mesimarja
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('A`)僕の絵は心のようです
4 名前:('A`)僕の絵は心のようです:2008/03/23(日) 14:12:24.93 ID:xhifUHN+O
僕は絵を描いている。

かったるい大学講師の授業を右から左へと受け流しながら僕は黙々と作業に没頭する。

何の変哲もない24行の大学ノートがキャンバスへと変わる。
何の変哲もないシャープペンシルが筆へと変わる。

僕は絵を描いていた

絵のモデルは、そう、君だ

ある日の放課後、僕は初めて君を描いた。終礼はとっくの前に終わっている。

でも君はそんな事お構いなしに机に突っ伏し寝息をたてていたね。僕がなぜあの時君を描いたか、自分でもよく解らない。

でも

君の寝顔はこの世に存在する何よりも、優美で、端麗で、描かずにはいられなかったんだ。

だから、僕は思った。起きないでくれと。この時間がいつまでも続いてくれと。

気付けば僕は、君から目を離せずにいた。


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 14:16:55.98 ID:xhifUHN+O
君との出逢いは高二の春、そう、ちょうど五年前だね。
僕はいつも、自分より大きなエナメルの鞄を背負い、小さな体を落ち着き無く動かし続ける君を眺めていたんだ


「早くー、部活始まっちゃうよー」

「ねぇ!!早くしてったら!!」

「もう!知らないんだから!」

小動物の様な君の仕草が、僕は好きだった。
といってもこの時はまだ恋愛感情なんて物は皆無だったよ。

あの頃の僕には恋愛沙汰なんて全くなかった。
ただ、漠然と、君の絵が描きたい、そう思っていた。

そうそう、分かっているとは思うけど僕は美術部なんて物には入っていなかったし、君が勧めてくれるまで入ろうと思ったこともなかったよ。
思えば、君はとても遠い存在だったんだな。そして、とても近い存在でもあったんだね

「ドクオ君、いつも勉強ばかりしてるよね」

君が僕に掛けた初めての言葉 今でも鮮明に覚えている。
この瞼を閉じれば、浮かんでくるんだ。部活で汗を流し、夕暮れの陽光で照らされた君の美しい表情がね。僕はあの時気が動転していた。
だって、高校三年間で君と話すことなんて無いと思ってたからね。

だから、あの時僕はノートを反射的に隠してしまった。
勉強してるフリをしてれば良かったのにね。でも、君が話し掛けるからいけないんだよ。
あの時僕は絵を描いていた。
当たり障りの無い教室の絵。黒板があり、教壇があり、机があって、椅子がある。
そんなどこにでもある風景を、僕は描いていた。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 14:19:25.45 ID:xhifUHN+O
「あっ!今ノート隠した!!さては……ドクオ君、勉強してないなぁ?」

「違うよ、たまたまボンヤリしてただけだから」

「それなら、今隠したノート み・せ・て」

「何もないよ?」

「どれどれ……本当だ、ドクオ君数学好きなの?数式ばっかりじゃん」

「だから面白くないって」

「じゃ、勉強頑張りなよ」

「デレさんは部活頑張ってね」

「うん!!」

あの時、僕はこっそりノートを入れ替えた。
別に理由なんて無かった、強いて言えば、「ドクオ君、絵巧いねぇ、私を描いてみてよ」なんて事を言われるのが嫌だった。
悪く思わないでよ?
あの時は本当に嫌だったんだから

どうしてか?って言う理由はもう話したよね。僕は人を描くことが恐かったんだ

―――こんな力のためにね

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 14:24:23.17 ID:xhifUHN+O
幼稚園の頃のことだ、僕は幼稚園で週一回行われるお絵描きが大好きだった。いつも前日には必ずクレパスを入れたかチェックしていた。最初の頃は楽しかった、純粋にね。
車を描いたり、動物を描いたり、頭の中でイメージを膨らませてそれを画用紙に形にしていった。本当に楽しかった。

僕は神様なんだ。僕はなんでも作ることが出来た。カッコいい車だって、電車だって、お腹が減ったらお菓子だって作れる。


全部描けば良い、真っ白いキャンバスに、十二色のクレパスで。

でもある日、幼稚園の先生がペアを作って友達の顔を描くという課題を出した。

その日は、僕の人生の中で最も衝撃を受けた日になったんだ。

僕のペアは、いつも弱い子をイジメていた男の子だった。僕は運良くイジメの標的にはなっていなかったけど、僕の友達の中でも被害を受けていた子はいた。

僕は、一色のクレパスを手に取った、十二色の中から一色だけ “黒色”のクレパスを。
僕は恐かった、その子が、イジメられる事が恐かったんだ。

そして僕は一心不乱に描いた、その子の顔を、描き続けた。そして出来上がった。
彼の顔は


まるで悪魔だった。


それからも何度か人の顔を描く機会があった。その度に出来上がったのは悪魔の様な人の顔だった。


こうして僕は顔を描くのをやめた。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 14:27:10.23 ID:xhifUHN+O
ここまでは話したよね? これからする話はまだ君に話したことはない。
落ち着いて聞いてほしいんだ。

それでも、やっぱり集団行動から一人はぐれるというのは難しい物で、一度だけ人の顔は描いた。小学生の頃にお母さんの似顔絵を描かなきゃいけなかったんだ。
幼心に思ったよ。もしこれでまた悪魔のような顔を描いたらどうしようかってね。何度も何度もトイレで戻したのを覚えてるよ。

結局、お母さんの絵は凄く上手に描けた。小学校の先生にも何度も誉めてもらったよ。

でも

やっぱり友達を書くと悪魔になったんだ。
どれだけ気を付けても、気付けば黒色を使っている。不気味に顔を黒く染めていたんだ。

そして気付いたんだよ。


僕の力に。


僕は相手の本質を描く事が出来る。小学校や幼稚園に友達が居なかったなんて事は決して無いと思うんだけど。

やはり小さい頃の友情なんて薄っぺらなもので、 誰を描いても悪魔になっちゃったんだ。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 14:30:57.74 ID:xhifUHN+O
それでも絵が好きだった僕は描き続けた。

毎週日曜には父に連れられて写生に出掛けていた、家で暇があればそこら辺にある物をモチーフにデッサンしたりもしてた。でも人の顔はもう書かなかった。


話が脱線したね、でもこれから話すことは大切なことなんだ。

そんな僕も成長し、高校生となった。
そう、君と出会ったんだ。

一年生、僕は何をしたという記憶は無い、迫り来る毎日毎日をただ無気力に過ごしていた。
自分から積極的にクラスの人と交わることもせず、正直浮いていたね。
ただ、あの時は怖かったんだ、友達と言うのが、描いても描いても悪魔になってしまうんだ、どれだけ仲が良くても、結局は悪魔。

失望しなかった訳じゃないよ。人の本質を見抜く力。

一番の親友の本質を見抜けてしまう自分が憎かった。
そしていつも悪魔になってしまう友達が恐かった。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 14:33:12.41 ID:xhifUHN+O
二年生

僕は初めて君と同じクラスとなった。でも君は僕にとって遠い存在だったんだよ。
それに君は身体が小さすぎて居ることにも気付かなかったよ。

君は本当に落ち着きが無いね、ガタガタと机を跳ね退けながら小さい身体を存分に使って暴れ回ってた。

僕は素直に羨ましかった。
なんの疑いを持たずに友達と接することの出来る君が、心から羨ましかった。


そして、ある日の放課後僕は人生で二度目の衝撃を受けた。


('A`)(あー、授業だるいなぁ、やっと終わったよ)

放課後誰も居ない教室で、僕は一人絵を描いていた。

描いていたのは夕暮れに染まる町の絵。
ただシャープペンシル一本で描く町並みは、傍から見れば、夕暮れか、昼間か、夜かすら解らないだろう。

心の中で、何度も色を付けた、ただ満足出来るイメージが出来るまで、いつも色を付ける事は止めておいた。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 14:35:50.14 ID:xhifUHN+O
そこで見つけたんだ


ζ(ーーー*ζ


机に突っ伏し静かに寝ている君の姿を


美しかった、本当に美しかったよ。

('A`)「………」

あの時僕は、呆然としてた、こんなに美しい人がこの世に存在するのかと疑った。何度か見掛けたことはあった。
前に絵を描いてるところを見られそうにもなった。
ただ、僕達のこの頃の繋がりなんて大した物じゃなかった。

“ただのクラスメート”

これ以上に似合う言葉は世界中のどこを探しても見当たらないね。

僕は、ノートとシャープペンシルを取出し無我夢中で君の絵を描いた。
時が経つのも忘れて、君が起きるかもしれない。そんな事、あの時の僕にはどうでも良かった。

ただ

君を描きたい。

それだけだった。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 14:38:58.62 ID:xhifUHN+O
輪郭が出来上がる、君のやさしそうな寝顔が一つ、一つとキャンバスに写し取られていく。 君のそのクセっ気のある髪型も、円らな瞳も全部全部描いていく。

君が目覚めた時、僕は遂に君を写し取った。

ζ(つーー*ζ「ぅん……おはよー」

('A`)「……お早うございます」

ζ(つーー*ζ「あれ?何でドクオ君がぁ?」

僕は迷った、君に絵を描いていたことを伝えようかどうか。

でも

やっぱり僕は恐かった、また悪魔の様な顔になっていたら、いや、なっていないはずが無い。

('A`)「……いや、もう放課後だから起こそうと」

最後まで言わせて貰えなかった。君は僕が大事そうに小脇に抱えていたノートを引ったくったよね。

(;'A`)「あっ……」

ζ(゚ー゚*ζ「なるほどー、これがドクオ君の大切なノートなわけね」

(;'A`)「あの……返してくれませんか?」

ζ(^ー^*ζ「ダメー」

満面の笑みで言われた。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 14:40:55.89 ID:xhifUHN+O
ζ(゚ー゚*ζ「私の絵を描いてたでしょ?モデルにされたからにはちゃんと出来映えも見とかなきゃね」

鼻歌を歌いながらノートを捲っていく君。本当に楽しそうだったね。いつから起きてたのか、聞こうと思ったけど、やめたよ。

「……凄い」「上手!!」

ありきたりな言葉を連呼する君、でも僕はそんな君の言葉が何よりも嬉しかったんだ。

ζ(゚-゚*ζ「……あっ」

君が開いた最後のページ。

そこには


天使が


眠っていた。


白い翼を背に持ち、金色に輝く輪を頭の上に漂わせ、ふかふかの雲の上で優雅に昼寝をする。

そんな天使が写っていた。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 14:43:30.80 ID:xhifUHN+O
ζ(/ー//*ζ「何だか照れるなぁ……こんなに綺麗に描いてもらえてるなんて思っても見なかったよ」

それは僕も同じさ、いつまで経っても僕が人を描けばそれは悪魔になった。
でも遂に見付けたんだ。
天使を、君を見付けた。

('A`)「……初めて描けた」

ζ(/ー//*ζ「うぅ、ヘタクソだったら肖像権の侵害で訴えてやろうと思ったのに……」

僕は満足だった。初めて友達を描けた。いや、まぁ友達って訳じゃなかったけどね。

ζ(゚ー゚*ζ「ドクオ君!!綺麗に描いてくれて」


ζ(゚ー^*ζ「ありがとねっ!!」


君の笑顔が僕を締め付けた。そして、ある感情が心の奥底から湧いてきた。
今ここで自画像を描くことが出来るなら、きっと僕は天使だ。

('A`)「あの……もう一枚だけ……描いていいですか?」

描きたい、君をもっと、色んな表情を、色んな場所で、君を描きたい。

自然とこの言葉は出たよ。


ζ(/ー//*ζ「……よろしくお願いします」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 14:47:43.96 ID:xhifUHN+O
そして僕達は、付き合うことになったんだよね、告白?今でも思い出すと寒気がするよ。
だからここでは触れません。


同じ大学に進み、今、同じ授業を受けてる。

僕は絵を描いている。

君は寝息をたてている。








この春、大学を卒業したら、結婚して欲しい。急すぎるなんて言われても困るんだ。僕にも事情があるから。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 14:49:14.97 ID:xhifUHN+O
この前、久しぶりに君の絵を描いた。頭の中にある僕の一番お気に入りの笑顔を描いた。

気付けば隣に僕が居た。

僕も笑っていた。

そして僕達の間には



名前はどうしようか?君に似ると良いね。君に似たら凄い美人だろうな。モデルが増えて僕も嬉しいよ。








デレ、愛してるよ。


新しい命を、ありがとう。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 14:51:38.78 ID:xhifUHN+O
とりあえずここ迄で、以前の投下分は終了です。

十分程休憩して、ζ(゚ー゚*ζサイドを投下します。 

それを持って、この話は終了です。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 15:02:20.33 ID:xhifUHN+O
私は寝たふりをしている。

つまらない大学の講師の話を子守唄に私は臥せっていた。外は雨、あの時と同じように止む気配を見せぬ土砂降りの大雨。

買ってから一度も使ってない教書が枕になる。
落書き一つ無い机が私のベッドになる。

私は寝たふりをしている。貴方がペンを奔らせている事に気付きながら。

私が貴方を見つけた日、それは高校二年生、皆が騒ぐ昼休みの喧騒のなか、貴方は大学ノートにペンを奔らせていた。
そんな貴方を私はずっと見ていたの。

何度も何度も、書いては消しを繰り返す貴方。私は本当に勉強熱心なんだなと感心してたわ。
でも違ってたね。貴方は書いていたんじゃない、描いていたものね。
私と貴方が初めて話したあの日、私も鮮明に覚えてるわ。
部活終わりの生徒が騒がしく部室に移動する中、私は忘れ物を取りに教室まで走っていた、貴方はまた教室でまた黙々とペンを奔らせていたね。
そんな私は貴方に初めて話し掛けた。

「ドクオ君、いつも勉強ばかりしてるよね」

素直な疑問、勉強が嫌いで、何よりも身体を動かす事が大好きだった私には、机に長時間座っている貴方が凄いと思えたから。

でも、貴方はノートを腕で隠したよね、そんな女の子みたいな、か細い腕で隠せるわけなんか無いのにね。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 15:03:43.97 ID:xhifUHN+O
「あっ!今ノート隠した!!さては……ドクオ君、勉強してないなぁ?」

「違うよ、たまたまボンヤリしてただけだから」

「それなら、今隠したノート み・せ・て」

「何もないよ?」

「どれどれ……本当だ、ドクオ君数学好きなの?数式ばっかりじゃん」

「だから面白くないって」

「じゃ、勉強頑張りなよ」

「デレさんは部活頑張ってね」

「うん!!」

私は気付いてた。貴方がノートを入れ替えた事に、だって貴方挙動不審過ぎるんだもん。そんな貴方を私は愛らしく思えた。
貴方の挙動一つ一つに私は目を奪われてたの、貴方も言ってたけど、別に恋愛感情があったわけじゃないの、強がりなんかじゃないんだからね。

私達はただのクラスメート、一緒に話すこともなければ、一緒に帰ることもない。ただのクラスメートだった。
こんな関係が続いてたよね。でも私は満足してた。なんでだろう?わかんないや。
私を見つめる貴方の視線、貴方を見つめる私の視線、交わらなくても、それはそれで良いんだって思えてたの。
貴方の視線に私は気付いてる。

それだけで十分だった。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 15:06:30.40 ID:xhifUHN+O
こんな関係が少しだけ進展したのは、九月のある日。降り止まぬ雨に、私は辟易してた。
ドジな私は傘を家に置いてきてしまったの。この失敗がなければ、私は貴方の隣には居なかっただろうね。

降り止まぬ雨が、私達を繋いでくれたんだね。

ζ(-ー-*ζ「はぁ、雨ってホント憂鬱だねぇ」

部活を終えた仲間たちは、そそくさと先に帰ってしまった。残された私は、誰かの傘にご同伴させて貰うべく教室へと歩いていた。

教室に人の居る気配は無かった。そりゃそうだよね、もう部活も終わる時間。傘を持っているような、しっかり者の生徒は帰っちゃってるよね。

駄目で元々と、教室を覗くとそこに貴方は居た。またペンを奔らせてた。初めて見る、真剣な貴方の顔に私は目を奪われたの。

その時気付いたの、私は貴方の事が気になってる。貴方が何をしているのか?知りたい、もっと、貴方の事を。

どれくらい経っただろう。貴方は唐突にペンを置き、教室を出た。満足気な顔を浮かべてね。

私は隠れた、別に理由なんて無かったの、ただ貴方に話し掛けられても答える自信が無かったから。

貴方に話し掛けられずに、平気でいられる自信が無かったから。

だから私は隠れた。

貴方が居なくなった教室のドアを静かに開いた。まるで泥棒みたい。貴方が何を書いているのか知りたかった。貴方の事が知りたかったの。

貴方の机に綺麗に畳まれている大学ノート、ちょっとした罪悪感に見舞われて躊躇した。でも好奇心が勝ったわ。私は迷いながらも貴方が書いていた最後のページを開いた。

そこには

さっきまで憂鬱だと思っていた風景があった。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 15:09:08.96 ID:xhifUHN+O
降りしきる雨が優しいタッチで描かれていた。貴方のか細い腕から、こんなに優しい絵が創りだされていたのか。私は興奮したわ。

貴方の描いた絵に私の感覚は研ぎ澄まされた。

聞こえる。雨がアスファルトを打ち付ける音が。不規則に奏でられる雨とアスファルトの連弾。

匂う。雨に湿らされた草木の匂いが。雨雫を纏った葉っぱ達が優しい匂いを醸し出す。

私は今どこに居るんだろう?
教室?校庭?それとも貴方の絵の中かな?

私をその不思議な世界から連れだしたのは、ドアの音。

貴方が私を連れ戻したの。


('A`)「どうしたの?」

ζ(゚ー゚*;ζ「あっ、ドクオ君残ってたんだ!雨が突然降ってきたでしょ?いつも折り畳み傘持ってるんだけど、私ドジだから傘忘れちゃったんだ……」

('A`)「あぁ、だから人を探してたの?」

ζ(゚ー゚*ζ「うん」

正直チャンスだとは思ったよ、貴方の絵を見た時から私は、また気付いたからね。

気になってるんじゃないって、私は落ちた、恋に。

好きな人と一緒に帰りたいなんて思っても別に罪じゃないでしょ?それも雨の中相合傘なんて、絶好のシチュエーションだったもの。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 15:11:18.68 ID:xhifUHN+O
ζ(/ー//*ζ「傘……持ってる?」

これを言うにはかなりの勇気が必要だったわ、だって「傘ある?」=「一緒に帰ろう?」っていうとても簡単な方程式が成り立っちゃうものね。

でも、貴方は


('A`)「……ん、無い」


そんな簡単な方程式を間違っちゃうんだから。

ζ(゚ー゚;*ζ「あっ、そうなんだ!!」

('A`)「……うん、ごめんね」

そう言ってさっさと荷支度をする貴方。おかしいよね、傘はない、外の雨はまだ降り止みそうに無いのに、貴方は当然の様に帰る準備をしてる。

ζ(゚ー゚*ζ「あれ?ドクオ君傘無いんじゃないの?」

('A`)「あぁ、多分この雨もうすぐ止むよ」

貴方は私に言った。この止む気配を見せない雨が、もうすぐ止むと。

ζ(゚ー゚*;ζ「それ本当?」

(;'A`)「えっ?多分だよ?多分」

貴方が言うならと、私も床にほっぽっていた鞄を拾い上げて、貴方の後に付いていったんだ。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 15:13:04.16 ID:xhifUHN+O
「外れるかもよ?」

「良いの良いの、そうなったら走って帰るもん」

「……元気だね」

「私ね、雨って嫌いだったの」

「そうなの?僕は好きだけどな」

「雨ってだけで気が滅入らない?」

「うーん、そうかもしれないけど、雨が降れば景色も変わるからね、歩き慣れた道が違うように見えない?」

「そうだね、今日気付いたよ」

「……それは良かったね」

「私も……雨、好きになっちゃった」


昇降口に着く頃、雨は止んでいたね。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 15:18:24.40 ID:xhifUHN+O
あーあ、相合傘し損ねちゃったな、なんて気持ちを心の隅っこに蹴飛ばして、私は貴方と二人で帰ったね。

―――歩き慣れた、真新しい道を

帰り道、秋桜の纏う水滴のベールが、沈みかけた太陽の光に照らされ、宝石のように光っていたね。

そんな私達の関係が急激に変化したのは、三月。

三学期も後数えるほどになった、ある日の放課後。私は寝たふりをしていた。貴方が絵を描いているのを知っていながら。

どうして寝たふりなんかしてたかって?だって三年になったら一緒のクラスじゃ無くなっちゃうかもしれないでしょ。

思い出が欲しかったの。
でも、貴方は外の風景ばかり見ていて私に気付いてもいなかったでしょ?身体が小さいなんて言わせないんだから。

私は貴方に絵を描いてほしかった。これは賭けね。
もし貴方が何も言わず私を描いてくれたら、私は告白しようと決めてたの。

瞼を閉じていると浮かんでくるのはネガティブな事ばかり。不思議よね、もし私の心の中にゴミ箱があるなら、全部まとめて捨ててやりたかったわ。

でも、私は賭けに勝った、貴方は私の隣の席に座り、私を描き始めた。

そりゃ何度もガッツポーズをしたわ、心の中でだけどね。

薄目から覗いた、私を描く貴方の姿は今まで見てきた、貴方のどんな表情よりも真剣で、もし、私が何事も無かったように起きたとしても貴方は気付きそうに無かったわ。
そんな瞳に、真剣な眼差しに私は吸い込まれそうになった。

貴方のペンが進む度、私の表情が写し取られていく。どんな表情をしているのか、私の胸は高鳴ったわ。

そして、貴方のペンが止まった。あの時のような満足感溢れる表情は無かったわ。寧ろ、しまった、と言うような後悔が滲み出ていたの。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 15:21:27.22 ID:xhifUHN+O
私は迷ったわ。失敗したのだろうか?モデルが悪かったよね?ごめんね、なんて勝手に頭の中で謝罪を繰り返した。

でもどんな風に描かれていたとしても、貴方の描いた私を、どうしても見たかったんだもん。

ζ(つーー*ζ「ぅん……おはよー」

('A`)「……お早うございます」

ζ(つーー*ζ「あれ?何でドクオ君がぁ?」

私はまた迷ったわ、このまま知らないフリを決め込むか、貴方のあんな表情を見たら当然よ。

('A`)「……いや、もう放課後だから起こそうと」

でも

(;'A`)「あっ……」

ζ(゚ー゚*ζ「なるほどー、これがドクオ君の大切なノートなわけね」

やっぱり見たいという気持ちが勝った。ごめんね、この時は貴方の持つ“力”なんて知らなかったから。

(;'A`)「あの……返してくれませんか?」

ζ(^ー^*ζ「ダメー」

私の出来得る最高の笑みで拒否したわ。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 15:24:05.92 ID:xhifUHN+O
ζ(゚ー゚*ζ「私の絵を描いてたでしょ?モデルにされたからにはちゃんと出来映えも見とかなきゃね」

鼻歌を歌いながらノートを捲っていく私。本当に楽しみだったから。狸寝入りはバレてないみたい。

「……凄い」「上手!!」

ドクオ君の絵を見ても、ありきたりな言葉を連呼するしか出来なかった。なんだろう?ある程度のレベルを越えてしまうと言葉に出来ない?
私みたいな貧弱な頭では、この絵達に相応しい称賛を言葉に出来なかった。
でも貴方はそんな私の言葉を恥ずかしそうに、嬉しそうに聞いてくれていたね。

ζ(゚-゚*ζ「……あっ」

私が開いた最後のページ そこには


天使が


眠っていた。


白い翼を背に持ち、金色に輝く輪を頭の上に漂わせ、ふかふかの雲の上で優雅に昼寝をする

そんな天使が写っていたの。



50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 15:25:57.25 ID:xhifUHN+O
ζ(/ー//*ζ「何だか照れるなぁ……こんなに綺麗に描いてもらえてるなんて思っても見なかったよ」

本当に美しかった。自分がじゃないよ?貴方の絵が、こんなにも優しい気持ちにさせてくれる絵、見たことが無かった。でも君は

('A`)「……初めて描けた」

自分でも信じられない様な顔をしていたね。

ζ(/ー//*ζ「うぅ、ヘタクソだったら肖像権の侵害で訴えてやろうと思ったのに……」

私は満足だった 初めて貴方に描いて貰えた。貴方のキャンパスに私が映っている。貴方のキャンパスに、私は生きている。

ζ(゚ー゚*ζ「ドクオ君!!綺麗に描いてくれて」


ζ(゚ー^*ζ「ありがとねっ!!」

素直な感謝の気持ちを貴方に伝えた。そして、一つの感情が生まれた。

でも、それは私が言うことじゃない、私にそれを言う権利はない。その権利は貴方の物。

('A`)「あの……もう一枚だけ……描いていいですか?」

描いて貰いたい、貴方にもっと、色んな表情を、色んな場所で、貴方に描いて貰いたい。

自然とこの言葉は出たわ。

ζ(/ー//*ζ「……よろしくお願いします」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 15:27:42.22 ID:xhifUHN+O
そして今、私は寝たふりをしている。
貴方は私を見つめペンを奔らせている。



貴方があのクサイ手紙と一緒に送ってくれた三人の絵。

一面に咲き乱れる秋桜。

ずっと考えてた、なんで秋桜なんだろうって、なんで桜じゃないんだろうって。


調べてみたの。

サクラの花言葉は“優れた美人”“壮大な愛”

私達にこれほど似合わない言葉はないよね。



秋桜の花言葉は、貴方自身が調べてみて。私にぴったりだと思うわ。




末長くよろしくお願い致します。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/23(日) 15:31:36.87 ID:xhifUHN+O
これで('A`)僕の絵は心のようですは完結です。 

ζ(゚ー゚*ζ編を書こうかは迷いましたが総合でお題募集をしたところ、使えそうなアイディアが浮かんできたので書くことにしました。 

お題 

・降り止まぬ雨 

・相合傘 

・秋桜 

お題を下さった方、ありがとうございます。支援を下さった方も、ありがとうございます。

55 名前: ◆IgPB3k.W/o :2008/03/23(日) 15:33:52.36 ID:xhifUHN+O
気付いている方もいたかもですが酉さらしときます


秋桜の花言葉は“純真な女心”です

57 名前: ◆IgPB3k.W/o :2008/03/23(日) 15:39:24.21 ID:xhifUHN+O
あーっと、後最後に一つだけ 

アルバムの投下を予告していたのに、これなくてすいませんでした。 

只今絶賛スランプ中です。番外編も少しずつ書いていくので生暖かい目で見てあげてください。 

では落ちます。ありがとうございました。

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