mesimarja
気に入ったスレを集めてみました。
10 | 2017/11 | 12
S M T W T F S
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

(∪^ω^)おっ! のようです
2 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 20:55:34.172 ID:sYGd5xH00
僕は少し変わっている。
僕はご主人様とは違うから。
僕は犬で、ご主人様は人間だからだ。

(∪^ω^)おっお

ζ(゚ー゚*ζ「あら、どうしたの?」

(∪^ω^)おっお

ζ(゚ー゚*ζ「おなかがすいたのね?
      そうね、もうそろそろご飯にしましょうか」

でも、ご主人様も変わっている。
言葉も違うし姿も違うけど、ご主人様は僕の事をすごく気にかけてくれている。
だから僕はご主人様が大好きだ。


3 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 20:57:31.263 ID:sYGd5xH00
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

(∪^ω^)おっ! のようです

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

5 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 20:59:22.797 ID:sYGd5xH00
僕とご主人様が出会ったのは、とても昔の話。
僕が子犬から大人になって、ご主人様が赤ちゃんから女性になるまでの時間についても、あまり意識したことがない。
僕には時間の概念があまりないから、その辺はよく分からない。


言えるのは、昔から僕とご主人様は一緒だったってこと。


ζ(´、`*ζ


(∪^ω^)


初めて見た時、僕はご主人様を姉弟だと思った。
いや、家族だと思った。
その認識は今も変わらないけど、時間が経つにつれて僕はご主人様をご主人様と思うようになったんだ。


でも、やっぱり家族としての方が強いかな。


ζ(゚、゚*ζ「ぶーん、おさんぽいこーよー」


(∪^ω^)おっお

6 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:02:00.963 ID:sYGd5xH00
初めて首輪をつけて二人だけで散歩に行った時のことを、僕はよく覚えている。
ご主人様のお父さんと一緒に歩いた道を、ご主人様と一緒に歩くのはとても不思議な気持ちになった。
何度も見たはずの道が魅力的な場所に思えたし、緊張したご主人様を見るのは楽しかったから。

だから僕は、いつもよりもはしゃいで先に歩いて行こうとしたんだ。
でもご主人様は走って僕の前にいようとして、僕たちはそれを繰り返してへとへとになって公園で休むことにした。
公園は草や木がたくさんあって、とても落ち着ける場所だった。

何度か僕と同じようなのと会ったけど、僕は怖くてご主人様の後ろに隠れたんだっけ。

ζ(゚、゚*ζ「ぶーん、どうしたのー」

(;∪^ω^)おっ

そりゃあ怖かったよ。
だって、目の前にいたのは傷だらけの大型犬。
明らかに恐ろしい類の犬だったんだ。

( ФωФ)新顔の仔犬か

ζ(゚、゚*ζ「ぶーん?」

この犬の声は、勿論ご主人様には聞こえていない。
僕たちにしか分からない声だもの。

8 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:03:27.744 ID:sYGd5xH00
从'ー'从「もー、ロマ!! 怖がらせたら駄目でしょ!!」

:;(;∪;ω;);:

( ФωФ)おい

:;(;∪;ω;);:

( ФωФ)怯えるな、吾輩が困る

それが、ロマネスクさんとの出会いでもあった。
ご主人様の後ろで震える僕の頬を舐めて、敵ではないことを示してくれた。
それでようやく、僕はロマネスクさんが僕をいじめたり襲ったりしないと分かった。

大きなお兄さんが出来た気分だった。

ζ(゚ー゚*ζ「わー、もうおともだちになったのねー」

从'ー'从「そうなの、ロマ?」

( ФωФ)゛当然であろう、主よ

(∪^ω^)おっ

9 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:04:39.893 ID:sYGd5xH00
初めての友達ができてから、僕の世界は少しずつ広がっていった。
甘噛みに込められた感情。
少し湿った鼻を合わせる行為の意味。

色々な意味を教えてもらって、色々な経験を積ませてもらえたんだ。
海にも行ったし、山にも登った。
思えば、僕の想いでは全部風景と一緒だったなぁ。

青空から舞い落ちる桜の美しさ。
青々と茂った木々の隙間から降り注ぐ夏の日差しと、入道雲の途方もない威圧感。
一面の落ち葉の絨毯を駆け回る楽しさ。
雪の冷たさと、白銀の世界に感じる寂しさも。

全部、ご主人様と一緒にいたから。
ご主人様の笑顔と風景は、いつでも思い出せる。
僕は、ご主人様にとても感謝しているんだ。

11 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:05:52.806 ID:sYGd5xH00
初めての海は楽しかったなぁ。
車に乗って、家族みんなで行ったんだけど。

ζ(゚ー゚*ζ「うみだー!!」

(∪^ω^)!!

大きな水たまりだった。
はしゃぐのが抑えられなかったよ。
ご主人様と一緒に海に走って行って、水がしょっぱいことに驚いて。

(∪゚ω゚)しょっぺえぇぇえええ!!

ζ(゚ー゚*ζ「あはは!! ブーン、なにやってるのー、もー」

だけど泳ぐのがとても気持ち良くて。
泳ぎ終わった後の風が心地よくて。
波打ち際で綺麗な貝を見つけたり、今もよく分からない生き物を追いかけたりして、いつも以上に遊んだんだ。

帰りの車の中で、僕とご主人様は疲れて眠ってしまって。
その時に見た夢がとても楽しくて。
その時に感じたぬくもりがとても気持ち良くて。

幸せだなぁって、そう思えた。

13 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:06:56.704 ID:sYGd5xH00
ζ(゚ー゚*ζ「やまだー!!」

(∪^ω^)!!

山は海と違って、たくさんの生き物がいたなぁ。
鳥や虫の多さにはびっくりした。
迂闊に走り出せなかったけど、とても落ち着いた気持ちになれた。

背の高い木が並ぶ森の中は静かだけど、静かじゃなくて。
街の中よりもずっとずっと、命を感じることが出来た。
見たこともない虫がいて、足で軽く触ったらものすごい臭いに苦しまされた。

(∪゚ω゚)くせぇぇぇえええ!!

ζ(゚ー゚*ζ「あはは!! ブーン、なにやってるのー、もー」

何だかんだ言っても季節の中で僕は夏が一番好きだ。
ご主人様と一緒にいる時間が一番長いし、たくさん遊べるから。
思い出の多くは夏に作られたものばかりだ。

14 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:08:46.996 ID:sYGd5xH00
そういえば、猫のツンちゃんに会ったのも夏だったなぁ。

ξ゚⊿゚)ξ

(∪^ω^)

塀の上を歩いていたツンちゃんと庭で寝ていた僕は目が合って、少しの間見つめ合っていた。
青空を背にしたツンちゃんは静かに降りてきて、僕の前に来た。

ξ゚⊿゚)ξ何見てんのよ

ツンちゃんは僕よりもずっと小さかったけど、僕よりも度胸があった。
その気高さに、僕はとても微笑ましい気持ちになった。

(∪^ω^)お友達になろうお!!

ξ゚⊿゚)ξは? ふざけんじゃないわよ!!

話しかけた後にツンちゃんからもらったのは、ひっかき傷だった。
痛かった。
少し血が出たから、絶対に本気だった。

16 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:10:40.546 ID:sYGd5xH00
(∪;ω;)いてぇぇ!!

ξ゚⊿゚)ξでかい図体してるくせに何よ、情けない

(∪;ω;)痛いおー

ξ゚⊿゚)ξうるっさわね!!

また引っかかれた。

(∪;ω;)仲良くしようおー

ξ゚⊿゚)ξ……しつこいわね

(∪;ω;)おー

ξ゚⊿゚)ξ……ったく

出会いはひどいものだったけど、それから僕たちはちょっとずつ仲良くなっていったんだ。
僕のご飯を少し分けてあげたり、僕のお家で一緒に寝たり。
そうしていく内に、ツンちゃんが僕よりもお姉さんだってことを知ったり、街中の色々なお話をツンちゃんは聞かせてくれたりした。

17 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:12:00.795 ID:sYGd5xH00
すごく寒い冬の夜に会ったのを最後に、ツンちゃんとまた会う事はなかった。
でも会えなくなる前の日に、少し元気のないツンちゃんが僕のところに来てくれた。

ξ゚⊿゚)ξねぇ、ブーン

(∪´ω`)お?

月明りが照らすツンちゃんの顔は、少し寂しそうだった。

ξ゚⊿゚)ξ……私たち、友達よね?

(∪´ω`)もちろんだお

寒いのかな、と思った僕はツンちゃんを前足で掴んで引き寄せた。
前に言われたんだ。
ツンちゃんが寒そうにしてたら、自発的にこうしなさいって。

だけど、その時は違った。
いつもは朝までそうして身を寄せ合って眠るのに。
その時だけは、ツンちゃんは僕の傍からするりと離れたんだ。

20 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:14:15.140 ID:sYGd5xH00
ξ゚⊿゚)ξ……ありがとう、ブーン

(∪´ω`)どうしたんだお、急に?

ξ゚⊿゚)ξ少しは考えなさい

(∪´ω`)ショーン

僕の鼻を舐めて、ツンちゃんは塀に飛び乗って、どこかに行ってしまった。
何が言いたかったのか、今でも分からない。
いつか会った時に答えを聞こうと思う。

勿論、春にはお花見をしたり、秋には焼き芋をしたり、冬には雪遊びをしたりしたから思い出が無いわけではない。
それでも、青空を見上げる度に僕は楽しかった思い出とこれから作る思い出に胸をときめかせていた。
いつまでも続けばいいと、そう思いながら。

22 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:15:38.622 ID:sYGd5xH00
――初めて会った時から今日まで、何十回目の桜の花びらだっただろうか。
いつもなら桜吹雪の中を駆け回っていたのに、その時は走る気持ちになれなかったんだ。
隣にご主人様がいて、それだけで十分だったと思ったからかもしれない。

その時から少しずつ。
本当に少しずつ、僕は体が動かなくなっていった。
いや、少し違うかな。

動かす力がなくなって、ただ静かにしているのが楽になった、だろうなぁ。
前にロマネスクさんも、同じことを言っていたっけ。

( ФωФ)なぁ、ブーン

(∪^ω^)お?

( ФωФ)散歩は好きか?

(∪^ω^)好きだお。 ロマネスクさんどうしたんですか、急に

( ФωФ)いやなに、吾輩も散歩は好きなんだが、最近足が思うように動かなくてな。
      寝ている方が楽なのだ

(∪^ω^)へー

24 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:18:12.837 ID:sYGd5xH00
その時はただ、聞き流すぐらいだった。
でも。
今なら分かる。

公園でロマネスクさんとワタナベさんに会う事がなくなった今なら、分かる。
僕は年を取ったんだ。
今まであまり変わらないと思っていたご主人様も、小さなころの無邪気さを残して大きくなっているし、身長なんてとっくに僕が負けている。

ζ(゚ー゚*ζ「ブーン、お散歩行く?」

僕の様子が変わったことに、ご主人様は気付いてくれていた。
そして気遣ってくれた。
散歩をするたびに僕は情けない声を出していた。

最初は我慢して声を押さえていたけど、耐えられなくなってきた。
だけど。
それでも、僕はお散歩に行くことを止めなかった。

大変だったけど。
最近、ご主人様と一緒にいられる時間があまりないから。
僕も長く起きていられないから。

26 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:20:12.939 ID:sYGd5xH00
だからせめて、お散歩の時間ぐらいは一緒が良かった。
ゆっくり歩く僕に合わせて、ご主人様が歩いてくれる。
昔みたいに追いかけっこをしたかったけど、走れない。

脚を動かすだけで精いっぱいだ。
昔は僕がご主人様に合わせて歩いていたり、同じ速度で歩いていたけど。
今はもう、ご主人様が僕に合わせて歩いている。

とてもゆっくりと。
一歩一歩を、僕はしっかりと確かめながら。
出来るだけご主人様の近くを歩いて、出来るだけ一緒にいられるように。

何だか、傍にいるだけでとても幸せな気分になれたから。
それだけで。
それだけで、僕は十分だった。

梅雨の間、僕は家の中で眠ることに時間を割いていた。
妙に眠く、ご主人様が家にいないときはずっと眠っているぐらいだ。
お腹が空いたという感覚はあるけれども、それを満たそうという気分になれなかった。

27 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:23:55.177 ID:sYGd5xH00
ご主人様の声で、僕はやっと目を覚ますことが出来た。
それからご飯を食べて、ご主人様の傍に行って、撫でてもらって。
あまり多くを望まないようになっていた。

(∪´ω`)おー

ζ(゚、゚*ζ「ブーン、最近元気ないわね」

(∪´ω`)おー

耳の裏をくすぐりながら、ご主人様がそう言ってくれる。
瞼が重く、眠くて仕方がない。
それでもご主人様と一緒にいる時間が大好きな僕は、眠らないようにと頑張った。

(∪´ω`)お……

ζ(゚ー゚*ζ「もうブーンもおじいちゃんだから、仕方ないのかな?」

ううん。
僕はまだ遊びたいんだよ。
一緒にお散歩もしたいし、もっとお話を聞きたいんだよ。

ただ。
体が、動かないんだ。
どうしてだろう。

29 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:25:04.790 ID:sYGd5xH00
――そしてまた、夏が来た。
大好きな季節が来たんだ。
濃い青の空に浮かぶ、真っ白な雲。

やかましいぐらいのセミの鳴き声。
暑い日差し。
木々が力強くその枝葉を伸ばし、命を主張する季節。

ζ(゚ー゚*ζ「ねぇ、ブーン。 海に行こうよ!!」

(∪´ω`)お!

相変わらず体は思うように動いてくれないけど、心は動いてくれる。
ご主人様からの提案に尻尾が揺れる。
いつもみたいに車で行くのかなと思ったら、いつもの車じゃなかった。

サイドカーの付いたバイクだった。

ζ(゚ー゚*ζ「このために免許取ったんだよ!!」

30 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:27:21.335 ID:sYGd5xH00
どういう乗り物なのかは知っている。
ロマネスクさんが乗っているのを見たことがあるし、本人から聞いたことがある。
風を感じられる素晴らしい乗り物だそうだ。

程よいスペースのサイドカーに乗ると、視線の低さに驚く。
車よりもずっと低い。
そして、僕たちを乗せたバイクが海へと出発した。

久しぶりの感動だった。
眠気を忘れるほどの感動だった。
景色が流れ、そして変わる。

僕は走っていないのに。
それなのに、まるで走っているときの心地がして。
とっても気持ちがよかった。

海の匂いと音が近付いてくるころには、もうお昼になっていた。
一緒に砂浜まで歩いて行って、ご主人様は海に近い場所に座り込んだ。
僕はその隣に座って、身を寄せた。

ζ(゚ー゚*ζ「ご飯にしよっか」

(∪´ω`)お

31 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:30:16.852 ID:sYGd5xH00
ご主人様は僕の分のご飯をタッパーに入れて持ってきてくれていた。
いつもとは違う、少し柔らかめのご飯だった。
食べられるのか心配だったけど、ご主人様がお昼ご飯を食べている姿を見て、僕も食べようと思った。

少しずつ。
前よりもずっと遅かった。
でも、食べきることが出来た。

ζ(゚ー゚*ζ「美味しかった?」

(∪´ω`)お!

ζ(゚ー゚*ζ「泳ぐ?」

(∪´ω`)おっ!

一緒に波打ち際まで歩いて。
波が足を濡らす感触を楽しんで。
少し海の中に入って。

陸を歩くよりも泳いでいる方が楽だと分かった僕は、ご主人様と一緒にたくさん泳いだ。
久しぶりの運動はとても気持ち良かった。
海から上がって水気を飛ばして、また海で泳いだ。

32 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:36:53.112 ID:sYGd5xH00
最後はシャワーを浴びて、少し砂浜をお散歩した。
水平線の上に浮かぶ雲がとてもきれいで、思わずしゃがんでそれを眺めてしまった。
ご主人様もそれに合わせてしゃがんでくれたから、僕は落ち着いて風景を楽しむことが出来た。

帰りもサイドカーに乗って風を感じ、家に着く。
少し運動が出来たからかもしれないけど、ちゃんとご飯を食べることが出来たし、ご主人様はお風呂で僕の事をたくさん洗ってくれた。
やっぱり、夏が好きだ。

それから秋が来て、冬が来て。
徐々に僕の体が動かなくなってきて。
もう、ご主人様の声を聴いても体を持ち上げるのがやっとで。

苦しいってわけじゃなくて、体がふわふわしている感じがする。
ふわふわしているから動かせない。
動かそうと思っても、それが体に通じない感覚。

だけど、ご主人様の声と匂いを感じた時にはどうにか体が動かせる。
これまで以上にご主人様たちと一緒にいる時間が増えたのは、雪の下から新しい命が顔を出す頃。
僕が子供の頃のようにみんなが接してくれるのが嬉しかった。

一緒にいて、撫でてくれて、声をかけてくれて。
幸せなんだと、そう感じられる。
前まではたくさん遊んでもらって、たくさん食べて、たくさん寝て、たくさんお話してもらえて初めて幸せを感じられた。

33 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:41:22.905 ID:sYGd5xH00
今は違う。
ささやかなことが幸せで。
大切でない瞬間なんて、一秒たりともなかった。






上手に立つことも難しくなって、ようやく分かった。
僕は、とても幸せな場所にいたんだ。
とても優しい人に出会えて、とてもいい場所に生きていたんだ。






僕は馬鹿だ。
今になってそんなことに気付くなんて。
もっと早くに気付いていれば、もっと大切に一日を過ごしていたのに。

35 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:43:06.748 ID:sYGd5xH00
もっと撫でてほしい。
もっと話しかけてほしい。
もっとお風呂に一緒に入りたい。

もっとお散歩をしたい。
もっと海で遊びたい。
もっと山で遊びたい。

もっと春を過ごしたい。
もっと桜を見たい。
もっと小鳥の歌声を聴きたい。

もっと夏を過ごしたい。
もっと力強く伸びた枝葉の緑が作る木漏れ日の下を歩きたい。
もっと青空に浮かぶ入道雲を見ていたい。

もっと秋を過ごしたい。
もっと落ち葉の中を走り回りたい。
もっと月を見上げて、そこに思いを馳せたい。

もっと冬を過ごしたい。
もっと雪に足跡を残し、冷たい感触を味わいたい。
もっと朝の澄み切った空気の中で透き通った空を見上げたい。

もっと……
もっと、ご主人様と一緒にいたい。
もっと、ご主人様の声を聴きたい。

39 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:49:16.773 ID:sYGd5xH00
嗚呼。
たくさんの『もっと』が溢れてくる。
溢れて、こぼれて。



僕はただ、叶う事のない夢を見た。



――肌寒い日が終わり、春が来た。
小鳥の声がそう教えてくれる。
新しい命が芽吹く匂いがそう感じさせてくれる。

今日は、いつもよりもずっと体がふわふわしていた。
瞼を開くのも大変なぐらいだ。
だから匂いと音で、僕は状況を知るしかない。

ほら。
ご主人様が近付いてくる。
跫音が聞こえ、匂いがする。

横になる僕を撫でてくれた。
何度も何度も、撫でてくれた。
お散歩に行こうよと、ご主人様は言ってくれた。

嬉しいなぁ。
行きたいなぁ。
今日、動けるかなぁ。

41 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:51:29.736 ID:sYGd5xH00
/



:;(;∪´ω`);:




(∪´ω`)



(∪´ω`)……おっ



嗚呼、よかった。
動いてくれた。
少し目の前がぼやけて見づらいけど、大丈夫。

ご主人様の匂いを追って、僕は歩く。
家を出て、ご主人様と並んで歩く。
夢を見たからなのか、昔のような気持ちがした。

まるで見知らぬ道のように感じる。
胸が高鳴る。
途中で何度か休んで、そのたびにご主人様が撫でてくれた。

44 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:53:06.826 ID:sYGd5xH00
ζ(゚ー゚*ζ「ゆっくりでいいからね」

ごめんね。

ζ(゚ー゚*ζ「いいのよ、気にしないでね」

ありがとう。
やっぱり、ご主人様は優しいなぁ。
一緒にいられて、本当にうれしいなぁ。

どれだけの時間がかかったのか、それから先の事はよく覚えていない。
だけど、公園に着いたことは分かった。
命の匂いが溢れていたからだ。

いつものように芝生の上に座って、僕は空を見上げる。
柔らかな日差しが降り注ぎ、空の青さを際立たせている。
桜の花は、もう咲いているのかな。

46 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:56:18.433 ID:sYGd5xH00
もう、匂いが何も感じられないんだ。
おかしいなぁ。
さっきまでは、ちゃんと命の匂いがしていたのに。

辛うじてご主人様の匂いだけがしている。
座っているのも辛くなった僕は、芝生の上に寝転んだ。
だけど、ご主人様が僕を膝の上に乗せて撫でてくれた。

本当に、まるで昔みたいだ。
ご主人様がまだ小さかった頃。
僕もまだ小さかった頃。

よくこうして遊んだよね。
僕が眠るまで撫でてくれて、気が付いたらご主人様も寝ていて。
直接肌に感じる温もりがとても心地よくて、安心して眠れたんだ。

何だか。
眠くなってきたなぁ。
でも、寝たくないよ。

せっかく一緒にいるんだから。
せっかくこうしているのだから。
お話をしたり、遊んだりしたいなぁ。

48 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 21:59:35.797 ID:sYGd5xH00
(∪´ω`)お

ζ(゚ー゚*ζ「ど……し……の……?」

(∪´ω`)お……

ζ(゚ー゚*ζ「…………る?」

声が。
声が、聞こえづらい。

(∪´ω`)おっお……

ζ(゚、゚*ζ

(∪´ω`)おっ……

ζ( 、 *ζ

50 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 22:01:58.581 ID:sYGd5xH00
声が聞こえない。
匂いも感じない。
そして、ぼやけていた視界が白く白く染まりつつある。

眩く、柔らかな光に包まれるような感覚。
ご主人様の姿が見えなくなってしまう。


ζ(   ζ


今、どんな顔をしているのだろう。
今、どんなことを話しているのだろう。
ねぇ、ご主人様。

雨が降ってるのかなぁ?
海の水が降っているのかなぁ?
僕の口に、滴が落ちてきているんだ。

少ししょっぱくて、あたたかくて。
ぽたぽたって。
雨に濡れたらご主人様、風邪ひいちゃうよ。

でも、雨とは違うみたいだ。
濡れているのは僕の顔だけ。
体はまるで濡れていない。

52 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 22:05:07.854 ID:sYGd5xH00
じゃあ。
どうしてかな。
どうして……

……考えても分からないや。

眠いなぁ。
ちょっとだけ眠ったら、遊ぼう。
そう思った時だった――


ζ(゚ー゚*ζ「大好きよ、ブーン」


声が聞こえた。
震える声が。
優しげな声が。

匂いがした。
懐かしい匂いが。
愛しい匂いが。

姿が見えた。
最愛の姿が。
失いたくない人の姿が。

僕の望んだ全てが、一瞬だけ手に入った。
もう。
これで十分だ。

54 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 22:08:13.260 ID:sYGd5xH00
眠ってしまっても、大丈夫。
ご主人様が近くにいてくれるから。
僕は、仔犬の頃のように安心して眠れる。




それまで、少しの間。
おやすみなさい、ご主人様――













(∪ ω )

56 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 22:12:05.683 ID:sYGd5xH00
/














――あれ?
体がすごく軽い。
どうしたんだろう?

眠気もないし、体の隅々が動かせる。
起きられるかな?

(∪^ω^)おっ!

すごいや!
さっきまで動けなかったのに、あっという間に起きられた!!
まるで最盛期の頃みたいに体が軽いぞ!!

若さが爆発する勢いだ!!
ご飯だってたくさん食べられそうな気分!!

58 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 22:12:49.626 ID:sYGd5xH00
(∪^ω^)おー

視界良好。
満開の桜の木。
突き抜ける蒼穹。

こんなにいい天気だったんだ。

(∪^ω^)おっ、おっお!!

ご主人様はどこかな?
僕、もうこんなに元気になったから。
一緒に遊ぼうよ!!

あれ?
ご主人様?
どこに行っちゃったのかな?

ねぇ。
遊ぼうよ。
どこにいるの?

(∪´ω`)……お?

置いていかれちゃったのかな?

60 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 22:15:53.250 ID:sYGd5xH00
ζ(゚ー゚*ζ「ここにいるよ、ブーン」

あ!!
いた!!

ζ(^ー^*ζ「寂しかった?」

僕のすぐ後ろに隠れてたんだ!!
流石ご主人様だ!!
すごいなぁ!!

僕全然わからなかったよ!!
でも寂しくなかったよ!!

ζ(゚ー゚*ζ「ねぇ、何して遊ぼうか?」

(∪^ω^)おっおっお!!

何でもいいよ!!
ボール遊びでもお散歩でも追いかけっこでも。
ご主人様と一緒ならそれだけでいいんだ。

61 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 22:18:13.674 ID:sYGd5xH00
春が終わって。
夏が来て。
秋になって。
冬を待って。

海に行って。
山に登って。
舞い散る桜の中、降り注ぐ木漏れ日の下、積み重なった落ち葉の上、しんしんと降り積もる雪をご主人様と楽しめれば。

そうやって一緒にいられる幸せが感じられれば、僕は十分だよ。

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、海に行こうよ!!」

(∪^ω^)おっ!!

やったー!!
じゃあ、バイクに乗っていくのかな?!

ζ(^ー^*ζ「うん、勿論!!」

(∪^ω^)おっ!!

他には誰か一緒なのかな?

ζ(゚ー゚*ζ「ツンちゃんとロマネスクちゃんも一緒よ!!」

(∪^ω^)おっおっ!!

63 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 22:20:48.303 ID:sYGd5xH00
今度はもう、間違えない。
僕はご主人様といる瞬間の全てを大切にする。
そうして僕は。

僕は、歩き出す。
桜の雨の中。
大好きなご主人様と一緒に並んで――





(∪^ω^)

ζ(^ー^*ζ








おしまい



Ending Image Song
[ Love you ] Song by The free design
https://www.youtube.com/watch?v=vHotGkZdcyw

65 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 22:21:23.395 ID:sYGd5xH00
支援ありがとうございました

何かあればお気軽に

66 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 22:22:56.753 ID:V65K+kb8M
結局死んでんじゃねーかwwwwwwww
ワロタwwwwwwww

68 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 22:24:10.246 ID:a1jMclwv0
やっぱりブーン死んじゃってるよねこれ

69 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 22:25:14.930 ID:SB7jOQC+0
死後の世界?

70 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/08/12(水) 22:26:46.661 ID:sYGd5xH00
>>66 >>68 >>69
夢なのか死後なのかは、好きに捉えてくださって結構です

コメント

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する



プロフィール

K-AYUMU

Author:K-AYUMU

最近の記事

最近のコメント

カテゴリー

リンク

ユーザタグ

カ行 タ行 ア行 ちんこ ハ行 サ行 マ行 ナ行 英数字  ^ω^) ('A`) ラ行 1レス ワ行 (´・ω・`) ショボーン ヤ行 ブーン ショボン トソン 'ー`)し ξ゚⊿゚)ξ (,゚Д゚) ドクオ まんこ (=゚д゚) J( 1レス カラマロス大佐 シュー ミセリ (-_-) いよう 川д川 人狼 (∪^ω^) 世紀末 ツンデレ 

FC2カウンター

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。