mesimarja
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从´ヮ`从ト スティール・マイハートのようです
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 20:03:58.29 ID:uFuDZ2vN0
粉雪の舞う十二月の事――

(´・_ゝ・`)
「……ったく、今日は一段と冷えるな。
 立ったまま凍死しそうだ」

( "ゞ)
「そうぼやくなよ。これも仕事だ」

ミ,,゚Д゚彡
「自給50ドルは魅力的だろ?
 スイスだって、こうはいかないさ」

(´・_ゝ・`)
「まぁな。しっかし、本当に強盗なんて来るのかよ?」

ミ,,゚Д゚彡
「強盗じゃない。〝盗み屋〟だ」

(´・_ゝ・`)
「どっちだって同じだろ。
 リュック・ベッソンの映画に出てくるような人間なら、結局は強盗と同じだ」

ミ,,゚Д゚彡
「まぁ、確かにそうだろうけどさ」

( "ゞ)
「違いねぇ。きっと、ニット帽を被って来るさ。
 今日は寒いからな……」


3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 20:06:53.26 ID:uFuDZ2vN0

(´・_ゝ・`)
「……あぁ、冷えるからな」

( "ゞ)
「あぁ……」

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

(´・_ゝ・`)
「…………」

( "ゞ)
「……お前ら、揃って黙るなよ」

(´・_ゝ・`)
「そうは言っても、寒くてよぉ。
 おまけに、トランスポーターは来ないし」

( "ゞ)
「来ないのが一番だ。下手すりゃ、俺達はあの世行きだ」

ミ,,゚Д゚彡
「後2、3時間の辛抱だ。
 我慢しな」

(´・_ゝ・`)
「……それで、その盗み屋は、何を盗みにわざわざ、こんな寂れた美術館に来るんだ?」


4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 20:09:48.04 ID:uFuDZ2vN0
( "ゞ)
「あぁ、噂じゃぁ、奥の保管庫にあるヨスィフって彫刻家の作品を狙っているらしい」

(´・_ゝ・`)
「ヨスィフ?」

ミ,,゚Д゚彡
「聞いたことねぇな」

( "ゞ)
「なんでも、無名の彫刻家の作品で、今度処分が決定されたって話だ。
 そしたら、この噂が出て来たって事だ」

(´・_ゝ・`)
「ふぅん……変わった依頼人に仕事を頼まれたんだろうな」

( "ゞ)
「……それがな、ここだけの話。
 ロシアン・マフィアが依頼主って話だ」

(´・_ゝ・`)
「マフィア? そりゃあまた剣呑な。
 だから、警備は三人だけなのか」

( "ゞ)
「上としても、ゴタゴタは嫌なんだろう。
 ……にしても、馬鹿寒い」

(´・_ゝ・`)
「ウォッカの差し入れはなかったのか?」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 20:11:53.35 ID:uFuDZ2vN0
( "ゞ)
「全部飲んじまったんだろ。スミノフは諦めな」

(´・_ゝ・`)
「…………」

( "ゞ)
「…………」

ミ,,゚Д゚彡
「…………なぁ」

( "ゞ)
「あん?」

(´・_ゝ・`)
「なんだよ」

ミ,,゚Д゚彡
「その盗み屋が来たら、お前らどうする?
 やっぱり、逃げるか?」

( "ゞ)
「あぁ、結構難しい質問だな……」

(´・_ゝ・`)
「マフィアに譲るか、次の履歴書の為に頑張るか、か」

ミ,,゚Д゚彡
「どうせやる事もないんだ。今の内に決めておこうぜ」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 20:14:13.83 ID:uFuDZ2vN0
(´・_ゝ・`)
「……俺は、逃げるのは遠慮しておく。
 道を案内する程度だ。
 こちらで御座います、ってな」

( "ゞ)
「そりゃあいい、賛成だ。
 糞寒い中スーツにコートだけで立ってるのに、アクション映画の真似事なんて面倒臭いだけだよな」

ミ,,゚Д゚彡
「そりゃあよかった。
 ……おかげで、手間を増やす必要が無くなった。
 さぁ、道案内を頼もうか」

(´・_ゝ・`)
「……え?」

( "ゞ)
「……え?」

ミ,,゚Д゚彡
「中は暖房が効いている。
 それに比べたら、このベレッタの炎は小さすぎるだろ。
 大丈夫。何かあっても、お前達は仕事をしていたと話しておいてやるから」



――こうして、鮮やかな手口で古びた美術館から、一つの彫刻品が盗み出された。



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 20:16:41.93 ID:uFuDZ2vN0














         Steel My Heart
从´ヮ`从ト スティール・マイハートのようです
         Steal My Heart














10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 20:18:23.05 ID:uFuDZ2vN0








◆盗み屋の心得◆
一つ、依頼を受けている間、盗み屋は依頼人の手であるべし。
一つ、依頼の終わりと共に全ての責任を手の主に返すべし。
一つ、己の掟は守るべし。










13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 20:24:47.79 ID:uFuDZ2vN0

粉雪が風に巻き上げられ、漆黒の夜空に吸い込まれてゆく。
イルトリアの首都ロードンの歴史ある街の中を、スモークガラスの黒塗りのBMWが疾走していた。

ミ,,゚Д゚彡
「……俺だ。依頼品を手に入れた」

ハンズフリーの車載電話に向かって、運転手のフサ・エクスプローラーは平坦な口調で話しかけた。

【???】
「御苦労。では、予定通りの場所に」

返事もせずに、フサは電話を切った。

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

無言でハンドルを切る。
車内に音楽は掛かっていなかった。
後部座席には、美術館から盗んだばかりの鋼鉄製の彫刻、鋼鉄の処女心(おとめごころ)が乗っていた。
ルームミラーでその姿を改めて確認するが、何とも面白味のない、古錆びた鉄屑にしか見えない。

しかし、依頼人はこれを切望していた。
深い理由は知らない。
フサが己に科した掟によって、依頼人の目的は訊かない事にしていた。
カーナビのデジタル時計が表示する時間を見て、全てが予定通りに進んでいる事を確認した。

細い路地を一つ曲がり、街灯さえない場所に出た。
BMWのエンジンを掛けたまま停め、彫刻を持って車の外に出た。
フサの鼻から、白い湯気が上がった。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 20:26:18.94 ID:uFuDZ2vN0
ミ,,゚Д゚彡-3
「…………」

/ ,' 3
「御苦労、盗み屋君」

フサの正面に落ちた建物の影から、男がぬっと姿を現した。

ミ,,゚Д゚彡
「アラマキ・チェブリコフだな?」

/ ,' 3
「そうだ。それで、それがブツか?」

フサは首肯した。

/ ,' 3
「ようし、よくやった。おい」

【黒服の男】
「……はっ」

フサの背後から現れた男が、アタッシュケースを開いて現金を見せ、蓋を閉じてそれを恭しく差し出した。
フサは受け取る前に彫刻を手渡してから、ケースを受け取った。

/ ,' 3
「ところで、盗み屋君」

ミ,,゚Д゚彡
「仕事は終了した。問答は無用だ」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 20:30:47.04 ID:uFuDZ2vN0
/ ,' 3
「まぁそう言うな。
 私はこう見えて、社交的な人間でね。
 君に是非とも聞きたいのだが、その彫刻品の価値を知っているかね?」

フサは肩を竦めて答えた。

ミ,,゚Д゚彡
「俺には関係ない」

/ ,' 3
「そいつは重畳」

マカロフの銃口が向けられる。

ミ,,゚Д゚彡
「……何の真似だ」

/ ,' 3
「俺がそいつを持っている事を吹聴されたんじゃあ、今後、俺は安心して眠れない」

ミ,,゚Д゚彡
「吹聴しない。俺にメリットが見出せない上に、契約違反になる」

/ ,' 3
「へっへ、見上げた根性だが、そいつを信じるのは些か、無理ってもんだ」

ミ,,゚Д゚彡
「悪ふざけはよしておけ」


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 20:32:05.17 ID:uFuDZ2vN0
/ ,' 3
「ふざけてなんかいないさ。
 私は何時でも真剣だ」

フサは受け取ったケースで背後にいた男の顔を素早く殴り、滑らかな無駄のない動きで、彫刻を持ったままの男を羽交い絞めにして、使い勝手の良い楯に変える。
男の手から、彫刻が地面に落ちたのと同時、フサは懐のベレッタM84を抜き放ち、アラマキに向ける。

ミ,,゚Д゚彡
「なら、俺も真剣に行かせてもらう」

無言の間。
緊張感溢れる時間。

/ ,' 3
「無駄だよ、盗み屋」

銃声。
しかしそれは、フサでもアラマキのそれでもなく、フサの背後の闇から響いた、それ。

ミ;,,゚Д゚彡
「……なっ?!」

/ ,' 3
「ほぅ、倒れなかったか」

伏兵。
気付かなかったフサの不覚。
服の下に着た防弾ベストが弾を止めたのが、唯一の幸運。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 20:34:23.27 ID:uFuDZ2vN0
ミ;,,゚Д゚彡
「ぬぅ……」

ゆらり、と倒れかかる。
ケブラー性の防弾ベスト越しに受ける弾丸の衝撃は、ヘヴィ級プロボクサーの右ストレートに匹敵する。
防御力の高い背面に受けていなければ、間違いなく、フサは気絶していたことだろう。
楯にしていた男が逃げ出そうとするが、フサの腕は決してそれを許さない。

アラマキを睨めつけ、フサはベレッタの銃爪を引いた。
三発の銃弾がアラマキの髪を掠めて通り過ぎ、二発の銃弾が足元の地面を抉る。
一目散にアラマキは逃げ出し、背後から再び銃声。
フサの脇腹に、焼き鏝を当てつけたかのような鋭い痛みが走る。

先とは銃声が異なる。では、敵は二人か?
素早く状況を判断したフサは、楯にしていた男を突き飛ばし、転んだ男の頭を撃った。
再び、背後から銃声。
ライフルの銃声だった。

ミ;,, Д 彡
「あぐっ……?!」

ケブラーでも、ライフル弾は防ぎ切れない。
二発、三発と貫通した弾が内臓を引き裂く。
身を捩りながら、フサは背後に銃口を向け、マズルフラッシュを目印に、そこに向けて撃った。
やがて、一マガジンを使い切る頃には敵の反撃も無くなり、その場に、静寂が戻ってきた。

大量に失われた血液と、凍りつく様に冷たい風が、フサの体温と意識を容赦なく奪い行く。
地面に転がっていた彫刻を胸に抱え、フサはBMWに戻る。
車内の暖房がありがたかった。
朦朧とする意識の中、後部座席のタオルケットを腹にあてがい、血塗れになった彫刻でそれを押さえ、セーフハウスを目指して車を走らせる。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 20:36:50.49 ID:uFuDZ2vN0



深夜と云う事もあってすれ違う車は殆どいなかった。
ルームミラーを見て尾行がいない事を確認してから、フサは隠れ家の近くにある一軒家の前に車を乗り捨て、タオルケットを広い範囲で押さえる為に、彫刻を腹に押し付けた。
隠れ家を目指して、ゾンビの様な足取りで行く。
その間にも、タオルケットから染み出した血が彫刻と指を濡らした。




どうにか玄関の扉を開いた辺りで、遂に、フサの意識は闇の中に沈み落ちてしまった。




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21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 20:40:35.05 ID:uFuDZ2vN0
ミ;,,゚Д゚彡
「…………む……ぅ……?」

目が覚めた時、フサは自分が生きている事に驚きを隠せなかった。
昨夜あれだけの傷を負って失血すれば、生きているのは超人でもない限り有り得なかった。
そこで、自分が寝ているのが寝室のベッドの上であると云う事。
腹に負った傷の上に、包帯で随分と下手くそな止血が施されている事に、ようやく気が付く事が出来た。

無意識の内に自分でやった?
いや、それはないと、口の中で一人ごちた。

ミ,,゚Д゚彡
「どうなってるんだ……」

痛みを我慢して体を起こし、部屋の状況を見る。
やはり、違和感があった。
長らく使っていなかったとは言え、そこに置かれている物の配置が微妙に変わっている事は分かる。
何年も使っていなかったエアコンは、今にも壊れそうな音を立てながらも、しっかりと部屋を暖めている。

ミ,,゚Д゚彡
「親切な泥棒か?」

泥棒が泥棒に入られ、助けられると言うのは、どうにも間抜けな話だ。
自嘲気味に笑ったフサの声は、リビングの奥にある部屋、キッチンの方から聞こえて来た音に上塗りされた。

【???】
「ありゃっ?!」

若い女の声。


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 20:42:25.73 ID:uFuDZ2vN0
ミ,,゚Д゚彡
「…………間抜けな泥棒の間違いか」

マットレスの下に隠してあるグロックを掴んで、フサはのそのそと起き上がり、キッチンに向かう。
そこには、ダボダボのワイシャツを着た見知らぬ少女がいた。
それ以外、身には何もつけていなかった。

ミ,,゚Д゚彡
「……ハウスメイドを雇った記憶はないぞ」

从´ヮ`从ト
「お、旦那、気が付きましたか?
 今、コーヒーを淹れようと思っていたところでしてね」

ミ,,゚Д゚彡
「お前は誰だ?」

从´ヮ`从ト
「にしても、旦那、この家は埃っぽいったらありゃあしません。
 それに、何処に何があるのか、いまいち分かりませんで」

ミ,,゚Д゚彡
「質問に答えろ。
 お前は、誰だ? 目的は何だ?」

銃口を向ける。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 20:45:07.72 ID:uFuDZ2vN0

从´ヮ`从ト
「あー、旦那?
 そんな物を向けずに、今はまぁ、落ち着きましょうぜ。
 コーヒーと砂糖の場所を教えてもらえませんかね?」

ミ,,゚Д゚彡
「…………右の戸棚だ」

从´ヮ`从ト
「こいつぁどうも。
 ……うへぇ、ここも埃だらけ。
 後で掃除しなきゃ」

ミ,,゚Д゚彡
「悪いが、俺は金なら出さんぞ」

从´ヮ`从ト
「金? 旦那ぁ、あたしは家政婦でもハウスメイドでもありません。
 一々気にしなくていいんですよ」

ミ,,゚Д゚彡
「なら、目的は何だ?」

从´ヮ`从ト
「目的、ですか。
 えらく哲学的な質問ですが、まぁ、今はコーヒーを飲んでからにしましょう」

ミ,,゚Д゚彡
「目的を言えと、俺は言っている」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 20:48:36.97 ID:uFuDZ2vN0
从´ヮ`从ト
「旦那はビックリするぐらい短気ですねぇ。
 そんなもん、あたしにはありませんよ」

ミ,,゚Д゚彡
「だったら、どうしてここにいるんだ?」

从´ヮ`从ト
「何でって、旦那が連れて来たんじゃあありませんか」

コーヒーと砂糖の瓶を持って、不思議そうに首を傾げる。

ミ,,゚Д゚彡
「見え透いた嘘は止めろ」

从´ヮ`从ト
「あー、嘘じゃないと言っても、旦那は信じませんか?」

ミ,,゚Д゚彡
「当たり前だ」

从´ヮ`从ト
「うぅむ……」

ミ,,゚Д゚彡
「出て行け」

从´ヮ`从ト
「そんな事言わずに、旦那ぁ、あたしは旦那にぞっこんなんですよ」


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 20:51:12.81 ID:uFuDZ2vN0
訳の分からない女の、訳の分からない言葉を黙殺し、フサは視線を逸らさない。

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

从´ヮ`从ト
「ちぇっ。旦那ったら、照れもしないんですか」

ミ,,゚Д゚彡
「訳の分からない女の言葉に照れるか」

从´ヮ`从ト
「あー、訳の分からない、ってのは否定できませんがね。
 でも旦那、間違いなく、あたしは旦那に連れられてここまで来――」

ミ,,゚Д゚彡
「――次に同じ台詞を言わせるのなら、女でも俺は殴るぞ」

从´ヮ`从ト
「むぅ…… では、旦那。あたしの体の何処でもいいですから、殴ってみてください」

ミ,,゚Д゚彡
「は?」

从´ヮ`从ト
「まぁまぁ、物は試し。
 あたしの説明と証明を省くには、それが一番手っとり早いんですよ」

ミ,,゚Д゚彡
「保険金を取るつもりか?」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 20:53:49.24 ID:uFuDZ2vN0
ぺたぺたと、少女は足取り軽くフサに歩み寄る。

从´ヮ`从ト
「お金なんか、あたしは必要ありませんから」

ミ,,゚Д゚彡
「後悔するなよ」

从´ヮ`从ト
「旦那こそ」

左手で殴りかかったのは、せめてもの情けだった。
負傷しているフサの左手のパンチでは、せいぜい、痣を作る程度の威力の筈。
少女を黙らせるには十分な威力。
狙ったのは、細い右肩だった。

しかし、悲鳴を上げる事になったのはフサの方だった。

ミ;,,゚Д゚彡そ
「がぁっ?!」

从´ヮ`从ト
「だからあたしは言ったんですよ」

ミ;,,゚Д゚彡
「義手か?」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 20:55:38.45 ID:uFuDZ2vN0
まるで壁。
まるで岩石。
まるで鋼鉄。
殴った方が痛みに喘ぐほどの硬度。

从´ヮ`从ト
「義手じゃないですよ。疑うのなら、触ってみます?
 若い娘のモチモチお肌ですよ」

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

得体の知れない恐怖を少女から感じ、フサは無言でグロックを向ける。

从´ヮ`从ト
「お勧めしませんよ」

ミ,,゚Д゚彡
「何故だ?」

从´ヮ`从ト
「跳弾します」

ミ,,゚Д゚彡
「何処のアイアンマンだ、お前は」

从´ヮ`从ト
「アイアンメイデンの方が正しい様な……」


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 21:05:00.73 ID:uFuDZ2vN0
ミ,,゚Д゚彡
「言語学の授業を頼んだ覚えはない」

从´ヮ`从ト
「あたしは、旦那が盗んだあの彫刻ですって言っても、何がなんでも信じませんよね?」

ミ,,゚Д゚彡
「お前は何を言っているんだ?」

从´ヮ`从ト
「だーかーらー。
 あたしは、あの鋼鉄の処女心なんですってば」

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

从´ヮ`从ト
「あの~……ひょっとしなくても、信じてないですか?」

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

無言のまま、安全装置を解除する。

从´ヮ`从ト
「ちょっとー、だんなー、何で無言で睨むんですかー。
 怖いですよー。
 いーやー」


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 21:11:50.14 ID:uFuDZ2vN0
ミ,,゚Д゚彡
「ちょっと待ってろ、サプレッサーを取って来る」

从´ヮ`从ト
「近隣の騒音問題にも気を配る旦那素敵ぃ!!
 ねぇ、だから話を聞いて下さいってばー」

ミ,,゚Д゚彡
「……お前があの彫刻品だと信じろと?」

少女は物凄い勢いで頷き始めた。

从´ヮ`从ト
「そうそう、その通りぃ!
 さっすが旦那ぁ!」

ミ,,゚Д゚彡
「信じると思うか?」

从´ヮ`从ト
「そんなぁー。
 でも旦那、あたしにどうしろって言うんですかー」

少女は涙目で抗議する。
辟易とした風に溜息を吐いて、フサは踵を返した。
食器棚の中にあったサプレッサーを取り出し、グロックに装着する。

从;´ヮ`从ト
「へい、へい、へぇぇぇい!!
 旦那、旦那ってば!!」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 21:14:31.83 ID:uFuDZ2vN0
ミ,,゚Д゚彡
「希望の場所は?」

从;´ヮ`从ト
「これから殺そうとしてる相手に見せる優しさ、流石旦那!!
 この女殺しぃ!!
 ジェントリーな精神、痺れますねぇ!!」

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

最早、問答する気にもなれず、フサはグロックを少女に向け、せめてもの情けとして、心臓に向けて撃った。
が、

ミ;,,゚Д゚彡
「……嘘……だろ」

从´ヮ`从ト
「ほらぁ、だから言ったんですよ」

少女は、ワイシャツに空いた穴に指を入れ、その奥にある小ぶりな胸を見せた。
傷一つ、ついていなかった。

从;´ヮ`从ト
「仮にも私は鋼鉄、鉛弾じゃあ傷も付きませんで……
 って、えぇぇぇぇ!!
 こ、コーヒーがあぁぁぁ……」

不運にも、跳弾によって、少女が持っていたインスタントコーヒーのボトルが砕けていた。
中身は当然重力に従って床に落ちるわけで。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 21:17:41.52 ID:uFuDZ2vN0
从;´ヮ`从ト
「掃除した……ばっかりなのに……」

よよよ、と泣き崩れる少女。
フサは唖然としていた。
拳でも駄目、鉛弾でも駄目。
何がどうなっているのか、理解が全く追いつかない。

ミ,,゚Д゚彡
「……お前は、本当に何なんだ……」

床にのの字を書いていた少女が、スティーを見上げる。

从´ヮ`从ト
「だからぁ、私はあの彫刻なんですってばぁ」

ミ,,゚Д゚彡
「彫刻が人間になるのは御伽噺の中だけだ」

从´ヮ`从ト
「旦那ぁ、どうすれば信じてくれるんですか?」

ミ,,゚Д゚彡
「……理屈を説明してくれ」

頭を軽く押さえながら、そう言った。

从´ヮ`从ト
「理屈ですね。
 それは、旦那があたしを受肉させたからですよ」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 21:21:41.67 ID:uFuDZ2vN0
ミ,,゚Д゚彡
「は? 受肉?」

从´ヮ`从ト
「ほら、昨日、旦那凄い血を流してたじゃないですか。
 その時に、あたしが受肉するのに必要最低限の量を浴びたもんで、こうして肉体を得た訳ですよ」

ミ,,゚Д゚彡
「俺の英語が不自由なだけなのか?
 言っている意味がさっぱり分からないんだが」

从´ヮ`从ト
「えっとですね、要するに、旦那の血を浴びて、こうなったわけでして」

ミ,,゚Д゚彡
「……ファンタジーじゃないか」

从´ヮ`从ト
「人生は何時だってファンタジーなんですよ」

ミ,,゚Д゚彡
「皮肉が通じないのか?」

从;´ヮ`从ト
「ちょっ?! 信じてないんですか?!」

ミ,,゚Д゚彡
「いや、どう頑張ったって無理だろ」


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 21:24:03.24 ID:uFuDZ2vN0
从´ヮ`从ト
「といっても、これが真実なんですよ、旦那」

ミ,,゚Д゚彡
「ヨスィフとか言う無名の彫刻家の作品が、こんなぶっ飛んだ彫刻のはずないだろ。
 あれは、ただの鋼鉄製の彫刻だ」

从´ヮ`从ト
「ヨスィフ? あたしを作ったのは、そんな名前の人じゃないですよ」

ミ,,゚Д゚彡
「何?」
怪訝そうな声で訊き返す。

从´ヮ`从ト
「ルハチ・ダヴィンチっておじさんなんですけど」

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

从;´ヮ`从ト
「だーっ!!
 どうして銃口向けるんですか!!」

ミ,,゚Д゚彡
「ダヴィンチだと? 嘘を吐くのなら、もう少しまともな嘘を吐くんだ」

从;´ヮ`从ト
「どうしろっていうんですかぁー」


42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 21:26:09.07 ID:uFuDZ2vN0
ミ,,゚Д゚彡
「……はぁ」

从´ヮ`从ト
「おろ?」

ミ,,゚Д゚彡
「名前、本当にないのか?」

从´ヮ`从ト
「作品名を名前とは言わないでしょう?
 ってわけで、旦那、名前考えてくれませんかね?」

ミ,,゚Д゚彡
「どうして俺が、お前のゴッドファーザーにならなきゃならんのだ」

从´ヮ`从ト
「ほら、この先、長いおつきあいになる訳ですから」

ミ,,゚Д゚彡
「御免こうむる」

从´ヮ`从ト
「えぇー。
 こんなに可愛い女の子を独り占めできるんですよ?」

ミ,,゚Д゚彡
「最初に言っておくが、俺は頭のねじが緩そうな、特にお前の様な女が好かんのだ」


44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 21:31:05.69 ID:uFuDZ2vN0
从´ヮ`从ト
「ふっふっふ、こう見えてもあたし、結構頭いいんですよ」

ミ,,゚Д゚彡
「どうだかな」

从´ヮ`从ト
「それより、旦那ぁ。
 名前、考えて下さいってば」

ミ,,゚Д゚彡
「…………ハンニバル?」

从;´ヮ`从ト【ハンニバル?】
「恐ぇぇぇぇ!?
 この色白のか弱い美少女がそんな厳つい名前なんて、ギャップ萌の人でもノーサンキューってレベルですよ!!
 羊たちも沈黙しちゃいますって!!
 ほら、もっと可愛らしい名前をですねぇ」

ミ,,゚Д゚彡
「シモヘイヘとかどうだ」

从;´ヮ`从ト【白い悪魔?】
「狙撃の鬼じゃないですか、やだー」

ミ,,゚Д゚彡
「なら、バーBドールはどうだ? 世界的人気だぞ」

从´ヮ`从ト
「越えちゃいけないライン、考えましょうよ」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 21:34:06.56 ID:uFuDZ2vN0
ミ,,゚Д゚彡
「贅沢な奴だな」

从´ヮ`从ト
「女の子ですよ、あたし」

ミ,,゚Д゚彡
「……チハル」

从´ヮ`从ト
「ほ?」

ミ,,゚Д゚彡
「チハルなら、文句はないだろ」

从´ヮ`从ト
「……ルハチだから、チハルですか?」

ミ,,゚Д゚彡
「これ以上のグレードはもうない」

从´ヮ`从ト
「いやぁ、結構あたしは気に入りましたよ?」

ミ,,゚Д゚彡
「と云う訳で、お前」

从´ヮ`从ト
「はい、何でしょうか、旦那」


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 21:37:57.69 ID:uFuDZ2vN0
ミ,,゚Д゚彡
「今すぐ出て行け」

从´ヮ`从ト
「ひょう、こいつは見事な飴と鞭!!
 あたしの旦那はこうでなくっちゃ」

ミ,,゚Д゚彡
「第一、旦那って何だ、旦那って」

从´ヮ`从ト
「え? だって、旦那があたしに血を分けたから、こうして受肉している訳ですよ。
 だから、旦那は旦那です」

ミ,,゚Д゚彡
「……訳が分からんな」

从´ヮ`从ト
「だから、旦那の事だって、離れていても、ある程度なら分かるんですよ?
 一心同体、わぁお!! 運命的ですね!!」

ミ,,゚Д゚彡
「ある程度って?」

从*´ヮ`*从ト
「感情の動きとかですね。
 怒ったり、泣いたり……
 よ……欲情したり?」


52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 21:40:56.93 ID:uFuDZ2vN0
ミ,,゚Д゚彡
「何故そこで、もじもじして頬を赤らめる。
 小便か? なら、そこの角を曲がった所がトイレだ」

从;´ヮ`从ト
「ちょっ、違いますよ!!
 乙女は小便なんかしません!!」

ミ,,゚Д゚彡
「お前は幾つのガキだ」

从´ヮ`从ト
「ひょっとして、旦那ってば、お小水に興奮する人なんですか?
 まぁ…… あ、で、でも……旦那がどうしてもって言うのなら……」

ミ,,゚Д゚彡
「安心しろ。お前に欲情する事があったら、俺は片手で逆立ちをしてやる」

从´ヮ`从ト
「むぅ……そう言われると、乙女としてはショックと言いますか」

ミ,,゚Д゚彡
「兎に角、怪我の手当てをしてくれた礼は言う。
 必要なら、その分の手間賃ぐらいはくれてやる。
 だから、さっさと、帰れ」

从´ヮ`从ト
「どーしてそこまで邪険に扱うんですか?
 掃除だって、家事だって、夜のお供だって出来ますよ?
 便利ですよ? お得ですよ? きゃわいいですよ?」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 21:44:04.75 ID:uFuDZ2vN0
ミ,,゚Д゚彡
「だったら、家政婦の求人を出している家を探すんだ。
 俺の彫刻はどこにやった?」

从´ヮ`从ト
「だーかーらー」

ミ,,゚Д゚彡
「泣いても信じるわけにはいかない」

从´ヮ`从ト
「むぐぐ……」

俯き加減で、チハルがフサを見上げる。

ミ,,゚Д゚彡
「なんだ、その眼は?」

从´ヮ`从ト
「旦那、出来るだけ早く、復讐するおつもりでしょう?」

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

从´ヮ`从ト
「それに、少しだけですけど、あたしの事を心配してくれてる」

ミ,,゚Д゚彡
「自惚れるなよ」


55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 21:48:10.76 ID:uFuDZ2vN0
从´ヮ`从ト
「旦那、あたし言ったじゃないですか。
 感情とかなら読めるって」

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

从´ヮ`从ト
「黙っていても、読めますってば」

ミ,,゚Д゚彡
「……あの彫刻が仮にダヴィンチの作品だとしたら、ロシアン・マフィアの連中が放っておくはずがない。
 今頃、俺を探している筈だ。
 だから、俺といると危険に巻き込まれる。
 これでいいか?」

从´ヮ`从ト
「うへへ、口に出して言ってもらえると、やっぱり嬉しいですねぇ。
 でもね、旦那。 あたしは旦那から離れない方がいいと思うんですよ」

ミ,,゚Д゚彡
「理由を言え」

从´ヮ`从ト
「5ヤードぐらい離れたら、あたし元の姿に戻っちゃうんですよ。
 なにぶん、受けた血の量が半端なもんで」

ミ,,゚Д゚彡
「半端?」


59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 21:51:38.27 ID:uFuDZ2vN0
从´ヮ`从ト
「せいぜい2リットル程受けたんですがね、いやぁ、目が覚めたら旦那、瀕死だったんですもん。
 ビックリしましたよ、えぇ、そりゃあ。
 女の子の日がきっつい時でも、あそこまでいきませんて」

ミ,,゚Д゚彡
「……本当に瀕死じゃないか」

从´ヮ`从ト
「あぁ、でも、弾なら抜けていましたし、床に血は残っていませんよ?
 何せ、私が全部吸い取りましたから」

ミ,,゚Д゚彡
「掃除機よりも便利だな」

从´ヮ`从ト
「うへへ、褒められちった」

ミ,,゚Д゚彡
「ちなみに、お前に必要な量って云うのは?」

从´ヮ`从ト
「ざっと、体液10リットルですね」

フサの体内に残っている血液を足しても、まだ足りない量だ。
肉つきの良い成人男性二人分の血液を欲する少女。
随分とスプラッタな話である。

ミ,,゚Д゚彡
「……俺がお前の正体を信じるに値する証拠を一つだけでいい、それを提示しろ」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 21:54:17.57 ID:uFuDZ2vN0
从´ヮ`从ト
「うーん…… じゃあ、旦那、ちょっと5ヤードばかり離れてもらえませんか?」

ミ,,゚Д゚彡
「……いいだろう」

フサの記憶が正しければ、玄関からリビングの端までで、確か6ヤード程離れていた筈だった。
リビングのソファに腰掛け、フサはチハルが廊下を歩いて行く姿を見送った。

从´ヮ`从ト
「行きますよー」

手を振って存在をアピールし、チハルが一歩を踏み出した、次の瞬間。

ミ;,,゚Д゚彡
「なっ?!」

チハルの姿が一瞬で消え、代わりに、昨夜の彫刻がそこに鎮座していた。
興奮のあまり、フサは思わず立ち上がり、数歩進んだ。
すると今度は、彫刻が消え、チハルが現れた。

从´ヮ`从ト
「ね? 御理解いただけましたか、旦那?」

目の前で見せられた以上、信じるしかなかった。

从´ヮ`从ト
「ご安心ください、旦那。
 こう見えてもあたし、結構強いんですよ。
 だから、映画みたいに誘拐されてもキャーキャー叫びませんし、興味本位に危険に首を突っ込みませんから」

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 21:56:28.10 ID:uFuDZ2vN0
ぱたぱたと駆け寄ってくるチハルの顔は、誇らしげだった。
しかし、その言葉に説得力は皆無である。

ミ;,,゚Д゚彡
「……悪夢だ」

从´ヮ`从ト
「まぁまぁ、旦那。
 それより、ごはんを食べましょう。
 一日のエネルギーと元気の源を、体内に吸収して、明日への活力にするのです!!」

ミ,,゚Д゚彡
「……と言っても、ここに食材はないぞ」

从;´ヮ`从ト
「なん……だと……?」

ミ,,゚Д゚彡
「元々、長期間用の隠れ家じゃないからな。
 その事は想定していなかった」

从´ヮ`从ト
「嘆かわしい、何と嘆かわしい……!!
 これがあたしの旦那とは……」

ミ,,゚Д゚彡
「酒ならあるけどな」

从´ヮ`从ト
「酒? スピリッツだったら、消毒に使いましたよ?」

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 22:00:18.44 ID:uFuDZ2vN0
ミ,,゚Д゚彡
「……何? お前、あれが一本幾らするか知ってるか?」

从´ヮ`从ト
「10ドルじゃないんですか? あんな紛い物なら、後生大事にする必要はないと思うんですけど」

ミ,,゚Д゚彡
「紛い物?」

从´ヮ`从ト
「物を見る目は確かですよ。真贋鑑定なんて、あっという間です」

ミ,,゚Д゚彡
「……そうか」

どうしてか、妙に納得できてしまった。
結構懇意にしている店だったのだが、あの店主、人をだまくらかす狸であったとは。

从´ヮ`从ト
「それより、朝食はどうするんですか?
 御友人に連絡するとか?」

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

从;´ヮ`从ト
「嘘……あたしの旦那、友人いないの……」

ミ,,゚Д゚彡
「悪かったな、職業柄、友人は作れんのだ」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 22:02:25.16 ID:uFuDZ2vN0
从*´ヮ`*从ト
「じ、じゃあ、これも?」

恥ずかしがりながら、チハルは親指を立てる。

ミ;,,゚Д゚彡
「何故親指なんだ、普通は小指だろ、小指!!」

怪我も忘れてそんな風に叫んだものだから、フサの腹部に酷い痛みが走り、言葉もなく悶えた。

ミ;,,゚Д゚彡
「……むっ……おお……!!」

从´ヮ`从ト
「あぁ、ほら、叫ぶから」

ミ,,゚Д゚彡
「……電話のかけ方は知ってるか?」

从´ヮ`从ト
「えぇ、まぁ」

ミ,,゚Д゚彡
「ピザファットに電話をして、ステーキセットとマルゲリータ・ピザのLL、後はお前の好きな物を頼んでおいてくれ。
 金は電話機の下にある」

从´ヮ`从ト
「おっ、旦那……ちょーくーるだよ、だんなぁ!!」


65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 22:04:44.93 ID:uFuDZ2vN0
ミ,,゚Д゚彡
「……勘違いするな」

从´ヮ`从ト
「ツンデレを通り越してツンドラな旦那を籠絡してしまった……
 あたしって、罪な女……」

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

从´ヮ`从ト
「って、何か事あるごとに銃を向けるの止めましょうよ」

ミ,,゚Д゚彡
「……頼むから俺を苛立たせないでくれ」

包帯に薄らと滲んだ血を見て、チハルはようやく黙った。
覚醒した意識のまま寝室に向かい、ベッドの上に寝転がる。
見れば、ベッドの傍には皺だらけのスーツがハンガーに掛かっていた。
銃によって空いた穴は健在で、だがしかし、在るべき筈の、大量の血は付着していなかった。

吸い取ったと言うのは、嘘ではなさそうだった。
グロックからマガジンを取り出して、装填されている弾丸を確認する。
間違いなく、9ミリパラベラム・バレットだった。
これを生身の人間が傷一つなく弾く事が出来れば、きっと、新たな人類として博物館に送り届けなければならなくなる。

安全装置を掛けて枕の下にグロックを置き、フサは、束の間の眠りに落ちた。

* * * * * *


68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 22:06:37.73 ID:uFuDZ2vN0
从´ヮ`从ト
「だんなー、ピザ、届きましたよー」

耳障りなチハルの声が聞こえたのは、1時間が経過してからのことだった。

ミ,,゚Д゚彡
「む……ぅ……」

从´ヮ`从ト
「ここで甲斐甲斐しい新妻っぽく接すれば、あたしの評価ポイントはウナギ登り必至……」

ミ,,゚Д゚彡
「何をぶつくさ言っているんだ?」

从*´ヮ`*从ト
「い、いえ、尺八のサービスでもどうかなーと思いましてね」

ミ,,゚Д゚彡
「顔を真っ赤にするぐらいなら口にするな」

从´ヮ`从ト
「旦那ぁ、卑語を真顔で連発するおなごは、世間では淫乱と言われているんですよ」

ミ,,゚Д゚彡
「真顔じゃなくても口にするのはどうかと思うぞ」

从´ヮ`从ト
「そのようで。旦那ったら、本当にピクリともさせないんですもの」


70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 22:09:03.92 ID:uFuDZ2vN0
ミ,,゚Д゚彡
「俺の趣味じゃないだけだ」

ぷぅ、と頬を膨らませ、チハルはジト目でフサを見た。

从´ヮ`从ト
「まぁ、次の機会を狙うとしますよ。
 それより、ピザとか肉とか届きましたよ」

ミ,,゚Д゚彡
「ん、あぁ」

そこで、ある疑問が浮かんだ。

ミ,,゚Д゚彡
「……お前、ひょっとして、その格好で対応したのか?」

从´ヮ`从ト
「それは、だって、あたしこれ以外の服持ってませんから」

ミ,,゚Д゚彡
「相手は気まずかっただろうに……」

从´ヮ`从ト
「旦那以外に見られても、あたしは気にしませんよ」

コロコロと調子を変えるチハルに翻弄される自分を自覚し、フサは少々困惑した。
一体何が本心で、何を想って行動しているのか、それが、妙に気になって仕方が無かった。
考えても無駄だと思い、フサは大人しく、リビングに向かった。
食欲を誘う、何とも言えぬ匂いが漂ってきた。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 22:11:29.67 ID:uFuDZ2vN0
文字通り腹の減ったフサは席に着き、ピザの箱を開いた。

ミ,,゚Д゚彡
「ほぅ」

思わず唸り声を上げる。
注文した通りのマルゲリータ・ピザ。
フレッシュバジルと生ハムが零れんばかりに乗せられた、ピザファット一番人気のメニューである。
横に置かれた皿には、焼き色の付いた、湯気の立ち上る一枚肉のステーキ。

届けられてからもう一度、軽く焼かねばこうはいかない。
上に乗ったクレソンの葉。添えられた粒マスタード。
パックに入ったライス。
卓上の中央には、安物の赤ワインと白ワインが一瓶ずつ。

ミ,,゚Д゚彡
「……お前が頼んだのか?」

从´ヮ`从ト
「そりゃあ、肉と言えば赤ワイン。
 旦那、怪我した時は、肉と酒が一番ですよ」

ミ,,゚Д゚彡
「…………ぅ」

从´ヮ`从ト
「はい?」

ミ,,゚Д゚彡
「ありがとうと言ったんだ」

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 22:13:12.95 ID:uFuDZ2vN0
从´ヮ`从ト
「……ふぅっ!! 旦那に礼を言われてしまうとは!!
 ツンドラの大地に、そろそろ春が訪れそうですね!!
 さぁ、旦那!! もう一度、今度はぶっきらぼうじゃなくて、感情と愛情を込めて、あたしの名前を付け加えて、ほぅら、もう一度!! ワンモアセッ!!」

ミ,,゚Д゚彡
「さっさと食べるぞ」

チハルの前には、三段に積まれたXLサイズのピザの箱と、フライドポテトの箱二つ、フライドチキンのボックスが一つ。
見るだけで胸やけのしそうな一覧に、フサは目を丸くして驚いた。

ミ,,゚Д゚彡
「それ……全部食べるのか?」

从´ヮ`从ト
「あたし一人で食べきれる筈ないじゃないですか。
 旦那と分けるんですよ」

ミ,,゚Д゚彡
「俺はこれだけでいい」

从´ヮ`从ト
「旦那、血が不足しているんですよ?
 そう云う時は、兎に角食べて飲まなきゃ」

ミ,,゚Д゚彡
「血はやらんぞ」

从´ヮ`从ト
「旦那の体調を心配しているんですよ」

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 22:15:48.74 ID:uFuDZ2vN0
ミ,,゚Д゚彡
「……そうかい」

拒絶も受諾もせず、フサはさっさとピザを食べ始めた。
バジルの風味とチーズの風味が合わさって、得も言われぬ味となる。
チハルも目の前の箱からピザを取って、大きな口を開けて一口で食べた。
……フサの目がおかしくなければ、それは、四分の一の大きさのピザを折り曲げていた様にも見えた。

気を取り直し、ステーキにナイフの刃を入れ、一口大に切る。
クレソンと共に食べると、安い肉でも、それなりに感じるのは不思議だ。
気が付くと、グラスに赤ワインが注がれていた。
何時の間にやら、チハルがやったようだ。

家政婦やらハウスメイドとして働けば、それなりの稼ぎになるだろう、そんな事を、フサはライスを食べながら思った。
ピザを食べ、ワインを飲み、肉を頬張り、ライスを嚥下する。
十数年ぶりに卓を囲んで、他人と食事をした。
何だかんだで、フサはチハルの頼んだ物も全て平らげてしまった。

酒を飲んだ事により、心地の良い眠気が訪れた。

ミ,,゚Д゚彡
「ぬ……」

从´ヮ`从ト
「後片付けはしておきますから、眠っていいですよ」

こう言う時に限って、どうしてか、チハルの口調は優しげだった。
どうにも調子が狂ってしまう。
その言葉に甘んじるか、それとも、どうにか起き続けるか。
思案のしどころであった。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 22:20:05.27 ID:uFuDZ2vN0
从´ヮ`从ト
「ははぁ、旦那、泥棒とか追手の心配ですか?」

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

从´ヮ`从ト
「返事ぐらいしましょうよー」

無言で立ち上がり、フサはタンスに歩み寄った。
防虫剤の匂いが鼻に付く。
厚みのある服を数枚、上下とも取り出して、それをチハルに向けて放った。

从´ヮ`从ト
「あの……これは?」

ミ,,゚Д゚彡
「俺が寝ている間に、風邪を引かれると厄介だからな……」

从´ヮ`从ト
「おおぅ!! 旦那ぁ、あたしは嬉しいですよ!!
 やーっと、あたしの事を受け入れて下さるんで?」

ミ,,゚Д゚彡
「勘違いをするな、チハル」

不貞腐れたようにそう言って、フサは寝室に戻った。

从*´ヮ`*从ト
「…………名前……呼んでくれた……」

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 22:22:12.00 ID:uFuDZ2vN0
チハルの言葉は聞こえていたが、反応をしなかった。
ベッドの上で、ギコはゆっくりと眠りに落ちて行った。

* * *


ロシアン・マフィアの首領、アラマキ・チェブリコフは、葉巻をゆっくりと燻らせながら、ウォッカを口に運んだ。
不機嫌を前面に押し出し、昨夜の失態について考えを巡らせていた。
盗み屋の鮮やかな手際によって、強欲な美術館館長が廃棄と称して闇市場に流す前に、鋼鉄の処女心を盗み出す事に成功した。
事前にアラマキが警察に圧力を掛けていなければ、あの館長の事だ、軍隊でも連れて来ていたかもしれない。

それを考えれば、今の状況は悪くないと言える。
所詮相手は手負いの盗み屋、怖れる必要はない。
ライフル弾をまともに体に受けて、今頃、どこかのセーフハウスで野垂れ死んでいるかもしれなかった。
と云う事は、だ。

現状の問題点は、そのセーフハウスの場所の特定にある。
警察を動かせば、彫刻を盗ませた張本人として、アラマキはたちまち捕縛され、法の下に裁かれるだろう。
フサはそれが出来るだけの、それも、自分が事件に一切無関係である事を偽り得るに足る材料を持っている。
厄介極まりない人間を殺し損ねた事が、アラマキの悩みの種であった。

既に街中に部下を放って、その行方を探させているが、今のところ、アラマキの頭痛薬になりそうな報告はなかった。
――最低でも10億ドル以上の価値を持つ彫刻品。
ルハチ・ダヴィンチが晩年に製作されたとされる、非常に貴重な美術品の存在が公になる前に、現金に換える必要があった。
ロードンを根城にするマフィアは年々、その数を増やし、同時に、その勢力も比例して強大化している。

小さな組織は巨大な組織に吸収され、そうやって、このイルトリアの繁栄を象徴する霧の都は、裏側から蝕まれてゆくのだ。
生粋のロシア人であるアラマキにしてみれば、別に、ロードンがどうなろうが構わなかったが、困るのは、彼の取り分が減る事であった。
このまま時間が流れれば、彼の組織も、イルトリア系マフィアに取りこまれる事だろう。
金。兎に角、金が必要だった。

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 22:25:14.32 ID:uFuDZ2vN0
金は武器を、人材を、人脈を買える。

/ ,' 3

窓の外に視線を向ける。
空から降ってくる細かな雪。
風に舞う雪は、天使の羽を連想させる。
霧の都も、この季節ばかりは、白い雪が視界を染める。

ロードンの象徴、ビックベンの時針が、世界の時間が夕方の五時に近付いている事を、言葉もなく告げる。
日が経てば経つほど、逃亡者の捜索は困難を極める。
人は動き続ける生き物で、余程の事がない限り、逃亡者と云う生き物は総じて、同じ場所には留まろうとしない。
相手は盗み屋。仮にあの彫刻を持ってイルトリアを出れば、それなりの場所に持って行き、換金するのは間違いない。

ロードンから外に逃がすわけにはいかなかった。
部下にそう言い聞かせて、すでに18時間が経過していた。

/;,' 3
「……くそっ」

売り捌かれる事よりも、アラマキは有り得ない筈の可能性を怖れていた。
即ち、フサの報復である。
盛大に裏切った挙句、傷を負わせてしまったツケは、死で支払うしかない事を、アラマキはよく理解していた。
それを避けるためには、悩みの種を消すしかない。

/#,' 3
「呪われてしまえ、糞野郎がっ……!!」

苛立たしげな呪詛と共にグラスを呷ったが、中に一滴もウォッカが残っていない事に気が付き、叩きつけるようにして、机上に置いた。
結局その日、アラマキを喜ばせる様なニュースは入ってくる事はなかった。

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 22:28:12.85 ID:uFuDZ2vN0
* * *

午後六時を過ぎたあたりで、フサ・エクスプローラーの体内時計は起床を命じた。
起床できると言う事は生きていると言う事で、どうにか、フサは想像し得る最悪の展開を回避できた、と云う事である。
意識が覚醒し、真っ先に感じたのは、腕に感じる温もりだった。

ミ,,゚Д゚彡
「……何を、しているんだ、お前は?」

从-ヮ-从ト
「すぴー……」

猫のように背中を丸めて、だらしなく眠っているチハル。
その両手両足はフサの腕を挟み、あたかも、抱き枕の様にして抱え込んでいる。
服を着ているのが幸いだった。

ミ,,゚Д゚彡
「おい……」

从´ヮ`从ト
「……うへへへへ」

眠りながら笑う人間を初めて見たが、どうにも、不気味な物である。

ミ,,゚Д゚彡
「おい、起きろ」

ゆさゆさと肩を揺さぶるが、動じる気配はない。
頬を摘まんで引っ張る。
思いのほか、柔らかかった。

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 22:33:51.98 ID:uFuDZ2vN0
从´ヮ`从ト
「くぴ……」

ミ,,゚Д゚彡
「…………おい」

从´ヮ`从ト
「うぴゅー……」

ミ,,゚Д゚彡
「俺は枕じゃない」

从´ヮ`从ト
「うへへぇ……
 だんなぁ……お戯れを……」

ミ,,゚Д゚彡
「……お前、本当に寝てるんだよな?」

从´ヮ`从ト
「……みゅう……」

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

从-ヮ-从ト
「すぴー」

ミ,,゚Д゚彡
「…………晩飯、どうしたもんか」

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 22:36:14.87 ID:uFuDZ2vN0
从´ヮ`从ト
「……んー」

ミ,,゚Д゚彡
「……おい、今度は何だ?」

从´ヮ`从ト
「……うえっへ……へへ……」

ミ,,゚Д゚彡
「お次は何だ?
 …………おい、おい、おい!!」

腕と足を離そうとはせず、そのまま、木を登る芋虫のように体を動かし、フサの顔に迫る。

从´ヮ`从ト
「き……きしゅ……」

ミ;,,゚Д゚彡
「この……!!」

从´ヮ`从ト
「だ……んなぁ……」

ミ;,,゚Д゚彡
「顔を近づけるな!!
 目を覚ませ!! 起きろ、起きろ!!」

从´ヮ`从ト
「……むぎゅ」

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 22:39:15.90 ID:uFuDZ2vN0
空いた右手でチハルの顔を止める。

ミ;,,゚Д゚彡
「お前、起きてるんじゃないのか?
 なぁ、おい!?」

从´ヮ`从ト
「ぬ……ぐぐ……」

膂力にはそこそこ自信のあるフサであったが、眠れる凶悪兵器と化したチハルの勢いは、その力をあざ笑うかのようであった。

ミ;,,゚Д゚彡
「ぐっ……おおおお!!」

从´ヮ`从ト
「ぬー……」

ミ;,,゚Д゚彡
「この……!!」

このままだと押し負ける。
そう判断したフサは、枕元に置いてあった目覚まし時計をチハルの顔に押し付け、せめて、一瞬でも時間を稼ごうと試みる。

从´ヮ`从ト
「……ぎゅむぅ……」

メキメキと、手の中の目覚まし時計が悲鳴を上げる。
相手は仮にも摩訶不思議な金属生命体。
プラスチックと精々一部の鉄で作られた時計では、楯にすらならないと言う事か。


88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 22:44:18.68 ID:uFuDZ2vN0
ミ;,,゚Д゚彡
「この……やろ……!!」

从´ヮ`从ト
「ぐーむー……」

ミ,,゚Д゚彡
「よ……せぇ……!!」

从´ヮ`从ト
「ちゅー……しましょー……」

ミ,,゚Д゚彡
「手前絶対起きてるだろ!?」

从´ヮ`从ト
「すぴー」

ミ;,,゚Д゚彡
「嘘っぽく寝息を立てるな!! 離れろ!!」

从´ヮ`从ト
「いやーれーすー」

ミ;,,゚Д゚彡
「おおお?!」

遂に、手の中で目覚まし時計が砕けた。
チハルの額には傷一つない。
摩訶不思議生命体である事を受け入れるしかないと、ようやく、フサは納得せざるを得なかった。

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 22:51:09.86 ID:uFuDZ2vN0
ミ;,,゚Д゚彡
「……くそ!!
 ガラクタが、……役に立たん!!」

最後の手段として、フサは痛む腹に鞭を打って、チハルの頭を胸に抱き込んだ。
これで最悪の事態を回避できた。
新たな木を見つけたチハルの手足は、それ自体が別の生き物のように動き、フサの体に抱きついた。
そうして、ようやく、チハルは満足そうな寝息を立て始めた。

从´ヮ`从ト
「りゅー……」

ミ,,゚Д゚彡
「こいつは……」

あまりの身勝手さに、呆れてしまう。
しかし。
しかし。

从´ヮ`从ト
「うへ……」

ミ,,゚Д゚彡
「……まったく」

不思議と、悪い気はしなかった。
邪気のない存在に懐かれるのが久しぶりで、人と触れ合うのは、もっと久しぶりだった。
ようやく解放された手で抱き寄せ、右手で、髪を優しく撫でた。
詳しい理由はまた後で訊けばいい。


91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 22:54:12.46 ID:uFuDZ2vN0
今は、この傷を癒す事を考え、その後で復讐を果たす。

ミ,,゚Д゚彡
「……しっかし、腹、減ったなぁ……」

チハルが離れない事には、ベッドから降りられない。
このまま立てば、間違いなく、腹の傷が悪化する。

从´ヮ`从ト
「あ、ご飯にします?」

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

从´ヮ`从ト
「おろ? どうしたんです、そんな顔して?」

ミ,,゚Д゚彡
「起きてたのか」

从´ヮ`从ト
「さ~て、今晩のご飯はどうしましょうかー」

ミ,,゚Д゚彡
「おいこら」

从´ヮ`从ト
「またピザ屋ですか?」


94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 23:00:50.77 ID:uFuDZ2vN0
ミ,,゚Д゚彡
「おいってば」

从´ヮ`从ト
「らんらんる~♪」

奇妙な歌を歌いながら、チハルは寝室を出て行った。

ミ,,゚Д゚彡
「……なんてやつ」

もう一度、フサは呟いた。

ミ,,゚Д゚彡
「……なんてやつだ」

そうして――

从´ヮ`从ト
「はい、頼んでおきましたよ」

ミ,,゚Д゚彡
「……お前の適応能力はSだな」

――机の上に並んだ料理の数々を見て、フサは呆れた風に言った。

从´ヮ`从ト
「うえっへっへ。旦那、そりゃああたしは、見ての通り要領の良い女ですから」


95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 23:05:37.11 ID:uFuDZ2vN0
ミ,,゚Д゚彡
「そうだな……」

特に、ちゃっかり服を着替えている辺り。

从´ヮ`从ト
「あれ? 旦那が優しい?
 これはフラグ? 怪異のフラグメント?」

ミ,,゚Д゚彡
「いいから黙って食え」

从´ヮ`从ト
「あいさー、旦那」

ミ,,゚Д゚彡
「……それと」

从´ヮ`从ト
「ふぁい?」

ミ;,,゚Д゚彡
「サラダを一皿口に突っ込んで喋るな!!
 アスパラが飛び出てる!!」

从´ヮ`从ト
「……んく。 はい?」

ミ,,゚Д゚彡
「……不本意だが、お前の存在を認めてやる」

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 23:08:59.56 ID:uFuDZ2vN0
从´ヮ`从ト
「ありゃ、これは意外ですねぇ。
 旦那の攻略にはもっと時間がかかるかと……」

ミ,,゚Д゚彡
「不 本 意 と言っただろ」

从´ヮ`从ト
「うーむ、これでルート確定ですか。
 会話の選択肢にミスはなかった、と。
 ……めもめも」

ミ,,゚Д゚彡
「人の話を聞けぇ!!」

从´ヮ`从ト
「旦那、テンション高いですよ?」

ミ,,゚Д゚彡
「誰のせいだ、誰の!!」

从´ヮ`从ト
「あの女ぁ……!!」

ミ,,゚Д゚彡
「誰だよ、女って、誰だよ!!」

从´ヮ`从ト
「ふぅむ、ノリノリですねぇ。
 これなら、傷も早く回復しますよ」

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 23:11:36.74 ID:uFuDZ2vN0
シーフードピザを取りながら、チハルはそんな事を言った。
相変わらず、調子が狂わされる。

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

从´ヮ`从ト
「……くもくも」

早くも一箱ピザを平らげ、新たな箱に手を伸ばしている。
小さい体の何処にそれだけのスペースと食欲が隠されているのか、フサは少し、気になった。
気を取り直して食事に戻り、フサもチリペッパーの良く効いたピザを租借し、ワインでそれを飲み下した。
今は食べて、飲んで、寝るだけだ。

今頃、アラマキは追手を野に放っているだろうが、生憎と、交友関係皆無のフサの在り処を知る者は、ロードンには一人もいない。
一週間なら、どうにか隠れ続ける事が出来るだろう。
問題点を挙げるとすれば、食糧と衣服、医療品の備蓄が殆どない事だ。
チハルに買い出しに行かせたいところだが、奇妙な制約のせいで離れて行動が出来ない。

となると、やはり、一週間は出前の生活だ。
だが、出前には危険が伴う。
顔を見られるし、声も聞かれる。
チハルに頼むのは癪だったが、この際、贅沢は言ってられない。

ミ,,゚Д゚彡
「おい、チハル」

从´ヮ`从ト
「ふぉい?」


100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 23:14:39.36 ID:uFuDZ2vN0
ミ,,゚Д゚彡
「…………ピザを口いっぱいに頬張るな」

从´ヮ`从ト
「改まってどうしたんです、旦那?」

ミ,,゚Д゚彡
「暫くの間、食事とかの世話を頼まれてくれないか?」

从´ヮ`从ト
「ほっほう、ほっほっほう!!
 旦那、あたしの事信頼して下さるんで?」

ミ,,゚Д゚彡
「……まぁな」

从´ヮ`从ト
「いいのかい、そんなにフォイフォイ信じて?」

ミ,,゚Д゚彡
「ナイフで遊ぶな」

从´ヮ`从ト
「旦那ぁ、あたしは旦那の所有物もとい、旦那の血を分けた年頃のイケイケの娘さんですぜ?
 上の世話から下の世話まで、なんなら、……あの、夜の……お世話なんか……しちゃったりして」

ミ,,゚Д゚彡
「だから照れるなら最初から言うなよ」


101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 23:19:30.76 ID:uFuDZ2vN0
从´ヮ`从ト
「承知しました」

ミ,,゚Д゚彡
「……似合わんな」

从´ヮ`从ト
「むぅぅ……
 旦那は注文が多いですねぇ」

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

从´ヮ`从ト
「とりあえず、家事程度ならお任せください。
 追手の人に気取られたくないんですよね?」

鋭い。
何だかんだ言って、チハルと云う人物は、抜け目のない性格をしているらしい。
先程の痴態について、フサは触れるのを諦め、永遠に忘却し続ける事にした。

ミ,,゚Д゚彡
「……何か危ないと思ったら、逃げ――」

从´ヮ`从ト
「旦那、言ったでしょう?
 あたしはね、旦那の傍から離れたら、あの糞つまらない彫刻になってしまうんですよ」

ミ,,゚Д゚彡
「……そうか」

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 23:22:49.78 ID:uFuDZ2vN0
从´ヮ`从ト
「それに、旦那の傍は居心地がいいんで、離れるのは惜しいです」

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

从´ヮ`从ト
「ねぇ、旦那」

ミ,,゚Д゚彡
「……なんだ?」

从´ヮ`从ト
「旦那はどうして、そんなに無愛想なんですか?」

ミ,,゚Д゚彡
「失礼って言葉の意味を辞書で調べた事はないか?」

从´ヮ`从ト
「無愛想のレベルがあれなんですもん。
 心の病気ですか?」

ミ,,゚Д゚彡
「……敬うと云う意味も辞書で調べた方がいいな」

从´ヮ`从ト
「盗み屋で、その年になるまでに恋人はゼロ。
 趣味は読書と映画鑑賞。
 最早無趣味ですよ、それ」

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 23:27:04.21 ID:uFuDZ2vN0
ミ,,゚Д゚彡
「訊きたいのか馬鹿にしたいのか……
 ……って、どうしてその事を知ってる?」

从´ヮ`从ト
「あぁ、旦那の近くにいたもんで、ちょっとばかり情報が入って来たんですよ」

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

从´ヮ`从ト
「ただね、いまいち分からない事がありまして。
 昔はもっと違ったのに」

和やかな空気が、一気に冷めたのが分かった。
触れて欲しくない過去は、誰にでもある。
人と接する事を止め、ロードンに渡って来たフサの過去も、その部類の話だった。

ミ,,゚Д゚彡
「…………言う必要があるか?」

从´ヮ`从ト
「いいえ、ありませんよ、旦那。
 ただの好奇心です」

ミ,,゚Д゚彡
「……さっさと飯を食え」

从´ヮ`从ト
「旦那も、たらふく食べて下さいよ」

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 23:32:58.98 ID:uFuDZ2vN0
意固地になって、フサは残ったピザとサラダ、ワインを全て一人で処理して、ゴミを袋に詰めた。
グラスはチハルが洗い、いつの間にか掃除を終えた食器棚に、逆さにして置いた。
着替えの少なさと選択の頻度を考えると、シャワーを浴びるのは些か気が引けた。
しかし、汗を流し、傷口を確認する上でもシャワーは大切だ。

从´ヮ`从ト
「あ、旦那。
 お風呂、沸かしておきましたよ。
 いやー、電気もガスも生きていて良かったですねぇ」

全く持ってその通りである。
問題は別にあった。

ミ,,゚Д゚彡
「…………何故、お前が脱衣所にいる」

从´ヮ`从ト
「いやだなぁ、旦那。
 服を脱ぐ為に決まってるじゃないっすか。
 脱衣所はそう云う場所ですよ」

ミ,,゚Д゚彡
「誰が脱衣所の意味を訊いた?
 お前は後だ。
 ほら、しっしっ」

从´ヮ`从ト
「そんな事言わずに、ほら、旦那。
 脱ぎ脱ぎしましょう。
 あ、なんなら手伝いましょうか?」

109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/16(日) 23:36:37.96 ID:uFuDZ2vN0
ミ;,,゚Д゚彡
「やめろ!! ズボンに手をかけるな!!」

从´ヮ`从ト
「あら? 旦那の腕から……
 雌の匂いが……」

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

从´ヮ`从ト
「むむっ……あたしの知らぬ間に、女を連れ込んだのでは……」

どうやら、チハルにはあの時の記憶が無いらしい。
幸いだ。
これで安心して忘却できる。
頭の中の忘却炉に、忌まわしい記憶を放り込んだ。

从´ヮ`从ト
「まぁいいや。
 旦那、さぁ、風呂に入りましょう」

ミ,,゚Д゚彡
「あのなぁ……」

从´ヮ`从ト
「怪我をしているんですから、洗えない場所、ありますよね?」

否定できない。


116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 00:03:37.23 ID:qxv1EXck0
ミ,,゚Д゚彡
「……いいか、体を洗う以外、妙な真似をして見ろ。
 尻叩きだけじゃ済まないぞ」

从´ヮ`从ト
「いやん、旦那、あたしにスパンキングの趣味はありませんで」

ミ,,゚Д゚彡
「……この淫乱め」

从´ヮ`从ト
「まぁまぁ。
 映画だと、こう言う時におにゃのこが一人っきりになると、大概、変な事件に巻き込まれたり、何か見ちゃいけない物を見ちゃったりするんですよ」

ミ,,゚Д゚彡
「お前……ひょっとして、恐いのか?」

ビクリ、とチハルが動きを止めた。

从´ヮ`从ト
「ははっ、ま、まっさかぁ~」

ミ,,゚Д゚彡
「ほほぅ」

从´ヮ`从ト
「……だんなぁ」

くい、と服の袖を摘まむチハルは、まるで怯えた子供だ。


118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 00:06:50.89 ID:qxv1EXck0
ミ,,゚Д゚彡
「……約束できるか?」

从´ヮ`从ト
「…………」

ミ,,゚Д゚彡
「風呂場では変な事を一切しないと、約束しろ」

从´ヮ`从ト
「……善処します」

ミ,,゚Д゚彡
「分かればいい」

ぽん、とチハルの小さな頭に手を乗せて、フサはかき回す様に乱暴に撫でた。
目を細めてそれを気持ちよさそうに受け入れ、チハルは微笑んだ。

从´ヮ`从ト
「旦那の手……ゴツゴツしてますね」

ミ,,゚Д゚彡
「不器用なだけだ」

服を脱ぐ間、チハルは言いつけ通り、目を手で覆っていた。
指の間が微妙に空いている事は、もう、指摘するつもりになれなかった。
タオルで前を隠して、フサは浴室に入った。
後に続いて、チハルもタオルを巻いて浴室に入る。

シャワーを使い、全身に熱い湯を浴びせかける。

119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 00:10:15.29 ID:qxv1EXck0
ミ,,゚Д゚彡
「……背中を流してくれ」

从´ヮ`从ト
「あい、旦那」

新品の石鹸とボディタオルを使って、チハルがフサの背中を擦り始めた。
中々の力加減だ。

从´ヮ`从ト
「どうですか、旦那?」

ミ,,゚Д゚彡
「悪くない」

从´ヮ`从ト
「旦那の背中、傷だらけですね。
 うへぇっ、でっかい痣もありますよ」

ミ,,゚Д゚彡
「逃げてばかりだからなっ……」

傷口に泡が染みる。
事前に熱湯で、ある程度麻痺させておいて正解だった。

ミ,,゚Д゚彡
「傷の辺りは丁寧に頼む」

从´ヮ`从ト
「あいさー」

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 00:14:40.96 ID:qxv1EXck0
しばしの無言。
背中を擦る音だけが、浴室に響く。

ミ,,゚Д゚彡
「……お前は」

从´ヮ`从ト
「あい?」

ミ,,゚Д゚彡
「彫刻の間の記憶があるのか?」

从´ヮ`从ト
「作られた瞬間から、あたしはずーっと覚えていますよ。
 製作者の顔も、声も、手つきも、ぜーんぶ」

ミ,,゚Д゚彡
「これまでに受肉をした事はなかったのか?」

从´ヮ`从ト
「えぇ、随分と長い間、地下に置かれて……
 色んなところを転々として、旦那が初めての人ですよ、あたしにとっての」

ミ,,゚Д゚彡
「……もう少し、まともな人間の方が良かっただろうに」

手を動かしながら、チハルは言った。


123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 00:17:48.83 ID:qxv1EXck0
从´ヮ`从ト
「いやぁ、旦那の様な面白い人が初めてで良かったですよ。
 何せ、一度受肉したら、他の人は受け入れられないんですから。
 これが汗くっさい、ブヨブヨのおっさんだった日には、あたしはどうなっていたことやら。
 レーベルが違いますよ」

ミ,,゚Д゚彡
「俺がいい人だって証拠はないだろ?」

くすり、と笑い声が聞こえた気がした。

从´ヮ`从ト
「男は背中で語るもんですよ」

ミ,,゚Д゚彡
「……渋い考え方だな」

从´ヮ`从ト
「あたしなりの人生観ですよ、旦那」

耳の後ろまで丁寧に洗いながらも、チハルの力加減は絶妙だった。

ミ,,゚Д゚彡
「……まぁいい」

从´ヮ`从ト
「うぃ……っと
 旦那、後ろ、終わりましたぜ」


124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 00:21:10.64 ID:qxv1EXck0
ミ,,゚Д゚彡
「あ、あぁ。ありがとう。
 そら、さっさと……」

从´ヮ`从ト
「前ですね」

ミ,,゚Д゚彡
「……腕だ、腕を洗ってくれ」

从´ヮ`从ト
「ちっ」

横に移動し、チハルが腕を洗う。

ミ,,゚Д゚彡
「……念入りにな」

从´ヮ`从ト
「はいな」

肩から指先まで、念入りに擦る。
脇の下、肋骨と洗い、首の下も念入りに洗ってから、チハルがシャワーを取った。

从´ヮ`从ト
「一旦すすぎますよ、旦那」

ミ,,゚Д゚彡
「あぁ、頼む」


126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 00:25:29.35 ID:qxv1EXck0
背面と腕から泡が流れ落ちる。
首の下の泡も流し、残るは前面と足のみとなった。

从´ヮ`从ト
「さぁ、旦那。 お風呂イベントのCGを回収するのは今ですよ。
 今がその時ですよ!!」

ミ,,゚Д゚彡
「異次元的な話を興奮気味にするんじゃない」

从*´ヮ`*从ト
「まさか……!! 脚の指舐めを希望しますかっ?!
 旦那にそんなアブノーマルな趣味があるなんてっ!!
 恐ろしい人っ!!」

ミ,,゚Д゚彡
「……お前と話すと、どうして最終的には俺が疲れるんだ?
 なんか不公平な気がしてならない」

从´ヮ`从ト
「んー、どうして旦那はそっち方面に行こうとすると、途端に冷たくなるんでしょうか?
 ……不能な上にポークビッツとか? 5クリックで果てるとか?」

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

从´ヮ`从ト
「やべぇ、あたし、地雷踏んじゃった?!
 こんな斬新な人、今までに見たことないですよっ!!
 うっへぇ、フォローのしようがない!!」

129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 00:29:23.52 ID:qxv1EXck0
ミ;,,゚Д゚彡
「お前な、いいか、この際ハッキリ言っておく。
 俺は不能でもポークビッツでも異常性癖者でもない。
 ……気になるなら、さっさと前を洗えばいいだろう」

从´ヮ`从ト
「??」

釈然としないまま、チハルは厚い胸板や腹筋を洗い、タオル一枚で隠してあった股間を覗き見た。
息を飲む音が聞こえた。

从;´ヮ`从ト
「……なん……だ……と」

ミ,,゚Д゚彡
「……マジマジと見るんじゃない」

从;´ヮ`从ト
「え……だって……旦那、これ……」

チハルの声が上擦る。
未知の恐怖。
想定外の存在。

ミ,,゚Д゚彡
「…………」

从;´ヮ`从ト
「……人殺せますよ、これで。 バリバリって、いや、ほんと。
 引き裂かれますって。 フランクフルトよりも太ましいって、えぇ……」

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 00:32:37.26 ID:qxv1EXck0
ミ,,゚Д゚彡「もう良いだろ?」

从;´ヮ`从ト「平常時で既に凶器っ……!!
 緊急事態を想定し、推察すると……
 ……もう、それは兵器っ……!!」

ミ;,,゚Д゚彡「人の股間に向かって何を話しかけているんだ、お前は!!」

从;´ヮ`从ト「うはぁ……
      予想される最大時の太さは……
      腕並み……やべぇっ……!!
      血管がこれまた……恐ろしあ……」

ミ;,,゚Д゚彡「……ぬぇい!!」

タオルで強引に隠し、チハルを引き離した。

ミ,,゚Д゚彡「……もう満足しただろ。
     ほら、さっさと先に出て行ってくれ」

从´ヮ`从ト「ちょっ……!!
      後学の為に、まだ見てるんですってば!!
      標本にするか、剥製にするか……」

ミ;,,゚Д゚彡「よせ、そんな目でこいつを見るんじゃない!!
     こいつは見世物じゃないんだ!!
     生き物なんだぞ!!」


132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 00:35:28.14 ID:qxv1EXck0
从´ヮ`从ト「とりあえずギネスに申請しましょうよ!!
      行けますって、この子なら!!
      フィストレベルになる天然モノなんて、そうそうありませんよ!!
      ラスプーチンも自信喪失しますよ!!

      いや、軟骨唐揚げさんだってスケッチするレベルですよ!!」

ミ;,,゚Д゚彡「ふざけるな!!
      第一、誰だ!? 軟骨唐揚げって!!」

从´ヮ`从ト「こう、らめぇ……って、世界基準の言葉を作った人でして」

ミ;,,゚Д゚彡「さっさと出て行けぇ!!」

从´ヮ`从ト「と言っても旦那、まだその子と脚を洗っていませんよ?」

肝心な部分。
傷口を刺激しないで洗う事は困難な場所を、チハルは、残しておいたのである。
迂闊。
あまりにも迂闊だった。

ミ,,゚Д゚彡「……今日は諦める」

从´ヮ`从ト「いやぁ、旦那。そのクリスタルボーイは洗わないと。
      兵器は日々のメンテナンスが命なんですよ?」

ミ;,,゚Д゚彡「クリスタルボーイでも兵器でもねぇよ!!
      メンテぐらい自分でする!!」

从´ヮ`从ト「むぅぅ……!! 旦那は頑固ですねぇ」

138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 01:03:06.05 ID:qxv1EXck0
ミ;,,゚Д゚彡「誰のせいだと思ってる、誰の!!」

从´ヮ`从ト「ちぇー」

ようやく諦めたのか、チハルは股間を避けて、脚を洗い始めた。
頑固なのか柔軟性に富んでいるのか、実に奇妙な性格をしている。
ともあれ、変な気を起こされるとフサが困る。
所詮、自分は泥棒で人殺し。

世間一般に言うロクデナシの部類に入り、温もりを与えられるような人間ではない。

从´ヮ`从ト「だんなー」

ミ,,゚Д゚彡「なんだ」

从´ヮ`从ト「頭、洗ってもいいですか?」

ミ,,゚Д゚彡「……それぐらい、自分でできる」

从´ヮ`从ト「怪我してるんですから、まぁ、下のクリスタルボーイはまた今度するとしても、頭ぐらいは、あたしが洗いますって」

ミ,,゚Д゚彡「断る。お前の事だ、どうせまた、変な事をやりはじめるんだろう?」

从´ヮ`从ト「ひっでぇ!! 旦那、あたしは仮にも女の子。
      そうやすやすと体を差し出す様な阿婆擦れに見えますか?」

ミ,,゚Д゚彡「既にそれ紛いの事をしているからな、信用はゼロだ」

从´ヮ`从ト「まぁまぁ。女の子の夢の中に、男の人の頭を洗うって云うのがエントリーしているんですよ」


140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 01:08:54.88 ID:qxv1EXck0
ミ,,゚Д゚彡「だから?」

从´ヮ`从ト「もぅ、旦那、そうやって気付かないフリをするのは流行りませんよ。鈍感系主人公の時代は、もう終わりを告げたのです。
      これからはハードボイルド系の時代。
      つまり、旦那の時代が到来するのですよ、旦那」

ミ,,゚Д゚彡「だからお前は何を言っているんだ?」

从´ヮ`从ト「言い付け通り、現にあたしは変な事をしていないじゃないですか。
      さぁ、旦那。あたしに身を任せて」

ミ,,゚Д゚彡「…………」

そろそろ、フサは限界だった。

从´ヮ`从ト「ヘイヘイ、旦那!!」

ミ,,゚Д゚彡「……俺にかまっても、何もないぞ?」

从´ヮ`从ト「へ?」

虚をつかれたのか、奇妙な鳴き声を上げる。

ミ,,゚Д゚彡「目的は何だ?」

これ以上、チハルの温もりを感じていたら、自分がどうなるか、フサには分からなかった。

从´ヮ`从ト「あー、旦那?
      言っての通り、あたしは旦那の所有物なわけで。
      何かしていないと落ち着かないわけでして」

142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 01:14:00.30 ID:qxv1EXck0
気まずそうな口調で、チハルがそう言った。

ミ,,゚Д゚彡「俺はただの泥棒で、人殺しだ。
      ロクデナシの俺に何を求めているかは知らないが、これ以上、俺に慣れ慣れしくしないでくれ」

フサは意図的にすごみ、チハルが自分を怖れるように仕向けた。
こうでもしないと、チハルはフサの領域に入って来てしまう。

从´ヮ`从ト「まぁ、旦那が本気でそう言うのなら従いますけれども、旦那、あたしは旦那から離れると彫刻に戻ってしまうんですよ。
      強いて言うのなら、旦那に置いて行かれたくないってことでして」

ミ,,゚Д゚彡「そんな事は知らん。
      俺はさっさと傷を直して、やる事をやるだけだ」

从´ヮ`从ト「……旦那、どうして死に急いでいるんですか?」

ミ,,゚Д゚彡「何の話だ?」

从´ヮ`从ト「分かりますって、旦那の考えている事。
      何せあたしは旦那の血を引いているんです。
      こうして怒っているのも、結局、恐いんですよね?
      巻き込む事が」

何を。
何を、知ったのだ?
チハルの声は妙に落ち着いていて、達観した雰囲気があった。
フサを見上げる目は、ぶれることなく、真っ直ぐに、フサの瞳を見つめている。

ミ,,゚Д゚彡「……煩い」


144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 01:18:12.57 ID:qxv1EXck0
从´ヮ`从ト「旦那、あたしは人間じゃありません。 ただの、彫刻品です」

ミ,,゚Д゚彡「……煩いと言っているだろ」

从´ヮ`从ト「傷つく事も、死ぬこともありません。
      巻き込まれる事があるとしたら、それは、旦那が傷付けられる時だけです。
      旦那なくして、あたしはあたしでいられませんから」

ミ,,゚Д゚彡「…………」

从´ヮ`从ト「だから、旦那には無茶をしてほしくないし、苦しんでほしくもないんですよ。
      旦那が苦しいとあたしも苦しいんですよ」

フサは何も言い返せなかった。
そうだ。
チハルは、人間ではない。
人の形をしただけの、お喋りでお節介な彫刻。

〝あの時〟とは、違うのだ。

ミ,,゚Д゚彡「…………」

从´ヮ`从ト「シリアスなんて止めましょうぜ、旦那。
      兎に角、今は体を治す事に集中してください。 ね?」

ミ,,゚Д゚彡「……はぁ」

もう、溜息を吐くしかない。
感情的になっているのはフサだけ。
そう思うと、何だが馬鹿らしく思えてしまう。

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 01:22:13.67 ID:qxv1EXck0
ミ,,゚Д゚彡「……さっさとやってくれ」

从´ヮ`从ト「そうこなくっちゃ」

チハルはそそくさと後ろに周り、フサの髪を濡らし、シャンプー頭に垂らす。
指を立てて、頭皮をマッサージするようにして、チハルは丁寧に、ゆっくりと、優しく洗い始めた。
時々、背中に当たるチハルの胸は、タオル越しにも温かさが伝わった。

从´ヮ`从ト「だんな~の頭皮は良い頭皮~♪
      白髪だ~、白髪だ~♪」

愉快な歌を歌い始めるチハル。

从´ヮ`从ト「ごね~ん経ったらもっとしろい~♪
      白髪だ~、白髪だ~♪
      もっもう、もっもう、だんなの頭皮♪
      もっもう、もっもう、だんなの頭皮♪
      あたしが、明日も、明後日も~♪
      あたしがもっもう、だんなの頭皮、へいっ♪」

スリスリと、背中の胸が上下する。
タオルがずれて行くのが、フサにも分かる。
本人は気付いていないのか、頭皮に関する歌を歌いながら、わしゃわしゃと頭全体に指を這わせる。

从´ヮ`从ト「じゅうね~ん経ったら禿げるかなっ♪
      びみょうだ~、びみょうだ~♪
      にじゅうね~ん経ったら禿げるかなっ♪
      きついぞ~、きついぞ~♪」

ミ,,゚Д゚彡「……止めてくれ」

147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 01:28:48.53 ID:qxv1EXck0
从´ヮ`从ト「旦那、禿って云うのは仕方のない事なんですよ」

ミ,,゚Д゚彡「同情的な声をかけるんじゃない。
      まだだ、まだ、俺は禿ないはずだ」

从´ヮ`从ト「旦那はきっと、禿ても格好いいですから、変な心配しなくても大丈夫ですよ」

ミ,,゚Д゚彡「……ブルース・ヴィリスみたいにか?」

从´ヮ`从ト「いえいえ、ニコラス・ケージみたいな」

ミ,,゚Д゚彡「あれは、世間一般ではみっともない禿と言うんだ。
     出来れば、Jソン・ステイサムみたいな頭に……」

从´ヮ`从ト「現実頭皮ってやつですね!!
 意外!! それは髪の毛ッ!!」

ミ,,゚Д゚彡「……早いとこ終わらせてくれ。
      このままだと風邪をひく」

从´ヮ`从ト「んふふ。
      りょーかいです、旦那」

髪に残ったシャンプーを洗い流し、チハルの小さくて細い指が、漉く様にして髪を梳く。
最後に前髪を全て後ろに上げ、洗髪が終わった。

ミ,,゚Д゚彡「……ここまででいい」

从´ヮ`从ト「あい」


151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 01:38:00.95 ID:qxv1EXck0
湯船に浸かると、体中の疲れが染み出しているかのような、そんな、心地の良い錯覚を抱く。

从´ヮ`从ト「ふひー、生き返りますねぇ、旦那」

ミ,,゚Д゚彡「……何故お前まで湯船に浸かってるんだ?」

しかも、タオルも無しで。
確かにそれがマナーではあるが、しかし、それは。

从´ヮ`从ト「はい?」

ミ,,゚Д゚彡「不思議そうに首を傾げられても俺が困る」

よりにもよって、正面。
覗き込むように見上げるチハルとの距離は、限りなくゼロ。
胸板に押し付けられる柔らかな胸。
腰の上に跨ったチハルの吐息、瞬きの音さえ、フサには聞こえるほどであった。

ミ,,゚Д゚彡「第一、お前は鉄だろ?
      錆びるんじゃないのか?」

チハルはちっちと、指を振った。

从´ヮ`从ト「だんなぁ、この状態の時のあたしは、言わば無敵モード。
      錆なんぞ、無縁の存在なんですよ」

ミ,,゚Д゚彡「……だからって、俺と一緒に風呂に入る意味が分からん」

从´ヮ`从ト「あー、っとですねぇ……
      実を言いますと、あたしと旦那は血で繋がっている訳で、その……ですね」

152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 01:42:26.37 ID:qxv1EXck0
ミ,,゚Д゚彡「何だ?」

从´ヮ`从ト「こうしてひっついてると、旦那の傷が早く治るんですよ、すっかり言い忘れていましたけど、てへっ」

ミ,,゚Д゚彡「そんな馬鹿な」

从´ヮ`从ト「いやいや、これが本当なんですって。
      あたしの愛のパゥワーが、旦那の回復力を高めるんです」

ミ,,゚Д゚彡「ほほぅ」

ガッ、と右手でチハルの顔を正面から掴む。

从;´ヮ`从ト「おおお?! アイアンクロー!!
      さっすがぁ、あたしが鉄だからアイアンクローとは、こんな時でもお茶目な旦那って素敵!! 抱いてっ!!」

ミ,,゚Д゚彡「そんなわけがあるか」

从;´ヮ`从ト「明日になれば分かりますって、いや、ほんとっ!!」

ミ,,゚Д゚彡「それは興味深い話しだ」

从;´ヮ`从ト「でしょ、そうでしょ?!
      だからとりあえずその手をおおおお!!
      前が、旦那が見えぬぅっ!!」

ミ,,゚Д゚彡「見なくて結構だ」

从;´ヮ`从ト「ビックマグナムを感じながらも、旦那を見れぬとわっ!!
      生殺しっ……!! 生殺しだあっ……!!」

154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 01:48:11.13 ID:qxv1EXck0
ミ;,,゚Д゚彡「暴れるな、暴れるんじゃない!!」

触れる。
フサのそれに、チハルの柔らかな感触が。

从;´ヮ`从ト「だんなぁ、後生ですから、後生ですからぁ!!」

ミ,,゚Д゚彡「油断するとすぐこれだ……!!
      この野郎っ……!!」

幸か不幸か。
濡れていたフサの手では、滑らかなチハルの肌を完全に押さえこむには至らず、また、チハルの途轍もない力を抑圧していた手が外れれば、その体が勢いよく動くのは必然。
それを予期せず、ただ力任せに抑えていたフサの行いは、この時ばかりは、誤りであると言わざるを得なかった。

从;´ヮ`从ト「ほぅわっ……むゅ?!」

ミ;,,゚Д゚彡「むぐっ?!」

ただでさえ至近距離にあった二人の唇が、勢いよくぶつかりあった。
加えて幸か不幸か、チハルとフサの双方ともが口を開いており、何か言葉を発しようとしていた為、口内の舌は浮き上がっていた。

从*´ヮ`*从ト「んぐっ……
      は……むっ……」

ミ;,,゚Д゚彡「~~っ?!」

从*´ヮ`*从ト「んく…………んじゅ……」

とろんとした表情のまま、チハルはフサの唇を貪る。
舌を絡め、唾液を強制的に交換し、情熱的なキスの雨を降らせる。

157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 01:53:24.90 ID:qxv1EXck0
从*´ヮ`*从ト「ちゅ……ん……ぐ……
      あふ…… ぷぁっ」

舌舐めずりをして唇を離したチハルの顔は、心なしか、艶やかになっていた。

ミ;,,゚Д゚彡「…………」

从*´ヮ`*从ト「へっへっへ……
      またまたやらしていただきましたぁん!!」

と、チハルは小さくガッツポーズ。

ミ;,,゚Д゚彡「……こ……の……」

从´ヮ`从ト「あい?」

ミ;,,゚Д゚彡「この色情魔がっ!!」

从´ヮ`从ト「だんなぁ、イタリアじゃあ、キスなんて挨拶ですよ」

ミ,,゚Д゚彡「お前のはフランスのそれだ!!」

从´ヮ`从ト「これで旦那は元気ハツラツに……っ?」

気付かれた。
観念した風に、フサは浴室の天井を仰ぎ見て、ガッデムとつぶやいた。


159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 02:01:00.36 ID:qxv1EXck0
从;´ヮ`从ト「ありゃ……りゃ……
      あ、あああ、あたしのおおおお、お尻に……!!
      ふふ、太くて、か、硬くて、でっかいのがっ……!!
      ひょ、うひょおおおおおぉぉい!!
      おおおお、お目覚めになられた!!
      ウェイクアップ・ダンディいいいいー!!」

ミ;,,゚Д゚彡「落ち着け、頼むから、落ち着いてくれ……」

从´ヮ`从ト「やべぇ……真剣(マジ)でフィストレベルだ……」

ミ;,,゚Д゚彡「よせ、みるなぁぁぁ!!」

从´ヮ`从ト「うおっ、ビクってなった……」

ミ;,,゚Д゚彡「止めろよ、触るなよ、絶対に触るなよ!!」

从´ヮ`从ト「ぴょっ……!!」

指が亀頭に触れた。

ミ;,,゚Д゚彡「ぐっ……!?」

从´ヮ`从ト「おおっ、おおおおっ!!」

不器用さがかえって仇となり、ただそれだけの行為で、フサは手綱を握られた様な物だった。

从;´ヮ`从ト「ふぉおおお……!!
      動く……
      この子、動くぞ!!」

161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 02:07:06.32 ID:qxv1EXck0
指先が動く。
背筋に、電気が走る様な錯覚。

ミ;,,゚Д゚彡「よせっ……!!
      このっ……!!」

油断していた。
己の迂闊さを呪う一方で、フサはチハルの行動の裏、その理由を考えた。

从´ヮ`从ト「さ、さささ、触ってもいいいですか?
      いいですね?
      触っちゃいまっふうぅぅぅ!!」

ミ,,゚Д゚彡「ぬんっ!!」

そうはさせじと、フサの手がチハルの腕を掴む。
危うく、チハルの手に堕ちるところであった。
ワキワキと指が動くせいで発生した水流が、敏感になった亀頭に刺激を与え続ける。

ミ,,゚Д゚彡「さぁ、もう終わりだ。
      風呂から出ろ」

从´ヮ`从ト「だんなぁ、一度でいいですからぁ」

ミ,,゚Д゚彡「何故貴様は事ある度に俺のナニを狙うんだ?!」

从´ヮ`从ト「ほら、この場所」

ミ,,゚Д゚彡「あ?」


163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 02:13:01.47 ID:qxv1EXck0
从´ヮ`从ト「浴場で、欲情……」

ミ,,゚Д゚彡「聞いた俺がバカだった!!」

从;´ヮ`从ト「ちょっとー!!
      空いた手でもう片方の手を掴んで、さり気無く固め技に入ろうとしている、細やかな配慮も忘れない素敵なだんなぁー!!
      話を聞いて下さいー!! 抱いてー!!」

ミ,,゚Д゚彡「御希望通りに抱いてやってるだろうが!!」

从´ヮ`从ト「だんなぁ、ロマンが足りませんよ、ロマンが」

真顔ですっぱりと言い切られた。

从´ヮ`从ト「ほらぁ、だんなぁ、もっとこう……
      恋人にする様にいやらしくですねぇ……」

ミ,,゚Д゚彡「お断りだ!!」

从´ヮ`从ト「こりゃあ、自力攻略は難しいですねぇ……
      後でツンデレ旦那のまとめwikiでも見るか……」

ミ,,゚Д゚彡「んなもんあるか!!」

从´ヮ`从ト「えー? 旦那、今の時代、色んなwikiがありましてね……」

ミ,,゚Д゚彡「……お前本当はこの時代の作品だろ?」

从´ヮ`从ト「由緒正しき昔の品ですよ。
      何せあたし、製作者の腕が良いのか頭がいいのか、この時代であたしの知らない物なんて、旦那ぐらいしかありませんもん」

165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 02:18:29.44 ID:qxv1EXck0
ミ,,゚Д゚彡「ほほぅ、それは面白い」

从´ヮ`从ト「円周率も空で言えますよ」

ミ,,゚Д゚彡「もっと役に立つ知識を披露してくれ」

从´ヮ`从ト「食べ合わせってあるじゃないですか?
      あれって、あまり当てにならないんですよ」

ミ;,,゚Д゚彡「えぇい、無駄知識ばかり披露するなら、さっさとその手を止めて、風呂から出ろ!!」

从´ヮ`从ト「いやー、どうしても見たいんですよ」

ミ,,゚Д゚彡「さっき見ただろ!!」

从´ヮ`从ト「あ、いえ、ビックマグナムじゃなくて、しゃせーの瞬間を……」

ミ,,゚Д゚彡「出て行け、今すぐ出て行け!!」

从´ヮ`从ト「だって、男の人のって一度出さないと駄目なんですよね?」

ミ,,゚Д゚彡「それは都市伝説だ!!」

从´ヮ`从ト「でもでも、旦那。
      自然に収まるのを待つよりも、こう、人の手で出した方が、いくらか得した気分になりませんか?」

ミ,,゚Д゚彡「ぬぇぇい、このっ……!!
     諦め……ろっ!!」

从´ヮ`从ト「もー、あんまり抵抗するなら、指でパーンってしちゃいますよ?」

167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 02:23:38.45 ID:qxv1EXck0
ミ;,,゚Д゚彡「よせっ……馬鹿っ……止めろっ……!!」

从´ヮ`从ト「エネルギー・チャージ☆」

指の動きが止まり、人差し指と親指が、不吉な形を成す。

ミ;,,゚Д゚彡「チャージなどさせるものかぁぁぁ!!」

指の力を押さえる為には、手首に対して圧をかける必要がある。
握り潰さんばかりの力で、フサはチハルの手首に加圧する。

从´ヮ`从ト「ふぅははー。無駄ですぞ、だんなぁ!!」

そう。
チハルの体は鉄、鋼鉄製。
それを止める事は、万力を力で制するのと同義。

ミ;,,゚Д゚彡「うぐおおおおっ!!」

从´ヮ`从ト「さぁ、しごかれるか、打たれるかっ……!!」

鉄の指がナニを弾けばと想像するだけで、縮み上がる思いだ。
いっそ縮み上がってほしかった。

从´ヮ`从ト「いざっ……!!」

せめて、弾道をずらせれば。

ミ;,,゚Д゚彡「ぐっ……!!」


170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 02:29:30.65 ID:qxv1EXck0
从´ヮ`从ト「むっ……!!」

しかし、動かない。

从´ヮ`从ト「んっふっふ~。
      甘い、甘いですねぇ、だんなぁ。
      鋼鉄の処女(おとめ)を動かせるのは、真摯な心だけなんですよ」

ミ,,゚Д゚彡「おとめが男のナニを虐めるかっ!!」

从´ヮ`从ト「もー、旦那ぁ。
      明日にでもリベンジしたいんですよね?」

ミ,,゚Д゚彡「それが何だ?」

从´ヮ`从ト「スキンシップの効果、認めてもらえますか?」

言われて、フサは驚きを隠せなかった。
確かに、腹の傷の痛みが和らいでいる。
昨日の今日でここまで回復するのは、異常としか言えない。
確かに回復力は上がっている様だった。

ミ,,゚Д゚彡「……認めよう」

从´ヮ`从ト「っ!! なら、旦那!!
      さぁ、そーせー合体しましょう!!」

ミ,,゚Д゚彡「受け入れはしないがな!!」

从´ヮ`从ト「えぇー。 ここまで引っ張っておいて、それはあんまりですよー」

171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 02:33:01.60 ID:qxv1EXck0
ミ,,゚Д゚彡「好意は受け取っておくが、行為はお預けだ」

从´ヮ`从ト「上手い事言ったつもりですか? だーんーなー」

ミ,,゚Д゚彡「兎に角だ! 今夜はもう寝かせてくれ!」

从´ヮ`从ト「えー」

ミ,,゚Д゚彡「ジト目で見ても無駄だぞ」

从´ヮ`从ト「映画とかゲームだと、ここで絶対に一発やりますよ?」

ミ,,゚Д゚彡「浴槽でやるなんて聞いたことないぞ、俺は」

从;´ヮ`从ト「……はっ、そうか……
      しくじったっ……!!
      焦るあまり……見逃しっ……!!
      どんなゲームでも……初夜はベッドの上っ……!!
      鬼畜ゲーじゃなければ、それは必然っ……!!」

ミ,,゚Д゚彡「分かったか?
      ほら、さっさと先に出て、寝てろ」

从´ヮ`从ト「ぷー」

ミ,,゚Д゚彡「えー、でも、ぷー、でもない。
      明日は朝から忙しくなるんだ」

从´ヮ`从ト「おろ? どうしてですか?」


173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 02:41:07.58 ID:qxv1EXck0
話しの切り替えの早さは、これまでにフサが出逢ってきたどの人間よりも、チハルの方が勝っていると、確信した。

ミ,,゚Д゚彡「…………」

それは、決まり切っていた。
朝の内に装備を整え、夜、日が落ち、月が雲に隠れる頃合いを見計らって、アラマキの命を奪う為だ。

从´ヮ`从ト「リベンジの準備ですか?」

ミ,,゚Д゚彡「そうだ」

从´ヮ`从ト「あのー、あたしはどうすれば?」

ミ,,゚Д゚彡「……お前は、明日、俺と行動していてもらう」

从´ヮ`从ト「ひょっ!!
      でーと、デートのお誘いですねっ!!
      これがツンな旦那のデレなお誘いっ!!」

ミ,,゚Д゚彡「断じて違う」

チハルと行動を共にする理由は、至極簡単だった。
今日一日はどうにか隠れ果せたが、明日にでも、車と血痕を辿ってフサの位置が発覚する。
そうなった際、フサの命を保証するのは彫刻だ。
莫大な価値を秘める彫刻が見つかれば、フサはただちに殺される。

しかし、彫刻が無ければ?
そう。彫刻が発見されるまでの間、フサは生き永らえる事が出来る。
そこで利用するのが、距離が開けばチハルは彫刻に戻るという、ファンタジーな特性。
一定距離近付けば人間の形を成す事を利用し、常に共に行動していれば、仮に追手がフサの隠れ家を発見しても、彫刻を発見する事はできない。

175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 02:45:18.78 ID:qxv1EXck0
となれば当然、隠したのだと推察され、フサの姿を追い始める事だろう。
明日盗むのは、アラマキの命。
不本意ではあるが、チハルから離れて行動すれば、フサの命は価値を失い、発見され次第、殺されるだろう。
それに、だ。

チハルと共にいれば、傷の治癒が早まる。
不完全な状態で、マフィアの首領たるアラマキの命を奪うのは、あまりにも部の悪い賭け。
となれば、明日一日、共にいれば傷は回復し、早晩にはアラマキを殺す事が出来る。

ミ,,゚Д゚彡「……まさかお前」

そこでようやく、フサは気付く。
最初から、チハルの言っていた通りだった。
一緒にいた方が良いと云う結論に今ようやく至ったフサとは違い、チハルは、邂逅した時には結論を出していた。
最善の結論を。

そう。
復讐は早ければ早いほど、フサにとって益になる。
追手の数。相手の慢心、油断。
それらの虚を突くとしたら、今の時期が最も良い。

こうして一緒にいれば、その時期に体の回復が間に合う。

从´ヮ`从ト「ふふん、どうです、旦那?」

ここまで全て、計算済みの行動。
だとしたらこの女、人の思考を欺く――

ミ;,,゚Д゚彡「狸っ……!!」


176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 02:49:39.97 ID:qxv1EXck0
从´ヮ`从ト「旦那、ようやく気付いてくれました?
      まぁ、最初に理屈を説明しなかったあたしが悪いんですけども」

ミ,,゚Д゚彡「……さっさと寝るぞ」

从´ヮ`从ト「あいさー、旦那」

先に風呂を上がり、チハルが髪を乾かして部屋に戻ったのを見計らってから、フサも風呂を出た。
体には、まだ、チハルの温もりが残っていたのが、どうしてもフサは癪だったが、悪い気はしなかった。
ある意味で、チハルならば、フサは怖れる必要はないのかもしれない。
一人自嘲気味に笑い、フサは部屋に向かった。

从*´ヮ`*从ト「電気は……消して……」

ミ,,゚Д゚彡「…………」

从´ヮ`从ト「あれ? 旦那、こう云う感じの初々しい娘が好みでは?
      何で俯いて拳を握ってプルプルさせてるんですか?」

ミ,,゚Д゚彡「少しでも感心した俺が許せなくてなぁ……」

从´ヮ`从ト「旦那、ほら、こちらに」

枕を叩いて、チハルが誘う。
寝袋も、予備の布団もない。
否が応でも共に寝ないと済まなそうだ。
傷の治癒の為にもなる。

それに万が一、チハルが風邪をひいたとしたら、明日の行動計画に支障が出る。
と云う事は、ここは耐える時。自分にそう言い聞かせ、フサは意を決した。

179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 03:00:55.89 ID:qxv1EXck0
ミ,,゚Д゚彡「変な事をするなよ?」

从´ヮ`从ト「旦那こそ、鼻血出して翌朝スプラッタとか、勘弁して下さいよ」

ミ,,゚Д゚彡「言ってろ」

鼻で笑って、フサは蒲団に潜り込んだ。
電気を消し、チハルに背を向けて静かに目を閉じる。

从´ヮ`从ト「…………」

チハルの息が、フサの背中に当たる。
と云う事は、今こちらを向いているのだろう。
だがしかし、背を向けている以上、チハルに余計な事は何一つとして出来ない筈だ。

从´ヮ`从ト「……ほ」

小さな掌が、フサの背中を撫で擦る。
無視と安眠を決め込み、フサはわざと大きく息を吸った。

从*´ヮ`*从ト「……おお」

その手が、ゆっくりと、フサの腹に伸びる。
割れた腹筋をなぞる様にして、指が動く。
あまりにもむず痒いので、フサはその手を掴んだ。
これで、何も出来まい。

从*´ヮ`*从ト「……ぬくぃ」


180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 03:03:53.08 ID:qxv1EXck0
柔らかな頬の感触、小さいが確かな鼓動を刻む胸が、背中に押し当てられ、今度は華奢な脚が、フサの足に絡み付いた。
蒲団の中で暖を得ると、チハルも、ゆっくりと呼吸を繰り返し、眠りに落ちて行くのが分かった。

从´ヮ`从ト「……すー」

穏やかな寝息が聞こえ始め、フサも、久しぶりに肌の温もりを間近に感じながら、眠りに着く事が出来た。























To be Continued...

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 15:49:00.71 ID:9eAe1teg0
チハルとフサが心地よい眠りに着いている時。
日付が変わった頃、アラマキ・チェブリコフは怒り狂っていた。

/#,' 3「どうなってやがる!!」

【スーツの男A】「も、申し訳ありません、ボス」

/#,' 3「どうしてどいつもあの盗み屋の事を知らないんだ!!」

【スーツの男B】「交友関係が皆無に等しく……」

/ ,' 3「そんなもん知った事じゃねぇ!!
    いいか、手前等の頭の中に、情報屋って文字はないのか、あぁ?!」

【スーツの男A】「ロードン随一の、シャーロッキン・ホームズに訊きましたが、奴も知らないとなると、この街で奴の居場所を知っているのは、もういない――」

言葉を途中で遮ったのは、アラマキの手の中にあるマカロフの銃声。
足元の床を撃ち抜かれ、男は、失禁しそうなほどに怯え出した。

/ ,' 3「殺し屋を雇えばいいだろうが!!
    猫を探しているんじゃねぇ、俺達は、あの彫刻を探しているんだ!!」

【スーツの男B】「ぼ、ボス、なら、一つ提案が」

/ ,' 3「おう、言って見ろ」

【スーツの男B】「ゴロツキを大量に雇って、あいつの居場所を探させるんです。
 ゴロツキ共、頭はあれですが、横の繋がりは豊かです。
 だもんで、それを上手く使えば、見つけるのは簡単かと」


4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 15:54:23.20 ID:9eAe1teg0
/ ,' 3「……確かにそうだな。
   よし、それでいこう。
   それと、……ワーズワースを雇う」

【スーツの男A】「わ、ワーズワースって……
 まさか……!!」

/ ,' 3「お前が交渉に行って来い」

【スーツの男A】「そんな、ボス、それだけは……!!
          あいつの所に行ったら、絶対に、俺は殺されちまいます!!」

/ ,' 3「いいじゃねぇか、男を見せれば、殺されねぇかもしれないぞ」

【スーツの男A】「ジャック・ザ・リッパーの再来、フレデリック・ウェストの弟子、ジョン・ジョージ・ヘイグの師匠、あの野郎の名前を、ボスも知っているでしょう?!」

/#,' 3「なぁ、俺がお前に頼んでいる様に聞こえたのか?
    なら言い直してやる。
    クックル・〝フレイムワークス〟・ワーズワースの所に行って、仕事を依頼して来い!!」

【スーツの男A】「ああぁ、ボス、お願いです、それだけは、あいつの所に行くのだけは、勘弁を……」

/#,' 3「ガタガタ抜かしてると、俺が手前の頭を吹っ飛ばすぞ!!
    その次は手前の家族だ!!」

【スーツの男A】「ひいっ!!」

/#,' 3「おい、何してやがる?
    お前も、さっさとゴロツキ共を雇いに行け!!
    いいか、何が何でも、あの盗み屋を捕まえて、彫刻を手に入れろ!!」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 15:59:38.44 ID:9eAe1teg0
* * *

起床は朝の六時よりも、少しだけ早かった。
フサが目を覚ましたのには、二つの理由があった。
一つ目は、甘い匂い。
二つ目は、腕の中でもぞもぞと動く温かな生き物の感触。

ここまで揃えば、状況を把握する事は容易く、自責の念に苛まれる事は、避けては通れない道であった。

从´ヮ`从ト「しゅぴー」

一晩寝ただけで、腹の傷は殆ど治癒していた。
時折内臓に走る痛みを耐えれば、問題なく動ける。

从´ヮ`从ト「くー……」

あまりにも気持ちよさそうに眠っているようで、無為に起こすのも躊躇われたが、今は、一分一秒、全ての時間を無駄なく使い、準備を整える必要があった。
この隠れ家を有効的に放棄する準備も、今の内に進めなければならない。

ミ,,゚Д゚彡「おい、起きろ」

从´ヮ`从ト「ぽー……」

揺さぶるが、起きる気配を見せない。

ミ,,゚Д゚彡「おい、チハル。
 さっさと支度をしろ」

从´ヮ`从トそ「はっ!? 今、旦那があたしの名前をっ?!」


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 16:04:47.21 ID:9eAe1teg0
ミ,,゚Д゚彡「まずは服屋だ。次に武器屋、そして飯、車に……」

从´ヮ`从ト「ちょ、ちょーっと待って下さい旦那!!」

ミ,,゚Д゚彡「何だ?」

从´ヮ`从ト「……もう一度、名前を呼んで下さい」

ミ,,゚Д゚彡「チハル、これでいいか?」

从*´ヮ`*从ト「ひゃっふううううう!!」

ベッドの上から、チハルが飛び上がった。
それはもう、見事な跳躍であった。

从´ヮ`从ト「では、旦那!! まずは服屋ですね!!
      さぁさぁ、ほらほら、起きて下さいよ!!」

ミ;,,゚Д゚彡「……あ、あぁ。
      その前に、やる事がある」

从´ヮ`从ト「ほい?
      ま、まさかっ……!!
      お、おおおお、おはようのチューですか?!」

ミ,,゚Д゚彡「目覚めのアイアンクローがほしけりゃくれてやろう」

从;´ヮ`从ト「うあああ……だんなぁ……
      もうやってるじゃないですかーもー」


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 16:08:05.65 ID:9eAe1teg0
ミ,,゚Д゚彡「ほら、準備をしろ」

从´ヮ`从ト「うぃー」

それから三十分ほど、フサはチハルと共に、隠れ家に別れを告げる準備を終えていた。
万が一に備えて、ホルスターに入れたグロックと、予備の弾倉をチハルに渡し、使い方を教えようとしたが、

从´ヮ`从ト「そいやっ」

教えるまでもなく、分解、掃除が出来ていた。
玄関で靴を履き終え、フサは最後に、一日だけ過ごした隠れ家を見た。
もう、ここに戻る事はない。
しかし、チハルと出逢ったのはこの場所だと思うと、何故だか、本当に少しだけ、寂しい気がした。
チハルを従え、フサは隠れ家のドアを閉め、ロードンの街に繰り出した。

从*´ヮ`*从ト「あ、あの……あの、旦那?」

ミ,,゚Д゚彡「何だ」

从*´ヮ`*从ト「どどど、どうして?」

ミ,,゚Д゚彡「だから、何だ?」

从*´ヮ`*从ト「どうどう、どどどっ……!!」

ミ,,゚Д゚彡「落ち着け」

从*´ヮ`*从ト「どうして、ててて、手をつつつ、繋いでいるんでしょう?」

ミ,,゚Д゚彡「服屋に行くまでに迷子にならない様に、だ」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 16:12:57.58 ID:9eAe1teg0
从*´ヮ`*从ト「あのあのあの、でも……」

ミ,,゚Д゚彡「付け加えるなら、治癒が早まる。
     そうなんだろ?」

从*´ヮ`*从ト「そうですけどっ、でもっ……
       旦那、あんなにあたしの事避けてたじゃないですか、どうして……」

ミ,,゚Д゚彡「……煩い」

早朝から服を売っている様な風変わりな店は、ロードン市内には限られており、その店は今二人が歩いている様な、人気のない、路地裏の様な場所にしかない。
看板も出ていない店。
ビルの一室を借りて店を出している、古着屋が、フサの狙いだった。
人目をはばかる様に道を選んで進み、古びた雑居ビルの一つに、二人は入った。

口が堅く無口な店主が二人を一瞥すると、挨拶はせずに、目礼だけをした。

ミ,,゚Д゚彡「好きな服を選べ。
      悪いが、靴は俺が選ぶ」

この店を選んだのは、靴の品ぞろえが豊富で、確かな品が多く取り揃えられていると云う点も、理由の一つに挙げられた。
下手に口を開く事はせず、チハルは店内を歩き回り、冬のロードンを走り回れるだけの服を選び始めた。
その間、フサも服を選び、チハルが服を選び終わったのを見計らい、シンサレートの入った8インチのワークブーツを二足、500ドルと共に店主の前に出した。

ミ,,゚Д゚彡「ここで着て行かせてもらっても?」

【店主】「……」

店主は無言で頷いた。
試着室で服と靴を取り換え、脱いだ服の処理を考えていると。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 16:16:17.40 ID:9eAe1teg0
【店主】「ウチで処分しておく」

こう云った、気の利くところも、フサがこの店を選んだ理由であった。
こうして。
二人は夜まで行動が可能な、動きやすい服と、完全防水のブーツを手に入れる事に成功した。
続いて、同じ通りの反対にある武器屋に、フサ達は向かう事にした。

馴染みの武器屋以外、フサは利用しない事にしていた。
と云うのも、武器はある意味で情報の塊である為、信頼できる人間の手から買い取りたいと云うのが、盗み屋の考えだった。

从´ヮ`从ト「え? ここですか?」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ」

疑問に思うのも、無理もない。
フサが訪れたのは、どう見ても、ただの民家だったのだから。

ミ,,゚Д゚彡「……よう、ハインリッヒ」

从 ゚∀从「何だ、お前か。
      …………その娘は?」

从´ヮ`从ト「あ、えっと、あたしは……」

ミ,,゚Д゚彡「妻だ」

从;´ヮ`从ト「ぴょ?!」

从 ゚∀从「冗談が言える様になったとはな」


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 16:20:31.60 ID:9eAe1teg0
ミ,,゚Д゚彡「まぁな」

从 ゚∀从「それより、俺の前で手を繋ぐのは止めた方がいい。
      嫌味か?」

ミ,,゚Д゚彡「……失念していた」

从´ヮ`从ト「ぁぅ……」

从 ゚∀从「顔が赤いが、風邪でも引いたのか?」

ミ,,゚Д゚彡「恥ずかしがり屋の淑女なんだ」

从 ゚∀从「はっ、今日は雪でも降りそうだな。
      ……で、お前さん、何をやらかした?
      ロシアン・マフィアが血眼になって捜してるぞ」

ミ,,゚Д゚彡「だろうな。
      重大な契約違反をされた」

从 ゚∀从「なら仕方ないな。
      気をつけろ、フサ。
      連中はゴロツキをわんさと雇い入れて、徹底的にお前さんを探しているぞ」

ミ,,゚Д゚彡「雇い主が死ねば黙るだろ」

从 ゚∀从「だな。
      ……で、何を買うんだ?」


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 16:25:50.30 ID:9eAe1teg0
ミ,,゚Д゚彡「ソウドオフの水平二連ショットガン二挺と、イングラム1挺とサプレッサー、マガジンを5、ベレッタのマガジンは3つだ。
      後はいつものを――」

从´ヮ`从ト「あ、後、クリンコフにマスターキーを付けてもらえますか?
      ルーマニア産のクリンコフが……いい、かな……と?」

ミ,,゚Д゚彡「……………………」

从 ゚∀从「…………………………」

从´ヮ`从ト「…………ほい?」

从 ゚∀从「…………おい」

ミ,,゚Д゚彡「………………」

从 ゚∀从「その子も参加するのか?」

从´ヮ`从ト「そりゃあ、あたしはこの人の妻ですか――」

ミ,,゚Д゚彡「――駄目だ」

从´ヮ`从ト「ちょっ、折角あたしが手を貸そうと言っているのに、その言い草は何ですか」

ミ,,゚Д゚彡「銃を撃った事無いんだろ?」

从´ヮ`从ト「あのー、シューティングレンジを貸してもらえませんか?」

从 ゚∀从「そんな物はない。
      俺は素人に銃は売らない主義だ」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 16:28:42.57 ID:9eAe1teg0
从´ヮ`从ト「むぅー、あたし結構上手な自信があるんですけども」

ミ,,゚Д゚彡「撃った事もないのに、上手いかどうかなんて、分かる訳ないだろ」

从´ヮ`从ト「ええー、分かりますよぉー」

ミ,,゚Д゚彡「ハインリッヒ、気にしなくていい」

从;゚∀从「あ、あぁ……
      変わった連れだな」

ミ,,゚Д゚彡「見つかる前に準備を整えたい」

追手が大勢いるとなれば、残念極まりない話だが、平穏無事に時間を消費する事は無理だろう。
となれば、である。
万が一に備えて、対抗手段を用意し、予定を早めても支障のない様にする必要がある。

从 ゚∀从「弾はホローポイント?」

ミ,,゚Д゚彡「それと12番ゲージのスラッグと散弾だ。
     グロックのロングマガジンを3つ、追加してくれ」

从´ヮ`从ト「……あ」

从 ゚∀从「あいよ。
      ……この後、どうするつもりだ?」

弾を受け取りながら、フサが答える。

ミ,,゚Д゚彡「なぁに、別の場所に行くさ」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 16:33:48.47 ID:9eAe1teg0
从 ゚∀从「仕事がねぇだろ」

ミ,,゚Д゚彡「あんたに関係は?」

从 ゚∀从「ただの興味だよ」

それきり、二人は何も言葉を交わさなかった。
ただ金を渡し、注文した品々を受け取り、防弾・防刃ベストを服の下に着てから、店を出た。

从´ヮ`从ト「あの、旦那……」

ミ,,゚Д゚彡「来るんだろ?
     撃てるんだろ?」

从´ヮ`从ト「はい、そりゃあ勿論です、旦那」

ミ,,゚Д゚彡「弾のない銃なんて持っていても、正直、邪魔でしかない。
 だから、これは仕方なくだ」

グロック用の33連ロングマガジンを、チハルの手に乗せた。

从´ヮ`从ト「こりゃあどうもです、旦那」

ミ,,゚Д゚彡「それと……」

从´ヮ`从ト「ほ??」

ミ,,゚Д゚彡「…………ん」

そっぽを向きながら、フサは手を差し出す。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 16:37:44.38 ID:9eAe1teg0
ミ,,゚Д゚彡「迷子になられると……困る……そう言っただろ」

遠くの方で地鳴りのような音が聞こえたが、チハルもフサも、それどころではなかった。

从*´ヮ`*从ト「お、お、おおっ、おおおおっ!!」

奇声を上げて喜ぶチハルはさっさとマガジンをしまい、フサの手に指を絡めて握った。
冷えた掌が、ゆっくりと温まりだす。

ミ,,゚Д゚彡「飯を食いに行くぞ」

ロードン市内には観光客向けにも、地元住民向けにも、多くの飲食店がある。
その中でも安全な店を選別すると、ごく僅かな量に減る。
しかし、数少ない選択肢の中から、フサは更に数を絞る必要があった。
ゴロツキのネットワークは恐ろしい物がある。

携帯電話の所有率は100%。
店の中にその細胞がいれば、瞬く間に位置が明るみになる。
客の少ない、信頼できる店となると、それは飲食店と云うよりかは、酒場に分類されてしまう。

ミ,,゚Д゚彡「……夜までもたなそうだな」

そう、答えを出さざるを得ない。

从´ヮ`从ト「だんなー、一つ提案がありますぞー」

惚けた様な顔のチハルが、呑気な声でそう言った。

ミ,,゚Д゚彡「言ってみろ」


37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 16:46:21.15 ID:9eAe1teg0
从´ヮ`从ト「向こうが暴れるのを待つんですよ」

ミ,,゚Д゚彡「……警察を利用するのか」

从´ヮ`从ト「そうすれば、チンピラの排除で手を汚さずに済みますし、一々気にしないで動けます。
      で、混乱に乗じて――」

ミ,,゚Д゚彡「報告に来たチンピラに扮して、アラマキを殺すってことか」

ただし、絶対に掴まらず、こちらから手を出す事はしない、と云う条件が付加される。
目撃されて追われるのが目的なら、人目に着く場所で食事をしても、何ら不都合はなく、むしろ好都合だ。

ミ,,゚Д゚彡「だが、脚が必要だ」

その前にはまず、車を用意する必要がある。
買うには金が足りない。
走って逃げるのは愚の骨頂。

从´ヮ`从ト「あー、旦那? 旦那には特技があるじゃないですか」

ミ,,゚Д゚彡「道具が無いと無理だ」

从´ヮ`从ト「ノンノン、旦那。
      チンピラって、ランサーとかに乗ってるじゃないですか。
      無駄にスピードの出る奴」

本当に、チハルの頭の回転率の良さは目を見張るものがある。
わざわざ向こうから車を持ち出してくれるのなら、それは非常に良い展開だ。
盗まれれば当然、チンピラ達は必死になって、それこそ、当初の目的も忘れるほどに怒り、フサ達を追いかけ回すだろう。
そして、チンピラの車を使う事で、アラマキ達に警戒心を抱かせることなく、近付く事が出来る。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 16:52:13.54 ID:9eAe1teg0
正に、一石二鳥だ。

ミ,,゚Д゚彡「……なら、通りに面した店だな」

チンピラの車が一目で分かる場所で食事をすれば、それは同時に、彼等がフサを視認すると云う事で、目的を全て満たせる。

ミ,,゚Д゚彡「……チハル」

从´ヮ`从ト「はい、旦那」

ミ,,゚Д゚彡「悪いが、今日は俺に付き合ってもらうぞ」

从´ヮ`从ト「へへっ、何を今さら。
      あたしは旦那の分身、こうして一緒にいられれば、それだけで幸せですよ」

ミ,,゚Д゚彡「…………そうか」

申し訳ないと云う気持ちを、フサはようやく認めた。
献身的なチハルが、自分に好意的なチハルが、フサは苦手だった。
慣れていなかったからだ。
受け入れるのを躊躇い、今も尚、その覚悟が出来ていない。

今はただ、契約違反のその罰を、アラマキに受けさせる事だけを考え、フサは繋いだ手に力を込めた。

ミ,,゚Д゚彡「飯の希望はあるか?」

从´ヮ`从ト「温かいのが良いですねぇ」

ミ,,゚Д゚彡「分かった」


40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 16:59:44.18 ID:9eAe1teg0
そうして、フサは大通りに面した喫茶店を選び、閑散とした店内で、窓辺の席を確保する事に成功した。
フサとチハルはモーニングセットを注文し、チハルは温かいスープとグラタン、チーズフォンデュを頼んだ。
時間が経つにつれ、店に人がやってくる。
当然、若い人間も。

ぐらぐらと煮えるチーズに野菜を浸しながら、チハルが言った。

从´ヮ`从ト「だんな~」

ミ,,゚Д゚彡「…………」

从´ヮ`从ト「これが終わったら、旦那、どうするんですか?」

ミ,,゚Д゚彡「……一先ず、ロードンにはいられないな」

从´ヮ`从ト「隠居生活とかしますか?」

ミ,,゚Д゚彡「それは金持ちの特権だ。
     二人分の金なんか蓄えてない」

从´ヮ`从ト「…………へ」

ミ,,゚Д゚彡「……何だ?」

从´ヮ`从ト「旦那……今、二人と?」

ミ,,゚Д゚彡「不満なら構わないが」

从*´ヮ`*从ト「めめめ、めっそうもありゃあせん、だんなぁ!!」


42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 17:03:01.79 ID:9eAe1teg0
ミ,,゚Д゚彡「さっさと食え。
     それと、今のはあくまでも、全部が上手く行った場合の話だ」

从´ヮ`从ト「へへへっ、旦那、この手をみてくだせぇ」

ミ,,゚Д゚彡「あ?」

从´ヮ`从ト「働き者のいい手でしょう」

ミ,,゚Д゚彡「傷一つない掌が働き者なのか?」

从´ヮ`从ト「ぶー、じゃあ旦那のを見せて下さい」

しぶしぶ、左手を見せる。

从´ヮ`从ト「ひゅー、見ろよこいつを。
      まるで鋼だぜ」

ミ,,゚Д゚彡「まさか、だけどお前には勝てねぇよ」

从´ヮ`从ト「まぁ、そりゃあそうでしょう。
      あたしは硬い女ですから」

ミ,,゚Д゚彡「鉄の女の間違いだろ」


从´ヮ`从ト「鉄の女の鉄の心を盗むってわけですね」


ミ,,゚Д゚彡「誰が上手いことを言えと云った」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 17:08:00.70 ID:9eAe1teg0
そろそろ、機が熟す頃だろうか。
会話に夢中になっていると思わせながら、チハルの視線はフサの後ろに、フサの視線は、チハルの後ろに。
携帯電話を使って連絡を始めた人間を、油断なく観察し、フサは、3台のセダンが縁石沿いに駐車され、そこからガラの悪い男達が降りて来たのを見て、口元を綻ばせた。

ミ,,゚Д゚彡「チハル、時間だぞ」

从´ヮ`从ト「それじゃあ旦那、丁度いいや。
      あたしがどれだけ戦えるか、ちょっくら見て下さいよ」

ミ,,゚Д゚彡「……いいだろう。
      駄目な様なら、無理矢理にでも連れて行くぞ」

从´ヮ`从ト「あい、旦那」

そして、大挙して訪れたチンピラ集団。
その内の一人が、フサ達の席の前で立ち止った。
店員達は怯えて近付こうとも、注意しようともしない。
行幸である。幸先がいい。

【チンピラA】「アラマキさんがお前探してるぜ」

ミ,,゚Д゚彡「…………」

【チンピラA】「おいおい、だんまりかよ。
        こんなかわいこちゃんを連れて逃げて、どこか遠くで平穏に暮らそうってか?」

从´ヮ`从ト「…………ぁぅ」

【チンピラB】「ひゃはは!! 子猫みたいに振るえちまってるよ!!
       俺が温めてやろうか?」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 17:11:19.32 ID:9eAe1teg0
【チンピラC】「腰の前後運動でなぁ!!」

从´ヮ`从ト「…………っ」

【チンピラA】「あ? 今何か言っ――」



从´ヮ`从ト「喚くな、下衆が」



【チンピラA】「はっ?!」

【チンピラB】「なっ?!」

戦端は、チハルによって開かれた。
熱せられたチーズフォンデュの鍋が、男達に向けて放られ、煮えたぎっていたチーズが男達に降り注ぐ。

【チンピラA】「あっぎゃあああああ?!」

阿鼻叫喚の渦の中、チハルの眼は静かで、正に鉄を彷彿とさせた。
鍋を素手で掴んで放り投げるその度胸と決断力、思わずフサも唸るほど。

【チンピラF】「……のっ、野郎!!」

懐から拳銃を取り出したのを見計らい、チハルはフサに目配せをした。
無言で頷き合い、フサはテーブルを思い切り持ち上げ、ひっくり返した。

【チンピラF】「のわっ……?!」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 17:16:25.51 ID:9eAe1teg0
【チンピラF】「のわっ……?!」

その隙。
チハルが窓に向かって疾駆した。
こればかりは、フサにも意図が分からなかったが、チハルが拳一つでガラスを粉々に砕いたのを見て、体が鉄である事を思い出した。
思っていたよりも、チハルは戦闘に慣れている。

砕けたガラスの向こうに、二人は全力で走りだした。
店員の悲鳴とチンピラの怒号を背に、フサはアイドリング状態の、白いランサー・エヴォリューションに狙いを定め、素早く乗り込みむ。
チハルが助手席に乗ったのを確認してから、アクセルを踏んで逃走を開始した。
小うるさいカーステレオを切り、ルームミラーを見て、チンピラ達が追って来るのを見た。

ミ,,゚Д゚彡「いいぞ、食い付いた」

从´ヮ`从ト「リュック・ベッソンを期待しても?」

ミ,,゚Д゚彡「シートベルトを締めておけ。
     お前が飛び出すと洒落にならない」

鉄の砲弾になったチハルを想像して、フサはくすくすと笑った。
信号機の前で停まり、チンピラ達を置いていかない様に注意する。
無駄にマニュアル使用のランサー。
エンジンを吹かし、シフトレバーをセカンドに入れた。

从´ヮ`从ト「旦那」

直ぐ後ろに、ぼろぼろのメルセデスと、ワーゲンが迫る。
信号が青に変わった。

ミ,,゚Д゚彡「行くぞ」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 17:20:28.76 ID:9eAe1teg0
クラッチから足を離し、ランサーはその本来の性能を、如何なく発揮した。
3メートル程の距離から、一気に10メートル、20メートルと引き離す。
平和の象徴である静かな朝は、3台の車によって、見事に失われた。

从´ヮ`从ト「ひょー!! だんなすげぇ!!」

通勤に向かう車の列。
その間を、掠めることなく抜いて行き、テームズ川沿いの道を目指す。

从´ヮ`从ト「……おろろ?!」

ミ,,゚Д゚彡「……やっぱりな」

次々と車が列から抜け出し、フサの後を追い始めた。

ミ,,゚Д゚彡「こうでなくちゃな」

サードにギアを変え、道を塞がれる前に、フサはランサーを加速させた。
五つ目の信号無視をした辺りで、遂に、〝地鳴り〟の原因を捜査していた警察車両に見咎められ、この大騒ぎに加わり、華やかなパレードを形成する事になった。

ミ,,゚Д゚彡「来たぞ」

从´ヮ`从ト「すんげぇ……」

行く先々で、車が道を譲る。

从´ヮ`从ト「モーゼの十戒みたいですね」

ミ,,゚Д゚彡「後ろが撃ち始めれば、もっと賑やかになるさ。
     チハル、発煙筒があるか見てくれ」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 17:26:07.80 ID:9eAe1teg0
从´ヮ`从ト「ありますよ、結構古そうですけど」

ミ,,゚Д゚彡「後ろの連中にプレゼントしてやれ。
      あー、ついでに……」

从´ヮ`从ト「邪魔な物全部後ろに返してあげますよ。
      安全運転でお願いしますよ」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ、いつも安全運転をしているから、こうして俺は生きているんだ」

冗談を交わし、チハルがシートベルトを外して後ろの席に行く。
載せていた荷物の一切合財をまとめ、後部座席のドアを開け、そこから外に捨て始めた。
中にはギアボックスもあった。

从´ヮ`从ト「おいしょー」

ルームミラーで見ると、後ろの車の助手席に座っていた男が、怒りを露わに怒鳴っているのが見えた。
どうやら、あの男の車だったようだ。
ドアを閉め、チハルは発煙筒を擦って煙を起こし、窓の外に捨てた。
荷物を避ける為に蛇行運転をしていた車が、煙に視界を奪われ、近くにいた不運な乗用車にぶつかり、サイドミラーが宙を舞った。

助手席に戻ったチハルは直ぐにシートベルトを締め、親指を立てた。

从´ヮ`从トb「ぐっ」

ミ,,゚Д゚彡b「…………ふ」


54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 17:37:10.76 ID:9eAe1teg0

その親指に、フサも親指を立て、軽く重ねた。
思っていたよりも、相性が良いようだ。
テームズ川沿いのクラリス・ストリートに合流し、ハンドルを左に切った。
後輪が悲鳴を上げながら尾を振り、道沿いに突き進む。

頭の中の地図とアラマキの居場所を重ね合わせ、どこで車を捨て、アラマキを訪れるかを、フサは一瞬で算出した。
盗み屋たる者、これぐらいは、当たり前の技能だ。

ミ,,゚Д゚彡「今後の方針について、手短に言う。
      アラマキに然るべきツケを払わせた後、俺は隣接するノ・ドゥノに行こうと思う」


从´ヮ`从ト「……ノ・ドゥノって、最果ての都ですか?」


ミ,,゚Д゚彡「そうだ。今更こんな事を言うのもなんだが……
      その……一緒に来てくれるか?」

从´ヮ`从ト「……旦那、そのお誘い、お受けしますよ。
      ただ、ロードンを無事に出られたら、ですけどね」


ミ,,゚Д゚彡「ひっそりと盗むのは、俺の得意分野だ。
      物は問わない主義なんでね。
      平和だって命だって、変わった彫刻だってお手のもんだ」


波間を潜り抜け、ランサーはほぼ直角に曲がって、クラリス・ストリートを抜け出し、同時に、高層ビルの合間にその身を隠した。
後を追おうとしたメルセデスとワーゲンは、無残にも中央分離帯に乗り上げ、後続のパトカーに追突された。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 17:43:31.62 ID:9eAe1teg0
* * *

/;,' 3「…………」

【スーツの男B】「…………」

/;,' 3「どう……いう……事……だ」

【スーツの男B】「……その……」

/#,' 3「どうして〝フレイムワークス〟が吹っ飛んだんだ!!」

【スーツの男B】「そ、それが、隠れ家にC4が仕掛けられていて……」

チンピラの報告によれば、フサは荷物を持っていなかった。
つまり、隠れ家に彫刻が隠されている可能性があると考え、隠れ家を突き止めたアラマキは、フレイムワークスに命じ、捜索を行わせた。
火炎放射機を得物にするフレイムワークスは、同伴した部下諸共爆発に巻き込まれ、火星まで吹っ飛んでしまった。
それを報告に来た部下に対し、アラマキはどうしようもない憤りをぶつけていた。

/ ,' 3「……それで、奴は何処だ」

【スーツの男B】「…………そ、それが……」

/ ,' 3「なんだ、言え!!」

【スーツの男B】「姿を……見失いました……」


部下の背後で扉が開かれた瞬間、アラマキは絶句した。


57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 17:51:49.99 ID:9eAe1teg0
* * *

人間の命を盗むのは、決して、フサに取って初めての経験ではなかった。
だから、扉を開けた瞬間に見たアラマキの顔の変化は、目新しい物ではなかった。
減音器を付けたイングラムの銃声は、離れていれば僅かな物音程度にしか聞こえず、現にマフィアの一人を撃ち殺しても、何ら問題はなかった。

ミ,,゚Д゚彡「よう」

扉を閉めながら、フサは気さくに声を掛けた。

/ ,' 3「……野郎!!」

ミ,,゚Д゚彡「盗みに来たぞ、お前の命を」

それ以上の言葉は、イングラムが代弁した。
皮張りの椅子とマホガニー製の机が、無残にも銃弾で穿たれ、腸を撒き散らしながら、アラマキは仰向けに倒れた。
ホローポイント弾が食い千切ったのは、腸だけではなく、背骨も含まれており、脊髄が損傷した事と痛みによって、アラマキは身動き一つとる事が出来なかった。
数分後に部下が訪れた時、そこには、苦痛に顔を歪めた、アラマキの変わり果てた死体が残されていた。






ロードン警察の必死の捜査にも関わらず、犯人に繋がる証拠は何一つなく、最終的に、事件は迷宮入りしてしまう事になった。






59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 17:54:33.54 ID:9eAe1teg0
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60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 17:59:38.93 ID:9eAe1teg0
ノ・ドゥノにある、アパートの一室。
そこに、フサとチハルの姿があった。

ミ,,゚Д゚彡「…………」

从´ヮ`从ト「…………」

ロードンからノ・ドゥノに至る道程は、決して楽ではなく、何度も検問を掻い潜り、ランルージュ・ハイウェイを通って、ようやくノ・ドゥノに到着したのが一週間前。
そこから安全そうなアパートを探すのに三日、家具を揃えるのに二日、そして腰を落ち着けられたのが昨晩、改めて脱出の成功を祝う食卓には、非常に前衛的な食事が並んでいた。
全てを平らげたフサは口元を拭い、言った。

ミ,,゚Д゚彡「努力は認める」

从´ヮ`从ト「あう……」

ミ,,゚Д゚彡「その気概も認める」

从´ヮ`从ト「……みゅ」

ミ,,゚Д゚彡「味だけは認められん」

从;´ヮ`从ト「ぎょおおおお!!」

ミ,,゚Д゚彡「練習あるのみだ」

从´ヮ`从ト「……努力します」

逃亡が成功した要因の一つに、チハルの頭脳が関係していた。
冷静で的確な判断と、咄嗟の嘘に関して、チハルは天才的だった。
検問を突破する際、それが大いに貢献した。

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 18:57:08.18 ID:Yb0umqSA0
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                                        2month ago→→→→
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ノ・ドゥノにある、アパートの一室。
そこに、フサとチハルの姿があった。

ミ,,゚Д゚彡「…………」

从´ヮ`从ト「…………」

ロードンからノ・ドゥノに至る道程は、決して楽ではなく、何度も検問を掻い潜り、ランルージュ・ハイウェイを通って、ようやくノ・ドゥノに到着したのが一週間前。
そこから安全そうなアパートを探すのに三日、家具を揃えるのに二日、そして腰を落ち着けられたのが昨晩、改めて脱出の成功を祝う食卓には、非常に前衛的な食事が並んでいた。
全てを平らげたフサは口元を拭い、言った。

ミ,,゚Д゚彡「努力は認める」

从´ヮ`从ト「あう……」

ミ,,゚Д゚彡「その気概も認める」

从´ヮ`从ト「……みゅ」

ミ,,゚Д゚彡「味だけは認められん」

从;´ヮ`从ト「ぎょおおおお!!」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 19:01:47.02 ID:Yb0umqSA0
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2month ago, the man refused any love.
二か月前、その男はあらゆる愛を拒んでいた。

He was afraid of every love.
彼は愛を恐れていたのだ。

In someday, the day will have to come the love will gone.
いつか、その愛が消え去る日が必ずやってくるから。

So, he had decided to alive like a steal.
だから、彼は鉄のように生きようと決意したのである。

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ミ,,゚Д゚彡「練習あるのみだ」

从´ヮ`从ト「……努力します」

逃亡が成功した要因の一つに、チハルの頭脳が関係していた。
冷静で的確な判断と、咄嗟の嘘に関して、チハルは天才的だった。
検問を突破する際、それが大いに貢献した。

ミ,,゚Д゚彡「まぁ……焦るほど切羽詰まってるわけじゃないんだ、ゆっくりでいい」

从*´ヮ`*从ト「だんなぁ……!!」

仔犬の様に喜ぶチハルを見て、フサは重要な事を思い出した。


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 19:07:30.61 ID:Yb0umqSA0
ミ,,゚Д゚彡「お前には借りがある。
      俺に出来る事なら何でも良いぞ」

从´ヮ`从ト「……何でも、ですか?」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ、無理難題でなければな」

从´ヮ`从ト「…………ぃ」

ミ,,゚Д゚彡「何? 今、何て言ったんだ?」

从´ヮ`从ト「抱いて……下さい」

ミ,,゚Д゚彡「良いだろう」

从´ヮ`从トそ「マジでっ?!」

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But, it was changed by one girl.
しかし、それは一人の少女によって変えられることとなった。

She doesn't have heart, but has a heart.
彼女に心臓はないが、心はあった。

The heart is softly, mighty and kindly.
その心は柔らかく、強く、そして優しかった。

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7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 19:10:37.49 ID:Yb0umqSA0
ミ,,゚Д゚彡「本当だ。ほら、こっちに来い」

从´ヮ`从ト「いやっほおおお!!」

がしっ、とチハルがフサに抱きつく。
そのまま、フサはチハルの頭を抱き込み、ぽんぽんと、背中を優しく叩いて撫で擦った。

从*´ヮ`*从ト「ふしゅぅぅぅ……」

ミ,,゚Д゚彡「ほら、これでいいか?」

从´ヮ`从ト「は?!」

ミ,,゚Д゚彡「だから、抱いてやっただろ」

从;´ヮ`从ト「うがー!! だんなぁぁぁ!!
      今時どこのラブコメですか?!
      そうじゃない、そうじゃないでしょおおお!!」

ミ,,゚Д゚彡「何故だ」

从´ヮ`从ト「女の子が抱いてと言ったら、アダルトな意味に決まってるじゃないですかぁぁぁ……!!」

ミ,,゚Д゚彡「どうして泣くんだ、そこで」

从;´ヮ`从ト「う~ううう、あんまりだぁ……
      HEEEEYYYY!! あんまりだアアアア!!」

ミ;,,゚Д゚彡「えぇい、泣くな!!」


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 19:21:05.03 ID:Yb0umqSA0
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That is exactly reason why they could understand together.
だからこそ、二人は分かりあえたのだ。

They had same stealy heart.
彼らは、同じ鉄の心を持っていたのだから。

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从´ヮ`从ト「でも、でもぉ……!!
      旦那、どうしてです?
      どうしてあたしは駄目なんですかぁ?!」

ミ,,゚Д゚彡「それはお前の勘違いだ。
      駄目な訳じゃない、むしろ逆だ」

从´ヮ`从ト「ほ?」

ミ,,゚Д゚彡「俺だって……その……なんだ……
      お前みたいな女に迫られたら、良い気がする。
      だけどな……お前のその気持ちは、きっと、俺が俺の血を受けたから出来た、偽物みたいな気持ちなんじゃないかって、そう思ってな」

从´ヮ`从ト「……旦那、実はあたし、旦那に一つ嘘を吐いてましてね」

ミ,,゚Д゚彡「何だ?」


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 19:24:48.85 ID:Yb0umqSA0
从´ヮ`从ト「旦那が最初、あたしを拒絶していた理由、知ってたんです。
      血を介して、あたしと旦那は、繋がっているんです。
      だから、記憶だって、夢だって、本当は全部あたしに伝わってたんです。
      逢った時にはもう……旦那の妹さんが……殺されたってことも……」

ミ,,゚Д゚彡「なら――」

从´ヮ`从ト「――でもね、旦那。
      ズルをしているのなら、それはあたしなんです。
      あたしと旦那は同じような存在。
      だから、旦那が警戒心を解いたのは、自分自身を警戒しないのと同義、つまり、あたしの力じゃないんです。

      ……でも、でも、旦那。
      あたしが旦那に一目惚れしたって云うのは、嘘じゃないんです。あたしの気持ちなんです」

しばしの沈黙。
やや間を置き、フサが口を開いた。

ミ,,゚Д゚彡「……なんだ、そうだったのか」

从´ヮ`从ト「…………っ」

チハルの背に回した手に、フサはゆっくりと力を入れた。

ミ,,゚Д゚彡「なら、俺はお前に怯えなくてもいいのか」

从´ヮ`从ト「……あい、だんな。
      あたしは、旦那の傍を離れませんよ」

チハルも、フサを抱き返す。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/17(月) 19:29:22.06 ID:Yb0umqSA0
ミ,,゚Д゚彡「……済まない、チハル」

从´ヮ`从ト「お気になさらず、旦那」

道理で、チハルの温もりが心に染み渡る筈だった。
チハルはフサの半身、血を分けた存在。
誰よりも近く、誰よりもフサを理解している、世界でただ一つの存在。
死に急ぐ必要を忘れさせたのは、皮肉な事に、自分自身だったと云う訳だったのだ。

そこで初めて、フサは気づくこととなる。
彼の鉄の心は、チハルを盗んだ時から、とっくに盗まれていたのだと。
彼が盗んだのは、他ならぬ、自分の心。

从´ヮ`从ト「旦那……」

ミ,,゚Д゚彡「なんだ?」



从*´ヮ`*从ト「えへへっ……
       ……ずーっと一緒に、いましょうねっ♪」





幸せそうにそう言って、返事と誓いの代わりに、二人は、長い長い、キスをしたのであった。


                                                 END

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