mesimarja
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( ,,゚Д゚)ギコとラストパートナーのようです
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 20:24:19.68 ID:xaIX9ZP20

その日は、よく晴れた晩秋の頃だった。

肌寒さを覚える木枯しと、釣瓶落としの夕日が映える。
カサカサと木の葉が舞うのを見つめていると、疲れた心と身体が癒される。ただ、やはり少し寒いのが難点だ。

それでも、外の世界を活気付かせる人々の喧騒が止むことはない。

老若男女を問わぬ人だかりを見つめていると、自分までもが世界の一つなのだと実感できる。
こうした感想を抱く自分も、額縁に切り取られた写真の一風景でしかないのだろう。

車内の暖房が効き始める頃、やっと待ち人は現れた。




6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 20:26:12.97 ID:xaIX9ZP20

( ,,゚Д゚)「遅い」

助手席のドアを開けた女性に対して、ギコが放った言葉はそれだけだ。

(*゚ー゚)「また車で吸いましたね。私が嫌いなの、知ってますよね?」

自分が煙草を嫌っているのを知りながら、我が物顔で喫煙するギコを、女性は恨みがましく睨み付ける。

( ,,゚Д゚)「これは俺の車だ。俺が何をしようと、文句を言われる筋合いはない」

座席を指し、自分を指し、大口ではっきりと言い返す。
これには気丈な女性も言い返せず、口ごもって口をへの字に折り曲げる。
文句を言いつつも、こうして正論にはしつこく食い下がらない性格だけは褒められる。

それだけであり、バストが豊かだとか、スタイルが良いとか、そうしたところを褒めちぎったりしないのがギコという男だった。

たぶん、身体的特徴や嗜好云々で人を区別しない、
どこと無く冷めた、悪く言えば無頓着な性質なのだろう。


8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 20:28:57.28 ID:xaIX9ZP20

( ,,゚Д゚)「それで、様子はどうだ」

そう切り出すと、女性――しぃは不機嫌な表情を仕事の顔に変えて、黒革の手帳を広げて読み上げる。
その日のスーパーは、いつもとは異なる空気を漂わせていた。

人は集まりはするが何故か中に入っていこうとしない。
それどころか、黄色いテープで仕切られた周囲に集まって野次馬を作ってゆく。

( ,,゚Д゚)「冬眠している虫どもみたいだな」

(*゚ー゚)「貴方の直情的な感想は知りません。話を進めます。
     犯人の名前はドクオ、三十七歳。犯行に及んだ経緯は分からず、お金と逃走用の車を要求しています。
     店員と客、合わせて十三名を人質にとっており、その内、五歳の少女にサバイバルナイフを突きつけて篭城。
     ……典型的な立て篭もり事件です」

( ,,゚Д゚)「そうか。なら、俺達の出番は無いな」

しぃからの報告を聞き、ギコはあっさりと見切りをつける。
そんな潔さに、しぃの方は唖然とした表情を作る。


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 20:31:12.43 ID:xaIX9ZP20

(*;゚ー゚)「ちょっと、何を言っているんですか?
     私達は警察で、市民を守るべき正義のはずです。
     なのに、目の前で強盗事件が発生していて何もしないなんて、どういう了見ですか!?」

( ,,゚Д゚)「馬鹿を言うな。立て篭もった強盗相手に、俺達が何をしろって言う。
     どうせ、特殊部隊でも来て解決してくれるさ。第一、警察が正義だと決め付けるのはよくないな。
     市民の平和と安全を守る使命、義務を背負っていても、それが正義だと言うなら悪人なんてものは無い。

ギコの言葉に、しぃの表情はますます困惑した物と化していく。

( ,,゚Д゚)「なぜならな、強盗にだって自分の正義と信念があるんだぞ。
     それから、俺は二日酔いで頭が痛いんだ。だから耳元で大きな声を出すな。チャンチャン。はい、終わり」

(*;゚ー゚)「いや、ちょっと。チャンチャン、じゃありませんよ。まだ終わってもいません。二日酔いなのは、昨日、警部補が遅くまで飲んでいた所為です」

意味不明な論述で片付けようとしたところを、しぃに食い下がられる。
やはり、理屈の通らないことには納得できないらしい。逆を言えば、理屈ではない納得と言うものを知らないのだ。


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 20:33:33.20 ID:xaIX9ZP20

下手に強盗犯を説得などしようものなら、逆に逆上させて血みどろの発展を見かねない。
そして、始末書やら処分やらのオンパレードで人生を棒に振ることを考えていない。

……二日酔いについては、反論の余地は無いが。

(*゚ー゚)「何で帰ろうとするんですか。ちょっと、あっ……!」

狭い車内で揉み合っていたため、しぃの肘がカーラジオのスイッチを押してしまう。
それぐらいなら、気にするほどのことでもない。
が、問題は流れてくるニュースの内容だった。

『今朝十時頃に、某県某市内のスーパーで強盗立て篭もり事件がありました。
 犯人は人質をとったまま、五千万円と逃走用の車を要求しており、スーパーの前は野次馬で騒然となっています。
 あ、今、犯人がスピーカーを使って何かを叫んでいます』

『早く金を用意しろ! 車もだ! 早くしないと、人質を殺すぞ!』

『大変です。痺れを切らした強盗犯が、子供に、女の子にナイフを突きつけて叫んでいます! 警察は何をやっているのでしょう』


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 20:34:59.42 ID:xaIX9ZP20

どういうわけか、マスコミへの報道規制が如かれていない。
そんなことではなく、ますます状況が悪化していることをニュースが伝える。

いや、ニュースを聞かずとも強盗犯の声は車内まで聞こえていた。
ただし、マスコミの言う警察は、駐車場に止めた車内で口論している。

(*;゚ー゚)「ど、どうしましょう。このままじゃ、拍子でも人質を殺しちゃいますよ……」

冷静沈着のように見える容姿でも、しぃは慌てふためきギコの腕にすがり付いてくる。
考えてみれば、ギコは警部補で、しぃは巡査部長だ。ここでギコが判断を下さず、どうすると言う。

( ,,゚Д゚)「……」

思案してみて、ギコはため息を付きつつ頭を垂れる。

( ,,゚Д゚)「巡査部長殿、脱いでくれ」


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 20:36:36.36 ID:xaIX9ZP20

(*;゚ー゚)「はぁ?」
 
唐突な一言に、しぃは怪訝な顔をする。
ギコの言った言葉の意味を、根本から理解していないのだ。
普通、いきなり脱げと言われてその趣旨を理解できる人間などいないだろうが。

( ,,゚Д゚)「服を脱げと言ったんだ。聞こえなかったのか?」

(*;゚ー゚)「……いえ、もちろん、聞こえてますけど。こんな時に何を言ってるんですか!?
     ふ、ふ、服を脱げなんて、破廉恥です! セクハラです! 訴えますよ!」

さすがにその過剰な反応に、ギコもしばし二の句が告げない。


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 20:39:31.98 ID:xaIX9ZP20

( ,,゚Д゚)「全部脱げとは言っていないだろ。上着だけ脱いで、ラフな格好になれと言ったつもりだ。
     言葉が足りなかったのなら謝る。だから早くしろ」

(*゚ー゚)「う……わ、わかりました」

ようやくしぃは納得したのか、少し渋りながらも上等な生地で出来た上着を脱いで膝にかける。
それを、顎で後部座席に置くよう指示すると、眉を顰めながらも折り畳んでから丁寧に置く。

スーツに隠れていた豊かな胸が露になり、正常な男性なら当たり前のように欲情しそうな雰囲気を発散する。

( ,,゚Д゚)「行くぞ」

そう言うや否や、エンジンが掛かったままだったアクセルを踏み込み、セダンを急発進させた。
続いて、慣性に逆らえなかったしぃの揺れる身体を片手で抱きこみ、顔を数センチと離れていない距離まで近づける。


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 20:41:49.01 ID:xaIX9ZP20

(*;゚ー゚)「きゃああああああっ!!」

正面を見ずに、前のめりになった危険な運転でさえ注意することが出来ないほど、しぃは狼狽してギコを引き離そうとする。
だが、片腕でさえ鍛え上げられた男の腕力には適わず、彼女はギコの思うがままにされる。
そして、セダンは数発のクラクションを鳴らし、モーゼの祈りの如く二つに割れた野次馬の海を通り抜けてスーパーの出入り口へと突っ込んでいった。


「きゃああああ!!!」
「う、うわああ!!!何だぁぁぁ!?」

人を轢かなかったのが奇跡と言えるほどの乱暴な運転で、自動ドアの厚めのガラスを砕いてセダンを乗り入れる。
スーパーに残された人質達の悲鳴が、響き渡った。

(;'A`)「な、何だ!? お前ら、何ものだ!?」

強盗犯の男が人質を抱えて喚き散らす。
下手に騒がれて人質の少女を傷つけられても困るので、ギコは車から降りて強盗犯を宥めようとする。


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 20:43:55.78 ID:xaIX9ZP20

( ,,゚Д゚)「あ~、黙れ。俺達はただの通りすがりだ。
     彼女とラブラブしてたら事故っちまってな、お取り込み中失礼したよ」

肩をすくめるオーバーなリアクションを取りつつ、ゆっくりと強盗犯に歩み寄る。

(;'A`)「近づくな! それ以上近づいたら、このガキを殺すぞ!」

厚手のサバイバルナイフを少女の首筋に突きつけ、半歩後ずさりながら強盗犯が叫ぶ。
少女が「ひぃっ」と鳴き、目頭に涙を溜めて助けを請う。

普通なら、ここで誰しもが立ち止まるだろう。

しかし、それは普通の人ならばの話だ。
そして、ギコという男はその普通の範疇には属さぬ人間だった。

( ,,゚Д゚)「殺れよ。別にそんなガキの一人や二人、死んでも構わねぇ。見知らずの、全く赤の他人だからな。
     死んだところで俺の心は痛まないし、遺族の訴えに耳を貸す気もない。ただ、お前の罪が強盗から強盗殺人になって、重くなるだけだ。
     可哀想に、懲役数年が終身刑。最悪で死刑判決とは」


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 20:47:57.15 ID:xaIX9ZP20

(*゚ー゚)「な……!」

流石にその台詞には、理解不可能なギコの行動で放心状態だった警部補殿も、目を剥いて車から飛び出してきた。

( ,,゚Д゚)「俺の目的はテメェの確保だ。人質などお前の好きにしろ」

ギコの背後まで、顔を真っ赤にした巡査部長殿が歩み寄ってくる。
カツカツと白いタイルの床を踏み鳴らす靴底の音が、静寂に包まれた店内に重く響き渡る。

(;'A`)「う、動くなって言っただろ!?」

強盗犯が、ナイフを突き出して威嚇する。
だが、女性は立ち止まることなく、ギコの後ろから思いのたけをぶつけた。

(*#゚ー゚)「貴方は、何を、考えているんですか!
     そこまで、血も涙も無い人だとは思いませんでした。
     これまで、何があっても警部補のことを信じてやってきましたが、もう我慢できません。
     今日限りで、貴方とのコンビを降りさせていただきます」


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 20:49:12.27 ID:xaIX9ZP20

果たして、そうした言葉を聴くのは何度目だろうか。

中にはちょっとした我が儘で上司に泣き付いた根性無しも、この巡査部長殿のように耐えてきた頑張り屋も、
身の危険を感じて逃げ出した保身者も、居た。それで良いと思う。

自分は常識で物を考えない出鱈目な人間で、他人の心を理解しない無頓着で我が儘な男だ。
己の思うままに行動して、いつかは見捨てられるのなら、最初から一人で居た方がましと言うものだろう。

( ,,゚Д゚)「別に、構わん。だが、今は仕事を全うしろ」

(*゚ー゚)「え? きゃっ――――」

そう言って、ギコはしぃの腕を掴んで引き寄せると、背後に回りこんで背中を押した。
想定していなかった扱いに、しぃは呆けた顔をして運動ベクトルに従って、強盗犯へと突進してゆく。


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 20:52:17.34 ID:xaIX9ZP20

(;'A`)「う、うわっ!」

強盗犯も、予想だにしない動きに戸惑い、意味も無く後ろに身を引く。
そこへギコがしぃを押し退け、床を蹴り一瞬の跳躍で強盗犯の懐へ滑り込んだ。

( ,,゚Д゚)「ふっ!」

咄嗟に振り下ろされるナイフを、ギコは素手で受け止め、引き抜けぬように握り締めながら拳を繰り出す。
掌から鮮血が滴ることも気にせず、痛みすら感じていないかのような無骨な表情で、ギコはそれを打ち出した。

爪先から伝わる反作用を腰の回転モーメントに変換し、肘の筋肉を駆使した渾身の一撃だった。

しかし、そのままでは、渾身の力を籠めた正拳は人質の少女の鳩尾に減り込んでしまう。
その場に居た誰もが、少女の華奢な骨格が目も当てれぬようになることを想像しただろう。

そして、拳は誰の予想に反することなく少女の薄い胸板に突き刺さった。


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 20:55:11.30 ID:xaIX9ZP20

(;'A`)「がっ!」

悲痛な呻き声を上げて、身体をくの字に折り曲げて吹き飛ぶ。
少女が、ではなく、後ろで少女を盾にしていたはずの強盗犯が、だ。

(*゚ー゚)「え……!?」

少女のものとは思えぬ野太い悲鳴に、違和感を感じたしぃがそちらを向いた時、目に入ってきた状況は、
ケロッとした表情の少女を抱き抱えて佇む、二メートル近い巨躯の男――ギコの姿だった。

( ,,゚Д゚)「終わったぞ」

果たして、いったい何人の人々が、その理解不可能な現象を前に首を傾げ、
無事に人質を救出して外に姿を現した大男をヒーローと称えただろうか。

しかし、生憎ながら、男の勇気ある行動を褒め称えたのは、彼のことを知らぬ一般人とお茶の間専門のメディアだけであった。


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:00:05.65 ID:xaIX9ZP20

――――川 ゚ -゚)


『personal data1』
『name:Giko』
『class:assistant police inspector』
『blood:B』
『age:28』
『birth:9/27』
『cons:Libra』
『height:192』
『weigh:77』
『(以下未記述)』


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:01:33.84 ID:xaIX9ZP20

川 ゚ -゚)「……」

私は、手渡された用紙の情報を一通り読み上げ、それを机の上に置く。
青色のバインダーに挿まれた用紙に記述された文字の羅列は、これから私に様々な情報を提供してくれる人物の個人情報である。

ただ、基本的な個人情報に関しては記述してあるが、その他の趣味や嗜好に関しての情報が書かれていない。
業務上では十分なのだろうが、やはりコミュニケーションやスキンシップと呼ばれる『馴れ合い』においては不十分と言える。

無論、主人からも雇い主からも、情報提供者もとい試運転係に任命されたお方と馴れ合えと言う命令は受けていない。
ただ、共に行動し、任務を全うして行けばいいとだけ言われている。

果たして、お茶汲みや雇い主の機嫌取りが任務と呼べるのかは理解できないのだが、
これらも一種の業務処理能力を試す試験なのだろうと考えておく。


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:03:35.25 ID:xaIX9ZP20

私の懸念としては、試運転係のお方がどのような人格者なのか、と言うことだ。
主人が言うに、良い人、の一言で片付けられたため、思考回路の奥に妙な不快感が残っている。

主人が選んだお方を疑うわけでもないし、どういった人格をした人物でもそれなりに対応していくつもりでいる。

しかし、人間関係というものは一方の思惟で成り立つものではないはずだ。
だから、もっとそのお方のことを知りたいと思う。

私のような存在がそんなことを望むのはおかしいのではないか、などと考えたりもする。
命じられたことをひたすらに処理してゆくだけの為に生まれた存在が、他者の人格や思想を理解する必要は無いのではないか。

私は、その疑念を振り払おうと目を閉じる。同時に、その方は扉を開けて姿を現した。

( ,,゚Д゚)「ギコ警部補、呼び出しに従い参りました」


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:07:40.76 ID:xaIX9ZP20

一章:――――好みの問題


ギコは、怒りに満ちた顔つきをしながら、署内を歩いていた。
たどり着いた先は、扉の上の梁に『生活安全部』とプレートが貼り付けられた部屋の前。

( ,,゚Д゚)「お前は、俺をどれだけ馬鹿にしたら気が済む!」

小学生でも出来るような入室の挨拶さえすることなく、ギコは怒鳴り散らしながら扉を開け放った。
威勢の良い破砕音を掻き鳴らしながら開く扉に、室内の視線が集中する。
しかし、半壊した扉と入室者の存在を確認するなり、深い嘆息を吐き出して、彼らは通常の業務に戻っていった。

(*゚∀゚)「やっほぉ~、待ってたよギコちゃん。
     どう、私の試作機第一号は気に入ってくれたかな? その様子だと、喜びのあまり御礼の言葉も出ないようだね」

何処かのお偉いさんみたく、ソファーに小さな身体を埋め込んで手を振るそいつ。
間の抜けた口調と態度で、煮えくり返っていた腸の温度は急転直下を窮める。


37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:10:49.18 ID:xaIX9ZP20

( ,,#゚Д゚)「アレは何だ! あんなものを、次の相方にしろだと?
      お前は、俺のことをからかっているのか?」

(*゚∀゚)「アレとか、あんなものとは酷い言い方だなぁ~。からかってなんていないよ。
     私の作った試作機一号通称『クー』は、正真正銘の最新型自律ヒューマノイドだよ。
     からかうためだけに、私は自分の発明を貸したりしないからね」

( ,,゚Д゚)「……」

彼女の名前はつー。
どんな悪事を働いたのかは知らないが、生活安全課の常連でありながら名前以外は調書に記述されない謎の少女。
その名前さえ実名なのかも分からないし、両親なる人物を見た覚えも無い。

一つだけ言えることは、署内の誰かのコネクションがあることだけだろう。


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:13:23.51 ID:xaIX9ZP20

(*゚∀゚)「スーパーコンピュータ五十台分を超えるメインメモリに、100TBのHDDを搭載。
     身体能力はオリンピックにおける記録保持者と同等にして、情報処理能力は人類史上に残る偉人に負けず劣らず。
     しかも、通常は電気の供給で動かす機械だけど、『クー』は内蔵されたオールタイプ・バッテリーで自己供給できる最新……」

( ,,゚Д゚)「黙れ」

いつの間にか始まったつーの自慢話を強引に打ち切る。
話を途中で打ち切られて、不機嫌そうにソファーに身体を預ける彼女を、切り裂くような鋭い三白眼で睨み付ける。

( ,,゚Д゚)「どれだけ凄くても、俺はあんなものを使う気はない。
     お家に持って帰って、自分の身の回りの世話でもさせてろ」

(*゚∀゚)「酷い言い様だね。いったい、『クー』のどこが気に入らないのさ。
     君は、人間と機械を差別するような人種では無いはずだ。
     そもそも、あそこまで精巧な自律神経を持っているなら、肉体の構成成分を除いて人とは全く違わないはずなのに」


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:15:39.26 ID:xaIX9ZP20

( ,,゚Д゚)「別に俺は、ロボットだからだとか、人間じゃないからなんて理由で断りに来ているわけじゃない。
     人手が不足しているのは署内の共通の意見だし、ツーマンセル(二人一組)での行動を義務付けられた今の警察組織の体系から言えば、
     俺にも新しい相方が必要なのはわかっている。だがな、アレにだけは納得できんっ!」

今頃、署長室でお茶汲みをやっているであろう『クー』なるロボットを指差したつもりで、はっきりと抗議の意思を伝える。

川 ゚ -゚)「そうなのですか?」

返ってきた返答は、つーとは違う落ち着いた物腰のものだった。
ギコの抗議すべき存在が、何故か『生活安全部』の扉の前に立っていた。
そして、警察署には似合わぬ異質なその格好が室内の皆の視線を集める。

(*゚∀゚)「お、クー! お茶くみお疲れさーん」

フリルの付いたカチューシャ、同じくワンピースとなったフリル付のロングスカート。
礼儀正しい言葉遣いに低い物腰は、どこをどう見ても"アレ"でしかないだろう。


43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:18:04.49 ID:xaIX9ZP20

(*゚∀゚)「なぜだ。今時の若者が好む、"メイド"さんなる格好にしてみたと言うのに。
     君はメイドさんが嫌いか? それとも、白衣の天使さんの方が良かったのか。
     いや、むむむむむ。まさか、スクールみずぐっ!?」

何を血迷ったのか、つーが『クー』の全貌を暴露する。
が、それ以上の危険発言については言わせるわけにはいかない。

( ,,#゚Д゚)「そんなものが好きなのは、この世の一部の男だけだ!
      それも、偏執的な性癖の持ち主だけのな!」

(*゚∀゚)「そうか? 私は好きだぞ。"メイド"さんとか」

つーの言葉を聞いて、やっと彼女の格好の理由を理解する。
まだ彼女の場合は控えめだが、その姿は俗に言うゴシックロリータと呼ばれるものだ。


44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:19:50.65 ID:xaIX9ZP20

(*゚∀゚)「そんなわけで、今日からアンリのことを頼むね、ギコちゃん」

( ,,゚Д゚)「ふざけっ……!」

有無を言わさず、つーに押し付けられる。

川 ゚ -゚)「よろしくお願いします。ギコ」

こうしてギコは、背後で佇む奇抜な格好のロボットを相棒にすることとなった。


――――幸薄き男、ギコの波乱万丈の日々は新たに始まる。



一章  了


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:23:22.62 ID:xaIX9ZP20
ここまで一章です。
時間も余ってるしまったり二章も投下しますね。
地の文多いのはサーセンwwww

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:26:33.31 ID:xaIX9ZP20

二章:――――ロボット


修理に出している愛車の代わりに借りてきた代車の扉を開け、降りながらライトグリーンの扉を閉める。
車を止めてあるのは、閑静な住宅街の一角にあるアパートの有料駐車場だ。
ギコは、その駐車場を所有するアパートに住んでいる。

( ,,゚Д゚)「……今まで聞かなかったが、一応は教えておいてくれ。何で、お前まで付いて来るんだ?」

車内での異様な違和感を破り、露骨に嫌そうな表情を作って問いかける。

川 ゚ -゚)「ふむ」

対する彼女は、何が珍しいのか、アパートを見回しているだけで人の話など聞いていない。


51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:28:23.10 ID:xaIX9ZP20

( ,,゚Д゚)「おい、人の話を……ッ」

川 ゚ -゚)「ちゃんと貴方の音声は認識しています。
     ただ、主人から大まかな話を聞いていると思ったので、しばし自分の思案を重視させていただきました」

怒鳴ってやろうかと思えば、言い終わるよりも早く彼女が振り向いた。

( ,,゚Д゚)「主人……つーのことか。
     俺がお前の試運転係に選ばれて、仕事の相方として身近に置くという話は聞いている。
     だがな、俺はそれを許可した覚えはない。一方的に話だけして、一方的にお前を押し付けられて、俺にどうしろと言う?
     部屋は狭くなるし、お前の身の回りのことは俺がしなくちゃいけない」

つーの押し売りに関して捲くし立てるが、売られた方の彼女は全く動じた様子を見せない。
こうした思惑の擦れ違いと言うのは、どこにでも転がっているものなのだろう。
だからと言って、目の前のメイド姿のロボットを自分の身近に置くつもりはなかった。


54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:31:12.25 ID:xaIX9ZP20

( ,,゚Д゚)「ガキでもあるまいし、仕事場までぐらい自分で通え。ご主人様から交通費と地図でも貰って、な! それが出来ないなら……」

胸の内に溜まった鬱憤を吐き出そうかとして、口を噤む。
何故かキョロキョロと周囲を見渡す、メイドロボットが気になったからである。
理由については、それほど複雑なものではない。

「やーねぇ……」「あれって……うん」

怒鳴り散らしている大男と、普通の住宅街にいるわけのない奇抜な服装の女性を、
物珍しく観察する近所の住民達の視線が痛いのである。



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:31:51.38 ID:xaIX9ZP20

( ,,゚Д゚)「とりあえず、中に入るか……」

川 ゚ -゚)「わかりました」

仕様がなく自室へと向かう。
外で話すよりも、中で話した方が人目を気にせずにいられるだろう。

今日のところは、今朝の強盗事件で問題を起こしたことと、
後ろをぴったりと付いてくるメイドロボットの関係で、アパートに帰ることになった。

考えてもみて欲しい。

こんな目立つロボットを引き連れ、ロボットと知らなくとも同僚や仕事仲間達に奇異な目で見られるのだ。

……誰が落ち着いて仕事などしていられよう。


56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:33:41.15 ID:xaIX9ZP20

川 ゚ -゚)「あまり、衛生的とは言い難いですね」

( ,,゚Д゚)「うるせぇ、勝手に上がり込んできてほざくな」

部屋について感想を述べるメイドロボットを黙らせ、ため息を付きながらソファーに腰を下ろす。
安物といった雰囲気を漂わせるボロボロのソファーは一人用なので、メイドロボットは適当に畳の雑誌をどけて正座で落ち着く。

( ,,゚Д゚)「ふぅー……どうすっかな、コレ」

ため息を付いて考えることは、自分の城にまで侵攻してきたメイドロボットをどう処理しようかと言うものだ。

( ,,゚Д゚)「明日は、粗大ゴミの日だったよな……」

壁に掛けられた貰い物のカレンダーを眺め、ボソリと呟く。
部屋を借りる前から薄汚れていた壁を見つめ、メイドロボットの処分方法について考える。


57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:35:47.88 ID:xaIX9ZP20

( ,,゚Д゚)(不法投棄はマズイよな。しかし、機械を一々分解するのもだりぃな)

まあ、つーの話を聞く限り、食費は掛からないらしい。
そう言うことではなく、たぶん、ギコにはロボットであっても意思のある存在を養うほどの甲斐性はない。
ある程度までは自分で行動できるメイドロボットは、自分に何を求めているのだろうか。

( ,,゚Д゚)「なあ、俺は何をしたら良いんだ?」

思案している間、意外と静かなメイドロボットに問いかける。
そして、静かだった理由を知る。

川 ゚ -゚)「何を、とは?」

( ,,゚Д゚)「おい。何で、勝手に掃除を始めている。俺はそんなこと頼んだ覚えはないぞ」


58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:37:37.43 ID:xaIX9ZP20

川 ゚ -゚)「こんな不衛生な場所では、身体を壊してしまいます。
     貴方と共に任務を全うすることが私の目的であり、貴方の健康が阻害されれば試運転の結果にも影響が出てきます。
     ですから、出来る限り身の回りの世話をするのも私の義務で、貴方との良好な人間関係を築くことも要因の一つとなりえます。
     部屋を片付けたら、お茶でも飲んで今後について話し合いましょう」

勝手に部屋の雑誌やらを片付けていくメイドロボットは、ギコの問いかけに淡々と答えを返す。
もしギコが何処かの姑なら、良く出来た娘じゃないか、などと感心していただろう。

( ,,゚Д゚)「片付けなくてもいい! ここにはお茶なんてない!
     お前との良好な関係を築く前に、あの小娘に熨斗をつけて送り返してやる!」

冷静な説得など忘れ、感情のままに怒鳴り散らす。
しかし、怒鳴られている本人は気にした様子もなく部屋の片付けを進めてゆく。
そして、その魔の手は台所まで及んだ。


59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:39:38.92 ID:xaIX9ZP20

川 ゚ -゚)「これはひどいですね。少々、時間がかかると思われます」

( ,,゚Д゚)「……」

もう、怒鳴る気力も残っていない。
ただ思うがままに行動させ、満足したら帰ってもらおうか、などと妥協案を思い浮かべる。

自分で掃除をせずに済むというメリットもある。

まぁ、どうしたところで、彼女を仕事の相方にしなくてはいけないらしいのだから、
足掻くよりも大人しく試運転の期間が終わるのを待つのが得策ではなかろうか。

J( 'ー`)し「こんばんわー」

もう諦めの色だけが強くなってきた頃、それは訪れる。
ギコの人間関係の分類としては、このアパートの管理人兼大家さんと言うだけの、
少しはた迷惑なおばさんが唐突に部屋の扉を開いた。


60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:40:47.21 ID:xaIX9ZP20

J( 'ー`)し「何を騒いでいるのかと思ったら、話は本当だったのねぇ」

( ,,゚Д゚)「話? いったい、何の用件ですか?」

おばさんの物言いからして、騒がしい理由を確認しに来ただけ、と言うわけではなさそうだ。
その証拠に、視線はギコではなく食器を洗っているメイドロボットの方に向いている。
浮かべている笑みに、嫌な予感を覚える。

J( 'ー`)し「まさか、なかなかお嫁さんを貰わないと思ったら、こんなのが趣味だったのね。
      こんなのだったら、昔の仕事の都合で沢山持ってるから、言ってくれればよかったのに。
      それにしても、前の娘に比べてベッピンさんじゃない。昔の私にも負けないわよ」

果たして、この山姥ばりのババアは何を勘違いして、何を言っているのだろうか。


61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:42:20.34 ID:xaIX9ZP20

( ,,゚Д゚)「言っておきますが、こいつも仕事の関係者です。こんな服装が趣味でも、お嫁さんでもありません」

J( 'ー`)し「照れなくてもいいのよぉ~。こんな手際が良くて、美人の嫁さんなんてそうそう簡単に貰えないんだから。
      誇っても良いぐらいよ」

どうやら、もう何を言っても大家さんの勘違いを訂正することは出来ないらしい。
前回の相方である女性――しぃの場合は、嫁と勘違いされた本人も否定したため大きな騒ぎにはならなかった。

が、今回ばかりはメイドロボット自身が羞恥心といったものを持っていない。
挙句の果てには、食器洗いを一旦中止して床に正座し、添えた指を床に着いて丁寧にお辞儀する。

川 ゚ -゚)「不束者ですが、今後ともよろしくお願いいたします。クー、と申します」

たぶん、今日からこのアパートで世話になることについて挨拶をしているのだろうが、挨拶の仕方を間違っている。


62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:43:44.59 ID:mHUCW9UR0
ちょwwwww完璧な新妻だw

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:44:17.47 ID:k5+KwrREO
なんでカァチャンメイド服使う仕事してんだw

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:44:20.23 ID:xaIX9ZP20

J( 'ー`)し「あらぁ~、知ってたら手ぶらでなんて来なかったのに。今度来るときは、何かお祝いでも持ってくるわ。それじゃ、お二人さん仲良くお幸せに」

大家さんも、既に訂正不可能なほど勘違いをして、そう言い残しながら部屋を去ってゆく。
二、三日もすれば、ギコに訪れたこの変動は住宅街中に広まり、挙って周囲の皆さんがお祝いの言葉を掛けてくれるだろう。
今日中に、何処かへ引っ越した方が良いだろうか。

川 ゚ -゚)「確かに、お茶らしいものが見当たりませんね。これでは、客人すら持て成すことが出来ません」

( ,,゚Д゚)「別に持て成す客なんていない。お茶なんざ、出勤したら好きな時に飲める」

コーヒー派ではあるものの、大した議論など出来ないのでずさんな態度であしらっておく。
それでも、メイドロボットの方は何らかのコミュニケーションを取りたいらしく、無機質で情感など皆無な視線をギコに向けてくる。



65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:45:40.07 ID:xaIX9ZP20

とにかく、この状況から逃げ出したくなった。
近所の知り合いが営む喫茶店があったことを思い出し、仕方なくそこへ出かけることにした。
どうせ、一度ぐらいは寄ってくれと頼まれていた店だ、丁度良い暇つぶしになるだろう。

( ,,゚Д゚)「だが、その前に。お前はそれを脱げ」

川 ゚ -゚)「……?」

出掛けるに当たって、準備をしなくてはならない。
そのため指示を出すが、メイドロボットはその意味を理解出来ないらしく首を傾げる。

自分の服を指で示すのに首を振ってやると、室内に不穏な空気が漂う。

川 ゚ -゚)「貴方のことは主人から聞いています。先ほどのご婦人が言ったように、女性に対して興味を惹かれないということらしいですが……
     なんとなく分かりました。貴方という人間は、生身の肉体よりも物質的な存在に欲情するのですね。要するに、私の人工物の身体に欲情したと」

( ,,#゚Д゚)「違う!」

メイドロボット――以後はバカとつけたい――の間違えた解釈を、力いっぱいに否定する。


66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:46:53.13 ID:xaIX9ZP20

( ,,゚Д゚)「……確かに説明不足だったが、別にお前の裸体を見たいわけじゃない。
     そんな格好で出歩かれたら俺が迷惑するから、服を着替えろと言ったつもりだ」

どうも、人間にしろロボットにしろ、女という形状の存在は服を脱ぐことを破廉恥なものだと思い込んでいるらしい。

川 ゚ -゚)「しかし、私はこの服しかいただいておりません」

( ,,゚Д゚)「俺ので良いなら貸してやるよ。こんなものしかないが、そんな服よりは目立たないだろ?」

まさかとは思っていたが、やはりつーは服装に関しては無頓着だ。
……自分の言えたことではないのだが。

とりあえず、クローゼットやタンスを漁って適当な服を見繕う。
そして決まったのが、黒い無地のTシャツとユニクロのジーパンと言うラフな服だった。


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:47:41.90 ID:xaIX9ZP20

( ,,゚Д゚)「それじゃ、外で待ってるから着替えて来い」

川 ゚ -゚)「私は別に今ここで着替えても構いませんが?」

( ,,゚Д゚)「……」

前言撤回。
このロボットの場合は、羞恥心なんてものを持ち合わせていない。
つーよろしく、人をからかうことを楽しんでいるのだ。

親が親なら子も子と言う奴か。



68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:50:17.50 ID:xaIX9ZP20

そして、外に出て待つこと数分。
着替えを終えたメイドロボット――既にメイドではない――が姿を現す。

ギコに合わせた丈なので、頭一つ分小さな彼女には少しダブダブしている。
だが、その様子が仕事仲間というよりも妹に近く思えたので良しとした。

( ,,゚Д゚)「さてと、行こうかね。ロボット君」

川 ゚ -゚)「別に構いませんが、名前を呼んでいただけると助かります。クーと呼んでください」

( ,,゚Д゚)「ほう、機械如きがアデンティティを主張するとはいい度胸だ」

自己同一性を主張する元メイドロボットを軽くあしらい、車は使わず徒歩で目的の喫茶店へ向かう。
小さい喫茶店だと言う話だし、商店街近くにオープンしたため駐車場はないだろう。


69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:52:14.40 ID:xaIX9ZP20

道中、擦れ違いに近所の主婦が、

川^ω^)「仲睦まじい新婚さんだこと、羨ましいわ。末永くお幸せにね」

などと挨拶をしていった。
どうやら、予想以上に話が出回るのが早いらしく、引越しはあまり意味がなさそうだった。

( ,,゚Д゚)「胃が痛いぜ……」

川 ゚ -゚)「大丈夫ですか? 何か悪い物でも」

( ,,゚Д゚)「お前だよ、お前」

川 ゚ -゚)「? 言っている意味が理解出来ないのですが」

クソ。何がハイテクロボットだ。ポンコツめ。


70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:54:01.33 ID:mHUCW9UR0
ブーンきめえw

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:55:46.47 ID:xaIX9ZP20

――……


川 ゚ -゚)「貴方は、どうして警察になったのですか?」

喫茶店に入り、落ち着いた所で、またこの……クーとやらが質問をぶつけてきた。

( ,,゚Д゚)「そんなことどうでも良いだろ。なっちまったものはなっちまったんだ」

突っぱねてやろうと無碍に答えても、彼女は何のメリットも考えずに突っ込んでくる。

川 ゚ -゚)「その様子だと、成り行き任せと言った感じですね。
     何か、他に夢とか、機械の私が言うのもなんですが、なかったのでしょうか?」

( ,,゚Д゚)「夢ねぇ……。あの時は、何かを目標にしていたわけじゃないしな。
     両親は、人様に迷惑を掛けないなら自由にして良い、なんて放任されてたし、俺自身も成りたいと思う職業はなかったな」

見事な誘導尋問だ。
目の前の悩みなど忘れた頃に、昔のことを聞かれるとなぜだか答えてしまう。


72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:57:04.07 ID:xaIX9ZP20

川 ゚ -゚)「なるほど」

味覚など関係ない、と言いつつもオーダーしたアールグレーの紅茶を一口啜り、
上目遣いにこちらを見つめる元メイドロボット。

それがなんとなく、してやったり、と言いたげに見えたので一度は口を噤んだが。

川 ゚ -゚)「恋、というようなことはしなかったのですか?」

( ,,゚Д゚)「何?」

ロボットにしては殊勝なことを聞くので、ついつい興味がそっちに行ってしまう。

まあ、ロボットが恋やら愛について語るのはおかしいなどという差別的考えはないので、
暇つぶしにと夢心地の脳みそが勝手に働いてしまった。


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 21:58:53.92 ID:xaIX9ZP20

( ,,゚Д゚)「恋、ねぇ……」

しかしまた、思い返してみても、元メイドロボットが聞きたいと思うような浮いた話は思い出せない。
誰かを好きになって、熱烈な恋愛をしたことなどあっただろうか。
そう考えると、割と自分は健全な、ある意味で不健全な学生をやっていたような気もする。

それと同時に、今も昔も、自分は大して変わっては居ないのだと実感できる。
恋愛や人間関係には無頓着で、気の置けない友人達と気まぐれな付き合いをしていた自分の姿だけが、ぼやけた記憶の濁流の中に映る。

この喫茶店の店長だって、学生時代の友人が脱サラして営んでいるのだ。

( ゚∀゚)「しかし、お前が警察官だなんてな。特別に成績が悪ってわけでもなかったが、他人に奉仕するような奴じゃなかったと思うが」

友人だった店長が、こんなところで油を売りに来た。
頼んでもいないコーヒーのお代わりをテーブルに置き、おまけだ、とのたまいながらティーセットを元メイドロボットに差し出す。


76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 22:01:31.61 ID:xaIX9ZP20

川 ゚ -゚)「ありがとうございます。ところで、ギコはどのような方だったんですか?」

( ゚∀゚)「……?」

元メイドロボットの問いに、店長であるジョルジュは顔を歪めて怪訝そうにギコを見つめる。
皆まで言うな。何が言いたいかぐらい、高校と大学の数年間で培った経験から分かっている。

( ,,゚Д゚)「仕事の同僚だよ。今日は早く切り上げれたから、ちょいと休憩のつもりでやってきただけだ。お呼ばれもしていたからな」

( ゚∀゚)「なるほど。お前にしてはベッピンさんを連れてきたと思えば、仕事上のお付き合いってわけか。
     まあ、お前が女を垂らし込めるような奴じゃないって事ぐらいは分かっているが」

ジョルジュはふ、と口先で笑う。

( ゚∀゚)「そういやあ、こいつがどんな学生だったかだっけか? 話せば長くなるが、性格的には今とあまり変わってないかな」

( ,,゚Д゚)「短いなゴラァ。お前、俺のことをどう見てたんだ?」


78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 22:04:16.29 ID:xaIX9ZP20

そして、気がつけば、時間を忘れて昔話に没頭していた。
久しく忘れていた笑い声を上げ、周りの視線など気付く暇もなく罵り合いをする。

( ,,゚Д゚)「そういや、お前もそんな事やっていたな」
( ゚∀゚)「ばっか、クーさん。こいつのが酷いッスよ。何せ……」

川 ゚ -゚)「なるほど。つまりギコは変態、ということですか?」

( ,,゚Д゚)「そのメモリ、どうなってんのか一回分解してやろうか?」

元メイドロボットの方は、ただ、いやすっとんきょうな相槌を打つだけだったが、その微量な表情の変化は人間のそれと変わらない。
もしかしたら、無頓着な性格だと思い込んだ上で、相方がロボットだということに固執し過ぎていたのかも知れない。



79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 22:05:59.09 ID:xaIX9ZP20

( ゚∀゚)「俺達って馬鹿だったけど、お前は飛びっきりの馬鹿だったよな。
     今でも覚えてるぜ、あの恥ずかしい記憶は。確かあれは、大学四年生の夏だったか?」

何の話だろう。ジョルジュの言うことについて、記憶の中から探り出す。
確か、大学四年生の夏は、いつものメンバーで海に出掛けていたはずだ。

( ,,゚Д゚)「夜の海に出て、馬鹿騒ぎしてた記憶はあるんだが……。
     花火で騒いでたら、確か――ッ!?」

その時のことを明瞭に思い出し、身体を硬直させる。
はっきりと脳内に浮かび上がった記憶で、耳まで紅潮するのが分かる。

( ゚∀゚)「思い出したか」

川 ゚ -゚)「…? どうしたのですか? ギコ。顔が赤い」

ジョルジュが不適な笑みを浮かべ、元メイドロボットは理解できかねた表情でギコを見つめる。


81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 22:07:52.41 ID:xaIX9ZP20

( ,,;゚Д゚)「……あ、あれは、人助けというのか。その、若気の至りって奴だ! 
      そんなことをいちいち思い出すんじゃねぇ!」

周りの迷惑も考えずに怒鳴り散らし、二度と思い出したくない記憶を胸の奥に仕舞い込む。
人間、誰にだって若い頃の苦い思い出というのはある。
甘酸っぱいとか、ほろ苦いというようなものではなく、ちょっとした世間様には言い辛い失敗談という奴が。

( ゚∀゚)「ヒャヒャヒャwww黒歴史だもんなwww」

川 ゚ -゚)「……?」

それから、そろそろ日も暮れ始める頃合に、割と有意義な一刻を堪能した二人は帰り支度を始める。
日が沈みかけて肌寒くなってくると、客足もほとんど見られなくなる。

そんな、買い物客が減り始める時間帯に、事件は起こった。


82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 22:10:35.83 ID:xaIX9ZP20

( ^ω^)「待ちなさいお! ポケットに入れたものを出すお!」

喫茶店の向かいにある文房具屋から、店員らしき男の怒鳴り声が聞こえる。
振り返ってみると、店員が若い男の肩を掴んで何かを催促している。

会話の流れからするに、万引きをした男を窘めていると言った雰囲気だ。
こんな商店街には良くある光景なので、ギコはそれほど気にも留めずテラスから出ようとする。

(;^ω^)「がっ!」

不意に聞こえる呻き声。
もう一度振り返ると、そこには地面に倒れた店員と焦りを浮かべて逃げ出す男の姿がある。
万引きを窘められているところを、男が抵抗したのだろう。


84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 22:13:01.73 ID:xaIX9ZP20

川 ゚ -゚)「罪状を窃盗から強盗に移行。直ちに捕獲する」

全ての光景を見ていた元メイドロボットが、無機質で事務的な口調で言葉を発し、殆ど予備動作も無くテラスから飛び出た。
元来た喫茶店内を通らず、胸の高さのあるテラスの柵を飛び越えて、下に植えられているコスモスの生垣を踏むことなくアスファルトに着地する。

( ,,゚Д゚)「済まん、急な仕事だ!」

( ゚∀゚)「ああ、ツケておくから行って来い」

自分も後を追い、喫茶店を飛び出す。
昔の話をする温和な顔つきから、ギコは一瞬で警察官としての鋭い顔つきに変貌して見せた。


86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 22:15:28.54 ID:xaIX9ZP20

( ,,゚Д゚)「ちっ! 出遅れたか!」

外に出た時には、ほんの僅かなタイムラグであったというのに、逃亡犯と追跡者の姿は遠く離れていた。
オリンピック選手並の身体能力とは聞いていたが、それから逃げ果せる逃亡犯もなかなかの足だ。
たぶん、長距離走と短距離走との筋肉の出来が異なるから、どちらかを突出して使い切れないのだろう。

それでも、十分に早いのは確かだ。

( ,,゚Д゚)「こっちか……クソ、図体がでかいと、こういうときに不便だなっ!」

人混みの途切れ始めるところで、ようやく二人の背中に追いついてくる。
そして、強盗犯はこの辺りの地理に疎いのか、行き止まりとなっている細い路地に折れ曲がる。
そこはシメたと思うところなのだろうが、油断は禁物である。何せ、追い込まれたネズミほど反撃に猫を噛む可能性は高いからだ。


87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 22:17:03.67 ID:xaIX9ZP20

( ,,゚Д゚)「おい、そこで止まれ!」

元メイドロボットも路地を曲がろうとしたところで、ギコが制止の声をかける。
だが、追跡に夢中になっていて聞こえなかったのか、彼女はそのまま路地の向こうへと姿を消した。

( ,,゚Д゚)「チッ。俺より頭が良いなら、もう少し考えてから行動しろ」

悪態を吐きながら、ラストスパートを掛ける。
路地を折れて少し走ると、そこには強盗犯を追い詰めた元メイドロボットの姿がある。

そこまでで止しておけば良いものを、彼女は強盗犯に歩み寄ってゆく。
ジリジリと間合いを詰められ、完全に追い詰められた強盗犯の取った行動は当たり前と言えば当たり前だった。


88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 22:18:49.12 ID:xaIX9ZP20

(;'m`)「それ以上来るな! 来たら、ぶっ殺すぞ!」

精一杯の虚勢を張り上げ、懐から取り出した折畳み式の護身用ナイフ、
俗にバタフライナイフと呼ばれるそれを構える。
その虚勢に立ち止まったのは、元メイドロボットではなくてギコの方だった。

川 ゚ -゚)「どうして人間というのは、こうも往生際が悪いのでしょうか? 
     自分の罪を認めず、逃げ果せようという卑俗な考えに呆れます」

彼女はナイフにたじろいだ様子も無く、冷ややかな視線を強盗犯に向けて場違いな感想を述べる。
ロボットはそんな感想を覚えるのだろうが、ギコは違う。
警察である身でこんなことを思うのはおかしいのだろうが、ギコは犯罪者というものに敬意に似た感心を抱いていた。

( ,,゚Д゚)「……おい」

日々を気ままに過ごす自分よりも、己の運命に抗おうと必死に生きる犯罪者の方が、よほど人生における幸せを享受しようとしているように思うのだ。
我武者羅に、敗者から勝者へと勝ち上ろうとする姿が、ギコには眩しく見える。


90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 22:20:47.72 ID:xaIX9ZP20

しかし、犯罪者が、己を忘れてはならない。
己を忘れて人を殺したのなら、それはもう勝負ではなく狂気の沙汰なのだ。
負け組みどころか、狂人に成り下がる者に誰かが殺されるのは見たくは無い。

川 ゚ -゚)「もう、ここまでにしなさい。
     貴方は逃げられないのだから、大人しくお縄に付いた方がまだ罪は軽い」

元メイドロボットが強盗犯を説得しようとする。
ナイフをチラつかせて威嚇しているだけなら、まだ逃げよういう気概はある。後は、犯人の出方次第だ。

(;'m`)「う、動くな! 動いたら……ッ」

強盗犯が言葉を紡ぎ終えるよりも早く、元メイドロボットが前に出る。

( ,,゚Д゚)「おい、待――――」


91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 22:22:57.56 ID:xaIX9ZP20

('m`)「うわああああ!!!」

無意識のうちに、叫んでいた。
しかし、制止の声も間に合わず、犯人の振るった凶刃がクーの胸を裂く。
舞い散るTシャツの切れ端が、ギコの目の前で踊り、擦れ違い様にクーが地面に倒れた。

川 ゚ -゚)「……」

( ,,゚Д゚)「クー!」

二、三回ほど転がった後、クーは積み上げられていたダンボールの山に突っ込んだ。
その直後に、赤いそれが地面を濡らす。ドクドクと、留まることを知らずに赤色のそれは広がってゆく。

( ,,゚Д゚)「おい……嘘だろ?」

なんという終わり方だろう。
彼女と組んでから、たったの一日どころか、半日も経たぬ内に解消なんて、なんという薄情な運命なのだろうか。


93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 22:24:35.15 ID:xaIX9ZP20

( ,,゚Д゚)「嘘だろ……おい。まだ、だ。まだ、生きてるよなッ?」

ピクリとも動かぬクーの姿を見つめ、僅かな可能性に賭けて歩み寄る。

川 ゚ -゚)「…………」

(;'m`)「ひ、ひ、お、俺じゃ、俺じゃない!!ああああ!!」

強盗犯は、自分が殺した――切ったのだと気付き、ナイフを地面に転がして腰を抜かす。
逃げる気も起きぬほど後悔し、頭を抱えて震えている。

( ,,゚Д゚)「クー、おい、大丈夫か?」

なんとも安直な、それでもそれ以外に掛けるものの無い、狼狽した台詞。
クーは目を開き、そんなギコにこれまで見たことの無い綺麗な微笑を見せる。
私は、こんな風に笑えるのよ、と言いたげに。


94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 22:25:53.80 ID:xaIX9ZP20

川 ゚ -゚)「……すみません、私が勝手なことをしたばかりに。私は大丈夫ですから、早く逮捕してください」

( ,,゚Д゚)「何言ってんだ。直ぐに救急車呼ぶから、もう喋るな」

川 ゚ -゚)「それから、初めて私の名前を呼んでくれましたね。とても、嬉しかったです……」

( ,,゚Д゚)「だから喋るなって言ってるだろッ。
     名前ぐらい、これから何度でも呼んでやるから、死ぬんじゃねぇッ」

自分の心配など無用と言わんばかりの物言いに、つい語気が荒くなる。
それでも、クーはその無垢な微笑を壊さない。ただ、優しく聖母の如くギコを見据える。

川 ゚ -゚)「それにしても、ギコさん。貴方は何をそんなに慌てているのですか?
     こんな染色用の塗料が付いたぐらいで」

( ,,゚Д゚)「ペンキだからだろうが! ペンキだから……へっ? ペンキ……?」


105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 22:52:50.07 ID:xaIX9ZP20

そこで、フッと冷静さを取り戻す。
良く考えてみれば、クーの身体を染める赤い液体は、感触も粘度の血液とは異なるものだった。鼻腔を突く希釈剤の香りに、嗅覚が取り戻ってきたため顔を顰める。他の五感も正常に働き始めると、ようやく全ての状況を飲み込めた。

( ,,゚Д゚)『…………』川 ゚ -゚)

クーを抱き上げた形で見詰め合い、しばしの沈黙に包まれる。
晩秋の冷たい風が、焦燥し切っていた心と身体を冷ましてくれる。

要するに、クーは全く無事なのだ。
多少は人工皮に傷は付いただろうが、ロボットである彼女がその程度で死ぬわけがない。


108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 22:56:00.38 ID:xaIX9ZP20

川 ゚ -゚)「そもそも、私には『死』という概念はありません。
     ボディーが壊れても、主人なら治してくれるでしょうし、ありえたとしてもメインメモリを損失するか、
     CPU自体が損害を受けない限り、私は保護プログラムで一時的に休止状態に入る程度かと」

( ,,゚Д゚)「な、何だよ。ハハハ、は……はぁ」

クーの説明に、ギコは呆れて物が言えない。
とりあえず、ため息を一つ吐いてからクーを抱き起こす。


110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 22:56:47.18 ID:xaIX9ZP20

その後は、割と事務的で簡単な作業を行うだけだった。

自失呆然としていた強盗犯を手近な紐で拘束し、文房具屋の店員が通報して駆けつけた警察官に手渡せば、
明日にでも報告書を出すということで一件落着だ。

まさかのドラマ的展開で、新しいパートナーとの忙しい一日は幕を閉じることとなった。


――――まだ、少しばかりの追記は残っているが。



二章  了


112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 22:59:10.80 ID:xaIX9ZP20

最終章:――――Last partner


夕日が沈み、完全に夜の帳が下りた頃、二つの人影が街灯に照らされて影法師を作る。
街路樹の銀杏や椛が路上を赤と黄に染め、影の闇へと溶け消える。

言わずとも、ギコとクー二人だ。

肩を並べて歩くその姿は、仲睦まじい夫婦を彷彿させる
しかし、二人を包み込む空気は沈黙に満ちて重苦しい。

( ,,゚Д゚)「なあ」

川 ゚ -゚)「……はい?」


115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 23:00:40.53 ID:xaIX9ZP20

( ,,゚Д゚)「何で、だ」

ギコの問いも短い。
まるで、言いたいことぐらい説明せずとも分かり合っているような問答だった。

しかし、クーには理解出来ない。いや、理解できるわけが無い。
先ほどから、なぜギコが無言の怒りを自分に向けているのかなど。

川 ゚ -゚)「服のことでしたら、明日主人に伝えて弁償していただきます」

( ,,゚Д゚)「違う! そんなことじゃない!」

それは怒りでも、怒りには含まれぬ声音を纏っていた。
怒らずには居られない、それでも怒ったところで解決にならぬ、複雑な感情論が入り混じった声。


117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 23:02:31.64 ID:xaIX9ZP20

( ,,゚Д゚)「なんであの時、犯人を取り押さえようとした?」

川 ゚ -゚)「なぜ、とは? 我々、警察が犯罪者を捕獲するのは当然の義務ではありませんか。
     それを放棄して、何が我々の仕事として残るのでしょう?」

やはり、ギコの言いたいことが分からない。
当然のことをして怒られるなど、理不尽ではないか。
それなのに、ギコは苛立った視線をクーに向けてくる。

( ,,゚Д゚)「追う、捕まえる、なんて物はどうでもいいんだ。
     俺の指示に従わなかったのも、仕事を優先した所為だって分かっている。
     だがな、あれは勇敢じゃなくて無謀って言うんだ! お前は、俺みたいに武術が出来るわけじゃない。

     力は強いだろうが、素手での戦い方は知らない。もしお前が普通の人間なら、あれだけで十分危険な怪我をしていたんだぞ?
     なのに、どうして楽観していられる!?」

クーは、そんな不可解な確率論と仮定を持ち出されて一瞬たじろぐ。


118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 23:04:12.32 ID:xaIX9ZP20

川 ゚ -゚)「別に、楽観しているわけではありません。
     それに私は、人間のような怪我をしないことを自覚した上で行動したんです。
     起こりえない仮定に脅え、犯罪者を取り逃がすなど警察の……」

( ,,゚Д゚)「……」

気丈に反論するが、最後まで言わずに口を噤む。
どうして、ギコがここまでして怒っているのかが理解できたのだ。

自分は、ギコの相方であっても、警察でもなんでもない。
ただ、試運転のために警察に預けられただけの機械であり、犯罪者を捕まえるために作られた存在ではない。

だから、身体能力は常人より高くても、戦う術を与えられてはいなかった。
犯罪者を捕まえられなくとも、警察の恥などと言う権利などない。


119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 23:05:06.56 ID:xaIX9ZP20

川 ゚ -゚)「……すみません。そうですよね。私は、貴方の後ろでどう行動すればいいかを考えていればよいのでしょう。
     犯罪者を捕まえるのはギコの仕事で、私の仕事は試運転の結果を出すことです」

それに気付いてしまい、クーはボソボソと呟きながら項垂れる。
闇夜でさえその存在を失わぬ、深淵の黒髪を力なく垂れ下げながら自嘲の笑みを浮かべる。

顔を上げても尚、自分を見据えるギコの顔を見ることが出来ず、百八十度に踵を返す。
たぶん、酷く失望した表情を浮かべているだろう。
そして、振り向いたところで彼は何事もなかったように立ち去る。

振り向き様に、平手の一発でもくれればもう少し楽なのだろうが、
このギコという男はそれをしない男だと分かっている。


122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 23:06:37.93 ID:xaIX9ZP20

川 ゚ -゚)「すみませんでした。主人に頼んで、別の方に試運転を代わってもらいます。
     今日一日、ありがとうございました」

振り向くことなく、クーはそれだけを告げると走り出す。
今は、今だけは彼の顔を見ずにここを去りたい。

それでも、そう思っていても、彼はそうさせてはくれなかった。

( ,,゚Д゚)「謝られて、相方を辞められるのは初めてだ。
     感謝されて、辞められるのも初めてだな。ただ、どうして辞めるのかが分からん」

静かの口調の、咎めているわけでも、クーを許そうとしているわけでもない台詞。
声の主は、いつの間にかクーの走り去ろうとした行く手を遮っていた。
正面に佇み、怪訝そうな表情を浮かべて首を傾げている。


123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 23:07:40.75 ID:xaIX9ZP20

予想の出来なかった宗ギコの行動に戸惑っている間に、彼はゆっくりと自分に歩み寄ってくる。
そして、コートのポケットに手を突っ込んでマイルドセブンを引っ張り出す。

咥えて火をつけると、深く息を吸い込んで白濁した紫煙を夜空に向けて吐き出した。

( ,,゚Д゚)「いったい何を勘違いしているのか分からんが、一つだけ言っておく。
     お前は俺の相方じゃない」

川 ゚ -゚)「…………」


考えている通りのことを言い当てられ、再び俯いてしまうクー。
やはり、最初から自分はギコの相方になる資格などなかったのだ。
故に、切り捨てられることは当然の結果だった。


125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 23:08:19.40 ID:xaIX9ZP20

このことを報告したら、主人はなんと言うだろう。
失望してため息を吐くか、怒ってギコに抗議しに行くか、笑い飛ばして次の試運転係を探すか。

どちらにせよ、当然だと自覚している以上は悲しくない。

それでも、胸の奥で機械の知性とは異なる何かが訴える。慟哭している。
泣いて懇願すれば、もう少しの間は相方を続けられるだろうか。

いや、無理だ。

やはり彼は、そうした男ではない。

主人が言う最強の武器である女の涙を見ても、冷たく切り捨てられる非情で、
真実を鑑みた上で他人を気遣える優しい男性だ。

どうして、彼の言葉はこんなに重いのだろう。

とても長い、そして短いような、良く分からない空白を空けてギコが口を開く。


126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 23:09:33.36 ID:xaIX9ZP20

( ,,゚Д゚)「クー、お前は俺の相棒だ」

言われた言葉の意味を理解できず、顔を上げる。
果たして、相方と相棒とはどういった違いがあるのか。

( ,,゚Д゚)「相方は、相棒と同義語だが、パートナーとは言えない。
     俺の求めるパートナーってぇのは、ただ俺についてくるだけじゃなくて、自分の考えを持って行動できる馬鹿だ」

川 ゚ -゚)「……どう、言う……」

ギコの言いたいことが分からず、的確な問い掛けの言葉が出てこない。
ギコの方は、クーの思いを汲み取っているのか、そのまま言葉を続ける。

( ,,゚Д゚)「それを言うと、お前はこれまでに会ったことのない最高の相棒だよ」

川 ゚ -゚)「……!!」

煙草を咥えたまま白い煙を吐き出し、口角を吊り上げて言う。
そして気付く。自分が、彼のことを見誤っていたことに。


129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 23:11:52.08 ID:xaIX9ZP20

ギコという男は、世界を描く絵画の額縁に収められるほど小さな男ではなかったのだ。
こうして、自分の目でも彼の巨躯を収めきれぬように、自分の見ていた世界は小さ過ぎた。
ギコが歩み寄ってきて、腕をクーの背中に回し、そのまま優しく胸に抱き寄せる。

( ,,゚Д゚)「クーは、俺の最後の――ラスト・パートナーだ。
     だから、もう辞めるなんて言うなよ」

耳元で囁かれる言葉。
それは、クーが決めることの出来ない絶対条件。
言わば、クーには決定権など元からない。

川 ゚ -゚)「……はい!」

数秒の拍を置いて、答える。短くも、はっきりと、誓いを込めて。
自分は、もう彼から離れないだろう。自分は死ぬことはないから、彼が死ぬまでの間だが。
それでも、彼が死んでもその誓いは残る。


――――なぜなら、自分は彼の『Last partner』だから。

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/30(水) 23:12:30.64 ID:xaIX9ZP20
以上で終わりです。
いやっふぅううううう!!!!!!!完結できたああああああああああ!!!!!!!!

コメント

なんか纏め方強引だな
[2008/07/02 14:21] URL | VIPPERな名無しさん #- [ 編集 ]


 もう流れたけどこのサイトで書き込まれていた小説と内容がソックリですね^^
ttp://eldorado1st.cool.ne.jp/novelbbs/compe/
 
[2008/07/02 21:27] URL |   #- [ 編集 ]


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