mesimarja
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ノパ⊿゚)One-Chance(^ω^ )のようです
5 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 19:36:23.926 ID:Ab6mLkTw0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

人は平等ではない。
生まれた瞬間、人間は二種類に分類される。
“それ”を持つ者と、持たない者だ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


7 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 19:37:02.172 ID:Ab6mLkTw0
     /⌒ヽ
     (-ω- )
   _| ̄ ̄||_)_
 /旦|――||// /|
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄| . |
 |_____|三|

私には夢があった。
叶わない夢である。
夢を可能にできないかと勉学に身を捧げ、医学界、物理学界、遺伝子工学界では比肩し得るものなどいない程度の権威にはなったが、夢は叶う見込みがなかった。

知識で補えないのならば金の力でどうにか出来ないかとも考えたが、無駄だった。
大金を積んでも得られるのは紛い物であり、代用品でしかない。
私が欲しいのは唯一無二の本物だけなのだ。

千を越える特許と発明によって一生使いきることの出来ない大金を得た。
しかし私に言わせれば、夢を叶えることの出来ない金などメモ帳以下の価値しか持たない。
齢八十二。

そろそろ死んでもおかしくない年齢だ。

8 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 19:38:38.294 ID:Ab6mLkTw0
     /⌒ヽ
     (-ω- )
   _| ̄ ̄||_)_
 /旦|――||// /|
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄| . |
 |_____|三|

こうして研究室の椅子にもたれ掛かり、朽ち果てるのを待つばかり。
諦める他ないのだ。
いい加減、諦めなければならない。

だがどれだけ分かっていたとしても、夢は止まる事を知らない。
何度殺そうとしたのか分からない。
夢は儚く、決して叶わない夢はこの世にあふれていることを言い聞かせてきた。

何度も何度も、呪詛のように。
己自身の夢を殺そうとしてきた。
それでも、夢は何度でも起き上がり、私の胸を痛めつけた。

胸が締め付けられる感覚は、その都度私に夢を思い出させた。
そしてまた、私は夢を見るのだ。

10 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 19:39:16.013 ID:Ab6mLkTw0
     /⌒ヽ
     (;ω; )
   _| ̄ ̄||_)_
 /旦|――||// /|
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄| . |
 |_____|三|

涙が流れ出る。
無力さに、そして世の中の不平等さに。
何故、私は夢を叶えられないのだ。

ささやかな夢なのだ。
望まずとも叶えられた人間がいる、そんな夢。
私に足りなかったのは何だ?

金?
人望?
いいや、そうではない。

ただ、私にはなかっただけなのだ。

     /⌒ヽ
     (;ω; )
   _| ̄ ̄||_)_
 /旦|――||// /|
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄| . |
 |_____|三|

時間を巻き戻し、確率を変動させ、それこそ運命という存在し得ないものに頼らざるを得ない。
仮に運命、そしてそれを操る者が神であれば、私はその者を絞め殺して運命に宣戦布告をするだろう。

13 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 19:40:34.415 ID:Ab6mLkTw0
     /⌒ヽ
     (-ω- )
   _| ̄ ̄||_)_
 /旦|――||// /|
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄| . |
 |_____|三|

悲観ばかりの八十二年。
もうそろそろ、終わりだ。
私はやるべきこと、やれるだけのことはした。

生きていく希望も、目的もない。
夢が叶わないと悟った時、人は無気力感に襲われる。
そして、速やかなる終焉を望むのだ。

――本当に、そうだろうか?

諦める。
そう。
諦めるのは簡単だ。

だが、抗うべきなのだ。
どのようなことであっても、諦めてはならない。
生きてきたその意味を、ここで失ってはならない。

解決方法なら、すでに分かっているではないか。
時間を遡る。
即ち、物理学に対する反逆である。

15 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 19:43:34.017 ID:Ab6mLkTw0
時間という概念を理解し、逆行する手段を作り上げるのだ。
理論上は可能と言われているタイムトラベルだが、所詮は夢の物質あってのお伽噺。
新たな理論を用いなければ、私の夢は一生叶わない。

最後の希望を胸に、私は新たに研究を始めた。

     /⌒ヽ
     (;ω; )
   _| ̄ ̄||_)_
 /旦|――||// /|
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄| . |
 |_____|三|

研究が完成するまでに要した時間は、三日。
人生で最も長く、そして充実した三日間だった。
遺伝子情報を利用したタイムマシン、“ハローグッバイ”はこうして誰にも知られずに完成した。

私の設計と理論が正しければ、このタイムマシンを使えば母が私を身籠る前に到達できるはずだ。
その過程で私は別人となり、歴史の改変に挑むことが出来る。
予定では私の遺伝子情報を持つ人間、すなわち私の父か母として私は過去に戻る予定になっている。

全ては理論の話であり、実験はしていない。
無論、そのようなことはしない。
私は命を懸けてでも叶えたい夢のために、この装置を作ったのだ。

今さら命惜しさに時間を浪費するなど愚の骨頂だ。
変えて見せる。
変えてやるのだ。

18 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 19:45:31.398 ID:Ab6mLkTw0
私の誕生後、両親が事故で死ぬという運命。
そして、もう一つの運命を。

          /\ /\  /⌒\/../
          / /\  \(^ω^ )./
        ())ノ__ ○二○二⌒/../
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__ ゝ__ノ     ̄(___) ̄  ゝ__ノ

電源を入れ、私はタイムマシンを起動した。
今こそ、運命を変えるのだ。
全ては――








――“姉”を手に入れるために。






ノパ⊿゚)One-Chance(^ω^ )のようです

22 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 19:50:03.974 ID:Ab6mLkTw0
気が付いた時、私はそこにいた。
しかし妙に視線が低いことに気付くのは、少し時間がかかった。
父、もしくは母は小人症ではなかったと思うのだが。

自分の手を見る。
どう見ても子供、それも女の子の手だった。
いくらなんでも戻りすぎだ。

ノハ;゚⊿゚)「あれ?」

実験に失敗した。
まずは冷静に現状を受け入れる。
次に現状の詳細を調べることにした。

この程度の誤差は分かっている。
周囲を見渡し、自分の態勢を合わせて考えるとどうやら私は車の中で眠っていたらしい。
起き上がり、ガラスに映る自分の姿を確認する。

ノパ⊿゚)「……これはなかなか」

かわいらしい女の子だった。
あどけない目元にはどこか凛々しさがある。
将来は美人になる事だろう。

服装を確認。
スカートにシャツ、見かけからして幼稚園もしくは小学校低学年だろう。
名前を確認できるものは特に所持していない。

23 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 19:53:32.815 ID:Ab6mLkTw0
運転席に目を向ける。
助手席に女性、運転席に男性。
両親だろう。

川 ゚ -゚)「どうした? まだ寝てていいんだぞ」

(´・ω・`)「ヒート、何だ起きたのか」

私の名前はヒート、というらしい。
苗字が分かればいいのだが。

ノパ⊿゚)「どこに行くんだっけ?」

川 ゚ -゚)「病院だよ」

ノハ;゚⊿゚)

何という事だ。
現実の私に残された時間はあまりない。
母が私を身籠る前に出会わなければならないというのに。

仮に今の私が母の幼い頃だとしたら、非常に厄介な問題である。
また、遺伝子情報の読み込みに失敗し、両親の親戚や赤の他人となっている可能性も否定できない。
多少変な子供として見られてもいいので、情報を収集しよう。

ノハ;゚⊿゚)「内藤ショボンとクールさんって知ってる?」

27 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 19:59:32.561 ID:Ab6mLkTw0
仮に親戚だという可能性も視野に入れ、私は両親の名前を口にした。

(´・ω・`)「おいおい、それは僕たちの名前だよ」

川 ゚ -゚)「記憶喪失ごっこか?」

ノハ;゚⊿゚)「?!」

馬鹿な。
そんなはずがない。
では、このヒートという少女は私の姉だ。

私が欲していた物が、私自身という皮肉。
何だこれは。
何なのだ!!

冷静になるのだ。
可能性を考えると、私が男ではなく女として産まれた世界なのかもしれない。
男女の生まれる確率は50%。

私が女として産まれたために両親が死なないで済む世界なのかもしれない。
思いがけないところで過去が改変された可能性がある。
しかし、状況が状況だ。

落ち着いて考えなければ、私は全てを失うことになる。

ノパ⊿゚)「き、今日って何月何日?」

川 ゚ -゚)「12月6日だ」

28 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:02:12.364 ID:Ab6mLkTw0
それは、私の誕生日の四十二週間前の日付だ。
つまり、妊娠が発覚するにはちょうどいい頃合いである。
母が病院に行く理由も、おそらくは妊娠の結果を調べるために違いない。

よろしくない。
運命の改変どころではなく、すでに歴史が変わっている。
駄目だ、あまりにも多くの可能性があるため、思考が追いつけない。

川 ゚ -゚)「私のついでに頭でも診てもらうか?」

ノハ;゚⊿゚)「大丈夫!! 大丈夫だよ!!」

猶予は一週間、といったところだろうか。
いや。
違う。

病院に行くという事は、妊娠が発覚したのだ。
そう考えると、猶予は皆無。
私は私の理想の通り、姉を手に入れる。

ただし、私が姉になるという結果だ。
それでは意味がない。
第一、前提がおかしい。

私はタイムマシンで過去に戻ったのだが、まだ何も改変をしていない。
つまり、過去に対して一切の介入を行っていないのだ。
にも拘らず過去が変わっているのは、明らかに不自然だ。

では何が起こったのか、それを考えながら状況をいい方向に向かわせる他ない。
一先ず、そのまま病院まで同行することにした。

31 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:05:16.572 ID:Ab6mLkTw0
ノハ;゚⊿゚)(……じゃあ、これが過去にあった事実なのか?)

正直なところ、過去が何かしらの理由で改変されたことよりもその方が可能性としては高い。
私には姉がいたという事実を受け入れる必要がある。
しかし、私が施設で育てられていた時、姉がいたという話は聞いたことがない。

親戚からもそのような話は聞いたことがない。
ますます理解が出来ない。
そうこうしている内に病院へと到着――

(;´・ω・`)「なっ!?」

――するかに思われたその瞬間、強い衝撃が側面から車を襲い、私の視界は黒く暗転した。

32 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:07:40.373 ID:Ab6mLkTw0
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意識を取り戻した私は、元の研究室にいた。
どうやら安全装置が働いてくれたらしい。
タイムマシンから降り、私は一先ず情報を整理するために席に戻った。

     /⌒ヽ
     (´ω` )
   _| ̄ ̄||_)_
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 |_____|三|

国のデータベースに侵入し、私の戸籍情報を調べる。
過去に姉がいたのか、それを知りたい。

35 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:12:36.887 ID:Ab6mLkTw0
     /⌒ヽ
     (´ω` )
   _| ̄ ̄||_)_
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 |_____|三|

結果は、該当者なし。
やはり私は長男として登録されている。
姉がいた記録はない。

ではあの記憶は一体なんだったのだろうか。
間違いなく私は両親の名前を持つ人物と共に車に同乗しており、何かの衝撃に襲われた。
両親の死因は確かに交通事故だった。

二人で院内の庭を散歩中、ブレーキとアクセルを踏み間違えた車に轢かれたのだ。
あと数秒だけ歩く速度が違えば生き残れただけに、不運としか言えない事故だったと事件を捜査した人間は口をそろえて言っている。
だが、やはりそれは院内での話であって、病院に行く途中の事故ではない。

あの記憶はあらゆるものが狂っている。
事故のタイミングも、何もかもが。
その理由は分からない。

だが、私の研究に間違いはなかった。
それが分かっただけでも価値のある時間だった。
もう一度挑戦すれば、何かが見えてくるだろう。

そして私は、己の甘さが腹立たしく感じた。
安全装置などという保険。
状況判断の鈍さを招いたのは、間違いなくそれが原因だ。

38 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:13:19.032 ID:Ab6mLkTw0
再び装置の設定と改良を行い、安全装置を取り除いた。
もうこの世界に戻ることはないかもしれないが、覚悟は済んでいる。
私は姉を手に入れるため、今の人生に別れを告げる。

例えそれが儚い夢だとしても。
姉のいない人生など、未練はない。

          /\ /\  /⌒\/../
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目指すのは先ほどよりも更に過去。
タイムマシンの特性上、私と血縁関係にある人間としてしか時間を遡ることは出来ない。
だから当初、私は父か母のどちらかになるものだと思っていた。

それが覆ったのは何故か分からない。
あの少女が何者なのかも分からないままだが、問題はない。
少女の年齢を考慮し、更に前にまで戻ればいいだけなのだ。

エンジンを始動し、私はもう一度タイムトラベルを行う――

41 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:16:20.073 ID:Ab6mLkTw0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

( ^ω^)゛

――目覚めた時、私はそこにいた。
どこなのか、いつの時代なのか、どの場所なのかも分からない。
分かるのはただ一つ。
  _
( ゚∀゚)o彡゜ノパ⊿゚)(´・ω・`) (`・ω・´) ( ´∀`)( ・∀・)(,,゚Д゚)(*゚ー゚)(*゚∀゚)(#゚;;-゚)
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(・∀ ・) (-_-) ( ´ー`) (=゚ω゚)ノ ( ゚д゚ )从'ー'从('、`*川从 ゚∀从( ФωФ)ミセ*゚ー゚)リ
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 (  ノ`) ( ,_ノ` )y━・~∬´_ゝ`) l从・∀・ノ!リ人o川*゚ー゚)o<(' _'<人ノ<゚Д゚=> (=゚д゚) < ゚ _・゚>
 彡⌒ミ爪゚ー゚)瓜゚∀゚)爪゚A゚)ノリ, ^ー^)li( ´W`)( ・∀  ∀・)(;;・∀・;;)(・(エ)・)⌒*リ´・-・リ
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   ⊂⌒(  ・ω・) (  ゚¥゚)( `ー´)( ノAヽ)(゚、゚トソン ( ∵)( ゚∋゚) lw´‐ _‐ノvJ( 'ー`)し
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私は、とんでもないところに来てしまったという事だ。
溢れかえるのは人、人、人。
老若男女、全ての人間が同一の質素な服を身につけ、私の周りで天を仰いでいる。

私もそれに従い、空を仰ぎ見る。
そこには青空が広がっていた。
そして、太陽があるべき場所に禍々しい何かが浮かんでいた。

44 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:18:25.756 ID:Ab6mLkTw0
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以

何だ、あれは?
悪魔的な造形のそれは、私たちをまっすぐに見下ろしている。
あのような物が過去に存在したという記録はない。

ここは、どこなのだ。
装置が故障したのか。
装置を直そうにも戻る術がないことを思い出し、一瞬にして私は絶望に青ざめた。

このわけのわからない世界で、私は――

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以 時は満ちた

――世界中に響き渡ったのは、顔に似合わずさわやかな声だった。

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以 戦争だ

私以外の全員が歓声を上げた。
狂っている。
間違いなく、この世界は狂っている。

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以 この世はサバイバル

私以外の全員が声を合わせて連呼する。
サバイバル、サバイバル。

46 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:19:51.412 ID:Ab6mLkTw0
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以 生き残れ、勝ち残れ、そして蹴落とせ

雷鳴とも地鳴とも分からない声が響く。
蹴落とせ、蹴落とせ。

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以 最速で駆け抜けろ、最速でたどり着け

嬌声のような、生き物が歓喜の瞬間を叫び声した音が爆発する。
ゴール、ゴール、ゴール。

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以 チャンスは一度きり

ワンチャンス、ワンチャンス。
耳を聾する大合唱。

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以 貴様らの夢を叶えろ

思考が止まる。
ドリーム、ドリーム、ドリーム。

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以 死ぬか、生きるか

大声なのか、それとも無音なのかも分からない。
感覚が停止し、これまでに私が身につけてきた知識が一方的に溶け出す感覚にあらがうことが出来ない。
デッド・オア・アライブ、デッド・オア・アライブ。

49 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:22:30.407 ID:Ab6mLkTw0
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以 では始めるがいい、夢想者たちよ

声が、跫音が、雄叫びが一斉に私の耳朶を震わせた。
  _
( ゚∀゚)o彡゜ノパ⊿゚)(´・ω・`) (`・ω・´) ( ´∀`)( ・∀・)(,,゚Д゚)(*゚ー゚)(*゚∀゚)(#゚;;-゚)
/ ,' 3ミ,,゚Д゚彡( ´_ゝ`)(´<_` )(*‘ω‘ *)( ><)( <●><●>)<ヽ`∀´> ( ,,^Д^)
(・∀ ・) (-_-) ( ´ー`) (=゚ω゚)ノ ( ゚д゚ )从'ー'从('、`*川从 ゚∀从( ФωФ)ミセ*゚ー゚)リ
 (;^ω^) \(^o^)/|  ^o^ || ^o^ |/^o^\ξ゚⊿゚)ξ ('A`)川 ゚ -゚)ζ(゚ー゚*ζ
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@#_、_@ _、_〈::゚-゚〉(;TДT)||‘‐‘||レ( ‘∀‘)i!iiリ゚ ヮ゚ノルイ从゚ ー゚ノi、从´ヮ`从トリi、゚ー ゚イ`! ( "ゞ)
 (  ノ`) ( ,_ノ` )y━・~∬´_ゝ`) l从・∀・ノ!リ人o川*゚ー゚)o<(' _'<人ノ<゚Д゚=> (=゚д゚) < ゚ _・゚>
 彡⌒ミ爪゚ー゚)瓜゚∀゚)爪゚A゚)ノリ, ^ー^)li( ´W`)( ・∀  ∀・)(;;・∀・;;)(・(エ)・)⌒*リ´・-・リ
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<_プー゚)フ,(・)(・),( ^ν^)( ^^ω)( ∴)( `ハ´)(‘_L’)( ・□・)ハハ ロ -ロ)ハ【+  】ゞ゚)
(’e’)|(●),  、(●)、|( ^ω^)川 ゚ 々゚) ('(゚∀゚∩爪'ー`)y‐ (//‰ ゚)▼・ェ・▼マト#>Д<)メ
   〃∩ ∧_∧(゚A゚* ) | l| ゚ー゚ノlミ*゚∀゚彡¥・∀・¥(十) /▽▽/◎ ) =| )[ Д`]
   ⊂⌒(  ・ω・) (  ゚¥゚)( `ー´)( ノAヽ)(゚、゚トソン ( ∵)( ゚∋゚) lw´‐ _‐ノvJ( 'ー`)し
     `ヽ_っ⌒/⌒cN| "゚'` {"゚`lリ(  ゚∀゚ )(゜д゜@彡 l v lミ ( l v l) ( ^Д^)

人々が走り出す。
道があるのかもわからない場所を一心不乱に走り出す。
押し合い、退け合い、ただただ一直線に駆ける。

(;^ω^)「何だお……これは……」

異様な空間に取り残された私は、改めて今いる場所を見まわした。
見渡す限りの草原と青空。
人々が駆けていく先にあるのは、ヒマラヤほどはあろうかという巨大な雪山。

51 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:24:32.926 ID:Ab6mLkTw0
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以 どうした、戦いを放棄するのか?

( ^ω^)「なぁ、ここはどこだお?」

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以 母なる大地だ

一つ分かった。
こいつは馬鹿だ。

( ^ω^)=3「……知りたいのは何で皆走っているのかと、あんたの正体、それと年代と詳細な地域情報だお」

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以 夢を叶えるために走っている。 そして、それ以外については知らない

改めて小学生でも分かるように質問しようとすると、不気味な顔のそれは先にしゃべり始めた。

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以 この世界にあるのは生と死、そしてゴールだけだ

( ^ω^)「あんたの役割は?」

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以 お前たちをゴールに走らせる、それだけだ

機械的な会話しか出来ないとなると、これ以上の問答は無意味だろう。
私は早々に会話を打ち切ることにし、一先ず他の者と同じように走ることにした。
不思議な物で、いくら走っても息切れすることがないだけでなく、これまでの人生の中で最も速く走っていた。

52 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:27:18.491 ID:Ab6mLkTw0
それでも最後尾の影すら見えることはない。
彼らは皆陸上競技に精通した精鋭なのだろう。
タイムトラベルに失敗した以上、私に出来るのは目の前にある出来事を観察し、それを経験することだけだ。

山が先ほどよりも大きく見えてくると、集団が立ち止まっているのが見えてきた。
何かあったのだ。
あれだけ軽快に駆けていた集団に追いつけるとなると、随分長い間止まっていることになる。
  _
( ゚∀゚)o彡゜ノパ⊿゚)(´・ω・`) (`・ω・´) ( ´∀`)( ・∀・)(,,゚Д゚)(*゚ー゚)(*゚∀゚)(#゚;;-゚)
/ ,' 3ミ,,゚Д゚彡( ´_ゝ`)(´<_` )(*‘ω‘ *)( ><)( <●><●>)<ヽ`∀´> ( ,,^Д^)
(・∀ ・) (-_-) ( ´ー`) (=゚ω゚)ノ ( ゚д゚ )从'ー'从('、`*川从 ゚∀从( ФωФ)ミセ*゚ー゚)リ
 ( ^ω^)「何があったんだお?」 \(^o^)/|  ^o^ || ^o^ |/^o^\ξ゚⊿゚)ξ ('A`)川 ゚ -゚)ζ(゚ー゚*ζ
 @@@リハ´∀`ノゝ从リ ゚д゚ノリli イ ゚ -゚ノl| (ノリ_゚_-゚ノリゝヽiリ,,゚ヮ゚ノi|::━◎┥*(‘‘)*川д川
@#_、_@ _、_〈::゚-゚〉(;TДT)||‘‐‘||レ( ‘∀‘)i!iiリ゚ ヮ゚ノルイ从゚ ー゚ノi、从´ヮ`从トリi、゚ー ゚イ`! ( "ゞ)
 (  ノ`) ( ,_ノ` )y━・~∬´_ゝ`) l从・∀・ノ!リ人o川*゚ー゚)o<(' _'<人ノ<゚Д゚=> (=゚д゚) < ゚ _・゚>
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     `ヽ_っ⌒/⌒cN| "゚'` {"゚`lリ(  ゚∀゚ )(゜д゜@彡 l v lミ ( l v l) ( ^Д^)

私の問いかけに答える者はいない。
彼らの間を抜けて、先頭に出る。

53 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:28:49.077 ID:Ab6mLkTw0
  _
( ゚∀゚)o彡゜ノパ⊿゚)(´・ω・`) (`・ω・´) ( ´∀`)( ・∀・)(,,゚Д゚)(*゚ー゚)(*゚∀゚)(#゚;;-゚)
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     `ヽ_っ⌒/⌒cN| "゚'` {"゚`lリ(  ゚∀゚ )(゜д゜@彡 l v lミ ( l v l) ( ^Д^)

最前列に立った時、私はそこには人二人が並んで通れるだけ広さのトンネルがあるのに気付いた。
高さが極めて低く、車用の物ではない事だけは分かった。
それと同時に、何か奇妙な感覚を覚えた。

このトンネルは山道に通じているのか、それとも別のどこかに通じているのか。
彼らが危惧しているのはそこなのだ。
私も同じだった。

しかしこのトンネル以外に道らしい道はなく、後は草原しかない。
安全に、かつ確実に山に向かうためにはトンネルを通過する他ない。
私と同じく最前列に立っていた男がつぶやく言葉を、私は聞き逃さなかった。

( "ゞ)「……これが第一関門、か」

56 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:30:24.817 ID:Ab6mLkTw0
第一関門。
それは、この先に更に一つ以上の関門が待っていることを意味している。
関門は困難と言い換えられる。

ここは出方を窺うべきだ。
さりげなく後ろに下がり、私は事態が停滞しないように一つ手を打つことにした。

( ^ω^)「こんなところで立ち止まってるってことは、その程度の夢なんだなァ!!」

これが引き金になった。
プライドの高い馬鹿が、先陣を切って走り出した。
その馬鹿とは、最前列にいたあの男だった。

( "ゞ)「俺の夢はでかいんだよ!!」

(´・_ゝ・`) ( ・3・)( ^^)(゜3゜)(゚A゚* ) | l| ゚ー゚ノlミ*゚∀゚彡
(゜д゜@彡 l v lミ『うおおおおおおおお!!』( l v l) ( ^Д^)
( ノAヽ)(゚、゚トソン ( ∵)( ゚∋゚) lw´‐ _‐ノvJ( 'ー`)し

それに続いて、更に大勢が駆け出す。
トンネルという密室に近い空間では、何かが起こった際にすぐ対応することが困難だ。
ならば、斥候を向かわせて様子を見るべきだ。

待ち受ける困難の数が複数という事は、言い換えればチャンスがそれだけあるという事だ。
複数の関門が設けられているのならば、第一関門を疾く通過したところでなんら利益につながるとは思えない。
むしろ猪突猛進の馬鹿がこの訳の分からない状況を自ずと解決してくれるのだと考えれば、ゴール直前までは彼らが先頭でいい。

( ^ω^)「……ふっ」

58 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:32:30.130 ID:Ab6mLkTw0
最後尾にならないよう、しかし中心にいすぎないように注意しながら様子を見守る。
雄々しく響いていた彼らの声が不自然に途切れ、静寂が訪れた。
僅か五秒後の出来事だ。

落盤ではない。
となると、地下に潜ったか。
第二組が出発し、私もそれについていく事にした。

トンネル内部には明かりと呼べるものがなく、暗闇が静かに続いている。
跫音が反響し合い、感覚が狂いそうだ。
だがトンネルに入ってから五秒たっても、一向に変化が訪れない。

無言でトンネルを走破し、五分後には青空の下に戻ってきていた。
若干人間が減っているようにも思えたが、気のせいだろうか。
だがすぐにその興味は失われた。

トンネルを抜けたその先に待っていたのは、聳え立つ巨大な山。
道らしい道はすでになく、鋭く切り立った崖と山肌が待ち受け、高く降り積もった白い雪が不気味に輝いている。
壁のように私たちを見下ろすそれは、神々しささえ感じられる。

ほぼ垂直と言っても過言ではないこの山を己の手足だけで登るには、技術が必要だ。
高度なロック・クライミングの技術。
指先一つで全体重を支え、僅かな突起を頼りに山を登る。

今度は誰が先陣を切るのか、様子を見る。

60 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:34:57.331 ID:Ab6mLkTw0
  _
( ゚∀゚)o彡゜ (´・ω・`) (`・ω・´)
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(・∀ ・) (-_-) ( ´ー`) (=゚ω゚)ノ ( ゚д゚ )从'ー'从
( ^ω^)\(^o^)/|  ^o^ || ^o^ |/^o^\ξ゚⊿゚)ξ ('A`)川 ゚ -゚)ζ(゚ー゚*ζ
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@#_、_@ _、_〈::゚-゚〉(;TДT)||‘‐‘||レ                                    ノパ⊿゚)
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 彡⌒ミ爪゚ー゚)瓜゚∀゚)(;;・∀・;;)(・(エ)・)⌒*リ´・-・リ
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(゚A゚* ) | l| ゚ー゚ノlミ*゚∀゚彡¥・∀・¥(十) /▽▽/◎ ) =| )[ Д`]

ずい、と歩み出たのは意外にも一人の少女だった。
如何にも快活そうなその顔立ち、見覚えがある。
私が一度目のタイムマシンで見た少女だ。

(;^ω^)「……どうなってるんだお」

困惑する私は、彼女が岩壁に指をかけて登る様子を見るしかできない。
それに続くのはごくわずかの人間だけだった。
ロック・クライミングの経験はないが、やるしかない。

探すのは亀裂や突起。
とにかく体を支えるのに適した物を探す。
最も確実なのは、先に登った人間の後を追う事だ。

62 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:37:10.177 ID:Ab6mLkTw0
脚の動きや力の入れ方。
それらを真似すれば、経験の少なさはどうにか補える。
登攀で重要なのは摩擦と重心。

ノパ⊿゚)

(;^ω^)

視線は常に上に向けられ、決して下を見ないようにする。
少女の後を追う途中、私よりも先に登っていた人間が次から次へと落ちて行った。
叫び声もなく、ただ風を切って落ちて行ったのである。

恐怖心で指先が震える。
体内は熱いのに肌は凍るように寒い。
汗が指先に沁み出し、滑りそうになる。

(;^ω^)「……くそっ、何でっ……こんなっ……」

私はただ、タイムマシンで過去に戻ろうとしただけなのに、こんな訳の分からない世界に来てロック・クライミングをすることになろうとは。
集中しようと深呼吸をする。
その瞬間、指先が岩の亀裂からするりと抜けた。

一瞬にして全身から血の気が失せる。
ここで終わる――

ノパ⊿゚)「どんくせぇな、おい」

――はずだった。
落ちかけた私の腕を掴むのは、例の少女だった。
助けられたのだと認識した私は礼よりも先に理由を聞いた。

64 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:39:15.012 ID:Ab6mLkTw0
(;^ω^)「き、君は……」

ノパ⊿゚)「いいから、さっさとここ登りきるぞ」

それから数時間かけて、私は少女と共に崖を登り切り、山道に到着した。

ノパ⊿゚)「……ったく、手間かけさせんなよ」

(;^ω^)「あ、ありがとうだお」

ノパ⊿゚)「礼はいい」

この少女は、比較的まともな人間の匂いがする。
私は一縷の望みをかけて、その少女に問うことにした。

(;^ω^)「あの、ここは一体?」

ノパ⊿゚)「さぁな」

やはり駄目か。

ノパ⊿゚)「雰囲気からして、母体だろうよ」

(;^ω^)「母体?」

ノパ⊿゚)「お前、自分の夢を忘れたのか?」

夢?
忘れるはずがない。
私の夢は姉を手に入れることだ。

67 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:40:53.828 ID:Ab6mLkTw0
ノパ⊿゚)「形を持って、人間として生まれるって夢だよ」

その言葉が意味するところを汲み取ろうとした時、私の頭にある可能性が浮かび上がった。
確かにこの世界は現実であり、そして世界そのものである。
私は今、人ではない。

名も無き数億の精子の一つなのだ。
ゴールとはつまり卵子。
目的とは生まれ落ちる事。

そう考えれば、この世界のあらゆることに説明が付けられる。
こうして他の精子と会話が出来ているというとんでもない展開はさておいて、私は確かにタイムトラベルをしている。
それも、自分が生まれる前の段階で。

この場所が母の膣内であるのならば、外の状況は一切わからない。
それが問題だ。
大問題であり、死活問題でもある。

私は弟として生まれなければならないのだが、まだ第一子が生まれていない可能性もある。
故に、迂闊に生まれる訳にはいかない。
一緒にいるこの少女が目的を果たせば姉は手に入るが、私が生まれない。

私が生まれればこの少女が生まれることはなく、姉が手に入らないかもしれない。
究極の選択が迫られている。

ノパ⊿゚)「大丈夫か?」

(;^ω^)「う、うん。 大丈夫、思い出したお!」

70 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:44:49.452 ID:Ab6mLkTw0
とにかく、今は進むほかない。
最後の瞬間まで、私は考えなければならない。
生き残るのは数億分の一。

たった一人だけが生き残る。

ノパ⊿゚)「ならいいや。 じゃ、あたしは先にいくよ」

(;^ω^)「僕もいくお」

それから、悪路と呼ぶのも生ぬるい岩だらけの山道を歩き始めた。
少女は走るようにして岩を越えていくが、私は足場を確認しながらのため、二人の間には大きな距離が出来ていた。

( ^ω^)(あの少女、私が最初のタイムトラベルで見たのと相違ない姿、声をしていた……)

つまり、タイムトラベルで見た光景と無関係とは言い切ることの出来ない存在だ。
あの光景。
一部だけ切り取られた光景。

交通事故に巻き込まれる目の前の少女と両親。
私の記憶には絶対にない光景だ。
可能性としてあり得るのは、あれが妄想だったか、それとも過去の一つの可能性だったのか。

過去の一つの可能性とは、私が過去を改変するのと同じように、意図せず何かが作用して過去が変わってしまった一つの可能性の姿の事だ。
肌寒さを覚え、意識をこの世界に戻す。
風が冷たいのは、単純に高地に来たからばかりではなく、周囲に残った雪が空気自体を冷やしているのである。

この布きれのような服では気休めにすらならない。
息が白い。
雪を含んだ突風が剃刀のように肌を撫でつけ、思考まで凍り付きそうだ。

71 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:47:16.177 ID:Ab6mLkTw0
それでも私は考えなければならなかった。
夢まであと一歩なのだ。
しかも、私が生まれるかどうかまで関わっているとなれば、最善の手を考える以外の行動は私に許されていない。

当たり前の話だが、精子は受精することがなければあとは死ぬしかない。
三億の遺伝子がその優劣を競い、最も優れた物だけがこの世界に産まれることが出来る。
私は、あの少女を出し抜いて何としても卵子に辿り着かなければならないのだが、そうすると私は姉を失いかねない。

この二択の状況で、私は命を捨てるのが最善だと考えた。
姉が生まれれば、一先ずの前提は確立される。
姉がいないより、姉がいた方がいい。

私がいるより姉がいた方がいい。
つまりはそういうことだ。
ならば、私はここで脱落するべきだろう。

なのに、体は動いてしまう。
分かっている。
これは過去に起こった事象の再現。

私は姉を取らずに己の誕生を選んだのだ。
抗えないのだ。
これはまだ人間ですらない私の存在理由なのだから。

自らの意志で遺伝子戦争から離脱することは許されない。
最後まで全力で挑み、そして勝ち取るように植えつけられた本能。
本能を裏切ることは出来ない。

73 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:49:06.507 ID:Ab6mLkTw0
いわば間接を逆に曲げるような物。
そういう風には出来ていないのだ。
意志と思考を無視し、私は山を登った。

山頂に着くと、そこには青空が広がっているだけだった。
雲は遥か下にあり、走破した草原も霞んで見える。
私を待っていてたのか、頂の平らな石の上に少女が座っていた。

ノパ⊿゚)「……あれだ」

少女が何を指して言っているのか、よく分かった。
山を越えた先に私たちを待っていたのは、見事なまでの青さを持った湖だった。
まるで空がそこにあるような美しさであるが、一点だけ群青色の穴のようなものがある。

ブルーホールだ。
その最深部に何が待っているのか、想像に難くない。
山を下り、そして潜って辿り着けばそれで終わりだ。

ノパ⊿゚)「あんたを助けた理由、教えてやるよ」

( ^ω^)「ぜひ」

ノパ⊿゚)「あの湖の底にゴールがあるんだが、一人で潜るには厳しそうなんだ。
    そこで、手を貸してほしい」

( ^ω^)「……」

真意が分からない。
元々精子は単独で行動するのが普通だが、この少女は行動理念が読めない。
一緒に潜る、などという事は無意味のはずだ。

76 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:52:26.180 ID:Ab6mLkTw0
何を狙っている。
溺死させることを期待しているのなら、それは間違いだ。
潜り始めたら後は目指すだけなのである。

だがここは同意しておこう。
私の目的はこの少女が生まれる事。
つまりゴールさせることなのだ。

だからここで手を貸すことは私にとって利益につながる。
兎にも角にも、この少女をゴールさせればいい。
これなら私も本能に従いながら行動できる。

私は笑顔で了承し、親指を上げた。

( ^ω^)b

そして私たちは、山を下り始めた。
登りの時と同様に険しい道だったが、彼女のおかげで難なく進むことが出来た。
大したものだと感心する頃には、私たちは湖の前に到着していた。

湖の水温は見かけ以上に冷たい。
潜る途中で体が動かなくなる事態は避けたいところだ。
少女は臆した様子もなく湖に足を入れた。

私もそれに従い、足を入れる。
何という冷たさ。
脳髄が凍るようだ。

ノパ⊿゚)「寒いのか?」

78 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:54:28.789 ID:Ab6mLkTw0
(;^ω^)「寒い以外の答えがあるのかお?」

ノパ⊿゚)「ねぇよ」

少女は私の手を取って、先に歩き出す。
その手は不思議な温かさがあり、私にとって初めて感じる感触だった。
雄弁な手だった。

導かれるようにして私たちはブルーホールの手前にやってきた。
改めてみるとその異様なまでの美しさと吸い込まれるような深淵の色に、私の下腹部は熱くなった。
緊張、そして興奮。

命が失われるかもしれない圧倒的な恐怖感は、時に人の精神を当惑させる。
この感覚。
生きているという感覚が、私の最後のタガを外した。

これまでは夢の実現という大義があった。
だが。
生死の狭間に置かれた時、私の気持ちは生きるというその一色に染まった。

ノパ⊿゚)「いいか?」

( ^ω^)「勿論だお」

一歩踏み出す。
そして、沈んでいく。
冷たい水に包まれ、そして視界はすぐに透明な闇に包まれる。

79 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:57:12.981 ID:Ab6mLkTw0
頭上には輝く太陽と乱反射する水面。
降り注ぐ光が柱となって周囲の水を照らし、得も言われえぬグラデーションを作り出す。
そして隣には、姉となる少女。

恐怖はいつしか薄れ、心に残った感情は一つになる。
姉が欲しい。
どうしても姉が欲しい。

何としても姉が必要なのだ。
このぬくもりを与えてくれる存在が。
絶望の縁でも決して諦めない、超越的な存在が。

失いたくないのだ。
この存在を得られないならば、私は生まれる意味を失う。
次の機会はきっと得られないだろう。

生命には一つとして同じものはない。
ここで生まれなければ、もう二度と生れることはない。
私に手を差し伸べてくれたこの少女は、私の代わりにこそ生まれるべきだ。

そしてきっと、弟が生まれた時、その弟は人生で最も尊い存在を手に入れるのだ。
私でないにしろ、姉を持つ弟が生まれるのであれば、それはとても素晴らしいことだ。
残念なのは、その幸せを感じられるのは私ではない事だけ。

頭上の光が星のように小さく、薄くなった。
もう、進むしかない。
息苦しさはない。

80 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 20:59:33.459 ID:Ab6mLkTw0
寒さで体が思うように動かない。
早く、疾く。
そう願った時に、私はこの少女の狙いに気付いた。

早く水底に到着するには、重量が必要だ。
それを手に入れるために、こうして私を利用したのだ。
何というしたたかさだ。

ノパ⊿゚)「……あれだ!!」

( ^ω^)「!!」

やがて、薄ぼんやりと青白く光る何かが見えてきた。
落ちていくにつれて、輪郭が鮮明になる。
仄かに輝く大きな球体。

それは卵子だった。
温かな輝きはその光だけで、そこに入り込めば安寧が約束された揺篭の様な雰囲気を漂わせている。
吹雪の中に浮かぶ篝火、あるいは夜空に浮かぶ月のような圧倒的で雄弁な存在感。

方法はどうあれ、あの中に入った者が生を手に入れる。
さぁ。
全力で目指してくれ。

そうすれば、私の勝ちだ。
遺伝子の本能に従い、命を掴みとるのだ。
私の手を離して、行ってくれ。

チャンスは一度。
このチャンスをものにすれば、私の悲願は成就される。

81 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:03:29.579 ID:Ab6mLkTw0
ノパ⊿゚)

なのに。
なのに、どうして。
どうして、手を離さないのだ。

夢は目の前にあるのだ。
生まれた意味が目の前にあるのだ。
達成するべき目的が目の前にあるのだ。

なのに、どうして手を離さない。
ぎりぎりまで速度を確保するつもりなのか。
それとも、別の思惑があるのか。

ノパ⊿゚)「離さねぇよ」

(;^ω^)「?!」

その言葉は、周囲の雪解け水よりも遥かに私の心を冷やした。
心臓が早鐘を打つ。

ノパ⊿゚)「お前にやる気がないのは知っているけどな、それは許さねぇ」

(;^ω^)「どう、どうして?」

ノパ⊿゚)「弟が馬鹿なことをしそうな時に助けるのが姉なんだよ」

何を。
何を言っているのだ、この少女は。
私に姉はいない。

82 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:06:08.036 ID:Ab6mLkTw0
それは歴然たる事実。
世界がどう変革しようとも決して変わることのない真理であり、真実だ。
妹は手に入る可能性があるが、姉だけは絶対にない。

生まれた順番という時間が制約となるからだ。
その制約を破ることは人間である以上は不可能であり、誰も覆すことの出来ない残酷かつ平等な規律だ。

ノパ⊿゚)「気付いてないとでも思ったのか?
     弟の事を忘れるわけねぇだろ」

(;^ω^)「な、何だ、これは……」

妄想が暴走しているのか。
訳が分からない。
姉のいない私を弟と呼ぶこの少女は、何を知っているのだ。

ノパ⊿゚)「全部だよ、馬鹿。 過去を変えようだなんて、随分と大胆なことしたなぁ」

(;^ω^)「何故、それを知っているんだお?」

ノパ⊿゚)「何度言わせれば気が済むんだよ。 姉だからだよ」

(;^ω^)「あり得ないお!! 私に姉は……!!」

ノパ⊿゚)「ま、覚えてないのが普通だよ。
    その時のあたしは今と同じ、遺伝子情報の一つに過ぎなかったからね」

絶句する他なかった。
私には、生まれなかった姉がいた。
正確に言えば、産まれる可能性がなかった姉がいたのだ。

84 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:08:16.372 ID:Ab6mLkTw0
ノパ⊿゚)「仮に私が先に産まれたとしたらどうなるか、見ただろ?
     あれは現実に起こる事だ」

それは、あの事故の事を言っているのだろうか。
だがあれは――

ノパ⊿゚)「タイムマシンの仕組みはお前がよく知ってるだろ?」

そう。
私のタイムマシンは、正確に言えば時間を物理的に遡るものではない。
遺伝子に刻まれた記憶を追体験する装置なのである。

タイムマシンには学習型演算装置が内蔵されており、過去に使用者の認知していない場所や事件ですら忠実に再現している。
その再現度は、もう一つの世界と言っても過言ではない。
故に、私の行動一つで歴史が変動しても世界が存在するのである。

仮に私がこの世界で死んだとしても、この世界は演算装置によって進歩し続け、今とは違った未来でさえ完璧に創り上げられるのだ。

(;^ω^)「それは……そうだが……」

ノパ⊿゚)「な? お前は産まれるべくして産まれるんだよ」

そうはいかない。
あと一歩で夢が叶うのだ。
それをみすみす諦めてたまるか。

タイムマシンが見せたのはあくまでも可能性の一つ。
絶対に起こり得ることではない。
それに、初めから分かっていたことだ。

85 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:10:07.243 ID:Ab6mLkTw0
これは夢に過ぎない。
現実ではない。
だがそれでいい。

私が追うのは夢なのだ。
私が求めたのは夢なのだ。
私が叶えるのは夢なのだ。

せめて姉を手に入れたという喜びだけでも味わえれば、それでいいのだ。
姉の誕生を祝う事こそ弟の宿命。
彼女を先に送り出すのだ。

そうすれば、形は大きく異なるが私の夢は成就する。

( ^ω^)「……いやだお」

ノパ⊿゚)「分からず屋め」

私は少女の手を振りほどこうとしたが、万力に挟まれているようにびくともしない。
何という腕力。
何という握力。

(;^ω^)「はっ、離すお!!」

二つの精子が一つの卵子に入れば、待っているのは運が良くて流産。
二人が生き残る道はない。

ノパ⊿゚)「うるせぇ黙れ馬鹿!!」

86 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:12:41.458 ID:Ab6mLkTw0
拳が私の顔を捉えた。
顎先を狙った正確な一撃。
しかし人間でない私に脳震盪は期待できない。

痛みはあるが、意識がぼやけることなどなかった。

ノパ⊿゚)「弟なら姉の言う事を聞け!!」

腹部に一撃。
ずしりと響く一撃だ。
呼吸が一瞬止まりかけたが、それしきの攻撃で揺らぐ意志ではない。

そして、掬い上げるような膝蹴りが下腹部を襲う。
男にのみ備わった急所。
多少の手加減はあったものの、その威力は絶大だった。

その油断が次なる攻撃を招いた。
水月を狙った拳の衝撃が、私の意識を遠ざける。
徹底的に抵抗力を奪う攻撃だ。

(;゚ω゚)「ぐっ……ぬぅ……!!」

もう間もなく、卵子に到着する。
私が先に到着するわけにはいかない。
どうあってもこの手を離さなければならないのだ。

ノパ⊿゚)「悪いけどな、これは譲れないんだよ」

89 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:16:44.863 ID:Ab6mLkTw0
激痛に悶絶する私をそっと抱き寄せ、少女はそっと耳元で囁いた。
あまりにも甘く、あまりにも優しかった。
涙が出るほどに。

それが求めた全てであるかのように。
私の求めた夢の結晶であるかのように感じられた。
肌を通じて温もりが私の体を温める。

止めてくれ。

( ;ω;)「やめ……止めて……」

お願いだから。
これ以上、私に夢を見させないでくれ。

ノパ⊿゚)「お前が何度繰り返そうとも、あたしが何度でも止めてやる!!」

その行動。
その言葉。
その信念。

全てが理想そのもの。
だからこそ、貴女がこうして私の傍にいるだけで私は夢を見てしまうのだ。
貴女が姉ならば、私は最高の人生を過ごせただろうと夢想してしまうのだ。

ノパ⊿゚)「大好きだぞ、弟」

最後に、少女は私を突き飛ばした。
水面に輝く青い太陽の光の揺らめきと、少女の影。
それはあまりにも神々しく、荘厳で、そして雄弁な一枚の絵画だった。

92 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:18:59.799 ID:Ab6mLkTw0
卵子に入り込んだ私は、その温かさに眠気を誘われ、意識がぼんやりとしてきた。
嗚呼。
駄目だった。

タイムトラベルをしても、記憶の追体験をしても、私に姉は手に入らないのだ。
どうあがいても。
何をしても、私は姉を手に入れられない。

分かったのは、姉には二種類いること。
一つは、先に産まれて弟の誕生を待つ姉。
そしてもう一つが、産まれる権利を弟に譲る姉だ。

こうして私はまた、姉を渇望する日々に戻るのだろう。
この瞬間の事を忘れて、結局同じ時間を繰り返すだけ。
仮に姉が先に産まれていたとしたら、事故で死んでしまった可能性が高い。

私の作り上げたタイムマシンの計算能力を考えると、限りなく百に近い。
だからこれでよかったのだ。
姉を失わずに済んだと思えば、それでいい。

( ;ω;)

だが私は、諦めたくなかった。
儚い夢であっても。
夢想の一つだとしても。

それでも、姉を手に入れた日々を経験したいのだ。
家族のいる日々を手に入れたいのだ。
ならばどうすればいい。

94 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:19:57.681 ID:Ab6mLkTw0
考えろ。
考えるのだ。
生まれ落ちたその意味、この命の使いどころを今一度考えなおすのだ。

そう考えたが、どうしても私を弟と呼んでくれた少女の声と顔が頭から離れない。
受精のチャンスは一度だけ。
そのチャンスはいわば、遺伝子情報の固まりである精子にとっては産まれた意味そのものだ。

それを明け渡した。
ここで再びそのチャンスに挑むという事は、姉の思いやりを無碍にするという事。
姉に対する最大限の冒涜だ。

そう。
私は。
私は、姉に生かされていたのだ。

姉はいなかったのではなく、産まれていなかっただけ。
姉の底なしの優しさが私を産まれさせたのだ。
このタイムトラベルはそれを知るための旅。

私には姉がいたのだ。
誰よりも優しい姉がいたのだ。
嘆くことは何もなく、望むこともなかったのだ。

それが分かっただけでも、私は救われた。
幾分かの未練はあるが、これでいいのだろう。
これで、いいのだ――

ノパ⊿゚)One-Chance(^ω^ )のようです
                 The En

100 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:23:05.634 ID:Ab6mLkTw0
(  ω )

――否。
断じて、否。
断じて認めない。

どうせ夢なのならば。
どうせ確立と可能性の生み出す幻想の世界ならば。
まだ出来る事がある。

諦めてはならない。
私は諦めることを放棄したのだ。
突き進み、命を懸けてでもこの夢を叶えると誓ったのだ。

不退転の意志。
決して後退しない。
決して揺るがない不動の意志が、私の夢の実現というその一点に向けて意識を極限まで集中させた。

無意味な微睡を打ち破り、私の意識は現実へと戻った。

          /\ /\  /⌒\/../
          / /\  \(゚ω゚ )./  ハァ……ハァ……
        ())ノ__ ○二○二⌒/../
       / /||(二ニ) (___/../ 几l
   γ ⌒ /|Ⅲ||彡Vミ/⌒_ノ二二ノl0
   l| (◎).|l |((||((゚ )/⌒/||三三三・) ||
__ ゝ__ノ     ̄(___) ̄  ゝ__ノ

105 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:25:39.708 ID:Ab6mLkTw0
無理やり起きたせいで、心臓が破裂しそうだ。
危うく永眠するところだったが、夢の中ですら夢を実現できないまま死ぬなど、そんなことは許さない。
姉に生かされたこの命、もう十分なほどに生きたこの命は、最後に夢を見るために燃やし尽くす。

私は気付いたのだ。
たった一つだけ、両者が産まれ、そして両親と共に生き残る道が残されている。
チャンスは一度だけ。

遺伝子に記憶された、私の知らない記憶に対して挑む。
姉を。
両親を。

私の人生を変える一度のチャンス。
それは、私の働き次第だ。
姉が与えてくれたこの命、使う時は今。

          /\ /\  /⌒\/../
          / /\  \(^ω^ )./
        ())ノ__ ○二○二⌒/../
       / /||(二ニ) (___/../ 几l
   γ ⌒ /|Ⅲ||彡Vミ/⌒_ノ二二ノl0
   l| (◎).|l |((||((゚ )/⌒/||三三三・) ||
__ ゝ__ノ     ̄(___) ̄  ゝ__ノ

これが最後だ。
アクセルを捻り、私は最後のタイムトラベルへと挑んだ。

106 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:26:14.819 ID:Ab6mLkTw0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  _
( ゚∀゚)o彡゜ノパ⊿゚)(´・ω・`) (`・ω・´) ( ´∀`)( ・∀・)(,,゚Д゚)(*゚ー゚)(*゚∀゚)(#゚;;-゚)
/ ,' 3ミ,,゚Д゚彡( ´_ゝ`)(´<_` )(*‘ω‘ *)( ><)( <●><●>)<ヽ`∀´> ( ,,^Д^)
(・∀ ・) (-_-) ( ´ー`) (=゚ω゚)ノ ( ゚д゚ )从'ー'从('、`*川从 ゚∀从( ФωФ)ミセ*゚ー゚)リ
\(^o^)/|  ^o^ || ^o^ |/^o^\ ( ^ω^) ξ゚⊿゚)ξ ('A`)川 ゚ -゚)ζ(゚ー゚*ζ
 @@@リハ´∀`ノゝ从リ ゚д゚ノリli イ ゚ -゚ノl| (ノリ_゚_-゚ノリゝヽiリ,,゚ヮ゚ノi|::━◎┥*(‘‘)*川д川
@#_、_@ _、_〈::゚-゚〉(;TДT)||‘‐‘||レ( ‘∀‘)i!iiリ゚ ヮ゚ノルイ从゚ ー゚ノi、从´ヮ`从トリi、゚ー ゚イ`! ( "ゞ)
 (  ノ`) ( ,_ノ` )y━・~∬´_ゝ`) l从・∀・ノ!リ人o川*゚ー゚)o<(' _'<人ノ<゚Д゚=> (=゚д゚) < ゚ _・゚>
 彡⌒ミ爪゚ー゚)瓜゚∀゚)爪゚A゚)ノリ, ^ー^)li( ´W`)( ・∀  ∀・)(;;・∀・;;)(・(エ)・)⌒*リ´・-・リ
( ´_ゝ`)/ ゚、。 /|;;;;| ,'っノVi ,ココつ(-@∀@)( ,'3 )|゚ノ ^∀^)(´・_ゝ・`) ( ・3・)( ^^)(゜3゜)
<_プー゚)フ,(・)(・),( ^ν^)( ^^ω)( ∴)( `ハ´)(‘_L’)( ・□・)ハハ ロ -ロ)ハ【+  】ゞ゚)
(’e’)|(●),  、(●)、|( ^ω^)川 ゚ 々゚) ('(゚∀゚∩爪'ー`)y‐ (//‰ ゚)▼・ェ・▼マト#>Д<)メ
   〃∩ ∧_∧(゚A゚* ) | l| ゚ー゚ノlミ*゚∀゚彡¥・∀・¥(十) /▽▽/◎ ) =| )[ Д`]
   ⊂⌒(  ・ω・) (  ゚¥゚)( `ー´)( ノAヽ)(゚、゚トソン ( ∵)( ゚∋゚) lw´‐ _‐ノvJ( 'ー`)し
     `ヽ_っ⌒/⌒cN| "゚'` {"゚`lリ(  ゚∀゚ )(゜д゜@彡 l v lミ ( l v l) ( ^Д^)

そして再び、混沌のただなかで私の意識は目覚めた。

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以 時は満ち――

悪魔的造形をしたそれが言葉を発した瞬間、私は走り出した。

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以そ あ、こら

それにつられて、全員が言葉を聞くことなく走り出す。
これでいい。
まずは時間の短縮だ。

108 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:27:44.704 ID:Ab6mLkTw0
続いて第一関門のトンネル。
ここは前と同じようにけしかける。

( ^ω^)=3「口先だけの能無しかよ、お前ら」
  _
( ゚∀゚)o彡゜ (´・ω・`) (`・ω・´) ( ´∀`)( ・∀・)(,,゚Д゚)(*゚ー゚)(*゚∀゚)(#゚;;-゚)
/ ,' 3ミ,,゚Д゚彡( ´_ゝ`)(´<_` )(*‘ω‘ *)( ><)( <●><●>)<ヽ`∀´> ( ,,^Д^)
(・∀ ・) (-_-) ( ´ー`) (=゚ω゚)ノ ( ゚д゚ )从'ー'从('、`*川从 ゚∀从( ФωФ)ミセ*゚ー゚)リ
\(^o^)/|  ^o^ || ^o^ |/^o^\ξ゚⊿゚)ξ川 ゚ -゚)ζ(゚ー゚*ζ
 @@@リハ´∀`ノゝ从リ ゚д゚ノリli イ ゚ -゚ノl| (ノリ_゚_-゚ノリゝヽiリ,,゚ヮ゚ノi|::━◎┥*(‘‘)*川д川
@#_、_@ _、_〈::゚-゚〉(;TДT)||‘‐‘||レ( ‘∀‘)i!iiリ゚ ヮ゚ノルイ从゚ ー゚ノi、从´ヮ`从トリi、゚ー ゚イ`! ( "ゞ)
 (  ノ`) ( ,_ノ` )y━・~∬´_ゝ`) l从・∀・ノ!リ人『ああああああああああああああああああああああ』o川*゚ー゚)o<(' _'<人ノ<゚Д゚=> (=゚д゚) < ゚ _・゚>
 彡⌒ミ爪゚ー゚)瓜゚∀゚)爪゚A゚)ノリ, ^ー^)li( ´W`)( ・∀  ∀・)(;;・∀・;;)(・(エ)・)⌒*リ´・-・リ
( ´_ゝ`)/ ゚、。 /|;;;;| ,'っノVi ,ココつ(-@∀@)( ,'3 )|゚ノ ^∀^)(´・_ゝ・`) ( ・3・)( ^^)(゜3゜)
<_プー゚)フ,(・)(・),( ^ν^)( ^^ω)( ∴)( `ハ´)(‘_L’)( ・□・)ハハ ロ -ロ)ハ【+  】ゞ゚)
(’e’)|(●),  、(●)、|( ^ω^)川 ゚ 々゚) ('(゚∀゚∩爪'ー`)y‐ (//‰ ゚)▼・ェ・▼マト#>Д<)メ
   〃∩ ∧_∧(゚A゚* ) | l| ゚ー゚ノlミ*゚∀゚彡¥・∀・¥(十) /▽▽/◎ ) =| )[ Д`]
   ⊂⌒(  ・ω・) (  ゚¥゚)( `ー´)( ノAヽ)(゚、゚トソン ( ∵)( ゚∋゚) lw´‐ _‐ノvJ( 'ー`)し
     `ヽ_っ⌒/⌒cN| "゚'` {"゚`lリ(  ゚∀゚ )(゜д゜@彡 l v lミ ( l v l) ( ^Д^)

素晴らしい。
ほぼ全員が走り出してくれた。
私の予想ではこのトンネルは男性器の末端。

女性器と接続される前に運悪く流れ出てしまう先走り共が選別される場所だ。
数人はトンネルを突破できるかもしれないが、大部分は削ることが出来る。
ライバルは必要ない。

109 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:29:14.816 ID:Ab6mLkTw0
この世界に必要なのは、私と姉だけだ。
安全の確認されたトンネルを走り抜け、私は分岐点である山の前に到着した。
生き残った遺伝子たちが目の前の山に挑む中、私は周囲を見渡した。

あるはずなのだ。
もう一つの湖に通じるもう一つの道が。
姉は山を登り始め、私には目もくれていない。

今はそれでいいのだ。
私が続いて登攀すれば、最初と同じことが繰り返される。
それでは意味がない。

私は山沿いに歩き出した。
大きな岩と高く降り積もった雪の道を一心不乱に進む。
ろくな服装ではないため、指先の感覚が雪をかき分けるごとに失われる。

吹き付ける風はそれだけで人を殺せそうなほどに冷え込んでおり、鼻水は自然と垂れてきて凍り付き、息が苦しくなる。
鬱蒼と生い茂る針葉樹の林を抜け、氷の浮かぶ川を渡った。
緩やかな坂を上り、そして私は見つけた。

木々に囲まれた黒い湖。
それは、一種のブルーホールであり、地底湖へ通じる湖でもあった。
陽光は期待できない。

手さぐりで進むほかないのだろう。
だがそれがどうした。
進めるのならば、進むだけだ。

111 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:30:54.283 ID:Ab6mLkTw0
突き刺すような温度の湖に飛び込み、私は暗い水底を目指した。
一人で潜ると改めてその冷たさが分かる。
体を動かすだけでも辛い。

二人ならば心細いという事もなく深層に辿り着けただろう。
しかし今は一人。
姉を、未来を手に入れるという一念で動く私が一人。

冷たさごときで動じる夢ではない。
黒一色の世界が続く。
どれだけ泳いだのか分からない。

目的のものが一行に見えてこない。
ならば、力で攻めるだけ。
私は水底に向けて、更に速度を上げた。

気が付けば、末端部の感覚はなくなっていた。
腕があるのか、足があるのかも分からない。
意識が消えつつある。

理由は分かっている。
卵子へと到達できなかった精子の末路は死の一択。
それが近付いているのだ。

計算上、精子は三日ほど生き残ることが出来るらしいが、ここに来るまでに使った正確な時間は分からない。
私の感覚が現実世界の時間とずれている可能性も否定はできない。

( ゚ω゚)「……!!」

112 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:31:19.108 ID:Ab6mLkTw0
その時、やっと視界に写った。
仄かに光る青白い輝き。
それは輝きを隠すようにして水底に沈んでいた。

そう。
もう一つの卵子。
賭けは、私の勝ちだ。

卵子は希に二つ排卵される時がある。
その卵子が二つとも着床すると、二卵性双生児が産まれる。
私が狙ったのは二卵性双生児としての誕生だ。

これならば私と姉の両者が生き残ることが出来る。
そうすれば確実に出産は時間を要するし、母体の回復にも時間が必要になる。
両親が出産後の散歩で事故に巻き込まれることも回避できる。

私には勝算があった。
遺伝子が記憶している情報は非常に正確だが、それ故に生じる可能性がある。
最初の遺伝子競争の際、私は他の者と同じ道を選び、卵子と出会った。

つまり、卵子はその位置にあったという事だ。
この前提は覆らない。
だが仮に、私が別の道を選んだとしたらどうなるのか。

それが突破点だった。
私が産まれることを遺伝子が記憶しているのならば、私の誕生は揺るがないはずだ。
揺るがないという事は、私の進む先には卵子があるという事。

115 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:33:05.772 ID:Ab6mLkTw0
つまり、別の道を選んだとしてもそこには卵子が待っている可能性が極めて高いのである。
現実には起こりえないことも、この世界ならば起こり得る。
誤算があったとしたら一つだけ。

もう私の四肢の感覚がなくなり、意識もひどい酩酊状態に似た状態であることだけだ。
感覚は失われ、僅かな輝きに向かってただ力なく落ちていくだけである。
それでも意識の糸を手放すことはしない。

手を伸ばす。

( ゚ω゚)(もう……すこ……し……)

少しずつ近づいていくにつれ、昔の記憶がよみがえってくる。
親戚の家で味わった屈辱。
自立するまでの苦労。

何より強く思いだすのは姉を持つ友人を見た時の嫉妬の心。
母がいなくても、父がいなくても。
その人物一人がいるだけで全てが事足りると気付いたその瞬間。

母性、父性、慈母の心も全て持ち合わせた究極的な存在。
それが姉なのだと分かってから、私は姉を手に入れるためにあらゆる勉強に力を注いだ。
同級生が恋に興じる中、私は遺伝子工学を学び、姉の優秀さを研究した。

いない姉を想い、過ごす日々。
それは果てしなく無意味で虚しい日々。

( ゚ω゚)(夢が……やっと……)

116 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:33:44.419 ID:Ab6mLkTw0
それも。
これで終わる。

( ゚ω゚)(これ……で……)

私はただ姉を想い、夢を想い、夢を叶え――























('A`)「へっへっへ!! わりぃな!!」

122 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:35:50.612 ID:Ab6mLkTw0
――私のすぐ後ろに現れたのは、一人の男だった。
ただ沈むだけの私とは違い、その男は両手に巨大な石を掴んでいる上に生気に溢れていた。
水中に落ちる速度も必要な力も、その男の方が有利。

最後の最後に油断した。
他の参加者は皆あの雪山を越えるものだと考えていた。
そうではない者がいるのは、遺伝子の生存競争では当たり前のことだ。

('A`)「ひゃっはあああ!! 孕ませてやるぜぇぇぇ!!」

追いつけない。
自由落下するしかない私に対して、あの男は道具を持っている。
追いつけっこない。

('∀`)「孕め孕め孕めぇぇぇ!!」

最悪の最後。
もう、タイムトラベルは出来ない。
この男が私に代わってあの少女の双子の弟になるのか。

嫌だ。
絶対に嫌だ。
私が弟でなければ意味がない。

意地を。
意地を見せるのだ。
ここが。


この瞬間こそが、本当に最後のワンチャンス!!

126 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:39:56.996 ID:Ab6mLkTw0
( ゚ω゚)「させるかああああああああああああああああ!!」

その手は、すれ違う寸前に男の足首を掴んだ。

(;゚A゚)「ちいっ!!」

力の限り引き寄せ、男の下腹部に備わった急所を握り潰した。
肉袋に水が詰まった何かが爆ぜるような感触。
それは、男の両手から石を奪うだけでなく行動を一瞬忘れさせるだけの威力があった。

声にならない悲鳴を上げる男の顔を、力任せに殴りつける。

( ゚ω゚)「おおおおおおお!!」

(#'A`)「くおああああああ!!」

男も足をばたつかせ、私の顔を蹴りつけた。
しかし片足。
その威力は半減する。

私は更に男を引き寄せ、組み付いた。
そこから繰り出すのは頭突き。
最も分厚く攻撃力に富んだ額の骨を、男の鼻面目掛けて叩きこむ。

(;゚A゚)「ぐっ!!」

男も黙ってはいない。
玉を奪われた男の怒りは計り知れず、肘を執拗に私の首元にぶつけてきた。
反射的に首がその打撃を受けた方向に曲がり、待ち構えていた肘が側頭部を襲う。

130 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:45:02.154 ID:Ab6mLkTw0
脳震盪など無関係。
痛みに耐えれば、次に攻撃を加えるチャンスを持っているのはこちらだ。
中指を尖らせ、拳を握る。

狙うのは喉仏。
男が睾丸を潰された痛みに前かがみになったため、その攻撃は男の額を直撃した。
残り数秒。

生き残るのは一人だけ。

( ゚ω゚)「あああああ!!」

(#'A`)「ならああああ!!」

私の拳が。
男の拳が。
互いの頬を打ち抜く。

   (⌒\  /⌒ヽ
    \ ヽヽ( ゚ω゚)
     (mJ     ⌒\
      ノ ∩   / /
     (  | .|/⌒ヽ
  /\丿 | (    )
 (___へ_ノ ゝ__ノ

私の脚が。
男の脚が。
互いの脇腹を直撃する。

135 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:48:40.981 ID:Ab6mLkTw0
衝撃が体を襲う。
意識と記憶の混濁が始まる。
こんな時でさえ、私は姉という生き物について考え続けていた。

姉とは何なのだろうか。
先に生まれた肉親の女性は皆等しく、ただ一つの例外もなく姉なのだろうか。
いいや、違う。

それが証拠に、私はすでに精子の段階で姉に会っているではないか。
その姉は産まれることこそ叶わなかったが、確かに存在していた。
それは否定できない。

姉とは生き様であり、あり方なのだろう。
弟の指針であり、目標であり、支えでもある存在。
それら全てを含めて、姉なのだろう。

何をすれば姉、ではなく。
何を持っているから姉、でもなく。
姉としてある事こそが、姉なのだ。

ならば、そこに血のつながりは本当に必要なのだろうか。
ならば、そこに年齢の差は必要なのだろうか。
例え年下の女性でも、姉に成り得るのではないだろうか。

そうだ。
全ての女性には、姉になる可能性が秘められている。
これは、つまり、姉という生き物は年齢や血縁に関係なしに存在するのだという証明に他ならない。

だというのに私は血縁と年齢にこだわりすぎていた。
こだわる必要などないのに。

141 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:52:56.301 ID:Ab6mLkTw0
( ゚ω゚)「お前なんかに!!」

だけど。
だけど。
だけど。

あの少女が私の姉になるのならば、それはとても素晴らしいことだ。
私はあの少女が姉になることを望んでいる。
姉ならだれでもいいのではなく、あの少女が姉になってほしいと心から望んでいる。

( ゚ω゚)「お前なんかにいいいい!!」

中指を立てて、男の両耳に突っ込む。
傷つけ、抵抗力を奪う技ではない。
殺傷し、生命活動を絶つ技だ。

(;゚A゚)「あぴゅ?!」

そして、動かなくなった男を蹴り飛ばし、卵子から離れさせる。
精根尽き果てた私は最後の力を振り絞って卵子に手を伸ばし、そしてその中に入り込むことが叶った。
後はただ、眠気に身を任せるだけ。

  ⊂ ⊂ヽ、
   c、   `っ
    (   v)
      ヽ_ノ

最早感覚も意識も、溶けるようにして消えていく。
手足はあるのか。
体はあるのか。

143 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 21:56:42.177 ID:Ab6mLkTw0
それも分からない。
温かい何かと溶けて一つになるようで、とても気持ちがよかった。
そして、これが私の最後の記憶となる。

再び意識を取り戻した時。
この記憶は消えている事だろう。
この気持ちも、この努力も。

所詮は泡沫のもの。
産まれれば後は、必死に生きるだけ。
姉に対する強い思いも何もかもが消え、私は生きていく事だろう。

それでいい。
姉が産まれ、私が産まれれば。
それが私の夢なのだから。

それを見ることが叶わないのは、少し残念だ。

(  ω )

後のことは、タイムマシンに記録された私の可能性に任せよう。
現実世界ではなし得なかったことを果たした私。
どうか幸せな人生を。

147 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 22:01:02.141 ID:Ab6mLkTw0
人生は一度きり。
全ての瞬間が一度のチャンスしかない。
そのチャンスを逃すことなく、幸せになってくれ。

大丈夫。
私なら、きっと。
きっと、大丈夫だから。

だから。
もう。
意識を手放そう――



嗚呼――


   もう――


     意識が――


         溶けて――


             一つに――

148 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 22:04:39.468 ID:Ab6mLkTw0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

          「内藤さん、おめでとうございます!! 元気な双子ですよ!!」

        「あぁ。 ……生まれてきてくれてありがとう。 そして初めまして、だ」

                      ノハ´⊿`)(´ω` )

     「……見ろ、ショボン。 もう二人で手を繋いでる。 きっと、いい姉弟になるぞ」



                    おねーちゃんす
                ノパ⊿゚)One-Chance(^ω^ )のようです
                                         おしまい
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

149 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 22:05:11.862 ID:Ab6mLkTw0
支援ありがとうございました!
これでおしまいです
質問とか感想とかあればうれしいです

151 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 22:06:09.804 ID:cTFsyygia
その後が知りたい

156 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 22:10:21.579 ID:Ab6mLkTw0
>>151
ハッピーエンドになります

157 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 22:11:44.389 ID:3P5Z8BKo0
おねーちゃんすだったのかよ

159 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 22:12:51.491 ID:eVFjmTcq0
今投稿してもまとめられないから意味ないよな

160 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 22:13:52.271 ID:Ab6mLkTw0
>>157
ダブルミーニングとかいうやつです

>>159
まとめられることが目的ではないので意味はありますよ!

161 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 22:13:56.685 ID:cTFsyygia
これ82才の姉がいないブーンは死んじゃったのかな

163 名前:以下、転載禁止でVIPがお送りします:2015/09/27(日) 22:18:15.043 ID:Ab6mLkTw0
>>161
するどい着眼点に脱帽です
詳しいタイミングなどはご想像にお任せいたしますが、
出産前にはもう老衰で死去してしまいます。
ですが、姉を手に入れた方のブーンはタイムマシンの説明であったようにデータ上で生きていきます

コメント


良い話だった
[2015/10/05 00:12] URL | #- [ 編集 ]


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