mesimarja
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ξ゚⊿゚)ξ歌姫のようです川 ゚ -゚)
2 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 21:42:21.01 ID:I6T2pgVe0


 広いホールに、木管のやわらかい音が響いた。

 ドクオは、抑え気味の調子でメロディを展開し、
 けっして前に出ようとはしない演奏を心がける。

 あくまで、伴奏だからだ。



 照明を100%にした舞台上に、
 ジーンズとTシャツ姿の歌姫、ツン。

 息を吸い、四小節後に迫った歌の始まりを、
 空の客席に体を向けて準備している。



ξ゚⊿゚)ξ歌姫のようです川 ゚ -゚)



3 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 21:45:24.22 ID:I6T2pgVe0

 ツンの口が開かれた。


   Esurientes .... Esurientes implevit bonis .... implevit bonis ....




 日本人の口から、すべらかなラテン語が紡ぎだされていく。


 観客席に客の姿は無い。
 だから、声がよく響く。
 音波を吸収する「人体」が無いからだ。

 ドクオの吹くオーボエが、ツンの声に重なる。


 二人だけのホールに、荘厳な音楽が作られている。


4 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 21:48:13.38 ID:I6T2pgVe0

 歌が進むにしたがって、ツンの発する声はどんどんと膨らみ、
 細身の体のどこからこんな声が出ているんだろうと思うほどの声量が、
 高い天井に、遠くの非常口の緑ランプに、ホールの芸術的なでこぼこの壁に、投射される。


 ひときわ高い響き。
 変調の、もの悲しい響き。
 的確な巻き舌を示す、特徴的なラテン語の "r" の発音。
 長く尾を引くサステイン。


 美しい聖歌の音色は自在に変化し、ときおりそれにドクオの笛の音がぶつかり、混じる。




--------------------------------------
ツンはいま、この歌を歌っています
ttp://jp.youtube.com/watch?v=fxKZa0nvkmA
--------------------------------------

5 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 21:49:19.87 ID:I6T2pgVe0

 中音の静かな余韻を残し、ツンの歌は終わった。

 オーボエの後奏が続き、曲は静かな終焉を迎え―――




ξ゚⊿゚)ξ「ああっ、もう!」


 ――ることはなかった。


 ツンが手持ちの譜面を、勢いよく譜面台に叩きつけたのだ。
 バシィン、という小気味よい音が、ドクオのオーボエの音色を遮って、
 豊かな曲の余韻を台無しにする。



6 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 21:52:15.39 ID:I6T2pgVe0
.
ξ゚⊿゚)ξ「高音へのチェンジがグダグダだわ! こんなの私じゃない!
      ドクオ、ちゃんと吹きなさいよ!! あんたの伴奏のせいよ!!」

('A`)「え、あ、す、すみません…」

 まだ楽譜は残ってるのに、最後まで曲を吹ききることが許されず、
 ドクオはいそいでオーボエから唇を離し、ぺこぺことツンに頭を下げる。



('A`)「でもツンさん、高音のチェンジって中盤の跳躍のとこですよね?
   あそこはべつに俺の伴奏がある場所じゃないんだけど…」

ξ゚⊿゚)ξ「あ? うっさいわね、この私が失敗したんだから、私のせいであるはずがないじゃない!!
      ドクオ、どうせあんたの笛が…」

 いいながら、ツンは譜面をパラパラとめくる。
 たしかにツンが指摘した場所は、ドクオの伴奏が入っていない箇所だ。

ξ゚⊿゚)ξ「…ふん! じゃあ、この楽譜が悪いのよ!
      作曲者は誰? John Rutter? 聞いたこともないわ、所詮三流よ!!」

('A`)「ラターは流行の合唱曲作家ですよ。日本でもすでに何件も演奏されて…」

ξ゚⊿゚)ξ「あー、もうやだ!!」

 ツンは大声でドクオの話をさえぎり、
 ぺたんと舞台におしりをついて、後ろ手に体を支えた。


7 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 21:55:52.01 ID:I6T2pgVe0
                                       .
 舞台袖から、間延びした拍手が響いてきた。


川 ゚ -゚)「いやあ、おみごと」


ξ゚⊿゚)ξ「クー…」

 ツンの表情が険しくなる。


川 ゚ -゚)「なかなかよくがんばったじゃないか。
     君が八度跳躍で声が裏返らなかったのは奇跡といっていい」

ξ゚⊿゚)ξ「うっさいわね。そりゃあんたほど胴が太かったら音は安定するわ」

川 ゚ -゚)「ふっふふ。いやあ、太ってて恥ずかしいなあ」

 クーはわざと胸郭をそらし、持ち上げる動作をする。
 豊かな二つのふくらみが、やわらかなブラとTシャツ越しに上下に揺れる。

ξ゚⊿゚)ξ「く…どうせそんな体じゃ、舞台衣装も着られるものが限られるわ!
      ミュージカルの舞台は、綺麗な衣装を着て、そのうえ機敏に動けてナンボなのよ!」

川 ゚ -゚)「そして、裏返ったりして客を不安にさせない安定した歌声…な」

 ツンはくやしそうに歯噛みして、クーをにらみつける。


9 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 21:59:40.93 ID:I6T2pgVe0

ξ゚⊿゚)ξ「そこまで言うのなら、あんたもこの曲がちゃんと歌えるんでしょうね!
      オーディションはもうすぐなのよ!!」

川 ゚ -゚)「はっはっは。オーディションか。
     劇団内で主役女優を決めるためだけの、
     観客がギコ監督一人だけの舞台が『オーディション』とは、
     これはまた大きくでたな」

ξ゚⊿゚)ξ「うるさい! やってみなさいよ!
      それとも私の前では歌えないの?
      はん、どうせ怖いんでしょう」

 無い胸を反り返らせて、ツンはふんぞりかえる。


10 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:02:19.37 ID:I6T2pgVe0

川 ゚ -゚)「…ドクオ、Cをくれ」

('A`)「あ、はい」

 ドクオはあわててオーボエのリードを咥え、低く響くCの音を吹く。


 クーが、口を開く。
 最初は微かな響きだったが、やがて一気に、その声は茫洋とした広がりに満ちていく。

   Esurientes
   implevit bonis....

 見事な中高音チェンジ。
 すべるように階段を作り、一つ一つの音程を正確にとって、母音を発する。

 さすがに、言うだけのことはあった。

川 ゚ -゚)「…ふう。発声練習もせずにいきなり歌うのはしんどいな。
     まあこんなもんか」

12 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:05:11.09 ID:I6T2pgVe0

ξ゚⊿゚)ξ「はん。まさに『こんなもん』だわ。
      何よそのキレのかけらもない歌声」

 鼻息荒く、ツンは言いつのる。

ξ゚⊿゚)ξ「高音はガラス器のような繊細さが命なのよ。
      そんな腐って広がった豆腐みたいな声じゃ、主演女優は絶対に無理よ。
      脇役のおばさんキャラのアルト(女声低音)で我慢してなさい!」

 とげとげしい調子で、早口にまくしたてる。


川 ゚ -゚)「おやおや。まさに割れたガラス器のように尖ったソプラノ(女声高音)様だ。
     はっはっはっ…。
     ま、『オーディション』までにはまだ三日ある。しっかり練習したまえよ」


 クーは右手をひらひらと振りながら、上手袖に引っ込んでいった。


13 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:08:16.68 ID:I6T2pgVe0
ξ#゚⊿゚)ξ「くそっ!」

 こぶしで舞台を叩き、勢いよく立ち上がる。


ξ#゚⊿゚)ξ「ドクオ! 前奏!!」

('A`)「は、ひゃい!」

 二人のケンカをはらはらして眺めていたドクオ。
 とつぜん話を振られ、はじかれたように跳ね上がり、オーボエを構える。


ξ#゚⊿゚)ξ「早くしなさいよね!! 練習時間が惜しい!
       絶・対・に! あのデブにだけは負けらんないんだから!!」

('A`)「そ、そんな剣幕じゃ、練習になら…」

ξ#゚⊿゚)ξ「うっさい! 吹け!!!」


('A`) ヒィィ アワワ



 広いホールに、とってつけたようなやわらかい木管の音色が、始まった。

15 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:10:49.85 ID:I6T2pgVe0
act.2



 照明が30%に落とされ、ピン・スポットが舞台に当てられている。

 がらんとした舞台上には、ライトからやや離れた場所で、ドクオが一人で椅子に座っている。
 オーボエを持った手を膝に置いている。




 舞台上手(かみて)から、ドレス姿のツンが入場してきた。


 拍手は無い。
 観客席はいつもの練習のときと同じく、空だ。


 たった一席を除いては。


16 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:13:13.84 ID:I6T2pgVe0

ξ゚⊿゚)ξ(…あそこね、監督は)

 ツンはすばやく客席全体を見渡して、監督の座っている位置を見つけ出した。
 ホールのかなり後方の席、やや右よりの位置だった。


 ギコ監督は、丸めた本を片手に持って、足を組んで座っている。

 ツンはそちらを眺めやる。
 が、合図のようなものは無い。
 勝手に始めろ、ということだろう。

 ツンはピン・スポットの当てられた場所に立つ。
 強烈な光が、明るい薄青のドレスをくっきりと映し出す。

 ドクオのほうを向き、かすかに、うなずく。



 前奏が、始まる。

17 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:16:17.13 ID:I6T2pgVe0

 短い期間とはいえ、この日のために歌いこんできた曲だ。
 ラテン語の歌詞は完璧に覚えた。
 曲の構成と、力の配分も考えてある。

ξ゚⊿゚)ξ(…絶対に、負けない)

 ツンとクーは、劇団の二大看板女優として、つねに主役の座を争って戦ってきた。
 どちらも美しく、演技にも味と艶があり、歌唱力も他の劇団員より抜き出ていた。

 それだけに、二人の反目はものすごかった。
 良きライバル、といえば聞こえはいいが、
 『トップは一人じゃなきゃ』という意識が、トップ争いに参加する者の心にはあるものだ。

ξ゚⊿゚)ξ(あの女にだけは…)

 主演女優の座をかけた、このオーディション。
 ツンはひとつのミスをすることもなく、曲を通して歌いきった。
 オーボエの後奏が、余韻を残して、終わる。

 ホールに静寂が訪れる。

19 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:19:42.28 ID:I6T2pgVe0

('A`)「ふう…お疲れ」

 声をかけるドクオを無視し、
 ツンは舞台を駆け下りて、監督のところへと走る。

 ツンの前にオーディションを歌い終えていたクーも、舞台袖から姿をあらわして、
 ツンの後を追うようにして駆ける。



 二人はギコ監督の前に、荒い息をして、並んで立つ。


 監督は二人の顔を見る。
 無言だ。

 右手に台本を持ったまま腕を組み、神経質そうに椅子の肘掛をぽんぽんと叩いている。


20 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:21:11.49 ID:I6T2pgVe0

ξ゚⊿゚)ξ「か、監督! 私の歌は…」

(,,゚Д゚)「黙っとれ」

 ギコはツンの目を見据えて、言った。

 それでまた、沈黙が流れた。



(,,゚Д゚)「おまえら、ラテン語は?」

川 ゚ -゚)「…は?」

(,,゚Д゚)「ラテン語は読めるのか、と聞いとる」

川 ゚ -゚)「は、はあ。
     なにか発音が間違ってましたか?」


21 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:23:12.71 ID:I6T2pgVe0

(,,゚Д゚)「…ふん、音大出のお前のラテン語発音が、間違っとるはずがなかろう」

 ギコはクーを睨みつけて、言う。

ξ゚⊿゚)ξ(えっ…そ、それじゃ、音大卒でない私は…!)

 ツンは、小さいころから歌好きの少女であり、ほぼ独学で今の歌唱技術を身に付けていた。
 独学ゆえに、クセもあり、また細かい知識という点ではどうしても穴がある。
 そのことを、音大出のクーに「基本がなってない」と、いつも責められていた。

ξ゚⊿゚)ξ「あ、あの、監督! すみません、ラテン語には今までなじみが…。
      発音は、きっと勉強して完璧にしますので!」

(,,゚Д゚)「はあ…?」

 ギコは半口を開けてツンを眺め、
 それから、ひとつため息をつく。

 首を、左右に振った。


22 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:25:22.07 ID:I6T2pgVe0

(,,゚Д゚)「おいクー、音大はラテン語の授業があるだろ。
    この曲の歌詞の意味を言ってみろ」

川;゚ -゚)「あっ…」

 二人は同時にはっとした。
 歌詞の部分部分の意味なら、その場で考えれば、ぼんやりとならわかる。

 全体の、意味…

 クーは急いで楽譜に目を走らせる。

川;゚ -゚)(えっと…この単語、Esurientの活用形だよな…
     esは、中期ラテン語の14個ある活用形のうち、どれだったっけ…
     そもそもこれ、中期ラテン語か…?)

 ラテン語の授業があるといっても、一般教養の中の、しかもわずかに二単位だ。
 まじめに勉強する学生など、ほとんど、いない。


23 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:27:14.87 ID:I6T2pgVe0

(,,゚Д゚)「ふん…」

 ギコは二人から視線を離し、立ち上がる。



(,,゚Д゚)「失格! ブーッ!! 二人とも、主役からはずす!」




ξ;゚⊿゚)ξ「えっ?!」

川;゚ -゚)「ちょっ?!」


24 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:29:13.67 ID:I6T2pgVe0
ξ゚⊿゚)ξ「か、監督、待ってください!
      そもそもどうしてこんなクラシックが課題曲なんですか!
      私たちは現代ミュージカルの劇団なんですよ!
      こんなので決めるなんて、納得できません!」

(,,゚Д゚)「ふん。そういう思いで、お前はこの曲を練習してきたんだろう?」

ξ;゚⊿゚)ξ「あっ…」

(,,゚Д゚)「出るんだよ、そういう思いは、歌にな。
    そんなふうに思ってるやつに、俺の脚本(ほん)は演らせたくねえんだ」

川 ゚ -゚)「か、監督! 私はそんなふうには…!」

 ギコが、クーのほうに向き直る。

(,,゚Д゚)「ひとつ教えてやる。この歌のタイトルは『飢えた者たち』。
    魂の飢えた者たちに恵みを垂れる、という歌なんだよ。
    お前たちは、まさに飢えた者だ。恵みを与えるほうじゃなく、恵みが必要なほうだ」

川 - )「は…」

26 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:30:34.23 ID:I6T2pgVe0

(,,゚Д゚)「ふん…。お前らの醜い内輪争いなんて、だれが見たがると思う。
    客の気持ちも読み取れんで、なにが主演女優だ…」

 監督はそれだけいうと、二人に背を向け、客席出口の扉を大きく開けて出て行った。



 ぽつんと、二人は取り残された。


28 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:33:06.42 ID:I6T2pgVe0
act.3


 いつまでも、二人はそこにいた。
 たち続けていた。

 こうしていれば、監督のぬくもりが残る椅子に、
 またひょっこりギコが帰ってくるんじゃないか――

 そんなふうに、考えたりしながら。


29 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:34:12.95 ID:I6T2pgVe0

 だが、開け放たれた客室入り口は、
 そこから外の光を導くばかりで、監督の姿をふたたび映すことはなかった。



 やがてその明かりも消えてゆく。
 日が、暮れたのだ。

 ピン・スポットもとうに消され、舞台の30%照明だけがホール全体の明かりとなる。

 薄暗い闇が、二人の横顔を照らした。


32 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:36:11.13 ID:I6T2pgVe0

 ツンとクーは、互いに顔を見合わせた。


ξ゚⊿゚)ξ「…ふん」

川 ゚ -゚)「ちっ」

ξ゚⊿゚)ξ「どうするのよ。あんたのせいで、駄目になっちゃったじゃない」


川 ゚ -゚)「敵愾心だけで芸術を作ろうとするお前が、すべての原因だ。
     私の今までの努力を無駄にしてくれたな」

ξ゚⊿゚)ξ「うっさい。あんたが私に張り合おうとしなけりゃいいのよ」

川 ゚ -゚)「張り合ってるのは、お前…。
     ……いや」

 クーは力なくうつむき、言葉を途中で切った。


35 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:38:13.94 ID:I6T2pgVe0

川 ゚ -゚)「…もう、やめようか。こんな争いは」

ξ゚⊿゚)ξ「…そうね」

 二人は観客用の座席に、間ひとつぶん空けて、座った。



ξ゚⊿゚)ξ「私たち、二人とも落ちたのね」



 返事はなかった。
 クーはただ、自分の膝に両肘を預けて、前かがみの姿勢で頭を抱えている。


 ふいに、ツンの目に、大粒の涙が浮かんだ。


41 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:40:18.17 ID:I6T2pgVe0

('A`)「あのー…」

 だが、浮かんだ涙が頬をつたう前に、
 ドクオの間抜けな声が、舞台の上から、二人に向かって飛んだ。

 ツンは涙を振り払うように、きっ、と顔を上げて、
 ドクオを睨みつけた。

ξ゚⊿゚)ξ「何よ!! 邪魔するな、バカ!!」

 鼻にかかった、少し涙ぐんだ声だった。


('A`)「ごごっごごっごっごめんなさい、でも…その……」

 クーも顔を上げて、舞台の上を見た。

 いつのまにか、人影が増えている。
 ドクオ一人だけじゃなくて、劇団員のショボンとモナーも、申し訳なさそうにドクオのそばに立っている。


45 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:42:19.23 ID:I6T2pgVe0
川 ゚ -゚)「なんだ、お前たち、いつのまに来たんだ」

(´・ω・`)「さっきから来ていたよ。このホール、そろそろ僕らの借りてる時間だからね」

川 ゚ -゚)「ああ…」

 そういえば、この連中は、劇団の練習の空き時間を使って、
 自分たちの歌の練習をしているのだ。

ξ゚⊿゚)ξ「ふん、下っ端どもの練習時間ってわけね!
      それで邪魔者はどけってこと!」

('A`)「い、いや、別に、どけとは…」

ξ゚⊿゚)ξ「ならいいじゃない! ここにいたって!
      練習がしたいんなら、さっさとはじめなさいよ!」


( ´∀`)「ど、どうするモナ」

(´・ω・`)「劇団の曲ならどうどうと練習を始めるんだけど、これは僕らの個人的な練習の曲だからなあ」

川 ゚ -゚)「かまわん。私たちはいないものと思ってくれ」


48 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:44:24.25 ID:I6T2pgVe0

('A`)「うむむ。しょうがない、やるか」


 実にやりにくそうに、ドクオたちはピアノの周りに集まった。
 それぞれ鍵盤を叩いて、自分の音をとっている。

 ドクオがバンドマスターのようだ。
 ショボン、モナーの顔をちらちらと見て、それから軽くうなずく。



 ショボンの口から、いきなり、リズミカルな低音が漏れた。



 間髪いれず重なる、男声の力強い、幅のあるハーモニー。

 クーとツンは、おもわず顔を上げた。


50 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:46:32.37 ID:I6T2pgVe0

川 ゚ -゚)「これは…」

ξ゚⊿゚)ξ「知ってる。ビリー・ジョエルね」



 Woo.. Wo.. Wo.. Wo..

For the longest time!


 ゆるやかな、だが、しっかりとしたドゥーバップのリズムが、
 三人の息のあった歌声で交じり合っていく。

 Wo.. Wo.. Wo..

For the longest..

 ショボンの刻むウォーキング・ビートに合わせて、
 モナーとドクオの重ねた歌声が、次々に曲の彩色を作り上げていく。

52 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:48:18.83 ID:I6T2pgVe0
                                                  .
 この三人の劇団員は、一人ひとりは決して優秀な歌い手とはいえない。

 でも、三人の息はぴったりで、それらの声は完璧なハーモニーを作っていて、
 それは、とても分厚く、とても豊かで、とても、とても……


 ツンとクーは、おもわず顔を見合わせた。

川 ゚ -゚)「…驚いたな」

ξ゚⊿゚)ξ「あいつらが、ねえ…」


川 ゚ -゚)「リード・ヴォーカルは無しか。コーラスだけというのが、あいつららしい」

ξ゚⊿゚)ξ「はっ。あの三人じゃあ、メインメロディをうまく歌えるわけないわ」

 歌はますます盛り上がりを見せてくる。

 右手首を振り、手の甲でビートを取るクー。
 目は舞台の上の三人のパフォーマンスに引き込まれていた。



 ふと、隣から、小声でつぶやく声が聞こえてくる。


 ツンが、三人のコーラスに合わせて、口の中だけで歌っていた。


55 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:50:13.88 ID:I6T2pgVe0

 突然、曲が途切れた。
 ドクオが右手を上向きに回し、歌を止める合図を出したのだ。

川 ゚ -゚)「…?」

('A`)「ツ、ツンさん。この曲、知ってるの?」

ξ゚⊿゚)ξ「バカにするんじゃないわよ。
      ジョエルの"For the longest time" くらい知ってるわよ」

('A`)「じ、じゃあ歌えるの」

ξ゚⊿゚)ξ「…まあね。高校のころにやってたバンドで、歌ったことあるから」

(´・ω・`)「お、おい」

 舞台上の三人は、うなずきあった。


('A`)「…お聞きのとおり、俺たちでリードを歌うやつがいない。ツンさん、ちょっと入ってくれないか」

57 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:52:27.57 ID:I6T2pgVe0
ξ゚⊿゚)ξ「ふん。この劇団一の歌姫を、あんたらの素人集団と一緒に歌わせようというの?」

('A`)「い、い、いや、そ、そんなつもりじゃ」


 まごまごとつぶやくドクオを押しのけて、ツンは舞台に上り、
 ステージの真ん中、いちばん観客から目立つ位置に来た。

ξ゚⊿゚)ξ「私が歌うんだから、あんたたち、ミスでもしたら許さないわよ」

('A`)「は、はい!」


川 ゚ -゚)「ちょっと待て」

( ´∀`)「え?」

川 ゚ -゚)「劇団一とは聞き捨てならない。この私を差し置いて、な。
     いい機会だ。どちらが劇団一か、みんなの前で証明してやろう」

 クーも観客席から立ち上がって歩み寄り、真ん中から段を飛ばして、
 勢いよく舞台の上によじ登った。


(´・ω・`)「うほっ! これはすごいことになってきた!」

59 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:54:11.64 ID:I6T2pgVe0

('A`)「クーさんはこの曲、知ってるの?」

川 ゚ -゚)「音大なめるな。こんな楽譜、初見で歌える」

 クーはドクオの手から楽譜をひったくり、ぱらぱらと流し読んだ。

( ´∀`)「ほほう。それはすごいモナ…」


ξ゚⊿゚)ξ「何よクー。邪魔するんじゃないわよ」

川 ゚ -゚)「どうだ。一番と三番はお前。二番と四番は私。
     そうやって交互に歌わないか?」

ξ゚⊿゚)ξ「ふん、いいわよ。
      この曲であたしに勝とうなんて、無謀な挑戦だってことを教えてあげる」


61 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:56:12.39 ID:I6T2pgVe0

('A`)「そ、それじゃとりあえず音合わせしてみようか」

(´・ω・`)「おいす。キーは?」

('A`)「ルートEのメジャー、三音で」

 ピアノの鍵盤が叩かれ、シ・ミ・ソのきれいな音がホールに響く。



 ドクオの合図にあわせ、五人はいっせいにそれぞれの音を出す。


 三段の男声に、二段の女声が加わって、
 ハーモニーはより重厚さが増した。

 女声は、ふつう男声に比べ音量が少ない。
 だが二人の歌姫の力強い声は、この三人の男と比較しても、決して力負けするものではなかった。


62 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 22:58:11.51 ID:I6T2pgVe0

( ´∀`)「グッド! 一発目からバッチリとハーモニーが決まってるモナ!
      さすがは歌姫のお二人モナ!」


ξ゚⊿゚)ξ「なにが決まってるよ。クー、もっとピッチ下げなさいよ!
      五度がそんな音じゃ、三度の私がやりにくくってしょうがないのよ」

川 ゚ -゚)「バカをいえ。どこの世界に三度に合わせる五度がいる。
     お前は黙ってルートと私とに挟まれていればいいんだ」



('A`)「ちょ、ちょっと待ってくれよお二人さん。
   ツンさんは頭声、クーさんは胸声。
   それぞれがちょっとずつピッチを上げ下げすれば、
   声質も含めて、もっとぴったりに合うと思うんだけど…」


 弱弱しくつぶやくドクオを無視して、二人はまた、にらみ合いをはじめた。


63 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 23:00:18.94 ID:I6T2pgVe0

 ショボンはそれを見て、やれやれ、といったふうに肩をすぼめる。

 おろおろとするドクオの背中をたたき、
 いたずらっぽく片目をつぶってみせた。


 いつのまにか、モナーもドクオの隣に寄ってきていた。

 男三人は、うなづき合う。



 唐突に、ショボンのベースが始まった。
 にらみ合っていた二人の歌姫が、はっとしたように、振り向く。

 間髪いれず、モナーとドクオのコーラスが乗っかってくる。

 前奏が終われば、すぐにリード・ヴォーカルの出番だ。
 ツンはあわただしく姿勢を正し、息を整えた。


65 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 23:02:29.06 ID:I6T2pgVe0

 歌が始まった。

 力強い前奏のハーモニーに負けないよう、ツンはどっしりした低音を出すよう試みた。
 そして、その試みは、成功した。

 コーラスを歌うドクオとモナーにも、ベースラインを歌うショボンにも負けない、
 素敵なツンの歌声が、紡がれていく。


( ´∀`)(ほう…)

 ツンの女声らしいノリに合わせて、サードのモナーが、少し「引い」た。
 これで中低音を歌うのはツンだけとなり、彼女の歌声がより際立つことになる。


   What else could I do
        I'm so inspired by you


 モナーの読みは当たり、ツンの声はうまく抜け、見事なグルーヴが完成した。


67 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 23:04:32.33 ID:I6T2pgVe0
                                 .
 ゆったりとした最初の四小節が終わり、
 盛り上がりの部分に入る。


(´・ω・`)(ここだ!)

 ショボンが体を揺らす。
 四人が、曲に乗った。

   That ahsn't happened hor the


('∀`)(…一番の最後のシメ、いくぜ!)

 男たちが、アイコンタクトで会話する。


         lo....ngest time!


 光がはじけるように、明るいメージャー・コードが、ばしっとはまり、決まった。



--------------------------------------
彼らはこんな曲を歌っています。
ttp://jp.youtube.com/watch?v=pu9NG1zD5Kg
--------------------------------------

70 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 23:08:52.82 ID:I6T2pgVe0
川 ゚ -゚)「おお…」

 おもわずつぶやいたクーに、
 いつのまにか振り向いていたツンが、笑顔を向けてくる。

 最高の音が出せたときの、最高の笑顔だ。


ξ゚⊿゚)ξ「さ、次はあんたよ!」

 ツンがクーの肩をつきとばす。
 それは、乱暴だが、いやなしぐさではなかった。


 なぜなら、つきとばされた先には、
 素敵なコーラスを歌う、素敵な笑顔の三人組がいたのだから。

 三人の笑顔を向けられたクーは、まだ自分では気づいてはいなかったが、
 氷のようなその表情に、いつしか笑顔を作り始めていた。

   Oh,oh,oh

      For the longest time!

   Oh,oh,oh

      For the longest...

 三人の鳴らす指が、さっきのノリはそのままに、裏を打つロック・テンポの形を作っている。
 クーは自分の出番が近いことを悟り、いそいで息を吸い、背筋を伸ばした。

73 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 23:10:50.90 ID:I6T2pgVe0

 Once I thought my innocence was gone
   Now I know that happiness goes on


 クーの歌が、始まった。
 ふくよかな響きは、たちまちあたりの空間を支配した。


 抑え気味に歌う声が、不思議な倍音を伴って、聞く者の体全体の皮膚を通して広がってくる。



ξ゚⊿゚)ξ「…ふん、低音を歌わせれば、さすがね」


 ツンのつぶやきは四人の耳には届いていない。

 四人は、それぞれお互いの顔だけを見て、笑いあっていたからだ。


74 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 23:11:59.26 ID:I6T2pgVe0

 That's where you found me
   When you put your arms around me


 ショボンのベースが楽しげに「歩き」はじめた。
 モナーとドクオはのびのびと歌っている。


 なのに、クーの歌声は男三人に負けるどころか、それを包み込むように――

      I haven't been there hor the


川 ゚ ー゚)(よっし、私も!)

         lo....ngest time!


 四人が、またもばしっと、決めた。


76 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 23:12:53.59 ID:I6T2pgVe0
 間奏。
 リード・ヴォーカルはお休みだ。
 男たちが、やや抑え気味に、流れるように歌っている。

ξ゚⊿゚)ξ「ふ、ふん。低音だけはやるじゃないの」

川 ゚ -゚)「だろ?」

 ツンの皮肉めいた口調に対しても、あっけらかんとして、クーは答える。
 体全体のノリとリズムは、いまだ曲の中にいるままだ。


ξ゚⊿゚)ξ「で、三番はどっちの担当だっけ?」

川 ゚ -゚)「もういいじゃないか、そんなの」

ξ゚⊿゚)ξ「は?」

川 ゚ -゚)「適当に、いっしょに歌おう」

ξ゚⊿゚)ξ「そ、そんなバカなこ…」

川 ゚ -゚)「ほらほら始まるぞ、まずはお前が歌え!」


 三人の間奏が盛り上がってきた。
 もうすぐリード・ヴォーカルの出番だ。

ξ゚⊿゚)ξ「ち、ちょっと待…もう!」


78 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 23:14:42.22 ID:I6T2pgVe0
.
  I'm that voice you're hearing in the hall

 ツンの歌声が始まった。
 準備をまったくせずに歌い始めたので、最初の音にはつまずいた。

 だが、少しも嫌な感じではない。
 欠けた音をフォローするかのように、コーラスの男達が、とっさに音量を上げた。


 モナーとドクオのコーラスに、クーが加わっていた。

 男女三声となったハーモニーは、さらに重厚さを増して、
 ツンの突き抜けるようなソプラノを強力に下支えしていた。


    And the greatest miracle of all
      Is how I need you

('A`)(おお…クーさんがコーラスで入って、バンド全体が一気に引き締まったな…)


 楽譜を片手にコーラスパートの音を追うクー。

 歌いながら、同時に和音のコード解析もしているようだ。
 細かく、曲の雰囲気に合わせてくる。

( ´∀`)(やっぱり音大出は伊達じゃないモナー)


79 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 23:16:39.56 ID:I6T2pgVe0
                                      .
 ツンはメロディの一部にフェイクを入れてみた。
 しっかりと、バンドはついてきた。


ξ゚⊿゚)ξ(…やっぱりコーラスがしっかりしてると、自由に歌えるわね)

 ショボンが歌うベースラインに乱れはない。
 ガチムチの肉体が、こんなところで活かされているとは。


ξ゚⊿゚)ξ(ドクオのやつも、ぜんぜん違和感を出さないわね) 

 一人で歌っているときは、とても弱弱しく、自己主張の無いドクオ。
 だが、それをモナーやクーと合わせて歌っていると、
 ばしっとはまったハーモニー作りを影で支える、見えない大黒柱になっていた。


 ツンは楽しくなってきた。
 この四人と一緒に歌ってると、こんなに自由に、のびのびと歌えるのだ。


ξ゚ー゚)ξ(そういえば、歌って、楽しいものだったなあ…)


 ふと、クーを見た。
 彼女も笑っていた。

 笑って、ドクオ、モナーと顔を寄せ合っていた。

82 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 23:20:31.45 ID:I6T2pgVe0
act.4


 狭い機材室。
 ライトスタンドがテーブルの上の書きかけの脚本を照らし、
 ギコ監督は足を組んで座っていた。
 
 ツンとクーが、並んで立っている。



(,,゚Д゚)「チャンスをくれ、ね」

 監督は腕を組んで、女優二人の顔を交互に眺めている。


83 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 23:22:24.88 ID:I6T2pgVe0
.
 長い沈黙のあと、
 監督はにやりと笑って、言った。

(,,゚Д゚)「…珍しいじゃねえか、おまえら、二人そろって来るとはな」

ξ゚⊿゚)ξ「あっ」

 ツンとクーは、顔を見合わせた。


 ギコは椅子から立ち上がり、部屋の中を少し歩いた。

(,,゚Д゚)「まあな。来る、とは思ってたよ。
    でも二人いっしょに来るとは思わなかったなあ」

川 ゚ -゚)「はあ、それは」



 監督は二人を迂回して、背を向け、
 無言のまま、入り口ドアのほうに向かって歩く。

ξ゚⊿゚)ξ「か、監督!」

川 ゚ -゚)「私は、いや、私たちは…!」


85 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 23:24:16.29 ID:I6T2pgVe0

(,,゚Д゚)「今回のことでさらにいがみ合ってるようじゃ、両方とも脇役で使おうと思ってたさ。
    それ、そこで脚本(ほん)の練り直しをしてたところだぜ」

 ギコが後ろ手にテーブルの上を指し示した。

川 ゚ -゚)「そ、それは」

(,,゚Д゚)「あーあーわかってるよ。
    おまえら、どうやらお互いに、もう、わだかまりは取れたみたいだな」

ξ゚⊿゚)ξ「えっ!」


 ギコはもう一度、にやりと笑った。

(,,゚Д゚)「ツラ見りゃわかる。
    おまえらの気持ちも読み取れずに、なにが監督だ。
    ギコハハハ」

川 ゚ -゚)「そ、それじゃ!」

 二人の顔が、ぱあっと明るくなる。


(,,゚Д゚)「ま、そういうことだ。今回もよろしく頼むぜ、歌姫たち」

ξ゚⊿゚)ξ川 ゚ -゚)「ありがとうございます!!」

86 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 23:26:11.09 ID:I6T2pgVe0

(,,゚Д゚)「よし。オーディション再開といくか。
    もう一度ここで歌ってみろ」

ξ゚⊿゚)ξ「は、はい!」

 ツンは息を整えて、ラテン語の口ならしのために唇と舌の運動をする。


(,,゚Д゚)「…ああ、そっちの歌じゃないさ。
    歌うのは、お前たちの気持ちをひとつにつないだほうの歌だ」


川 ゚ -゚)「えっ…」ξ゚⊿゚)ξ


川 ゚ -゚)「監督、知ってたんですか?」

(,,゚Д゚)「あんだけ大声で歌ってりゃ、ホールじゅうどこに居ても聞こえるさ。
    ギコハハハハハハ」


87 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 23:28:21.77 ID:I6T2pgVe0
川 ゚ -゚)「でも…」

 言って、二人の歌姫は顔を見合わせる。


川 ゚ -゚)「あの曲は、みんながいないと…」

ξ゚⊿゚)ξ「五人みんなで歌わないと、私たちだけじゃ、リード・ヴォーカルだけになってしまう…」


(,,゚Д゚)「五人、ね」

 監督はにやりと笑って、
 唐突に、入り口のドアを勢いよく引き、開けた。



 ドクオを先頭に、三人の男たちがなだれうって崩れ落ちてきた。
 積み重なるように部屋の中に入った、ドクオ、ショボン、モナー。


川;゚ -゚)「お、お前たち」

('∀`;)「や、やあクー」

ξ;゚⊿゚)ξ「あっきれた…盗み聞きしてたの……」

(´・ω・`)「済まない。謝って許してもらおうとも思っていない」


89 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 23:30:13.17 ID:I6T2pgVe0

(,,゚Д゚)「どうだ、これで五人じゃねえのか?」

 にやにやとして、ギコは言った。

川;゚ -゚)「はあ、まあ」


 男たちは立ち上がり、埃っぽい機材室の床にはいつくばって付いた白い汚れをはたきながら、
 それぞれに集まってきて、半円を組んでいる。

 モナーとショボンが、バンドマスターのドクオを見た。
 ドクオは、二人の歌姫を見た。

 ツンは、ギコ監督を見て、それからドクオを見て、



 それから、五人はたがいに目を見合わせ、にっこりと笑って、

 ――うなづき合った。

90 名前:afo ◆2z7bKNbsWo :2008/06/09(月) 23:31:31.12 ID:I6T2pgVe0
川 ゚ -゚)おしまい





もう一度!Billy Joel - "For the longest time"
ttp://jp.youtube.com/watch?v=pu9NG1zD5Kg

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