mesimarja
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ノパ⊿゚)それでも勝負は続くようです( ゚д゚ )
1 名前: ◆39an787z3o :2016/04/02(土) 21:32:55.743 ID:YYfpLl5c0
   
ノパ⊿゚)「ミルナ! あの木のところまで競争だ!」

( ゚д゚ )「ガッテン!」

大人の膝ほどまでしか背丈のない二人が駆け出す。
小さな手足を必死に動かし走る姿は何とも愛らしい。
周りの大人は微笑ましげにそれを眺めていた。

ノパ⊿゚)「うおおおおおおお!」

( ゚д゚ )「うおおおおおおお!」

どたばたと駆ける方向。木の下には彼らより少しだけ大きな女の子が待っている。
黒く長い髪を風にたなびかせながら彼女は二人を待っていた。

彼らの姿が近づいてくると、彼女は片手を高々と掲げる。
その腕が降ろされたとき、二人に勝敗が言い渡されるのだ。

二人の心臓は走ったために起きる激しい鼓動だけではなく、
期待と希望に膨らむ鼓動も内包してリズムを刻む。
地面を抉りながら、彼らは木の真横を通り抜けた。

川 ゚ -゚)「――引き分け!」

彼女が高らかに告げたのは、
片方の勝ちでもなければ、片方の負けでもなかった。


2 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 21:34:52.300 ID:YYfpLl5c0
  
ノパ⊿゚)「ミルナァ! 体力テストで勝負だあああ!」

( ゚д゚ )「受けて立ぁつ!」

高校生にもなって、同い年の男女が何をしているのだ、と思うことだろう。
彼らの同級生は思い続けて早二年と少し経った。
もはや二人のやりとりに関しては何も突っ込むまい、というのが暗黙の了解だ。

ノパ⊿゚)「まずは50m走!」

( ゚д゚ )「よしきた!」

先日行われた体力テストの結果が書かれた用紙を彼女が持ち出すと、
呼応するように男の方もポケットから折りたたまれた用紙を取り出す。

二人はまるで賞状のようにそれを目の前に掲げた。

ノパ⊿゚)「5秒31!」

( ゚д゚ )「5秒31!」

同時に叫ばれた秒数は見事に一致している。
寸分の狂いもない。

二人は互いにぐぬぬ、と顔を見合わせながらも、
すぐに気を取り直して次の種目へと移行していく。

4 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 21:36:15.664 ID:YYfpLl5c0
  
( ゚д゚ )「握力!」

ノパ⊿゚)「おう!」

( ゚д゚ )「左右35!」

ノパ⊿゚)「左右35!」

( ゚д゚ )「またか!」

ノパ⊿゚)「まただ!!」

走り幅跳び、前屈、腕立て伏せ。
次々に種目は変わるが、
引き分けるという結果だけはどうにも変わらない。

ノパ⊿゚)「これで最後! シャトル・ラン!」

( ゚д゚ )「205回!」

ノパ⊿゚)「205回!」

頭を抱えた二人の呻きが中庭だけに留まらず、
校舎の中にまで響いていく。

5 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 21:38:13.874 ID:YYfpLl5c0
  
VIP高等学校三年の名物コンビ。
家が隣同士の幼馴染。
幼稚園から高校までずっと一緒に上がってきた仲だ。

近所のみならず、同校出身者ならば、彼らのことを知らぬ者はいない。
彼らが名物コンビと呼ばれたのは何も高校生になってからのことではないのだ。
それこそ、幼稚園年中の頃には先生達から密かにそう呼ばれていた。

彼らの仲について問われたとき、知り合い一同はこぞって妙な呻き声を上げる。
良い、といえば良いのだろう。

共に登下校をし、同じ部活に入り、テスト前にはどちらかの家でテスト勉強をする。
仲が悪い、とは口が裂けてもいえない。
しかし、彼ら二人がごく普通の友情、もしくは愛情を育んでいるのか、
と問われれば、それもまた微妙な話であった。

二人はセットである。
だが、彼らは仲良く買い食いをして帰るわけでも、
昼食と一緒に食べるわけでも、休日に和気藹々と遊ぶわけでもない。

登下校の時間が同じだから、家の方向が同じだから、共に帰るだけ。
言葉を交わすのも、部活が同じなのも、一緒に勉強するのも、必要だからこそだ。

まだ齢18でしかない彼らにこのような言葉を当てはめていいものかどうかはわからないが、
周囲の人間達としてもその言葉しか彼ら二人を現すことができない、と考えている。

つまり「永遠のライバル」というやつだ。

7 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 21:40:10.343 ID:YYfpLl5c0
   
ノパ⊿゚)「また引き分けかあああああああ!!」

三年二組、素直ヒート。
いつも快活。元気一杯に走りまわる姿がよく見られる。
陸上部に所属している彼女の俊足を知らぬ者はいない。
県大会に出場するほどの実力を持つ。

( ゚д゚ )「くっそお!」

三年五組、東風ミルナ。
普段は寡黙で、男気溢れる男だ。
彼がそれを崩すのは、ライバルたるヒートを目の前にした時のみ。
陸上部に所属し、知らぬ者のいない俊足を持っている。
当然、県大会にも出場し、毎回好成績を残している優等生だ。

今日も今日とて、二人は競い合う。
学校生活に関することから、私生活まで。
彼らが争わずにすむ事柄は殆どない。

ノパ⊿゚)「これで0勝0敗4万飛んで521引き分けだ!」

( ゚д゚ )「次こそは勝つ!」

日がな一日、年がら年中競い続けてはいるものの、
彼らの間に決着がついたことは一度たりともなかった。

8 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 21:42:13.850 ID:YYfpLl5c0
   
全ての始まりは幼稚園の頃だ、と彼らは言う。
彼らは幼稚園からの帰り道、
ふと思いつき、競争をすることにしたらしい。

木の下に先についたほうが勝ち。
そんな、おかしなところのない、
誰でも一つや二つ持つ幼少期の思い出。

ヒートの姉、クールが審判を務め、
二人の結果を見守り、判決を下してくれた。

残酷なまでに公平な審判。

川 ゚ -゚)「――引き分け!」

高く響いたその声は、未だに二人を縛り付けている。
引き分けでは駄目だったのだ。
どちらか片方が泣くことになったとしても、
勝敗は決するべきであった。

そうすれば、彼らが未だに競い続けることはなかったのだ。
意地をはり続けてきた結果、
最早、どちらかが勝者となり、敗者となるまで、
勝負の舞台から降りることはできなくなっていた。

9 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 21:44:23.873 ID:YYfpLl5c0
  
二人が県大会へ出場した際に、
新聞部がとったインタビュー記事などは、
同学年連中には伝説として面白おかしく崇め奉られている。

記者は二人に同じ質問を投げた。
早く走るために必要なものは? という、ごく普通の問いかけだ。

問題は、返ってきた答えにある。

ノパ⊿゚)「競う相手。
     私にとってのミルナのような」

( ゚д゚ )「競う相手。
    オレにとってのヒートのような」

まさかここまで同じとは、と
作成段階に入った時点で新聞部連中は大笑いだったという。

さらに、製作を進めていくと出るわ出るわ同回答。
結局、完成品を眺めてみると、別々にインタビューをとったとは思えない、
また、別の人間への問いかけとは思えないような、
コピペ感丸出しの記事になってしまった。

流石にそのまま学校新聞として貼りだすのには迷いがあったらしいが、
最終的には半笑いを浮かべた状態で、通常の倍もの数を刷り上げ、
各学年の掲示板のみならず、正門や下足室、職員室前に購買にまで貼りだしたあたり、
新聞部の性格が良く滲み出た事件だったともいえる。

10 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 21:46:20.566 ID:YYfpLl5c0
   
ヒートとミルナが同じクラスになったことは一度もない。
一年生時は偶然によるものだっただろうけれど、
次の年からは教師陣による意図のもと、
別のクラスになっているのは間違いなかった。

何せ、別のクラスにしていても二人はうるさい。
普段は口数の少ないミルナだが、ヒートを前にしたときのうるささといったら、
選挙カー以上の不快感を生み出すのだから驚きだ。

ノパ⊿゚)「小テストの点数で勝負だあああ!!」

( ゚д゚ )「いや、オレんとこまだやってないから」

ノパ⊿゚)「なぜだああああああ!!」

(#゚д゚ )「知るか! 時間割の関係だ!
    とっとと帰れ!」

教室にやってきたヒートを追い返すのは日常茶飯事で、
クラスメイトとしては、どうせ引き分けるのだから
放課後にまとめて結果発表をしてしまえばいいのに、と思わずにはいられない。

せめて、どちらか片方が脳筋でもう片方が頭脳派であるならば良かったのだが、
残念ながら彼らはどちらも完全なる脳筋であった。

寡黙なミルナは一見すると勉強ができそうだが、
実際のところ、テストの点はボロボロで、ギリギリの赤点回避が常だったりする。

12 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 21:48:26.463 ID:YYfpLl5c0
   
テスト期間が終わり、答案用紙が返却される頃になると、
ミルナのクラス、もしくはヒートのクラスにて、
50点未満の悲しい暴露大会が始まるのがお約束となっている。

それを聞き、ある者は情けない、と涙を流し、
またある者は自分以下がいる、と胸を撫で下ろすのだ。

ミセ*゚ー゚)リ「ヒートちゃん、どうだった?」

体力テストの結果を携え、意気揚々とクラスを出て行き、
授業開始直前になって帰ってきたヒートへ声をかける。

ノハ;゚⊿゚)「また全部引き分けだった……」

肩を落として帰ってきている姿を見れば、
結果など一目瞭然だったのだが、形式美としては聞いておかねばなるまい。
中学時代からヒートと友人関係を築いているミセリはケラケラと笑い声を上げた。

ミセ*゚ー゚)リ「だと思ったー」

ノパ⊿゚)「だが、次こそは!」

ミセ*゚ー゚)リ「それ、百回以上確実に聞いてる。
      耳タコだよぉ」

ノパ⊿゚)「私は負けんぞおおおおお!!」

ミセ;゚ー゚)リ「ちょっ、音量音量」

13 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 21:50:26.845 ID:YYfpLl5c0
  
ノパ⊿゚)「次の大勝負は中間テストだ」

ミセ*゚ー゚)リ「どーせ、小テストやら競争やら早食いやらするんでしょ」

ノパ⊿゚)「勿論!」

ミセ*゚д゚)リ「はぁ……。
      あんた達ってマジで成長しないよねぇ」

ノパ⊿゚)「身長体重の競い合いはしないぞ。
     それは不公平だからな!!」

ミセ*゚ー゚)リ「知ってる」

それなりに友人をしてきているミセリとしては、
年頃の乙女らしく恋話をしてみたり、
帰り道にクレープを食べたりしてみたいのだが、
どうにもヒートにはその気が全くない。

女子力を磨く暇があるのならば、
勝負のための力を養う、という気概が透けて見えるどころか、
眼前に押し付けられそうな勢いで存在している。


ミセ*゚ー゚)リ「あ、でもさぁ」

14 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 21:52:15.543 ID:YYfpLl5c0
  
( ^ω^)「ヒートは帰ったのかお?」

( ゚д゚ )「あぁ」

( ^ω^)「それにしても、相変わらず凄かったおねぇ」

( ゚д゚ )「うるさくしてスマン」

( ^ω^)「別にいいお。慣れっこだお」

寡黙に戻ったミルナへ話しかけているのは、
小学校時代からの友人であるブーンだ。
ヒートのやかましさも、
それに対応する時のみテンションが上がるのか騒がしくなるミルナにも慣れている。

( ^ω^)「それにしても、ヒートは凄いお。
      男子の中でも運動神経の良いミルナと引き分けるなんて」

( -д- )「体力馬鹿なだけだ」

( ^ω^)「うかうかしてたら本当に負けちゃうお」

( ゚д゚ )「それだけはない。
    運動でも、勉強でも、オレは絶対に負けん」

( ^ω^)「じゃあ、今度のは丁度いい機会おね」

( ゚д゚ )「ん?」

15 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 21:54:09.471 ID:YYfpLl5c0
   

ミセ*゚ー゚)リ「運動会。今度は別の組でしょ(だお)?」(^ω^ )


( ゚д゚ ) !

ノパ⊿゚) !


運動会。
小中高と行われる恒例行事の中で、
悲しいかなミルナとヒートは常に同じ組に振り分けられていた。

騎馬戦などでは個人点を用いて勝負することができたが、
いずれも悲しみの同点。
普段の勝負事に他人を巻き込むのは忍びないと思い、
過去から今まで、彼らは一対一の戦いのみを行ってきた。

だが、今回、偶数奇数で分けられる運動会の組み分けでは、
二組であるヒートは紅組へ。
五組であるミルナは白組へと振り分けられる。

つまり、初の団体戦、というわけだ。

16 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 21:56:11.685 ID:YYfpLl5c0
   
ノパ⊿゚)「やるぞやるぞやるぞおおおお!!
    私は! 絶対に! 勝つ!!」

ミセ*゚ー゚)リ「おーおー、頼りにしてますよ、ヒートさん」

ノパ⊿゚)「任せておけええええええ!!」

気合充分。
雄たけびを上げるヒートを目に、
授業の準備を始めていたクラスメイト達に一抹の不安がよぎる。

( ・∀・)「……今まで、素直と東風に勝敗がついたことって」

ζ(゚ー゚*ζ「ないねー」

从 ゚∀从「ヤッベ。
     白組の奴と引き分けか?」

('A`)「別に勝てなくてもいいけど、
   引き分けは何か嫌だなぁ……」

ジンクスでもなんでもなく、
ミルナとヒートは引き分ける、という事実が同級生達には根付いている。

たかが運動会。されど運動会。
高校三年生。最後の最後で
勝敗の決まらぬぐだぐだとした終わり方はしたくない。

17 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 21:58:11.291 ID:YYfpLl5c0
   
紅組こと、二組が盛り上がっている中、
当然のごとく五組も殺意と熱気を孕んだ盛り上がりを見せつつあった。

( ^ω^)「これは、ボクらも頑張らないといけないおね」

( ゚д゚ )「頼むぞ! オレにできることならなんでもする!
     応援もするし、体作りにも付き合うからな!」

珍しいことに、ヒートが近くにいないにも拘らず、
ミルナは拳を作り、声を荒げていた。
団体戦だからといって、彼の闘争心は衰えを見せることはないようだ。
  _
( ゚∀゚)「ノーサンキューだ馬鹿野郎」

⌒*リ´・-・リ「でも、負けたくは、ない、かな……」

ξ゚⊿゚)ξ「やるからには勝つ! そうでしょ?」

(´<_` )「遊びであろうと全力で挑まないと楽しくないしな」

クラスメイト達もミルナのやる気に後押しされ、
行事ごと、という考え方から、勝負事、という考えに変わっていく。

身体能力を競い合う運動会ではあるが、
それだけで勝てると思うほど、勝負の世界は甘くない。
クラスメイトを含めた同学年一同、
伊達にミルナとヒートの争いを見てきたわけではないのだ。

19 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:00:21.113 ID:YYfpLl5c0
   
かくして、両陣営による戦術合戦が始まることとなった。

( ・∀・)「えー、まず、東風と素直は極力同じ競技に出さない、
      という方向で白組と協定を結ぶことになりました」

ノハ;゚⊿゚)「えええええええ」

ミセ;゚ー゚)リ「あんたらが出て引き分け合戦になったら、
      それこそ決着つかないわよ?」

ノハ;゚⊿゚)「そ、それは困る!
     しかし、引き分けると決まったわけでは!」

ζ(゚ー゚*ζ「大体決まってるから。
       残念だけど、最後に勝つためと思って我慢して。ね?」

ノハ;゚⊿゚)「うううう……」

真っ先に決まったのは、
誰をどの競技にぶち込むかではなく、
引き分けをひたすらに繰り返している二人を引き離す方法だった。

いくら戦術を練ったところで、
各人が体を鍛えたところで、
前線で戦うことになるであろう人物達が引き分けばかりを生み出していては、
決着がつくものもつかなくなってしまう。

20 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:02:26.828 ID:YYfpLl5c0
   
从 ゚∀从「いつもは笑って見てるだけのアタシらだけど、
     お前を勝利に導く。信じろ!」

ノパ⊿゚)「ハインリッヒ……!」

二人は固く手を握り合う。
平素は不良として、座学だけではなく、
体育の授業もサボりがちなハインリッヒだが、
今回ばかりは真面目に参加するつもりらしい。

ヒートは爛々とした目で彼女を見つめる。
授業こそ不真面目であるが、
教師陣との鬼ごっこに興じるハインリッヒの脚力は並ではない。

今度の運動会において、大きな戦力になること間違いなしだ。
勝負事となると俄然やる気を出してきた彼女に
クラスメイト達は呆れ顔を見せつつも、
ハインリッヒの参戦を心強いと思わないでもなかった。

ノパ⊿゚)「そうだ。ありがとうついでに一つ、
     お願いを聞いてはくれないだろうか」

从 ゚∀从「あ?」

ノパ⊿゚)「耳をこちらに……」

思わず周囲が耳を傾けるが、
こしょこしょと告げられた内緒話は、
彼女達以外の耳には届かなかった。

21 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:04:17.226 ID:YYfpLl5c0
  
(´<_` )「では、続いて、競技に誰を入れるか、だな」

ξ;゚⊿゚)ξ「あまり自信ないから玉入れとか希望」
  _
( ゚∀゚)「玉入れは全員参加の競技だろ」

( ^ω^)「ボクは足にも多少自信があるお。
      徒競走とかリレー希望だおー!」

わいわいがやがやと騒ぎながら、
着々と出場競技が決まっていく。

出場数に上限はないものの、
一人一つ以上の競技に参加することが義務付けられているので、
どれだけ頑張っても一人三つまでが限度になる。

⌒*リ´・-・リ「ダンスも一応、点になるんだっけ?」

ξ゚⊿゚)ξ「なら頑張らないとね!」

(´<_` )「応援も入るぞ。
     ミルナ、走りはお前に託すからな」

( ゚д゚ )「任せろ」

( ^ω^)「こんな早くからワクワクが止まらない運動会は始めてだお」

( -д- )「感謝する。
     これでようやく決着をつけることができそうだ」

22 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:06:21.189 ID:YYfpLl5c0
   
( ^ω^)「それにしても、本当に長いこと勝負し続けてるおね。
      よくもまあ、飽きもせず……」

( ゚д゚ )「色々あるんだよ」

ミルナは手に顎を乗せ、気だるげな顔を見せる。
さぞおモテになるのでしょうね、と言ってやりたくなるほど、
その仕草は様になっていた。

ただ、常日頃、ヒートとの様子を校内の全員が目撃しているため、
今のところミルナが女子に言い寄られたことは一度もない。
彼が薔薇色の青春を送るためには、
まずヒートとの勝負に向ける執着心を排除しなければならないだろう。

( ^ω^)「格好つけて言ってるけど、
      幼稚園のときの勝負だお?」

( ゚д゚ )「そりゃそうだけど、オレにとっちゃ大切なことなんだよ」

( ^ω^)「して、それは?」

( ゚д゚ )「……別に」

( ^ω^)「出たー! お前の寡黙キャラ!
     そこは言ってもよくないかお?
     ボクらもそろそろ長い付き合いだお?」

24 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:08:05.531 ID:YYfpLl5c0
   
今まで、幾度となく聞き出そうとしては失敗を繰り返してきた。
だが、今、団体戦を前に、士気を高める意味合いでも
ミルナの持つ確執とやらを聞いておくのは悪くない手のはずだ。

現に、ミルナは気づいていないが、
クラス中の人間が二人の会話に聞き耳をたてている。

絶対に聞き出せ、という殺気にも似た圧力をブーンはひしひしと感じていた。
ミッションに失敗すれば、ミルナもろともブーンの命も危ない。

( ^ω^)「ほらほら、白状するお。
      言えば楽になるおー」

(//д//)「……こ、こういうことは、軽々しく口にすることじゃない」

( ^ω^)「お?」

見る見るうちにミルナの顔が赤く染まっていく。
年頃の男子生徒の顔が赤くなる理由など、
数えられるくらいしか存在していない。

何かに失敗したときか、
恋心を表に出すとき。

その二つだ。

( ^ω^)「ま、まさか……」

25 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:10:24.514 ID:YYfpLl5c0
   
ブーンは声を震わせる。
まさか、とは思う。
しかしながら、ミルナとて一男子。

(//д//)「ただ、まあ、なんだ」

ミルナは真っ赤な顔で、
小さく小さく、ともすれば聞き逃してしまいそうな声量を零す。

(//д//)「惚れた女には、勝つところを見せたい、だろ?」

三年五組に、衝撃、走る。

誰もが目を見開き、
無遠慮にミルナをその目に収めた。

( ゚ω゚)「えっ。マ、マジなのか、お……?」

奴も男。
惚れた女がいることに不思議はないが、
幼少期からの想いを一途に持ち続けていると、
誰が想像できたであろうか。

正直なところ、てっきり、ヒートとの勝負に一生涯を賭けた
クレイジー野郎だとばかり思っていたことは否定できない。

そんなミルナが、顔を真っ赤にし、
好いた惚れたを口にしたのだ。
青天の霹靂もいいところだった。

26 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:12:23.583 ID:YYfpLl5c0
  
(//д//)「ちゃんと、格好つけられるくらいにらなんとな」

つまり、ヒートとの勝負に勝たなければ、
片思いに決着もつけられない、というわけだ。

( ^ω^)「……わかったお」

( ゚д゚ )「ん?」

ブーンは静かに頷いた。

( ^ω^)「お前の気持ち、必ず勝利にまで運んでやるお」

その目には、真っ直ぐな意思が宿っていた。
馬鹿だ、朴念仁だ、とばかり思っていた友のため、
彼の想いを成就させるため、この運動会、負けるわけにはいかない。

ξ゚⊿゚)ξ「勝つわよ!」

⌒*リ´・-・リ「おー!」

(´<_` )「やるぞ!」
  _
( ゚∀゚)「紅をボッコボコにしてやるよ!」

クラスの心が一つになる。

他人の恋愛沙汰なんぞ、普段ならば興味もわかないが、
ことミルナともなれば話は変わる。
今まで浮いた話の一つもなかった彼のために、
クラスメイト達はよりいっそ作戦を練る頭を働かせるのであった。

27 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:14:11.717 ID:YYfpLl5c0
  
( ゚д゚ )「お前は何に出るんだ?」

出場競技が全て決定した日の放課後、
ミルナは常日頃と変わらず陸上部で活動に励み、
同部活に所属しているヒートと帰り道を共にしていた。

夏へ近づいていく季節。
日が落ちるのはずいぶんと遅くなっているが、
彼らが家路につく頃には街灯が地面を照らす程度には暗くなっている。

ノパ⊿゚)「混合リレーの第一走者と、徒競走、借り物競争。
     被ることはないと聞いているが、そっちは?」

( ゚д゚ )「混合リレーの第四走者と騎馬戦、障害物競走だ」

ノパ⊿゚)「個人戦で決着をつけることができないのは残念だな」

( ゚д゚ )「だが、みんながオレ達の勝負に付き合ってくれているんだ。
     文句は言えまい」

ノパ⊿゚)「まぁな」

一対一の勝負という魅力はあるものの、
引き分けの回数が五桁を記録している現状で贅沢は言えない。
また、言うつもりもない。

ノハ*゚⊿゚)「嬉しいことだ」

28 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:16:16.257 ID:YYfpLl5c0
  
( ゚д゚ )「オレ達は良い友達を持ったな」

ミルナは笑う。
自分達がいつまでも引きずり続けているちっぽけな勝負事に、
総勢六十人、もしかすると、クラスや学年も超えた人数が協力してくれるかもしれないのだ。
喜ばずにいられるはずがない。

ノパ⊿゚)「ほえ面かくなよ?」

( ゚д゚ )「お前こそ。
    三桁の人間が生き証人になるんだからな」

この勝負に関わった全員が、
二人の勝敗を見届ける証人となる。
これほど盛大で、確実な決着のつき方はそうないだろう。

ノパ⊿゚)「わかっているさ。
     あと、運動会まで一ヶ月以上。
     みんなが放課後まで残って色々練習してくれている」

事実、二人が部活動を終える少し前まで、
帰宅部として二年間を過ごしていたはずの友人達が、
ダンスの練習や応援の練習をしていた姿があった。

過去の運動会も、それなりの盛り上がりを見せていたものの、
ここまで全員が全員、熱心になっている場面は見たことがない。

30 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:18:29.185 ID:YYfpLl5c0
  
全ては、ミルナとヒート。
そして、紅組と白組の雌雄を決するため。

ノパ⊿゚)「引き分けなんぞ許されんな」

( -д- )「……だな」

懸命になってくれているクラスメイトのために。
彼らの努力に報いるために。
何より、過去から続く勝負に終わりを告げるために。

ノパ⊿゚)「土日は走りこみでもするかぁ!」

( ゚д゚ )「そりゃいつものことだろ。
    オレは障害物をこなす練習をしないとな」

ノパ⊿゚)「いつもの公園でいいだろ。
     平均台もあるし。袋は私が適当なのを持っていってやる」

( ゚д゚ )「サンキュ」

例年、VIP高校の障害物競走は、
平均台とハードル、網抜けと袋に足を突っ込んで跳ねながら前へ進む、
といった四種類の障害による構成だ。

練習をするのであれば、最低限、平均台のようなものがある場所がいい。
幸いにして彼らが普段から利用している大きな公園には、
そういった遊具が存在していたし、大きなズタ袋ならば用意できないことはない。

31 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:20:26.239 ID:YYfpLl5c0
   
ノパ⊿゚)「その代わり、私に付き合って競争しろよ」

( ゚д゚ )「4万飛んで542回目の勝負だな」

ノパ⊿゚)「運動会を前に決着をつけてしまうのは申し訳ないが、
     私は負けんぞ」

( ゚д゚ )「そりゃこっちの台詞だ」

二人は口角を上げながら楽しげに言葉を投げつけあう。
彼らの自宅が視界に入り始めた頃、不意に背後から声がかけられた。

川 ゚ -゚)「やあ、そっちも今帰りか?」

夜の闇に紛れることのない黒髪を腰の辺りまで伸ばした女性は、
ヒートの二つ年上の実姉、素直クールだ。
現在、大学二年生。近場の大学を選んだらしく、今も実家暮らしを継続している。

ノパ⊿゚)「部活帰りだ!」

川 ゚ -゚)「お疲れ様」

( ゚д゚ )「こんばんは。クールさん」

川 ゚ー゚)「こんばんは。
     うちの妹の騎士を務めてもらって悪いな」

二人に近づいたクールは、
ニヤリ、と笑いながら茶化すように言う。

32 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:22:18.228 ID:YYfpLl5c0
  
(//д//)「そ、そんなんじゃありませんよ」

ノパ⊿゚)「こいつに守られるほど弱くないぞー」

顔を真っ赤にするミルナには気づいていないのか、
ヒートは唇を尖らせてクールに抗議を入れる。

守り守られの立場では不満が大きすぎたのだ。
彼女にとって、ミルナは隣に立つライバルであって、
目の前の敵から身を呈して守ってくれる騎士様ではないし、
あってはならない。

(#゚д゚ )「頼まれても守らんから安心しろ」

ノパ⊿゚)「それは安心だ!!」

川 ゚ -゚)「ほらほら、喧嘩しない」

クールが二人の間に身を滑らせる。
一歩分開いていたはずの距離が急激に縮められ、
零距離にクールの胸や背中が割り込んできた状態だ。

ノハ#゚⊿゚)「……クー姉、胸」

珍しく小さく、低い声がヒートの喉から漏れ出た。
年の差だけでは説明のつかない胸囲の格差に対する怒りや恨みの塊が
そのまま声になって出てきたかのような重みと冷たさがある。

33 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:24:08.220 ID:YYfpLl5c0
  
川 ゚ -゚)「ん?」

ノハ#゚⊿゚)「もう!」

ヒートは一歩後ろに後ずさる。
見れば、ミルナはとっくに後ろへ下がっていたらしく、
呆れた顔をしてヒートを眺めていた。
 _,
( ゚д゚ )「普通にお前が離れればそれで済んだだろうに」

ノハ#゚⊿゚)「うっさい!」

何か負けるような気がしたのだ。
精神的なものが。

( ゚д゚ )「オレは先に帰るからな」

ノパ⊿゚)「方向一緒だろ」

頭を下げ、先に帰ろうとするミルナの後をヒートが追う。
そんな彼女に笑みを向けつつ、クールも彼らに続く。

暗闇の中、薄明かりの電灯が彼ら三人分の影を作り出していた。

34 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:26:17.241 ID:YYfpLl5c0
  
太陽が昇っては沈み、日々が過ぎていく。
各人は練習や鍛錬に励み、その日を迎え入れた。

夏が間近に迫る季節。
天気は快晴。雲ひとつない日本晴れとなった。

( ゚д゚ )「宣誓!」

ノパ⊿゚)「宣誓!」

強い日差しが差し込む校庭で、
二人は白と紅の大きな旗を掲げる。
風にたなびくそれは、優雅でありながらも敵を威圧する力を持つ。

( ゚д゚ )「ボク達!」

ノパ⊿゚)「私達は!」

( ゚д゚ )「スポーツマンシップに則り!」

ノパ⊿゚)「正々堂々、正面からぶつかり合い!」

( ゚д゚ )「お互いの全力を!」

ノパ⊿゚)「出し切って戦うことを!」

( ゚д゚ )「ここに誓います!」

ノパ⊿゚)「ここに誓います!」

36 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:28:50.591 ID:YYfpLl5c0
   
高らかな宣誓が、校庭に広まり、
彼らの声に耳を傾けているチームメイト達の体をビリビリと刺激する。

( ゚д゚ )「三年五組、東風ミルナ!」

ノパ⊿゚)「三年二組、素直ヒート!」

宣誓は、三年生の中で代表に選ばれた者がするのがVIP高校の伝統だ。
だが、大抵の場合は本人の希望により選出されるのが常であった。

推薦してまで誰かを自分達の代表にしたい、と思うには、
運動会に心の底から本気で取り組む姿勢と、自分達のシンボルになってほしい、
と願わずにはいられない人物の存在が必要だ。

そんな高いハードルを越え、
ミルナとヒートは選ばれた。

三年生だけではない。
入学したてであるはずの一年生までが、
彼らを自分達の代表にしてほしい、と願ったのだ。

旗は降ろされ、
二人がそれぞれのチームの先頭へと帰っていく。


こうして、VIP高等学校を二分した戦いの火蓋が、切って落とされた。

37 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:30:34.084 ID:YYfpLl5c0
  
第一戦目、各学年による玉入れ。
紅白のお手玉を高い位置に上げられた籠に投げ入れるだけのお手軽な競技だ。

普段ならば、多くのボールをかき集める男子や、
弱々しいふりをして入らなぁい、と言う女子で和気藹々とこなされる競技なのだが、
やはり今年は一味違う。

整列し、互いのチームに挨拶する段階で、互いに殺気を送りあい、
相手の心をへし折ろうという気迫が見て取れた。

( ゚ω゚)「行くぞー!!!」

(゚A゚)「絶対に勝つ!!!」

号令と同時に、人が散らばる。
ある者は玉を集めることだけに集中し、
またある者は慎重に、あるいは素早く玉を投げ込む。

ゴールである籠は、通常各チームに一つのところを、
今年の運動会のみ生徒の要望によって二つずつ用意されていた。

しかし、それすらも見る見るうちに玉で溢れかえり、
あとはどれだけ投げ置くことができるのか、という勝負になる。

从 ゚∀从「投げろ投げろ投げろー!」

⌒*リ´・-・リ「はい、はい、はい。
       ハズしても大丈夫。集めるのは任せて!」

38 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:32:13.041 ID:YYfpLl5c0
  
(-@∀@)「白ー、1、2、3…」

(´・_ゝ・`)「赤ー、1、2、3……」

競技が終了するのと同時に、
先生が一つずつ玉を数え始める。

数え始めこそどちらも余裕の表情を見せていたが、
ひと籠目が終わり、ふた籠目に入ると、
どちらのチームも緊張の面持ちに変わり始めた。

緊迫状態の中、
いよいよ結果が示される。

(-@∀@)「85、86、87、88!」

(´・_ゝ・`)「85、86!」

途端、沸いた歓声は白組のものだった。
わずか二つ。その僅差が命運を分けた。

小さなお手玉二つ分の重さにより、
勝敗の天秤は白へと大きく傾いたのだ。

(´<_` )「よっしゃあああああ!!!」

( ゚д゚ )「よし」

ξ゚⊿゚)ξ「まずは一歩リード!」
  _
( ゚∀゚)「この調子でいくぞ!!!」

( ^ω^)「勝ちは我らの手の中にいいい!」

⌒*リ´・-・リ「ファイトー!」

39 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:34:16.107 ID:YYfpLl5c0
  
その後も一年生と二年生による玉入れが行われたが、
結果は二対一で白組のリードを保ったままであった。

だが、紅組とてその程度のリードで、
白組に勝利の美酒を献上してやるつもりはない。

玉入れで投げつけられた泥は、
ムカデリレーで返上される。

ミセ*゚ー゚)リ「いっくよー!」

ζ(゚ー゚*ζ「いっち、に」

从 ゚∀从「いっち、に」

元気良く、そして少しのブレもない掛け声が上がる。
足並みはピッタリと揃えられているだけではなく、
元々足の速い者につられるような形で移動速度を増していく。

ξ;゚⊿゚)ξ「はやっ!!」

⌒*リ´・-・リ「こ、こわい……」

長いボードがざりざりと校庭を削りながら進んでいく。
その速さといったら、少々気持ち悪ささえ覚えてしまうほどだ。

この勢いにのり、紅組はムカデリレーでの完全勝利を手にする。
勝負は、一進一退の図から然程変わることないまま、昼休みに入っていく。

40 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:36:13.129 ID:YYfpLl5c0
  
ζ(゚ー゚*ζ「同点、だねぇ……」

( ・∀・)「いやいや、このくらいは想定内のことだよ」

持参のお弁当を口に放り込みながら、
紅組の面々は午後からの競技に思考をやる。

敵対する組に友人がいる者達も多いが、
今日ばかりは勝負が優先され、相手チームとの接触を自主的に禁じる者ばかり。
教室は紅一色で染まっている。

ノパ⊿゚)「午後はリレーに徒競走、借り物競争と競争系が多いな」

ミセ*゚ー゚)リ「期待してるよ!!」

ノパ⊿゚)「任せろおおおおおお!!!」

从 ゚∀从「うっせ。飯くらい静かに食えって」

('A`)「この調子なら勝てるかもしれないな」

( ・∀・)「何言ってんの。
      勝つ! それが決定事項!」

ノパ⊿゚)「うおおおおお!!!!」

42 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:38:13.383 ID:YYfpLl5c0
  
( ^ω^)「……紅組の方から、ヒートの声が聞こえるお」

(;-д- )「まったく。騒がしい奴だ」

紅組が盛り上がっている最中、
白組もまた、仲間達と共に昼食を取っていた。

あちらこちらで上がっている雑談の内容は、
当然のごとく運動会に関するものばかり。
昨日のテレビの話だとか、好きな俳優、ゲーム、アニメの話など一切出てこない。

誰もが午前中の勝利を讃え、敗北を憂い、
午後からの競技に向けての作戦会議や渇を入れあってる。
  _
( ゚∀゚)「まだまだ同点だ。
    こっから巻き返すぞ!」

ξ゚⊿゚)ξ「あったりまえよ」

⌒*リ´・-・リ「がんばる……」

(´<_` )「紅組に負けるわけにはいかんな」

( ゚д゚ )「……ふっ」

友人達の血気盛んな様子を見て、
ミルナは小さく笑みを漏らす。

自分とヒートを客観的に見ると、こう見えるのか、と思う。
血の気が多くて、少し物騒で、とても楽しそうだ。

43 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:40:10.642 ID:YYfpLl5c0
  
午後からの競技も波乱が波乱を呼ぶ結果となった。
PTAによる徒競走等々が終われば、
本格的に生徒達の戦いが再開される。

午後一には徒競走。
陸上部やサッカー部で固められた面々の中で、
ヒートは余裕の一位を獲得。

( ゚д゚ )「……オレなら負けなかった」

( ^ω^)「同着だっただろうおね」

参加が許されなかったミルナは顔を顰めていたが、
ブーンの反応はそっけないものだった。

陸上部に所属しているミルナにとって、
走る系統の競技に参加できない、というのは酷く苦痛だろう。
しかし、これも最終的な勝利のためなのだ。
我慢してもらうほかない。

無論、ミルナもそのことは重々承知している。
ただ、楽しげに走り、一位の旗を掲げるヒートを見ていると、
どうにも抑えられない気持ちがでてしまうのだ。

(´<_` )「おい、ミルナ。
     次の障害物競走、お前だろ」

( ゚д゚ )「……あぁ」

44 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:42:16.629 ID:YYfpLl5c0
  
四種の障害を越え、ゴールしなければならない競争。
ただ足が速ければいい、というものではないけれど、
一定のレベルがなければ話にならないのもまた確か。

故に、こちらの競技でも走ることに特化した人物が並ぶのは仕方のないことであった。
陸上部所属のミルナを挟む形で並んでいるのは、
サッカー部にバスケットボール部。
どちらも強敵だ。

(-@∀@)「よーい、ドン!」

号令と共に全員が走り出し、障害を乗り越えていく。

( ゚д゚ )「よ、っと!」

ヒートと共に公園で練習した成果か、
ミルナは軽々とした様子で障害を越えていく。
あっという間に二位と距離を開けた状態を作り出し、
その差を縮められることなく一位を掻っ攫う。

一年生から三年生まで、
白組女子による黄色い声援がわっと溢れかえった。

ノパ⊿゚)「私だったらもっと早いぞ!!」

ミセ*゚ー゚)リ「目の前の小さな勝利より、後の大きな勝利よ」

45 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:44:16.907 ID:YYfpLl5c0
  
男女混合リレー、騎馬戦、借り物競争……。
男子による応援合戦、女子によるダンス合戦。

いくつもの勝負を乗り越えた今、
校庭に掲げられている得点版は白紙に帰っている。

誰もが夢中になり、途中から点差を数える余裕をなくしていた。
故に、発表があるまでは誰一人として、
どちらの色が勝利したのかわからない。

ξ゚⊿゚)ξ「……いよいよ、ね」

( ・∀・)「さて、どっちが勝ったのか。
      今日一日の結果が、出る」

校庭に並ばされた全校生徒は、
固唾を呑んで得点版を見上げていた。

僅差であることは間違いないだろう。
勝利数、敗北数だけで言えば、紅も白も似たようなものだ。
後は得点の配分に望みをかけるしかない。

(´・_ゝ・`)「それでは、発表します!」

ドラムロールの音が響く。
デミタスの手が、二つの得点版にかかった。

(´・_ゝ・`)「第57回、VIP高校運動会は――」

46 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:46:13.335 ID:YYfpLl5c0
   

(´・_ゝ・`)「紅組の、勝利です!!!」


わっ、と歓声があふれる。

紅組の面々が、額にまいていた鉢巻を空へと放り投げ、
傍らにいた者を男女、学年関係なく抱きしめて回る。

彼らは互いを讃え、
勝利を喜ぶ言葉を紡ぎ続けた。
中には感極まって涙を流す者までいる始末。

開校始まって以来の様子に、
教師達はどのような感情を顔に浮かべるべきなのか悩んでしまう。
まだ校長の話が残っている、と言って
生徒達の喜びに水を差すのは気が引ける。

かといって、黙って見守っているだけではこの騒ぎが収まることはないだろう。
時間の経過に任せていては日が暮れてしまうに違いない。

(;-@∀@)「ほらほら、騒ぐのは運動会がちゃんと終わってからにする!」

(;´・_ゝ・`)「白組のことも考えろー!」

狂喜乱舞、という言葉が似合いの紅組の横では、
地の底に沈みかねない雰囲気の白組が立っていた。

47 名前:×白組が経っていた ○白組が立っていた:2016/04/02(土) 22:48:12.141 ID:YYfpLl5c0
悔し涙を流す者、唇を強く噛み締める者。
反応は様々であったが、誰もが勝敗を重く受け止めていた。
誰一人として、軽い気持ちで勝負に臨んでいなかった証拠がそこにはある。

( ´ω`)「……ごめんお」

( ゚д゚ )「何がだ?」

頭を垂れ、落ち込んでいるブーンの肩をミルナは軽く叩く。
そこに悲しい色はなかった。

( ゚д゚ )「オレも、お前達も、みんな頑張ったじゃないか。
    その結果がこれなら、オレは満足だ」

敗北を悔しく思わないわけではない。
長きに渡る勝負の結末が、己の負けであることを受け入れがたい気持ちもある。
だが、ミルナは一人で戦い、一人で負けたわけではない。

努力や苦労は全員で分かち合ってきた。
ならば、悲しみや悔しさもまた、皆で分かち合えるはずだ。

そのことが、ミルナはとても嬉しかったのだ。
負けはしたものの、どこか清々しい思いも胸に存在している。

( ゚д゚ )「勝敗はどうれあれ、オレも踏ん切りをつけることができた。
    そのことに感謝している気持ちに、嘘はない」

( ^ω^)「ミルナ……」

彼の口調はとても穏やかで、
自身の気持ちに区切りをつけたことを如実に示していた。

48 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:50:11.849 ID:YYfpLl5c0
  
不意に、周囲がざわついた。

(´<_`;)「おい! あれ!」

弟者の声に、ブーンとミルナは顔を上げた。
全校生徒、全教師が同じ方向を見ている。

( ゚д゚ )「…………は?」

彼らが見るのは、学校の屋上。
得点版よりもさらに上。
本来ならば、生徒が立ち入ることのできない場所。
フェンスすらない、屋根の縁。

そこに立つ、一人の女子生徒。



ノパ⊿゚)



素直ヒート。
風に揺れる髪を、誰もが目に映していた。

50 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:52:11.225 ID:YYfpLl5c0
  
足を肩幅に開き、
堂々とした面持ちでヒートは屋上に立っている。
少なくとも、勝敗が決するまでは紅組の列に並んでいたはずの彼女が、
いつの間に移動したのかは誰も知らない。

ただ、危険極まりない場所に立つ彼女を心配する声だけが、
ざわざわと校庭に蔓延していく。
ミルナは目を見開き、必死に現状を理解すべく頭を働かせていた。

(;゚д゚ )「……あの、馬鹿。
     何するつもりだ?」

そんな地上の様子など知りもしないのか、
ヒートは大きく息を吸い込み、空気を声に変える。

ノパ⊿゚)「三年!五組いいいい!
    東風! ミルナアァァァァ!!」

学校中どころか、
町中に響くのではないかと思うような大声。
拡声器も使っていない生身の声は、
想像以上に真っ直ぐ聞く者の耳と胸を貫いた。

誰もが口を閉ざし、動きを止め、
ヒートの一挙手一動一声を見守る。

52 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:54:18.088 ID:YYfpLl5c0
   
ノパ⊿゚)「私ぃいい! 三年! 二組いいいい!!
     素直! ヒートォはぁああ!」

一声一声に全力が込められている。
たった一つも消えることのないように、
伝わりきらぬ思いがないように。

ノハ ⊿ )「ミルナのことがああああああ!!」

ヒートの顔が上を向く。
下からは彼女の表情がわからない。

ノハ ⊿ )「ずっとずうううううっと!」

力強い声が反射し、こだまになる。
音の余韻が地面に沈み込み、ゆっくりと消えていく。
その間、ヒートは無言だった。

躊躇するような、
自分を鼓舞するような。

そんな時間だった。

53 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:56:08.316 ID:YYfpLl5c0
  

ノハ//⊿/)「好きでしたあああああああ!!!!」



心の全てを吐き出すように、
いっそ大きく発せられた言葉は愛を告げるための言葉だった。

体はくの字に曲げられ、
下げられた顔は地上から見ても分かってしまうほどに赤い。

校庭では黄色い悲鳴が上がる。
全校生徒の前で実行された告白劇が
女子生徒の心をわし掴みにしたらしい。

無論、男子生徒も盛り上がらぬはずがなく、
はやし立てるような雰囲気こそ出来上がりはしなかったが、
ミルナを見る者、ヒートに声援を送る者、と、
様々な反応をしてみせた。

ただ、ミルナだけは、
何も発せず、何も反応せず、
黙って上を見上げる態勢を崩さずにいた。

54 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 22:58:28.061 ID:YYfpLl5c0
  
( *^ω^)「ミ、ミルナ!」

ブーンは喜色に声を染め上げ、ミルナの背を叩く。
長年、片思いをしていたのであろう人物から、
熱烈な告白があったのだ。

これに応えぬ道理はない。
勝利することで彼女に良いところを見せるのは失敗してしまったが、
終わりよければ全て良し、と言うではないか。

これ以上ないハッピーエンドの予感に、
ブーンだけではなく、五組全員が色めき立っていた。

( -д- )「…………」

ミルナは一度、静かに目を閉じる。
次に彼が目を開いたとき、
そこには覚悟の色が見てとれた。

わずかな時間、彼は瞼の裏で何を思ったのか。
委細を知る者はいない。

ミルナは、先ほどのヒートと同じく、
息を大きく吸い込み、大きな声を発する。

( ゚д゚ )「……ヒートオォォォオオ!!」

57 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 23:00:10.829 ID:YYfpLl5c0
   
地上から大空へ。
遠く分かたれた校庭と屋上を
直線最短距離で突き抜けていく声。

全員の鼓膜を劈き、
周囲に音が溶ける。

けれども、ミルナが声を届けたい人物はたった一人だ。
彼が見上げる先。
いつもはすぐ隣にいたライバル。

ノパ⊿゚)

ミルナの声を受け、
ヒートはじっと校庭で立つ。

その顔に赤色はない。
彼女もまた、覚悟しているのだ。

相手からの答えを受け止める覚悟を。

59 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 23:02:10.279 ID:YYfpLl5c0
   


( ゚д゚ )「ごめええええええん!!」


続けられた言葉は、
是ではなく、否。

( ゚д゚ )「オレはあああああ!!!」

周囲がざわつく。
ブーンが驚きに目を見開き、
どういうことだと体操服を引っ張っているが、
ミルナはそんなものを全て無視して言葉を続けていく。

( ゚д゚ )「クールさんがあああああ!!
    昔っから! 好きなんだああああああ!!!」

それは、ヒートの実の姉であるクールに恋慕する気持ち。
彼が告白に応えられない理由。

( ゚д゚ )「だからぁ!!
    お前の気持ちにはぁあああ!! 応えられん!!」

途切れることなく、擦り切れることなく伝えきられた彼の声は、
ヒートの思いを真っ向から切り落とすためのものだ。

60 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 23:04:47.254 ID:YYfpLl5c0
  
ノパ⊿゚)「…………」

衝撃的な返事にざわめきが収まらない校庭を眼下に、
ヒートは無言を貫く。
ショックを受けているのか、
あるいは理解できていないのか。

その判別を校庭に立つ友人達が下すよりも先に、
再び彼女が大きく息を吸い込んだ。

次第に、ざわめきが収まりをみせ始める。
大勢の前でフられてしまった彼女の言葉を聞くため。
悲しみに暮れているであろう言葉を受け止めるために。

誰かが固唾を呑んだ。
同時に、空から地へ、声が降り注ぐ。


ノハ。゚⊿゚)「知ってたああああああ!!!」


その声は、涙に濡れていた。
嗚咽を上げて泣き出すのを懸命に抑えているらしく、
顔を赤くして告白したときと同じ大きさの声は震えている。

63 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 23:06:39.716 ID:YYfpLl5c0
  
ノハ;⊿;)「そんなん、昔っからああああ!!
     知ってましたああああああ!!」

号泣だ。
目からは大粒の涙がボロボロと溢れ、
声には嗚咽が混じり始める。

ノハ;⊿;)「だからぁ! 今日!
     初勝利を手にしたときにぃい! 告白! したんだよおおおお!!!」

フられると、ヒートは知っていたのだ。
幼い頃から隣にいて、
気づけば好きになってしまっていたミルナの目が、
いつだって姉に向いていることに気づかぬはずがない。

恋する乙女の目は、
常に愛おしい人を追いかけてしまうのだから。

わかっていてなお、
全校生徒の前で断られると確信してなお、
ヒートは想いを告げずにはいられなかった。

これ以上、決着のつかぬ恋を引きずり続けることは、
地獄の底に縫い付けられているのと同じくらい、熱く苦しいことだったのだ。

64 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 23:08:07.327 ID:YYfpLl5c0
  
ノハ;⊿;)「これでぇええ!
     1勝1敗4万飛んで685引き分けだからあああああ!!!」

運動会、ヒートは勝利した。
しかし、告白してフられてしまい、敗北した。

彼女は乱暴に涙を拭う。
目尻から顎まで伝っていた水分が、
体操服に吸い込まれ、汗と一つになる。

ヒートはキッ、と顔を引き締める。
まだ涙が滲み出ているのかもしれないが、
少なくとも校庭からはその様子は見えない。

ノパ⊿゚)「次の決着がつくまでええええ!!
    またあぁあああ!!! 勝負してくれますかあああああ!!!」

決めていたのだろう。
運動会で初勝利を収めたら、告白して、フられて、
恋人にはなれずとも、隣に一生いられる場所を作ろうと。

離れがたい、など、女々しいかもしれない。
だが、隣にミルナがいない一生を、もうヒートは想像できない。

65 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 23:10:07.894 ID:YYfpLl5c0
  
もはや、誰も何も言わなかった。

今まで見守ってきたミルナとヒートの勝負が、
ここで一生の終わりを告げようとも、
今後一生続くのだとしても、
蚊帳の外である自分達には何も出来ないし、
口出しする権利すらない。

出来るのは見守ることだけで、
二人が導き出した結論を肯定してやることだけだ。

( ゚д゚ )「…………」

ミルナはしばし、間を空けた。
ヒートの声が消え、身に染み込み、
体全体を循環するのを待つかのような空白だった。

(。゚д゚ )「あったりまえだろおおおお!!!!」

爆発的に、突然上げられた叫びは、涙に震えていた。
一筋の涙と共に、ヒートの在り方を肯定する言葉は進む。

( ゚д゚ )「お前とはぁ! 恋人にはなれないけどぉおおお!!」

残酷な言葉だろう。
好きだ、と言ってきた子に返す言葉ではないかもしれない。

( ゚д゚ )「一生! ライバルだからなぁあああぁああぁあ!!!」

しかし、これでいいのだ。
男女の在り方は、必ずしも恋人である必要はない。

67 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 23:12:09.593 ID:YYfpLl5c0
  
心の底から発せられた声は、
何よりも鋭く、また、美しく直線を飛ぶ。
真っ青な空の中、透明が零れ落ちた。


ノハ;⊿;)「……ありがとうございまあああああすううううう!!!!!」


拭ったかいもなく、再び溢れた涙と共に、
ヒートは真摯なミルナの言葉に礼を述べる。

恋人にはなれなかったけれども、
一生ものの約束をしてもらえた。

それは、エンゲージリングに勝るとも劣らない、
何よりもの繋がりであり、証だ。

69 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 23:14:14.230 ID:YYfpLl5c0
  
(;´・ω・`)「素直! 危ないからこっちへきなさい!」

从#゚∀从「センセー! 水差すなよ!」

校庭にいた生徒達がじんわりと胸を暖かくしていると、
上の方からヒートとは違う声が聞こえてきた。

どうやら、ようやく我に帰り、彼女を連れ戻すべく動いた教師がいたらしい。

(#´・ω・`)「屋上の鍵を開けたのはお前か!」

从 ゚∀从「そーだよ」

(#´・ω・`)「素直がこんなとこにいるなんておかしいと思った」

从 ゚∀从「ケッ。アタシは不良だけど、女でもあるんでね。
     全校生徒の前での告白劇に付き合わないわけねーだろ!」

(#´・ω・`)「どんな理屈だ!」

ぎゃいぎゃいとした言い争いによると、
どうやらハインリッヒがヒートを屋上まで手引きしたらしい。
同クラスである二組の面々は、運動会の準備以降、
やけに二人が仲良くしていたことを思い出し、合点がいった、という顔をしていた。

71 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 23:16:22.885 ID:YYfpLl5c0
  
ノハ;⊿;)「せんせ……。ごめんなさい。
     わ、私が悪いんだ。ハインを怒らないでやってくれ」

从 ゚∀从「馬鹿。アタシは怒られなれてるからいいんだよ」

縁から離れ、ハインリッヒとショボンが言い争いを繰り広げている階段前までヒートがやってくる。
同時に、ハインリッヒのほうもトテトテと彼女に近づき、優しく肩を抱き寄せてやった。
偉業を成し遂げた人間に対する、ハインリッヒなりの激励だ。

从 ゚∀从「それより、お前だ。
     フられるのは覚悟の上だったのか?
     馬鹿だなぁ。んな顔するくらいなら、奪ってやりゃいいのによぉ」

乱暴な手つきでヒートの涙を拭ってやる。
強くこすってしまったため、彼女の目尻がよりいっそ赤みを増して見えた。

从 ゚∀从「なあ先生。アタシが二人分怒られるからさ、
     こいつのことは勘弁してやってよ」

不良娘ではあるが、ハインリッヒは心の優しい子なのだ。
授業をサボったことこそあれど、彼女は誰かを虐めたり、理不尽な暴力を振るったことはない。

从 -∀从「失恋って、どんな罰よりも辛いから、さ」

ノハ;⊿;)「いいんだ、ハイン。私は、全部、知ってたし、覚悟もしてたから」

从 ゚∀从「そういうことは、泣き止んでから言うんだな」

72 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 23:18:07.662 ID:YYfpLl5c0
  
(´-ω-`)「あのねぇ……」

ショボンは目を閉じ、呆れたようにため息をつく。

(´・ω・`)「ここでキミ達を許して前例を作ったら、
     後輩達が後に続いてしまうかもしれない。
     屋上から告白なんてロマンがあるしね。
     そして、いつか衝動的に飛び降りる子が出てくるかもしれない」

屋上を封鎖しているのは、ルールであるから、というわけではない。
危ないから、生徒の安全を守らなければならないから。
その前提があってこそのルールだ。

(´・ω・`)「無罪放免なんて出来るわけないでしょ?」

从;゚∀从「うっ……」

ノハ;⊿;)「ごめんなぁ、ハイン……」

あまりの正論にハインリッヒは言葉を失くした。
ヒートはそんな彼女を見て、また涙を流す。
どうにも感情の昂ぶりが収まらず、ちょっとしたことで揺れ動いてしまうようだ。

(´・ω・`)「……でも、キミ達の友情は素晴らしいと思うよ」

ショボンは小さく笑う。
嫌味ったらしい笑みとも、苦笑いとも違った、正真正銘の笑顔だ。

73 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 23:20:06.875 ID:YYfpLl5c0
  
結局、ハインリッヒとヒートに与えられた罰は、
一週間の雑用とトイレ掃除だけであった。
職員会議では数日の謹慎、という案も出たらしいが、
ショボンの口添えのおかげでどうにか回避できた。

彼女達は高校三年生。
就職するにせよ、進学するにせよ、
謹慎処分を受けたなどという事実はないに越したことない。

ノパ⊿゚)「今日も働いた!!」

( ゚д゚ )「お疲れさん」

運動会が終わって数日が経った今も、
ミルナとヒートは共に登下校をする毎日を送っている。

どこからどう見ても、運動会前と変化した部分は発見することができない。
何も知らなければ、片方が告白し、もう片方がフった方だとは思えないだろう。

( ゚д゚ )「……なあ、ヒート」

ノパ⊿゚)「何だ?」

( ゚д゚ )「オレはお前のライバルだ」

ノパ⊿゚)「あぁ」

( ゚д゚ )「だから、お前の隣に立っていても恥ずかしくない男でありたいと思う」

74 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 23:22:06.463 ID:YYfpLl5c0
  
ミルナの声は真剣だ。
ヒートは黙って彼の言葉を聞く。

( ゚д゚ )「……オレも、告白しようと思う」

この世界が少女漫画の世界であったならば、
彼が告白する相手はヒートなのだろう。
堂々とした告白に胸を打ちぬかれたミルナとヒートが結ばれてハッピーエンド。

しかし、現実の世界は甘くできていない。
ヒートもそれは重々承知している。

ノパ⊿゚)「クー姉には彼氏がいるぞ」

( ゚д゚ )「知ってる」

クールは大学で恋人を得た。
時折、彼氏の方が素直家にやってくることもあるため、
ミルナも相手の姿を何度も目にしている。

背は低めで、運動は欠片もできそうにない。
けれども、とても優しげで、クールのことを大切にしてくれている男だった。

ノパ⊿゚)「……失恋は辛いぞ」

( ゚д゚ )「あぁ。そうかもな」

76 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 23:24:15.469 ID:YYfpLl5c0
  
先にある苦痛を知っていても、やらなければならない。
そうしなければ、ミルナは自分がヒートの隣に立つことを許せそうになかった。

フられるとわかっていていながらも一歩を踏み出しただけでなく、
大勢の人間を前にして告白をやってのけた最高に格好良いライバルと並ぶためには、
ミルナも相応のことを成し遂げなければならない。

( ゚д゚ )「だが、思いを伝えることは、無駄ではないはずだ」

ノパ⊿゚)「そっか」

( ゚д゚ )「あぁ」

二人分の足音が響く。
家はもう近い。

ノパ⊿゚)「フられたら慰めてやろうか?」

( ゚д゚ )「いらん」

ノパ⊿゚)「胸なら貸してやるぞ」

( ゚д゚ )「バーカ」

ノハ#゚⊿゚)「馬鹿とは何だ!
     私は総策に入学する女だぞ!」

( ゚д゚ )「は? お前も志望大学そこか?」

ノパ⊿゚)「……お前もか」

78 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 23:26:20.923 ID:YYfpLl5c0
  
二人は顔を見合わせ、
同時にニッ、と口角を上げた。

( ゚д゚ )「勝負だ!」

ノパ⊿゚)「勝負だ!」

綺麗にそろった声に二人はまた笑う。
きっと、この勝負も引き分けに終わるのだろうけれど、
死ぬまで1勝1敗を貫ければ、この上なく幸福で、充実した人生になるに違いない。
ヒートは胸の奥が心地良い暖かさに包まれるのを感じていた。

( ゚д゚ )「ヒート」

二人は家の前で立ち止まる。

ノパ⊿゚)「ん?」

( ゚д゚ )「…………いや、何でもない」

ノパ⊿゚)「何だそれ」

ヒートはクスクスと笑う。

ノパ⊿゚)「そうだ。クー姉呼んできてやろうか?」

( ゚д゚ )「いや、遠慮しておく。
    どうせなら綺麗な夕日をバックに告白したい」

ノパ⊿゚)「ヒュー! ロマンチックだなぁ!」

79 名前:以下、無断転載禁止でVIPがお送りします:2016/04/02(土) 23:28:30.957 ID:YYfpLl5c0
茶化すような口調のヒートをあしらいつつ、
ミルナはそっと目を細めた。

クールのような愛おしさを抱くことはできないけれど、
世界で二番目くらいには幸せになって欲しい、と願うことができる女。ライバル。

( ゚д゚ )「いつかお前が――」

ヒートが家に入っていくのを見届けた後、
ミルナは小さく小さく呟いた。

( ゚д゚ )「オレなんかよりもずっとずっと良い男と結婚したら、
    無理やりにでもスピーチに割り込んで、言ってやるよ」

思い出すのは、堂々と立つヒートの姿。
真っ赤になった顔。
涙でぐちゃぐちゃになった顔。

( ゚д゚ )「――完敗だった、って」

1勝1敗などではない。
ヒートの2勝0敗だった、と。




ノパ⊿゚)それでも勝負は続くようです( ゚д゚ )

END

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