おい!」

両手を掴んで阻止しようとするが、弟者の力では阻止することができない。
考えられないほどの力で、兄者は自分が成すべきことを遂行しようとしていた。

164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 04:48:01.53 ID:xBAYnMYF0

( ´_ゝ`)「頼むよ。弟者。
      お前は生き延びてくれ。
      できれば、オレの死に様なんて見ないでくれ」

(´<_`;)「やめろ……。やめろよ、兄者……!」

羽交い絞めにしようとしても失敗する。
足払いをかけてみてはと実行しても失敗。

( ´_ゝ`)「オレは生きていたって、お前に依存してるばっかりだ。
      まともな大人になれない。まともな人になれない。
      ごめんな。迷惑ばっかりで。こんな兄貴でごめんな」

(´<_`;)「そんなことない。兄者はオレの兄だ。
      兄弟は、家族は、助け合うものじゃないか。迷惑なんて……」

( ´_ゝ`)「いいんだよ。弟者」

兄者の指が首に絡まる。
キーボードを打つくらいにしか使われない細い指だ。

( ´_ゝ`)「そんな優しい嘘はいらない」

165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 04:52:19.17 ID:xBAYnMYF0

握力など、妹者よりもないはずの手が、兄者自身の首を絞める。
指が食い込む。
ギチギチと音がする。

(´<_`;)「やめろ! やめろ! 頼むから……!
      やめてくれ! 死なないで。いなくならないでくれよ!」

(  _ゝ ) ヒュッ

(´<_`;)「ああああああ。離してくれ!
      その手を、離してくれ!」

弟者の手が兄者の手に絡まる。
しかし、兄者の手は反発するように力を強くする。

(´<_`;)「何でだよ。普通、自分で自分を絞殺なんてできないだろ。
      死ぬ前に意識を失うだろうが!」

どのような言葉をぶつけたところで、返事はない。
力は緩まない。
兄者の目蓋は固く閉じられ、口の端からは涎が垂れている。
常人ならばそろそろ意識を失うはずだ。

(´<_`;)「何でだよ!」

167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 04:55:38.90 ID:xBAYnMYF0

最後の息が漏れるのと同時に、兄者の手が首から離れる。

(´<_` )「……あに、じゃ?」

床に倒れた兄者の隣に膝をつく。
軽く体を揺すってみるが、反応はない。
胸に手を置いてみても、鼓動は感じない。

(´<_` )「嘘だ……」

弟者は静かに首を横に振る。
目の前にある現実から目を背けるように。

(´<_` )「そりゃ、たまには、たまには、面倒だなって思ったさ。
      でも、オレ達は双子だぜ? 生まれた瞬間から一緒だったんだ。
      これから先の人生だって、そうやって生きていく覚悟? みたいなものはできてたんだ。
      なのに、何で死んでんだよ。おい。起きろって……」

言葉がころころと零れていく。
転がった言葉はどこにも留まれず、床に染み込む。

168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 04:58:13.72 ID:xBAYnMYF0

視界の端に、壊れたパソコンが目に入った。
弟者はそれを拾いあげ、兄者の胸の上に置く。

(´<_` )「ほら、コレがあればまた歩けるだろ?」

閉じられたままだったパソコンを開ける。
液晶にはヒビがはいり、キーボードのいくつかは外れてしまっていた。
形としてはギリギリパソコンの形をなしているだけ。
もはや使うことはできない。

弟者は愛おしそうにパソコンに指を滑らせる。
それがあれば、全てが元通りになるとでも思っているかのようだ。

(´<_` )「あ、れ……」

そのパソコンは、使うことができないはずだった。
ぼんやりとしていた弟者の目に、パソコンの光が差し込む。
デスクトップではなく、灰色がそこには広がっていた。

壊れきっていなかったにしても奇妙だ。
弟者は灰色の背景をぼんやりと眺める。

175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 05:50:52.35 ID:bZVp7PBr0



あね
……




姉は
  …

姉はち
   …

姉は血
    ̄

姉は血を
     …



176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 05:53:46.31 ID:bZVp7PBr0
灰色の画面に黒い文字が打ち込まれていく。
当然、弟者はキーボードには触れていない。
それなのに、パソコンはそれが当然であるかのように文字を表示し続ける。

弟者にはわかった。
兄者が見たものはコレだ。

実際、その文字を目に写し始めてから、弟者は自分の体が自分のものでなくなる感覚を味わい始めていた。

だが、まだ抵抗できる。と、直感的に感じてもいた。
今すぐパソコンを閉じてしまい、窓からでも投げ捨ててしまえば、最悪の事態は免れる。

わかっていた。

(´<_` )「オレと兄者は双子だからさ」

パソコンを見やすいように向ける。

(´<_` )「同じ日に、同じ死にかたをするのも悪くはないよな」

弟者は笑った。
兄者とよく似た笑い方だ。


177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 05:56:10.55 ID:bZVp7PBr0
姉は血を吐く、妹は火吐く、可愛いトミノは宝玉を吐く。
  最近、母さんの様子がおかしいんだけど――
       遠くからだからよく分からないが、人ぐらいの大きさの白い物体が、くねくねと動いている。
 一人でイッポウ、二人でニホウ、三人でサンポウ、四人でシッポウ、五人でゴホウ、六人でロッポウ、七人でチッポウ
    憎しみを込めて呪うスレッド
なぜ供養という表現を使ったか、どうして水を飲ませたか、よく考えればとんでもない事させたという事が判るはず・・・
      トイレ行きたいよ、なんでもするよ、死にたくないよ、おねがいします。
  本名を書くと相手が死ぬスレ
      そしてビデオの中の自分はカメラに近づき録画を止める。
 その時もうオレは目の前真っ暗になった。もしかして生きてたんじゃねーの?って…。

下準備としてぬいぐるみに名前をつけ、詰め物を全て出して代わりに米と自分の爪(切って入れる)を入れて縫い合わせる。
    メールも俺から送るだけ。返信は早いけど全部英語だから、読んでくれてるのか不明
  お 前 ら 封 筒 の 場 所 に 来 な く て よ か っ た な



178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 05:59:25.53 ID:bZVp7PBr0
文字が増える。
悪意が増える。

気持ちが悪くなる。
頭が痛くなる。
胃液どころか胃ごと吐き出したくなる。

( <_  )「兄者は、こんなのに耐えていたのか?」

乾いた笑い声を上げる。

自分の頭の中がぐちゃぐちゃになっていくのがわかる。
トミノの詩が聞こえる。
白いナニカが見える。
人の悪意を感じる。

このまま狂ってしまう。
狂いきる前にと、弟者は自分の首に手をかける。

( <_  )「――兄者」

指が首に食い込み、呼吸が止まる。


180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 06:02:22.41 ID:bZVp7PBr0

(;^ω^)「兄者……。弟者……」

川;゚ -゚)「……」

从;゚∀从「……」

双子が消えた。
誰も止めることができなかった。
後を追うことすら今となっては恐ろしい。

もうこれ以上誰かの死など目にしたくはないのだ。

川;゚ -゚)「もう一つの部屋を探すか」

(;^ω^)「そうだおね……」

上手く息が吸えないのを感じながらも、二人はどうにか平常心を保とうとしていた。
まだ絶望しきるのには早い。
綺麗事ではあるが、明けない夜はない。


181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 06:05:04.36 ID:bZVp7PBr0
从 ∀从「もう、嫌だ……」

( ^ω^)「ハイン?」

ブーンとクーの後ろ、ハインが顔を俯けていた。
案外、女性らしい肩はかすかに震えている。


从 ;∀从「もう嫌だああああ!」


川;゚ -゚)「お、おい! 落ち着け!

顔を上げたハインは号泣していた。
涙をこれでもかというほど零し、嗚咽をもらす姿はただの少女だ。


182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 06:08:55.26 ID:bZVp7PBr0
从 ;∀从「ジョルジュは死んじまうしよぉ……。
      他の奴らだって、ことごとく死んじまった……。
      どうせ生きて帰れないんだぁぁぁぁ!」

(;^ω^)「落ち着くお! まだボクもクーも生きてるお!」

从 ;∀从「ツンは? ドクオは? 兄者は? 弟者は?
      もう半分以上いないじゃないか!
      嫌だよ! あたし、怖い。怖いよ……。
      きっと、呪い殺されるんだ。幽霊に殺されるんだ……」

川;゚ -゚)「お前、幽霊なんて信じていないんじゃなかったのか?」

从 ;∀从「だって怖いだろうが!
      いるなんて、あたしが認めなけりゃ、あたしの中ではいないってことになるんだ!
      それなのに、こんな……こんなのが、目の前で起こったら……」

ハインは再び涙と共に叫ぶ。
彼女の心はもう耐え切れなかった。


183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 06:13:08.82 ID:bZVp7PBr0
从 ;∀从「し、死にかた、くらい……」

(;^ω^)「大丈夫だお。絶対に生きて帰るお」

从 ;∀从「死にかたくらい」

ハインはふらりと窓へ近づく。


从 ;Д从「死にかたくらい、自分で選んでやる」



川;゚ -゚)「まっ――」


クーが足を踏み出す。
ブーンが手を伸ばす。

どれも間に合わない。
どれも届かない。


184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 06:18:39.56 ID:xBAYnMYF0




潰れる音が三階にまで聞こえるような気がした。




川 - )

(  ω )

二人は下を覗けなかった。
ツンのときと同じだ。
覗く勇気が出なかった。

188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 07:01:07.45 ID:bZVp7PBr0

(  ω )「……もう一つの部屋、見るお」

川  - )「そうだな」

二人の精神も限界だった。
前を見ることすらできず、斜め下に視線を落とす。
互いの顔を見れば、消えていった面々を思い出しそうだ。

小さな部屋につけられた扉のノブを回す。
錆びた音はしたが、簡単に扉は開かれる。

そこで二人はようやく顔を上げた。
下ばかり見ていては部屋を見ることができない。

虚ろな目で部屋に視線を向ける。
小さな部屋は倉庫のような、資料室のようなところだ。
社長室の横に相応しい部屋なのかはわからない。

二人は黙ってその部屋を眺めた。

(  ω )「ロープ、は、ある、おね」

川  - )


191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 07:24:06.01 ID:bZVp7PBr0
部屋の中央には椅子が倒れていた。
椅子の真上には、穴が作られたロープがある。
目的の物ともいえるが、長さが足りない。
あれでは首を吊ることしかできやしない。

椅子の辺りに散らばっている白っぽい色をした何かはそういった類のものなのだろう。



(  ω )「探すお」

川  - )「そうだな。まだ残っているかもしれない」

二人はがさごそと辺りを組まなく探索する。
しかし、そのかいもなく、出てきたのは部屋の中心部にぶら下がっているロープよりも短いものでしかなかった。

(  ω )「なかったお」

川  - )「……そう、だな」

(  ω )「こうなったら、一階の穴の横を駆け抜けるしかないと思うお」


194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 07:28:27.86 ID:bZVp7PBr0

川 ゚ -゚)「……私は、もう一足掻きしてみようかと思う」

( ^ω^)「……お?」

クーの目に生気が宿ったかのように見えた。
だが、それが諦めの境地にも似た悟りの光だということにブーンは気づいている。
彼女の心はズタボロだ。今さら、一階から脱出できたとしても、傷は癒えないどころか、深さを増すだけだ。

川 ゚ -゚)「おそらく、この場所が全てを集めているのだろう。
     だから、きっとここをどうにかできれば……」

持っていたポシェットからキラリと光る数珠を取り出す。
何か素晴らしい力を秘めている可能性もあるが、ただのホラー好きでしかないブーンでは鑑定まではできなかった。

( ^ω^)「……ボクも、一緒にいていいかお?」

川 ゚ -゚)「……ああ。いてくれ」

小さく頷く。


196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 07:32:00.25 ID:bZVp7PBr0

クーは巫女だ。
しかし、霊を払う力を持っているというのは聞いたことがない。
霊感がないと公言しているところから、彼女にはそういった力がないのだろう。
家系は家系でしかなく、彼女個人の能力には何の影響も及ぼさない。

今時の神社ならばどこでもそうなのかもしれない。
小さな神社ならば、お払いを頼まれることもそうそうない。
不必要な能力は淘汰される。

::川 ゚ -゚)::

震えるのも無理はない。
彼女だって生きていたい。
死にたくない。

生き延びるための能力を持っていてもおかしくない星のもとだ。
それなのに、彼女にはその能力がない。
悔しくて、どこか理不尽を感じていて、それでも抵抗をせずにはいられない。


197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 07:35:35.66 ID:bZVp7PBr0
哀れな彼女をブーンは黙って見ていた。
抱き締めることも、手を握ることさえもせず、一歩退いたところで眺めていた。

ブーンには何も出来ない。
お経だってまともに覚えていない。
あるのは、陸上部で鍛えた脚力だけだ。

川 ゚ -゚)「やるぞ……。やるぞ……」

クーは自分に言い聞かせるように何度も言葉を吐き出す。
そうでもしなければ、くじけてしまいそうになる。

川 ゚ -゚)「…………」

数珠を構える。
しかし、その直後。

(;^ω^)「く、クー?!」

クーは、手にしていた数珠を引きちぎった。


198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 07:38:27.85 ID:bZVp7PBr0

一本の糸で繋がっていた数珠玉は、ばらばらになり床に転がる。
暗闇の中でも、数珠玉は光って見えた。

川 ゚ -゚)「――――」

クーはその場に膝をつき、数珠玉を一つ一つ丁寧に拾い上げ、また床に置きながら何かを紡ぐ。
聞きなれない言葉は、ブーンの耳ではよく聞き取れない。
意味もわからなければ、言葉であるのかすらわからない。

川 ゚ -゚)「――――」

それでも、彼女が紡ぎ続ける言葉に耳を傾けた。
助けになどならないが、ブーン自身の気持ちの問題だ。

理解のできぬ言葉がいくつも紡がれ、部屋中に響き渡る。
クーの声は涼やかで、清い音を持っていた。
漠然と、ブーンは彼女の紡いでいるものの力を知る。
世の中の霊能力者は、彼女以上に清らかな言葉を紡ぐのだろう。

これなら、もしかすると。
期待を胸に抱く。



パリン。と、か細い音が耳に入るまでは、確かに抱いていた。


200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 07:41:17.63 ID:bZVp7PBr0

(;^ω^)「なっ……」

川;゚ -゚)「――――」

クーも驚いて音の方を見る。
その口はまだどうにか言葉を紡ぎ続けることができていた。

(;^ω^)「砕けた、お」

二人の視線の先にあったのは数珠玉の一つだ。
割れて小さな破片へと変化している。気のせいか、先ほどまでの輝きも失っている。

川;゚ -゚)「――――」

クーが言葉を紡ぐ。
その合間にまた一つ、パリン。と、音を立てて消える。

パリン。パリン。パリン。

音が響くたびに、クーの声から清さが失われていく。
ただの声に変わっていく。


201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 07:44:55.07 ID:xBAYnMYF0


川 ゚ -゚)「ブーン」




最後の数珠玉が割れたとき、クーは先ほどまでの言葉を紡ぐことを止めた。

202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 07:46:36.19 ID:bZVp7PBr0

(;^ω^)「……」

川 ゚ -゚)「ありがとう。
     私は諦めなかったつもりだ。だから、キミも、キミの能力を最大限に使って欲しい」

彼女はその場に座り込む。

(;^ω^)「クー。ボクは……」

川 ゚ー゚)「私はもう駄目だ。
     反動でな。きっと、すぐに死んでしまう」

言葉に反して彼女は笑っている。

川 ゚ー゚)「さあ、行ってくれ。私の死に様を、どうか見ないでくれ」

( ^ω^)「…………」

ブーンは背を向けて走り出した。

川 ゚ー゚)「頑張ってくれよ」

川 ゚ -゚)



川 ; -;)


203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 07:49:36.78 ID:bZVp7PBr0

川 ; -;)「死、にたく……ない」

誰もいない部屋でクーは涙を流した。
あちらこちらから顔のないナニカが彼女を見ている。

霊感などは生まれたときからなくて、幽霊を見たこともない。
最後の最期に見えたとしても、何も嬉しくない。

川 ; -;)「嫌だ。怖い……」

膝に顔をうずめる。

血を吐いて死ぬのだろうか。
皮膚が爛れて死ぬのだろうか。
笑って死ぬのだろうか。
落ちて死ぬのだろうか。



シネバイイヨ



204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 07:52:12.28 ID:bZVp7PBr0

耳もとで声がした。
生暖かくて、恐ろしくて、どこか安心してしまうそんな声色。

川 ; -;)「ひっく……」

クーは顔をうずめたままその声に耳を傾ける。



シネバイイヨ。

チヲハイテシヌマエニ、
ヒフガタダレテシヌマエニ、
ワラッテシヌマエニ、
オチテシヌマエニ、
シネバイイヨ。



川 ; -;)「死ねば……」


206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 08:01:17.34 ID:bZVp7PBr0

クーが顔を上げる。
顔のないナニカが相変わらずこちらを見ている。

さらに顔を上げてみる。
天井からロープがぶら下がっている。
風もないのにそれはゆらりゆらと揺れて、クーを誘う。

川 ; -;)「死ねば……」

クーは立ち上がる。
倒れている椅子を立ち上がらせ、腰を降ろすべき場所に足を乗せる。
不思議なことに、ロープの長さはクーにとって丁度よい長さになっていた。

川 ゚ -゚)「ブーン、キミは、生きてくれよ」


椅子が蹴られる。
ロープが軋む音と、床に倒れた椅子の音が響いた後、部屋の中は何もなかったかのような静けさを取り戻した。




207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 08:05:03.94 ID:bZVp7PBr0

( ^ω^)「ツン……。みんな……」

( ;ω;)「うっ……。うう……」

階段を駆け下りながらブーンは涙を流した。
どうしてこんなことになってしまったのだろうか。
肝だめしを持ちかけられたときは、あれほど楽しみにしていたのに。
街灯のところでみんなが集まっているのを目にしたときは、心が躍ったというのに。

死など考えたこともなかった。
消えることなど予想もしていなかった。

( ;ω;)「夢であってくれたら……」

どれほどよかっただろうか。

ドクオと連絡を取り合っていて、たまにはツンやクーとも遊ぶ。
ジョルジュを通じてハインと知りあい、町中で偶然出会う弟者に兄者のことを聞くのだ。

そんな、何気ない日々が欲しい。


209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 08:09:14.09 ID:bZVp7PBr0

二階から一階へ繋ぐ階段へ向かって走る。

  _
(  ∀ )


そこには、唯一はっきりと目にしたジョルジュの死体が残っている。
おそらく兄者と弟者もこの階のどこかにいるのだろうけれど、それを探す余裕もなければ、気もない。
死体さえ見なければ、わずかな望みをたくしてもいいような甘い考えが胸の中に巣くっている。

( ;ω;)

ブーンはジョルジュの隣を駆け抜ける。
死体には目もくれず、忘れてしまうことを望むかのような速さだ。


210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 08:13:20.82 ID:bZVp7PBr0

それからもブーンは駆けた。
階段を一段飛ばしで下り、大穴を目にする。
静かな空間で、大穴から白い手が伸びている。などということはない。

ヒビの入っている床を一瞥しつつ、ブーンは足を止めることなく走った。
自慢の速さでヒビの上を移動する。

( ;ω;)「――お」

床は砕けず、音もたてず、ブーンを見送る。
ブーンは抜けたのだ。
悪夢のような廃墟から、抜けた。


211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 08:16:54.96 ID:bZVp7PBr0

八人で通った道は草がなぎ倒されており、そこをはずれずに進む。
真っ直ぐ走りぬければ、徐々に街灯の光が目に入ってくる。
懐中電灯のこころもとない光ではない。

( ;ω;)「ブーンは……助かったのかお?」

そう呟きながらも足を止めない。
止めた瞬間、何もかもが終わってしまうような恐怖感が彼の心を埋め尽くしている。

足を前へ動かし、息を弾ませる。
肺が痛くなってもブーンは走る速さを落とさない。
家まで一直線に向かう。

道中、24時間営業のコンビニを見る度に心を少しだけ癒した。
薄暗い道から物音がする度に恐怖心を増大させた。


212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 08:19:33.65 ID:bZVp7PBr0

家が見えてくると、ブーンは目に見えて安堵の表情を浮かべる。
急いで鍵を取り出し、震える手で何とか鍵穴に差し込む。
実家暮らしだが、構わずに音を立てて扉を開け、閉める。

J( 'ー`)し「ブーン?」

物音で目が覚めたカーチャンの隣を早足で通り抜ける。
本当ならば、今まであったことを言わなければならないのだろうけれど、今は口に出す気力がなかった。

(  ω )

J( 'ー`)し「……大丈夫? 何かあった?」

自室に入ってしまったブーンを心配してカーチャンが声をかけてくれる。
しかし、それにも言葉を返すことができない。
ようやく家に帰ってこれた安心感と、先ほどまでの現実味のない現実に、ブーンの精神は揺れていた。

(  ω )「へいき、だお……」

J( 'ー`)し「そうかい?」

やっとのことでそれだけ返せば、寝起きのカーチャンも自室へ戻って行く。


213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 08:22:58.59 ID:bZVp7PBr0

ブーンはベッドに腰かける。
息は荒れ、体はべっとりと汗をかいている。
それでも、シャワーを浴びるなどという恐ろしいことはできない。

(  ω )


荒れた息を一つ吐く度にあの廃墟にいる皆を思い出す。

穴に落ちたツン。
笑ったまま死んだジョルジュ。
消えてしまったドクオ。
駆けた兄者と追った弟者。
自ら落ちたハイン。
一人残されたクー。



214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 08:25:38.22 ID:bZVp7PBr0

生の喜びを感じる前に湧き上がる罪悪感。

(  ω )「ボクだけが、生き延びてしまったお」

目を閉じればあの廃墟にいる七人が見える。
誰もが笑ってこちらを見ている。
手招きをしている。

(  ω )「ボクは、死にたくないお」

震える声でブーンは言う。
手を組み、懺悔するかのようにしながら、それでも生を望んだ。



暗闇の中、ブーンは眠ることなく、同じことを呟き続けていた。


215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 08:26:15.26 ID:xBAYnMYF0




――ニュースをお伝えいたします。
   vip県で八人の男女が行方不明になりました。
   うち、一名は夜中三時ごろに帰宅しているのを母親が発見。
   しかし、翌朝には姿を消していたということです。
   八人は同じ小中学校に通っており、交流があったと見られており、捜索が続けられております。―― 

216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/11(土) 08:28:18.39 ID:xBAYnMYF0


  (
   )
  i  フッ
  |_|


五本目の蝋燭になったようです。
皆様お憑かれさまでした。

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