mesimarja
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('A`)約束と現実のようですζ(゚ー゚*ζ
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 22:57:41.38 ID:b4GmuizS0
     



  私は知っています。

     あなたの気持ちは偽りだということを。


  それでも、嬉しかったのです。

      待つことも幸福でした。




       あなたが訪れることなど、ないと知っていましたが。



      


3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 22:59:37.92 ID:b4GmuizS0
    

雪が降る。
町にいる人が減る。




もとより、賑わっているような町ではありませんでした。
伝統を重んじた、静かな町です。


ζ(゚ー゚*ζ


とある少女は真っ白な雪の上を駆けていました。
吐く息は白く、彼女が足を下ろす度に小さな足跡がつきました。

ζ(゚ー゚*ζ「寒いなー」

そう言いながらも、少女は笑います。
空から落ちる雪は、今も彼女の体温を少しずつ奪っていました。

赤く染まった頬が彼女の幼さを強調しています。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:01:24.46 ID:b4GmuizS0
大きな瞳も、綺麗な髪も、素敵な洋服も、古びたこの町には似合いません。
どこぞのお嬢様なのだろうかと、誰もが彼女の歩いた後を振り返ります。


ζ(^ー^*ζ ~♪


金色の髪がふわり、ふわりと揺れていました。


彼女は手にバスケットを下げています。
布がかけられており、中身は見えませんが、まさかマッチというわけではないでしょう。
そうだとしたら、このお話は悲しすぎます。


少女が町の中心にある時計塔の前を通りました。

それは、いつもと違う道でした。
特に理由があったわけではないのですが、時々は違う道を通ってみたいと思うものです。
女の子は、いつでも運命の出会いを求めているのですから。

春は人の集まる場所なのですが、冬はまったくと言っていいほど人がいません。
屋根も壁もない時計塔の前は、とても寒いのです。

きっと、少女は運命の出会いを求めて、大通りを行くべきだったでしょう。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:03:27.25 ID:b4GmuizS0
   
('A`)

      ζ(゚、゚*ζ「あら」

時計塔の前に、男がいました。
運命の人とは、程遠い人しょうけれど。

時計塔の前に腰を下ろしている男は、
真っ黒な髪を雑に伸ばしているため、顔が半分ほど隠れてしまっています。
うっすらと見える瞳は、虚ろでありながら鋭さを思っており、見る者を怯えさせます。

何とも恐ろしい、まるで死神のような目です。


むき出しの刃に触れる人はいないでしょう。
少女もまた、触れるべきではありません。

ζ(゚ー゚*ζ「ねぇ」


けれど、少女の目には、それがむき出しの刃には見えていませんでした。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:05:40.42 ID:b4GmuizS0
   
ζ(゚ー゚*ζ「おじさん、どうしたの?」

少女は無邪気にも尋ねました。

きっと、周りに人がいたら止めたでしょう。
男は少女に優しくなどしないでしょうから。

けれども、寒い寒い冬です。そろそろ夜になる時間です。
彼女を止める人は、誰もいませんでした。

('A`)「……」

男は瞳だけを動かし、ちょうど自分と同じくらいの目線にいる少女を見ました。
いいえ、その瞳は見下しているといったほうが適切でした。
彼はきっと、少女のことを人間として見ていません。

しんしんと雪が降る中、二人はしばらく無言でした。
少女は男の言葉を待っていましたし、男は少女が立ち去るのを待っていました。

ζ(゚ー゚*ζ「お腹が空いたの?
       私、いいものを持っているの」

少女は、バスケットの中から小さな包みを取り出しました。
ピンク色をした包みは、とても愛らしいものです。
誰もがその包みを買わずにはいられないでしょう。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:07:24.05 ID:b4GmuizS0
    
ζ(^ー^*ζ「クッキー。
       お姉ちゃんが作ったの」

('A`)

男は一度、少女の手に乗っている包みを見ました。
そして、すぐに目を背けてしまいます。

そこにはまるで、少女も、クッキーもないように振る舞います。
箱に入っているようなお嬢さんだったならば、きっと泣いてしまっていたでしょう。
気の強いばかりの娘さんだったならば、怒っていたでしょう。

ですが、彼女は箱に入ったような美しさと優しさ、
そして冬に生える草のように強い心を持っている少女でした。

無視されたって泣きません。諦めません。怒りません。
じっと、男を見つめながら、包みを差し出し続けます。

真っ直ぐで大きな瞳を、男はけっして見ようとしませんでした。
新緑のような輝きと色を持った少女の瞳は、男の鋭い目よりもずっと強かったのです。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:09:14.56 ID:b4GmuizS0
   
白い息だけが、そこに男と少女がいることを示していました。
そうでなければ、音も吸い込むような雪の中、
二人の存在は希薄なものになっていたでしょう。

少女の手は寒さで震えます。
手袋をしていないのです。
男の手はポケットに突っ込まれていたので、それほど寒さを感じませんでした。


二人の静寂を破ったのは、時計塔の鐘が鳴る音でした。



リーンゴーン
 リーンゴーン。



   ('A`)    ζ(゚ー゚*ζ

   

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:11:52.73 ID:b4GmuizS0
   
重く、それでいて透き通った音が響きます。
もう、夜がきてしまう音です。

少女は差し出した包みを、男のポケットに押し込みました。
クッキーが欠けてしまったかもしれませんが、素直に受け取らない男が悪いのです。

ζ(゚、゚*ζ「帰らないと。
      お姉ちゃんが心配するわ」

それだけ言うと、少女は走り去って行きました。
赤いドレスのような洋服が、夜の中に消えていきます。

    

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:14:17.03 ID:b4GmuizS0
    
次の日も、少女は時計塔の前を通りました。
男もそこにいます。
もしかすると、もうずっと前から、男はそこにいるのかもしれません。

ζ(゚ー゚*ζ「おじさん、まだお腹空いてるの?」

そう言うと、またバスケットからクッキーを取り出しました。
昨日と同じように、それを差し出します。

男の方も、昨日のように無視するのかと、思うでしょう。
違いました。

男は、少女の手を払ったのです。
クッキーの入った包みは、ぽとりと、雪の中に落ちました。

ζ(゚、゚*ζ「ダメよ。食べ物は、大切にしないと」

少女は包みを拾い上げ、また男に差し出します。
  _,
 ('A`)

不愉快そうな顔をしますが、少女には関係ありません。
何か言いたいことがあるのならば言えばいいのです。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:16:37.27 ID:b4GmuizS0
   
ζ(^ー^*ζ「はい。どーぞ」

満面の笑みを浮かべてそう言いました。
花が咲くような笑みに、普通ならば包みを受け取ってしまうでしょう。
誰もが少女を抱きしめずにはいられないでしょう。

  _,
 ('A`)     ζ(^ー^*ζ


それでもやはり、男は少女を睨んだままです。
真っ黒な瞳が、緑色の瞳を見ています。

ζ(゚、゚*ζ「お金なんていらない。
      毒なんて入ってない。
      美味しくなくもない。
      だから、食べてみてよ」

('A`)「……」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:18:41.28 ID:b4GmuizS0
    
長い、長い、沈黙でした。
でも、昨日もそうだったのですから、少女がへこたれるわけがありません。
堂々と胸を張って、男の前に立っています。

('A`) ハァ

男はため息をつきました。

('A`)「知ってる。
   昨日、食べた」

ようやく男が声を出しました。
昨日のクッキーもしっかり食べていたようです。

ζ(^ー^*ζ「なーんだ!
       なら、はい!
       今日のクッキーも、美味しいよ!」

('A`)「いらない」

ζ(゚、゚*ζ「何で?」

男の低い声に、少女は首を傾げます。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:20:25.89 ID:b4GmuizS0
     
('A`)「施しはいらない」

ζ(゚、゚*ζ「ほどこし? って何?」

('A`)「……」

黙ってしまいました。
どうやら、少女に「施し」の意味を教えるのが面倒だったようです。

ζ(゚ー゚*ζ「よくわからないけど、私、おじさんにクッキーをあげたいの」

('A`)「おじさんじゃない」

ζ(゚ー゚*ζ「私よりも、ずっと、ずーっと大きいわ。
       だから、やっぱり、おじさんよ」

('A`)「誰がおじさんだ」

ζ(゚ー゚*ζ「おじさんしかいないじゃない」

('A`)「オレはお兄さんだ」

ζ(゚ー゚*ζ「それより、おじさん。クッキー」

('A`)「人の話を聞け」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

今度は少女が黙る番です。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:22:15.48 ID:b4GmuizS0
    

クッキーを差し出したまま、無言で男を見つめます。
男はポケットに手を入れたままです。

二人が吐く息は空から落ちてくる雪と同じくらい白く、寒々しい色をしていました。
寒さから、少女は鼻のてっぺんまで赤く染まっています。


いつまでそうしていたのでしょうか。
また、時計塔の鐘が鳴りました。


リーンゴーン
 リーンゴーン。

   ('A`)   ζ(゚ー゚*ζ

    

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:24:18.60 ID:b4GmuizS0
   

ζ(゚ー゚*ζ「……おじさん!」

男が少女を見ます。
少女はクッキーを投げました。

何とも乱暴で、はしたない行為ですが、少女は気にしていません。
男は思わずクッキーを受け取ってしまいました。

ζ(^ー^*ζ「食べてよね!」

笑みを浮かべて、少女は去っていきます。
おうちへ帰るのでしょう。

    

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:26:26.11 ID:b4GmuizS0
    
次の日も、やっぱり少女は時計塔の前に行きます。

今日は少し早めにやって来ました。
男がやって来る前に、あの場所にいたら、彼はどのような顔をするでしょうか。

ζ(^ー^*ζ「ふふふ」

スキップ気分で進みます。
相変わらず、時計塔の周りには誰もいません。
冬ですから。

ζ(゚、゚*ζ「あ」

少女は驚きました。
あの男は、もうすでに来ていたのです。

煙草を吸いながら、空を見上げています。
いったい、いつからいるのでしょうか。

ζ(゚ー゚*ζ「おじさん。早いのね。
       いつごろ来ているの?」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:28:29.85 ID:b4GmuizS0
    
男が無視をするのは今に始まったことではありません。
ですので、少女もいつものようにクッキーを差し出しました。


('A`)「お前こそ、今日は早いな」

ζ(゚、゚*ζ !


ζ(^ー^*ζ「……うん!
       おじさんよりも先に来ようと思って」

クッキーは受け取ってもらえませんでしたが、すんなりと言葉を返してくれました。
低く、面倒くさそうな声でも、少女はとても嬉しかったのです。

('A`)「ご苦労なこって」

男は煙草を捨てました。
煙を出していたそれは、雪に埋もれて役目を終えます。

ζ(゚ー゚*ζ「ゴミを捨てたらダメよ」

('A`)「へいへい」

男は吸殻を拾い上げます。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:30:27.38 ID:b4GmuizS0
    
ζ(゚ー゚*ζ「おじさんは、こんなに寒いところで何をしているの?」

('A`)「あんたみたいなお嬢さんを誘拐しようと思ってるんだ」

ζ(゚、゚*ζ「そうなの?」

('A`)「さてね」

ζ(゚ー゚*ζ「私、誘拐されちゃうの?」

('A`)「かもな」

ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫だよ!
       おじさんに捕まってあげるほど、私優しくないもん」

('A`)「そうかい」

ζ(゚ー゚*ζ「でも、どうしても。って言うなら、協力してあげてもいいよ?」

('A`)「いらね。
   第一、誘拐なんてしねーよ。
   オレはガキが嫌いなんだ」

ζ(゚ー゚*ζ「なーんだ」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:32:31.49 ID:b4GmuizS0
     
('A`)「誘拐されたいのか?」

ζ(゚、゚*ζ「……どうだろ」

('A`)「何だそれ」

ζ(^ー^*ζ「わかんない」

少女は眉を下げながら笑います。
大人である男は、呆れて息を吐きました。

('A`)「お前の方こそ、こんな寒い中、何してるんだ」

ζ(゚、゚*ζ「何してるんだろうねー」

('A`)「はぁ?」

ζ(^ー^*ζ「ないしょ!」

('A`)「……これだからガキは」

男はため息をつきました。
吐いた息は白くなって、雪の中に溶けていきます。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:34:17.63 ID:b4GmuizS0
    
ζ(゚ー゚*ζ「明日もいるの?」

('A`)「……」

無言を返します。
少女には、その無言が肯定に思えました。

ζ(^ー^*ζ「明日も来るね!」

('A`)「くんなっつーの」




リーンゴーン
 リーンゴーン。

   ('A`) ζ(゚ー゚*ζ

    

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:36:16.29 ID:b4GmuizS0
   
時計塔の鐘が鳴りました。
少女は笑います

ζ(^ー^*ζ「おじさんとお喋りしながら、この鐘を聞いたのは始めてね。
       とっても嬉しいから、今日はいっぱいあげるね」

男の隣にクッキーを五つほど置きます。
見れば、包みはピンクの他にも色があったようです。

ピンク、黄色、赤、黄緑、オレンジ。

雪景色の中に、その色はよく映えました。
まるで宝石のように輝いて見えるほどです。

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、また明日ね!」

少女は走り去ります。
男は、いつか少女が転ぶのではないだろうかと思いました。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:38:25.84 ID:b4GmuizS0
    
次の日も、男はちゃんとそこにいました。
寒い雪の中、まるで少女を待っているかのように、いつも通りの場所で座っています。

ζ(゚ー゚*ζ「おじさん」

('A`)「……本当にきやがった」

ζ(゚ー゚*ζ「約束したもん」

('A`)「してねーよ」

ζ(^ー^*ζ「したの!」

少女はまたクッキーを取り出し、男の膝の上に置きました。

ζ(゚ー゚*ζ「今日の分!」

('A`)「……餌かよ」

ζ(゚ー゚*ζ「違うよ?
       一昨日のも、昨日のも、今日のも、
       私と一緒にいてくれて、ありがとう。ってこと!」

('A`)「……」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:40:14.71 ID:b4GmuizS0
   
男は無言でクッキーを受け取ると、乱暴に包みを破き、中身のクッキーを食べました。

ζ(゚、゚*ζ「もっと丁寧に開けてよー」

('A`)「お前みたいなガキと付き合ってやってんだ。
   文句言うな」

ζ(゚ー゚*ζ「はーい」

詰め込むような食べ方は、クッキーの美味しそうな見た目を半減させてしまいます。
けれど、男は気にすることなく、口の中にざらざらとクッキーを放り込みました

ζ(゚、゚*ζ

少女は思わず目が点になってしまいました。
可愛らしいハート型のクッキーも、星型のクッキーも、あれでは意味がありません。

('A`) ゴリゴリ

ζ(゚、゚*ζ「急いで食べなくてもいいのに」

('A`)「お前、このクッキーを売りに行ってるのか?」

ζ(゚ー゚*ζ「え?」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:42:18.37 ID:b4GmuizS0
   
('A`)「小奇麗な包みに、そこそこ美味いクッキー。
   それを持って歩いてるなら、そうだと思ったんだが」

ζ(゚ー゚*ζ「……うん。
      そうなの。でも、いっつも売れ残っちゃって」

('A`)「ふーん。お前が売ってもそうなのか」

ζ(゚ー゚*ζ「どういう意味?」

('A`)「……わからねーならいい」

ζ(゚、゚*ζ「気になるよー!」

('A`)「あー。鬱陶しい」

少女は男の膝に手を置き、体重をかけました。
前のめりになって、彼と目をあわせます。

ζ(゚、゚*ζ「おーじーさーん」

('A`)「オレはお兄さんでーす」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:44:21.52 ID:b4GmuizS0
    
ζ(^ワ^*ζ「……えへへ」

('A`)「何だ。その顔」

ζ(^ワ^*ζ「だって、今日はたくさんお話してくれるから」

少女は可愛らしい顔をして笑います。
男はその顔をじっと見つめていました。
虚ろな目が、少しだけ温かくなったようにも思えます。

('A`)「……貰ったからな」

ζ(゚ー゚*ζ「何を?」

('A`)「クッキー。
   あれは、一緒にいてくれて、ありがとう。ってことなんだろ?」

ζ(゚ー゚*ζ「うん」

('A`)「じゃあ、受け取ったら一緒にいねーとな」

ζ(゚ー゚*ζ!


ζ(^ワ^*ζ「うん! そうだね! 一緒にいないと!」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:46:27.19 ID:b4GmuizS0
    
少女は男の隣に積もっていた雪を払いました。
そこは冷え切っているのですが、気にせず腰を降ろします。

ζ(゚ー゚*ζ「ねー。おじさんは、何をしてるの?」

('A`)「悪いこと」

ζ(゚、゚*ζ「誘拐?」

('A`)「それは嘘だ。忘れろ」

ζ(゚、゚*ζ「悪いこと、悪いこと……つまみ食い?」

('A`)「バーカ」

ζ(>Д<*ζ「わっ」

男は少女の額を軽く押しました。
軽くとはいっても、小さな彼女の体をのけ反らせるには十分です。

('A`)「もっと、もーっと悪いことだよ」

そう言った男の顔は、暗くて、辛そうでした。

ζ(゚ー゚*ζ「……ふーん」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:48:21.43 ID:b4GmuizS0
   

('A`)(゚ー゚*ζ コテン


('A`)「……おい」

(゚ー゚*ζ「なーに?」

少女は男の肩に頭を置きました。
寄りかかるような態勢に、男の声は低くなります。

('A`)「どけ」

(-ワ-*ζ「いーやー」

('A`)「どけって」

(-ワ-*ζ「やだって」

('A`) ハァ…

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:50:20.61 ID:b4GmuizS0
    
(-、-*ζ「おじさん」

('A`)「あ?」

(゚、゚*ζ「逃げられないって、辛いね」

('A`)「……知ったような口きいてんじゃねーよ」

(-、-*ζ「……うん」


雪が降っています。
二人の頭に、白い雪が降りてきます。



男は、少しだけ少女が好きになりました。
少女は、とても、とても男が好きになりました。




リーンゴーン
 リーンゴーン。

   ('A`)(-、-*ζ

   

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:52:31.25 ID:b4GmuizS0
   
ζ(゚ー゚*ζ「……鐘、鳴っちゃった」

('A`)「どうせ、明日も来るんだろ?」

ζ(^ー^*ζ「うん」

('A`)「お前の姉さんが作ったクッキーは美味いから。
   明日も持ってこいよ」

ζ(^ワ^*ζ「うん!」

少女は立ち上がると、大きく手を振りながら去って行きました。
暗い道です。
明かりはかすかな道です。

('A`)「気をつけろよー」

ζ(^ワ^*ζ「はーい」

少女の元気な声が響いていました。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:54:31.76 ID:b4GmuizS0
    
次の日、男と少女は横並びになって座っていました。
男の膝の上には、クッキーの包みがいくつも乗せられています。

('A`) ボリボリ   ζ(゚ー゚*ζ

それを、今度はゆっくりと食べています。
少女はその様子を眺めていました。

('A`)「お前、退屈じゃねーの?」

ζ(゚ー゚*ζ「何で?」

('A`)「人が食ってるの見てるだけとか」

ζ(^ー^*ζ「楽しいよ」

('A`)「変な奴」

そう言いましたが、こうして毎日、時計塔の前に来ている時点で、
十分過ぎるほど変な奴か。と、男は失礼なことを考えていました。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:56:18.10 ID:b4GmuizS0
    
時計塔の前はいつも静かでした。
今まで、一度だって二人の間に他人が入ってきたことはありません。

('A`)「お前が来るまで、ここは静かなところだったのに」

ζ(゚ー゚*ζ「今でも静かだよ」

('A`)「人がいると、不思議とうるさいもんだ」

ζ(゚ー゚*ζ「喋ってなくても?」

('A`)「そうだ」

ζ(゚、゚*ζ「変なのー」

('A`)「心臓の音とか、血が流れる音とか。
   認識はできないけど、あるってわかるんだよ」

ζ(゚、゚*ζ「ふーん?」

少女は首を傾けて、自分の胸を触りました。
集中しなければ動いているなんてわかりません。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/23(金) 23:58:15.96 ID:b4GmuizS0
    
('A`)「オレは、誰もいない、静かなここが好きだった」

ζ(゚ー゚*ζ「今は?」

('A`)「悪くはないが……。
   まぁ、いい」

ζ(゚、゚*ζ「そこは、キミがいるから、もっと素敵だよ。
      って言うところよ」

('A`)「言わねーよ」

ζ(゚、゚*ζ「ちぇー」

少女は拗ねたように足で雪を軽く蹴ります。
積もったばかりの、まだ柔らかい雪が一瞬、宙に舞い、また落ちました。
 

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:00:26.46 ID:O5cxbXo50
    
(-A-)「誰もオレのことを見ないし、何も考えなくていい。
    一人で煙草を吸うのに、これほど適したところはない」

ζ(゚ー゚*ζ「もう吸わないの?」

(-A`)「ガキがいるからな」

ζ(゚、゚*ζ「それって私?」

('A`)「他にいるか?
   ここに。この周囲に」

ζ(゚、゚*ζ「煙草くらい平気だもん」

('A`)「大人になって後悔するのさ」

ζ(゚、゚*ζ「じゃあ、どうしておじさんは吸ってるの?」

('A`)「もう後戻りできないからだよ」

ζ(゚、゚*ζ「やめられないの?」

('A`)「……あぁ」

ζ(゚、゚*ζ「そっか」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:02:30.87 ID:O5cxbXo50
   
('A`)「たまには早く帰ったらどうだ?」

ζ(゚-゚*ζ「……どうして?」

('A`)「親が心配するんじゃないのか」

ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫。お父さんもお母さんもいないの。
      私、お姉ちゃんと一緒なの」

('A`)「二人なのか?」

ζ(゚ー゚*ζ「……うん。一応」

('A`)「そうか。寂しくないか?」

ζ(^ー^*ζ「おじさんと会ってるから」

('A`)「生意気」

ζ(>Д<*ζ「わー」

軽くデコピンをされてしまいました。

ζ(゚、-*ζ「もー」

少し痛かったです。
男の人の手ですから。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:04:23.29 ID:O5cxbXo50
   

でも、それでも良かったのです。



リーンゴーン
 リーンゴーン。

   ('∀`)ζ(゚ー゚*ζ



恋する乙女なんてものは、そんなものなのです。

   

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:06:19.01 ID:O5cxbXo50
   
次の日、少女は驚いてしまいました。
時計塔の前に座っている男の頬が、わずかではありますが、腫れていたのです。

ζ(゚Д゚;ζ「どうしたの?」

('A( )「いや、ちょっとヘマしちまっただけだよ」

ζ(゚、゚;ζ「でも……。
      すごく痛そう」

('A( )「平気だって」

ζ(゚、゚;ζ「そうなの?」

('A( )「おう。
   ――っ。さわんなよ」

ζ(゚、゚;ζ「やっぱり痛いんだ」

('A( )「……平気だ。
   お前の方が痛そうな顔してるぞ」

ζ(゚ _ ゚;ζ「うっ」

('A( )「ほら、笑え」

ζ(゚ー゚;ζ「ひひゃいよ」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:08:15.03 ID:O5cxbXo50
   
少女の頬を引っ張り、無理矢理に口角を上げさせます。
彼女は文句を言ったのですが、男には届きませんでした。

('A( )「こんなのはな、日常茶飯事なんだよ」

ζ(゚、゚;ζ「私、そんな怪我したことないよ」

('A( )「当たり前だ」

ζ(゚ー゚;ζ「ひひゃい!」

('A( )「そうそう。その顔だよ」

ζ(゚ー゚;ζ「ひゃなふぃてー」

('A( )「何を言ってるかわからんなぁ」

ζ(゚ー゚#ζ「もー!」

男の手から抜け出た少女は、拳を男の肩に降ろします。
何度も何度も降ろしました。

('A( )「いてて。参った、参った」

ζ(゚ー゚#ζ「レディーにあんなことしたらダメなんだから!

('A( )「はいはい」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:10:16.14 ID:O5cxbXo50
   
ζ(゚ー゚*ζ「……ねぇ」

('A( )「ん?」

少女は、拳を降ろすのを止めました。
代わりに、男の服を握って彼の目を見ました。



ζ(゚、゚*ζ「私のこと、好き?」

心臓がどくどくと音をたてます。
その言葉を言うために、どれだけの勇気が必要だったのでしょう。


('A( )


黙って見つめてくる男の視線に、どれほど顔を赤くしたでしょう。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:12:13.99 ID:O5cxbXo50
  
('A( )「……オレはロリコンじゃねーよ」

ζ(゚、゚#ζ「そうじゃないでしょ!」

少女は再び男の肩を叩きました。

('A( )「煙草の味が理解できるようになったら考えてやるよ」

ζ(゚、゚#ζ「じゃあ、今ちょうだい!」

('A( )「ダメ」

ζ(゚、゚#ζ「なんで」

('A( )「オレが許しません」

ζ(゚、゚#ζ「考える気ないでしょ」

('A( )「バレたか」

ζ(゚、゚#ζ「いいもーん。
      私だって、おじさん何て嫌いだもーん」

('A( )「そうか」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:14:20.36 ID:O5cxbXo50
   
ζ(゚、゚*ζ「……嘘。
      嫌いじゃないよ」

('∀( )「知ってる」

ζ(゚Д゚#ζ

男は笑い、少女は怒ります。
そうしていると、男が怪我をしていることなど忘れてしまいました。
ただ、ふとした時に彼の顔が腫れていることを認識する程度です。

ζ(゚ー゚*ζ「そういえば、おじさん、お髭が生えてるわ」

('A( )「剃るのが面倒だった」

ζ(゚ー゚*ζ「嫌いじゃないけど、剃ってる方が好きよ」

('A( )「お前に好かれてもなー」

ζ(゚、゚*ζ「私だってレディーよ?」

('A( )「はいはい。レディー。レディー」

ζ(゚Д゚#ζ「バカー」

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:16:27.44 ID:O5cxbXo50
   
しばらくじゃれあった後、少女はバスケットのことを思い出しました。
慌てて中からクッキーを出します。

ζ(゚ー゚*ζ「忘れるところだった」

('A( )「あぁ、ソレか」

ζ(゚ー゚*ζ「はい。今日のぶん!」

('A( )「もう飽きた」

ζ(゚、゚;ζ「えっ」

どうしましょう。
一応、このクッキーを対価に、一緒にいてもらっているのです。
少女は困りました。
他には何も持っていません。

ζ(゚、゚;ζ「えっと……。他は、この靴くらいしか」

('A( )「バカ。足がなくなるぞ」

ζ(゚、゚;ζ「服は無理だし……。シュシュ?」

('A( )「それもいらん」

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:18:22.79 ID:O5cxbXo50
   

('A( )「何もいらん。
    だから、傍にいろ」

ζ(゚、゚*ζ「……うん」

('A( )「どうした」

少し意外でした。
男は、きっと少女は満面の笑みを見せるだろうと思っていました。
それが見たかったのですけれど、少女は戸惑っているようです。

ζ(゚ー゚*ζ「……何でもない。
       嬉しいの」

('A( )「そうか」

少女が言うのならば、きっとそうなのでしょう。
男は納得することにしました。



リーンゴーン
 リーンゴーン


   ('A( )ζ(゚、゚*ζ

   

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:20:33.89 ID:O5cxbXo50
   
鐘が鳴ります。
いつもよりも早く感じられました。

('A( )「帰る時間だな」

ζ(-、-*ζ「うん」

('A( )「何だ。そんな顔して」

ζ(-、-*ζ「私とおじさんが出会って、六回目の鐘だったの」

('A( )「もうそんなになるか」

ζ(-、-*ζ「明日は七回目」

('A( )「それがどうかしたのか?」

ζ(゚ー゚*ζ「……また、明日」

('A( )「あ、おい」

少女はいつものように走って行きます。
はてさて。男は一つ疑問に思いました。

('A( )「あいつの家ってどこだ」

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:22:37.56 ID:O5cxbXo50
   
次の日、男の顔からは腫れがひいていました。
無精髭はそのままでしたけれど。

ζ(゚、゚*ζ「おじさん」

('A`)「よぉ。昨日はどうしたんだよ」

ζ(゚、゚*ζ「あのね……。
      私、帰らないとダメなの」

('A`)「ん? 用事でもあるのか?
   ならとっとと帰れ」

ζ(゚、゚*ζ「違うの。もう、戻ってこれないの。
      お姉ちゃんとの約束なの」

('A`)「それって……」

ζ(;、;*ζ「ごめんね。おじさん」

('A`)「泣くな」

ζ(;、;*ζ「私、楽しかった。嬉しかった」

('A`)「ほら、可愛い顔が台無しだ」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:24:24.83 ID:O5cxbXo50
   
ζ(う、;*ζ「うぅ……」

('A`)「あんまし擦るな」

ζ(;、;*ζ「……帰りたくないよぉ」

('A`)「なら、ここにいろよ」

ζ(;、;*ζ「でも、帰らないといけないの」

('A`)「そんなに苦しいのにか」

ζ(;、;*ζ「うん」

('A`)「逃げられないのか」

ζ(:、;*ζ「誰かがきてくれるまで、ダメなの」

('A`)「オレと一緒にいろよ」

ζ(;、;*ζ「いたかった」

('A`)「……抱き締めてもいいか?」

ζ(;、;*ζ「――うん」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:26:25.50 ID:O5cxbXo50
   
('A`)「お前と会えて、オレも嬉しかった。
   暴力団の下っ端なんてやってて、荒みきってたオレを救ってくれた」

(  ζ「すごく幸せだったよ」

('A`)「それはこっちの台詞だ」

(  ζ「頭、撫でてくれる?」

('A`)「おう」

(  *ζ「えへへ」

('A`)「お、笑ったな」

(  *ζ「だって、嬉しいもん」

('A`)「そうか。なら、もっと撫でてやればよかったな」

(  ζ「十分だよ」

('A`)「オレが、十分じゃないんだよ」

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:28:30.22 ID:O5cxbXo50
ζ(゚ー゚*ζ「ねぇ、お願いがあるの」

('A`)「何だ? ずっと一緒にいろってか?」

ζ(゚ー゚*ζ「違うの。これ、吸いかた、教えて」

('A`)「……煙草なんて、どこで手に入れたんだ」

-(゚ー゚*ζ「んっ」

('A`)「……お前、吸い方知ってるだろ」

-(゚ー゚*ζ「んー」

('A`)「ちょっと待て。
   今、丁度切らしててな……。
   たしか、シケモクがここに……」

ζ(゚ー゚*ζ「シケモク?」

('A`)「吸った後のヤツだ。
   お、あった。ほら、貸せ」

-(゚ー゚*ζ「ん」

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:30:40.62 ID:O5cxbXo50
   



('A`)約束と現実のようですζ(゚ー゚*ζ
ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/157.jpg





~_(゚、゚*ζ「変な味」

('A`)-~「オレは好きだぜ。この味」

~_(゚、゚*ζ「ふーん」

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:32:25.26 ID:O5cxbXo50
  
~-(゚ー゚*ζ「おじさん」

('A`)「ん?」

~-(゚ー゚*ζ「煙草の味、少しわかるようになったよ」

('A`)「そうか」

~-(゚ー゚*ζ「ねぇ、私のこと、好き?」

('A`)「……そうだな。
   ずっとこの時間が続けばと思うくらいにはな」

~-(^ー^*ζ「そっか」

('A`)「どこに行くんだ」


ζ(^ー^*ζ「帰らないと」

('A`)「待てよ」

ζ(^ー^*ζ「……ごめんなさい」

('A`)「オレが迎えに行く。
   んで、お前を連れ出してやる」

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:34:18.92 ID:O5cxbXo50
   
ζ(^ー^。ζ「じゃあ、待ってる」

('A`)「待ってろ」

ζ(^ー^。ζ「うん。私、ずっと待ってる。
       私、おじさんをずっと待ってる。ずっと、ずぅっと」

('A`)「おじさんじゃねーって!」

ζ(^ー^。ζ「ごめんね。ごめんね。待ってるから」

('A`)「オレは、ドクオだ!」

ζ(^ー^。ζ「私、デレ。
       ドクオさんのこと、ずっと待ってる」

('A`)「待ってろ! 絶対、絶対に――」


リーンゴーン。
 リーンゴーン。



七回目の鐘が鳴り響きました。

   

74 名前:>>71創作板でラノベ祭り中:2012/11/24(土) 00:36:29.99 ID:O5cxbXo50
  
ζ(-、- ζ「……ただいま」


('A`)約束と現実のようですζ(゚ー゚*ζ
ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/72.jpg

ξ-⊿-)ξ「おかえりなさい」

デレが言葉を発すると、別の声が返ってきた。
彼女は床に置かれた紙に何かを書いている。

ζ(゚ー゚ ζ「お姉ちゃんの言ってたことは、正しかった」

ξ-⊿-)ξ「そうでしょうね」

ζ(;ー; ζ「こんなに、悲しいなんて……」

ξ-⊿-)ξ「そうでしょうね」

ζ(;Д; ζ「私、わたしぃ……」

ξ゚⊿゚)ξ「もう。可愛い顔が台無しよ」

女の子は立ち上がり、そこら中に散らばっている紙を踏んでデレに近づいた。
彼女達は並ぶと、よく似た顔立ちをしている。
姉妹とはいえ、そう歳の差はないようだ。

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:38:30.35 ID:O5cxbXo50
   
ξ゚⊿゚)ξ「わかるわ。私も、同じ経験をしたもの」

そう言って彼女はデレを抱き締めた。

彼女はツン。
デレと二人っきりで、狭い部屋に閉じ込められている女の子。

ζ(;Д; ζ「うぅ……」

ξ゚⊿゚)ξ「だから言ったでしょ。
      泣くことは覚悟しておきなさいって」

ζ(;Д; ζ「ごめんなさい。ごめんなさい」

デレはそのまま床に膝をついた。
もう立っている気力すらないようだ。

ξ゚⊿゚)ξ「デレ、謝らないで」

ζ(;Д; ζ「ごめんね。お姉ちゃんを一人にして。
       それなのに、私はこんなに泣いてばかりで」

ξ゚⊿゚)ξ「いいのよ。以前、あなただって待っててくれたじゃない」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:40:21.99 ID:O5cxbXo50
   
ζ(;Д; ζ「お姉ちゃん……」

ξ゚⊿゚)ξ「ほら、おめめが溶けちゃうわ。
      幸せだったんでしょ?」

ζ(;Д; ζ「……うん」

ξ゚⊿゚)ξ「それならいいの。
      私も、書いたかいがあったわ」

ツンは壁中に張られている紙を見た。
そこには文字や絵がぎっしりと書かれている。

それは物語であったり、人物設定や世界観であったりしていた。
いくつも張られ、いくつも散らばっている。



【('A`)】


その中に、ドクオが描かれていた。

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:42:30.88 ID:O5cxbXo50
   
彼女達はいつからかその部屋にいる。
綺麗な服を着せられて、毎日食事を出されて。
でも、人を見たことはない。

何故だかわからないけれど、毎日毎日紙に物語を綴るだけ。
退屈すぎて、時間の流れもわからない。

ξ-⊿-)ξ「小さな希望でもいいの。
       信じられるなら、それで……」

強くデレを抱き締める。
長すぎる時間は、絶望を生み出す。
彼女達は、自分が生きているのかどうかもわからない。

ζ(;Д; ζ「信じるよ……。信じたいよ……!」

二人に与えられていたのは空想だけ。
作り上げた物語にのめりこむことだけ。


彼女達が空想の世界に入り込めるようになったのは、きっと必然だった。

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:44:21.20 ID:O5cxbXo50
   
ξ゚⊿゚)ξ「あなたも、もう物語の中には入れないわね」

ツンはデレの姿に、いつかの自分を思い出す。

あまりにも退屈すぎて、ずっと空想の世界にいたことがあった。
それはデレが書いた世界だった。
暖かくて、幸せな世界だった。

ξ-⊿-)ξ「私も、もうずっとブーンを待ってるもの」

出会った青年を愛した。
必ず迎えにくると言ってくれた。

それならば、待つしかない。
他のところへふらふらしていてはいけない。
ずっと、同じところで。
ここで待つしかない。

ξ-⊿-)ξ「聞かせて。ドクオのこと。
       終盤は、あなた達に任せてたから」

ζ(;ー;*ζ「うん。
        あのね、ドクオさんは――」

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:46:32.53 ID:O5cxbXo50
    


  彼女達は知っていた。

    彼らの気持ちは作り上げられたものだということを。


  それでも嬉しかった。

    それだけで待つことが幸せなことに思えた。






         彼らがやって来ることなど、できないと知っていても。


    

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:49:03.83 ID:O5cxbXo50
それからも、ずっと、ずっと彼女達は同じように生きた。
ただ生きて、ただ綴る。
時折、床に散らばっている紙を壁に張る。

ζ(゚ー゚*ζ「何で、私達はこんなところにいるんだろ?」

ξ゚⊿゚)ξ「その質問は、もう百回くらい聞いたわね」

ζ(゚、゚*ζ「だって……」

ξ゚⊿゚)ξ「私だって知りたいわ。そんなこと」

ζ(゚ー゚*ζ「……迎え、遅いなぁ」

ξ゚⊿゚)ξ「……そんなものよ」

ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃんも、ずっと待ってるもんね」

ξ゚⊿゚)ξ「ついこの間、会ったばっかりのような気もするんだけどね」

ζ(゚ー゚*ζ「もうわからないねぇ」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、待つわ」

ζ(゚ー゚*ζ「私だって」

そんないつも通りの会話。それが、

   ――いつも通りが、崩れる時がやってきた。

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:50:26.80 ID:O5cxbXo50
   

   ――音がする。



ξ;゚⊿゚)ξ ζ(゚、゚;ζ



   ――壁を削るような音がする。


そんな音を現実の世界で聞くのは始めてだった。
今まで、ずっと静かな世界で暮らしていた。


   ――人の声が聞こえた。


現実世界で聞いた声といえば、姉妹のものだけだった。
けれど、聞こえてくる声は、彼女達の声とは似ても似つかない。


   ――光が見えた。

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:52:19.81 ID:O5cxbXo50
   

(;^ω^)「成人女性二名発見いたしました!」


   光の中から現れたのは二人の男。


(;'A`)「お嬢さん達、大丈夫か?!」


   それはまるで、空想の世界からそのまま飛び出してきたような。


(;^ω^)「もう大丈夫だお。
      変態野郎はとっ捕まったお!」

(;'A`)「それにしても、いつから閉じ込められてたんだ……?」

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:54:20.40 ID:O5cxbXo50
   
ξ;⊿;)ξ「ブーン!」

駆けだしたツンの背をデレは見た。
その背中は、幼い子供のものから大人のものへと変わる。

背丈も髪も伸び、寸胴だった体のラインは局線を描く。
長い手足をいっぱいに使って、彼女はブーンに抱きついた。

(;^ω^)「おっ?
      どうして、ボクの名前……」

ξ;⊿;)ξ「待ってた! 待ってたの!」

涙を零し、ブーンの背中に手を回す。
ブーンは戸惑ってはいたが、嫌な気はしていないようで、ツンの肩に触れているだけだ。

(;'A`)「おいおい。
    どーいうことだよブーン」

(;^ω^)「ボクに聞かれましても……」

ドクオとブーンは言葉を交わす。
ここへ来たのは、拉致監禁されていた少女、女性を救出するためだ。
決して、生き別れの婚約者を救出しに来たわけではない。

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:56:25.07 ID:O5cxbXo50
   

ζ(゚、゚*ζ「ドクオ、さん……」

(;'A`)「へ?」

ζ(;ー;*ζ「迎えに、来てくれたんだ……!」

状況を理解することができなかったデレも、ようやく思考回路が動き出す。
知らぬうちに延びていた手足を使い、ドクオに抱きつく。

(  *ζ「待ってたの。ずっと、ずぅっと」

(;'A`)「あの……」

まさか、隣にいる男と同じ状況になるとは思わなかった。
ドクオは戸惑う。
何せ、今までろくに女性とお付き合いをしたこともない。

監禁されていたとはいえ、とびっきりの美人だ。
抱きつかれて嬉しくないはずがない。
わけのわからないことを言っているようだが、監禁されていたのだから、精神に異常があってもおかしくはない。

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:58:12.30 ID:O5cxbXo50
ドクオはちらりと横を見た。
すると、戸惑っていたはずのブーンがツンを抱き締めていた。
そうそうお目にかかれないような美人からの誘惑に負けたのだろうか。

(;'A`)「あのね、お嬢さん」

(゚ー゚*ζ「私、デレよ。
     おじさん、もう忘れちゃったの?」

(;'A`)「おじさんって……。オレとあんたは同じくらいの歳に見えるけど」

(゚、゚*ζ「そうなの?」

デレは抱きついたまま首を傾げる。
どこか幼さを残した表情は美しくも可愛らしい。

(^ワ^*ζ「じゃあ、何も問題ないね」

(;'A`)「はぁ?」

(^ワ^*ζ「今度は、煙草越しじゃないんだから」




不思議なことに、ドクオはここが、雪の降る時計塔の前なのではないかと思った。



~おわり~

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 00:59:56.57 ID:O5cxbXo50
以上!
こんな時間に支援㌧

ちなみにラノベ祭り作品です
ラノベ祭りって何ぞって奴は今進行中のスレに行ってこい
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1353593410/

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